説明

再生可能な資源から得られるポリオレフィンと、その製造方法

一部が再生可能資源から得られる6〜9個の炭素原子を有するオレフィンを重合して得られるポリマー。本発明のポリマーは特に植物油または動物性脂肪に由来する。本発明は上記ポリマーの製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能な出発原料から製造されるポリマーと、その製造方法とに関するものである。より正確には、本発明の対象は再生可能な原料に由来する炭素原子数が6〜9のオレフィンを重合して得られるポリマーにある。
【背景技術】
【0002】
ポリマー群の中でオレフィンから得られるポリマー(すなわちポリオレフィン)は非常に多様な性質(例えば機械特性および溶融粘度特性)を有する。このポリオレフィンがオリゴマー(すなわちその数平均モル質量が2000グラム/モル以下の場合)の場合には、外界温度で粘性のある液体状態をしており、例えば滑剤として使用できる。数平均モル質量が2000グラム/モル以上ではポリオレフィンは外界温度で固体になる。このポリオレフィンからフィルム、チューブまたはボトル、その他の各種成形品が製造でき、多くの分野、特に包装または自動工業で使用されている。
【0003】
最も一般的なポリオレフィンはポリエチレンおよびポリプロピレンである。炭素原子数が5以上(例えば6〜9)のオレフィンから成るポリオレフィンもある。これらのオレフィンはそのまま重合されるか、他のモノマーと共重合される。特に、炭素原子数が小さい(一般に2または3)オレフィンを重合できる。例えばエチレンおよび炭素原子数が5以上のオレフィンからポリエチレン、例えばエチレンとそれより炭素原子数が大きな追加のオレフィンとのランダム共重合体であるLLDPE(直鎖低密度ポリエチレン)が製造できる。
【0004】
ポリオレフィンは石油に由来するオレフィンの重合によって得られるが、このオレフィンは原油のクラッキング工程とそれに続くアルカンの蒸気分解プロセスによって得られ、一般にオレフィンを含む各種生成物が得られる。クラッキングおよび蒸気分解の一つの欠点は高温と多量のエネルギ(蒸気分解工程は約800℃)を必要とする点にある。このプロセスの他の欠点は、得られる石油製品が極めて多様である点にある。すなわち、オレフィンを含む各種生成物の混合物(芳香属化合物、アルカン、その他)になる点にある。また、種々のオレフィンが製造される。
【0005】
オレフィンは化石資源(鉱油)からエチレンのオリゴマー化で製造でき、これが今日最も普及したプロセスである。このプロセスの概観は非特許文献1に記載されている。このプロセスでC4/C6〜C20およびそれ以上のオレフィンが得られる。しかし、現在の分離プロセスではオレフィンの混合物、特に多くの異性体ができる。従って、重合には分離が必要である。しかし、この遊離プロセス、特に異性体の分離プロセスは複雑で非常に費用がかかる。そのためにオレフィンの極めて限られた数の異性体のみを製造することができるプロセスには大きな利点がある。
【0006】
石油に由来するポリオレフィン製造の他の問題は化石資源の激しい採掘によって資源が枯渇するという問題である。すなわち、採掘はますます難しくなり(非常に深いボーリングが必要)、大型でコストのかかる機器を必要とする。また、1973の石油危機から石油生産価格の大きい増加が見られる。その結果、主として石油資源を基にした化合物から製造したポリマーの製造コストが増加した。これらの理由から、ここ数年、再生可能な出発原料から導かれるポリマーが増加している。例えば、ビートやとうもろこしから合成されたモノマー、ラクチドの重合でポリ(乳酸)ポリマーが作られている。また、ヒマからの抽出油から作られるポリアミド11(本出願人が市販のリルサン(Rilsan、登録商標))も挙げられる。再生可能な出発原料を用いたこれらポリマーの利点の一つは炭素循環に関係する。すなわち、植物は大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収する。この炭素は化石(例えば鉱油または石炭)起源の炭素に対して「モダン炭素」とよばれる。化石起源の炭素を使用し、放出すると空気中に蓄積され、炭素循環のバランスがくずれる。
【0007】
特許文献1(国際特許第W02008/067627号公報)には再生可能資源からの炭素原子数が2〜4のオレフィンからポリオレフィンを製造する方法が記載されている。ポリオレフィンを製造するためのオレフィン合成工程はバイオマスのガス化工程を含む。このガス化工程は非常に高い温度(一般に1100〜1300℃)で実行され、高いエネルギー使用量が必要である。このエネルギーを化石燃料から得た場合にはCO2を放出し、温室効果ガスの原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際特許第W02008/067627号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Ullmann Encyclopedia, 第5版、Vol. A13、第238〜248頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、現在まで行われていなかった再生可能資源から得られる炭素原子数が6〜9のオレフィンからポリマーを合成することにある。
本発明者は、再生可能な出発原料からポリオレフィンを工業的に生産する方法を見出した。
本発明方法を用いることで出発原料の化石燃料の少なくとも一部を減らすことができ、再生可能な出発原料に代えることができる。
本発明方法で得られるポリオレフィンは石油資源を用いて得られる同じポリマーの全ての用途で使用できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の対象は、成分モノマーの少なくとも一つが少なくとも一部が再生可能資源に由来する式CnH2nに対応するオレフィン(a)とよばれる成分モノマー(nは6〜9の整数)の重合によって得られるポリマーの製造方法にある。
本発明方法を用いると、6〜9の炭素原子数を有するオレフィンから、モダーンカーボンから成る新規なポリマーを合成することができる。
従って、本発明の他の対象は、本発明方法によって得られるポリマーにある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】1−ヘプテンの精製工程を表す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明ポリマーは下記のように多くの問題の少なくとも一つを解決する:
(1)モダーンカーボンから成り、その部分の炭素と大気中のO2の蓄積に寄与しないこと。
(2)本発明ポリマーの製造プロセスはエネルギ消費が少ないので、同じポリマーを化石根源物質から作るに比較して、本発明ポリマーの生産で発生する温室効果ガスは少ない。
(3)それに加えて、本発明のポリマー製造方法は、オレフィン(a)は異性体が少くないので、石油に由来するオレフィンを使用している従来方法と比較して容易である。
(4)本発明の他の効果は出発原料の生産現場に位置した生産設備で生産ができる点にある。
(5)それに加えて、本発明方法の生産ユニットのサイズは精製装置のサイズよりはるかに小さい。すなわち、精製装置は一般に出発原料の生産地から遠く離れて位置しており、パイプラインで結ばれたプラントである。
(6)さらに、本発明ポリマーは6〜9の炭素原子数を有するオレフィンから成る。
【0014】
本出願人が知る限り、再生可能資源からのオレフィンのポリマーを製造する公知の方法を使用した場合、これらのポリマーは製造できなかった。すなわち、これらポリマーを構成するオレフィンは炭水化物の発酵またはバイオマスのガス化によって得られるが、炭水化物の発酵またはバイオマスのガス化では6〜9の炭素原子数を有するオレフィンは製造できない。
【0015】
本発明方法ではオレフィン(a)は再生可能資源から抽出された植物油および/または動物性脂肪から成る脂肪質の物質から得られる。
本発明ポリマーの製造方法は下記の工程から成る:
A.脂肪質物質を処理して炭素原子数が6〜9のオレフィン(a)を作り、
B.少なくとも一つの成分モノマーがオレフィン(a)である成分モノマーを重合する。
【0016】
工程Aでは再生可能資源から抽出された脂肪質物質を処理してオレフィン(a)にする。本発明方法の工程Aは脂肪質物質から得られるアルコールを脱水する反応を含む。本発明の工程Aを実行するために、脂肪質物質の処理工程Aは飽和アルコールを形成するための一つまたは複数の反応と、得られたアルコールを脱水してオレフィン(a)を形成する工程からなる。
【0017】
脱水反応は下記で表される:
R−CHOH−CH−R≡<−>R−CH=CH−R≡+H2
(ここで、Rはアルキル基で、R≡は水素原子またはアルキル基である)
【0018】
本発明方法では、脂肪質物質の少なくとも一つの脂肪酸は開裂(cleavage)されたC=Cタイプの不飽和基を有する。この開裂は酸化開裂反応またはクラッキング反応により行なわれる。次いで、6〜9の炭素原子数を有し、条件に従って酸、エステル、アルデヒドまたはアルコール官能基を有する飽和化学種が形成される。
【0019】
従って、本発明の対象は、下記の工程(A)と(B)から成る、脂肪質物質の脂肪酸が少なくとも一つのC=Cタイプの不飽和基を有する、再生可能な資源から抽出した脂肪質物質からポリマーを製造する方法にある:
(A)下記(1)〜(4)の工程を有する炭素原子数が6〜9のオレフィン(a)の製造:
(1)加水分解またはエステル交換反応で脂肪質物質から脂肪酸または脂肪酸エステルを形成し(任意工程)、
(2)クラッキング反応または酸化開裂反応で脂肪質物質、脂肪酸または脂肪酸エステルから、条件に応じて酸、エステル、アルデヒドまたはアルコール官能基を有する炭素原子数が6〜9の飽和した化学種を形成し、
(3)官能基がアルデヒド、酸またはエステルの場合には、追加の水素化工程で飽和アルコールを形成し、
(4)得られる飽和アルコールを脱水し、
(B)少なくとも一つのモノマーが上記オレフィン(a)であるモノマーを重合させる。
【0020】
本発明を実行するための他の利点および要素は以下に詳細に説明する。
【0021】
本発明のポリマーは再生可能な出発原料に由来するオレフィン(a)から得られる。再生可能な出発原料は天然資源、例えば動物または植物から得られ、これら資源はヒトのスケールでは短期間に再生産可能である。特に、これらは消費速度と同じ程度の速さで再生が可能である。植物材料は化石原料から得られる資源より速く再生できるという利点がある。
【0022】
化石原料に由来する原料と違って、再生可能な出発原料から成る物質は14Cを含む。生物系(動物または植物)から得た全ての炭素サンプルは3つのアイソトープ:12C(98.892%)、13C(〜1.108%)および14C(痕跡:1.2×10-10%)の混合物である。生物組織の14C/12C比は大気のそれと同じである。環境中では14Cは主として2つの形:無機の形すなわち二酸化炭素(CO2)の形と、有機の形すなわち有機分子中に一体化された炭素の形で存在する。
【0023】
有機生物体中では炭素が環境と絶えず交換しているので、14C/12C比は新陳代謝によって一定に保たれる。大気中の14Cの比率は一定であるので、その比は生物中でも同じである。生きている間、生物は12Cと一緒に14Cも吸収し、14C/12C比の平均値は1.2×l0-12に等しい。12Cは安定しており、サンプル中の12C原子の数は経時的に一定である。一方、14Cは放射性であり、生物中の炭素の1グラム当たり毎分、13.6個の14C同位元素が崩壊する。半減期T1/214Cの崩壊定数と関係し、14Cの半減期は5730年である。14Cの半減期(T1/2)を考慮すると、14Cの含有量は出発材料を抽出してから、これらの出発材料でオレフィンベースのポリマーを製造し、さらにはこのポリマーから成る製品を使用が終るまでほぼ一定である。
【0024】
従って、原料中に14Cが存在することは、その量とは無関係に、それを構成する分子の根源物質に関する指標を与える。すなわち、その分子が再生可能な出発原料からのものか、化石原料以外のものかを示す指標を与える。
【0025】
材料中の14Cの量を測定する方法はASTM D6866規格(特にD6866−06)およびASTM D7026規格(特に7026−04)に記載されている。
【0026】
好ましい測定方法はASTM D6866−06規格(「加速質量分析法」)(Standard Test Methods for Determining the Biobased Content of Natural Range Materials Using Radiocarbon and Isotope Ratio Mass Spectrometry Analysis)に記載のマススペクトル分析である。
【0027】
この規格では、「バイオベースの炭素」とよばれる再生可能な出発原料に由来する有機炭素を3つの方法で測定する。本発明の、6〜9の炭素原子数を有するオレフィンおよびポリマーはマススペクトロメトリ法または液状のシンチレーション・スペクトロメトリ法、好ましくはマススペクトロメトリ法によって測定できる。
【0028】
この方法ではサンプル中のデータを測定し、バイオ資源炭素が100%の参照サンプルのデータ(14C/12C比が1.2×10-12である)と比較することで、各サンプル中のバイオ資源炭素の相対百分比を求めることができる。
【0029】
本発明ポリマーを製造するために使われるオレフィン(a)は可能な出発原料からの炭素量が6〜9の炭素原子を有するオレフィン中の炭素の総重量に対して20重量%以上、好ましくは50重量%以上であるのが好ましい。換言すれば、再生可能資源に由来するオレフィンは14Cを少なくとも0.24×10-10%、好ましくは少なくとも0.6×10-10%含む。
【0030】
再生可能な出発原料に由来する炭素の量は炭素量が6〜9の炭素原子を有するオレフィン(a)中の炭素の総重量の75重量%以上、好ましくは100重量%である。
【0031】
本発明ポリマーは再生可能な出発原料に由来する炭素の量がポリマー中の炭素の総重量の20重量%以上、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは75重量%、より好ましくは100重量%であるのが好ましい。
【0032】
本発明方法では、この再生可能な出発原料は脂肪質の物質、例えば植物油または動物性脂肪である。脂肪質物質は下記の形をしたトリグリセリドから成る:
【化1】

【0033】
このトリグリセリドは脂肪酸R−COOHのトリエステルで、従って、脂肪質物質は脂肪酸のエステル形からなる。
【0034】
植物油は基本的に各種の油生産植物、例えばヒマワリ、菜種、ヒマ、ブラッドデルポ、オリーブ、クルミ、大豆、椰子、コエンドロ、オランダミツバ、イノンド、ニンジン、ウイキョウ、またはリムナンテアルバ(メドウフォーム)中に存在する。
【0035】
動物性脂肪は陸性または海洋動物から得られ、海洋動物では魚および哺乳動物またはアルジーの形で得られ、一般に魚、例えばタラまたは海洋哺乳動物や反芻動物からの脂肪がある。
【0036】
脂肪質の物質としては植物油が好ましくは使われる。脂肪質物質は2つのタイプ:飽和脂肪質物質(C=C不飽和のない脂肪酸から成る)と不飽和脂肪質物質(脂肪質の物質の少なくとも一つの脂肪酸がC=Cタイプの不飽和を有する)とに分けるのが普通である。本発明方法では脂肪質物質の少なくとも一つの脂肪酸はC=Cタイプの不飽和を有する。
【0037】
この脂肪質物質はリシノール酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸またはリノレン酸の中から選択されるエステル形の脂肪酸を含む植物油であるのが好ましい。本発明の一つの好ましい実施例では、脂肪質物質はリシノール酸を含む植物油である。
【0038】
各種植物油または動物性脂肪のトリグリセリドに含まれる各脂肪酸の重量の例を[表1]に示す。しかし、この脂肪酸のリストは単なる例示で、当業者は公知の任意タイプの植物油または動物性脂肪を使用できる。
【0039】

【0040】
脂肪質物質としては約40重量%のエルカ酸をエステル形で含むアブラナの種から作られるものを挙げることができる。
【0041】
本発明のポリマーを製造する方法は下記の工程から成る:
A. 脂肪質物質を処理して6〜9の炭素原子数を有するオレフィン(a)を形成し、
B. 少なくとも一つの構成モノマーがオレフィン(a)である構成モノマーを重合する。
【0042】
本発明補では、中間生成物または本発明ポリマーの精製工程を実行できることも明らかである。
【0043】
再生可能資源から抽出された脂肪質物質を本発明の工程を実行するために用いる。植物からまたは動物から脂肪質の物質を抽出する方法は多数存在する。これらの脂肪質物質は市販されている。油は先ず最初に種を轢き、抽出して油の第1部分と轢いた種の第1部分とを得る。この工程は一般に「粉砕」とよばれる。油の第2部分は粉砕した種の残りから溶剤、一般にアルカン溶媒、例えばヘキサンを用いて抽出するのが好ましい。
【0044】
工程の工程A
本発明方法に従ってオレフィン(a)を作るために、反応装置中で脱水工程を実行してアルケンと水の混合物を作る。この脱水工程は再生可能な根源物質の出発原料から得られるアルコールの存在下で酸性でも塩基性でもよい脱水触媒、例えばγ−アルミナ−ベースの触媒の存在下で実行できる。触媒は粉末の形または粒状にできる。触媒中のSiの量は500ppm以下であるのが好ましい。
本発明の第1変形例では脱水の選択性を増加させるために塩基性触媒、例えば、バリウムをドープしたγ−アルミナを用いる。本発明の第2変形例では反応収率を改良するために酸性触媒を用いる。アルコールの脱水に適した触媒の例としては特にEurosupport社から商品名ESM110で市販のものが挙げられる。これはNa2Oの含有量が少ない(通常0.04%)ドープなしの三葉γ−アルミナである。
【0045】
反応装置内部の温度および/または圧力はアルコールが蒸発した形になるように選択される。例えば、作られたアルコールを脱水する反応は250〜400℃の温度で実行できる。この脱水は部分的真空下、例えば500〜760mmHgの圧力で行うのが好ましい。
【0046】
脱水−不活性化合物から成る熱伝達液体をアルコールと一緒に注入できる。不活性化合物はプロセス条件下で気体の不活性化合物で、例としては窒素、ヘリウム、アルゴン、水、メタン、プロパン、ブタン、その他の脂肪族または芳香族炭化水素が挙げられる。例えば1モルのアルコールに対して0.05〜10モル、好ましくは0.15〜3モルの不活性化合物を導入する。脱水触媒はγ−アルミナの全の容積が0.9ml/g以上で、少なくとも一つの気孔が1〜9ナノメートルの最大半径を有し、他の気孔の少なくとも一つが25ナノメートル以上の最大半径を有するγ−アルミナを選択するのが好ましい。例としてはSasol社から市販のPural KR1触媒が挙げられる。
【0047】
得られたオレフィン(a)の精製工程は公知の方法、例えば蒸留で実行される。α位置に単一のアルコール官能基を有する飽和アルコールの脱水では単一の異性体(アルファオレフィン)が得られ、飽和アルコールがα位置に無い場合には、2つの異性体の混合物が得られる。いずれでも、従来のクラッキングおよび化石資源の水蒸気分解で得られるものと比較して異性体の数は少ない。
【0048】
脂肪質物質の加水分解またはエステル交換反応は必要に応じて実行できる。脂肪質物質を加水分解またはエステル交換反応するとグリセリンで脂肪酸または脂肪酸エステルが作られる。
【0049】
この反応は下記の形になる(R4は加水分解の場合はHであり、エステル交換反応の場合にはアルキル基である):

【0050】
エステル交換反応はメタノールまたはエタノール、好ましくはメタノールを用いて実行できる。このエステル交換反応は塩基性媒体中、例えば水酸化ナトリウムの存在下で実行するのが好ましい。塩基性触媒の量は反応媒体の0.1〜1重量%にすることができ、撹拌反応器中で過剰量のアルコール(例えばメタノール)の存在下で、好ましくは塩基性触媒(例えばナトリウムメトキシドまたは水酸化ナトリウム)を用いて脂肪質物質を反応させて実行できる。このエステル交換反応は40〜120℃の温度で実行するのが好ましい。加水分解反応を実行する時には脂肪質物質を好ましくは酸性触媒を用いて過剰量の水の存在下で反応させるのが好ましい。加水分解は例えば10〜100℃、好ましくは15〜60℃、さらに好ましくは20〜50℃の温度で実行できる。反応装置には水/酸またはアルコール/エステルのモル比を2/1以上、例えば3/1〜10/1に維持するように連続的に送るのが好ましい。反応の終わりに脂肪酸または脂肪酸エステルの混合物を静置してグリセリンを分離し、グリセリンの痕跡量を除去するために酸またはエステルを洗浄する。得られた生成物は例えば蒸留で分離するのが好ましい。
【0051】
本発明方法では脂肪質物質、エステルまたは酸中に含まれるC=Cタイプの不飽和の開裂をクラッキング反応または酸化開裂、例えばオゾン分解で実行する。オゾン分解反応(非平衡反応)は中間体としてオゾナイド(表記せず)を通って下記の式で起こる:
3R−CH=CH−R≡+3O3<−>RCOOH+RCHO+RCHOO+R≡COOH+R≡CHO+R≡CHOO
【0052】
この条件でカルボキシル酸、アルデヒドおよびパーオキサイドが作られる。この酸化開裂プロセスの一つの利点は低温で実行できることであり、それによって反応媒体に供給する熱量に関連するコストを下げることができる。
【0053】
オゾン分解反応を実行するために、脂肪質物質、酸またはエステルを先ず最初に有機溶剤に可溶化する。オゾン分解条件下に反応装置を置くためにオゾンの存在下で攪拌混合する。任意タイプの有機溶剤、例えばエステル、酸、アルコールまたはジメチルスルホキシド(DMSO)をこの反応で使用できる。また、溶剤として水を使用することもできる。反応物と溶剤との混合性に従って、反応媒体は単一相または一つの相が他の相に乳化したエマルション(例えば、水性溶媒中に不飽和エステルが乳化する場合)になる。DMSOまたは例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メトキシエタノール、シクロヘキサノールまたはベンジルアルコールタイプのアルコール溶剤中で実行するのが好ましい。脂肪酸エステルをオゾン分解する場合には、対応するアルコールR−OHを使用するのが有利である。この反応は低温、例えば20〜60℃、好ましくは25〜40℃の温度で実行できる。オゾナイドが形成される。
【0054】
オゾン分解生成物を作るためにオゾナイドのオゾナイド加水分解反応または還元を第2相で実行する。オゾナイド加水分解反応は塩基性触媒(例えば濃縮水酸化ナトリウム)を使用して実行できる。それと同時に低温オゾン分解条件下に反応媒体を維持する。最終生産物が形成される。酸性媒体で最終オゾン分解工程を実行すると、酸RCOOHおよびR≡COOHの混合物が得られる。
【0055】
本発明の第2型式では、フランス特許第FR0854708に記載のように、オゾナイドの還元を実行する。この還元は酢酸中の亜鉛、水素化触媒(例えば、Pd)または還元剤、例えば硫化ジメチル(DMS)の存在下で水素化で実行できる。アルデヒドRCHOとR≡CHOの混合物が得られる。
【0056】
この酸化開裂に好ましい変形例は還元オゾン分解で、粉末亜鉛金属の存在下または好ましくはDMSO中のジメチル硫酸の存在下で実行できる。ジメチル硫酸は還元オゾン分解時にDMSOへ変わり、このDMSOは容易に再利用できる。
【0057】
その他のプロセスは下記文献に記載されている
【特許文献2】英国特許第GB810571号公報
【特許文献3】国際特許第WO2007/039481号公報
【特許文献4】米国特許第US6455715号明細書
【特許文献5】米国特許第US2819279号明細書
【特許文献6】国際特許第W02008/067627号公報
【非特許文献2】Ackman et al. Canadian Journal of Chemistry, Vol. 39, 1961, p. 1956-19634「不飽和脂肪酸のオゾン分解:I.オレイン酸のオゾン分解」
【0058】
例えばリノール酸またはリノール酸を含む脂肪質物質のオゾン分解を行う場合、生成物中に1−ヘキサン酸またはヘキサナールが得られる。同様に、オレイン酸からせペラルゴン酸またはノナンアルデヒドができる。
【0059】
酸化開裂の終わりには、得られた生成物を例えば蒸留工程によって精製するのが好ましい。
【0060】
クラッキング反応を実行するために、脂肪質物質、エステルまたは酸を反応装置に入れ、反応媒体を高温分解条件(例えば窒素下)に加熱してクラッキング反応を行う。条件、例えば温度および反応溶液のpHは所望の生成物が得られるように宣告する。必要な場合には酸性クラッキング触媒、例えば結晶ゼオライト・アルミノ珪酸塩を使用する。脂肪質物質クラッキング温度は180〜650℃にすることかできる。クラッキング条件に応じてカルボキシル酸、アルデヒドまたは飽和アルコールができる。
【0061】
例えば第1実施例ではエステルの形でリシノール酸を含む植物油、例えばひまし油のクラッキングを塩基性媒体中で実行する。例えば180〜300℃の温度で水酸化ナトリウムの存在下でオクタン−2−オールを作る。このクラッキング工程は必要に応じて植物油が加水分解またはエステル交換される工程によって、得られたリシノール酸またはリシノール酸エステルに実行することもできる。このクラッキング・工程は例えば下記文献に記載されている。
【特許文献7】米国特許第6392の074号明細書
【特許文献8】米国特許第US3671581号明細書
【0062】
本発明の第2実施例では、エステル形でリシノール酸を含む植物油、例えばひまし油をスチームの存在下で反応装置中で蒸発させてクラッキング反応させる。このクラッキング工程は油の代わりにリシノール酸またはリシノール酸エステル、例えばひまし油をメタノールとエステル交換した反応で得られたリシノール酸メチルを導入して実行することもできる。この脂肪酸または脂肪酸エステルは植物油の加水分解の工程またはエステル交換反応によって得られる。ひまし油またはリシノール酸メチルのクラッキング反応を行うのが好ましい。
【0063】
ひまし油/水またはアルキル・リシノレート/水の重量比は1〜3であるのが好ましい。反応は450〜650℃、好ましくは450〜575℃、例えば500〜575℃の温度で一般に5〜30秒間行名割れる。このクラッキング・工程は例えば下記文献の11−アミノウンデカン酸の合成の章に記載されている。
【非特許文献3】“Les Procedes de Petrochimie” [Petrochemical processes] by A. Chauvel et al., TECHNIP (1986)
【0064】
反応生成物中にヘプタアルデヒドが得られる。クラッキング工程の終わりに得られた生成物を例えば蒸留工程によって精製することができる。エステル、酸またはアルデヒドを水素化する反応は下記の形になる:

【0065】
これらの水素化反応は脂肪質物質から得られるエステル、酸またはアルデヒドをCuOおよびZnOから成る触媒上で過剰量のジヒドロジェンの存在下で反応させて実行できる。CuO/ZnO比は0.2〜2であるのが好ましい。また、必要に応じてバリウムおよび/またはマンガンをドープした亜クロム酸銅ベースの触媒も使用できる。この水素化工程は200〜230℃の温度で、3〜5mPaの圧力で実行するのが好ましい。触媒はスチームと接触させて再生できる。形成されたアルコールを分離する工程は例えば蒸留工程で実行するのが好ましい。
【0066】
以下、本発明方法のA工程のいくつかの例を示す:
本発明方法の第1実施例では、nが6のC18:2−デルタ9,12形のリノール酸エステルから成る脂肪質物質場合、工程Aは下記工程から成る:
(1)上記脂肪質物質を加水分解してリノール酸C18:2−デルタ9,12にし、
(2)上記リノール酸をオゾン分解し
(3)オゾン分解生成物を蒸留してヘキサン酸またはヘキサンアルデヒドにし、
(4)ヘキサン酸またはヘキサンアルデヒドを水素化してヘキサン−1−オールにし、
(5)ヘキサン−1−オールを脱水して1−ヘキセンにする。
【0067】
本発明方法の第2実施例では、nが7で、脂肪質物質がリシノール酸から成る植物油、好ましくはひまし油の場合に、工程Aが下記から成る:
(1)上記植物油を例えば好ましくは水酸化ナトリウムの存在下で塩基性媒体中でアルコール処理してエステル交換反応してアルキルリシノレートにし(任意段階)
(2)上記油またはアルキルリシノレートを450〜575℃の温度で5〜30秒間、高温分解条件下でスチーム存在下でクラッキングしてヘプタアルデヒドにし、
(3)ヘプタアルデヒドを水素化してヘプタン−1−オールにし、
(4)ヘプタン−1−オールを脱水して1−ヘプテンにする。
【0068】
本発明方法の第3実施例では、nが8で、脂肪質物質がリシノール酸をエステル形で含む植物油である場合、工程Aは以下の工程から成る:
(1)塩基性媒体中のアルコール処理で上記植物油を好ましくは水酸化ナトリウムの存在下でエステル交換反応してアルキル・リシノレートにし(任意段階)、
(2)ひまし油またはアルキル・リシノレートを塩基性媒体中で180〜300℃の温度の高温分解条件下でクラッキングしてオクタン−2−オールを作り、
(3)オクタン−2−オールを脱水して1−オクテンと2−オクテンの混合物とする。
【0069】
本発明方法の第4実施例では、nが9で、脂肪質物質がエステル形のオレイン酸を含む植物油の場合に、工程Aが下記工程から成る:
(1)上記植物油をエステル交換してオレイン酸エステルにし、
(2)このエステルをオゾン分解してペラルゴンアルデヒド(ノナナール)またはペラルゴン酸とし、
(3)ノナナールまたはペラルゴン酸を水素化してのノナン−1−オールにし、
(4)ノナン−1−オールを脱水してオレフィン(a)としての1−ノネンにする。
【0070】
本発明方法の工程B
オレフィン重合工程Bは溶液重合、流動層重合、スラリー重合または高圧重合工程であるのが好ましい。オレフィン(a)と任意成分のオレフィン(b)の重合工程Bは製造される生成物のタイプに応じた各種の方法で実行できる。
【0071】
オレフィン(a)はα−オレフィンであるのが好ましく、炭素原子数が6〜9のオレフィンから選択される。
【0072】
本発明の一実施例では、オレフィン(a)に加えて、エチレンまたはプロピレンから成るコモノマー(b)をポリマーの成分モノマーに加えることができる。このコモノマ(b)はエチレンであるのが好ましい。
【0073】
コモノマ(b)の少なくとも一部は再生可能資源に由来するのが好ましい。エチレンまたはプロピレンの製造方法はカーボンナノチューブの生産に関する下記文献の記載を参照できる。
【特許文献9】フランス特許第FR0702781号公報
【0074】
その合成は下記の工程から成る:
(a)砂糖を含む少なくとも一種の植物材料の発酵でアルコール(エタノールおよび/またはプロパノール)を合成し、
(b)最初の反応装置で(a)で得たアルコールを脱水して水とアルケン(エタノールの場合はエチレン、プロパノールの場合はプロピレン)の混合物を製造する。この脱水工程は一般に触媒(プロパノールの場合はシリカライト、エタノールの場合はγ−アルミナベース)の存在下で実行される。コモノマー(b)も下記文献に記載のバイオマス・ガス化で合成できる。
【特許文献10】国際特許第W02008/067627号公報
【0075】
(a)/(a+b)のモル比は0.0001〜0.5、好ましくは0.001〜0.3であるのが好ましい。一般にオレフィン(a)のレベルが増加すると、ポリマー密度が減る傾向にある。
【0076】
本発明の一つの特に有利な実施例では、コモノマー(b)はエチレンであり、ポリマーはポリエチレンである。ポリエチレンは下記にすることができる:
【0077】
(1)一般に密度が0.940〜0.965g/cm3の間にある高密度ポリマー(HDPE)、このポリエチレンは分岐度が低く、従って分子間力が強く、引張強度が高いことで区別される。低分岐度にするには触媒と反応条件を選択し、(a)/(a+b)のモル比を一般に0.5%以下にする。
【0078】
(2)一般に密度が0.925〜0.940g/cm3の間にある中密度ポリマー(MDPE)、このポリエチレンは衝撃性に優れ、(a)/(a+b)のモル比は、一般に1%以下である。
【0079】
(3)一般に密度が0.915〜0.935g/cm3の間にある低密度ポリマー(LDPE)、このポリマーは鎖(短鎖および長鎖)の分岐が高い。このポリエチレンは引張強度が低く、延性が高く、一般にオレフィン(a)を含まない。
【0080】
(4)一般に密度が0.900〜0.940g/cm3の間にある直鎖低密度ポリマー(LLDPE)、このポリマーは短い枝を多数含む直鎖で、(a)/(a+(b)のモル比は一般に0.1%〜3%の間にある。
【0081】
(5)一般に密度が0.860〜0.910g/cm3の間にある超低密度ポリマー(VLDPE)、このコポリマーは非常に多くの短枝を含む直鎖で、(a)/(a+b)のモル比は一般に3%〜50%、好ましくは3%〜30%である。
ポリマーはHDPE、MDPE、LLDPEまたはVLDPEから選択するのが好ましい。
【0082】
本発明の工程Bでは化石原料に由来するオレフィンベースのポリマーを製造するための公知の方法を使用できる。ポリマー、特に(a)と(b)をベースにするコポリマーの合成は溶液法、スラリー法および流動(気相)法の3つの好ましい方法で合成される。高圧法、フリーラジカル重合法(オートクレーブ反応装置または管型反応装置)も使用できる。
【0083】
溶液法、スラリー法および流動法の場合にはチグラー−ナッタまたはメタロセン触媒の触媒が使用され、また、フィリップス触媒も使用できる。
【0084】
チーグラー‐ナッタ触媒は一般に元素周期律表のIV族またはV族の遷移金属(チタン、バナジウム)のハロゲン化誘導体またはI族〜III族金属のアルキル化合物から成る。
【0085】
メタロセン触媒は一般にジルコニウムまたはチタンから成る金属原子と、この金属に結合した2つの環式アルキル分子とから成る単一サイト触媒である。より詳しくはメタロセン触媒は一般に金属に結合した2つのシクロペンタジエン環を有する。この触媒は一般にアルノキサン、好ましくはメチルアルミノキサン(MAO)を助触媒または活性化因子として使用する。シクロペンタジエンが金属に結合したハフニウムも使用できる。他のメタロセンはIVa、VaおよびVIa族の遷移金属を含むことができる。ランタニド金属も使用できる。
【0086】
フィリップス触媒は約400〜600m2/gの高い比表面積を有する担体(シリカまたはシリカ・アルミニウム)上に酸化クロムを体積させて得られる。
【0087】
これらの触媒はその後還元して非常に高温度(400℃)で活性化する。
【0088】
溶液法では少なくとも一つの溶剤の存在下でオートクレーブ反応装置中へ少なくとも一種のオレフィン(a)と任意成分の一種のオレフィン(b)を導入して実行できる。反応装置は断熱運転可能か、外部冷却器を備えることができる。
【0089】
使用可能な触媒はフィリップス触媒、好ましくはチーグラー‐ナッタ触媒またはメタロセン触媒である。反応装置の温度は一般に150〜300℃で、3〜20MPaの圧力である。
【0090】
反応装置出口でモノマーリッチなガスを反応装置の入口へ戻し、ポリマーから成る液体流を処理してポリマーから溶剤を分離する。ポリマーは押出機へ送る。
流動層または気相法では、反応媒体は触媒粒子の周りに付いたポリマーから成る。製造されたポリマーは固相を維持し、オレフィン(a)および(b)は必要に応じて流動床のキャリヤーガスを形成する。これらのオレフィンも反応から熱を除去し、モル質量を制御することを可能にする。
【0091】
使用する触媒はチーグラー−ナッタ、メタロセンまたはフィリップス触媒にできる。反応装置の温度は一般に80〜105℃で、0.7〜2MPaの圧力である。
【0092】
例えば、エチレンとオレフィン(a)とをベースにした本発明ポリマーの場合には、鉛直反応装置でプロセスを実行できる。エチレンを必要な圧力に圧縮し、反応装置の入口(下側)に導入する。反応装置入口でのエチレンの圧力を制御することで反応圧力を制御できる。触媒と任意成分の共触媒と、オレフィン(a)を反応装置に導入する。
【0093】
反応装置出口でガス混合物とLLDPEを流動床から抜き出し、減圧してポリエチレンをガスから分離する。必要に応じて、ガス混合物(エチレンおよびオレフィン(a))の各成分を分離して反応装置へ戻す。LLDPE(固体)は痕跡量のエチレンを除去するために精製し、押出機へ送る。
【0094】
LLDPEの製造では例えば溶液法または流動層法を使用し、好ましくはメタロセン触媒を使用する。
【0095】
オレフィン(a)およびオレフィン(b)とは異なるモノマーからポリマーを得ることもできる。ポリマーの数平均モル質量は2000グラム/モル以上にすることができる。このポリマーまたはそれを含む組成物はブロー成形、射出成形等の任意の成形方法で糸、フィルム、バッグ、袋、多層構造体、容器、ガスタンク、瓶、電線被覆、パイプ、チューブ、柔軟剤、バインダ、インパクト・モディファイアとして用いることができる。
【0096】
本発明の他の変形例では、ポリマーの数平均モル質量は2000グラム/モル以下である。このポリマーまたはそれを含む組成物はエンジン滑剤。織物滑剤または可塑剤または家庭用製品の製造で使用できる。
【0097】
工程Bの終わりに得られるポリマーをグラフトする一つの変形例
以下で説明するように、ポリマーへのグラフトは不飽和カルボン酸またはその官能性誘導体、4〜10の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸およびその官能性誘導体、不飽和カルボン酸のCl−C8アルキルエステルまたはグリシジルエステル誘導体および不飽和カルボン酸の金属塩から選択される少なくとも一つのグラフト・モノマーで実行される。
グラフト・モノマーとしてはメタクリル酸グリシジルが好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。グラフトしたポリマーの一つの特定変形例では再生可能な物質の炭素原子を有する無水マレイン酸が使用できる。この無水マレイン酸は下記工程から成る本出願人の下記特許に記載の方法で得ることができる:
【特許文献11】フランス特許第FR0854896号公報
【0098】
(i)再生可能な出発原料を発酵し、必要に応じて精製して、少なくともブタノールを含む混合物を製造し、
(ii)バナジウムおよび/またはモリブデンの酸化物をベースにした触媒で一般に300〜600℃の温度でブタノールを酸化して無水マレイン酸にし、
(iii)得られた無水マレイン酸を工程(b)の終わりに単離する。
【0099】
発酵のために従来から使われている微生物はクロストリジウムで、これはClostridium acetobutylicumまたはその突然変異が好ましい。使用可能な再生可能な出発原料は砂糖、セルロースまたはヘミセルロースから成るのが好ましい。
【0100】
ブタノール酸化反応は空気または分子酸素から成る他のガスの存在下で実行するのが好ましく、空気または分子酸素を含む他のガスは大過剰に存在する。公知の多くの方法をモノマーのポリマーへのグラフト化で使うことができる。これは約100℃〜約300℃で、溶剤の存在下または不存在下でラジカル発生剤の存在下または不存在下で、ポリマー(単独または混合物)を高温で加熱することで実行できる。
【0101】
使用可能なラジカル発生剤はパーオキサイド、好ましくはペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシドまたはねルオキシケタールにすることができる。パーオキサイドはArkema社からLuperox(登録商標)の名称で市販のものが挙げられる。ペルオキシエステルの例としてはt−ブチル・ペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(Luperox 26)、t−ブチル・ペルオキシ−アセタート(Luperox 7)、t−アミルペルオキシアセタート(Luperox 555)、t−ブチルパーベンゾエート(Luperox P)、t−アミルパーベンゾエート(Luperox TAP)、00−t−ブチル1−(2−エチル−ヘキシル)モノペルオキシカーボネート(Luperox TBEC)が挙げられる。
【0102】
ジアルキルペルオキシドの例としては2,5−ジメチル(2,5−)ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(Luperox 101)、ジクミルパーオキサイド(LuperoxDC)、α、α'−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソ−プロピルベンゼン(Luperox F40)、ジ(t−ブチル)パーオキサイド(Luperox DI)、ジ(t−アミル)パーオキサイド(Luperox DTA)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキス−3−イン(Luperox 130)が挙げられる。ヒドロペルオキシドの例はt−ブチルヒドロ−パーオキサイド(Luperox TBH70)である。例えばペルオキシ1,1−ケタールジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリ−メチルシクロヘキサン(Luperox 231)、エチル3,3−ジ(t−ブチル−ペルオキシ)ブチラート(Luperox 233)またはエチル3,3−ジ(t−アミル−ペルオキシ)ブチラート(Luperox 533)を使用できる。
【0103】
グラフト反応は溶融混合装置中でバッチ溶解法または連続法で実行できる。
本発明の他の対象は、本発明ポリマーと、少なくとも一種の本発明のポリマーとは異なる付加重合体および/または最終原料の特性を改良するための追加の添加剤とを含む組成物にある。
【0104】
添加剤としては抗酸化剤、UV保護剤、加工助剤、例えば脂肪酸アミド、ステアリン酸およびその塩、フルオロポリマー(押出欠陥防止剤として公知)、防曇剤、シリカまたはタルクのような充填剤、ブロック防止剤、例えば炭酸カルシウムやナノフィラー、例えばクレー、カップリング剤、例えばシラン誘導体、架橋剤、例えばパーオキサイド、静電防止剤、核剤、顔料、染料、可塑剤、流動化剤、難燃剤剤、例えば酸化アルミニウム三水和物または水酸化マグネシウムがある。これらの添加剤は最終コポリマーの重量に対して例えば10ppm〜100000ppmの含有量で存在できる。これらの添加剤はマスターバッチの形で組成物中に入れることができる。
【0105】
追加のポリマーは例えばポリオレフィン、特にエチレンベースのポリオレフィンにできる。ポリマーが2000グラム/モル以上の数平均モル質量を有する場合には、下記特許に機のようなインキとして]使用できる。
【特許文献12】米国特許第US2007/027606号明細書
【0106】
一般に本発明のポリマーまたは組成物は、化石原料から得られる公知コポリマーをベースにしたものと同じ用途に同様に使用できる。(a)を(b)と共重合した場合には、(a)い/(a+b)の比に従って、ポリマーを例えば紡績糸、フィルム、バッグ、袋、多層構造体、容器、成形物、ブロー成形品の製造で用いることができ、また、任意タイプの射出成形品、例えばガスタンクや瓶で使用できる。
本発明ポリマーはさらに銀器分野、例えば電線被覆の製造または液体輸送パイプまたはチューブの製造でも使用できる。本発明ポリマーはさらに衝撃吸収剤としても使用でき、また、ポリオレフィン熱可塑性エラストマーの原料に柔軟性を付与する柔軟剤として、さらには、バインダ組成物の一部としても使用できる。
【0107】
本発明ポリマーがオリゴマー(数平均モル質量が2000グラム/モル以下)の場合には、良好な低温流動性、熱安定性、耐酸化性および耐加水分解性を有し、高温での低揮発性および良好な摩擦挙動を示す。このオリゴマーは相対的に非毒性で、大部分の鉱油に可溶性で、例えばエンジンまたはコンプレッサ油または油圧系の滑剤として使用するのに適している。また、可塑剤または家庭用物品の組成物で使用することもできる。
【実施例】
【0108】
以下、本発明方法の実施例を示す。
本発明の工程A、BおよびCを実行してエチレンと1−ヘプテンからポリエチレンを製造するが、この実施例が本発明方法を限定するものではない。
【0109】
工程Aでは、ひまし油から出発し、ひまし油をメタノールと80℃でエステル交換反応する。この反応はナトリウムメトキシドを触媒として撹拌式管型反応装置で行う。100kgのひまし油を反応装置に入れ、反応中、メタノール/エステルのモル比を6に維持する。1時間後、リシノール酸メチルをグリセリンから分離し、水で洗浄し、痕跡量のグリセリンを除去する。
【0110】
次いで、リシノール酸メチルのクラッキングを反応装置中で215℃で蒸発によって実行する。600℃でスチームで混合し(エステル/水の比=2)、反応を500℃で10秒間続ける。蒸留後、ヘプタナールが回収し、このヘプタナールを水素化する。反応装置に10kgのヘプタナールを導入し、水素化する。
【0111】
1−ヘプタノールを他の化合物から分離した後、1−ヘプタナールを127mmの直径を有する触媒ベッドを含む管型反応装置に減圧下(約0.8バールの圧力)に345℃の温度で注入して脱水する。触媒ベッドは6500gの12700cm3のEurosupport ESM110アルミナ層から成り、空間時間速度(触媒容積に対するヘプタノールの容積で表される流速)は1h-1にする。
【0112】
反応装置中で製造された水と1−ヘプテンの混合物を熱交換器で冷却した後、気液分離器へ送り、1−ヘプテと水を分離する。
1−ヘプテンの精製工程は本発明プロセスの重合工程Cを実行する前に実行される。この工程は図1に概念的に示してある。この工程は2つのサイクロン分離器Cl、C2と、2つの熱交換器El、E2と、コンプレッサCpと、ポンプPとから成るガスリサイクリング回路を有する反応装置Rで実行される。
【0113】
反応装置Rは分配板(または液分配器)Dを有し、この分配板Dはガスと液体の入口帯域と、流動床が位置する上部帯域Fとを規定する。液分配板Dは有孔板である。液分配板は反応装置に入るガスの速度を均一にする。
上記装置では、エチレンとオレフィン(a)(1−ヘプテン)との混合物をパイプ1を介して導入し、次いで、パイプ2を介して反応装置へ導入して流動層で重合を行う。
【0114】
この流動床は触媒と予備成形されたポリマー粒子とから成る。液分配板D上のベッドは上昇ガス流体によって流動化状態に維持される。形成されたポリエチレンを吐出管11から抜き出すことで流動床の容積は定に一定に維持される。
モノマーの重合は発熱反応で、反応装置内部の温度はパイプ10を介して反応装置に供給(再循環)されるガスの温度を制御することでされる。
【0115】
未反応のエチレンと1−ヘプテン分子から成るガスと移行剤(水素)はパイプ3を介して反応装置を出で、リサイクリング回路に入る。このガスはサイクロン分離器Clで処理されて、キャリオーバーされたポリエチレンの微粉末を除去する。処理済のガスはパイプ4を通して最初の熱交換器Elへ導入されて、冷却される。
【0116】
パイプ5を介して熱交換器Elを出たガスはコンプレッサCpに入り、液体はパイプ6を通して再び第2の熱交換器E2へ送られ、冷却される。
熱交換器E2からの液体はパイプ7を介してサイクロン分離器C2へ送られ、サイクロン分離器C2でガスが液体から分離される。サイクロン分離器C2を出た液体はパイプ10を介して反応装置Rに導入される。サイクロン分離器C2から出たガスはパイプ8を介してポンプPに入り、パイプ9およびパイプ2を介して反応装置へ導入される。
連続した3回のパスで観測された反応装置入口の液体組成は以下の通り:
【0117】

【0118】
反応は下記運転条件手実行された:
反応装置の圧力:25バール
反応装置の温度:90℃
気体速度:0.6m/秒
流動床高さ:15m
反応装置入口での液体温度:40C
上記条件での各種テストで得られた収率は約120kg/m3/hである。得られたポリエチレンは下記特性を有する:
【0119】

【0120】
メルトフローインデックスはASTM 1238で測定(190℃、2.16kg)。密度はASTM D1505D規格に従って測定。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(A)と(B)から成る、脂肪質物質の脂肪酸が少なくとも一つのC=Cタイプの不飽和基を有する、再生可能な資源から抽出した脂肪質物質からポリマーを製造する方法:
(A)下記(1)〜(4)の工程を有する炭素原子数が6〜9のオレフィン(a)の製造:
(1)加水分解またはエステル交換反応で脂肪質物質から脂肪酸または脂肪酸エステルを形成し(任意工程)、
(2)クラッキング反応または酸化開裂反応で脂肪質物質、脂肪酸または脂肪酸エステルから、条件に応じて酸、エステル、アルデヒドまたはアルコール官能基を有する炭素原子数が6〜9の飽和した化学種を形成し、
(3)官能基がアルデヒド、酸またはエステルの場合には、追加の水素化工程で飽和アルコールを形成し、
(4)得られる飽和アルコールを脱水し、
(B)少なくとも一つのモノマーが上記オレフィン(a)であるモノマーを重合させる。
【請求項2】
上記脂肪質物質が、リシノール酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸またはリノレン酸から選択されるエステルの形の脂肪酸を含む植物油である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脂肪質物質がnが7または8であるエステルの形のリシノール酸を含む植物油である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
脂肪質物質のエステル交換反応をメタノールを用いて実行する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
エステル交換反応を塩基性媒体中、例えば水酸化ナトリウムの存在下で実行する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(A)が次の工程から成る、nが7である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法:
(1)エステル形のリシノール酸、例えばひまし油またはアルキルリシノレートを含む植物油をスチームの存在下で450〜575℃の温度で、5〜30秒間、高温分解条件下でクラッキングしてプタアルデヒドを作り、
(2)ヘプタアルデヒドを水素化してヘプタン-1-オールにし、
(3)ヘプタン-1-オールを脱水してオレフィン(a)としての1-ヘプテンにする。
【請求項7】
工程(A)が次の工程から成る、nが8である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法:
(1)リシノール酸をエステル形に含む植物油、例えばひまし油またはアルキルリシノレートを塩基性媒体中で、高温分解条件下に180〜300℃の温度でクラッキングしてオクタン-2-オンを作り、
(2)オクタン-2-オンを脱水して1-オクテンと2-オクテンとの混合物にする。
【請求項8】
工程(A)が次の工程から成る、C18:2−δ9,12形のリノール酸エステルから成る脂肪質の物質から出発する、nが6である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法:
(1)上記脂肪質の物質を加水分解してリノール酸C18:2−δ9,12を作り、
(2)上記リノール酸をオゾン分解し、
(3)オゾン分解生成物を蒸留してヘキサン酸またはヘキサンアルデヒドにし、
(4)ヘキサン酸またはヘキサンアルデヒドを水素化してヘキサン−1−オールにし、
(5)ヘキサン−1−オールを脱水して1−ヘキセンにする。
【請求項9】
工程(A)が次の工程から成る、オレイン酸をエステル形で含む植物油から出発する、nが9である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法:
(1)上記植物油をエステル交換してオレイン酸エステルの形にし、
(2)得られたエステルをオゾン分解してペラルゴンアルデヒドまたはペラルゴン酸の形にし、
(3)ペラルゴンアルデヒドまたはペラルゴン酸を水素化してノナン−1−オールの形にし、
(4)ノナン−1−オールを脱水してオレフィン(a)としての1−ノネンの形にする。
【請求項10】
重合工程(B)を溶液重合、流動層重合、スラリー重合または高圧重合で行う請求項1カのいずれか一項に方法。
【請求項11】
工程(B)の成分モノマーが式:CP2Pのコモノマ(b)(ここで、pは2〜3の整数)、好ましくはエチレンをさらに含む請求項1カ0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
コモノマ(b)の少なくとも一部が再生可能な資源に由来する請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ASTM D6866−06規格で測定した再生可能な出発原料からの炭素の量がポリマーの炭素の総重量に対して20重量%以上、好ましくは50重量%以上である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法で得られる、少なくとも一つの成分モノマーが再生可能資源から製造した、炭素原子数が6〜9のオレフィン(a)である成分モノマーの重合によって得られるポリマー。
【請求項14】
炭素原子数が2〜3である、好ましくは再生可能資源から製造されたオレフィン(b)から成る成分モノマーをさらに含む請求項13に記載のポリマー。
【請求項15】
(a)/(a)+(b)のモル比が0.0001〜0.3である請求項13または14に記載のポリマー。

【公表番号】特表2012−503063(P2012−503063A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527387(P2011−527387)
【出願日】平成21年9月22日(2009.9.22)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051785
【国際公開番号】WO2010/031984
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】