説明

再生水素化処理用触媒

【課題】
優れた脱硫活性を発現させる再生触媒を提供すること。
【解決手段】
アルミニウム酸化物を含む無機担体に、モリブデンと周期表第8〜10族金属から選択される少なくとも1種とを担持させて得られる、留出石油留分を処理するための水素化処理用触媒を再生した再生水素化処理用触媒であって、カーボン含有量が0.15質量%以上3.0質量%以下であり、X線回折スペクトルにおいて、モリブデン複合金属酸化物のピーク強度が基準ピークに対して0.60以上1.10以下であり、かつX線吸収微細構造分析の広域X線吸収微細構造スペクトルにおいて、残存硫黄ピークに由来するMo−S結合のピーク強度が基準ピークに対し0.10以上0.60以下であることを特徴とする再生水素化処理用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、留出石油留分を処理するための優れた触媒性能を有する再生水素化処理用触媒にかかるものである。
【背景技術】
【0002】
原油には含硫黄化合物、含窒素化合物、含酸素化合物等が不純物として含まれ、原油から蒸留等の工程を経て得られる石油製品類に関して、各留分を水素の存在下に水素化活性を有する触媒に接触せしめる水素化処理と呼ばれる工程により、これら不純物の含有量を低減することが行われている。特に含硫黄化合物の含有量を低減する脱硫がよく知られている。最近は環境負荷低減の観点から、石油製品中の含硫黄化合物をはじめとする前記不純物の含有量に対する規制、低減の要求が一層厳しくなっており、所謂「サルファー・フリー」の石油製品が多く生産されている。
【0003】
前記石油類の水素化処理に使用する水素化処理用触媒は、一定の期間使用されるとコークや硫黄分の沈着等により活性が低下することから、交換が行われる。特に上記「サルファー・フリー」が求められるようになり、灯油、軽油、減圧軽油といった留分の水素化処理設備において、高い水素化処理能力が求められる結果、触媒交換頻度が増大し、結果として触媒コストの上昇や触媒廃棄量の増加をもたらしている。
【0004】
この対策として、これらの設備においては使用済みの水素化処理用触媒を再生処理した再生触媒の使用が一部行われている(例えば、特許文献1、2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52−68890号公報
【特許文献2】特開平5−123586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
再生触媒の使用に当って、水素化処理と再生処理とを複数回繰り返しても水素化処理用触媒の活性を維持することができれば、再生した水素化処理用触媒(以下、「再生水素化処理用触媒」又は単に「再生触媒」という。)の使用のメリットは一層大きなものとなる。しかし、使用済みの水素化処理用触媒(以下、「使用済み水素化処理用触媒」又は単に「使用済み触媒」という。)の再生処理において、水素化処理用触媒の活性低下の原因の一つであるコーク沈着等の観点からは活性を回復させることができても、再生処理自体が触媒の活性を低下させてしまうことがある。また、触媒の再生前の使用履歴、再生処理方法等によって再生後の触媒活性は異なるため、再生触媒、特に複数回再生後の再生触媒は安定して充分な活性を有するとは限らない。また、使用済み触媒の履歴等によって、再生処理の条件を選択することが必要な場合もある。そして、再生処理した触媒を水素化処理設備に充填し、水素化処理運転を開始した後にその活性が低いことが判明した場合には、原料油の処理速度の低減等が必要となり、大きな問題となる。
【0007】
本発明は上記課題を解決させるためのものであり、優れた脱硫活性を発現させる再生触媒、及びこれを用いた石油製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、アルミニウム酸化物を含む無機担体に、モリブデンと周期表第8〜10族金属から選択される少なくとも1種とを担持させて得られる、留出石油留分を処理するための水素化処理用触媒を再生した再生水素化処理用触媒であって、カーボン含有量が0.15質量%以上3.0質量%以下であり、X線回折スペクトルにおいて、モリブデン複合金属酸化物のピーク強度が基準ピークに対して0.60以上1.10以下であり、かつX線吸収微細構造分析(XAFS、X−ray Absorption Fine Structure)の広域X線吸収微細構造(EXAFS、Extended X−ray Absorption Fine Structure)スペクトルにおいて、残存硫黄ピークに由来するMo−S結合のピーク強度が基準ピークに対し0.10以上0.60以下であることを特徴とする再生水素化処理用触媒、及び、アルミニウム酸化物を含む無機担体に、モリブデンと周期表第8〜10族金属から選択される少なくとも1種とを担持させて得られる、留出石油留分を処理するための水素化処理用触媒を再生した再生水素化処理用触媒であって、カーボン含有量が0.15質量%以上3.0質量%以下であり、X線回折スペクトルにおいて、モリブデン複合金属酸化物のピーク強度が基準ピークに対して0.60以上1.10以下であり、かつX線吸収微細構造分析のX線吸収端構造(XANES、X−ray Absoption Near−Edge Structure)スペクトルにおいて、MoOの割合が77%以上99%以下であることを特徴とする再生水素化処理用触媒を提供する。
【0009】
本発明はまた、上記本発明の再生水素化処理用触媒を用いて石油留分の水素化処理を行うことを特徴とする石油製品の製造方法を提供する。
【0010】
この石油製品の製造方法において、石油留分の水素化処理条件は、水素分圧3〜13MPa、LHSV0.05〜5h−1、反応温度200℃〜410℃、水素/油比100〜8000SCF/BBL、原料油の蒸留性状が130℃以上700℃以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、石油製品の製造において充分な活性を有し且つ安価な再生触媒を用いた実用性の高い製造プロセスを実現することができるという効果を奏し、コスト削減、廃棄物排出量の低減、留出石油留分の水素化処理の効率化等の点で非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】複合酸化物の有無の判定方法を説明する図である。
【図2】XAFS測定方法を説明する図である。
【図3】Mo−S結合強度の判定方法を説明する図である。
【図4】MoO割合の判定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
(水素化処理用触媒)
本発明の再生水素化処理用触媒に対応する未使用の水素化処理用触媒(以下、「未使用触媒」という。)は、周期表第8〜10族金属から選択される少なくとも1種及びモリブデン(以下、これらを総称して「活性金属」ともいう。)を含有する。前記周期表第8〜10族金属としては、鉄、コバルト、ニッケルが好ましく、コバルト、ニッケルがより好ましく、コバルトが特に好ましい。周期表第8〜10族金属及びモリブデンはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの金属の組み合わせとして、具体的にはモリブデン−コバルト、モリブデン−ニッケル、モリブデン−コバルト−ニッケルなどが好ましく用いられる。なお、ここで周期表とは、国際純正・応用化学連合(IUPAC)により規定された長周期型の周期表をいう。
【0015】
上記未使用触媒は、上記活性金属がアルミニウム酸化物を含む無機担体に担持されたものである。アルミニウム酸化物を含む無機担体の好ましい例としては、アルミナ、アルミナ−シリカ、アルミナ−ボリア、アルミナ−チタニア、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−マグネシア、アルミナ−シリカ−ジルコニア、アルミナ−シリカ−チタニア、あるいは各種ゼオライト、セビオライト、モンモリロナイト等の各種粘土鉱物などの多孔性無機化合物をアルミナに添加した担体などを挙げることができ、中でもアルミナが特に好ましい。
【0016】
上記未使用触媒は、アルミニウム酸化物を含む無機担体に、触媒の全質量を基準として、モリブデンを酸化物として10〜30質量%と、周期表第8〜10族金属から選択される少なくとも1種(例えばコバルト及び/又はニッケル)を酸化物として1〜7質量%と、を担持させて得られる触媒であることが好ましい。
【0017】
前記活性金属を前記無機担体に担持する際に用いる活性金属種の前駆体は限定されないが、該金属の無機塩、有機金属化合物等が使用され、水溶性の無機塩が好ましく使用される。担持工程においては、これら活性金属前駆体の溶液、好ましくは水溶液を用いて担持を行うことが好ましい。担持操作としては、例えば、浸漬法、含浸法、共沈法等の公知の方法が好ましく採用される。
【0018】
活性金属前駆体が担持された担体は、乾燥後、好ましくは酸素の存在下に焼成され、活性金属種は一旦酸化物とされることが好ましい。さらに留出石油留分の水素化処理を行う前に、予備硫化と呼ばれる硫化処理により、活性金属を硫化物とすることが好ましく行われる。
【0019】
(水素化処理工程)
留出石油留分の水素化処理工程においては、水素化処理反応の前に、当該設備に充填された触媒を、予備硫化と呼ばれる硫黄化合物による触媒の処理により活性金属種を金属硫化物とすることが好ましい。
【0020】
予備硫化の条件としては特に限定されないが、留出石油留分の水素化処理に使用する原料油に硫黄化合物を添加し、これを温度200〜380℃、LHSV 1〜2h−1、圧力は水素化処理運転時と同一、処理時間48時間以上の条件にて、前記再生触媒に連続的に接触せしめることが好ましい。前記原料油に添加する硫黄化合物としては限定されないが、ジメチルジスルフィド(DMDS)、硫化水素等が好ましく、これらを原料油に対して原料油の質量基準で1質量%程度添加することが好ましい。
【0021】
留出石油留分の水素化処理工程における運転条件は特に限定されず、触媒の活性金属種が硫化物である状態を維持する目的で、DMDS等の硫黄化合物を原料油に少量添加してもよいが、通常は原料油中に既に含有される硫黄化合物により硫化物である状態を維持することが可能であるので、硫黄化合物は特に添加しないことが好ましい。
【0022】
水素化処理工程における反応器入口における水素分圧は好ましくは3〜13MPa、より好ましくは3.5〜12MPa、特に好ましくは4〜11MPaである。水素分圧が3MPa未満の場合は触媒上のコーク生成が激しくなり触媒寿命が短くなる傾向にある。一方、水素分圧が13MPaを超える場合は反応器や周辺機器等の建設費が上昇し、経済性が失われる懸念がある。
【0023】
水素化処理工程におけるLHSVは、好ましくは0.05〜5h−1、より好ましくは0.1〜4.5h−1、特に好ましくは0.2〜4h−1の範囲で行うことができる。LHSVが0.05h−1未満である場合には、反応器の建設費が過大となり経済性が失われる懸念がある。一方、LHSVが5h−1を超える場合には原料油の水素化処理が十分に達成されない懸念がある。
【0024】
水素化処理工程における水素化反応温度は、好ましくは200℃〜410℃、より好ましくは220℃〜400℃、特に好ましくは250℃〜395℃である。反応温度が200℃を下回る場合には、原料油の水素化処理が十分に達成されない傾向にある。一方、反応温度が410℃を上回る場合には、副生成物であるガス分の発生が増加するため、目的とする精製油の収率が低下することとなり望ましくない。
【0025】
前記水素化処理工程における水素/油比は、好ましくは100〜8000SCF/BBL、より好ましくは120〜7000SCF/BBL、特に好ましくは150〜6000SCF/BBLの範囲で行うことができる。水素/油比が100SCF/BBL未満の場合には、リアクター出口での触媒上のコーク生成が進行し、触媒寿命が短くなる傾向にある。一方、水素/油比が8000SCF/BBLを超える場合には、リサイクルコンプレッサーの建設費が過大になり、経済性が失われる懸念がある。
【0026】
前記水素化処理工程における反応形式は特に限定されないが、通常は、固定床、移動床等の種々のプロセスから選ぶことができるが、固定床が好ましい。また反応器は塔状であることが好ましい。
【0027】
留出石油留分の水素化処理に供される原料油としては、蒸留試験による留出温度が好ましくは130〜700℃、さらに好ましくは140〜680℃、特に好ましくは150〜660℃の範囲のものが使用される。留出温度が130℃を下回る原料油を用いた場合には水素化処理反応が気相での反応となり、上記の触媒では性能が充分に発揮されない傾向にある。一方、留出温度が700℃を上回る原料油を用いた場合には、原料油中に含まれる重金属などの触媒に対する被毒物の含有量が大きくなり、上記触媒の寿命が大きく低下する。原料油として用いる留出石油留分のその他の性状としては特に限定されないが、代表的な性状としては、15℃における密度が0.8200〜0.9700g/cm、硫黄含有量1.0〜4.0質量%である。
【0028】
硫黄含有量とは、JIS K 2541―1992に規定する「原油及び石油製品―硫黄分試験方法」の「6.放射線式励起法」に準拠して測定される硫黄含有量を意味する。また、蒸留試験とは、JIS K 2254に規定する「石油製品―蒸留試験方法」の「6.減圧法蒸留試験方法」に準拠して行われるものを意味する。15℃における密度とは、JIS K2249に規定する「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」の「5.振動式密度試験方法」に準拠して行われるものを意味する。
【0029】
(再生処理工程)
再生触媒を製造する際に、再生処理を行う設備は特に限定されないが、留出石油留分の水素化処理設備とは異なる設備で行われることが好ましい。すなわち、留出石油留分の水素化処理設備の反応器に触媒を充填したままの状態で再生処理を行うのではなく、反応器より触媒を抜き出し、抜き出された触媒を再生処理のための設備に移動させて、該設備により再生処理を行うことが好ましい。
【0030】
使用済み触媒の再生処理を行うための形態は限定されないが、使用済み触媒から微粉化した触媒、場合により触媒以外の充填材等を篩い分けにより除去する工程、使用済み触媒に付着した油分を除去する工程(脱油工程)、使用済み触媒に沈着したコーク、硫黄分等を除去する工程(再生工程)からこの順に構成されるものであることが好ましい。
【0031】
このうち、脱油工程には、酸素が実質的に存在しない雰囲気、例えば窒素雰囲気下に、使用済み触媒を200〜400℃程度の温度に加熱することにより油分を揮散せしめる方法などが好ましく採用される。また、脱油工程は、軽質の炭化水素類にて油分を洗浄する方法、あるいはスチーミングによる油分の除去等の方法によるものであってもよい。
【0032】
前記再生工程には、分子状酸素が存在する雰囲気下、例えば空気中、特には空気流中にて使用済み触媒を250〜700℃、好ましくは320〜550℃、さらに好ましくは330〜450℃、特に好ましくは340〜400℃の温度に加熱することにより、沈着したコーク、硫黄分等を酸化して除去する方法が好ましく採用される。加熱温度が前記下限温度を下回る場合には、コーク、硫黄分等の触媒活性を低下せしめた物質の除去が効率的に進行しない、モリブデン硫化物のMo−S結合強度の減少が小さい、モリブデン酸化物の割合が少ない等の傾向にある。一方、加熱温度が前記上限温度を超える場合には、触媒中の活性金属が複合金属酸化物を形成する、凝集を起こす等して、得られる再生触媒の活性が低下する傾向にある。
【0033】
さらに、前記再生工程における温度は、上記の温度範囲であることに加え、下記のようにして求められる所定の温度範囲であることが好ましい。
すなわち、使用済み水素化処理用触媒を示差熱分析し、100℃以上600℃以下の測定温度領域における示差熱量を起電力の差に換算した値を温度で2回微分した場合の最小の極値及び2番目に小さい極値のうち、低温側の極値に対応する温度をT1、高温側の極値に対応する温度をT2としたときに、T1−30℃以上T2+30℃以下の温度範囲であると好ましい。再生処理の温度を上記所定の温度範囲とすることにより、使用済みの触媒で硫化物状態の活性金属を酸化物の状態に戻すことが容易になるとともに、触媒に堆積したコークが完全に燃焼して除去されてしまうことによる再生触媒の活性の低下をより高度に防止することができる。
【0034】
さらに、上記温度範囲の下限は、好ましくはT1−20℃以上、特に好ましくはT1−10℃以上であり、上記温度範囲の上限は、好ましくはT2+20℃以下であり、特に好ましくはT2+10℃以下である。
【0035】
前記再生処理の時間は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは2時間以上、さらに好ましくは2.5時間以上、特に好ましくは3時間以上である。処理時間が0.5時間未満の場合には、コーク、硫黄分等の触媒活性を低下せしめた物質の除去が効率的に進行しない傾向にある。
【0036】
(再生触媒)
前記再生工程において得られた再生触媒は、その中に含まれる残留カーボン量が、再生触媒の質量基準で、下限は好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.4質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、上限は好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以下である。0.15質量%を下回ると、再生工程における熱履歴を受けて活性金属の凝集等が起こり、再生触媒の活性が低下する傾向にある。一方、3.0質量%を超える場合には、カーボンが触媒の活性点を塞いでしまうことにより再生触媒の活性が低下する傾向にある。なお、本明細書中において「残留カーボン」とは、使用済みの水素化処理用触媒を再生処理した後に該再生触媒中に残留するカーボン(コーク)をいい、再生水素化処理用触媒中の残留カーボン量は、JIS M 8819に規定する「石炭類及びコークス類−機器分析装置による元素分析方法」に準拠して測定を行う。
【0037】
また、再生触媒についてX線回折分析を実施することによって得られるスペクトルにおいて、周期表第8〜10族金属から選択される少なくとも1種及びモリブデンを含むモリブデン複合金属酸化物に由来するピーク強度が基準ピークに対し下限は0.60以上、さらに好ましくは0.70以上、特に好ましくは0.75以上であり、上限は好ましくは1.10以下、さらに好ましくは0.90以下、特に好ましくは0.85以下である。0.60未満の場合、再生触媒の酸化が不十分となって再生触媒の活性が低下し、一方、1.10を越える場合、モリブデン複合酸化物の凝集が起こり再生触媒の活性が低下するため好ましくない。
【0038】
さらに、再生触媒についてX線吸収微細構造分析を実施することによって得られるスペクトルの広域X線吸収微細構造領域から得られる動径分布曲線において、残存硫黄由来のMo−S結合強度が基準ピークに対して、下限は0.10以上、好ましくは0.12以上、さらに好ましくは0.15以上であり、上限は0.60以下、好ましくは0.50以下である。0.10未満の場合は、モリブデンの酸化物が構造変化を起こしてしまい再生触媒の活性が低下し、0.60を超える場合は、モリブデンの硫黄化合物の凝集が起こり再生触媒の活性が低下するので好ましくない。
【0039】
また、再生触媒についてX線吸収微細構造分析を実施しX線吸収端構造領域から得られるスペクトルを解析して得られるMoOの割合が、下限は77%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上であり、上限は99%以下、好ましくは95%以下である。77%未満の場合、モリブデンの硫黄化合物の凝集が起きて再生触媒の活性が低下し、99%を超えた場合、モリブデンの酸化物が構造変化を起こして再生触媒の活性が低下するので好ましくない。
【0040】
(再生触媒の評価方法)
以下、図1〜4に基づいて再生触媒の評価方法について説明する。
図1はある試料についてX線回折(XRD)分析を行った結果である。
このX線回折パターンにおいて前記再生工程で得られた当該触媒に含まれる活性金属種から想定されるモリブデン複合金属酸化物に帰属される2θ=26.5±2°のX線回折(XRD)ピークに着目し、このピーク強度(CPS:Counts Per Secound)の基準ピーク2θ=66.8±2°に対する比から前記複合金属酸化物の有無の判定を行う。
当該ピークの有無の判定は以下の基準により行うことが好ましい。すなわち、再生触媒のXRDパターンから2θ=13から16°の範囲の最小強度点Iとし、2θ=69から73°の範囲の最小強度点IIとしたときの2点を結んだ直線をベースラインとし、基準ピークとして2θ=66.8±2°にあらわれるAlの最大強度点をHaとし、複合金属酸化物由来のピーク2θ=26.5±2°の最大強度点をHmとしたときに、Hm/Haの値が、モリブデン複合金属酸化物の基準ピークに対するピーク強度である。
【0041】
XRD分析の典型的な条件は以下の通りである。
X線源:CuKα
発散スリット:1/2゜
受光スリット:0.15mm
散乱スリット:1/2゜
2θ:10〜90゜
ステップ幅:0.02゜
管電圧:50kV
管電流:200mA
モノクロメーター使用
走査モード:連続走査
走査速度:1°/分
【0042】
図2はある試料についてX線吸収微細構造分析(XAFS、X−ray Absorption Fine Structure)を行った結果である。
このXAFSスペクトルにおいて前記再生工程において得られた当該触媒の広域X線吸収微細構造(EXAFS、Extended X−ray Absorption Fine Structure)領域は、照射X線エネルギーに対してX線吸収率が急激に変化する領域(吸収端)よりも高エネルギー側の領域をいい、この領域をフーリエ変換することにより、図3に示すEXAFS動径分布曲線が得られる。このEXAFS動径分布曲線より、測定対象原子の周囲の構造に関する情報を得ることができる。
XAFS分析は、電子加速器で発生する放射光に含まれるX線、あるいはこれに相当するX線を、エネルギーを変化させて分析対象物質に照射し、該物質のX線吸収率をX線エネルギーに対してプロットした吸収スペクトルにより該物質の構造を分析する手法である。
【0043】
図3に示すEXAFS動径分布曲線おいては、再生触媒に含まれる活性金属のうちモリブデン(Mo K吸収端)に着目して、XAFS測定を行う。取得したスペクトルのEXAFS領域についてフーリエ変換を行って得た動径分布曲線において、残存硫黄由来のモリブデン原子−硫黄原子結合に帰属される原子間距離0.20nm±0.01のピークの強度(Mo−S結合強度)に着目し、このピーク強度の基準ピーク原子間距離0.13nm±0.01に対する比からMo−Sの結合強度の判定を行う。当該ピークの判定は以下の基準により行うことが好ましい。すなわちXAFS測定から得られた再生水素化処理用触媒のスペクトルをXAFS解析ソフトREX2000(リガク社製)でEXAFS領域を抽出し、フーリエ変換することでEXAFS動径分布曲線が得られる。
このEXAFS動径分布曲線において残留硫黄分に起因するMo−Sの結合由来のピークを原子間距離0.20nm±0.01の最大強度点Hsとし、基準ピークをMo−Oの結合に由来する原子間距離0.13nm±0.01の最大強度点Hoとしたときに、Hs/Hoの値が、Mo−S結合の基準ピークに対するピーク強度である。
【0044】
なお、当該XAFS分析を実施して取得したスペクトルの広域X線吸収微細構造領域から得た動径分布曲線におけるピークの強度を、そのピーク高さとする。また、ピーク高さを求める際のベースラインの取り方等、データ解析の詳細については、「X線吸収分光法 ―XAFSとその応用― 太田俊明編、アイピーシー発行(2002)、57〜61ページ」に記載されている方法に従ってXAFS解析統合ソフトウェアREX2000(リガク)を用い解析を行った。
【0045】
本発明の再生触媒におけるXAFS分析は、以下の方法により実施される。
X線源:連続X線
分光結晶:Si(311)
ビームサイズ:1mm×2mm
検出器:電離箱
測定雰囲気:大気
Dwell time:1sec
測定範囲:Mo K吸収端(19974.0〜20074.0eV)
データ解析(フーリエ変換)プログラム:REX2000(リガク製)
【0046】
図2のXAFSスペクトルにおいて前記再生工程において得られた再生触媒のX線吸収端構造(XANES、X−ray Absoption Near−Edge Structure)領域は、照射X線エネルギーに対してX線吸収率が急激に変化する領域(吸収端)をいい、この領域で得られるスペクトルを解析することにより図4に示すXANESスペクトルが得られる。このXANESスペクトルより、測定対象原子の化学状態に関する情報を得ることができる。
【0047】
図4に示すXANESスペクトルにおいては、再生触媒に含まれる活性金属のモリブデン(Mo K吸収端)に着目して、XAFS測定を行う。取得したXANES領域スペクトルにおいては、当該同一条件で測定した基準試料MoO及びMoSを用いパターンフィッティングすることで、MoOの割合を判定する。当該スペクトルの判定は以下の基準により行うことが好ましい。すなわちXAFS測定から得られた再生水素化処理用触媒のスペクトルをXAFS解析ソフトREX2000(リガク社製)でXANESスペクトルを抽出し、再生触媒と同一条件で測定したMoO及びMoSを用い上記解析ソフトのパターンフィティング範囲を19990eVから20050eVとしたときに、MoO及びMoSの合計に対するMoOの割合がMoOの割合である。
【0048】
なお、当該XAFS分析を実施して取得したスペクトルの解析はXAFS解析統合ソフトウェアREX2000(リガク)を用い、モリブデン酸化物の割合を算出する際のベースラインの取り方等、データ解析の詳細については、「X線吸収分光法 ―XAFSとその応用― 太田俊明編、アイピーシー発行(2002)、78〜79ページ」に記載されている方法及びXAFS解析統合ソフトウェアREX2000(リガク)取り扱い説明書51〜59ページに従ってXAFS解析統合ソフトウェアREX2000(リガク)を用い解析を行った。
【0049】
本発明の再生触媒におけるXAFS分析は、上記の分析条件と同様のためここでは省略する。
【0050】
未使用の触媒(新触媒)の活性はその製造者、製造単位等によりそれぞれ異なるため、水素化処理用触媒を使用した後再生処理して得られる再生触媒の活性は、相当する未使用の触媒の活性基準での相対的な活性により評価することが妥当と考えられる。そこで、下記の式により定義される比活性により再生触媒の活性を評価する。
比活性=再生触媒の脱硫速度定数/未使用の触媒の脱硫速度定数
【0051】
(再生触媒の使用法)
本発明の再生触媒は、上述の留出石油留分の水素化処理工程の触媒として単独で使用してもよく、未使用触媒と積層して使用してもよい。未使用触媒と積層して使用する場合、再生触媒の割合は特に限定されるものではないが、触媒廃棄量の削減、触媒交換時における触媒の分離し易さ等の観点で未使用触媒100に対して80以上(質量比)が好ましく、120以上(質量比)がより好ましい。
【実施例】
【0052】
次に実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0053】
[実施例1]
(再生触媒)
活性金属としてモリブデン及びコバルトをアルミナ担体に担持した触媒であって、表1記載の通り、灯油の水素化処理設備において2年間使用された使用済み水素化処理用触媒を用意した。この使用済み水素化処理用触媒を5mg白金製パンに量りとり、示差熱分析装置((株)リガク社製、Termo Plus2 シリーズ/TG8110)にセットし、空気流量100ml/分で試料を室温から700℃まで10℃/分で昇温して示差熱分析を行った。次に示差熱分析結果から上述の方法でT1、T2を算出したところ、T1=250℃、T2=400℃であることが分かった。そこで、使用済み水素化処理用触媒を表1に記載の通り、350℃(T1+100℃、T2−50℃)で4時間再生処理し、再生触媒1を得た。
【0054】
(再生触媒の残留カーボンの分析)
再生触媒1について、残留カーボン量の測定を行った。分析操作の詳細は上述の通りであり、結果を表1に示す。
【0055】
(再生触媒のXRD分析)
再生触媒1を少量粉砕し、XRD分析を行った。分析操作の詳細は上述の通りである。分析の結果、活性金属であるモリブデンとコバルトからなる複合酸化物であるCoMoOに帰属される2θ=約26.5°の回折ピーク強度(Hm)の、アルミナに帰属される2θ=約66.8°回折ピーク強度(Ha)に対する比を算出した結果を表1に示す。
【0056】
(再生触媒のXAFS分析によるEXAFS領域の分析)
再生触媒1及び再生触媒1に対応した使用済み触媒についてそれぞれ少量を粉砕した後、打錠成形してペレット状とし、XAFS分析を行った。分析手順の詳細は上述の通りである。得られた動径分布曲線からそれぞれHs及びHoを求め、ピーク強度比(Hs/Ho)を算出した結果を表1に示す。
【0057】
(再生触媒のXAFS分析によるXANES領域の分析)
再生触媒1と再生触媒1に対応した未使用の触媒及び使用済み触媒についてそれぞれ少量を粉砕した後、打錠成形してペレット状とし、XAFS分析を行った。分析手順の詳細は上述の通りである。再生触媒1で得られた吸収端スペクトルからMoO及びMoSのスペクトルを合成しMoOの割合を算出した結果を表1に示す。
【0058】
(水素化処理反応)
固定床連続流通式反応装置に、前記にて再生処理を行った再生触媒1を充填し、触媒の予備硫化を行った。表1記載の性状を有する灯油相当の留分に、該留分の質量基準で1質量%のDMDSを添加し、これを48時間前記触媒に対して連続的に供給した。そしてその後、表1記載の性状を有する灯油相当の留分を原料油として、表1記載の条件にて水素化処理反応を行った。生成油中の硫黄分含有量から、脱硫速度定数を求めた。また、再生触媒1に対応する未使用の触媒を用いて同様の反応を行って脱硫速度定数を求め、これらから再生触媒1の比活性を算出した。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例2]
(再生触媒)
活性金属としてモリブデン及びコバルトをアルミナ担体に担持した触媒であって、表1記載の通り、軽油の水素化処理設備において2年間使用された使用済み水素化処理用触媒を用意し、実施例1と同様に示差熱分析を行いT1、T2を算出したところ、T1=260℃、T2=410℃であった。そこで、使用済み水素化処理用触媒を表1に記載の通り、300℃(T1+40℃、T2−110℃)で4時間再生処理し、再生触媒2を得た。
【0060】
(再生触媒の残留カーボンの分析)
再生触媒2について、残留カーボン量の測定を行った。分析操作の詳細は上述の通りであり、結果を表1に示す。
【0061】
(再生触媒のXRD分析)
再生触媒2を少量粉砕し、XRD分析を行った。分析操作の詳細は上述の通りである。分析の結果、活性金属であるモリブデンとコバルトからなる複合酸化物であるCoMoOに帰属される2θ=約26.5°の回折ピーク強度(Hm)の、アルミナに帰属される2θ=約66.8°回折ピーク強度(Ha)に対する比を算出した結果を表1に示す。
【0062】
(再生触媒のXAFS分析によるEXAFS領域の分析)
再生触媒1及び再生触媒1に対応した使用済み触媒についてそれぞれ少量を粉砕した後、打錠成形してペレット状とし、XAFS分析を行った。分析手順の詳細は上述の通りである。得られた動径分布曲線からそれぞれHs及びHoを求め、ピーク強度比(Hs/Ho)を算出した結果を表1に示す。
【0063】
(再生触媒のXAFS分析によるXANES領域の分析)
再生触媒2と再生触媒2に対応した未使用の触媒及び使用済み触媒についてそれぞれ少量を粉砕した後、打錠成形してペレット状とし、XAFS分析を行った。分析手順の詳細は上述の通りである。再生触媒2で得られた吸収端スペクトルからMoO及びMoSのスペクトルを合成しMoOの割合を算出した結果を表1に示す。
【0064】
(水素化処理反応)
原料として表1記載の性状を有する軽油相当の留分を用い、表1記載の条件とした以外は実施例1同様の操作により、水素化処理反応を行った。比活性の結果を表1に示す。
【0065】
[実施例3]
(再生触媒)
活性金属としてモリブデン及びコバルトをアルミナ担体に担持した触媒であって、表1記載の通り、減圧軽油の水素化処理設備において1年間使用された使用済み水素化処理用触媒を用意し、実施例1と同様に示差熱分析を行いT1、T2を算出したところ、T1=310℃、T2=460℃であった。そこで、使用済み水素化処理用触媒を表1に記載の通り、450℃(T1+140℃、T2−10℃)で0.5時間再生処理し、再生触媒3を得た。
【0066】
(再生触媒の残留カーボンの分析)
再生触媒3について、残留カーボン量の測定を行った。分析操作の詳細は上述の通りであり、結果を表1に示す。
【0067】
(再生触媒のXRD分析)
再生触媒3を少量粉砕し、XRD分析を行った。分析操作の詳細は上述の通りである。分析の結果、活性金属であるモリブデンとコバルトからなる複合酸化物であるCoMoOに帰属される2θ=約26.5°の回折ピーク強度(Hm)の、アルミナに帰属される2θ=約66.8°回折ピーク強度(Ha)に対する比を算出した結果を表1に示す。
【0068】
(再生触媒のXAFS分析によるEXAFS領域の分析)
再生触媒3及び再生触媒3に対応した使用済み触媒についてそれぞれ少量を粉砕した後、打錠成形してペレット状とし、XAFS分析を行った。分析手順の詳細は上述の通りである。得られた動径分布曲線からそれぞれHs及びHoを求め、ピーク強度比(Hs/Ho)を算出した結果を表1に示す。
【0069】
(再生触媒のXAFS分析によるXANES領域の分析)
再生触媒3と再生触媒3に対応した未使用の触媒及び使用済み触媒についてそれぞれ少量を粉砕した後、打錠成形してペレット状とし、XAFS分析を行った。分析手順の詳細は上述の通りである。再生触媒3で得られた吸収端スペクトルからMoO及びMoSのスペクトルを合成しMoOの割合を算出した結果を表1に示す。
【0070】
(水素化処理反応)
原料として表1記載の性状を有する減圧軽油相当の留分を用い、表1記載の条件とした以外は実施例1同様の操作により、水素化処理反応を行った。比活性の結果を表1に示す。
【0071】
[実施例4]
(再生触媒)
活性金属としてモリブデン及びコバルトをアルミナ担体に担持した触媒であって、表1記載の通り、軽油の水素化処理設備において1年間使用された使用済み水素化処理用触媒を用意し、実施例1と同様に示差熱分析を行いT1、T2を算出したところ、T1=360℃、T2=390℃であった。そこで、使用済み水素化処理用触媒を表1に記載の通り、400℃(T1+40℃、T2+10℃)で4時間再生処理し、再生触媒4を得た。
【0072】
(再生触媒の残留カーボンの分析)
再生触媒4について、残留カーボン量の測定を行った。分析操作の詳細は上述の通りであり、結果を表1に示す。
【0073】
(再生触媒のXRD分析)
再生触媒4を少量粉砕し、XRD分析を行った。分析操作の詳細は上述の通りである。分析の結果、活性金属であるモリブデンとコバルトからなる複合酸化物であるCoMoOに帰属される2θ=約26.5°の回折ピーク強度(Hm)の、アルミナに帰属される2θ=約66.8°回折ピーク強度(Ha)に対する比を算出した結果を表1に示す。
【0074】
(再生触媒のXAFS分析によるEXAFS領域の分析)
再生触媒4及び再生触媒4に対応した使用済み触媒についてそれぞれ少量を粉砕した後、打錠成形してペレット状とし、XAFS分析を行った。分析手順の詳細は上述の通りである。得られた動径分布曲線からそれぞれHs及びHoを求め、ピーク強度比(Hs/Ho)を算出した結果を表1に示す。
【0075】
(再生触媒のXAFS分析によるXANES領域の分析)
再生触媒4と再生触媒4に対応した未使用の触媒及び使用済み触媒についてそれぞれ少量を粉砕した後、打錠成形してペレット状とし、XAFS分析を行った。分析手順の詳細は上述の通りである。再生触媒4で得られた吸収端スペクトルからMoO及びMoSのスペクトルを合成しMoOの割合を算出した結果を表1に示す。
【0076】
(水素化処理反応)
原料として表1記載の性状を有する軽油相当の留分を用い、表1記載の条件とした以外は実施例1同様の操作により、水素化処理反応を行った。比活性の結果を表1に示す。
【0077】
[比較例1]
(再生触媒)
活性金属としてモリブデン及びコバルトをアルミナ担体に担持した触媒であって、表1記載の通り、灯油の水素化処理設備において2年間使用された使用済み水素化処理用触媒を用意し、実施例1と同様に示差熱分析を行いT1、T2を算出したところ、T1=250℃、T2=310℃であった。そこで、使用済み水素化処理用触媒を表1に記載の通り、350℃(T1+100℃、T2+40℃)で10時間再生処理し、再生触媒5を得た。
【0078】
(再生触媒の残留カーボンの分析)
再生触媒5について、残留カーボン量の測定を行った。分析操作の詳細は上述の通りであり、結果を表1に示す。
【0079】
(再生触媒のXRD分析)
再生触媒5を少量粉砕し、XRD分析を行った。分析操作の詳細は上述の通りである。分析の結果、活性金属であるモリブデンとコバルトからなる複合酸化物であるCoMoOに帰属される2θ=約26.5°の回折ピーク強度(Hm)の、アルミナに帰属される2θ=約66.8°回折ピーク強度(Ha)に対する比を算出した結果を表1に示す。
【0080】
(再生触媒のXAFS分析によるEXAFS領域の分析)
再生触媒5及び再生触媒5に対応した使用済み触媒についてそれぞれ少量を粉砕した後、打錠成形してペレット状とし、XAFS分析を行った。分析手順の詳細は上述の通りである。得られた動径分布曲線からそれぞれHs及びHoを求め、ピーク強度比(Hs/Ho)を算出した結果を表1に示す。
【0081】
(再生触媒のXAFS分析によるXANES領域の分析)
再生触媒5と再生触媒5に対応した未使用の触媒及び使用済み触媒についてそれぞれ少量を粉砕した後、打錠成形してペレット状とし、XAFS分析を行った。分析手順の詳細は上述の通りである。再生触媒5で得られた吸収端スペクトルからMoO及びMoSのスペクトルを合成しMoOの割合を算出した結果を表1に示す。
【0082】
(水素化処理反応)
原料として表1記載の性状を有する灯油相当の留分を用い、表1記載の条件とした以外は実施例1同様の操作により、水素化処理反応を行った。比活性の結果を表1に示す。
【0083】
[比較例2]
(再生触媒)
活性金属としてモリブデン及びコバルトをアルミナ担体に担持した触媒であって、表1記載の通り、軽油の水素化処理設備において2年間使用された使用済み水素化処理用触媒を用意し、実施例1と同様に示差熱分析を行いT1、T2を算出したところ、T1=310℃、T2=410℃であった。そこで、使用済み水素化処理用触媒を表1に記載の通り、200℃(T1−110℃、T2−210℃)で5時間再生処理し、再生触媒6を得た。
【0084】
(再生触媒の残留カーボンの分析)
再生触媒6について、残留カーボン量の測定を行った。分析操作の詳細は上述の通りであり、結果を表1に示す。
【0085】
(再生触媒のXRD分析)
再生触媒6を少量粉砕し、XRD分析を行った。分析操作の詳細は上述の通りである。分析の結果、活性金属であるモリブデンとコバルトからなる複合酸化物であるCoMoOに帰属される2θ=約26.5°の回折ピーク強度(Hm)の、アルミナに帰属される2θ=約66.8°回折ピーク強度(Ha)に対する比を算出した結果を表1に示す。
【0086】
(再生触媒のXAFS分析によるEXAFS領域の分析)
再生触媒6及び再生触媒6に対応した使用済み触媒についてそれぞれ少量を粉砕した後、打錠成形してペレット状とし、XAFS分析を行った。分析手順の詳細は上述の通りである。得られた動径分布曲線からそれぞれHs及びHoを求め、ピーク強度比(Hs/Ho)を算出した結果を表1に示す。
【0087】
(再生触媒のXAFS分析によるXANES領域の分析)
再生触媒6と再生触媒6に対応した未使用の触媒及び使用済み触媒についてそれぞれ少量を粉砕した後、打錠成形してペレット状とし、XAFS分析を行った。分析手順の詳細は上述の通りである。再生触媒6で得られた吸収端スペクトルからMoO及びMoSのスペクトルを合成しMoOの割合を算出した結果を表1に示す。
【0088】
(水素化処理反応)
原料として表1記載の性状を有する軽油相当の留分を用い、表1記載の条件とした以外は実施例1同様の操作により、水素化処理反応を行った。比活性の結果を表1に示す。
【0089】
[比較例3]
(再生触媒)
活性金属としてモリブデン及びコバルトをアルミナ担体に担持した触媒であって、表1記載の通り、減圧軽油の水素化処理設備において1年間使用された使用済み水素化処理用触媒を用意し、実施例1と同様に示差熱分析を行いT1、T2を算出したところ、T1=440℃、T2=500℃であった。そこで、使用済み水素化処理用触媒を表1に記載の通り、400℃(T1−40℃、T2−100℃)で4時間再生処理し、再生触媒7を得た。
【0090】
(再生触媒の残留カーボンの分析)
再生触媒7について、残留カーボン量の測定を行った。分析操作の詳細は上述の通りであり、結果を表1に示す。
【0091】
(再生触媒のXRD分析)
再生触媒7を少量粉砕し、XRD分析を行った。分析操作の詳細は上述の通りである。分析の結果、活性金属であるモリブデンとコバルトからなる複合酸化物であるCoMoOに帰属される2θ=約26.5°の回折ピーク強度(Hm)の、アルミナに帰属される2θ=約66.8°回折ピーク強度(Ha)に対する比を算出した結果を表1に示す。
【0092】
(再生触媒のXAFS分析によるEXAFS領域の分析)
再生触媒7及び再生触媒7に対応した使用済み触媒についてそれぞれ少量を粉砕した後、打錠成形してペレット状とし、XAFS分析を行った。分析手順の詳細は上述の通りである。得られた動径分布曲線からそれぞれHs及びHoを求め、ピーク強度比(Hs/Ho)を算出した結果を表1に示す。
【0093】
(再生触媒のXAFS分析によるXANES領域の分析)
再生触媒7と再生触媒7に対応した未使用の触媒及び使用済み触媒についてそれぞれ少量を粉砕した後、打錠成形してペレット状とし、XAFS分析を行った。分析手順の詳細は上述の通りである。再生触媒7で得られた吸収端スペクトルからMoO及びMoSのスペクトルを合成しMoOの割合を算出した結果を表1に示す。
【0094】
(水素化処理反応)
原料として表1記載の性状を有する減圧軽油相当の留分を用い、表1記載の条件とした以外は実施例1同様の操作により、水素化処理反応を行った。比活性の結果を表1に示す。
【0095】
[比較例4]
(再生触媒)
活性金属としてモリブデン及びコバルトをアルミナ担体に担持した触媒であって、表1記載の通り、軽油の水素化処理設備において1年間使用された使用済み水素化処理用触媒を用意し、実施例1と同様に示差熱分析を行いT1、T2を算出したところ、T1=310℃、T2=410℃であった。そこで、使用済み水素化処理用触媒を表1に記載の通り、500℃(T1+190℃、T2+90℃)で4時間再生処理し、再生触媒8を得た。
【0096】
(再生触媒の残留カーボンの分析)
再生触媒8について、残留カーボン量の測定を行った。分析操作の詳細は上述の通りであり、結果を表1に示す。
【0097】
(再生触媒のXRD分析)
再生触媒8を少量粉砕し、XRD分析を行った。分析操作の詳細は上述の通りである。分析の結果、活性金属であるモリブデンとコバルトからなる複合酸化物であるCoMoOに帰属される2θ=約26.5°の回折ピーク強度(Hm)の、アルミナに帰属される2θ=約66.8°回折ピーク強度(Ha)に対する比を算出した結果を表1に示す。
【0098】
(再生触媒のXAFS分析によるEXAFS領域の分析)
再生触媒8及び再生触媒8に対応した使用済み触媒についてそれぞれ少量を粉砕した後、打錠成形してペレット状とし、XAFS分析を行った。分析手順の詳細は上述の通りである。得られた動径分布曲線からそれぞれHs及びHoを求め、ピーク強度比(Hs/Ho)を算出した結果を表1に示す。
【0099】
(再生触媒のXAFS分析によるXANES領域の分析)
再生触媒8と再生触媒8に対応した未使用の触媒及び使用済み触媒についてそれぞれ少量を粉砕した後、打錠成形してペレット状とし、XAFS分析を行った。分析手順の詳細は上述の通りである。再生触媒8で得られた吸収端スペクトルからMoO及びMoSのスペクトルを合成しMoOの割合を算出した結果を表1に示す。
【0100】
(水素化処理反応)
原料として表1記載の性状を有する軽油相当の留分を用い、表1記載の条件とした以外は実施例1同様の操作により、水素化処理反応を行った。比活性の結果を表1に示す。
【表1】

【0101】
表1の結果から、本発明の再生触媒について再生触媒の活性について残存カーボン量、XRD分析及びXAFS分析が適用範囲内であることにより、未使用の触媒に対する相対値で約93%以上の活性が発現することが判る(実施例1〜4)。一方、比較例5〜8においては、上記分析において一項目でも適用範囲外である場合、いずれの場合も未使用の触媒に対する相対値で活性が約90%以下となり、活性低下が大きい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム酸化物を含む無機担体に、モリブデンと周期表第8〜10族金属から選択される少なくとも1種とを担持させて得られる、留出石油留分を処理するための水素化処理用触媒を再生した再生水素化処理用触媒であって、
カーボン含有量が0.15質量%以上3.0質量%以下であり、
X線回折スペクトルにおいて、モリブデン複合金属酸化物のピーク強度が基準ピークに対して0.60以上1.10以下であり、かつ
X線吸収微細構造分析の広域X線吸収微細構造スペクトルにおいて、残存硫黄ピークに由来するMo−S結合のピーク強度が基準ピークに対し0.10以上0.60以下であることを特徴とする再生水素化処理用触媒。
【請求項2】
アルミニウム酸化物を含む無機担体に、モリブデンと周期表第8〜10族金属から選択される少なくとも1種とを担持させて得られる、留出石油留分を処理するための水素化処理用触媒を再生した再生水素化処理用触媒であって、
カーボン含有量が0.15質量%以上3.0質量%以下であり、
X線回折スペクトルにおいて、モリブデン複合金属酸化物のピーク強度が基準ピークに対して0.60以上1.10以下であり、かつ
X線吸収微細構造分析のX線吸収端構造スペクトルにおいて、MoOの割合が77%以上99%以下であることを特徴とする再生水素化処理用触媒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の再生水素化処理用触媒を用いて石油留分の水素化処理を行うことを特徴とする石油製品の製造方法。
【請求項4】
前記石油留分の水素化処理条件が、水素分圧3〜13MPa、LHSV0.05〜5h−1、反応温度200℃〜410℃、水素/油比100〜8000SCF/BBL、原料油の蒸留性状が130℃以上700℃以下であることを特徴とする請求項3に記載の石油製品の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−143389(P2011−143389A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8216(P2010−8216)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(590000455)一般財団法人石油エネルギー技術センター (249)
【Fターム(参考)】