説明

再生装置および再生方法

【課題】記録媒体に記録されている記録データが傷、汚れ、ごみなどの影響で読み取れないときでも、映像データまたは音声データを短時間で再生する再生装置および再生方法を提供する。
【解決手段】映像再生装置は、ネットワークを介して外部装置と通信する通信手段と、記録媒体に記録されている記録データを読み取る読取手段と、記録媒体に読取手段が読み取れない読取不能箇所があったことを検知する検知手段と、その検知手段が読取不能箇所があったことを検知したときに、読取不能箇所から読み取れない読取不能データを補正するための補正データを通信手段によって外部装置から取得する取得手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像データまたは音声データを再生する再生装置および再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体に記録されているデジタル形式の記録データを読み取って映像データおよび音声データを再生する再生装置がある。この種の再生装置としては、DVD(Digital Versatile Disk)等の記録媒体を用い、その記録媒体から記録データを読取って映像データおよび音声データを再生する再生機能を備えたDVDプレーヤや、再生機能に加えて記録媒体に対するデジタルデータの記録機能を備えたDVDレコーダが普及している。
【0003】
従来、この種の再生装置に関し、DVD−ROMのような書き換え不能の記録媒体に記録された映像データに不具合が見つかった場合に、サーバからネットワークを通じて修正データをダウンロードし、不具合のあるデータを修正データに差し替えて映像データを再生する再生装置があった(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−129169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の再生装置は記録媒体の表面に傷があったり、汚れやごみが付着していると、記録媒体に記録されている記録データのうち、傷などが着いている箇所の記録データを読み取ることができなかった。この場合、傷や汚れが軽微なものであれば、記録データに誤り訂正符号が入っている場合はデータのエラー補正を行うことによって映像データや音声データを再生することは可能である。
【0005】
しかし、誤り訂正符号で訂正できるエラーには限度があるため、傷や汚れが記録媒体の一定区間以上で連続しているときは、エラー補正を行って映像データや音声データを再生することはできない。
【0006】
従来の記録媒体は、MD(MiniDisc)、MO(Magneto-Optical disk)といった一部の記録媒体を除き、CD(Compact Disc),DVD等の光ディスクや、HD DVD、ブルーレイディスク等の光ディスクはいずれもデータの記録面が露出しているため、傷、汚れ、ごみ等が記録面に着きやすく、それらの着いた箇所が連続することも多いため、再生装置が映像データを再生できなくなることも多い。
【0007】
このような場合、同じ記録データを記録している記録媒体を買い直すなどして入手できれば、その記録媒体を用いることによって映像データを再生できるようになるが、中には廃盤になっているなどして買い直しが困難な記録媒体もある。
【0008】
一方、近年、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)や光通信等通信インフラの普及により、本格的な通信での映像や音楽等の配信サービス環境が整備されてきている。そうした中、再生装置の中にも通信接続機能を有するものが実用化されている。
【0009】
このような再生装置を用いる場合は、映像データや音声データの再生に必要なデータをネットワークを介して取得することも可能である。しかし、ネットワークを介して取得するデータは、例えば映画の本編全体等のあくまで映像全体、楽曲全体といったコンテンツ単位であるため、データ容量が大きく、したがって、データ通信にかなりの時間を要する。例えば、HD DVDの記録媒体は記録容量が30GBもあるため、コンテンツ全体を取得する場合は、光ファイバを用いた高速光通信であってもデータ通信にかなりの時間が必要となる。
【0010】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、記録媒体に記録されている記録データが傷、汚れ、ごみなどの影響で読み取れないときでも、映像データまたは音声データを短時間で再生する再生装置および再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、ネットワークを介して外部装置と通信する通信手段と、記録媒体に記録されている記録データを読み取る読取手段と、記録媒体に読取手段が読み取れない読取不能箇所があることを検知する検知手段と、読取不能箇所があることを検知手段が検知したときに、読取不能箇所から読み取れない読取不能データを補正するための補正データを通信手段によって外部装置から取得する取得手段とを有する再生装置を特徴とする。
【0012】
また、本発明は、記録媒体に記録されている記録データを読み取れない読取不能箇所が記録媒体にあることを検知したときに、その検知された読取不能箇所から読み取れない読取不能データを補正するための補正データをネットワークを介して外部装置から取得し、その取得した補正データを用いて映像データまたは音声データを再生する再生方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、記録媒体に記録されている記録データが傷、汚れ、ごみなどの影響で読み取れないときでも、映像データまたは音声データを短時間で再生する再生装置および再生方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0015】
第1の実施の形態
(映像再生装置の構成)
本発明の実施の形態に係る映像再生装置1について図1を参照して説明する。図1は、映像再生装置1の内部構成を記録媒体203およびサーバ装置204とともに示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、映像再生装置1は、例えば光ディスク等である記録媒体203に記録されている、所定の暗号化方式で暗号化されたデジタル形式のデータ(以下「記録データ」という)を読取ることができる。
【0017】
また、映像再生装置1は記録媒体203に後述する読取不能箇所が見つかったときにインターネット202を介して外部装置としてのサーバ装置204に接続し、そのサーバ装置204から後述する補正データ21を取得することができる。
【0018】
そして、映像再生装置1は映像再生プログラム11により、補正データ21を用いて映像データS1を再生し、また、音楽再生プログラム12により音声データS2を再生する。
【0019】
映像再生装置1は、ハードディスクドライブ部3、ディスクドライブ部4およびネットワークインターフェース(I/F)部5を有し、いずれもバス2に接続されている。
【0020】
ハードディスクドライブ部3は、高速回転する磁気ディスクへの記録データの書き込みおよび磁気ディスクからの記録データの読み取りを行う。
【0021】
また、ハードディスクドライブ部3は、映像再生プログラム11および音楽再生プログラム12を記憶するともに、先読みバッファ13が設けられている。先読みバッファ13は、後述する先読み処理で読み取られた記録データを記憶するデータ記憶手段としての機能を有している。
【0022】
ディスクドライブ部4は、記録媒体203から記録データを読み取って出力し、読取手段としての機能を有している。ネットワークI/F部5は、サーバ装置204との間でインターネット202を介した通信を実行する通信手段としての機能を有している。
【0023】
また、映像再生装置1は、CPU(Central Processing Unit)6、メモリ部7、ROM8およびビデオメモリ部9を有し、いずれもバス2に接続されている。CPU6は、ROM8からメモリ部7に読み出された起動プログラムにしたがい起動され、システム初期化、システム終了などを制御する。
【0024】
ユーザ入力装置10は、例えば、キーボード、マウスなどからなり、ユーザが所望のデータを操作入力情報として入力する操作入力手段であって、例えば後述する再生ボタン10a(図2参照)としての機能を有している。
【0025】
さらに、CPU6は、映像再生プログラム11を実行して、記録媒体203やハードディスクドライブ部3の先読みバッファ13から読み出される記録データを用いて映像信号を復号し、復号される映像信号に所定の画像処理を施して映像データS1を出力する。
【0026】
また、CPU6は、音楽再生プログラム12を実行して、記録データを用いて音声信号を復号し、復号される音声信号に所定の音声処理を施して音声データS2を出力する。
【0027】
メモリ部7には、CPU6が作動する際に用いるデータやプログラムが記憶される。ROM8には、起動プログラムなどのCPU6が実行するプログラム等が記憶されている。ビデオメモリ部9には、デコード(復調)された映像信号が順次書き込まれる。
【0028】
映像再生プログラム11は、本実施の形態では、図1に示すとおり、データ読取部(データ読取モジュール)11aと、映像デコーダ(映像デコードモジュール)11bと、表示ドライバ(表示制御モジュール)11cとを有している。
【0029】
データ読取部11aは、ディスクドライブ部4による記録データの読み取り機能を実現する。このデータ読取部11aは、図2に示すように、先読み処理部14、再生指示部15、傷検知部16、正規メディア判別部17およびデータ取得部18を有している。
【0030】
先読み処理部14は、記録媒体203に記録されている記録データについての後述する先読み処理を実現する。再生指示部15は、先読みバッファ13に記憶されている記録データを用いた映像デコーダ11b、表示ドライバ11cによる映像データS1の再生処理を実現する。
【0031】
傷検知部16は記録媒体203に傷、ごみ、汚れなどが着いていることによって記録データの読み取りが行えない箇所(以下「読取不能箇所」という)があることを検知する検知手段としての機能を実現する。本実施の形態では、もともと読取不能箇所に記録され、傷、ごみ、汚れなどが着いていなければ読み取れたところ、傷、ごみ、汚れなどが着いていたために後述するエラー補正処理を行ってもディスクドライブ部4が読み取れない記録データを読取不能データとしている。
【0032】
正規メディア判別部17は記録媒体203が後述する正規メディアであるかどうかを判別する媒体判別手段としての機能を実現する。データ取得部18は傷検知部16が読取不能箇所があったことを検知したときにサーバ装置204から補正データ21を取得する取得手段としての機能を実現する。
【0033】
そして、映像デコーダ11bは暗号化されている映像信号を復号する復号化処理を行う。表示ドライバ11cは映像デコーダ11bが復号した映像信号から映像データS1を生成する。
【0034】
また、音声再生プログラム12は、本実施の形態では、図1に示すとおり、データ読取部(データ読取モジュール)12aと、音声デコーダ(音声デコードモジュール)12bと、出力(出力制御モジュール)ドライバ12cとを有している。
【0035】
データ読取部(データ読取モジュール)12aは、ディスクドライブ部4から供給される記録データの読み取り機能を実現する。音声デコーダ12bは暗号化されている音声信号を復号する復号化処理を行う。出力ドライバ12cは音声デコーダ12bが復号した音声信号から音声データS2を生成する。なお、データ読取部12aも、データ読取部11aと同様の先読み処理部、再生指示部、傷検知部、正規メディア判別部およびデータ取得部を有しているが、本実施の形態では、これらの図示を省略している。
【0036】
(サーバ装置の構成)
次に、サーバ装置204の構成について、図3、図4を参照して説明する。サーバ装置204は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)301、ROM(Read Only Memory)302、RAM(Random Access Memory)303、通信処理部304、通信制御部305およびデータ記憶部306を有している。
【0037】
そして、サーバ装置204は、CPU301がROM302に記憶されているプログラムにしたがいRAM303にデータを読み書きしながら作動し、一方、通信制御部305がCPU301の指示にしたがい通信処理部304を作動させ、これにより、映像再生装置1との間でのデータ通信が行われる。
【0038】
また、サーバ装置204は、本実施の形態では、データ記憶部306に図2に示す補正データ21が記憶されている。補正データ21は、映像再生装置1が記録媒体203に読取不能箇所があったことを検出したときに、その読取不能箇所から読み取れない読取不能データを映像再生装置1が補正するためのデータであり、後述するダウンロードdによって例えば数バイトの補正データ21aが映像再生装置1に転送される。
【0039】
(映像再生装置の動作内容)
次に、図5に示すフローチャートを参照して、映像再生装置1が記録媒体203から記録データを読み取って映像データS1を再生するときの動作手順について説明する。なお、図5は映像再生プログラム11にしたがって行われる映像データS1の再生手順を示すフローチャートである。以下の説明では、予めディスクドライブ部4のディスクトレーに記録媒体203が収納されていることを想定している。
【0040】
映像再生プログラム11は、ユーザがユーザ入力装置10に備えられている再生ボタン10aを操作したときに起動する。映像再生プログラム11では、まず、データ読取部11aが作動する。
【0041】
データ読取部11aが作動すると、まず、正規メディア判別部17が作動して、ディスクトレーに収納されている記録媒体203が正規メディアであるかどうかを判別する(S1)。ここで、正規メディアとは、ユーザが購入などして正規に取得した記録媒体を意味している。例えば、正規メディア判別部17は読み取ったデータの中に正規メディアであることを示すコード情報が含まれているか否かで、記録媒体203が正規メディアであるかどうかを判別する。
【0042】
そして、データ読取部11aでは、記録媒体203が正規メディアであると正規メディア判別部17が判別したときはS2からS10までの動作が行われるが、そうでなければ(正規メディア判別部17が正規メディアでないと判別したとき)S2からS10までの動作を行うことなく動作が終了し、映像再生プログラム11も終了する
【0043】
次に、データ読取部11aは、S2に動作を進め、先読み処理部14による先読み処理を実行する。この先読み処理は映像データS1を再生するにあたって、予め記録媒体203から記録データを読み取り、読み取った記録データを先読みバッファ13に記憶させる処理である。先読み処理部14は先読み処理で読取不能箇所がみつかった場合、その読取不能箇所の読取不能データを読み飛ばしている。
【0044】
続いてデータ読取部11aは、S3に動作を進め、傷検知部16によって先読み処理の際に読取不能箇所がみつかったか否かを判定する。読取不能箇所がみつかったときは、記録媒体203に読取不能箇所があることが検知されたとしてS7に動作を進め、そうでなければ読取不能箇所は検知されなかったとしてS4に動作を進める。
【0045】
また、データ読取部11aは、S4に動作を進めると、再生指示部15が先読みバッファ13に記憶されている記録データを用いた再生処理を指示する。この場合、映像デコーダ11b、表示ドライバ11cが再生指示部15の指示を受け作動して再生手段としての動作を行い、記録データを用いた再生処理を行い、映像データS1を出力する。
【0046】
そして、データ読取部11aでは、S4に続いてS5に進むと、先読み処理部14が記録データ判別手段としての動作を行い、先読みバッファ13に後述する再生基準量の記録データがあるか否かを判別する。データ読取部11aでは、先読みバッファ13に再生基準量のデータがあるときはS4を再び実行するが、なければS6に動作を進める。
【0047】
データ読取部11aでは、S6に動作を進めると再生終了(例えば、映像データをすべて再生した場合、ユーザが図示しない再生停止ボタンを押した場合)か否かを判定する。再生終了でなければS2に戻って上記動作を繰り返すが、再生終了であれば映像再生プログラム11が終了する。
【0048】
一方、データ読取部11aは、S3からS7に動作を進めると、先読み処理部14が記録データ判別手段としての動作を行い、先読みバッファ13に再生基準量のデータがあるか否かを判別し、その判別結果に基づき、再生指示部15が映像データS1の再生を制御する。この場合、再生指示部15は、再生基準量のデータが記憶されていると判別されたときはS8に動作を進めるが、再生基準量のデータが記憶されていないと判別されればS10に動作を進める。
【0049】
そして、データ読取部11aは、S8に動作を進めると、再生指示部15が先読みバッファ13に記憶されている記録データを用いて再生を行うように指示する。この場合、再生指示部15の指示を受けて映像デコーダ11b、表示ドライバ11cが作動して映像データS1が出力される。
【0050】
また、S10に動作が進むと、再生指示部15が映像データS1の出力を停止するように映像デコーダ11b、表示ドライバ11cに指示し、その指示を受けて映像デコーダ11b、表示ドライバ11cが映像データS1の出力を一時停止する。
【0051】
さらに、データ読取部11aは、S8またはS10に続いてS9に動作を進めると、データ取得部18が読取不能データを補正するための補正データ21のダウンロードdを行うようにネットワークI/F部5に指示して補正データ21aを取得する。
【0052】
この場合、データ取得部18は、記録媒体203で見つかった読取不能箇所の位置を特定するためのデータ(トラックやセクタの番号など)を含む記録データ取得要求をネットワークI/F部5によってサーバ装置204に送信する。
【0053】
すると、ネットワークI/F部5がサーバ装置204との間で通信処理を行って補正データ21のうち、読取不能データに対応する補正データ21a(記録媒体203の読取不能箇所から読み取れない記録データと同じ例えば数バイトのデータ)のダウンロードdを行い、データ取得部18が補正データ21aを取得する。
【0054】
また、データ取得部18は記憶制御手段としての動作を行い、サーバ装置204から取得した補正データ21を先読みバッファ13の該当箇所(読取不能データが見つからなければ記憶されていたであろう箇所)に記憶させる。データ取得部18はS9を実行するとS2に戻る。
【0055】
以上のようにすることによって、映像再生装置1は、記録媒体203に傷や汚れ等が付着していることによる読取不能箇所があっても、その読取不能箇所から読み取れない読取不能データを補正するための補正データ21をサーバ装置204から取得することができる。そのため、傷や汚れ等が付着している記録媒体203でも、映像データS1を再生でき、ユーザが傷や汚れ等の付着している記録媒体203の買い直しなどを行う必要がないようになっている。
【0056】
また、映像再生装置1は、映像データS1全体の再生に必要なデータではなく、読取不能箇所に対応した読取不能データの例えば数バイトの補正データ21aだけをダウンロードdによって取得するため、ダウンロードdに要するデータ通信量が少なくてすみ、したがって、ダウンロードdが短時間で終了するため、映像データS1全体を短時間で再生することができる。
【0057】
この場合、映像再生装置1は、映像データS1を再生するにあたって、先読み処理を行い、予め記録媒体203に記録されている記録データを読み取って一旦先読みバッファ13に記憶させ、そこから記録データを読み取って映像データS1を再生している。
【0058】
そのため、先読みバッファ13に記憶される記録データのデータ量は図6に示すようにして変化する。例えば図6(a)に示すように、記録媒体203からディスクドライブ部4による記録データの読み取りr1が行われ、読み取った記録データを先読みバッファ13に記憶させると、図6(b)に示すように、先読みバッファ13に記憶される記録データのデータ量が増えていく。
【0059】
記録データのデータ量が再生基準量V0に達すると、映像データの再生r2が開始され先読みバッファ13に記憶される記録データのデータ量がV0から減少していく。そして、先読みバッファ13のデータ量がV1(V1<V0)になった時点で再びディスクドライブ部4が記録データの読み取りr1を開始し、先読みバッファ13に再生基準量V0を越えるデータ量V2のデータが記憶された時点で再生r2が開始されて先読みバッファ13のデータ量が減少していく。
【0060】
このとき、仮に時刻t1で読取不能箇所が見つかったために補正データ21のダウンロードdを行い、そのダウンロードdが時刻t3で完了したとする。
【0061】
上述のとおり、読取不能箇所が見つかると、その読取不能箇所の読取不能データの読み飛ばしが行われるため、読み飛ばしの期間(t1からt2)は先読みバッファ13のデータ量はV3(V3>V1)のまま推移し、読み飛ばしが終了した時刻t2になるとそこからデータ量が順次増加していく。
【0062】
そして、時刻t3でダウンロードdが完了して、映像再生装置1が補正データ21aを取得し、その補正データ21aを先読みバッファ13に記憶させたことで、時刻t3で先読みバッファ13のデータ量が増加している。なお、図6(b)では、点線のグラフが読取不能箇所の見つからなかった場合、実線のグラフが読取不能箇所の見つかった場合を示している。
【0063】
このように、映像再生装置1は、先読みバッファ13を設け、映像データS1の再生前に先読み処理を行って、先読みバッファ13に再生基準量の記録データを記憶させてから映像データS1の再生を開始している。
【0064】
先読みバッファ13は読取不能箇所が見つかって読み飛ばしとダウンロードdを行うことになっても、その間に記録データを用いた再生が継続できるようにするものであるから、再生基準量は読み飛ばしおよびダウンロードdに要する時間と、再生で読み出す記録データのデータ量を考慮して設定することが望ましい。
【0065】
以上のように、映像再生装置1は、先読み処理を行うことで、読取不能箇所が見つかっても、映像データS1の連続再生を行え、直ちに再生を停止させずに済むようになっている。
【0066】
そのため、映像再生装置1は、読取不能箇所が見つかっても、補正データ21のダウンロードdに要する通信時間を待たずに映像データS1を再生でき、映像データS1をリアルタイムに再生できるようになっている。
【0067】
そして、先読みバッファ13は、再生基準量のデータを記憶できるように記憶容量が設定されている。そのため、記録媒体203に読取不能箇所が見つかり、補正データ21のダウンロードdを行うことになっても、ダウンロードdの間はここに記憶されている記録データを用いて映像データS1を再生でき、再生を停止せずに済むようになっている。したがって、映像再生装置1は、映像データS1の再生に要する時間を引き延ばさずに済むようになっている。
【0068】
さらに、映像再生装置1では、記録媒体203が正規メディアであるときにだけ記録データの読み取りおよび映像データS1の再生を実行し、正規メディアでないときにはこれらと補正データ21のダウンロードd(S9)が実行されないようにしている。そのため、例えば、ユーザが記録媒体203を不正に入手し、その記録媒体203の全体に意図的に傷や汚れをつけて、その部分の記録データをすべてダウンロードするといった不正利用ができないようになっている。
【0069】
一方、従来の記録媒体203は店頭におくことによる宣伝効果があるものの、その価格は販売店によってコントロールされるため、価格が下落しやすく、映像コンテンツの製作者側の採算がとれないことがあった。
【0070】
一方、インターネット202によるデータ配信では、不具合のある記録媒体203を修正するための回収コストはかからないし、製作者側により価格のコントロールが可能であるという利点があるものの、ユーザにとっては、映像データS1の再生に必要なデータのダウンロードを長時間かけて行わねばならない欠点があった。
【0071】
しかしながら、本実施の形態に係る映像再生装置1では、映像コンテンツの提供者と、ユーザの双方にとって有益なものとなっている。すなわち、映像再生装置1では、インターネット202を介したダウンロードdによる補正データ21の取得を行っているため、その限りで記録媒体203が不要となり、その価格下落のおそれを排除することができる。また、補正データ21のダウンロードは読取不能データに対応した例えば数バイトの補正データ21aだけであるから、ダウンロードdに要する時間が大幅に短縮され、短時間で記録データを取得できるようになっている。
【0072】
なお、上述のエラー補正処理は、例えば偶数パリティビットによる方式がある。例えば、図7(a)、(b)に示すようなビット列50があった場合において、ビット列50の最後のビットに予めエラー補正をするための補正ビット(この場合は、パリティビット)51を追加しておく。偶数パリティー方式の場合は、データのある区間が偶数のビットになるように、補正ビット51を追加する。
【0073】
こうしておくことにより、図7(a)に示すように、ビット列50の一カ所に傷52があってデータを読み取れなかった場合、残りのデータが奇数になった場合は傷52のある箇所のデータが“1”であり、偶数の場合は“0”であると判断できる。
【0074】
しかし、図7(b)に示すように、連続する傷53があった場合は、上記のようにしてエラー補正を行うことができない。このほかにも、エラー補正処理があるが、傷や汚れが連続すると、補正が出来ないことに相違はない。
【0075】
なお、記録媒体203の中で制御データ部分や、映像の初期段階の記録データの記録されている箇所に傷を入れることにより、映像全体を見えなくすることが可能である。
【0076】
第2の実施の形態
第2の実施の形態に映像再生装置1は、第1の実施の形態に係る映像再生装置1と比較して、図8に示すようにデータ読取部11aが課金処理部19を有する点で相違し、そのほかは同じ構成を有している。
【0077】
課金処理部19は、データ取得部18が読取不能データの補正データ21を取得することに対する課金処理を行う。この課金処理に対応して、サーバ装置204は課金が行われたときだけ補正データ21を提供するように、補正データ21の取得に対する課金が行われたか否かを管理する課金管理部22を有している。
【0078】
そして、第2の実施の形態に映像再生装置1は図9に示すフローチャートにそって映像データS1を再生する。図9に示すフローチャートは、図5に示すフローチャートと比較して、データ読取部11aがS8、S10に続いて、S11、S12を実行した後S9を実行する点で相違し、そのほかは同じである。
【0079】
この場合、データ読取部11aはS8またはS10に続いてS11に動作を進め、課金処理部19が補正データ21をダウンロードdによって取得するための課金処理を行うか否かを判定する。ここで、課金処理を行うと判定したときはS12に動作が進み、課金処理部19がデータ取得部18によって補正データ21を取得することに対する課金処理を行う。課金処理を行うと判定されないときは終了する。データ取得部18はS12を実行すると動作を終了する。
【0080】
以上のように、本実施の形態における映像再生装置1も、第1の実施の形態に係る1と同様、記録媒体203に読取不能箇所があっても、補正データ21を取得することができるから、傷や汚れ等が付着している記録媒体203でも、映像データS1を再生でき、記録媒体203の買い直しなどを行う必要がないようになっている。また、ダウンロードdが短時間で終了するため、映像データS1全体を短時間で再生することができる。
【0081】
特に、実施の形態における映像再生装置1は、課金処理を行ってからダウンロードdを行っているから、サーバ装置204から補正データ21を有料で提供できるようになり、補正データ21の提供をサービスとして実現できるようになる。
【0082】
以上の各実施の形態において、映像再生装置1がサーバ装置204から補正データ21のダウンロードdを行う場合、ネットワークI/F5がサーバ装置204のアドレスを指定する必要があるが、それは次の1)、2)、3)ようにすることができる。
【0083】
1)記録媒体203に補正データ21を取得するためのサーバ装置(サーバ装置204やそのほかの図示しないサーバ装置)のアドレスを記録しておくことである。こうすると、記録媒体203の種類ごとに補正データ21を提供するサーバ装置を分けておくことができる。また、記録媒体203に余計なデータが記録されることとなるが、下記2)、3)よりも通信が少なくてすむ。
【0084】
2)ネットワークI/F5が一旦サーバ装置204とは別のサーバ装置にアクセスし、そこからサーバ装置204のアドレスを取得することである。こうすると、通信の回数が1)よりも1回多くなるが、記録媒体203に余計なデータが記録されなくて済む。
【0085】
3)映像再生装置1が記録媒体203の種類を問わず、すべてサーバ装置204にアクセスするように設定しておくことである。こうすると、通信の回数が1)の場合と同様に1回で済むが、サーバ装置の負荷が多くなる。
【0086】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る映像再生装置の内部構成を記録媒体およびサーバ装置とともに示すブロック図である。
【図2】サーバ装置と、第1の実施の形態に係る映像再生装置の主要な内部構成を示すブロック図である。
【図3】サーバ装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】映像再生装置とサーバ装置とにおいて、補正データのダウンロードが行われることを模式的に示した図である。
【図5】第1の実施の形態に係る映像再生装置が映像データを再生するときの動作手順を示すフローチャートである。
【図6】先読み処理を模式的に示した図で、(a)は記録媒体と先読みバッファを示す図、(b)は先読みバッファのデータ量の変化を示す図である。
【図7】エラー補正処理を模式的に示した図で、(a)は傷が1ビットの場合を示す図、(b)は傷が連続している場合を示す図である。
【図8】サーバ装置と、第2の実施の形態に係る映像再生装置の主要な内部構成を示すブロック図である。
【図9】第2の実施の形態に係る映像再生装置が映像データを再生するときの動作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0088】
1…映像再生装置、3…ハードディスクドライブ部、6…CPU,8…ROM、11、21…映像再生プログラム、11a…データ読取部、11b…映像デコーダ、11c…表示ドライバ、13…先読みバッファ、14…先読み処理部、15…再生指示部、16…傷検知部、17…正規メディア判別部、18…データ取得部、19…課金処理部、301…CPU,302…ROM、303…RAM、304…通信処理部,302…通信制御部、303…データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して外部装置と通信する通信手段と、
記録媒体に記録されている記録データを読み取る読取手段と、
前記記録媒体に前記読取手段が読み取れない読取不能箇所があることを検知する検知手段と、
前記読取不能箇所があることを前記検知手段が検知したときに、前記読取不能箇所から読み取れない読取不能データを補正するための補正データを前記通信手段によって前記外部装置から取得する取得手段とを有することを特徴とする再生装置。
【請求項2】
前記読取手段が読み取った前記記録データを記憶するデータ記憶手段と、
前記読取手段が前記記録媒体から読み取った前記記録データを前記データ記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
前記データ記憶手段に記憶されている前記記録データを用いて前記映像データまたは音声データを再生する再生手段とを更に有することを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項3】
前記データ記憶手段に前記記録データが記憶されているか否かを判別する記録データ判別手段を更に有し、
前記再生手段は、前記記録データ判別手段が前記データ記憶手段に前記記録データが記憶されていると判別したときは、前記データ記憶手段に記憶されている前記記録データを用いて前記映像データまたは音声データを再生し、前記記録データ判定手段が前記データ記憶手段に前記記録データが記憶されていないと判別したときは、前記映像データまたは音声データの再生を停止することを特徴とする請求項2記載の再生装置。
【請求項4】
前記記録媒体が正規に取得した正規媒体か否かを判別する媒体判別手段を更に有し、
前記読取手段は、前記媒体判別手段が前記記録媒体が前記正規媒体であると判別したときは前記記録データを読み取り、前記媒体判別手段が前記記録媒体が前記正規媒体でないと判別したときは前記記録データの読み取りを行わないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の再生装置。
【請求項5】
前記取得手段が前記外部装置から前記補正データを取得することに対する課金処理を行う課金処理手段を更に有し、
前記取得手段は、前記課金処理手段が前記課金処理を行ったときに前記補正データを取得することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の再生装置。
【請求項6】
前記読取手段は、前記検知手段が前記読取不能箇所があることを検知したときは前記読取不能データを読み飛ばすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の再生装置。
【請求項7】
前記記憶制御手段は、前記取得手段が前記外部装置から取得した前記補正データを前記データ記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項記載の再生装置。
【請求項8】
記録媒体に記録されている記録データを読み取れない読取不能箇所が前記記録媒体にあることを検知したときに、該検知された読取不能箇所から読み取れない読取不能データを補正するための補正データをネットワークを介して外部装置から取得し、その取得した補正データを用いて映像データまたは音声データを再生することを特徴とする再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−299959(P2008−299959A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145413(P2007−145413)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】