説明

再生質吸湿剤

【課題】低温であっても、熱再生可能な再生質吸湿剤を提供すること。
【解決手段】再生質吸湿剤1は、疎水性ゼオライト2と、疎水性ゼオライト2の表面上に配置される潮解性物質3とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温で空気中の水分を吸収し、熱再生処理により水分を放出する再生質吸湿剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の再生質吸湿剤としては、ゼオライトやシリカゲルなどの多孔質体が知られていた。しかしながら、ゼオライトやシリカゲルは水分の吸放出量が少ないという課題があり、この課題を解決すべく下記に示す様々な取り組みがなされてきた。
【0003】
例えば以下の特許文献1では、気孔率20〜90%を有する導電性の多孔質セラミックス体に潮解性無機化合物を担持させた再生質吸湿材が開示されている。
【0004】
また、以下の特許文献2では、隣接するほぼ球状の気孔が小穴で互いに連通した構造を有しており、気孔率が50〜95%の範囲にある連続性多孔質材料の気孔内に、潮解性物質を担持させてなる調湿材料が開示されている。
【0005】
さらに、以下の特許文献3では、潮解性塩類のゼオライト担体への保持体である吸湿剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−7673号公報
【特許文献2】特開2001−49022号公報
【特許文献3】特開平6−189725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の開示技術の場合には、導電性の多孔質セラミックス体は極性が強いため、その表面上に担持された潮解性化合物が吸収した水分子を分子間力によって強く引き付けると考えられ、熱により多くの水分子を放出させ、熱再生するためには、少なくとも温度を80℃以上の高温にする必要があるという課題があり、未だ改善の余地があった。
【0008】
また、特許文献2の開示技術の場合には、連続性多孔質材料の気孔内部に存在する潮解性物質が吸収した多くの水分子を熱により気孔内部から放出させて、熱再生するために、少なくとも温度を80℃以上の高温にする必要があるという課題があり、未だ改善の余地があった。
【0009】
さらに、特許文献3の開示技術の場合には、ゼオライトの中には極性が強いものもあるため、該ゼオライトに保持される潮解性塩類が吸収した水分子を分子間力によって強く引き付けると考えられるため、特許文献1の開示技術と同様の課題がある。
【0010】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、例えば80℃未満の低温であっても、熱再生可能な再生質吸湿剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、再生質吸湿剤において
、疎水性ゼオライトの表面上に潮解性物質を配置することが、上記従来技術の有する課題を解決する上で極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
疎水性ゼオライトは、シリカ/アルミナ比が5.5以上のハイシリカゼオライトであることが好ましい。また、疎水性ゼオライトは、Y型の疎水性ゼオライトであることがさらに好ましい。
【0013】
また、潮解性物質は、例えば、カルシウム、リチウム、カリウム、ナトリウムおよびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属の塩化物または臭化物である。潮解性物質は、塩化カルシウムであることがさらに好ましい。この場合、好ましくは、塩化カルシウムの含有量は、9.0質量%以上で、28.6質量%以下である。
【0014】
また、再生質吸湿剤には、抗菌剤が含まれることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の再生質吸湿剤は、疎水性ゼオライトの表面上に潮解性物質が配置される。疎水性ゼオライトは極性が小さいという性質を有する。このような性質の疎水性ゼオライトでは表面上の潮解性物質が吸収した水分子に対する分子間力が弱まると考えられるため、より低温(例えば80℃未満)で水分子を放出させることができる。このように、本発明によれば、より低温で熱再生することが可能な再生質吸湿剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る再生質吸湿剤を示す模式図
【図2】図1に示す範囲Rの部分の拡大図
【図3】本発明の各実施例と各比較例について熱再生量を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施の形態に係る再生質吸湿剤について説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係る再生質吸湿剤の大略的な構成を示す模式図である。また、図2は、図1に示す範囲Rの部分の拡大図である。
【0019】
図1に示すように、再生質吸湿剤1は、主として、疎水性ゼオライト2と、疎水性ゼオライト2の表面上に配置された潮解性物質3とを備えている。また、図2に示すように、疎水性ゼオライト2は、複数のソーダライト単位11を備えている。ここで、ソーダライト単位11自体には複数の細孔12が存在する。また、複数のソーダライト単位11が相互に結合することでも、複数のソーダライト単位11の間に複数の細孔12が形成される。各細孔12の径は疎水性ゼオライトの種類によっても異なるが、細孔12の入口部分の径は概ね1nm未満の大きさであり、細孔12内部の径は最大でも1.5nm程度の大きさである。
【0020】
次に、再生質吸着剤1を構成する疎水性ゼオライト2と潮解性物質3について、より詳細に説明する。
【0021】
まず、疎水性ゼオライト2について説明する。
【0022】
図1に示す疎水性ゼオライト2は、後述する潮解性物質3を支持する支持体となる部材であるとともに、水分子を吸脱着することで水分を吸放出可能な部材である。また、潮解背物質3が空気中の湿気を吸い水溶液化したとき、その水溶液が細孔12の中に溜まることで疎水性ゼオライト2は再生質吸湿剤1の外部に漏れ出るのを防ぐバッファタンクの役
割を果たす。
【0023】
疎水性ゼオライト2は、一般的にシリカ/アルミナ比(SiO/Al比)が5〜10以上のハイシリカゼオライトのことを指す。この数値が大きくなるほどアルミナの含有量が減り極性が弱くなるため、疎水性は強くなる。シリカ/アルミナ比の上限に関する制限は無いが、現在実質的に入手可能な上限は、3000〜5000程度と思われる。
【0024】
また、疎水性ゼオライト2は、シリカ/アルミナ比が5未満のゼオライトを用いて、ゼオライト表面のヒドロキシル基をメチル基のような疎水基に置換したゼオライトも含む。なお、ゼオライト表面のヒドロキシル基を疎水基に置換する方法は公知の方法で行うことが出来る。
【0025】
疎水性ゼオライト2は、代表径が0.5μm〜50μm程度の粉末固体を使用することが好ましい。粉末固体の方が、本再生質吸湿剤を例えば加湿デバイスに応用する場合に、取り扱いが簡単で好都合だからである。また、空隙率は30〜80%程度が好ましい。なお、図1では疎水性ゼオライト2の形状を球状で記述しているが、球状に限定されるものではない。
【0026】
本発明の効果をより確実に得るという観点から、疎水性ゼオライト2のシリカ/アルミナ比は5.5以上であることが好ましい。シリカ/アルミナ比を5.5以上とすると、疎水性ゼオライトの極性がさらに弱まり、その表面上の潮解性物質が吸収した水分子に対する分子間力もさらに弱まると考えられるため、さらに低い温度で水分子を放出させることができる。
【0027】
また、本発明の効果をより確実に得るという観点から、疎水性ゼオライト2はY型の疎水性ゼオライトが好ましい。Y型のゼオライトは比較的簡単にシリカ含有量を上げる、すなわちシリカ/アルミナ比を高めることができる。
【0028】
次に、潮解性物質3について説明する。
【0029】
図1または図2に示す潮解性物質3は、疎水性ゼオライト2の細孔12内外の表面上に配置されており、水分子を吸脱着することで水分を吸放出させるための部材である。潮解性物質3は、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属の塩化物または臭化物である。具体的には、塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、臭化カルシウム、臭化リチウム、臭化マグネシウム、臭化カリウムおよび臭化ナトリウムまたはそれら物質の水和物が挙げられる。
【0030】
ここで、潮解性物質3としては、本発明の効果をより確実に得るという観点から、塩化カルシウム、塩化リチウム、臭化リチウムが好ましく挙げられる。特に、上述した中でも、最も水分の吸放出量が大きいことから塩化カルシウムが好ましい。また、上述した中で最も腐食性が小さいという観点からでは、臭化リチウムが好ましい。
【0031】
また、本発明の効果をより確実に得るという観点から、塩化カルシウムの含有量は9.0質量%以上で、28.6質量%以下であることが好ましい。ここで記述する含有量とは、疎水性ゼオライト2と潮解性物質3の合計質量に占める潮解性物質3の質量の割合である。塩化カルシウムの含有量が9.0質量%以上であると、吸放出できる水分量をより向上させることができるので好ましい。また、塩化カルシウムの含有量が28.6質量%以下であると、通常使用する例えば20℃・40%RH〜40℃・10%RH程度の環境下
で再生質吸湿剤1の表面に濡れが発生することがないので好ましい。
【0032】
さらには、再生質吸湿剤1には抗菌剤(図示せず)を添加してもよい。これにより、再生質吸湿剤1に対して80℃未満の低温で熱再生することができるという特性に加えて、優れた抗菌性の特性を付与することができる。
【0033】
この抗菌剤としては、疎水性ゼオライト2の表面上あるいは潮解性物質3の表面上に分散でき、抗菌効果を得ることができるものであれば特に限定されない。また、公知の抗菌剤が添加されても構わない。このような抗菌剤としては、例えば、ワサビなどの有機系の抗菌剤と、銀・亜鉛・銅などの無機系の抗菌剤とがある。耐光性や耐酸化性などの耐久性という観点から、無機系の抗菌剤を使用することが好ましい。無機系の抗菌剤としては、東亞合成社製の銀系無機抗菌剤「商品名:ノバロン」(商標)やシナネンゼオミック社製の無機抗菌剤「商品名:ゼオミック」(商標)などが好ましく挙げられる。これらの抗菌剤には防カビ効果も期待できるので好ましい。
【0034】
ここで、再生質吸湿剤1に対する抗菌剤の添加量は0.1〜5質量%とすることが好ましい。再生質吸湿剤1に対する抗菌剤の添加量が0.1質量%以上であると抗菌性をより確実に得ることができ好ましい。再生質吸湿剤1に対する抗菌剤の添加量が5質量%以下であると、水分の吸放出を妨げにくいという点で好ましい。
【0035】
本実施形態の再生質吸湿剤1は、以上説明したように、疎水性ゼオライト2の表面上に潮解性物質3を配置することで、極性が小さい疎水性ゼオライトではその表面上の潮解性物質が吸収した水分子に対する分子間力が弱まると考えられるため、低温(例えば80℃未満)で水分子を放出させることができ、このような低温であっても熱再生を行うことができる。
【0036】
次に、本実施形態の再生質吸湿剤1の製造方法の一例について説明する。
【0037】
まず、分散工程において、所定量の疎水性ゼオライト2が容器中で水に分散され、所定量の潮解性物質3が疎水性ゼオライト2の水分散体が入った容器へ添加された後、継続的に攪拌が実行される。この分散方法は特に限定されず公知の粉末の水への分散方法を用いて行うことができる。例えば、ナス型フラスコに疎水性ゼオライト2が所定量投入され、次に所定量の水が投入された後、攪拌装置を用いて撹拌が行われ、これによって、疎水性ゼオライト2を水に分散させる。さらに、その攪拌中のナス型フラスコに所定量の潮解性物質3が添加され、撹拌を継続することで、潮解性物質3を水に溶解させる。なお、投入する水の量は潮解性物質3が十分に溶解できるだけの量を投入する。また、攪拌は、疎水性ゼオライト2が水に十分に分散し、潮解性物質3が全て水に溶解するまで継続する。例えば、疎水性ゼオライト2を10g程度用いる場合、攪拌の時間は1〜3時間程度が好ましい。
【0038】
ここで、潮解性物質3に塩化カルシウムを用いる場合、疎水性ゼオライト2と塩化カルシウムとに対する塩化カルシウムの割合が、9.0〜28.6質量%となるように疎水性ゼオライト2と塩化カルシウムとの投入量が調整されることが好ましい。塩化カルシウムの含有量が9.0質量%以上であると、吸放出できる水分量をより向上させることができるので好ましい。また、塩化カルシウムの含有量が28.6質量%以下であると、通常使用する例えば20℃・40%RH〜40℃・10%RH程度の環境下で再生質吸湿剤1の表面に濡れが発生することがないので好ましい。
【0039】
さらには、抗菌剤を添加する場合、上記分散工程で添加することが好ましい。分散工程における抗菌剤の投入は、いずれのタイミングで行ってもよい。また、疎水性ゼオライト
2と潮解性物質3と抗菌剤に対する抗菌剤の割合が、0.1〜5質量%となるように抗菌剤の投入量を調整することが好ましい。本操作により、最終得られる再生質吸湿剤1に対して抗菌剤の添加量を0.1〜5質量%とすることができる。再生質吸湿剤1に対する抗菌剤の添加量が0.1質量%以上であると抗菌性をより確実に得ることができ好ましい。再生質吸湿剤1に対する抗菌剤の添加量が5質量%以下であると、水分の吸放出を妨げにくいという点で好ましい。
【0040】
次に、減圧乾燥工程において、分散工程で得られた疎水性ゼオライト2が分散し、潮解性物質3が溶解した水溶液(以下、分散水溶液と記す)の減圧乾燥が行われる。この減圧乾燥方法は特に限定されず公知の減圧乾燥方法を用いて行うことができる。例えば、ロータリーエバポレータを用い、分散水溶液を入れたナス型フラスコ内の水が蒸発するまで減圧乾燥を行うことで、疎水性ゼオライト2の表面上に比較的均一に潮解性物質3が分散した生乾きの再生質吸湿剤1を得ることができる。なお、減圧乾燥温度および時間は、疎水性ゼオライト2を10g程度用いる場合、60〜80℃程度で、1〜3時間程度が好ましい。
【0041】
また、エバポレーターの条件は、特に限定されるものではない。
【0042】
さらに、高温乾燥工程にて、減圧乾燥工程で得られた生乾きの再生質吸湿剤1を高温で乾燥させる。この高温乾燥方法は特に限定されず公知の高温乾燥方法を用いて行うことができる。例えば、100℃に保持した恒温槽へ入れることで乾燥することができる。なお、高温乾燥時間は、再生質吸湿剤1を15g程度用いる場合、10〜20時間程度が好ましい。
【0043】
また、必要に応じて焼成工程が実施され、高温乾燥工程で得られた再生質吸湿剤1に対し焼成が行われる。この焼成方法は特に限定されず公知の焼成方法を用いて行うことができる。例えば、再生質吸湿剤1を15g程度用いる場合、再生質吸湿剤1を焼成炉に入れ、200℃/hの昇温速度で昇温を行い、550℃で5〜10時間保持する。
【0044】
このようにして、再生質吸湿剤1を得ることができる。なお、本実施形態では疎水性ゼオライト2の分散溶媒に水を用いたが、潮解性物質3を溶解し、疎水性ゼオライト2の細孔12内へ浸入できる有機溶剤を用いても同等の効果を有する再生質吸湿剤1が得られる。
【0045】
以下、いくつかの実施例、及び比較例を挙げて、再生質吸湿剤について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0046】
実施例1では、本願発明者は、以下の手順で、疎水性ゼオライトに潮解性物質の担持を行った。
【0047】
まず、ユニオン昭和株式会社製の疎水性ゼオライト「商品名:疎水性モレキュラーシーブ(品番:ABSCENTS 2000)」10gと水200gとを1000mLのナス型フラスコに入れ、30分間の攪拌を行った。その後、潮解性物質として市販の塩化カルシウム(無水)4.0gを上記ナス型フラスコに入れ、さらに2時間の攪拌を行った(分散工程)。次に、ナス型フラスコをロータリーエバポレータに取り付け、浴の湯温を70℃、アスピレータの到達真空度を5000Pa、回転速度を120回転/minに設定し、減圧乾燥を行った(減圧乾燥工程)。その後、ナス型フラスコより試料を取り出し、100℃に保持した恒温槽に入れ、12時間乾燥を行い(高温乾燥工程)、再生質吸湿剤を完成させた。
【実施例2】
【0048】
実施例2では、疎水性ゼオライトとして、ユニオン昭和株式会社製の疎水性ゼオライト「商品名:疎水性モレキュラーシーブ(品番:DDZ−70)」を使用したこと以外は、実施例1と同様の手順および条件で再生質吸湿剤を、本願発明者は作製した。
【実施例3】
【0049】
実施例3では、疎水性ゼオライトとして、東ソー株式会社製の疎水性ゼオライト「商品名:ハイシリカゼオライト Y型ゼオライト(品番:HSZ−320NAA)」(シリカアルミナ比:5.5)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手順および条件で再生質吸湿剤を、本願発明者は作製した。
【実施例4】
【0050】
実施例4では、潮解性物質として、市販の臭化リチウム(無水)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手順および条件で再生質吸湿剤を、本願発明者は作製した。
【実施例5】
【0051】
実施例5では、塩化カルシウム(無水)を1.0g使用したこと以外は、実施例1と同様の手順および条件で再生質吸湿剤を、本願発明者は作製した。
【実施例6】
【0052】
実施例6では、疎水性ゼオライトとして、ユニオン昭和株式会社製の疎水性ゼオライト「商品名:疎水性モレキュラーシーブ(品番:DDZ−70)」を使用したことと、塩化カルシウム(無水)を1.0g使用したこと以外は、実施例1と同様の手順および条件で再生質吸湿剤を、本願発明者は作製した。
【0053】
次に、上記実施例1〜6の有効性を検証するため、本願発明者は以下の比較例に係る再生質吸湿剤を作製した。
【0054】
(比較例1)
疎水性ゼオライトの代わりに、ユニオン昭和株式会社製のゼオライト「商品名:モレキュラーシーブ(品番:4A)」(シリカ/アルミナ比:1)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手順および条件で再生質吸湿剤を、本願発明者は作製した。
【0055】
(比較例2)
疎水性ゼオライトの代わりに、ユニオン昭和株式会社製のゼオライト「商品名:モレキュラーシーブ(品番:13X)」(シリカ/アルミナ比:1.23)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手順および条件で再生質吸湿剤を、本願発明者は作製した。
【0056】
(比較例3)
疎水性ゼオライトの代わりに、ユニオン昭和株式会社製のゼオライト「商品名:モレキュラーシーブ(品番:4A)」(シリカ/アルミナ比:1)を使用したことと、塩化カルシウム(無水)を1.0g使用したこと以外は、実施例1と同様の手順および条件で再生質吸湿剤を、本願発明者は作製した。
【0057】
(比較例4)
疎水性ゼオライトの代わりに、ユニオン昭和株式会社製のゼオライト「商品名:モレキュラーシーブ(品番:13X)」(シリカ/アルミナ比:1.23)を使用したことと、塩化カルシウム(無水)を1.0g使用したこと以外は、実施例1と同様の手順および条件で再生質吸湿剤を、本願発明者は作製した。
【0058】
[熱再生試験1]
次に、以下の手順により熱再生試験を行い、実施例1〜6、比較例1〜4の再生質吸湿剤の熱再生能力を評価した。
【0059】
まず、本願発明者は、それぞれの再生質吸湿剤サンプルを20℃・40%RHの恒温恒湿槽に24時間保持し、吸湿させた。そして、それぞれの再生質吸湿剤を1.0gずつ測り取り、スチレン製のシャーレへ敷き詰めた。その後、それぞれの再生質吸湿剤サンプルを40℃・13%RHに設定した恒温恒湿槽に3時間保持することで吸湿した水分を放出させた後、取り出して質量を測定した。
【0060】
発明者は、それぞれのサンプルの40℃・13%RHに保持した恒温恒湿槽へ入れる前(1.0g)と取り出した後の質量差をさらに算出し、この値を再生質吸湿剤の質量(恒温恒湿槽から取り出した後の質量)で除した値を、再生質吸湿剤の熱再生量と定義した。図3は、各実施例と各比較例について得られた熱再生量を示す図である。
【0061】
図3に示した結果から明らかなように、本発明に係る実施例1〜6の再生質吸湿剤は、比較例1〜4の再生質吸湿剤よりも低温(40℃)再生時に多くの量の熱再生ができることが確認された。特に、潮解性物質に塩化カルシウムを使用し、塩化カルシウムの含有量を28.6質量%とした実施例1〜3は、さらに熱再生量が多いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の再生質吸湿剤は、疎水性ゼオライトの表面上に潮解性物質を配置することで80℃未満の低温で熱再生可能な再生質除湿剤として、例えば下駄箱や押入れ、バスルームなど居住空間で除湿が必要なところに配置し、その空間を除湿することができ、そしてそれをより低温(80℃未満)で熱再生し、繰り返し使用することができる再生質吸湿剤として利用できる。
【0063】
また、本発明の再生質除湿剤をデシカント式除湿機のデシカントロータに担持させることで、再生するための熱エネルギーが少なくて済むため、省エネ型のデシカント式除湿機として利用することができる。さらには、本発明の再生質吸湿剤を担持したデシカントロータを用い、これに外気の水分を吸湿させ、熱再生により放出した水分を部屋へ導入することで加湿デバイスとして利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 再生質除湿剤
2 疎水性ゼオライト
3 潮解性物質
11 ソーダライト単位
12 細孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生質吸湿剤であって、
疎水性ゼオライトと、
前記疎水性ゼオライトの表面上に配置される潮解性物質と、
を含む、再生質吸湿剤。
【請求項2】
前記疎水性ゼオライトは、シリカ/アルミナ比が5.5以上のハイシリカゼオライトである、請求項1に記載の再生質吸湿剤。
【請求項3】
前記疎水性ゼオライトは、Y型の疎水性ゼオライトである、請求項1または2に記載の再生質吸湿剤。
【請求項4】
前記潮解性物質は、カルシウム、リチウム、カリウム、ナトリウムおよびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属の塩化物または臭化物である、請求項1〜3のいずれかに記載の再生質吸湿剤。
【請求項5】
前記潮解性物質は塩化カルシウムである、請求項4に記載の再生質吸湿剤。
【請求項6】
前記塩化カルシウムの含有量は、9.0質量%以上で、28.6質量%以下である、請求項5に記載の再生質吸湿剤。
【請求項7】
前記再生質吸湿剤はさらに抗菌剤を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の再生質吸湿剤。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−284609(P2010−284609A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141833(P2009−141833)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】