説明

再石灰化作用のある歯科用セメント

再石灰化作用のある歯科用セメントは、カルシウムイオン供給源、リン酸イオン供給源、接着レジンモノマー、強化用ベースレジンモノマー及び接着及び強化用ベースレジンモノマーの重合を開始させることのできる触媒を含有する。このような歯科用セメントは、矯正用セメント、歯冠及びブリッジセメント、接着剤、シーラント、窩洞ライナー及び保護用コーティングとして使用可能である。カルシウム及びリン酸イオン、及び任意にフッ化物イオンの放出は、歯の構造を、虫歯の前兆である脱灰から保護する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年7月2日付けの同時係属仮出願第60/484,404号明細書の利益を請求しそれを参照により援用するものである。
【0002】
本発明は、矯正用セメント、歯冠及びブリッジセメント、接着剤、シーラント、窩洞ライナー及び保護用コーティングとして使用可能である、再石灰化作用のある歯科用セメントに関する。
【背景技術】
【0003】
矯正治療の間及びその後、複合セメントで固着された多数の歯が、窩洞となった病巣の存在に至るまでさまざまな度合の脱灰の兆候を示すということは、周知のことである。例えば、ミッチェル(Mitchell)ら、Dent. Mater. 11, 317-22, 1995を参照のこと。最大の問題は、清浄が困難であるブラケットの縁部のまわりに蓄積したプラークに由来するものである。脱灰は同じく、例えばブリッジ、歯冠及びその他の修復装置及びう蝕病巣部位の周囲にも発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該技術分野では、ブラケット又は修復装置に隣接する歯の構造を保護し、再石灰化を活発に促進することにより細菌酸の有害な影響を妨げることになる接着力の強い材料に対するニーズが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの実施形態は、レジンモノマー成分、少なくとも1つの重合開始剤、カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源を含む再石灰化作用のある歯科用セメントである。レジンモノマー成分は、重合可能な強化用ベースレジンモノマー、重合可能な接着レジンモノマー、及び任意に重合可能な希釈モノマーを含む。重合可能な接着レジンモノマーの含有量は、レジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である。カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源の含有量は、セメントの少なくとも約5重量%であるが75重量%未満である。
【0006】
本発明のもう1つの実施形態は、再石灰化作用のある歯科用セメントの製造方法である。該方法は、ペーストAとペーストBを混合することを含む。ペーストAは、重合可能な強化用ベースレジンモノマー、第1の重合開始剤、及び任意に第1の重合可能な希釈モノマーを含む。ペーストBは、重合可能な接着レジンモノマー、第2の重合開始剤、及び任意に第2の重合可能な希釈モノマーを含む。ペーストA及びペーストBのうちの少なくとも1つは、カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源を、再石灰化作用のある歯科用セメント中に少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン及びリン酸イオンを提供するような量で含む。重合可能な接着レジンモノマーの含有量は、再石灰化作用のある歯科用セメントのレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である。
【0007】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、再石灰化作用のある歯科用セメントの製造方法である。該方法は、ペーストと少なくとも1つの重合開始剤を混合することを含む。該ペーストは、重合可能な強化用ベースレジンモノマー;重合可能な接着レジンモノマー;少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源;及び任意に重合可能な希釈モノマーを含む。重合可能な接着レジンモノマーの含有量は、再石灰化作用のある歯科用セメントのレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である。
【0008】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、カルシウムイオン供給源、リン酸イオン供給源及び重合されたレジン成分を含む、固化した再石灰化作用のある歯科用セメントである。重合されたレジン成分は、重合された強化用ベースレジン、及び重合された接着レジンを含む。重合された接着レジンの含有量は、レジン成分の約5重量%〜約65重量%であり、ここで、カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源の含有量は、固化したセメントの少なくとも約5重量%であるが75重量%未満である。
【0009】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、固化した石灰化作用のある歯科用セメントの調製方法である。該方法は、ペーストAをペーストBと混合することを含む。ペーストAは重合可能な強化用ベースレジンモノマー、第1の重合開始剤、及び任意に第1の重合可能な希釈モノマーを含む。ペーストBは、重合可能な接着レジンモノマー、第2の重合開始剤、及び任意に第2の重合可能な希釈モノマーを含む。ペーストA及びペーストBのうちの少なくとも1つが、再石灰化作用のある歯科用セメント中に少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン及びリン酸イオンを提供するような量でカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源を含む。重合可能な接着レジンモノマーの含有量は、再石灰化作用のある歯科用セメントのレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である。該方法はさらに重合可能な強化用ベースレジンモノマー、重合可能な接着レジンモノマーの重合、そして存在する場合には重合可能な希釈モノマーと重合可能な強化用ベースレジンモノマー及び重合可能な接着レジンモノマーの共重合を開始させることを含む。
【0010】
本発明のさらなる実施形態は、固化した石灰化作用のある歯科用セメントの調製方法である。該方法は、ペーストと少なくとも1つの重合開始剤を混合することを含み、該ペーストは(a)重合可能な強化用ベースレジンモノマー、(b)重合可能な接着レジンモノマー、(c)少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源、及び任意に(d)重合可能な希釈モノマーを含む。重合可能な接着レジンモノマーの含有量は再石灰化作用のある歯科用セメントのレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である。該方法はさらに、重合可能な強化用ベースレジンモノマー、重合可能な接着レジンモノマーの重合、そして存在する場合には重合可能な希釈モノマーと重合可能な強化用ベースレジンモノマー及び重合可能な接着レジンモノマーとの共重合を開始させることを含む。
【0011】
本発明のもう1つの実施形態は、固化した石灰化作用のある歯科用セメントの調製方法である。該方法は、放射線源とペーストを接触させることを含む。ペーストは、(a)重合可能な強化用ベースレジンモノマー;(b)重合可能な接着レジンモノマー;(c)光開始剤;(d)少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源;及び任意に(e)重合可能な希釈モノマーを含む。重合可能な接着レジンモノマーの含有量は、再石灰化作用のある歯科用セメントのレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である。
【0012】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、再石灰化作用のある歯科用セメントの調製用キットである。該キットは、(a)ペーストAの成分、(b)ペーストBの成分;及び任意に(c)ペーストAとペーストBを混合して再石灰化作用のある歯科用セメントを形成するための使用説明書を含む。ペーストAの成分は、(1)重合可能な強化用ベースレジンモノマー;(2)第1の重合開始剤;及び任意に(3)第1の重合可能な希釈モノマーである。ペーストBの成分は(1)重合可能な接着レジンモノマー;(2)第2の重合開始剤;及び任意に(3)第2の重合可能な希釈モノマーである。ペーストA及びペーストBのうちの少なくとも1つの成分は、再石灰化作用のある歯科用セメント中で少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン及びリン酸イオンを提供するような量でカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源を含む。重合可能な接着レジンモノマーの含有量は、再石灰化作用のある歯科用セメントのレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である。
【0013】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、再石灰化作用のある歯科用セメントを調製するためのキットである。該キットは、重合可能な強化用ベースレジンモノマー;重合可能な接着レジンモノマー(ここで重合可能な接着レジンモノマーの含有量は再石灰化作用のある歯科用セメントのレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である);少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源;少なくとも1つの光開始剤、及び任意に重合可能な希釈モノマーを含むペーストを含む。
【0014】
再石灰化作用のある歯科用セメントの調製するためのキット。このキットは(a)重合可能な強化用ベースレジンモノマー;(b)重合可能な接着レジンモノマー(ここで、重合可能な接着レジンモノマーの含有量は再石灰化作用のある歯科用セメントのレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である);(c)少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源;及び任意に(d)重合可能な希釈モノマーを含むペーストを含む。該キットは任意に少なくとも1つの重合開始剤を含む。
【0015】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、再石灰化作用のある歯科用セメントと歯の少なくとも一部分を接触させることを含む、歯の少なくとも一部分の再石灰化作用を促進する方法である。該再石灰化作用のある歯科用セメントは、レジンモノマー成分、少なくとも1つの重合開始剤、カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源を含む。該レジンモノマー成分は、重合可能な強化用ベースレジンモノマー、重合可能な接着レジンモノマー、及び任意に重合可能な希釈モノマーを含む。重合可能な接着レジンモノマーの含有量は、レジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である。カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源の含有量はセメントの少なくとも5重量%であるが75重量%未満である。このようにして前記少なくとも一部分が再石灰化される。
【0016】
本発明のさらなる実施形態は、歯又は矯正用ブラケットのうちの少なくとも1つを再石灰化作用のある歯科用セメントと接触させることを含む、歯に対し矯正用ブラケットを接着させる方法にある。該再石灰化作用のある歯科用セメントは、レジンモノマー成分、少なくとも1つの重合開始剤、カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源を含む。レジンモノマー成分は、重合可能な強化用ベースレジンモノマー、重合可能な接着レジンモノマー、及び任意に重合可能な希釈モノマーを含む。重合可能な接着レジンモノマーの含有量は、レジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である。カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源の含有量は、セメントの少なくとも5重量%であるが75重量%未満である。矯正用ブラケットはこのようにして歯に接着する。
【0017】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、再石灰化作用のある歯科用セメントと歯又は歯冠のうちの少なくとも1つを接触させることを含む、歯に歯冠を接着させる方法にある。再石灰化作用のある歯科用セメントは、レジンモノマー成分、少なくとも1つの重合開始剤、カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源を含む。レジンモノマー成分は重合可能な強化用ベースレジンモノマー、重合可能な接着レジンモノマー、及び任意に重合可能な希釈モノマーを含む。重合可能な接着レジンモノマーの含有量はレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である。カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源の含有量は、セメントの少なくとも約5重量%であるが75重量%未満である。このようにして歯冠は歯に接着する。
【0018】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、ブリッジ又は少なくとも1本の歯のうちの少なくとも一方と再石灰化作用のある歯科用セメントを接触させることを含む少なくとも1本の歯にブリッジを接着させる方法にある。該再石灰化作用のある歯科用セメントは、レジンモノマー成分、少なくとも1つの重合開始剤、カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源を含む。レジンモノマー成分は、重合可能な強化用ベースレジンモノマー、重合可能な接着レジンモノマー、及び任意に重合可能な希釈モノマーを含む。重合可能な接着レジンモノマーの含有量はレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である。カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源の含有量は、セメントの少なくとも約5重量%であるが75重量%未満である。このようにしてブリッジは、前記少なくとも1本の歯に接着する。
【0019】
本発明は、このように、歯の構造を保護し、かつ再石灰化作用を活発に促進することによって細菌酸の有害な影響を妨げる強力に接着する材料を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、強力な歯科用接着剤として作用し、かつカルシウム及びリン酸イオンを活発に放出することによって脱灰を防止又は低減させる再石灰化作用のある歯科用セメント処方を提供する。かかるセメントは、とりわけ、矯正用ブラケットを歯の構造に接着するために、歯の保護用コーティング(歯の平滑な表面上を含む)として、穴及び/又は亀裂シーラントとして、歯科用充填材及び保護用窩洞ベース又はライナーとして、セメント固定型義歯をセメント固定するために、使用可能である。
【0021】
本発明の再石灰化作用のある歯科用セメントは、カルシウム及びリン酸イオン、及び任意にフッ化物イオンを放出することから、既存の接着剤、セメント、ライナー又はコーティングに比べていくつかの利点を有している。カルシウム及びリン酸イオンの放出は、またフッ化物イオンの放出も同様に、歯列矯正手順のために歯の表面に対し付着されるブラケットをとり囲む歯の構造に対し特に脅威となる虫歯の前兆である脱灰から歯の構造を保護する。歯列矯正時の脱灰は、歯列矯正治療の主たる悪影響である。本発明は、この損傷を阻止又は修復する固有の能力をもつ固着用材料を提供し、それによって健康上の大きな利益をもたらす。
【0022】
本発明の再石灰化作用のあるセメントは同様に、石灰分が欠乏しているエナメル質又は象牙質を再石灰化することにより初期病巣の修復を活性化する。該セメントはブラケットをとり囲むエナメル質、う蝕促進プラークが容易に付着するセメント固定された義歯の余白部のまわりのエナメル質、歯科用充填物近く又はその下のエナメル質、保護用コーティングの下及びその周囲のエナメル質を保護すると同時に隣接歯構造を保護する。再石灰化作用のあるセメントは同じく、より永続的な修復を設置できるようになるまで虫歯を抑えるための一時的充填材料としても使用可能である。
【0023】
歯冠及びブリッジセメントは、ほとんど又は全く固有の虫歯防止機能をもたない。歯冠又はブリッジセメントとして使用される場合、本発明のセメントは虫歯防止という利益をもたらす。本発明のセメントは同様に、穴及び亀裂シーラント、歯の保護用コーティング、窩洞ベース及びライナー、仮充填材及び象牙質及びエナメル質用接着剤として使用した場合、虫歯を阻止しかつ/又は修復するという利益も提供する。これらの材料で作られた再石灰化作用のある接着性の持続放出装置は、治療効果を得るため歯に直接固着させることができる。
【0024】
従来の歯科用機器及び設備が利用できない環境で提供される歯科用充填材は、しばしば、手動式器具を用いて虫歯を手作業で除去し、虫歯が原因で脱落した歯構造に置き換わるためのガラスアイオノマーといったような自己硬化材を設置することを必要とする。虫歯の機械によらない除去は、手動式器具使用の効率の悪さに起因して脱灰された歯構造をかなりの量残すことが多い。標準的なガラスアイオノマー充填材には、この組織を再石灰化する能力が欠如している。充填材として使用された本発明の再石灰化作用のあるセメントは、この残された脱灰組織を再石灰化しその後の虫歯を防ぐことができるという利点をもつ。任意に、本発明の再石灰化作用のあるセメントは、咀嚼力に充分に耐える力を提供するべく補強することができる。
【0025】
本発明の再石灰化作用のあるセメントは、仮充填材として使用でき、深い窩洞形成内に残された脱灰された歯構造を再石灰化する能力をもつという利点を示す。非常に深い窩洞形成においては、脱灰象牙質を往々にして窩洞の基部に残し、虫歯除去プロセス中に歯髄が露出されるのを防ぐ。その後、歯髄に永続的な損傷が起こっていないという判定が下されるまで、仮修復物が設置される。この仮修復物はその後除去され、より永続的な修復物により置換される。本明細書で開示されているセメントは、準備プロセスにおいて残された脱灰象牙質を修復する強力なベース材料を提供するという利点を有する。セメントをこのとき部分的に除去でき、最も深い材料を無傷状態に残し、より永続的な修復物で被覆することができる。この手順は、完全な一時的修復物の除去に付随する歯髄の損傷の危険性を除去して損傷を受けた歯の組織を修復する方法を提供する。
【0026】
再石灰化作用のあるセメントの組成
硬化の前に、本発明の再石灰化セメント処方には、カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源;重合可能な接着レジンモノマー、重合可能な強化用ベースレジンモノマー、及び任意に重合可能な希釈モノマーを含むレジンモノマー成分、及び少なくとも1つの重合開始剤が含まれている。重合可能な接着レジンモノマーの含有量は、レジンモノマー成分の少なくとも約5重量%、好ましくは約5重量%〜約65重量%である。カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源の含有量は、セメントの少なくとも約5重量%であるが75重量%未満である。任意に、下記の通り、本発明のセメント処方はその他の添加剤を含有し得る。セメント処方の全ての成分の重量百分率は、合計して100%となる(すなわち溶剤は添加されない)。
【0027】
歯冠又はブリッジ合着用セメントとして使用される場合には、本発明のセメント処方は、好ましくは、約100μm未満、好ましくは約90μm未満、約80μm未満、約70μm未満、約60μm未満、約50μm未満、約40μm未満、約30μm未満又は約20μm未満、標準的には約20〜約40μmのフィルム厚を有する。歯列矯正用セメントとして使用される場合、フィルム厚は約100μmを超えることができる。
【0028】
硬化中及び硬化後、本発明のセメント処方は、中性からやや塩基性のpH、遊離状態で利用可能なカルシウム及びリン酸イオン、そして添加剤に応じてフルオライドの緩慢かつ連続的な放出を提供する。カルシウム及びリン酸イオンは、歯の象牙質及びエナメルによって取り込まれて、水分にさらされた時点でハイドロキシアパタイトを形成する。モノマーは、制御を受けながらポリマー網へと固化する。固化した再石灰化作用のあるセメントは主として、リン酸カルシウム及び架橋ポリマーマトリクスを含有する。
【0029】
固化した時点で、本発明のセメントは好ましくは少なくとも40ニュートン/mm2、さらに一層好ましくは少なくとも50ニュートン/mm2の曲げ強度を有する。固化したセメントは、2種類のペーストを用いて作られたか1種類のペーストで作られたかにかかわらず、カルシウムイオン供給源、リン酸イオン供給源及び重合されたレジンを含有する。カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源の含有量は、固化したセメントの少なくとも約5重量%であるが75重量%未満である。重合されたレジンの接着剤成分の含有量は、重合されたレジン全体の少なくとも約5重量%から約65重量%までである。
【0030】
カルシウム及びリン酸イオン供給源
再石灰化作用のあるセメントを混合するのに2つのペーストが使用される場合、2つのペースト内のカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源は同じであっても異なっていてもよい。いずれの場合でも、混合されたセメント内及び固化したセメント内のカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源の合計含有量は、少なくとも約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、又は約70重量%であるが75重量%未満である。一部の実施形態では、セメント中のカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源の含有量は約73重量%、70重量%、60重量%、50重量%又は40重量%未満である。
【0031】
カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源は単一化合物であっても又は複数の単一化合物の混合物であってもよい。実際、本書で開示されているセメントの1つの利点は、所望であれば、カルシウムイオン及びリン酸イオンの両方の供給源として単一化合物を用いて処方され得るという点にある。該単一化合物は、セメント内部でいかなるその他のリン酸カルシウム化合物とも反応する必要が無い。カルシウム及びリン酸イオンの適切な単一の供給源には、無水リン酸二カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸二カルシウムジヒドレート、リン酸三カルシウム及びその混合物が含まれるこれらに制限されるわけではない。1つの実施形態においては(表1に示されている)、単一化合物(無水リン酸二カルシウム;DCPA)は、ペーストA及びペーストBの両方においてカルシウムイオン及びリン酸イオンの供給源である。しかしながら、2つのペースト中のイオン供給源は同じである必要はない。
【0032】
カルシウムイオンとリン酸イオンの適切な別々の供給源は、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、カルシウムアルミノシリケート、カルシウムカーボネート、塩化カルシウム、カルシウムアスコルベート、酸化カルシウム、及びリン酸ナトリウム、リン酸二カリウム、及びリン酸三カリウムのいずれかである。別々の供給源からカルシウム及びリン酸イオンを供給する場合には、カルシウム及びリン酸イオンが放出のために遊離状態で利用できるように、ハイドロキシアパタイトを産生しない比率で該供給源を供給するべく注意を払うべきである。
【0033】
カルシウム及びリン酸イオンの供給源の粒度は、予定されている歯科用セメントの用途によって異なる。例えば歯冠及びブリッジセメント用の粒子は標準的に、最終的セメント層に適したフィルム厚を達成するべく20μm未満である。歯列矯正用セメント向けの粒度は当該技術分野において既知の通り、さらに広い範囲を有する。特定の利用分野のための粒度の選択は、熟練した施術者の技能範囲内に入る。
【0034】
レジンモノマー成分
レジンモノマー成分は、重合可能な強化用ベースレジンモノマー、少なくとも5重量%、好ましくは約5重量%〜約65重量%(例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、62又は65重量%)の重合可能な接着レジンモノマー、及び任意に1つ以上の重合可能な希釈モノマーを含有している。重合可能な接着レジンモノマーと強化用ベースレジンモノマーの比率は、さほど重要ではない。しかしながらレジンモノマー成分の組成は好ましくはこれらのイオン供給源から最大のカルシウム及びリン酸イオンが放出されるように調整される。
【0035】
重合可能な強化用ベースレジンモノマー
適切な重合可能な強化用ベースレジンモノマーには、1,6−ビス(メタクリルオキシ−2−エトキシカルボニルアミノ)−2,4,4−トリメチルヘキサン(ウレタンジメタクリレート、UDMA),2,2−ビス[p−(2’−ハイドロキシ、3’−メタクリルオキシプロポキシ)フェニレン]−プロパン(ビス−GMA)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(EBPADMA)、及びその混合物が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0036】
重合可能な接着レジンモノマー
標準的には、重合可能な接着レジンモノマーは、無水物とハイドロキシルを含有する重合可能なモノマーとの間の反応により形成された付加反応生成物である。適切な重合可能な接着レジンモノマーとしては、ピロメリット酸二無水物GDM(グリセロールジメタクリレート)付加物(PMGDM)、ピロメリット酸二無水物HEMA(HEMA=2−ハイドロキシエチルメタクリレート)付加物(PMDM)、ビフェニルジアンハイドライドGDM付加物(BP−GDM)、ビフェニルジアンハイドライドHEMA付加物(BP−HEMA)、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸ジアンハイドライドGDM付加物(BPh−GDM)、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸ジアンハイドライドHEMA付加物(BPh−HEMA)、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジアンハイドライドGDM付加物(BCOE−GDM)、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジアンハイドライドHEMA付加物(BCOE−HEMA)、4,4’−オキシ二安息香酸ジアンハイドライドGDM付加物(ODB−GDM)、4,4’−オキシ二安息香酸ジアンハイドライドHEMA付加物(ODB−HEMA);5−(2,5ジオキソテトラハイドロ−3−フラニル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸アンハイドライドGDM付加物(B4400−GDM)、5−(2,5ジオキソテトラハイドロ−3−フラニル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸アンハイドライドHEMA付加物(B4400−HEMA)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸アンハイドライド)−GDM付加物(IPA−GDM)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸アンハイドライド)−HEMA付加物(IPA−HEMA)、無水フタル酸GDM付加物(PhTh−GDM)、無水フタル酸HEMA付加物(PhTh−HEMA)、ピロメリット酸二無水物GDA(グリセロールジアクリレート)付加物(PMGDA)、ピロメリット酸二無水物−HEA(ハイドロキシエチルアクリレート)付加物(PMDAc)、ビフェニルジアンハイドライドGDA付加物(BP−GDA)、ビフェニルジアンハイドライドHEA付加物(BP−HEA)、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸ジアンハイドライドGDA付加物(BPh−GDA)、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸ジアンハイドライドHEA付加物(BPh−HEA)、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジアンハイドライドGDA付加物(BCOE−GDA)、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジアンハイドライドHEA付加物(BCOE−HEA)、5−(2,5ジオキソテトラハイドロ−3−フラニル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸アンハイドライドGDA付加物(B4400−GDA)、5−(2,5ジオキソテトラハイドロ−3−フラニル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸アンハイドライドHEA付加物(B4400−HEA)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸アンハイドライド)−GDA付加物(IPA−GDA)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸アンハイドライド)−HEA付加物(IPA−HEA)、無水フタル酸GDA付加物(PhTh−GDA)、無水フタル酸HEA付加物(PhTh−HEA)、及びその混合物が含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0037】
PMGDMは好ましい接着レジンモノマーであり、PMGDMの好ましい濃度はレジンモノマー成分の45%〜56%である。
【0038】
重合可能な希釈モノマー
所望であれば、適切な強度を提供し粘度を制御するために重合可能な希釈モノマーを内含させることが可能である。2ペースト処方においては、重合可能な希釈モノマーがペーストA、ペーストB又は両方に0〜約50重量%の濃度で存在する可能性がある。有用な重合可能な希釈モノマーとしては2−ハイドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、グリセロールジメタクリレート(GDM)、エチル−α−ハイドロキシメチルアクリレート(EHMA)、テトラハイドロフルフリルメタクリレート(THFM)、ハイドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、2−ハイドロキシエチルアクリレート(HEA)、グリセロールジアクリレート(GDA)、テトラハイドロフルフリルアクリレート(THFA)、ハイドロキシプロピルアクリレート(HPMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、テトラエチレングルコールジメタクリレート(TETDMA)、ベンジルメタクリレート(BMA)、1,10,−デカメチレンジメタクリレート(DMDMA)、ヘキサメチレンジメタクリレート(HMDMA)、1,10−デカメチレンジメタクリレート(DMDMA)、及びその混合物が含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0039】
重合開始剤
重合開始剤には、光開始剤、触媒及び開始助剤(Co-initiator)という3つのタイプが含まれる。光開始剤は、一定の波長又は波長帯域の光の照射を受けた後にレジンモノマーの重合を開始させることのできる化合物である。一部のタイプの光開始剤は単独で使用された時点で、この重合を開始でき、他のものは光開始剤と共に第2の開始助剤を使用することを必要とする。光開始剤としては、380nm〜550nmの範囲内の波長の光により励起されることになるカンファーキノン、ベンジル及びモノ−及びビス(アシルホスフィンオキサイド)及びその誘導体が含まれ得る。UV光開始剤にはホスフィンオキサイド及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンが含まれる。
【0040】
触媒は、一般に開始助剤と呼ばれる第2の化合物と反応させることによってか又は熱を加えることによってレジンモノマーの重合を化学的に開始させることのできる化合物である。触媒の例としては、ベンゾイルパーオキサイド(BP)が含まれるがこれに制限されるわけではない。
【0041】
開始助剤というのは、レジンモノマーの重合を加速するべく触媒及び/又は光開始剤と反応する化合物である。例としては(2−(4−ジメチル−アミノフェニル)エタノール)(DMAPE)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノパラトルイジン及び業界で知られているその他のものがある。開始助剤には、窒素置換基R1及びR2が同じであっても異なっていてよく、アルキル又はアルキルアルコールで構成されていてよく、又Xが電子求引基である一般構造R12−N−C64−Xの第3アミンが含まれ得る。例えば当該技術分野において既知の脂肪族第3アミンといったその他のアミン促進剤も同じくこの目的に適している。
【0042】
レジンモノマー重合用の重合開始剤は同じであっても異なっていてもよい。一部の2ペースト実施形態(例えば表1で示されている実施形態)においては、1つのペースト(例えばペーストA)内に光開始剤(例えばカンファーキノン)及び開始助剤(例えばDMAPE)が存在する。開始助剤は同様に、別のペースト(例えばペーストB)内で触媒(例えばベンゾイルペルオキサイド=BPO)のための重合促進剤として作用し得る。別のペースト(例えばペーストB)は同じくカンファーキノンといったような光開始剤も含有し得る。
【0043】
任意の添加剤
フッ化物イオン供給源を本発明の再石灰化作用のあるセメント中に含有させることができる。歯の硬質組織の脱灰及び再石灰化に対するフルオライドの有益な効果は、インビボ及びインビトロ実験において充分立証されてきている(テン・ケート(Ten Cate),1984, 1990)。2ペースト実施形態では、該フッ化物イオン供給源は、ペーストA、ペーストB中に入っていてよく、そうでなければ、ペーストAとペーストBを合わせて混合した後に添加することもできる。適切なフッ化物イオン供給源としては、Na2SiF6、CaF2、SrF2、NaF、NaPO3F、NaKF6PO3、K2SiF6、F6NaP、NaSbF6、KSbF6、F6KP及びその混合物が含まれるが、これらに制限されるわけではない。再石灰化作用のあるセメント中のフッ化物イオン供給源の最終濃度は好ましくは約2重量%である。
【0044】
その他の任意の添加物としては、粘度を制御するための不活性フィラー(二酸化チタン、二酸化錫、酸化アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛、硫酸バリウム)及び顔料(酸化チタンといったような金属酸化物)が含まれる。2ペースト実施形態においては、これらの添加剤のどれでも、一方又は両方のペースト内に存在し得る。
【0045】
カルシウム及びリン酸イオンの供給源のうちの少なくともいくつかに加えて又はその代りに、ペーストに強度増進用フィラー及び/又はX線不透過度増加用作用物質を補足することもできる。フィラーには、ポリマー粒子(例えば転換されたポリマー粉末又は噴霧されたポリマー球体、ゾル−ゲル加工されたポリマー粒子、あらゆるポリマー微粒子)、鉱物粒子、金属粒子及びガラスフィラーが含まれるがこれらに制限されるわけではない。適切なガラスフィラーとしては、バリウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、シリカ、シリケートガラス、クオーツ、バリウムシリケートガラス、ストロンチウムシリケートガラス、バリウムボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、バリウムアルミノフルオロシリケートガラス、リチウムシリケート、アモルファスシリカ、バリウムマグネシウムアルミノシリケートガラス、バリウムアルミノシリケートガラス、ストロンチウムアルミニウム−ボロシリケートガラス;ストロンチウムアルミノフルオロシリケートガラス、アモルファスシリカ、ジルコニウムシリケートガラス、チタニウムシリケートガラスなど、ならびにその混合物が含まれる。フルオライド含有ガラスは、同じくフッ化物イオン供給源を提供することから有用である。米国特許第6,730,715号明細書及び同第6,403,676号明細書を参照のこと。フィラーは、球、規則的又は非規則的形状、繊維、フィラメント又はウィスカーなどを含めたあらゆる形態又は形状を有することができる。
【0046】
任意に、還元性阻害物質又は安定化剤、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を含有させて早過ぎる重合を防止し貯蔵安定性を延長させることもできる。
【0047】
再石灰化作用のあるセメント処方の製造方法
本発明の一部の実施形態においては、再石灰化作用のあるセメントは、それを形成するべく2つのペースト(例えばペーストAとペーストB)を混合することによって作られる。ペーストAは、重合可能な強化用ベースレジンモノマー、及び光開始剤であり得る重合開始剤を含む。ペーストAは任意に開始助剤を含有し得る。ペーストBは、重合可能な接着レジンモノマー、及び光開始剤でありうる重合開始剤を含む。ペーストBは任意に触媒を含有し得る。ペーストA及びペーストBの少なくとも1つは、少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン及びリン酸イオンを再石灰化作用のあるセメント内に提供するような量でカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源を含む。これらの実施形態では、ペーストA、ペーストB、又はペーストAとペーストBの両方が重合可能な希釈モノマーを含有し得る。
【0048】
その他の実施形態においては、再石灰化作用のあるセメントは、1つのペーストと光開始剤でありうる少なくとも1つの重合開始剤を合わせて混合することによって作られる。これらの実施形態では、ペーストは重合可能な強化用ベースレジンモノマー、重合可能な接着レジンモノマー、合計で少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源、及び任意に重合可能な希釈モノマーを含む。ペーストは同様に開始助剤を含有すること又は開始助剤及び触媒を含有することもできる。
【0049】
さらにもう1つの実施形態においては、再石灰化作用のあるセメントは、光開始剤を含むペースト内でレジンモノマー成分の重合を開始することにより作られる。これらの実施形態においては、該ペーストは、光開始剤、重合可能な強化用ベースレジンモノマー、重合可能な接着レジンモノマー、合計で少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源、及び任意に重合可能な希釈モノマーを含む。ペーストは同様に開始助剤を含有することができる。
【0050】
2つのペーストが使用されている場合、これらは好都合には例えば金属又はプラスチックのスパチュラを用いてガラスの板又は紙パッド上で手で練ることによって、合わせて混合させることができる。代替的には、機械式混合装置例えばシリンジ又はプラスチックのボルテックスミキシングチップを使用することもできる。混合時間は、操作時間よりも短かい時間混合が実施されるかぎりにおいて、さほど重要ではない。混合は好ましくは混合物を加熱せず、好ましくは2つのペーストを徹底的に配合する。好ましい操作時間は利用分野に依存し、当該技術分野において既知の通り、開始剤及び阻害物質の濃度を変動させることによって変動させることができる。これらの原理は、1つ以上の重合開始剤及び阻害物質又は安定化剤と1ペースト処方を混合することにもあてはまる。
【0051】
一部の好ましい2ペースト実施形態においては、ペーストA及びペーストBの混合物は重量で約1:1.5の比率にある。ただし、この比率は、開始剤の比率もまた改変され、所望の操作及び硬化時間を達成するために調整されるかぎりにおいて、改変可能である。このような改変は、処方者によく知られている。重量で約1:1の比率で混合可能な2ペースト実施形態の一例については、実施例1を参照のこと。
【0052】
キット
本発明は同様に本発明のセメント処方の成分を含み、かつ該セメントを製造し、使用するための使用説明書をも含み得るキットも提供する。ペーストA及びペーストBの各々の成分は、例えば別々のバルク容器又はシリンジ内に包装され得る。任意に、ペーストA及びペーストBの成分を、2筒式シリンジ内で提供することができる。
【0053】
その他のキットは、重合可能な強化用ベースレジンモノマー、重合可能な接着レジンモノマー、少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源、少なくとも1つの光開始剤、及び任意に重合可能な希釈モノマーを含むペーストを含む。重合可能な接着レジンモノマーの含有量は再石灰化作用のある歯科用セメントのレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である。ペーストは任意に開始助剤を含有し得る。
【0054】
その他のキットは、重合可能な強化用ベースレジンモノマー、重合可能な接着レジンモノマー、少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源、及び任意に重合可能な希釈モノマーを含むペーストを含む。重合可能な接着レジンモノマーの含有量は再石灰化作用のある歯科用セメントのレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である。キットは任意に(別包装された状態で)少なくとも1つの重合開始剤、及び任意に開始助剤及び触媒を含む。
【0055】
キットのその他の構成要素としては、以下の品目のうちのいずれか1つ以上が含まれ得る。すなわち、歯の表面状態を調節するためのエッチングゲル、ブラシ、セメント用アプリケータ、シリンジチップ及び/又はミキシングチップ、セメントを混合又は分配するためのスパチュラ、紙製ミキシングパッド及び補足的接着剤。
【0056】
本開示において引用されている全ての特許、特許出願及び参考文献は、明示的に本明細書に参照により援用されている。
【0057】
上述の開示は本発明を一般的に記述している。以下の特定の実施例を参考にして、より完全に理解することが可能であるが、これらの実施例は、単なる例示を目的として提供されており、本発明の範囲を制限するよう意図されているわけではない。
【実施例】
【0058】
実施例1
矯正用ブラケット向け2ペースト接着剤組成物の調製
表1に示されているような2つのペーストを重量で1:1.5のA:B比で混合した。化学的に誘発される操作時間及び硬化時間を、コンピュータ制御の熱電対で測定した。室温での操作時間は10分を超えていた。37℃における硬化時間は4分であった。
【0059】
【表1】

【0060】
表2は、1:1の重量比で混合され得る2ペースト接着剤組成物を示す。
【0061】
【表2】

【0062】
実施例2
曲げ強度の測定
上述の実施例で記述されている通りに調製された材料の曲げ強度を、3点屈曲で2×2×25mmの棒材上で24時間にて測定した。曲げ強度試料は、ペーストAとペーストBを混合し、各側で20秒ずつモールドを光で硬化することにより製作した。これを37℃で水中に保管した。曲げ強度標本のために、フルオライド含有ペーストも混合した。A+Bの混合物全体の2.0重量%となるようにペーストAにヘキサフルオロケイ酸ナトリウム、Na2SiF6を添加した。100Nのロードセルを用いて0.5mm/分のクロスヘッド速度で汎用試験機内で棒材を破断した。これらの標本の曲げ強度は表3に示されている。
【0063】
【表3】

【0064】
実施例3
再石灰化作用のあるセメントでエナメル質に固着された矯正用ブラケットのせん断試験
エナメル質に対し矯正用ブラケットを固着するためには、クロラミンT溶液に保存した抜歯されたヒトの門歯、犬歯及び第3大臼歯を使用した。歯を洗い流し、わずかに乾かして大部分の水を除去した。20秒間10%のH3PO4ゲルで頬面をエッチングし、10秒間洗い流し、その後5秒間空気流で乾燥させた。
【0065】
ペーストA(0.0178g)をペーストB(0.0267g)と30秒間混合し、再石灰化作用のあるセメント(「DCPAセメント」)を形成させた。ペーストAとペーストBの組成は表1に示されている。少量のペーストを、矯正用ブラケット(ステンレス鋼、スタンダードエッジワイズの矯正用ブラケット、トルク0°、角部分0°;OSE株式会社、メリーランド州ゲイザースバーグ(Gaithersburg,MD))の裏面上のメッシュ内に押し込み、次にさらに多くのペーストを付加して厚み約1mmの層を形成させた。歯の表面にブラケットを適合させ、余剰の接着剤が側方から押出されるような形でしっかりと押した。余剰分をエクスプローラー(explorer)で除去した。接着剤を、矯正用ブラケットの各側上で20秒間(合計80秒)光で硬化させた。パイロットブラケットドリフト実験により、5個中2個のブラケットが15分間にわたりドリフトすることが示された。
【0066】
対照材料としてパルプデントオルト−チョイスOBA(Pulpdent Ortho-Choice OBA)(パルプデント社(Pulpdent Corp.)マサチューセッツ州ウォータータウン(Watertown, MA))を使用した。ブラケットを以下のメーカーの使用説明に従って取付けた。すなわち各々の歯を乾燥させ、表面を35%のH3PO4半ゲルで20秒間エッチングし、10秒洗い流し、5秒間空気流で乾燥させた。固着用レジンの非常に薄い層を歯の表面に塗布した。ブラケットの裏面上のメッシュにブラケット接着剤を少量押し込み、次にさらに多くの接着剤を付加して薄い層を作った。余剰の接着剤が側面上に出現するようにブラケットを歯の上にしっかりと押しつけた。余剰の材料をエクスプローラーで除去し、各々の側を10分間(計40秒)硬化した。
【0067】
長期強度研究のためには、だ液様の溶液中に37℃で歯を保管した。20分、24時間及び1週間の時点でせん断固着強度をテストした。
【0068】
せん断試験のために歯をとりつけるために、90°に湾曲させた歯列矯正ワイヤを歯列矯正用ゴムバンドで歯の上のブラケットに取付けた。このワイヤをサーベイヤ(surveyor)内に挿入してブラケットを垂直に心合せさせた。2.5cmの高さの管にアクリルトレイ材料をはめ込んだ。歯をアクリル内に降ろし、アクリルが硬化するまでそこに放置した。
【0069】
汎用試験機の中で埋込まれた歯とブラケットをテストした。5kNのロードセルを用いて1mm/分のクロスヘッド速度でナイフの刃でブラケットをせん断して分離した。結果は表4に示されている。DCPAセメントと対照の材料の間には統計的差異はなかった(2ウェイANOVA,SNKP>0.05)。
【0070】
【表4】

【0071】
実施例4
臨床研究
この研究に参加することを同意した11人の患者は、包括歯列矯正治療の一部分として抜歯が予定された同じアーチ内の対称的左右小臼歯を有していた。38本の歯が研究に利用できることになった。各対から1本ずつの歯を対照群に無作為に割当て(トランスボンド(Transbond)TMXT;3Mユニテック(Unitek)、カリフォルニア州モンロヴィア(Monrovia, CA))、もう1本を実験群に割当てた(表1に示されている通りのセメント;「DCPAセメント」)。
【0072】
歯の顔面表面を、フルオライドを含まず油を含まない軽石で清浄し、水で洗い流した。歯をコットンロールで隔離し乾燥させた。エッチングゲルで15秒間エナメル質をエッチングし(3Mユニテック、モンロビア、カリフォルニア州)、次に水で15秒間洗い流した。ユニテックTMトランスボンド(Transbond)XTプライマ(3Mユニテック、モンロビア、カリフォルニア州)の薄いコーティングを、対照セメントのみについて使い捨てブラシでエッチング済み表面に設置した。オルトオーガナイザー(Ortho Organizer)小臼歯ブラケットを対照セメント又はDCPAで充填したレジンセメントのいずれかでセメント固定した。ブラケットを歯冠の顔面表面上に位置づけ、ブラケットの先端縁部が歯肉から約1mmのところにある状態で、近心及び末端辺縁尾根部の間に心出しした。セメントを60秒間光で硬化した。プラーク−トラッピング用環帯(annulus)は直径7mm、厚み0.75mmの透明プラスチック環であった。固着手順の後、環帯をブラケット上に設置して、ブラケットのまわりからプラークが除去されるのを阻止した。これを弾性結紮糸でブラケットにしっかり固定した。
【0073】
設置から30日〜180日後に抜歯が行なわれた。抜歯した歯を2%のナトリウムヒポクロリット溶液中に保管し、無作為番号コードを割当てた後マイクロ放射線写真により分析した。厚み約180μmの切片をカットした。接触マイクロ放射線写真を撮影した。メリーランド州ゲイザーバーグにある米国標準技術局(National Institute of Standards and Technology)のパッフェンバーガー研究センター(Paffenbarger Research Center)の調査官によりデジタル画像解析が行なわれた。
【0074】
ブラケット縁部からの距離の関数として穿堀性窩洞形成及び病巣の石灰分含量について病巣を評価した。マイナスの数字は、ブラケットの下側の長さを表わす。対照試料上の平均深度は116.5±60.2μmであった。DCPA試料上の平均深度は92.5±58.5μmであった。図1を参照のこと。この測定結果は、いくつかの要因に起因する大きな分散値を伴っていた。例えば、プラスチックシートは頻繁に失なわれ、これらの事象の制御又は記録は全く行なわれなかった。第2に、各歯の上にブラケットがあった時間は、30日〜約180日まで変動した。この時間の後、プラーク損傷は非常に重大であったため、実験用セメントと対照セメントの間の差異は失なわれた。これらの不幸な出来事にもかかわらず、実験用セメントの使用に起因する有意な改善が、ブラケットの縁部から又はブラケットの下の深度の関数として石灰分密度を測定した場合に示された。実験用セメントを伴う18の検査対象の歯のうち、穿堀性窩洞を有していたのは7本であり、対照セメントの下では、11本の歯が穿堀性窩洞を示した。
【0075】
図2A及び2Bは、相対的石灰分含有量(健康なエナメル質の%)を示している。これを見れば容易にわかるように、対照データを示す左側のグラフ(図2A)に対し図2B(DCPAセメント)の左下コーナーにデータ点の欠如が存在する。純粋に説明的なものではあるが、データのこの視覚的解釈は、ブラケットにきわめて近いDCPAの保護的効果が存在することを暗示している。かかる解釈は、セメントから約500マイクロメートル離れたところまで差異が存在する指数関数的減衰モデルにおけるデータと一貫している。すなわち、最後のデータセット(ブラケット縁部まで450μmの距離)以外の全てのデータセットにおいて、DCPAセメントは対照セメントよりも高いエナメル質、石灰分含有量を導いた。図3を参照のこと。
【0076】
抜歯した歯での再石灰化を、以前に記述された通りに(ディッケンズ(Dickens)ら,Dental Materials 29, 558-66,2003))測定した。簡単に言うと、抜歯したヒトの臼歯を、咬合平面に平行に歯冠を通ってカットして平坦な象牙質表面を露呈させた。部分的に周辺エナメル質内に延びている4つの窩洞を穿孔した。矯正用の実験用セメント又はカルシウム−ホスフェートを含まない対照材料のいずれかを窩洞に充填する前に、脱灰溶液に歯を48時間暴露した。修復が完了した時点で、唾液様の溶液中に歯を浸漬して6週間37℃でインキュベートした。
【0077】
厚み180μmの横断切片をカットし、マイクロ放射線写真を撮影した。画像形成ソフトウェアを用いて、該セメントに隣接する石灰分含有量を分析し、それを対照材料に隣接する石灰分含有量と比較した。結果は、象牙質壁が33±18(n=4)%の再石灰化を受けたことを示していた。エナメル質内では、1本の歯だけが27%の再石灰化を示した。その他の歯は、測定可能なエナメル質がなかったか又はさらなる脱灰を有していた。図4は、セメントの予測上の再石灰化潜在能力の尺度としての生理食塩水中へのフルオライド、カルシウム及びリン酸イオンの放出を示している。
【0078】
実施例5
フィルム厚及びせん断固着強度に対する種々の濃度のPMGDM及びDCPAの効果
バルクせん断固着強度の測定。抜歯したヒトの臼歯をプラスチックホルダー内にとりつけ、低速ダイヤモンドソーで歯冠の上3分の1を切断して平坦な象牙質表面を露出させた。切断した歯を15秒間37%のリン酸で酸エッチングに付し、洗い流し、乾燥させた。セメント(ペーストA及びペーストB、実施例1参照)を、ミキシングパッド上に分配し、徹底的に混合した。
【0079】
片側をテフロン(登録商標)テープで覆った4mmの中央穴を伴う直径10mm高さ2mmの金属環をエッチングした歯の表面に置いた。金属ディスクを歯の表面上の取付け装置内に設置し、混合されたセメントをこれに充填した。次にこれを10分間150N前後の負荷の下に置き(米国マサチューセッツ州カントン(Canton, MA, USA)のインストロン社(Instron Corporation))、安定化をさらに増強した。試料を30分前後ベンチトップ上に取って置いてから、24時間37℃の加湿設備内に入れた。
【0080】
固着した金属環をナイフエッジの刃で、汎用試験機(米国マサチューセッツ州カントンのインストロン社)を用いて0.5mm/分のクロスヘッド速度でせん断分離した。固着を破断するのに必要とされる力を固着された面積で除す。せん断固着強度はニュートン・mm2単位で報告されている。
【0081】
フィルム固着強度の測定。抜歯したヒトの臼歯をプラスチックホルダー内にとりつけ、低速ダイヤモンドソーで歯冠の上3分の1を切断して平坦な象牙質表面を露出した。非貴金属セラミクス合金シリンダRexillium(登録商標) III (コネチカット州ウォーリングフォール(Wallingford, CT)のペントロン株式会社(Pentron Inc))から、直径5mm前後、長さ2mmの金属ディスクを切断した。切断したディスクの面を、グリットサイズ1000、1200及び2400のシリコンカーバイド研磨紙で研磨して平坦な表面を得た。次に表面を、50ミクロンの酸化アルミニウムを用いてサンドブラストした。
【0082】
切断した歯を15秒間37%のリン酸で酸エッチングし、洗い流し、乾燥させた。ミキシングパッド上にセメント(ペーストA及びペーストB;実施例1参照)を分配し、撤底的に混合した。混合したセメント少量を、準備した金属ディスクに均等に塗布し、状態調節した歯の表面に置いた。金属キャップ(平滑嵌合(smooth fit)式でプラスチックホルダー用に設計されたもの)を金属ボタンの上に設置して、安定化させ、ボタンの下にセメントを均等に分布させた。次にこれを10秒前後、20N前後の負荷の下に置き(米国マサチューセッツ州カントンのインストロン社)、さらに安定化を増強させた。金属キャップを除去し、試料を30分前後ベンチトップ上に取って置いてから、24時間37℃の加湿設備内に入れた。
【0083】
固着した金属ボタンをナイフエッジの刃で、汎用試験機(米国マサチューセッツ州カントンのインストロン社)を用いて0.5mm/分のクロスヘッド速度でせん断分離した。固着を破断するのに必要とされる力を固着された面積で除す。せん断固着強度はニュートン・mm2単位で報告されている。
【0084】
【表5】

表5.歯冠及びブリッジセメントのフィルム厚(μm)及びMPa単位のせん断固着強度(SBS)
【0085】
実施例6
付加的なセメントの実施形態
【0086】
【表6】

【0087】
【表7】

【0088】
【表8】

【0089】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】ブラケット縁部からの一定の距離範囲全体の平均窩洞形成を示すグラフである。
【図2】ブラケット縁部からの距離の関数としての病巣石灰分含有量を示すグラフである。図2Aは、対照セメントについてのブラケット縁部からの距離の関数としての病巣石灰分含有量を示すグラフである。図2Bは、実験用セメントについてのブラケット縁部からの距離の関数としての病巣石灰分含有量を示すグラフである。
【図3】ブラケット縁部からの距離の関数としての病巣石灰分含有量の指数関数減衰モデルを示すグラフである。対照セメント(下部ライン)及び実験用セメント(上部ライン)についてのデータが示されている。単一のアスタリスクは、ブラケット縁部から最高320μmの距離まで、実験用セメントが、対照材料に比べて有意に高く病巣石灰分含有量に影響を及ぼしたということを表わしている。
【図4】最長270日目までの生理的食塩水中における歯列矯正セメントからのフルオライド、カルシウム及びリン酸イオンの放出を示すグラフである。図4Aは、フルオライド含有歯列矯正用Ca−PO4セメント及び市販の歯列矯正用固着材料(PD; パルプデント・オルト−チョイス(Pulpdent Ortho-Choice)OBA;マサチューセッツ州ウォータータウン(Watertown, MA)のパルプデント社(Pulpdent Corp.))からのフルオライド放出である。図4Bは、フルオライドを含まない(NF)及びフルオライドを含有する(F)歯列矯正用Ca−PO4セメントからのカルシウムイオン放出である。図4Cは、フルオライドを含まない(NF)及びフルオライドを含有する(F)歯列矯正用Ca−PO4セメントからのリン酸イオンの放出である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合可能な強化用ベースレジンモノマー、
重合可能な接着レジンモノマー、及び任意に
重合可能な希釈モノマー、
を含むレジンモノマー成分、
少なくとも1つの重合開始剤、
カルシウムイオン供給源、及び
リン酸イオン供給源、
を含む再石灰化作用のある歯科用セメントにおいて、
前記重合可能な接着レジンモノマーの含有量が前記レジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%であり、前記カルシウムイオン供給源及び前記リン酸イオン供給源の含有量が前記セメントの少なくとも約5重量%であるが75重量%未満であるセメント。
【請求項2】
単一化合物が前記カルシウムイオン供給源及び前記リン酸イオン供給源である、請求項1に記載のセメント。
【請求項3】
単一化合物が前記カルシウムイオン供給源及び前記リン酸イオン供給源であり、前記単一化合物が無水リン酸二カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸二カルシウムジハイドレート、リン酸三カルシウム及びその混合物から成る群から選択されている、請求項1に記載のセメント。
【請求項4】
前記少なくとも1つの重合開始剤が光開始剤である、請求項1に記載のセメント。
【請求項5】
2つ以上の重合開始剤を含むセメントであって、前記重合開始剤のうちの少なくとも1つが開始助剤である、請求項1に記載のセメント。
【請求項6】
2つ以上の重合開始剤を含むセメントであって、前記重合開始剤のうちの少なくとも1つが触媒である、請求項1に記載のセメント。
【請求項7】
前記カルシウムイオン供給源が塩化カルシウム、硫酸カルシウム、カルシウムアルミノシリケート、カルシウムカーボネート、塩化カルシウム、カルシウムアスコルベート、及び酸化カルシウムから成る群から選択され、前記リン酸イオン供給源がリン酸ナトリウム、リン酸二カリウム、及びリン酸三カリウムから成る群から選択されている、請求項1に記載のセメント。
【請求項8】
前記重合可能な強化用ベースレジンモノマーが1,6−ビス(メタクリルオキシ−2−エトキシカルボニルアミノ)−2,4,4−トリメチルヘキサン(ウレタンジメタクリレート、UDMA)、2,2−ビス[p−(2’−ハイドロキシ−3’−メタクリルオキシプロポキシ)フェニレン]プロパン(ビス−GMA)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(EBPADMA)、及びその混合物から成る群から選択されている、請求項1に記載のセメント。
【請求項9】
前記重合可能な接着レジンモノマーが、ピロメリット酸二無水物GDM(グリセロールジメタクリレート)付加物(PMGDM)、ピロメリット酸二無水物HEMA(HEMA=2−ハイドロキシエチルメタクリレート)付加物(PMDM)、ビフェニルジアンハイドライドGDM付加物(BP−GDM)、ビフェニルジアンハイドライドHEMA付加物(BP−HEMA)、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸ジアンハイドライドGDM付加物(BPh−GDM)、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸ジアンハイドライドHEMA付加物(BPh−HEMA)、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジアンハイドライドGDM付加物(BCOE−GDM)、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジアンハイドライドHEMA付加物(BCOE−HEMA)、4,4’−オキシ二安息香酸ジアンハイドライドGDM付加物(ODB−GDM)、4,4’−オキシ二安息香酸ジアンハイドライドHEMA付加物(ODB−HEMA);5−(2,5ジオキソテトラハイドロ−3−フラニル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸アンハイドライドGDM付加物(B4400−GDM)、5−(2,5ジオキソテトラハイドロ−3−フラニル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸アンハイドライドHEMA付加物(B4400−HEMA)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸アンハイドライド)−GDM付加物(IPA−GDM)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸アンハイドライド)−HEMA付加物(IPA−HEMA)、無水フタル酸GDM付加物(PhTh−GDM)、無水フタル酸HEMA付加物(PhTh−HEMA)、ピロメリット酸二無水物GDA(グリセロールジアクリレート)付加物(PMGDA)、ピロメリット酸二無水物−HEA(ハイドロキシエチルアクリレート)付加物(PMDAc)、ビフェニルジアンハイドライドGDA付加物(BP−GDA)、ビフェニルジアンハイドライドHEA付加物(BP−HEA)、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸ジアンハイドライドGDA付加物(BPh−GDA)、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸ジアンハイドライドHEA付加物(BPh−HEA)、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジアンハイドライドGDA付加物(BCOE−GDA)、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジアンハイドライドHEA付加物(BCOE−HEA)、5−(2,5ジオキソテトラハイドロ−3−フラニル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸アンハイドライドGDA付加物(B4400−GDA)、5−(2,5ジオキソテトラハイドロ−3−フラニル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸アンハイドライドHEA付加物(B4400−HEA)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸アンハイドライド)−GDA付加物(IPA−GDA)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸アンハイドライド)−HEA付加物(IPA−HEA)、無水フタル酸GDA付加物(PhTh−GDA)、無水フタル酸HEA付加物(PhTh−HEA)、及びその混合物から成る群から選択されている、請求項1に記載のセメント。
【請求項10】
前記重合可能な希釈モノマーを含む請求項1に記載のセメント。
【請求項11】
前記重合可能な希釈モノマーを含むセメントであって、前記重合可能な希釈モノマーが、2−ハイドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、グリセロールジメタクリレート(GDM)、エチル−α−ハイドロキシメチルアクリレート(EHMA)、テトラハイドロフルフリルメタクリレート(THFM)、ハイドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、2−ハイドロキシエチルアクリレート(HEA)、グリセロールジアクリレート(GDA)、テトラハイドロフルフリルアクリレート(THFA)、ハイドロキシプロピルアクリレート(HPMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ヘキサメチレンジメタクリレート(HMDMA)、1,10−デカメチレンジメタクリレート(DMDMA)、及びその混合物から成る群から選択されている、請求項1に記載のセメント。
【請求項12】
さらにフッ化物イオン供給源を含む請求項1に記載のセメント。
【請求項13】
さらにフッ化物イオン供給源を含むセメントであって、前記フッ化物イオン供給源が、Na2SiF6、CaF2、SrF2、NaF、NaPO3F、NaKF6PO3、K2SiF6、F6NaP、NaSbF6、KSbF6、F6KP及びその混合物から成る群から選択されている、請求項1に記載のセメント。
【請求項14】
さらにフィラーを含む請求項1に記載のセメント。
【請求項15】
さらにフィラーを含むセメントであって、前記フィラーが、ポリマー粒子、鉱物粒子、金属粒子、バリウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、シリカ、シリケートガラス、クオーツ、バリウムシリケートガラス、ストロンチウムシリケートガラス、バリウムボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、バリウムアルミノフルオロシリケートガラス、リチウムシリケート、アモルファスシリカ、バリウムマグネシウムアルミノシリケートガラス、バリウムアルミノシリケートガラス、ストロンチウムアルミニウム−ボロシリケートガラス;ストロンチウムアルミノフルオロシリケートガラス、アモルファスシリカ、ジルコニウムシリケートガラス、チタニウムシリケートガラス、及びその混合物から成る群から選択されている、請求項1に記載のセメント。
【請求項16】
さらにX線不透過度を増大させるための作用物質を含む、請求項1に記載のセメント。
【請求項17】
さらにX線不透過度を増大させるための作用物質を含むセメントであって、前記作用物質が、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ジルコニア、ヨードホルム、タングステン酸カルシウム、硫酸バリウム及びその混合物から成る群から選択されている、請求項1に記載のセメント。
【請求項18】
約8重量%のトリエチレングリコールジメタクリレート、
約11重量%のウレタンジメタクリレート、
約60重量%の無水リン酸二カルシウム、
約0.2重量%の2−(4−ジメチル−アミノフェニル)エタノール、
約0.2重量%のカンファーキノン、
約12重量%のピロメリティックグリセロールジメタクリレート、
約1重量%のベンゾイルパーオキサイド、
約0.01重量%の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、及び任意に
約2重量%のヘキサフルオロケイ酸ナトリウム、
を含む請求項1に記載のセメント。
【請求項19】
(a)ペーストAが
重合可能な強化用ベースレジンモノマー、
第1の重合開始剤、及び任意に
第1の重合可能な希釈モノマー
を含み、
(b)ペーストBが
重合可能な接着レジンモノマー、
第2の重合開始剤、及び任意に
第2の重合可能な希釈モノマー
を含み、
(c)ペーストAとペーストBのうちの少なくとも1つが、再石灰化作用のある歯科用セメント内で少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン及びリン酸イオンを提供するような量でカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源を含み、
前記重合可能な接着レジンモノマーの含有量が前記再石灰化作用のある歯科用セメントのレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である、ペーストAをペーストBと混合することを含む、請求項1に記載の再石灰化作用のある歯科用セメントの製造方法。
【請求項20】
単一化合物が前記カルシウムイオン供給源及び前記リン酸イオン供給源である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
単一化合物が前記カルシウムイオン供給源及び前記リン酸イオン供給源であり、前記単一化合物が無水リン酸二カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸二カルシウムジハイドレート、リン酸三カルシウム及びその混合物から成る群から選択されている、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第1及び第2の重合開始剤のうちの少なくとも1つが光開始剤である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
ペーストAがさらに開始助剤を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
ペーストBがさらに触媒を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記カルシウムイオン供給源が塩化カルシウム、硫酸カルシウム、カルシウムアルミノシリケート、カルシウムカーボネート、塩化カルシウム、カルシウムアスコルベート、及び酸化カルシウムから成る群から選択され、前記リン酸イオン供給源がリン酸ナトリウム、リン酸二カリウム、及びリン酸三カリウムから成る群から選択されている、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記重合可能な強化用ベースレジンモノマーがウレタンジメタクリレート、ビス−GMA、EBPADMA及びその混合物から成る群から選択されている、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記重合可能な接着レジンモノマーがPMGDM、PMDM、BP−GDM、BP−HEMA、BPh−GDM、BPh−HEMA、BCOE−GDM、BCOE−HEMA、B4400−HEMA、B4400−HEMA、IPA−GDM、IPA−HEMA、PhTh−GDM、PhTh−HEMA、PMGDA、PMDAc、BP−GDA、BP−HEA、BPh−GDA、BPh−HEA、BCOE−GDA、BCOE−HEA、B4400−GDA、B4400−HEA、IPA−GDA、IPA−HEA、PhTh−GDA、PhTh−HEA、及びその混合物から成る群から選択されている、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記第1又は第2の重合可能な希釈モノマーのいずれかがHEMA、GDM、EHMA、THFM、HPMA、HEA、GDA、THFA、HPMA、TEGDMA、HMDMA、DMDMA、及びその混合物から成る群から選択されている、請求項33に記載の方法。
【請求項29】
ペーストA及びペーストBのうちの少なくとも1つがさらにフッ化物イオン供給源を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
ペーストA及びペーストBのうち少なくとも1つがさらにフッ化物イオン供給源を含み、前記フッ化物イオン供給源がNa2SiF6、CaF2、SrF2、NaF、NaPO3F、NaKF6PO3、K2SiF6、F6NaP、NaSbF6、KSBF6、F6KP及びその混合物から成る群から選択されている、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記第2のペーストに対する前記第1のペーストの重量比が約1:1.5である、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
前記第2のペーストに対する前記第1のペーストの重量比が約1:1である、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
ペーストAとペーストBのうちの少なくとも1つがさらにフィラーを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項34】
ペーストAとペーストBのうちの少なくとも1つがさらにフィラーを含み、前記フィラーがポリマー粒子、鉱物粒子、金属粒子、バリウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、シリカ、シリケートガラス、クオーツ、バリウムシリケートガラス、ストロンチウムシリケートガラス、バリウムボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、バリウムアルミノフルオロシリケートガラス、リチウムシリケート、アモルファスシリカ、バリウムマグネシウムアルミノシリケートガラス、バリウムアルミノシリケートガラス、ストロンチウムアルミニウム−ボロシリケートガラス;ストロンチウムアルミノフルオロシリケートガラス、アモルファスシリカ、ジルコニウムシリケートガラス、チタニウムシリケートガラス、及びその混合物から成る群から選択されている、請求項19に記載の方法。
【請求項35】
ペーストAとペーストBのうちの少なくとも1つがさらに、X線不透過度を増大させるための作用物質を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項36】
ペーストA及びペーストBのうちの少なくとも1つがさらに、X線不透過度を増大させるための作用物質を含み、前記作用物質がバリウムガラス、ストロンチウムガラス、ジルコニア、ヨードホルム、タングステン酸カルシウム、硫酸バリウム及びその混合物から成る群から選択されている、請求項19に記載の方法。
【請求項37】
ペーストAが、
約10重量%のトリエチレングリコールジメタクリレート、
約28重量%のウレタンジメタクリレート、
約61重量%の無水リン酸二カルシウム、
約0.5重量%の2−(4−ジメチル−アミノフェニル)エタノール、
約0.2重量%のカンファーキノン、及び任意に
約5重量%のヘキサフルオロケイ酸ナトリウム、
を含み、
ペーストBが、
約31重量%のピロメリティックグリセロールジメタクリレート、
約6重量%のトリエチレングリコールジメタクリレート、
約59重量%の無水リン酸二カルシウム、
約0.2重量%のカンファーキノン、
約3重量%のベンゾイルパーオキサイド、及び
約0.03重量%の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項38】
ペースト及び少なくとも1つの重合開始剤を混合することを含む方法であって、前記ペーストが
(a)重合可能な強化用ベースレジンモノマー、
(b)重合可能な接着レジンモノマー、
(c)少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源、及び任意に
(d)重合可能な希釈モノマー
を含み、
前記重合可能な接着レジンモノマーの含有量が再石灰化作用のある歯科用セメントのレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である、請求項1に記載の再石灰化作用のある歯科用セメントの製造方法。
【請求項39】
前記ペーストがさらに、光開始剤、開始助剤及び触媒のうちの少なくとも1つを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
単一化合物が前記カルシウムイオン供給源及び前記リン酸イオン供給源である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
単一化合物が前記カルシウムイオン供給源及び前記リン酸イオン供給源であり、前記単一化合物が無水リン酸二カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸二カルシウムジハイドレート、リン酸三カルシウム及びその混合物から成る群から選択されている、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記カルシウムイオン供給源が塩化カルシウム、硫酸カルシウム、カルシウムアルミノシリケート、カルシウムカーボネート、塩化カルシウム、カルシウムアスコルベート、及び酸化カルシウムから成る群から選択され、前記リン酸イオン供給源がリン酸ナトリウム、リン酸二カリウム、及びリン酸三カリウムから成る群から選択されている、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記重合可能な強化用ベースレジンモノマーが、1,6−ビス(メタクリルオキシ−2−エトキシカルボニルアミノ)−2,4,4−トリメチルヘキサン(ウレタンジメタクリレート)、2,2−ビス[p−(2’−ハイドロキシ−3’−メタクリルオキシプロポキシ)フェニレン]プロパン(ビス−GMA)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(EBPADMA)、及びその混合物から成る群から選択されている、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記重合可能な接着レジンモノマーがPMGDM、PMDM、BP−GDM、BP−HEMA、BPh−GDM、BPh−HEMA、BCOE−GDM、BCOE−HEMA、B4400−HEMA、B4400−HEMA、IPA−GDM、IPA−HEMA、PhTh−GDM、PhTh−HEMA、PMGDA、PMDAc、BP−GDA、BP−HEA、BPh−GDA、BPh−HEA、BCOE−GDA、BCOE−HEA、B4400−GDA、B4400−HEA、IPA−GDA、IPA−HEA、PhTh−GDA、PhTh−HEA、及びその混合物から成る群から選択されている、請求項45に記載の方法。
【請求項45】
前記重合可能な希釈モノマーが、HEMA、GDM、EHMA、THFM、HPMA、HEA、GDA、THFA、HPMA、TEGDMA、HMDMA、DMDMA、及びその混合物から成る群から選択されている、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
前記ペーストがさらにフッ化物イオン供給源を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
前記ペーストがさらにフッ化物イオン供給源を含み、前記フッ化物イオン供給源がNa2SiF6、CaF2、SrF2、NaF、NaPO3F、NaKF6PO3、K2SiF6、F6NaP、NaSbF6、KSbF6、F6KP及びその混合物から成る群から選択されている、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
前記ペーストがさらにフィラーを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
前記ペーストがさらにフィラーを含み、前記フィラーが、ポリマー粒子、鉱物粒子、金属粒子、バリウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、シリカ、シリケートガラス、クオーツ、バリウムシリケートガラス、ストロンチウムシリケートガラス、バリウムボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、バリウムアルミノフルオロシリケートガラス、リチウムシリケート、アモルファスシリカ、バリウムマグネシウムアルミノシリケートガラス、バリウムアルミノシリケートガラス、ストロンチウムアルミニウム−ボロシリケートガラス;ストロンチウムアルミノフルオロシリケートガラス、アモルファスシリカ、ジルコニウムシリケートガラス、チタニウムシリケートガラス、及びその混合物から成る群から選択されている、請求項38に記載の方法。
【請求項50】
前記ペーストがさらに、X線不透過度を増大させるための作用物質を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項51】
前記ペーストがさらに、X線不透過度を増大させるための作用物質を含み、前記作用物質がバリウムガラス、ストロンチウムガラス、ジルコニア、ヨードホルム、タングステン酸カルシウム、硫酸バリウム及びその混合物から成る群から選択されている、請求項38に記載の方法。
【請求項52】
カルシウムイオン供給源、
リン酸イオン供給源、及び
重合された強化用ベースレジン、
重合された接着レジン、及び任意に
重合された希釈モノマー、
を含む重合されたレジン成分、
を含む固化した再石灰化作用のある歯科用セメントにおいて、
前記重合された接着レジンの含有量が前記レジン成分の約5重量%〜約65重量%であり、前記カルシウムイオン供給源及び前記リン酸イオン供給源の含有量が、固化したセメントの少なくとも約5重量%であるが75重量%未満である、固化した再石灰化作用のある歯科用セメント。
【請求項53】
単一化合物が前記カルシウムイオン供給源及び前記リン酸イオン供給源である、請求項52に記載の固化した再石灰化作用のある歯科用セメント。
【請求項54】
単一化合物が前記カルシウムイオン供給源及び前記リン酸イオン供給源であり、前記単一化合物が無水リン酸二カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸二カルシウムジハイドレート、リン酸三カルシウム及びその混合物から成る群から選択されている、請求項52に記載の固化した再石灰化作用のある歯科用セメント。
【請求項55】
前記カルシウムイオン供給源が塩化カルシウム、硫酸カルシウム、カルシウムアルミノシリケート、カルシウムカーボネート、塩化カルシウム、カルシウムアスコルベート、及び酸化カルシウムから成る群から選択され、前記リン酸イオン供給源が、リン酸ナトリウム、リン酸二カリウム、及びリン酸三カリウムから成る群から選択されている、請求項52に記載の固化した再石灰化作用のある歯科用セメント。
【請求項56】
前記重合された強化用ベースレジンモノマーがウレタンジメタクリレート、ビス−GMA、EBPADMA及びその混合物から成る群から選択されている、請求項52に記載の固化した再石灰化作用のある歯科用セメント。
【請求項57】
前記重合された接着レジンモノマーがPMGDM、PMDM、BP−GDM、BP−HEMA、BPh−GDM、BPh−HEMA、BCOE−GDM、BCOE−HEMA、B4400−HEMA、B4400−HEMA、IPA−GDM、IPA−HEMA、PhTh−GDM、PhTh−HEMA、PMGDA、PMDAc、BP−GDA、BP−HEA、BPh−GDA、BPh−HEA、BCOE−GDA、BCOE−HEA、B4400−GDA、B4400−HEA、IPA−GDA、IPA−HEA、PhTh−GDA、PhTh−HEA、及びその混合物から成る群から選択されている、請求項52に記載の固化した再石灰化作用のある歯科用セメント。
【請求項58】
前記重合可能な希釈モノマーがHEMA、GDM、EHMA、THFM、HPMA、HEA、GDA、THFA、HPMA、TEGDMA、HMDMA、DMDMA、及びその混合物から成る群から選択されている、請求項52に記載の固化した再石灰化作用のある歯科用セメント。
【請求項59】
さらにフッ化物イオン供給源を含む、請求項52に記載の固化した再石灰化作用のある歯科用セメント。
【請求項60】
さらにフッ化物イオン供給源を含むセメントであって、前記フッ化物イオン供給源がNa2SiF6、CaF2、SrF2、NaF、NaPO3F、NaKF6PO3、K2SiF6、F6NaP、NaSbF6、KSbF6、F6KP及びその混合物から成る群から選択されている、請求項52に記載の固化した再石灰化作用のある歯科用セメント。
【請求項61】
さらにフィラーを含む、請求項52に記載の固化した再石灰化作用のある歯科用セメント。
【請求項62】
さらにフィラーを含むセメントであって、前記フィラーがポリマー粒子、鉱物粒子、金属粒子、バリウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、シリカ、シリケートガラス、クオーツ、バリウムシリケートガラス、ストロンチウムシリケートガラス、バリウムボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、バリウムアルミノフルオロシリケートガラス、リチウムシリケート、アモルファスシリカ、バリウムマグネシウムアルミノシリケートガラス、バリウムアルミノシリケートガラス、ストロンチウムアルミニウム−ボロシリケートガラス;ストロンチウムアルミノフルオロシリケートガラス、アモルファスシリカ、ジルコニウムシリケートガラス、チタニウムシリケートガラス、及びその混合物から成る群から選択されている、請求項52に記載の固化した再石灰化作用のある歯科用セメント。
【請求項63】
さらに、X線不透過度を増大させるための作用物質を含む、請求項52に記載の固化した再石灰化作用のある歯科用セメント。
【請求項64】
さらにX線不透過度を増大させるための作用物質を含むセメントであって、前記作用物質がバリウムガラス、ストロンチウムガラス、ジルコニア、ヨードホルム、タングステン酸カルシウム、硫酸バリウム及びその混合物から成る群から選択されている、請求項52に記載の固化した再石灰化作用のある歯科用セメント。
【請求項65】
(1)ペーストAをペーストBと混合することであって、
(a)ペーストAが、
重合可能な強化用ベースレジンモノマー、
第1の重合開始剤、及び任意に
第1の重合可能な希釈モノマー
を含み、
(b)ペーストBが
重合可能な接着レジンモノマー、
第2の重合開始剤、及び任意に
第2の重合可能な希釈モノマー
を含み、
(c)ペーストAとペーストBのうちの少なくとも1つが、再石灰化作用のある歯科用セメント内で少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン及びリン酸イオンを提供するような量でカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源を含み、
前記重合可能な接着レジンモノマーの含有量が前記再石灰化作用のある歯科用セメントのレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%であること、及び
(2)重合可能なモノマーの重合を開始させること、
を含んで成る、請求項52に記載の固化した石灰化作用のある歯科用セメントの調製方法。
【請求項66】
ペーストAがさらに開始助剤を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
ペーストBがさらに触媒を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記第1又は第2の重合開始剤のうちの少なくとも1つが光開始剤である、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
(1)ペースト及び少なくとも1つの重合開始剤を混合することであって、前記ペーストが
(a)重合可能な強化用ベースレジンモノマー、
(b)重合可能な接着レジンモノマー、
(c)少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源、及び任意に
(d)重合可能な希釈モノマー
を含み、
前記重合可能な接着レジンモノマーの含有量が再石灰化作用のある歯科用セメントのレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%であること、及び
(2)前記重合可能なモノマーの重合を開始させること、
を含む、請求項52に記載の固化した石灰化作用のある歯科用セメントの調製方法。
【請求項70】
前記少なくとも1つの重合開始剤が開始助剤である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記少なくとも1つの重合開始剤が触媒である、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記ペーストがさらに開始助剤及び触媒を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
ペーストに放射線を照射することを含む方法であって、前記ペーストが
(a)重合可能な強化用ベースレジンモノマー、
(b)重合可能な接着レジンモノマー、
(c)光開始剤、
(d)少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源、及び任意に
(e)重合可能な希釈モノマー、
を含み、
前記重合可能な接着レジンモノマーの含有量が再石灰化作用のある歯科用セメントのレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である、請求項52に記載の固化した石灰化作用のある歯科用セメントの調製方法。
【請求項74】
前記ペーストがさらに開始助剤を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
(a)(1)重合可能な強化用ベースレジンモノマー、
(2)第1の重合開始剤、及び任意に
(3)第1の重合可能な希釈モノマー
である、ペーストAの成分、
(b)(1)重合可能な接着レジンモノマー、
(2)第2の重合開始剤、及び任意に
(3)第2の重合可能な希釈モノマー
である、ペーストBの成分、及び任意に
(c)ペーストAとペーストBを混合して再石灰化作用のある歯科用セメントを形成させるための使用説明書、
を含むキットであって、
ペーストA及びペーストBのうちの少なくとも1つの成分が、前記再石灰化作用のある歯科用セメント内の前記カルシウムイオン及び前記リン酸イオンの少なくとも約5重量%であるが75重量%未満を提供するような量でカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源を含み、前記重合可能な接着レジンモノマーの含有量が前記再石灰化作用のある歯科用セメントの前記レジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である、請求項1に記載の再石灰化作用のある歯科用セメントの調製用キット。
【請求項76】
ペーストAが
約10重量%のトリエチレングリコールジメタクリレート、
約28重量%のウレタンジメタクリレート、
約61重量%の無水リン酸二カルシウム、
約0.5重量%の2−(4−ジメチル−アミノフェニル)エタノール、
約0.2重量%のカンファーキノン、及び任意に
約5重量%のヘキサフルオロケイ酸ナトリウム、
を含み、
ペーストBが、
約31重量%のピロメリティックグリセロールジメタクリレート、
約6重量%のトリエチレングリコールジメタクリレート、
約59重量%の無水リン酸二カルシウム、
約0.2重量%のカンファーキノン、
約3重量%のベンゾイルパーオキサイド、及び
約0.03重量%の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、
を含む、請求項75に記載のキット。
【請求項77】
(1)(a)重合可能な強化用ベースレジンモノマー
(b)含有量が再石灰化作用のある歯科用セメントのレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である重合可能な接着レジンモノマー、
(c)少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源、
(d)少なくとも1つの光開始剤、及び任意に
(e)重合可能な希釈モノマー、
を含むペースト、及び任意に
(2)前記重合可能なモノマーの重合を開始させるための使用説明書、
を含む、請求項1に記載の再石灰化作用のある歯科用セメントを調製するためのキット。
【請求項78】
前記ペーストがさらに開始助剤を含む、請求項77に記載のキット。
【請求項79】
(1)(a)前記重合可能な強化用ベースレジンモノマー
(b)含有量が再石灰化作用のある歯科用セメントのレジンモノマー成分の約5重量%〜約65重量%である重合可能な接着レジンモノマー、
(c)少なくとも約5重量%であるが75重量%未満のカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源、及び任意に
(d)重合可能な希釈モノマー、
を含むペースト、
(2)少なくとも1つの重合開始剤、及び任意に
(3)前記重合可能なモノマーの重合を開始させるための使用説明書、
を含む、請求項1に記載の再石灰化作用のある歯科用セメントを調製するためのキット。
【請求項80】
前記少なくとも1つの重合開始剤が光開始剤である、請求項79に記載のキット。
【請求項81】
前記ペーストがさらに開始助剤を含む、請求項79に記載のキット。
【請求項82】
前記ペーストがさらに開始助剤又は触媒を含む、請求項79に記載のキット。
【請求項83】
さらにシリンジ、エッチングゲル、ブラシ、セメントを塗布するためのアプリケータ、シリンジチップ、ミキシングチップ、スパチュラ、紙製ミキシングパッド及び補足的接着剤から成る群から選択された少なくとも1つの品目を含む、請求項75〜82のいずれか1項に記載のキット。
【請求項84】
歯の少なくとも一部分を請求項1に記載の再石灰化作用のある歯科用セメントと接触させ、それによって前記少なくとも1つの部分を再石灰化することを含む、歯の少なくとも一部分の再石灰化を促進する方法。
【請求項85】
前記歯の前記部分が直接ねらい置いた修復部位である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記歯の前記部分が、穴及び亀裂から成る群から選択される、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記歯の前記部分が平滑である、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記再石灰化作用のある歯科用セメントがベース又はライニング用セメントとして役立つ、請求項84に記載の方法。
【請求項89】
歯又は矯正用ブラケットのうちの少なくとも1つと請求項1に記載の再石灰化作用のある歯科用セメントを接触させ、それによって前記矯正用ブラケットが前記歯に接着するようにすることを含む、歯に矯正用ブラケットを接着させる方法。
【請求項90】
歯又は歯冠のうちの少なくとも1つを請求項1に記載の再石灰化作用のある歯科用セメントと接触させ、それによって前記歯冠が前記歯に接着するようにすることを含む、歯に歯冠を接着させる方法。
【請求項91】
ブリッジ又は少なくとも1本の歯のうちの少なくとも1つを請求項1に記載の再石灰化作用のある歯科用セメントと接触させ、それによって前記少なくとも1本の歯に前記ブリッジが接着するようにすることを含む、少なくとも1本の歯にブリッジを接着させる方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−524635(P2007−524635A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517834(P2006−517834)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/021275
【国際公開番号】WO2005/002531
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(506001572)エーディーエー ファウンデーション (1)
【Fターム(参考)】