説明

冷凍ます寿司用寿司飯の製造方法、及び冷凍ます寿司の製造方法

【課題】冷凍ます寿司に適した炊飯時の米、水の配合割合や、合わせ酢の配合割合を工夫した寿司飯の製造方法の提供。その製造方法で得られた寿司飯を利用し、握り寿司のような食感や、満足の得られる味覚が得られるような冷凍ます寿司の製造方法の提供。
【解決手段】米の重量に対して1.1〜1.15倍の重量の水で炊飯し、とぐ前150gの米に対して合わせ酢を35〜40mlの割合で炊き上がった米に合わせ酢を混ぜ合わせて寿司飯を作る、冷凍ます寿司用寿司飯の製造方法。押し型内に厚み3〜5mmの鱒を敷き、上記製造方法で製造された寿司飯を、押し型内の鱒の上に載せ、押し型内で寿司飯を押し固めつつも米粒の原形を維持しながら全体の厚みを23〜27mmと薄くし、押し型内のます寿司を抜き取って、包装シート内にます寿司を収容して真空包装し、-40℃以下の冷凍庫内で冷凍する、冷凍ます寿司の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍条件下で長期保存可能な冷凍ます寿司用寿司飯の製造方法、及び冷凍ます寿司の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ます寿司は今から二百数十年ほど昔に、富山藩主・前田利興により八代将軍・徳川吉宗に献上され、その豊かな風味が激賞されたと今日言い伝えられている。その時以来、富山の名産として全国的に幅広く愛され続けている。
【0003】
ます寿司は、美味しく食べられる期間が短く、半年や一年等の長期間の保存には通常不向きであると考えられている。そこで、本発明者は、ます寿司を冷凍することによって、長期に亘って保存することを考え、実行した。
【0004】
ところが、冷凍したます寿司を解凍すると、寿司飯がぱさつき、旨味成分を含んだ水分が流れ出て、寿司独特のしっとり感と味が損なわれる。ちなみに、寿司飯の炊飯時の水と米の配合割合は、米一合に対して水180〜200mlという米の容量を基準とした容量換算が標準的である。また、炊き上がった一合の米と、合わせ酢の配合割合は35〜40mlが標準的である。
【0005】
そこで本発明者は、冷凍に適した炊飯時の米、水の配合割合や、合わせ酢との配合割合を工夫した寿司飯の製造方法の開発に着手した。また、冷凍に適した寿司飯を利用した、冷凍ます寿司の製造方法の開発に着手した。
【0006】
ちなみに、現在市販されているます寿司は、容器内に鱒、寿司飯を順番に入れ、寿司飯の上から蓋を被せ、充分に押し固めたものである。
【0007】
押し固めは、蓋の上に重石を載せた後に、二本の青竹を蓋の上と容器の底に間隔をあけて配置し、上下の青竹をゴムバンドできつく結束する手法が一般的である(非特許文献1)。この手法では、押しが強くなりがちで、米粒がその原形を崩し、人によっては硬すぎると感じ、美味しさを損ねる要因ともなる。一方、押し寿司ではないが、似たものとして握り寿司がある。握り寿司は、寿司飯が一塊となっているものの、米粒自体はその原形を維持しており、口の中に入れて食したときには寿司飯の塊がはらりと崩れるものである。そこで、握り寿司に近い食感が得られるような、冷凍ます寿司の製造方法の開発に着手した。
【非特許文献1】“鱒乃寿しが出来るまで”、[online]、ますの寿司千歳、[平成18年11月27日検索]、インターネット<URL:http://www.masunosushi.com/>
【0008】
また、寿司飯が押し固められていることや、従来、鱒の厚みは約2mm以下が大半であったことから、寿司飯の量に対して鱒の量が少なくなりがちで、物足りなさを感じることもあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、冷凍ます寿司に適した炊飯時の米、水の配合割合や、合わせ酢との配合割合を工夫した寿司飯の製造方法を提供することを第一の目的とし、次に、その製造方法で得られた寿司飯を利用し、握り寿司のような食感や、満足の得られる味覚が得られるような冷凍ます寿司の製造方法を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、米粒の原形が崩れるほど押し固めを強くすると、米と米の間の隙間が殆ど無くなってその際に水分が多量に抜け、解凍後に食したときのぱさつき感となることに気付いた。そして、押し固めを工夫し、それに合わせて炊飯時の水の配合割合を工夫すれば、上記問題を解消できると考えた。また、従来は容量換算されていた、米と水との配合割合を、米の重量に対して水の量を決定する重量換算にすることによって、米に含有する水分量のばらつきを解消できると考えた。
【0011】
請求項1の、冷凍ます寿司用寿司飯の製造方法は、米の重量に対して1.1〜1.15倍の重量の水で炊飯し、とぐ前150gの米に対して合わせ酢を35〜40mlの割合として炊き上がった米に合わせ酢を混ぜ合わせて、寿司飯を作ることを特徴とする。米の重量に対して1.1〜1.15倍の重量の水とは、標準的な米一合の重量が150gであるので、米2升で換算すれば水は330〜345gとなる。とぐ前2升(3kg)の米が炊き上がれば、合わせ酢を700〜800mlの割合で混ぜ合わせて寿司飯を作る。炊飯時の水の量は標準よりも遥かに少ないので、寿司飯の段階では、標準的な製造方法で作られた寿司飯よりも、ぱさつく感じとなるが、合わせ酢の量は標準的な割合の量なので、充分な味付けがなされたものとなる。また、米の重量に対して炊飯時の水の量を決定するという重量換算をすることによって品質を一定に保持できる。
【0012】
請求項2の、冷凍ます寿司の製造方法は、押し型内に厚み3〜5mmの鱒を敷き、請求項1記載の冷凍ます寿司用寿司飯の製造方法で製造された寿司飯を、押し型内の鱒の上に載せ、押し型内で寿司飯を押し固めつつも米粒の原形を維持しながら全体の厚みを23〜27mmと薄くし、押し型内のます寿司を抜き取って、包装シート内にます寿司を収容して真空包装し、-40℃以下の冷凍庫内に投入して冷凍することを特徴とする。
【0013】
前述したように、寿司飯の段階ではぱさつく感じとなるが、米粒の原形を維持する程度の押し固めとすることによって、押し固めの段階で水分が必要以上に逃げないようにして、解凍後に食したときの、ぱさつき感を解消してある。
【0014】
鱒の厚み4mm、全体での厚み25mmが食感としては理想的である。全体の厚みは、口の中に入れるのに適した厚みとしてある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明の冷凍ます寿司用寿司飯の製造方法で得られた寿司飯を利用して、請求項2の発明の方法を用いれば、米粒の原形を維持しながら押しを寿司飯に施したものなので、その結果物である冷凍ます寿司を電子レンジ等で解凍すると、押し寿司でありながらも、握り寿司同然の食感が得られ、しかも炊飯時等の配合割合の妙により、寿司飯独特のしっとり感と味が得られる。
【0016】
また、請求項2の発明は、鱒の厚みや、全体の厚みを、請求項1の製造方法で得られた寿司飯に、適したものとすることによって、満足の得られる美味しさとなる。なお、真空包装した上で冷凍してあるので、ます寿司の鮮度を長期間に亘って維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
冷凍ます寿司の製造方法は、鱒処理工程と、米処理工程と、押し工程と、袋詰め工程と、冷凍工程からなる。
【0018】
鱒処理工程では、皮、骨等を取り除いた一枚500〜600gの切り身を多数使用する。切り身は、まさに切り開いておろしたばかりの生ものであっても良いし、冷凍鱒を20℃の環境下で1時間、放置して解凍したものであっても良い。一枚の切り身を180mmごとに切って二枚とする処理を、切り身の数量分だけ行う。余った部分は使わない。そして、縦180mm、横64mm、深さ130mmの矩形の容器に、透明な袋を入れ、袋内に180mmの切り身を敷き詰めながら積み重ねる。透明な袋の口を閉じて鱒を密閉する。容器の上から蓋を被せ、容器と蓋を一まとめに紐で縛り圧縮する。−18℃以下の冷凍庫で15時間以上放置して凍らせる。凍った鱒を1時間、20℃の環境下で放置して解凍し、スライス機で薄く3〜5mmにスライスする。厚みは3〜5mmとする。その後、スライスした鱒を合わせ酢に約30秒間浸す。鱒4kgに対し2Lの合わせ酢を使用する。
【0019】
米処理工程では、米は3回のみとぐ。1回目は、ゆっくりと丁寧に、2回目はさらっと軽くとぐ。米をといだら、直ぐに炊飯する。米の重量に対して水を1.1〜1.15倍、標準的な米であれば2升(3kg)に対して、水を3.3〜3.45kgの配合割合として炊飯する。2升の米(米をとぐまえの状態)が炊き上がったら直ぐに合わせ酢700〜800ml、理想的には750mlとし、その後、布巾を被せて、人肌位に冷めるまで待って寿司飯が完成する。人肌に冷める前に、途中一回、布巾を外して湯気を出すようにする。合わせ酢は、酢に色々な調味料を混ぜ合わせたもので、酢、砂糖、塩、オリゴ糖、昆布だし等を用いる。
【0020】
押し工程では、まず、縦180mm、横60mm、深さ51mmの押し型の中に、スライスした鱒を敷き、245±1gの寿司飯を入れ、蓋をして上から米粒が潰れない程度に、即ち米粒がその原形を維持しつつも余分な空気が抜ける程度に押し固め、全体の厚みを23〜27mmとする。
【0021】
袋詰め工程では、押し固められた角棒状のます寿司を押し型から抜き出して鱒のみに6〜8等分に包丁で切り目を入れ、鱒の上から見て寿司飯が見えないように上から切り目部分をヘラ等で押し、その後、筒を押し潰した形態のフィルム袋(縦250mm、横100mm)に入れ、真空包装機に通して、袋の中の空気を抜きながら袋の両側開口部を接着させて密閉する。
【0022】
冷凍工程では、-40℃の冷凍庫に袋詰めされたます寿司を投入して、急速冷凍し、食材が凍る温度域(0〜-3℃)を一気に通過させ、旨みを損なわないようにし、12時間経過後に取り出して、その後は-18〜-25℃の冷凍庫で保存する。投入の際には袋同士がくっつかないように、充分に間隔をあけて並べることに留意する。
【0023】
上述の工程で製造されたます寿司を美味しく食べるには、以下の点に留意する。まず、お湯で解凍する場合は、袋のまま40〜45℃のお湯に10分ぐらい浸け、次にもう一度、40℃〜45℃のお湯を足して5分ぐらい待ち、その後、袋から出して5〜10分間おいて、一口サイズに切って食べる。また、電子レンジで解凍する場合は、消費電力が500Wであれば袋のまま2分30秒加熱して(解凍モードではない)、その後、袋から出して5〜10分間おいて、一口サイズに切って食べる。なお、消費電力が900〜1000Wであれば1分30〜2分が加熱時間の目安となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米の重量に対して1.1〜1.15倍の重量の水で炊飯し、とぐ前150gの米に対して合わせ酢を35〜40mlの割合として炊き上がった米に合わせ酢を混ぜ合わせて、寿司飯を作ることを特徴とする、冷凍ます寿司用寿司飯の製造方法。
【請求項2】
押し型内に厚み3〜5mmの鱒を敷き、請求項1記載の冷凍ます寿司用寿司飯の製造方法で製造された寿司飯を、押し型内の鱒の上に載せ、押し型内で寿司飯を押し固めつつも米粒の原形を維持しながら全体の厚みを23〜27mmと薄くし、押し型内のます寿司を抜き取って、包装シート内にます寿司を収容して真空包装し、-40℃以下の冷凍庫内に投入して冷凍することを特徴とする、冷凍ます寿司の製造方法。

【公開番号】特開2008−141968(P2008−141968A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329654(P2006−329654)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年11月12日発行の北日本新聞及び平成18年11月20日発行の新潟日報
【出願人】(506405909)山口アルク株式会社 (1)
【出願人】(506405806)有限会社共同アクティブ (1)
【Fターム(参考)】