冷凍サイクル装置
【課題】後席側蒸発器用の電磁弁を設けない車両用冷凍サイクル装置においてオイル戻し制御の処理実行間隔を適正にする。
【解決手段】第1の減圧手段19および第1の蒸発器15と、第2の減圧手段32および第2の蒸発器28を並列に設け、第2の減圧手段32を温度式膨張弁により構成した車両用冷凍サイクル装置において、少なくとも蒸発器温度検出手段21により検出された第1の蒸発器15内の冷媒温度が所定値以下となった場合に、フロスト防止制御を行なうフロスト防止制御手段と、所定の開始条件が成立した場合に、圧縮機16の断続運転によるオイル戻し制御を実行するオイル戻し制御手段とを備え、所定の開始条件は、オイル戻し制御が行なわれていない期間が所定期間を超えることにより成立するとともに、所定期間は、フロスト防止制御が行なわれる期間であるフロスト防止制御実行時間分だけ延長される。
【解決手段】第1の減圧手段19および第1の蒸発器15と、第2の減圧手段32および第2の蒸発器28を並列に設け、第2の減圧手段32を温度式膨張弁により構成した車両用冷凍サイクル装置において、少なくとも蒸発器温度検出手段21により検出された第1の蒸発器15内の冷媒温度が所定値以下となった場合に、フロスト防止制御を行なうフロスト防止制御手段と、所定の開始条件が成立した場合に、圧縮機16の断続運転によるオイル戻し制御を実行するオイル戻し制御手段とを備え、所定の開始条件は、オイル戻し制御が行なわれていない期間が所定期間を超えることにより成立するとともに、所定期間は、フロスト防止制御が行なわれる期間であるフロスト防止制御実行時間分だけ延長される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列に設けられた第1、第2の蒸発器を有する冷凍サイクル装置に関するもので、例えば、デュアルエアコンタイプの車両空調用冷凍サイクル装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、ミニバン等の大型乗用車の車室内空調用のユニットとして、車室内の前席側と後席側の両方に空調ユニットを配置するデュアルエアコンが用いられている。このデュアルエアコンの冷凍サイクルでは、前席側蒸発器(第1の蒸発器)と後席側蒸発器(第2の蒸発器)とを並列に接続して設け、圧縮機と凝縮器は共通使用している。この冷凍サイクルでは、空調装置のコスト低減のため後席側蒸発器への冷媒流れを断続する電磁弁(流路開閉弁)を付けていない車両が多い。そのため、上記電磁弁を付けていない車両では、前席側エアコン(前席側蒸発器)のみを運転させ、圧縮機の連続作動状態が長時間継続された場合、後席側蒸発器の温度式膨張弁の開閉が何回も繰り返され、後席側蒸発器などにオイルが溜まる。その結果、圧縮機のオイル戻り不足が発生する問題がある。
【0003】
そこで、圧縮機の連続作動状態が所定時間に達すると、圧縮機の作動を強制的に断続制御して、後席側蒸発器の温度式膨張弁を強制開弁させることで、後席側蒸発器等に溜まっているオイルを圧縮機吸入側に戻すようにした冷凍サイクル装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−283576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の冷凍サイクル装置における圧縮機へのオイル戻し制御を図11に基づいて説明すると、図11に示すように圧縮機の連続作動状態が所定時間に達すると圧縮機の作動を複数回だけ断続制御する(図11(b)参照)。この圧縮機の断続制御により、低圧側圧力(圧縮機吸入側の圧力)を変動させ、後席側温度式膨張弁を開弁している。その結果、圧縮機吸入側にオイルが戻され、オイル循環率が上昇する(図11(c)参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のオイル戻し制御では、圧縮機の起動時からの連続作動時間が所定時間に達すると圧縮機の断続運転を行なっているため、圧縮機がフロスト防止制御により停止された場合には、連続作動時間を計測するタイマ時間がクリアされる(図11(a)参照)。ここで、フロスト防止制御中の圧縮機は、オイル戻し制御と同様に圧縮機のオン、オフを繰り返す場合があり、この場合においてオフ時間が短いと低圧側圧力の上昇が小さく、オン時における後席側蒸発器の温度式膨張弁の開度不足となりオイル循環率は回復せず、ほとんど変化しない(図11(c)参照)。そのため、フロスト防止制御中にオイル循環率が変化しない場合、圧縮機の連続作動時間の計測はオイル循環率が低い状態のまま開始され、オイル戻し制御の開始までに長時間を要する(図11(a)、(c)参照)。その結果、オイル循環率が必要オイル循環率よりも低下して、圧縮機へのオイル戻り不足が発生する場合がある(図11(c)参照)。
【0006】
一方、圧縮機がフロスト防止制御により停止されても、連続作動時間を計測するタイマ時間をクリアしない場合、車両を長時間走行させるとオイル戻し制御による圧縮機の断続運転が乗員の意図とは関係なく所定時間毎に行なわれ、吹出温度が頻繁に変化するため、乗員の空調フィーリングの悪化が生じる。そのため、この場合にはオイル戻し制御の実行間隔である所定時間をできるだけ延長させたいとの要望もある。
【0007】
本発明は、上記点に鑑み、後席側蒸発器用の電磁弁を設けない車両用冷凍サイクル装置においてオイル戻し制御の処理実行間隔を適正にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明では、冷媒を圧縮し吐出する圧縮機(16)と、圧縮機(16)から吐出された冷媒を冷却し凝縮させる凝縮器(17)と、凝縮器(17)で凝縮した冷媒を減圧膨張させる第1の減圧手段(19)と、第1の減圧手段(19)の冷媒流れ下流側に設けられ、第1の減圧手段(19)により減圧膨張した冷媒を蒸発させる第1の蒸発器(15)と、第1の蒸発器(15)に送風する第1の送風機(14)と、第1の減圧手段(19)と並列に設けられ、凝縮器(17)で凝縮した冷媒を減圧膨張させる第2の減圧手段(32)と、第2の減圧手段(32)の冷媒流れ下流側に設けられ、第2の減圧手段(32)により減圧膨張した冷媒を蒸発させる第2の蒸発器(28)と、第2の蒸発器(28)に送風する第2の送風機(27)と、第1の蒸発器(15)内の冷媒温度を検出する蒸発器温度検出手段(21)と、少なくとも蒸発器温度検出手段(21)の検出値が所定値以下となった場合に、第1の蒸発器(15)の凍結を抑制するために、圧縮機稼働率を低下させてフロスト防止制御を行なうフロスト防止制御手段と、第1の送風機(14)が稼動状態にされ、所定の開始条件が成立した場合に、圧縮機(16)の断続運転によるオイル戻し制御を実行するオイル戻し制御手段とを備え、第2の減圧手段(32)は、第2の蒸発器(28)の出口冷媒の過熱度を調整する温度式膨張弁により構成し、所定の開始条件は、オイル戻し制御が行なわれていない期間が所定期間を超えることにより成立するとともに、所定期間は、フロスト防止制御が行なわれる期間であるフロスト防止制御実行時間分だけ延長されることを特徴としている。
【0009】
これにより、オイル戻し制御の開始条件である所定期間をオイル循環率が変化しないフロスト防止制御実行時間分だけ延長することで、オイル戻し制御の処理実行間隔を適正にすることができる。具体的には、オイル戻し制御の処理実行間隔を連続作動時間で行なう(フロスト防止制御で連続稼動時間をクリアする)場合に比べて、圧縮機(16)のオイル戻り不足を抑制することができる。また、オイル戻し制御の開始をフロスト防止制御実行時間分だけ延長することで、連続作動時間を計測するタイマ時間をクリアしない場合に比べて、空調風の吹出温度の頻繁な変化を抑制することができ、乗員の空調フィーリングの悪化を抑制することができる。なお、蒸発器温度検出手段(21)には、第1の蒸発器(15)内の冷媒温度を直接検出するものに限定されず、間接的に検出するものも含まれる。
【0010】
また、フロスト防止制御実行時間は、フロスト防止制御手段によるフロスト防止制御の実行開始時から圧縮機(16)が作動停止状態または作動状態が所定時間維持されるまでの経過時間を積算した時間とすることができる。
【0011】
また、フロスト防止制御実行時間は、フロスト防止制御による圧縮機(16)の作動停止時間を積算した時間とすることができる。
【0012】
また、圧縮機(16)の所定サンプリング時間毎の圧縮機稼働率を算出する稼働率算出手段と、圧縮機稼働率が所定範囲内にあるか否かを判定する圧縮機稼働率判定手段とを備え、フロスト防止制御実行時間は、圧縮機稼働率判定手段により圧縮機稼働率が所定範囲内であると判定された場合の所定サンプリング時間を積算した時間とすることができる。
【0013】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図5に基づいて説明する。本実施形態では、デュアルエアコンタイプの車両用冷凍サイクル装置を車両空調用冷凍サイクル装置に適用している。図1は、ミニバンタイプの乗用車に本発明を適用した第1実施形態の全体の配置レイアウトを示す。ミニバンタイプの車両10の車室11は前席(運転席および助手席)の後方側に2番目、3番目の座席(後席)を配置するようになっており、車両前後方向に長い空間を形成している。11aは車室11の床面である。
【0015】
前席側空調ユニット12は、車室11内の最前部の計器盤(図示せず)の内側部に配設されて、車室内前席側の領域を空調するものである。前席側空調ユニット12は、空気通路を形成するケース13を有し、このケース13の上流部に送風機(第1の送風機)14を配置している。この送風機14は図示しない内外気切替箱から切替導入される内気または外気を送風する。
【0016】
送風機14の下流には送風空気を冷却する冷却用熱交換器として冷凍サイクルRの蒸発器(第1の蒸発器)15が配置されている。ここで、冷凍サイクルRは周知の構成であり、車両エンジン(図示せず)により電磁クラッチ16aを介して駆動される圧縮機16を備えている。この圧縮機16により冷媒は高温高圧に圧縮され、この圧縮機16から吐出されたガス冷媒は凝縮器17に導入され、この凝縮器17にてガス冷媒は図示しない冷却ファンにより送風される外気と熱交換して凝縮する。
【0017】
凝縮器17を通過した冷媒を受液器18にて液相冷媒と気相冷媒とに分離するとともに、液相冷媒を受液器18内に貯留する。受液器18からの液冷媒を前席側温度式膨張弁(第1の減圧手段)19にて低圧の気液2相冷媒に減圧し、この減圧後の低圧冷媒を上記蒸発器15において空調空気から吸熱して蒸発させるようになっている。
【0018】
前席側温度式膨張弁19は周知のごとく蒸発器15出口の冷媒過熱度が所定値に維持されるように弁開度を自動調整するものである。そのため、前席側温度式膨張弁19は、蒸発器15出口の冷媒温度を感知する感温部(図示せず)と、この感温部の感知した冷媒温度に対応した圧力が加えられる第1圧力室(図示せず)と、蒸発器15の冷媒圧力(サイクル低圧)が加えられる第2圧力室(図示せず)と、この第1、第2圧力室を仕切るダイヤフラム(図示せず)とを備え、第1、第2圧力室の圧力差とばね力とに応じてダイヤフラムおよび弁体が変位して冷媒流量を調整するようになっている。
【0019】
蒸発器15において蒸発した後のガス冷媒は再度、圧縮機16に吸入され、圧縮される。なお、冷凍サイクルRのうち、圧縮機16、凝縮器17、受液器18等の機器は、車室11より前方側のエンジンルーム20内に搭載されている。
【0020】
また、前席側空調ユニット12内において、蒸発器15の空気吹出部には蒸発器温度センサ(蒸発器温度検出手段)21が配置されている。この温度センサ21により検出される蒸発器吹出空気温度が所定温度以下に低下すると、電磁クラッチ16aへの通電を遮断して圧縮機16の運転を停止し、圧縮機16の稼働率を低下させることで蒸発器15のフロストを防止するようにしている(フロスト防止制御)。
【0021】
次に、蒸発器15の空気流れ下流側には、車両エンジンからの温水により空調空気を加熱するヒータコア(加熱用熱交換器)22が配置されている。このヒータコア22の側方にはバイパス路23が形成されている。そして、ヒータコア22に隣接し板状のエアミックスドア24が回動可能に配置され、このエアミックスドア24の回動位置の選択により、ヒータコア22を通過して加熱される温風とバイパス路23を通過する冷風との風量割合を調整して吹出空気温度を調整する。
【0022】
前席側空調ユニット12の下流端には、図示しないデフロスタ吹出開口部、フェイス吹出開口部およびフット吹出開口部が開口しており、これらの開口部は図示しない吹出モードドアにより切替開閉され、各開口部を通過した空調空気は、それぞれ車両窓ガラスの内面、前席側乗員の頭部、足元部に向けて吹き出される。
【0023】
次に、後席側空調ユニット25は車室内の後席側を空調するように車室11内の後部、例えば、後席の側方部位等に配置される。この後席側空調ユニット25のケース26内には、内気を吸入して送風する送風機(第2の送風機)27が備えられ、この送風機27の下流側に後席側蒸発器(第2の蒸発器)28が配置されている。次に、蒸発器28の空気流れ下流側には、車両エンジンからの温水により空調空気を加熱するヒータコア29が配置されている。このヒータコア29の側方にはバイパス路30が形成されている。そして、ヒータコア29に隣接し板状の冷風バイパスドア31が回動可能に配置され、この冷風バイパスドア31によりバイパス路30を後席側空調ユニット25の吹き出しモードと風量レベルに応じて開閉する。
【0024】
後席側蒸発器28の冷媒入口部には後席側温度式膨張弁(第2の減圧手段)32が備えられている。この後席側温度式膨張弁32は、前席側温度式膨張弁19と同様のものであり、受液器18からの高温高圧の液冷媒を低温低圧の気液2相冷媒に減圧する減圧手段をなすもので、後席側蒸発器28の出口部の冷媒の過熱度が予め設定した所定値となるように弁開度を調整して、冷媒流量を調整するものである。
【0025】
なお、冷凍サイクルRにおいて、後席側の温度式膨張弁32の入口側は床下高圧配管33を介して前席側の温度式膨張弁19の入口側に接続され、また、後席側の蒸発器28の出口側は床下低圧配管34を介して前席側の蒸発器15の出口側に接続されている。これにより、後席側の蒸発器28および温度式膨張弁32は前席側の蒸発器15および温度式膨張弁19と並列に接続されている。
【0026】
床下高圧配管33および床下低圧配管34は、車室11の床面11aの下側に形成される床下空間35に配置されるので、圧縮機16の吸入配管16bより所定高さL(例えば、600mm程度)だけ低い部位に配置される。
【0027】
そして、後席側空調ユニット25において、蒸発器28の下流直後の部位にフェイス吹出開口部36および吹出モードドア37が配置され、後席側蒸発器28で冷却された冷風はフェイス吹出開口部36から後席側フェイスダクト38を通って天井吹出口38aから後席側乗員の頭部に向けて吹き出す。また、ヒータコア29で加熱された温風は、後席側フットダクト39を通って後席側フット吹出口39aから後席側乗員の足元部に向けて吹き出される。
【0028】
図2は本実施形態の電気制御の概要ブロック図であり、空調用制御装置40はマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されるもので、蒸発器温度センサ21により検出される蒸発器吹出空気温度Teの他に、センサ群41から外気温Tam、内気温Tr、日射量Ts、温水温度Tw等が入力される。また、前席側操作パネル42から車室温の温度設定、風量調整、内外気モード切り替え、吹出モード切り替え、電磁クラッチ16aへのオンオフ等の操作信号が入力される。一方、後席側操作パネル43からは、後席側の風量調整、吹出モード切り替え等の操作信号が入力される。なお、この後席側の風量調整および吹出モード切り替えの操作信号については、前席側操作パネル42からも入力可能になっている。
【0029】
空調用制御装置40は予め設定されたプログラムに従って所定の演算処理を行って出力信号を出し、前席側および後席側の空調機器(電磁クラッチ16a、送風機14、27、エアミックスドア24、31等の駆動用モータ群)の作動を制御する。
【0030】
次に、上記構成において作動を説明する。まず、前席側空調ユニット12および後席側空調ユニット25をともに作動させるときは、前後両方の送風機14、27が作動して、両空調ユニット12、25に送風する。そして、前席側操作パネル42のエアコンスイッチ(圧縮機作動スイッチ)が投入されると、電磁クラッチ16aが通電され接続状態になるので、圧縮機16が車両エンジンにより駆動される。
【0031】
これにより、前席側空調ユニット12においては、送風空気を蒸発器15により冷却、除湿した後に、ヒータコア22により再加熱することができる。前席側空調ユニット12では、エアミックスドア24により冷風と温風の風量割合を任意に調整して車室内への吹出温度を調整できる。なお、後席側空調ユニット25では、吹出モードドア37により、吹き出しモードをフェイスモードとフットモードとに切り替えることができ、フェイスモード時には蒸発器28により冷却、除湿した冷風を後席側フェイスダクト38を通して後席側の天井吹出口38aから車室内後席側へ吹き出す。また、フットモード時には送風空気が蒸発器28を通過した後ヒータコア29により加熱されて温風となり、この温風は後席側フットダクト39を通して後席側のフット吹出口39aから乗員足元部に吹き出す。
【0032】
ところで、前後両方の空調ユニット12、25を上記のように同時運転しているときは、前後の温度式膨張弁19、32がそれぞれ前後の蒸発器15、28の熱負荷に対応した弁開度に調整され、その熱負荷に対応した流量の冷媒を常時、各蒸発器15、28の流路を通過させるので、後席側空調ユニット25の床下低圧配管34等に潤滑オイルが溜まることはない。
【0033】
また、前席側のみに乗員が搭乗し、後席側には乗員が搭乗していないときは、前席側操作パネル42または後席側操作パネル43でのスイッチ操作により後席側送風機27を停止する。これにより、後席側空調ユニット25には空調空気が送風されず、後席側空調ユニット25の空調作用が停止状態となるので、前席側空調ユニット12のみの単独運転状態となる。
【0034】
この前席側単独運転時には、後席側空調ユニット25において、後席側の温度式膨張弁32が微小な開閉を繰り返すことにより、液相の潤滑オイルが後席側の蒸発器28内とか蒸発器出口の床下低圧配管34内に溜まっていく。特に、床下低圧配管34は、圧縮機16の吸入配管16bに対して所定量L(例えば、600mm程度)だけ低い位置に配置されるので、この床下低圧配管34への潤滑オイル寝込み現象が発生しやすい。
【0035】
そのため、後席側蒸発器28用の電磁弁を持たないデュアルエアコンタイプの車両空調用冷凍サイクル装置では、前席側単独運転時に圧縮機16の連続作動状態が長時間継続されると、後席側温度式膨張弁32の微小な開閉が長時間繰り返されて、床下低圧配管34への潤滑オイル寝込み現象が顕著となり、圧縮機16へのオイル戻り不足が発生する。そこで、本実施形態では床下低圧配管34への潤滑オイル寝込み現象を解消するために、適正な時間間隔で圧縮機16の作動を強制的に断続させるオイル戻し制御を行なっている。
【0036】
本実施形態におけるオイル戻し制御について図3に基づいて説明する。図3は本実施形態に係る空調用制御装置40により実行されるオイル戻し制御の制御ルーチンを示すフローチャートであり、制御ルーチンは前席操作パネル42等の操作により前席側空調ユニット12のみの単独運転状態となった場合にスタートする。
【0037】
まず、ステップS10にてタイマ時間等を初期化する。そして、ステップS20にて各種センサ21、41の検出信号、各操作パネル42、43からの操作信号を読み込む。
【0038】
次にステップS30にて、ステップS20で読み込まれた各信号の状態から、エアコンスイッチがオンされているか否かを判定する。エアコンスイッチがオンされていない場合は、圧縮機作動停止状態であるためステップS10に戻る。また、エアコンスイッチがオンされている場合は、ステップS40に進む。
【0039】
次に、ステップS40にて、フロスト防止制御が行なわれているか否かを判定する。フロスト防止制御行なわれているか否かの判定は、空調用制御装置40のメイン制御ルーチン(図示せず)で行なわれるフロスト防止制御を実行するか否かの判定結果を参照して決定している。本実施形態では、メイン制御ルーチンでフロスト防止制御を実行すると判定された場合には、ステップS40でフロスト防止制御が行なわれていると判定し、フロスト防止制御を実行しないと判定された場合には、ステップS40でフロスト防止制御が行なわれていないと判定する。
【0040】
ここで、フロスト防止制御を実行するか否かの判定は、図4に示す制御マップに基づいて行なわれる。図4は吹出温度Teの目標温度を説明するものであって、図4の制御マップによれば、温度センサ21で検出される蒸発器吹出温度Teの目標温度として第1目標温度TEO1(例えば、3°C)と第2目標温度TEO2(例えば、4°C)が設定され、第1、第2目標温度TEO1、TEO2と実際の蒸発器吹出温度Teとを比較して、電磁クラッチ16aのオン、オフ信号を決定している。
【0041】
図3に戻り、ステップS40において、フロスト防止制御が行なわれていないと判定された場合には、ステップS50でタイマ時間をカウントする。一方、フロスト防止制御が行なわれていると判定された場合には、タイマ時間はカウントせずステップS20に戻る。ここで、ステップS50でカウントされるタイマ時間は、前席側単独運転開始またはオイル戻し制御の終了からの経過時間からフロスト防止制御による圧縮機16の作動停止時間を除外した時間に相当している。
【0042】
これにより、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間からフロスト防止制御による圧縮機16の作動停止時間を積算した時間(本実施形態におけるフロスト防止制御実行時間)分だけ延長することができる。ここで、所定基準時間にフロスト防止制御実行時間を加算した時間が、本発明の所定期間に相当している。
【0043】
次に、ステップS60にて、カウントされたタイマ時間が所定基準時間に達したか否かを判定する。この所定基準時間は、例えば30分から120分の間に予め空調制御装置40のRAM等に設定されている。そして、タイマ時間が所定基準時間を経過すると、ステップ70にて電磁クラッチ16aを強制的に複数回断続制御するオイル戻し制御を行ない、オイル戻し制御終了後にステップS10に戻る。
【0044】
次に、本実施形態におけるオイル戻し制御について図5のタイミングチャートに基づいて説明する。図5(a)は、前席側単独運転開始またはオイル戻し制御の終了からの経過時間に対するタイマ時間のカウントの変化を示しており、図5(b)は、電磁クラッチ16aのオンオフ状態を示しており、また、図5(c)は、オイル循環率の変化を示している。ここで図5(a)における点線は、フロスト防止制御による圧縮機16の作動停止時間をタイマ時間から除外していない場合の前席側単独運転開始またはオイル戻し制御の終了からのタイマ時間と経過時間との関係を示している。
【0045】
図5に示すように、前席側蒸発器15の単独運転が連続すると、時間の経過と伴に潤滑オイルが後席側蒸発器7内などに溜まっていくため、徐々にオイル循環率が低下する。オイル循環率が低下中であって、タイマ時間が所定基準時間を経過していない場合にフロスト防止制御が行われると、電磁クラッチ16aがオンオフを繰り返す状態(図5(b)参照)となり、オイル循環率は変化しない(図5(c)参照)。
【0046】
本実施形態では、フロスト防止制御による圧縮機16の作動停止状態ではタイマ時間をカウントせず、圧縮機16の作動状態でのみタイマ時間をカウントしているため、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間からフロスト防止制御による圧縮機16の作動停止時間を積算した時間(本実施形態におけるフロスト防止制御実行時間)分だけ延長していることとなる(図5(a)参照)。
【0047】
これにより、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間から圧縮機16の作動停止時間分だけ延長することで、オイル循環率が必要オイル循環率まで低下しないため、圧縮機16のオイル戻り不足を抑制することができる(図5(c)参照)。また、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間から圧縮機16の作動停止時間分だけ延長することで、オイル戻し制御による空調風の吹出温度の頻繁な変化を抑制することができ、乗員の空調フィーリングの悪化を抑制することができる。
【0048】
以上説明したように、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間から圧縮機16の作動停止時間を積算した時間分だけ延長することで、オイル戻し制御の処理実行間隔を適正にすることができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図6に基づいて説明する。本第2実施形態では、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。図6は、本実施形態に係る空調用制御装置40により実行されるオイル戻し制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0050】
本実施形態では、図6に示すようにステップS30でエアコンスイッチがオンされている場合には、ステップS31でタイマ時間をカウントする。そしてステップS40でフロスト防止制御が行なわれているか否かを判定する。
【0051】
ステップS40でフロスト防止制御が行なわれていると判定された場合には、ステップS41でフロスト防止制御による圧縮機16の作動停止時間をカウントし、そしてステップS42で所定基準時間に圧縮機16の作動停止時間を積算して補正基準時間を算出してステップS60に進む。ステップS60で、カウントされたタイマ時間が補正基準時間に達したか否かを判定し、タイマ時間が補正基準時間に達した場合に、オイル戻し制御を実行する。ここで、補正基準時間の初期値は、所定基準時間が設定されており、フロスト防止制御が行なわれない場合には所定基準時間と同じ時間となっている。
【0052】
一方、ステップS40でフロスト防止制御が行なわれていないと判定された場合には、ステップS20に進む。
【0053】
これにより、オイル戻し制御を実行するか否かの判定を、タイマ時間が補正基準時間に達したか否かにより行なうことで、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間から圧縮機16の作動停止時間を積算した時間分だけ延長することができ、オイル戻し制御の処理実行間隔を適正にすることができる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図3、図7に基づいて説明する。本第3実施形態では、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。図7(a)は、前席側単独運転開始またはオイル戻し制御の終了からの経過時間に対するタイマ時間のカウントの変化を示しており、図7(b)は、電磁クラッチ16aのオンオフ状態を示しており、また、図7(c)は、オイル循環率の変化を示している。
【0055】
上記第1実施形態では、フロスト防止制御実行時間を、フロスト防止制御による圧縮機16の作動停止時間を積算した時間としているが、本実施形態では、フロスト防止制御実行時間を、フロスト防止制御が行なわれていると判定され、電磁クラッチ16aがオフ(圧縮機16の作動停止状態)されてから連続して圧縮機16の作動停止状態または作動状態に維持された維持時間が所定時間を経過するまでの時間を積算した時間とするものである。
【0056】
具体的には、フロスト防止制御により電磁クラッチ16aがオフ状態となり、電磁クラッチ16aのオンオフを繰り返した後、連続してオン状態が所定時間βを経過すると(図7(b)のA部)、フロスト防止制御により電磁クラッチ16aがオフ状態となってからオン状態が所定時間β維持されるまでの時間α1をタイマ時間から除外している(図7(a)参照)。また、電磁クラッチ16aがフロスト防止制御により連続してオフ状態が所定時間γを経過すると(図7(b)のB部)、電磁クラッチ16aがフロスト防止制御によりオフ状態となってから所定時間γ維持されるまでの時間α2(=所定時間γ)をタイマ時間から除外している。
【0057】
これにより、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間から上記時間α1、α2を積算したフロスト防止制御実行時間分だけ延長することができる。
【0058】
また、制御ルーチンとしては、図3に示す第1実施形態におけるステップS40のフロスト防止制御が行なわれているか否かの判定でフロスト防止制御が行なわれていると判定された後であって、ステップS50でタイマ時間をカウントする前に、フロスト防止制御により連続して圧縮機16の作動停止状態または作動状態が所定時間維持されているか否かの判定を行なう。
【0059】
ここで、所定時間維持されていると判定された場合は、ステップS50に進みタイマ時間をカウントする。一方、所定時間継続されていないと判定された場合は、圧縮機16の断続運転が複数回行なわれている状態と判断できるため、タイマ時間はカウントせずにステップS20に戻る。
【0060】
これにより、第1実施形態でのフロスト防止制御実行時間に比べて、タイマ時間からフロスト防止制御による圧縮機16の作動停止時間に加えて作動状態が維持される作動維持時間についても除外することができるため、オイル戻し制御をさらに延長することができ、オイル戻し制御による空調風の吹出温度の頻繁な変化を抑制することができる。
【0061】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図8、図9に基づいて説明する。本第4実施形態では、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。図8は、本実施形態に係る空調用制御装置40により実行されるオイル戻し制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0062】
本実施形態では図8に示すようにステップS30でエアコンスイッチがオンされている場合には、ステップS31で、タイマ時間をカウントする。
【0063】
次にステップS32で所定サンプリング時間毎の圧縮機16の稼働率を算出する。圧縮機16の稼働率は、所定サンプリング時間毎における圧縮機16のオン時間を計測し、下記式F1に示すように所定サンプリング時間に対する圧縮機16の稼働時間の割合により算出する。
稼働率(%)=(圧縮機稼働時間/所定サンプリング時間)×100…(F1)
ここで、所定サンプリング時間は、所定基準時間に応じて設定されるサンプリング時間(例えば、60秒)であって、予め空調制御装置40のROM等に記憶されている。
【0064】
次にステップS33で算出した圧縮機16の稼働率に基づいて、ステップS33で圧縮機16の稼働率が所定範囲内であるか否かを判定する。ステップS33で圧縮機16の稼働率が所定範囲内であると判定された場合は、ステップS34で所定基準時間に所定サンプリング時間を積算して補正基準時間を算出してステップS60に進む。一方、圧縮機16の稼働率が所定範囲外であると判定された場合は、ステップS34をスキップしてステップS60に進む。ここで、補正基準時間は、フロスト防止制御が行なわれない場合には所定基準時間と同じ時間となっている。
【0065】
ステップS60で、カウントされたタイマ時間が補正基準時間に達したか否かを判定し、タイマ時間が補正基準時間に達した場合に、オイル戻し制御を実行する。
【0066】
ここで、本実施形態では、圧縮機16の稼働率の所定範囲は、図9に示す通り20%以上でかつ80%以内としている。これは、圧縮機16の稼働率が20%より小さい場合には、圧縮機16がフロスト防止制御によりほぼ作動停止状態となっており、オイル循環率の変動が予測できないために所定範囲外としている。また、圧縮機16の稼働率が80%より大きい場合は、圧縮機16がほぼ連続作動状態となっており、オイル循環率が維持されるようなフロスト防止制御は行なわれていないものとして所定範囲外としている。
【0067】
次に、本実施形態におけるオイル戻し制御について図10のタイミングチャートに基づいて説明する。図10(a)は、前席側単独運転開始またはオイル戻し制御の終了からの経過時間に対するタイマ時間のカウントの変化を示しており、図10(b)は、補正基準時間の変化を示しており、図10(c)は、圧縮機稼働率の変化を示しており、図10(d)は、電磁クラッチ16aのオンオフ状態を示しており、また、図10(e)は、オイル循環率の変化を示している。
【0068】
フロスト防止制御により電磁クラッチ16aがオフ状態となり、電磁クラッチ16aのオンオフを繰り返すと(図10(d)のC部参照)、圧縮機16の稼働率は所定範囲内となるため(図10(c)参照)、所定基準時間に所定サンプリング時間を積算して補正基準時間を増加させる(図10(b)参照)。同様に、電磁クラッチ16aがフロスト防止制御によりオフ状態となると(図10(d)のD部参照)、圧縮機16の稼働率は所定範囲内となるため(図10(c)参照)、所定基準時間に所定サンプリング時間を積算して補正基準時間を増加させる(図10(b)参照)。
【0069】
これにより、圧縮機16の稼働率が所定範囲内である場合の所定サンプリング時間を所定基準時間に積算して補正基準時間を算出し、タイマ時間が補正基準時間を経過した場合に、オイル戻し制御を実行することができる。換言すれば、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間から圧縮機16の稼働率が所定範囲内である場合の所定サンプリング時間を積算した時間(フロスト防止制御実行時間)分だけ延長することができる(図10(a)参照)。その結果、オイル戻し制御の処理実行間隔を適正にすることができる。
【0070】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のように種々変形可能である。
【0071】
(1)上記第1ないし第3実施形態におけるフロスト防止制御が行なわれているか否かの判定は、フロスト防止制御を実行するか否かの判定結果を参照して判定しているが、これに限定されるものではなく、例えば圧縮機16のオン、オフ信号等、空調制御装置40からの出力状態によりフロスト防止制御が行なわれているか否かを間接的に判定してもよい。
【0072】
(2)上記第1ないし第3実施形態において、空調用制御装置40のメイン制御ルーチンで行なわれるフロスト防止制御を実行するか否かの判定は、図4に示す制御マップに基づいて行なわれるものとしているが、これに限定されるものではない。例えば、蒸発器15の空気流れ上流側の空気吸入部に空気温度を検出する蒸発器吸入側温度センサ(図示せず)、および蒸発器15の空気流れ下流側の空気吹出部に空気温度を検出する蒸発器温度センサ21若しくは冷凍サイクルRにおける高圧側圧力を検出する高圧圧力センサ(図示せず)を設け、蒸発器吸入側温度センサで検出される空気温度の単位変化当たりに対する蒸発器温度センサ21で検出される空気温度の変化率若しくは高圧圧力センサで検出される高圧側圧力の変化率から蒸発器15のフロスト防止制御判定を行なってもよい。
【0073】
(3)また、上記第3実施形態では、第1実施形態と同様にオイル戻し制御の実行開始を所定基準時間からフロスト防止制御実行時間分だけ延長しているが、これに限定されるものではない。例えば、第2実施形態と同様にフロスト防止制御が行なわれていると判定された場合にフロスト防止制御実行時間をカウントし、所定基準時間にフロスト防止制御実行時間を積算して補正基準時間を算出し、オイル戻し制御を実行するか否かの判定を、タイマ時間が補正基準時間に達したか否かにより行なうことで、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間から圧縮機16の作動停止時間を積算した時間分だけ延長してもよい。
【0074】
(4)また、上記各実施形態では、本発明の車両用冷凍サイクル装置を車両空調用冷凍サイクル装置Rに適用しているが、これに限らず、冷凍車における冷凍、冷蔵用の車両用冷凍サイクル装置に適用することができる。
【0075】
(5)また、上記各実施形態では、圧縮機16を電磁クラッチ16aのオンオフにより断続制御しているが、圧縮機16が可変容量型圧縮機の場合は容量を強制的に変化させてもよい。また、圧縮機16がモータ駆動の電動圧縮機の場合は回転数を強制的に変化させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】第1実施形態に係る車両空調用冷凍サイクル装置の全体システム構成図である。
【図2】第1実施形態に係る電気制御部の概略ブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る電気制御部によるオイル戻し制御のフローチャートである。
【図4】第1実施形態に係る蒸発器吹出温度と電磁クラッチのオンオフとの作動説明図である。
【図5】第1実施形態に係る圧縮機のオイル戻し制御の作動説明図である。
【図6】第2実施形態に係る電気制御部によるオイル戻し制御のフローチャートである。
【図7】第3実施形態に係る圧縮機のオイル戻し制御の作動説明図である。
【図8】第4実施形態に係る電気制御部によるオイル戻し制御のフローチャートである。
【図9】第4実施形態に係る圧縮機のオイル戻し制御の作動説明図である。
【図10】第4実施形態に係る圧縮機稼働率による圧縮機16の作動状態の説明図である。
【図11】従来技術に係る圧縮機のオイル戻し制御の作動説明図である。
【符号の説明】
【0077】
12…前席空調ユニット、15…前席側蒸発器、16…圧縮機、17…凝縮器、19…前席側膨張弁、25…後席側空調ユニット、28…後席側蒸発器、32…後席側膨張弁、40…空調用制御装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列に設けられた第1、第2の蒸発器を有する冷凍サイクル装置に関するもので、例えば、デュアルエアコンタイプの車両空調用冷凍サイクル装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、ミニバン等の大型乗用車の車室内空調用のユニットとして、車室内の前席側と後席側の両方に空調ユニットを配置するデュアルエアコンが用いられている。このデュアルエアコンの冷凍サイクルでは、前席側蒸発器(第1の蒸発器)と後席側蒸発器(第2の蒸発器)とを並列に接続して設け、圧縮機と凝縮器は共通使用している。この冷凍サイクルでは、空調装置のコスト低減のため後席側蒸発器への冷媒流れを断続する電磁弁(流路開閉弁)を付けていない車両が多い。そのため、上記電磁弁を付けていない車両では、前席側エアコン(前席側蒸発器)のみを運転させ、圧縮機の連続作動状態が長時間継続された場合、後席側蒸発器の温度式膨張弁の開閉が何回も繰り返され、後席側蒸発器などにオイルが溜まる。その結果、圧縮機のオイル戻り不足が発生する問題がある。
【0003】
そこで、圧縮機の連続作動状態が所定時間に達すると、圧縮機の作動を強制的に断続制御して、後席側蒸発器の温度式膨張弁を強制開弁させることで、後席側蒸発器等に溜まっているオイルを圧縮機吸入側に戻すようにした冷凍サイクル装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−283576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の冷凍サイクル装置における圧縮機へのオイル戻し制御を図11に基づいて説明すると、図11に示すように圧縮機の連続作動状態が所定時間に達すると圧縮機の作動を複数回だけ断続制御する(図11(b)参照)。この圧縮機の断続制御により、低圧側圧力(圧縮機吸入側の圧力)を変動させ、後席側温度式膨張弁を開弁している。その結果、圧縮機吸入側にオイルが戻され、オイル循環率が上昇する(図11(c)参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のオイル戻し制御では、圧縮機の起動時からの連続作動時間が所定時間に達すると圧縮機の断続運転を行なっているため、圧縮機がフロスト防止制御により停止された場合には、連続作動時間を計測するタイマ時間がクリアされる(図11(a)参照)。ここで、フロスト防止制御中の圧縮機は、オイル戻し制御と同様に圧縮機のオン、オフを繰り返す場合があり、この場合においてオフ時間が短いと低圧側圧力の上昇が小さく、オン時における後席側蒸発器の温度式膨張弁の開度不足となりオイル循環率は回復せず、ほとんど変化しない(図11(c)参照)。そのため、フロスト防止制御中にオイル循環率が変化しない場合、圧縮機の連続作動時間の計測はオイル循環率が低い状態のまま開始され、オイル戻し制御の開始までに長時間を要する(図11(a)、(c)参照)。その結果、オイル循環率が必要オイル循環率よりも低下して、圧縮機へのオイル戻り不足が発生する場合がある(図11(c)参照)。
【0006】
一方、圧縮機がフロスト防止制御により停止されても、連続作動時間を計測するタイマ時間をクリアしない場合、車両を長時間走行させるとオイル戻し制御による圧縮機の断続運転が乗員の意図とは関係なく所定時間毎に行なわれ、吹出温度が頻繁に変化するため、乗員の空調フィーリングの悪化が生じる。そのため、この場合にはオイル戻し制御の実行間隔である所定時間をできるだけ延長させたいとの要望もある。
【0007】
本発明は、上記点に鑑み、後席側蒸発器用の電磁弁を設けない車両用冷凍サイクル装置においてオイル戻し制御の処理実行間隔を適正にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明では、冷媒を圧縮し吐出する圧縮機(16)と、圧縮機(16)から吐出された冷媒を冷却し凝縮させる凝縮器(17)と、凝縮器(17)で凝縮した冷媒を減圧膨張させる第1の減圧手段(19)と、第1の減圧手段(19)の冷媒流れ下流側に設けられ、第1の減圧手段(19)により減圧膨張した冷媒を蒸発させる第1の蒸発器(15)と、第1の蒸発器(15)に送風する第1の送風機(14)と、第1の減圧手段(19)と並列に設けられ、凝縮器(17)で凝縮した冷媒を減圧膨張させる第2の減圧手段(32)と、第2の減圧手段(32)の冷媒流れ下流側に設けられ、第2の減圧手段(32)により減圧膨張した冷媒を蒸発させる第2の蒸発器(28)と、第2の蒸発器(28)に送風する第2の送風機(27)と、第1の蒸発器(15)内の冷媒温度を検出する蒸発器温度検出手段(21)と、少なくとも蒸発器温度検出手段(21)の検出値が所定値以下となった場合に、第1の蒸発器(15)の凍結を抑制するために、圧縮機稼働率を低下させてフロスト防止制御を行なうフロスト防止制御手段と、第1の送風機(14)が稼動状態にされ、所定の開始条件が成立した場合に、圧縮機(16)の断続運転によるオイル戻し制御を実行するオイル戻し制御手段とを備え、第2の減圧手段(32)は、第2の蒸発器(28)の出口冷媒の過熱度を調整する温度式膨張弁により構成し、所定の開始条件は、オイル戻し制御が行なわれていない期間が所定期間を超えることにより成立するとともに、所定期間は、フロスト防止制御が行なわれる期間であるフロスト防止制御実行時間分だけ延長されることを特徴としている。
【0009】
これにより、オイル戻し制御の開始条件である所定期間をオイル循環率が変化しないフロスト防止制御実行時間分だけ延長することで、オイル戻し制御の処理実行間隔を適正にすることができる。具体的には、オイル戻し制御の処理実行間隔を連続作動時間で行なう(フロスト防止制御で連続稼動時間をクリアする)場合に比べて、圧縮機(16)のオイル戻り不足を抑制することができる。また、オイル戻し制御の開始をフロスト防止制御実行時間分だけ延長することで、連続作動時間を計測するタイマ時間をクリアしない場合に比べて、空調風の吹出温度の頻繁な変化を抑制することができ、乗員の空調フィーリングの悪化を抑制することができる。なお、蒸発器温度検出手段(21)には、第1の蒸発器(15)内の冷媒温度を直接検出するものに限定されず、間接的に検出するものも含まれる。
【0010】
また、フロスト防止制御実行時間は、フロスト防止制御手段によるフロスト防止制御の実行開始時から圧縮機(16)が作動停止状態または作動状態が所定時間維持されるまでの経過時間を積算した時間とすることができる。
【0011】
また、フロスト防止制御実行時間は、フロスト防止制御による圧縮機(16)の作動停止時間を積算した時間とすることができる。
【0012】
また、圧縮機(16)の所定サンプリング時間毎の圧縮機稼働率を算出する稼働率算出手段と、圧縮機稼働率が所定範囲内にあるか否かを判定する圧縮機稼働率判定手段とを備え、フロスト防止制御実行時間は、圧縮機稼働率判定手段により圧縮機稼働率が所定範囲内であると判定された場合の所定サンプリング時間を積算した時間とすることができる。
【0013】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図5に基づいて説明する。本実施形態では、デュアルエアコンタイプの車両用冷凍サイクル装置を車両空調用冷凍サイクル装置に適用している。図1は、ミニバンタイプの乗用車に本発明を適用した第1実施形態の全体の配置レイアウトを示す。ミニバンタイプの車両10の車室11は前席(運転席および助手席)の後方側に2番目、3番目の座席(後席)を配置するようになっており、車両前後方向に長い空間を形成している。11aは車室11の床面である。
【0015】
前席側空調ユニット12は、車室11内の最前部の計器盤(図示せず)の内側部に配設されて、車室内前席側の領域を空調するものである。前席側空調ユニット12は、空気通路を形成するケース13を有し、このケース13の上流部に送風機(第1の送風機)14を配置している。この送風機14は図示しない内外気切替箱から切替導入される内気または外気を送風する。
【0016】
送風機14の下流には送風空気を冷却する冷却用熱交換器として冷凍サイクルRの蒸発器(第1の蒸発器)15が配置されている。ここで、冷凍サイクルRは周知の構成であり、車両エンジン(図示せず)により電磁クラッチ16aを介して駆動される圧縮機16を備えている。この圧縮機16により冷媒は高温高圧に圧縮され、この圧縮機16から吐出されたガス冷媒は凝縮器17に導入され、この凝縮器17にてガス冷媒は図示しない冷却ファンにより送風される外気と熱交換して凝縮する。
【0017】
凝縮器17を通過した冷媒を受液器18にて液相冷媒と気相冷媒とに分離するとともに、液相冷媒を受液器18内に貯留する。受液器18からの液冷媒を前席側温度式膨張弁(第1の減圧手段)19にて低圧の気液2相冷媒に減圧し、この減圧後の低圧冷媒を上記蒸発器15において空調空気から吸熱して蒸発させるようになっている。
【0018】
前席側温度式膨張弁19は周知のごとく蒸発器15出口の冷媒過熱度が所定値に維持されるように弁開度を自動調整するものである。そのため、前席側温度式膨張弁19は、蒸発器15出口の冷媒温度を感知する感温部(図示せず)と、この感温部の感知した冷媒温度に対応した圧力が加えられる第1圧力室(図示せず)と、蒸発器15の冷媒圧力(サイクル低圧)が加えられる第2圧力室(図示せず)と、この第1、第2圧力室を仕切るダイヤフラム(図示せず)とを備え、第1、第2圧力室の圧力差とばね力とに応じてダイヤフラムおよび弁体が変位して冷媒流量を調整するようになっている。
【0019】
蒸発器15において蒸発した後のガス冷媒は再度、圧縮機16に吸入され、圧縮される。なお、冷凍サイクルRのうち、圧縮機16、凝縮器17、受液器18等の機器は、車室11より前方側のエンジンルーム20内に搭載されている。
【0020】
また、前席側空調ユニット12内において、蒸発器15の空気吹出部には蒸発器温度センサ(蒸発器温度検出手段)21が配置されている。この温度センサ21により検出される蒸発器吹出空気温度が所定温度以下に低下すると、電磁クラッチ16aへの通電を遮断して圧縮機16の運転を停止し、圧縮機16の稼働率を低下させることで蒸発器15のフロストを防止するようにしている(フロスト防止制御)。
【0021】
次に、蒸発器15の空気流れ下流側には、車両エンジンからの温水により空調空気を加熱するヒータコア(加熱用熱交換器)22が配置されている。このヒータコア22の側方にはバイパス路23が形成されている。そして、ヒータコア22に隣接し板状のエアミックスドア24が回動可能に配置され、このエアミックスドア24の回動位置の選択により、ヒータコア22を通過して加熱される温風とバイパス路23を通過する冷風との風量割合を調整して吹出空気温度を調整する。
【0022】
前席側空調ユニット12の下流端には、図示しないデフロスタ吹出開口部、フェイス吹出開口部およびフット吹出開口部が開口しており、これらの開口部は図示しない吹出モードドアにより切替開閉され、各開口部を通過した空調空気は、それぞれ車両窓ガラスの内面、前席側乗員の頭部、足元部に向けて吹き出される。
【0023】
次に、後席側空調ユニット25は車室内の後席側を空調するように車室11内の後部、例えば、後席の側方部位等に配置される。この後席側空調ユニット25のケース26内には、内気を吸入して送風する送風機(第2の送風機)27が備えられ、この送風機27の下流側に後席側蒸発器(第2の蒸発器)28が配置されている。次に、蒸発器28の空気流れ下流側には、車両エンジンからの温水により空調空気を加熱するヒータコア29が配置されている。このヒータコア29の側方にはバイパス路30が形成されている。そして、ヒータコア29に隣接し板状の冷風バイパスドア31が回動可能に配置され、この冷風バイパスドア31によりバイパス路30を後席側空調ユニット25の吹き出しモードと風量レベルに応じて開閉する。
【0024】
後席側蒸発器28の冷媒入口部には後席側温度式膨張弁(第2の減圧手段)32が備えられている。この後席側温度式膨張弁32は、前席側温度式膨張弁19と同様のものであり、受液器18からの高温高圧の液冷媒を低温低圧の気液2相冷媒に減圧する減圧手段をなすもので、後席側蒸発器28の出口部の冷媒の過熱度が予め設定した所定値となるように弁開度を調整して、冷媒流量を調整するものである。
【0025】
なお、冷凍サイクルRにおいて、後席側の温度式膨張弁32の入口側は床下高圧配管33を介して前席側の温度式膨張弁19の入口側に接続され、また、後席側の蒸発器28の出口側は床下低圧配管34を介して前席側の蒸発器15の出口側に接続されている。これにより、後席側の蒸発器28および温度式膨張弁32は前席側の蒸発器15および温度式膨張弁19と並列に接続されている。
【0026】
床下高圧配管33および床下低圧配管34は、車室11の床面11aの下側に形成される床下空間35に配置されるので、圧縮機16の吸入配管16bより所定高さL(例えば、600mm程度)だけ低い部位に配置される。
【0027】
そして、後席側空調ユニット25において、蒸発器28の下流直後の部位にフェイス吹出開口部36および吹出モードドア37が配置され、後席側蒸発器28で冷却された冷風はフェイス吹出開口部36から後席側フェイスダクト38を通って天井吹出口38aから後席側乗員の頭部に向けて吹き出す。また、ヒータコア29で加熱された温風は、後席側フットダクト39を通って後席側フット吹出口39aから後席側乗員の足元部に向けて吹き出される。
【0028】
図2は本実施形態の電気制御の概要ブロック図であり、空調用制御装置40はマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されるもので、蒸発器温度センサ21により検出される蒸発器吹出空気温度Teの他に、センサ群41から外気温Tam、内気温Tr、日射量Ts、温水温度Tw等が入力される。また、前席側操作パネル42から車室温の温度設定、風量調整、内外気モード切り替え、吹出モード切り替え、電磁クラッチ16aへのオンオフ等の操作信号が入力される。一方、後席側操作パネル43からは、後席側の風量調整、吹出モード切り替え等の操作信号が入力される。なお、この後席側の風量調整および吹出モード切り替えの操作信号については、前席側操作パネル42からも入力可能になっている。
【0029】
空調用制御装置40は予め設定されたプログラムに従って所定の演算処理を行って出力信号を出し、前席側および後席側の空調機器(電磁クラッチ16a、送風機14、27、エアミックスドア24、31等の駆動用モータ群)の作動を制御する。
【0030】
次に、上記構成において作動を説明する。まず、前席側空調ユニット12および後席側空調ユニット25をともに作動させるときは、前後両方の送風機14、27が作動して、両空調ユニット12、25に送風する。そして、前席側操作パネル42のエアコンスイッチ(圧縮機作動スイッチ)が投入されると、電磁クラッチ16aが通電され接続状態になるので、圧縮機16が車両エンジンにより駆動される。
【0031】
これにより、前席側空調ユニット12においては、送風空気を蒸発器15により冷却、除湿した後に、ヒータコア22により再加熱することができる。前席側空調ユニット12では、エアミックスドア24により冷風と温風の風量割合を任意に調整して車室内への吹出温度を調整できる。なお、後席側空調ユニット25では、吹出モードドア37により、吹き出しモードをフェイスモードとフットモードとに切り替えることができ、フェイスモード時には蒸発器28により冷却、除湿した冷風を後席側フェイスダクト38を通して後席側の天井吹出口38aから車室内後席側へ吹き出す。また、フットモード時には送風空気が蒸発器28を通過した後ヒータコア29により加熱されて温風となり、この温風は後席側フットダクト39を通して後席側のフット吹出口39aから乗員足元部に吹き出す。
【0032】
ところで、前後両方の空調ユニット12、25を上記のように同時運転しているときは、前後の温度式膨張弁19、32がそれぞれ前後の蒸発器15、28の熱負荷に対応した弁開度に調整され、その熱負荷に対応した流量の冷媒を常時、各蒸発器15、28の流路を通過させるので、後席側空調ユニット25の床下低圧配管34等に潤滑オイルが溜まることはない。
【0033】
また、前席側のみに乗員が搭乗し、後席側には乗員が搭乗していないときは、前席側操作パネル42または後席側操作パネル43でのスイッチ操作により後席側送風機27を停止する。これにより、後席側空調ユニット25には空調空気が送風されず、後席側空調ユニット25の空調作用が停止状態となるので、前席側空調ユニット12のみの単独運転状態となる。
【0034】
この前席側単独運転時には、後席側空調ユニット25において、後席側の温度式膨張弁32が微小な開閉を繰り返すことにより、液相の潤滑オイルが後席側の蒸発器28内とか蒸発器出口の床下低圧配管34内に溜まっていく。特に、床下低圧配管34は、圧縮機16の吸入配管16bに対して所定量L(例えば、600mm程度)だけ低い位置に配置されるので、この床下低圧配管34への潤滑オイル寝込み現象が発生しやすい。
【0035】
そのため、後席側蒸発器28用の電磁弁を持たないデュアルエアコンタイプの車両空調用冷凍サイクル装置では、前席側単独運転時に圧縮機16の連続作動状態が長時間継続されると、後席側温度式膨張弁32の微小な開閉が長時間繰り返されて、床下低圧配管34への潤滑オイル寝込み現象が顕著となり、圧縮機16へのオイル戻り不足が発生する。そこで、本実施形態では床下低圧配管34への潤滑オイル寝込み現象を解消するために、適正な時間間隔で圧縮機16の作動を強制的に断続させるオイル戻し制御を行なっている。
【0036】
本実施形態におけるオイル戻し制御について図3に基づいて説明する。図3は本実施形態に係る空調用制御装置40により実行されるオイル戻し制御の制御ルーチンを示すフローチャートであり、制御ルーチンは前席操作パネル42等の操作により前席側空調ユニット12のみの単独運転状態となった場合にスタートする。
【0037】
まず、ステップS10にてタイマ時間等を初期化する。そして、ステップS20にて各種センサ21、41の検出信号、各操作パネル42、43からの操作信号を読み込む。
【0038】
次にステップS30にて、ステップS20で読み込まれた各信号の状態から、エアコンスイッチがオンされているか否かを判定する。エアコンスイッチがオンされていない場合は、圧縮機作動停止状態であるためステップS10に戻る。また、エアコンスイッチがオンされている場合は、ステップS40に進む。
【0039】
次に、ステップS40にて、フロスト防止制御が行なわれているか否かを判定する。フロスト防止制御行なわれているか否かの判定は、空調用制御装置40のメイン制御ルーチン(図示せず)で行なわれるフロスト防止制御を実行するか否かの判定結果を参照して決定している。本実施形態では、メイン制御ルーチンでフロスト防止制御を実行すると判定された場合には、ステップS40でフロスト防止制御が行なわれていると判定し、フロスト防止制御を実行しないと判定された場合には、ステップS40でフロスト防止制御が行なわれていないと判定する。
【0040】
ここで、フロスト防止制御を実行するか否かの判定は、図4に示す制御マップに基づいて行なわれる。図4は吹出温度Teの目標温度を説明するものであって、図4の制御マップによれば、温度センサ21で検出される蒸発器吹出温度Teの目標温度として第1目標温度TEO1(例えば、3°C)と第2目標温度TEO2(例えば、4°C)が設定され、第1、第2目標温度TEO1、TEO2と実際の蒸発器吹出温度Teとを比較して、電磁クラッチ16aのオン、オフ信号を決定している。
【0041】
図3に戻り、ステップS40において、フロスト防止制御が行なわれていないと判定された場合には、ステップS50でタイマ時間をカウントする。一方、フロスト防止制御が行なわれていると判定された場合には、タイマ時間はカウントせずステップS20に戻る。ここで、ステップS50でカウントされるタイマ時間は、前席側単独運転開始またはオイル戻し制御の終了からの経過時間からフロスト防止制御による圧縮機16の作動停止時間を除外した時間に相当している。
【0042】
これにより、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間からフロスト防止制御による圧縮機16の作動停止時間を積算した時間(本実施形態におけるフロスト防止制御実行時間)分だけ延長することができる。ここで、所定基準時間にフロスト防止制御実行時間を加算した時間が、本発明の所定期間に相当している。
【0043】
次に、ステップS60にて、カウントされたタイマ時間が所定基準時間に達したか否かを判定する。この所定基準時間は、例えば30分から120分の間に予め空調制御装置40のRAM等に設定されている。そして、タイマ時間が所定基準時間を経過すると、ステップ70にて電磁クラッチ16aを強制的に複数回断続制御するオイル戻し制御を行ない、オイル戻し制御終了後にステップS10に戻る。
【0044】
次に、本実施形態におけるオイル戻し制御について図5のタイミングチャートに基づいて説明する。図5(a)は、前席側単独運転開始またはオイル戻し制御の終了からの経過時間に対するタイマ時間のカウントの変化を示しており、図5(b)は、電磁クラッチ16aのオンオフ状態を示しており、また、図5(c)は、オイル循環率の変化を示している。ここで図5(a)における点線は、フロスト防止制御による圧縮機16の作動停止時間をタイマ時間から除外していない場合の前席側単独運転開始またはオイル戻し制御の終了からのタイマ時間と経過時間との関係を示している。
【0045】
図5に示すように、前席側蒸発器15の単独運転が連続すると、時間の経過と伴に潤滑オイルが後席側蒸発器7内などに溜まっていくため、徐々にオイル循環率が低下する。オイル循環率が低下中であって、タイマ時間が所定基準時間を経過していない場合にフロスト防止制御が行われると、電磁クラッチ16aがオンオフを繰り返す状態(図5(b)参照)となり、オイル循環率は変化しない(図5(c)参照)。
【0046】
本実施形態では、フロスト防止制御による圧縮機16の作動停止状態ではタイマ時間をカウントせず、圧縮機16の作動状態でのみタイマ時間をカウントしているため、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間からフロスト防止制御による圧縮機16の作動停止時間を積算した時間(本実施形態におけるフロスト防止制御実行時間)分だけ延長していることとなる(図5(a)参照)。
【0047】
これにより、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間から圧縮機16の作動停止時間分だけ延長することで、オイル循環率が必要オイル循環率まで低下しないため、圧縮機16のオイル戻り不足を抑制することができる(図5(c)参照)。また、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間から圧縮機16の作動停止時間分だけ延長することで、オイル戻し制御による空調風の吹出温度の頻繁な変化を抑制することができ、乗員の空調フィーリングの悪化を抑制することができる。
【0048】
以上説明したように、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間から圧縮機16の作動停止時間を積算した時間分だけ延長することで、オイル戻し制御の処理実行間隔を適正にすることができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図6に基づいて説明する。本第2実施形態では、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。図6は、本実施形態に係る空調用制御装置40により実行されるオイル戻し制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0050】
本実施形態では、図6に示すようにステップS30でエアコンスイッチがオンされている場合には、ステップS31でタイマ時間をカウントする。そしてステップS40でフロスト防止制御が行なわれているか否かを判定する。
【0051】
ステップS40でフロスト防止制御が行なわれていると判定された場合には、ステップS41でフロスト防止制御による圧縮機16の作動停止時間をカウントし、そしてステップS42で所定基準時間に圧縮機16の作動停止時間を積算して補正基準時間を算出してステップS60に進む。ステップS60で、カウントされたタイマ時間が補正基準時間に達したか否かを判定し、タイマ時間が補正基準時間に達した場合に、オイル戻し制御を実行する。ここで、補正基準時間の初期値は、所定基準時間が設定されており、フロスト防止制御が行なわれない場合には所定基準時間と同じ時間となっている。
【0052】
一方、ステップS40でフロスト防止制御が行なわれていないと判定された場合には、ステップS20に進む。
【0053】
これにより、オイル戻し制御を実行するか否かの判定を、タイマ時間が補正基準時間に達したか否かにより行なうことで、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間から圧縮機16の作動停止時間を積算した時間分だけ延長することができ、オイル戻し制御の処理実行間隔を適正にすることができる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図3、図7に基づいて説明する。本第3実施形態では、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。図7(a)は、前席側単独運転開始またはオイル戻し制御の終了からの経過時間に対するタイマ時間のカウントの変化を示しており、図7(b)は、電磁クラッチ16aのオンオフ状態を示しており、また、図7(c)は、オイル循環率の変化を示している。
【0055】
上記第1実施形態では、フロスト防止制御実行時間を、フロスト防止制御による圧縮機16の作動停止時間を積算した時間としているが、本実施形態では、フロスト防止制御実行時間を、フロスト防止制御が行なわれていると判定され、電磁クラッチ16aがオフ(圧縮機16の作動停止状態)されてから連続して圧縮機16の作動停止状態または作動状態に維持された維持時間が所定時間を経過するまでの時間を積算した時間とするものである。
【0056】
具体的には、フロスト防止制御により電磁クラッチ16aがオフ状態となり、電磁クラッチ16aのオンオフを繰り返した後、連続してオン状態が所定時間βを経過すると(図7(b)のA部)、フロスト防止制御により電磁クラッチ16aがオフ状態となってからオン状態が所定時間β維持されるまでの時間α1をタイマ時間から除外している(図7(a)参照)。また、電磁クラッチ16aがフロスト防止制御により連続してオフ状態が所定時間γを経過すると(図7(b)のB部)、電磁クラッチ16aがフロスト防止制御によりオフ状態となってから所定時間γ維持されるまでの時間α2(=所定時間γ)をタイマ時間から除外している。
【0057】
これにより、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間から上記時間α1、α2を積算したフロスト防止制御実行時間分だけ延長することができる。
【0058】
また、制御ルーチンとしては、図3に示す第1実施形態におけるステップS40のフロスト防止制御が行なわれているか否かの判定でフロスト防止制御が行なわれていると判定された後であって、ステップS50でタイマ時間をカウントする前に、フロスト防止制御により連続して圧縮機16の作動停止状態または作動状態が所定時間維持されているか否かの判定を行なう。
【0059】
ここで、所定時間維持されていると判定された場合は、ステップS50に進みタイマ時間をカウントする。一方、所定時間継続されていないと判定された場合は、圧縮機16の断続運転が複数回行なわれている状態と判断できるため、タイマ時間はカウントせずにステップS20に戻る。
【0060】
これにより、第1実施形態でのフロスト防止制御実行時間に比べて、タイマ時間からフロスト防止制御による圧縮機16の作動停止時間に加えて作動状態が維持される作動維持時間についても除外することができるため、オイル戻し制御をさらに延長することができ、オイル戻し制御による空調風の吹出温度の頻繁な変化を抑制することができる。
【0061】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図8、図9に基づいて説明する。本第4実施形態では、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。図8は、本実施形態に係る空調用制御装置40により実行されるオイル戻し制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0062】
本実施形態では図8に示すようにステップS30でエアコンスイッチがオンされている場合には、ステップS31で、タイマ時間をカウントする。
【0063】
次にステップS32で所定サンプリング時間毎の圧縮機16の稼働率を算出する。圧縮機16の稼働率は、所定サンプリング時間毎における圧縮機16のオン時間を計測し、下記式F1に示すように所定サンプリング時間に対する圧縮機16の稼働時間の割合により算出する。
稼働率(%)=(圧縮機稼働時間/所定サンプリング時間)×100…(F1)
ここで、所定サンプリング時間は、所定基準時間に応じて設定されるサンプリング時間(例えば、60秒)であって、予め空調制御装置40のROM等に記憶されている。
【0064】
次にステップS33で算出した圧縮機16の稼働率に基づいて、ステップS33で圧縮機16の稼働率が所定範囲内であるか否かを判定する。ステップS33で圧縮機16の稼働率が所定範囲内であると判定された場合は、ステップS34で所定基準時間に所定サンプリング時間を積算して補正基準時間を算出してステップS60に進む。一方、圧縮機16の稼働率が所定範囲外であると判定された場合は、ステップS34をスキップしてステップS60に進む。ここで、補正基準時間は、フロスト防止制御が行なわれない場合には所定基準時間と同じ時間となっている。
【0065】
ステップS60で、カウントされたタイマ時間が補正基準時間に達したか否かを判定し、タイマ時間が補正基準時間に達した場合に、オイル戻し制御を実行する。
【0066】
ここで、本実施形態では、圧縮機16の稼働率の所定範囲は、図9に示す通り20%以上でかつ80%以内としている。これは、圧縮機16の稼働率が20%より小さい場合には、圧縮機16がフロスト防止制御によりほぼ作動停止状態となっており、オイル循環率の変動が予測できないために所定範囲外としている。また、圧縮機16の稼働率が80%より大きい場合は、圧縮機16がほぼ連続作動状態となっており、オイル循環率が維持されるようなフロスト防止制御は行なわれていないものとして所定範囲外としている。
【0067】
次に、本実施形態におけるオイル戻し制御について図10のタイミングチャートに基づいて説明する。図10(a)は、前席側単独運転開始またはオイル戻し制御の終了からの経過時間に対するタイマ時間のカウントの変化を示しており、図10(b)は、補正基準時間の変化を示しており、図10(c)は、圧縮機稼働率の変化を示しており、図10(d)は、電磁クラッチ16aのオンオフ状態を示しており、また、図10(e)は、オイル循環率の変化を示している。
【0068】
フロスト防止制御により電磁クラッチ16aがオフ状態となり、電磁クラッチ16aのオンオフを繰り返すと(図10(d)のC部参照)、圧縮機16の稼働率は所定範囲内となるため(図10(c)参照)、所定基準時間に所定サンプリング時間を積算して補正基準時間を増加させる(図10(b)参照)。同様に、電磁クラッチ16aがフロスト防止制御によりオフ状態となると(図10(d)のD部参照)、圧縮機16の稼働率は所定範囲内となるため(図10(c)参照)、所定基準時間に所定サンプリング時間を積算して補正基準時間を増加させる(図10(b)参照)。
【0069】
これにより、圧縮機16の稼働率が所定範囲内である場合の所定サンプリング時間を所定基準時間に積算して補正基準時間を算出し、タイマ時間が補正基準時間を経過した場合に、オイル戻し制御を実行することができる。換言すれば、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間から圧縮機16の稼働率が所定範囲内である場合の所定サンプリング時間を積算した時間(フロスト防止制御実行時間)分だけ延長することができる(図10(a)参照)。その結果、オイル戻し制御の処理実行間隔を適正にすることができる。
【0070】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のように種々変形可能である。
【0071】
(1)上記第1ないし第3実施形態におけるフロスト防止制御が行なわれているか否かの判定は、フロスト防止制御を実行するか否かの判定結果を参照して判定しているが、これに限定されるものではなく、例えば圧縮機16のオン、オフ信号等、空調制御装置40からの出力状態によりフロスト防止制御が行なわれているか否かを間接的に判定してもよい。
【0072】
(2)上記第1ないし第3実施形態において、空調用制御装置40のメイン制御ルーチンで行なわれるフロスト防止制御を実行するか否かの判定は、図4に示す制御マップに基づいて行なわれるものとしているが、これに限定されるものではない。例えば、蒸発器15の空気流れ上流側の空気吸入部に空気温度を検出する蒸発器吸入側温度センサ(図示せず)、および蒸発器15の空気流れ下流側の空気吹出部に空気温度を検出する蒸発器温度センサ21若しくは冷凍サイクルRにおける高圧側圧力を検出する高圧圧力センサ(図示せず)を設け、蒸発器吸入側温度センサで検出される空気温度の単位変化当たりに対する蒸発器温度センサ21で検出される空気温度の変化率若しくは高圧圧力センサで検出される高圧側圧力の変化率から蒸発器15のフロスト防止制御判定を行なってもよい。
【0073】
(3)また、上記第3実施形態では、第1実施形態と同様にオイル戻し制御の実行開始を所定基準時間からフロスト防止制御実行時間分だけ延長しているが、これに限定されるものではない。例えば、第2実施形態と同様にフロスト防止制御が行なわれていると判定された場合にフロスト防止制御実行時間をカウントし、所定基準時間にフロスト防止制御実行時間を積算して補正基準時間を算出し、オイル戻し制御を実行するか否かの判定を、タイマ時間が補正基準時間に達したか否かにより行なうことで、オイル戻し制御の実行開始を所定基準時間から圧縮機16の作動停止時間を積算した時間分だけ延長してもよい。
【0074】
(4)また、上記各実施形態では、本発明の車両用冷凍サイクル装置を車両空調用冷凍サイクル装置Rに適用しているが、これに限らず、冷凍車における冷凍、冷蔵用の車両用冷凍サイクル装置に適用することができる。
【0075】
(5)また、上記各実施形態では、圧縮機16を電磁クラッチ16aのオンオフにより断続制御しているが、圧縮機16が可変容量型圧縮機の場合は容量を強制的に変化させてもよい。また、圧縮機16がモータ駆動の電動圧縮機の場合は回転数を強制的に変化させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】第1実施形態に係る車両空調用冷凍サイクル装置の全体システム構成図である。
【図2】第1実施形態に係る電気制御部の概略ブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る電気制御部によるオイル戻し制御のフローチャートである。
【図4】第1実施形態に係る蒸発器吹出温度と電磁クラッチのオンオフとの作動説明図である。
【図5】第1実施形態に係る圧縮機のオイル戻し制御の作動説明図である。
【図6】第2実施形態に係る電気制御部によるオイル戻し制御のフローチャートである。
【図7】第3実施形態に係る圧縮機のオイル戻し制御の作動説明図である。
【図8】第4実施形態に係る電気制御部によるオイル戻し制御のフローチャートである。
【図9】第4実施形態に係る圧縮機のオイル戻し制御の作動説明図である。
【図10】第4実施形態に係る圧縮機稼働率による圧縮機16の作動状態の説明図である。
【図11】従来技術に係る圧縮機のオイル戻し制御の作動説明図である。
【符号の説明】
【0077】
12…前席空調ユニット、15…前席側蒸発器、16…圧縮機、17…凝縮器、19…前席側膨張弁、25…後席側空調ユニット、28…後席側蒸発器、32…後席側膨張弁、40…空調用制御装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮し吐出する圧縮機(16)と、
前記圧縮機(16)から吐出された冷媒を冷却し凝縮させる凝縮器(17)と、
前記凝縮器(17)で凝縮した冷媒を減圧膨張させる第1の減圧手段(19)と、
前記第1の減圧手段(19)の冷媒流れ下流側に設けられ、前記第1の減圧手段(19)により減圧膨張した冷媒を蒸発させる第1の蒸発器(15)と、
前記第1の蒸発器(15)に送風する第1の送風機(14)と、
前記第1の減圧手段(19)と並列に設けられ、前記凝縮器(17)で凝縮した冷媒を減圧膨張させる第2の減圧手段(32)と、
前記第2の減圧手段(32)の冷媒流れ下流側に設けられ、前記第2の減圧手段(32)により減圧膨張した冷媒を蒸発させる第2の蒸発器(28)と、
前記第2の蒸発器(28)に送風する第2の送風機(27)と、
前記第1の蒸発器(15)内の冷媒温度を検出する蒸発器温度検出手段(21)と、
少なくとも前記蒸発器温度検出手段(21)の検出値が所定値以下となった場合に、前記第1の蒸発器(15)の凍結を抑制するために、圧縮機稼働率を低下させてフロスト防止制御を行なうフロスト防止制御手段と、
前記第1の送風機(14)が稼動状態にされ、所定の開始条件が成立した場合に、前記圧縮機(16)の断続運転によるオイル戻し制御を実行するオイル戻し制御手段とを備え、
前記第2の減圧手段(32)は、前記第2の蒸発器(28)の出口冷媒の過熱度を調整する温度式膨張弁により構成し、
前記所定の開始条件は、前記オイル戻し制御が行なわれていない期間が所定期間を超えることにより成立するとともに、前記所定期間は、前記フロスト防止制御が行なわれる期間である前記フロスト防止制御実行時間分だけ延長されることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記フロスト防止制御実行時間は、前記フロスト防止制御手段による前記フロスト防止制御の実行開始時から前記圧縮機(16)が作動停止状態または作動状態が所定時間維持されるまでの経過時間を積算した時間であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記フロスト防止制御実行時間は、前記フロスト防止制御による前記圧縮機(16)の作動停止時間を積算した時間であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記圧縮機(16)の所定サンプリング時間毎の前記圧縮機稼働率を算出する稼働率算出手段と、
前記圧縮機稼働率が所定範囲内にあるか否かを判定する圧縮機稼働率判定手段とを備え、
前記フロスト防止制御実行時間は、前記圧縮機稼働率判定手段により前記圧縮機稼働率が所定範囲内であると判定された場合の前記所定サンプリング時間を積算した時間であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項1】
冷媒を圧縮し吐出する圧縮機(16)と、
前記圧縮機(16)から吐出された冷媒を冷却し凝縮させる凝縮器(17)と、
前記凝縮器(17)で凝縮した冷媒を減圧膨張させる第1の減圧手段(19)と、
前記第1の減圧手段(19)の冷媒流れ下流側に設けられ、前記第1の減圧手段(19)により減圧膨張した冷媒を蒸発させる第1の蒸発器(15)と、
前記第1の蒸発器(15)に送風する第1の送風機(14)と、
前記第1の減圧手段(19)と並列に設けられ、前記凝縮器(17)で凝縮した冷媒を減圧膨張させる第2の減圧手段(32)と、
前記第2の減圧手段(32)の冷媒流れ下流側に設けられ、前記第2の減圧手段(32)により減圧膨張した冷媒を蒸発させる第2の蒸発器(28)と、
前記第2の蒸発器(28)に送風する第2の送風機(27)と、
前記第1の蒸発器(15)内の冷媒温度を検出する蒸発器温度検出手段(21)と、
少なくとも前記蒸発器温度検出手段(21)の検出値が所定値以下となった場合に、前記第1の蒸発器(15)の凍結を抑制するために、圧縮機稼働率を低下させてフロスト防止制御を行なうフロスト防止制御手段と、
前記第1の送風機(14)が稼動状態にされ、所定の開始条件が成立した場合に、前記圧縮機(16)の断続運転によるオイル戻し制御を実行するオイル戻し制御手段とを備え、
前記第2の減圧手段(32)は、前記第2の蒸発器(28)の出口冷媒の過熱度を調整する温度式膨張弁により構成し、
前記所定の開始条件は、前記オイル戻し制御が行なわれていない期間が所定期間を超えることにより成立するとともに、前記所定期間は、前記フロスト防止制御が行なわれる期間である前記フロスト防止制御実行時間分だけ延長されることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記フロスト防止制御実行時間は、前記フロスト防止制御手段による前記フロスト防止制御の実行開始時から前記圧縮機(16)が作動停止状態または作動状態が所定時間維持されるまでの経過時間を積算した時間であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記フロスト防止制御実行時間は、前記フロスト防止制御による前記圧縮機(16)の作動停止時間を積算した時間であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記圧縮機(16)の所定サンプリング時間毎の前記圧縮機稼働率を算出する稼働率算出手段と、
前記圧縮機稼働率が所定範囲内にあるか否かを判定する圧縮機稼働率判定手段とを備え、
前記フロスト防止制御実行時間は、前記圧縮機稼働率判定手段により前記圧縮機稼働率が所定範囲内であると判定された場合の前記所定サンプリング時間を積算した時間であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−63192(P2009−63192A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229963(P2007−229963)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]