説明

冷凍充填苺並びにその製造方法及び製造装置

【課題】 解凍しても充填物が解け出すことがない新規な冷凍充填苺の製造方法を提供すること。
【解決手段】 新鮮な苺2の芯4をくり抜いて開口部6を有する充填凹部8を形成し、この開口部6を通して苺2の充填凹部8に練乳14(又は蜂蜜)を充填し、その後充填した練乳16(又は蜂蜜)を覆うように苺2の開口部6にチョコレート16を充填し、しかる後に練乳14(又は蜂蜜)をチョコレート16で覆った苺2を冷凍処理する冷凍充填苺の製造方法。この製造方法では、苺2に充填凹部8を形成した後に、苺2をクエン酸処理するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苺の中に充填物を入れて冷凍させた冷凍充填苺並びにこの冷凍充填苺を製造するための製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、新鮮な苺の芯をくり抜いて充填凹部を形成し、この充填凹部にアイスクリームを充填した後に苺全体を冷凍させた冷凍充填苺が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような冷凍充填苺においては、苺の中にアイスクリームを充填するので、苺が食べごろに解凍すると、充填したアイスクリームが流れでない程度に溶けた状態になり、これによって、柔らかくてクリーミーな食感が得られる。
【0003】
【特許文献1】特許第3359624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の冷凍充填苺には、次の通りの問題がある。第1に、苺に形成した充填凹部にアイスクリームを充填するのみであるので、苺が解凍された後ある程度の時間放置すると、充填したアイスクリームが溶けて苺から溶け出し、食べた際の食感が悪くなるとともに、溶け出したアイスクリームが周囲に流動し、食べる際に手などについて食べ難くなる問題がある。第2に、苺の中にアイスクリームを充填した場合、甘みが少なく、冷凍菓子としての甘味が足りないと感じることがある。
【0005】
本発明の第1の目的は、解凍しても充填物が解け出すことがない新規な冷凍充填苺の製造方法を提供することである。
本発明の第2の目的は、解凍しても充填物が溶け出すことがなく、また適度の甘味が得られる冷凍充填苺を提供することである。
【0006】
本発明の第3の目的は、冷凍充填苺を大量に効率的に製造することができる製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の冷凍充填苺の製造方法は、上記第1の目的に対応して、新鮮な苺の芯をくり抜いて開口部を有する充填凹部を形成し、前記開口部を通して前記苺の前記充填凹部に練乳又は蜂蜜を充填し、その後充填した前記練乳又は蜂蜜を覆うように前記苺の前記開口部にチョコレートを充填し、しかる後に前記練乳又は蜂蜜を前記チョコレートで覆った苺を冷凍処理することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の冷凍充填苺の製造方法では、前記苺に前記充填凹部を形成した後に、前記苺をクエン酸処理することを特徴とする。
また、本発明の請求項3に記載の冷凍充填苺は、上記第2の目的に対応して、請求項1又は2に記載の製造方法を用いて製造したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4記載の冷凍充填苺の製造装置は、上記第3の目的に対応して、複数の苺収容部を備えた収容トレイを第1充填域、第2充填域及び冷凍域を順に通して搬送する間に冷凍充填苺を製造する冷凍充填苺の製造装置であって、
前記第1充填域には練乳又は蜂蜜を充填するための第1充填手段が設けられ、前記第2充填域にはチョコレートを充填するための第2充填手段が設けられ、前記冷凍域には急速冷凍するための冷凍手段が設けられており、
前記収容トレイの前記複数の苺収容部には、芯をくり抜いて形成された充填凹部の開口部を上にして苺が収容保持され、前記収容トレイが前記第1充填域に搬送されたときには、前記第1充填手段は、前記収容トレイに収容保持された前記苺の前記充填凹部に前記練乳又は蜂蜜を充填し、前記収容トレイとが前記第2充填域に搬送されたときには、前記第2充填手段は、前記収容トレイに収容保持された前記苺の前記開口部に、前記練乳又は蜂蜜を覆うようにチョコレートを充填し、また前記収容トレイが前記冷凍域に搬送されたときには、前記冷凍手段は、前記収容トレイに収容保持された前記苺を急速冷凍することを特徴とする。
【0010】
更に、本発明の請求項5に記載の冷凍充填苺の製造装置では、前記冷凍域の下流側には、前記収容トレイに収容された前記苺を移送搬送装置に移送するための移送域が設けられ、前記移送域には前記苺を保持して前記移送搬送装置に移送するための移送手段が設けられ、前記移送手段は前記苺を把持するための一対の把持部材を有し、前記一対の把持部材は自重を利用して前記苺を把持して移送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載の冷凍充填苺の製造方法によれば、新鮮な苺の芯をくり抜いて開口部を有する充填凹部を形成し、苺のこの充填凹部に練乳又は蜂蜜を充填した後に、練乳又は蜂蜜を覆うように苺の開口部にチョコレートを充填するので、練乳又は蜂蜜がチョコレートで覆われ、解凍したときにも練乳又は蜂蜜が外側に溶け出ることがなく、食べる際に手などに練乳又は蜂蜜がつくことがない。また、苺の中に練乳又は蜂蜜を充填するので、食べた際に適度の甘味が得られ、甘味の高い冷凍菓子として提供することができる。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載の冷凍充填苺によれば、苺に充填凹部を形成した後にクエン酸処理を行うので、練乳又は蜂蜜を充填する前に加工した苺を殺菌処理することができる。
【0013】
また、本発明の請求項3に記載の冷凍充填苺によれば、請求項1又は2に記載の製造方法を用いて製造するので、適度の甘味を有する冷凍充填苺を提供することができ、また解凍したときにも充填した練乳又は蜂蜜が外側に溶け出ることがない。
【0014】
また、本発明の請求項4記載の冷凍充填苺の製造装置によれば、充填凹部を形成した苺を収容する収容トレイを用い、この収容トレイを第1充填域、第2充填域及び冷凍域を順に通して搬送するして冷凍充填苺を製造するので、冷凍充填苺を大量に効率的に製造することができる。また、芯をくり抜いた苺は充填凹部の開口部を上にして収容トレイに収容保持されるので、第1充填手段によって、練乳又は蜂蜜を容易に且つ効率的に充填することができ、また第2充填手段によって、練乳又は蜂蜜を覆うようにチョコレートを容易に且つ効率的に充填することができる。
【0015】
更に、本発明の請求項5に記載の冷凍充填苺の製造装置によれば、移送手段の一対の把持部材は自重を利用して苺を把持するので、把持の際に冷凍充填苺に大きな応力が作用することがなく、冷凍充填苺を傷つけることなく移送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う冷凍充填苺の製造方法及び製造装置並びにこれによって製造された冷凍充填苺について説明する。
冷凍充填苺の製造方法
まず、図1を参照して、本発明に従う冷凍充填苺の製造方法について説明する。図1(a)〜(f)は、冷凍充填苺の製造方法を製造工程の順に示す簡略図である。
【0017】
図1において、この製造方法では、図1(a)で示すような新鮮な苺2用い、この苺2を洗浄し、その後、図1(b)で示すように、苺2の芯4を取り除く。この芯の除去は、例えば、図示しない除去工具(例えば、スプーンのような工具)を用いて手作業で行い、このように除去すると、苺2に開口部6を有する充填凹部8が形成される。苺2としては約40g程度の大きさのものを用い、芯4として約10g程度除去するようになる。
【0018】
次に、図1(c)で示すように、例えば噴霧器10により殺菌液を噴霧して、充填凹部8を形成した苺2の表面(外表面及び充填凹部8の内面)を殺菌処理する。殺菌処理液としてクエン酸液12(例えば、濃度0.5〜2.0%程度)を用い、このクエン酸液12を噴霧器10を用いて噴霧する。
【0019】
次いで、図1(d)で示すように、殺菌処理した苺2の充填凹部8にその開口部を通して練乳14を充填する。この練乳14は、図示していない充填具を用いて行い、例えば10g程度、換言すると充填凹部8の6〜7割程度を満たす程度に充填される。充填する練乳14は、食する際に適度の甘味を持たせるために、糖分が40〜45%程度のものを用いる。
【0020】
その後、図1(e)で示すように、充填した練乳14を覆うように、苺2の充填凹部8の開口部にチョコレート16を充填する。チョコレート16の充填は、図示しない充填具を用いて行い、例えば5g程度、換言すると充填凹部8を満たすように充填された練乳14の外側に練乳14が露出することがないように充填される。チョコレート16は、嗜好に合わせて通常のチョコレートでもよく、或いはホワイトチョコレートでもよい。
【0021】
しかる後、図1(f)で示すように、冷凍装置18を用いて苺2(練乳14及びチョコレート16を充填したもの)を冷凍処理する。冷凍処理する際には、充填した苺2を収容トレイ20に収容し、収容トレイ20に収容した状態にて冷凍装置18の冷凍庫22内に入れる。苺2の冷凍処理は、冷凍庫22内の温度を例えば−25〜−35℃程度に保ち、例えば20〜30分程度冷凍庫22内に入れて冷凍処理する。
【0022】
このように冷凍処理することによって、苺2に練乳14及びチョコレート16を充填した冷凍充填苺が製造することができ、その後、必要に応じて、冷凍充填苺一つずつ包装処理される。この冷凍処理した状態においては、苺2及びチョコレート16は凍結状態となるが、練乳14は糖分が高いために凍結せずにどろっとした状態となり、凍結状態の苺2及びチョコレート16が未凍結状態の練乳14を覆うようになり、この練乳14が外側に流れ出ることはない。また、冷凍充填苺を解凍した状態においても、苺2及びチョコレート16が練乳14を包むようになるために、充填された練乳14が外側に流出することがなく、食べる際に練乳14が手につくようなことがない。また、解凍された充填苺を食べると、練乳14及びチョコレート16の甘味が苺2の味にミックスされて適度の甘さとなり、非常に美味しく食することができる。
【0023】
上述した実施形態では、苺2の充填凹部8に練乳14を充填しているが、練乳14に代えて、充分な糖度を有する蜂蜜などを充填するようにしてもよく、このような蜂蜜を充填しても略同様の衛陶充填苺を提供することができる。
【0024】
冷凍充填苺の製造装置
次に、図2〜図5を参照して、上述した冷凍充填苺を大量に生産する製造装置の一実施形態について説明する。図2は、一実施形態の製造装置の冷凍域よりも上流側の構成を簡略的に示す斜視図であり、図3は、図2の製造装置の冷凍装置よりも下流側の構成を簡略的に示す図であり、図4は、図2の製造装置における移送手段の一部を、冷凍充填苺を把持した状態で示す部分断面図であり、図5は、図4の移送手段の一部を、冷凍充填苺を把持する前の状態で示す部分断面図である。
【0025】
図2及び図3において、この冷凍充填苺の製造装置は、収納トレイ102を載置域104、第1充填域106及び第2充填域108を通して冷凍域110に搬送するための第1搬送手段112と、冷凍域110から移送域114を通して取出域116に搬送するための第2搬送手段118とを備えている。
【0026】
主として図2を参照して、図示の第1搬送手段112は、矢印120で示す方向に間隔をおいて配設された一対の搬送用ローラ122(図2に上流端に配設されたもののみを示す)を備え、これら搬送用ローラ122の両端部のローラ部124,126間に一対の無端状搬送ベルト128,130が巻き掛けられ、これら搬送ベルト128,130は載置域104、第1充填域106及び第2充填域108を通して冷凍域110まで延びている。図2には図示していないが、一対の搬送用ローラ122間には、複数の支持用ローラが配設され、これら支持用ローラは搬送ベルト128,130を所要の通りに支持する。
【0027】
苺2が収容される収容トレイ102は矩形状であり、縦方向及び横方向に間隔をおいて複数の苺収容部132が設けられ、芯が除去され且つ殺菌処理された苺2(図1(c)の殺菌処理まで行われた苺)が、充填凹部8の開口部を上にした状態(即ち、先細になっている先端側を下にした状態)で収容トレイ102に収容される。この収容トレイ102には、例えば、縦方向に10個程度、また横方向に20個程度の苺収容部132が設けられ、一つの収容トレイ102に200個程度の苺2が収容される。収容トレイ102の四角部には支持突部134が設けられ、これら支持突部134を利用して収容トレイ102が上下方向に積層状態に載置可能に構成されている。
【0028】
苺2が収容された収容トレイ102は、第1搬送手段112の上流端の横側の供給溜め域に積層状態に載置され、作業者は、積層状態の収容トレイ102を一つずつ持って載置域104にて第1搬送手段112の一対の搬送ベルト128,130上に載置する。このように載置された収容トレイ102は、矢印120示す方向に間欠的に搬送され、まず、載置域104から第1充填域106に搬送される。
【0029】
第1充填域106には、練乳を充填するための第1充填手段136が配設されている。第1充填手段106は、充填すべき練乳が充填される第1供給ホッパ138と、収容トレイ102に収容された苺2に練乳を充填する第1充填部材140と、第1供給ホッパ138からの練乳を第1充填部材140に送給する第1送給チューブ142とを備えており、これら第1供給ホッパ138,第1充填部材140及び第1送給チューブ142が、図2に実線で示す下流端位置から一点鎖線で示す上流端位置まで往復移動自在に構成されている。第1充填部材140には、長手方向(即ち、搬送される収容トレイ102の横方向)に間隔をおいて複数の充填口(図示せず)が設けられ、これら充填口は収容トレイ102に収容された苺2対応して設けられる。
【0030】
この第1の充填域106に収容トレイ102が搬送されて一時的に位置付けられると、第1充填手段136は収容トレイ102に収容された苺2の充填凹部8に練乳を充填する。即ち、第1充填手段106が上記下流端位置から上記上流端位置まで、収容トレイ102に収容された苺2の縦方向(即ち、収容トレイ102の搬送方向)の間隔に対応して順に間欠的に移動され、かく移動する間に、第1供給ホッパ138から第1供給チューブ142を通して供給された練乳が、第1充填部材140の各充填口から収容トレイ102に収容された苺2の充填凹部8に充填され、その充填は、収容トレイ102に収容された苺2の縦方向の列毎に一度に行われ、練乳を効率よく充填することができる。
【0031】
第1充填域106の下流側に存在する第2充填域108には、チョコレートを充填するための第2充填手段144が配設されている。第2充填手段144は、上述した第1充填手段136と実質上同様の構成であり、充填すべきチョコレートが充填される第2供給ホッパ146と、チョコレートを充填する第2充填部材148と、第2供給ホッパ146からのチョコレートを第2充填部材148に送給する第2送給チューブ150とを備えており、これら第2供給ホッパ146、第2充填部材148及び第2送給チューブ1150も、図2に実線で示す下流端位置から一点鎖線で示す上流端位置まで往復移動自在に構成されている。
【0032】
第1充填域106において練乳が充填された後に、第2の充填域108に収容トレイ102が搬送されて一時的に位置付けられると、第2充填手段144は収容トレイ102に収容された苺2の充填凹部8の開口部にチョコレートを充填する。即ち、第2充填手段108が上記下流端位置から上記上流端位置まで、収容トレイ102に収容された苺2の縦方向の間隔に対応して順に間欠的に移動され、かく移動する間に、第2供給ホッパ146から第2供給チューブ150を通して供給されたチョコレートが、第2充填部材148の各充填口から収容トレイ102に収容された苺2の充填凹部8(即ち、充填された練乳の上側)に充填され、その充填は、収容トレイ102に収容された苺2の縦方向の列毎に一度に行われ、チョコレートを効率よく充填することができる。
【0033】
第2充填域108の下流側に存在する冷凍域110には、練乳及びチョコレートを充填した苺2を冷凍するための冷凍手段152が配設されている。冷凍手段152は、例えばそれ自体周知の急速凍結装置154から構成され、第1搬送手段112によって第2充填域108から冷凍域110に搬送された収容トレイ102は、急速凍結装置154の搬送手段(図示せず)によりその冷凍庫内を通して所要の通りに搬送され、かく搬送される間に、収容トレイ102に収容された苺2(練乳及びチョコレートが充填されたもの)が急速冷凍される。
【0034】
急速凍結装置154によって冷凍された苺2は、冷凍域110の下流側に設置された第2搬送手段118に送給され、この第2搬送手段118によって更に下流側に搬送される。主として図3を参照して、図示の第2搬送手段118は、上述した第1搬送手段112と実質上同一の構成であり、矢印156で示す方向に間隔をおいて配設された一対の搬送用ローラ158,160を備え、上流側の搬送用ローラ158の両端部のローラ部162,164と下流側の搬送用ローラ160の両端部のローラ部166,168間に、一対の無端状搬送ベルト170,172が巻き掛けられ、これら搬送ベルト170,172は冷凍域110から移送域114及び取出域116まで延びている。尚、図3には図示していないが、一対の搬送用ローラ158,160間には、複数の支持用ローラが配設され、これら支持用ローラは搬送ベルト170,172を所要の通りに支持する。
【0035】
冷凍域110の下流側には移送域114が存在し、急速凍結装置154によって冷凍処理された苺2(冷凍充填苺)は、第2搬送手段118によって移送域114に搬送される。この移送域114には、冷凍処理された苺2を移送するための移送手段180が設けられ、またこの移送域114に隣接して、移送した苺2を搬送するための移送搬送手段182が設けられ、この移送搬送手段182の下流側に苺2を一つずつ包装するための包装装置184が設けられている。
【0036】
図示の移送手段180は、移送本体部186と、この移送本体部186に装着された複数の把持手段188(図4、図5参照)を有し、複数の把持手段188は移送本体部186の長手方向に間隔をおいて、収容トレイ102に収容された苺2の縦方向(矢印156で示す搬送方向)の間隔に対応して設けられている。尚、把持手段188の構成については後述する。
【0037】
収容トレイ102が冷凍域110から移送域114に搬送されて一時的に位置付けられると、移送手段180は、収容トレイ102に収容された苺(冷凍充填苺)を把持して移送域114から移送搬送手段182に移送し、この苺2の移送は、収容トレイ102に収容された苺2を縦方向の列毎に行われ、効率よく行うことができる。
【0038】
この実施形態では、移送手段180は、図3に実線で示すホーム位置に保持され、例えば、次のように移動して苺2を移送する。移送搬送手段182は、収容部190が設けられた移送部材192を旋回自在に無端状に連結した無端状移送部材194を備え、かかる無端状移送部材194が一対のローラ196間に巻き掛けられ、第2搬送手段118に隣接して配設されている。無端状移送ベルト194は、上記ホーム位置に位置する移送手段180の下方に位置し、第2搬送手段118に並行に矢印156で示す搬送方向に延びている。
【0039】
この移送手段180は、上記ホーム位置から図3に一点鎖線で示す把持解除位置まで無端状移送部材194の上方をそれに沿って移動し、この把持解除位置まで移動すると、下方に移動して把持手段188による把持を解除し、把持手段188に把持された苺2(冷凍充填苺)が無端状移送部材194の収容部190に収容されて下流側に搬送される。
【0040】
このようにして苺2を移送した移送手段180は、上方に移動した後に移送域114の収容トレイ102に移動し、更に下方に移動して収容トレイ102の次の列の苺2を把持する。そして、かく把持した後に、移送手段180は、上方に移動した後に上記ホーム位置に戻り、このような動きを繰り返し遂行して、移送域114に位置する収容トレイ102に収容された苺2を移送搬送手段182に移送する。尚、移送域114に搬送された苺2は冷凍された状態であるので、把持手段188で把持して収容トレイ102から取り出し難くなるおそれがあるが、このような不都合を解消するためには、移送域114に位置する収容トレイ102に向けて温風を吹き付け、冷凍状態の苺2の表面を幾分解凍させるのが望ましい。
【0041】
移送手段180によって移送搬送手段182に移送された苺2(冷凍充填苺)は、下流側に搬送されて包装装置184に搬送される。包装装置184はそれ自体周知のものであり、ロール状包装シート200から延びる先端側は、ローラ202にて反転されて包装部204に導かれる。移送搬送手段182にて移送搬送された苺2は、包装シート200の先端部に落下され、落下保持された状態で包装シート200とともに包装部204に送られ、この包装部204は、送られてきた包装シート200でもって苺2(冷凍充填苺)を一つずつ包装し、苺2を包装した状態の袋206が送出手段208によって包装部204から送出搬送され、このようにして苺2(冷凍冷凍苺)が製造されて包装される。
【0042】
一方、移送域14にて苺2が移送された収容トレイ102は、第2搬送手段118によって排出域116に搬送され、排出域116に搬送された収容トレイ102は第2搬送手段118から下方に排出され、かく排出された収容トレイ102は再使用されることなく破棄される。
【0043】
移送手段180による移送の際の苺2の把持は、次のように構成するのが好ましい。各把持手段188は一対の把持部材210,212を有し、それらの上端部がピン215,216を介して旋回自在に支持されている。一対の把持部材210,212の他端側は外側に幾分拡がり、それらの先端部は内側に延びて把持部を構成し、このように構成することによって、把持部材210,212は、それらの自重によって内側に旋回して図5に一点鎖線で示す閉じ位置に保持される。
【0044】
この実施形態では、複数の把持手段188に関連して移動部材214が設けられ、この移動部材214には長手方向(把持手段188の配設方向)に間隔をおいて略円錐状の作用部材217が設けられ、これら作用部材217は移動部材214と一体的に矢印218及び220で示す上下方向に移動される。移動部材214が矢印218で示す上方に後退した後退位置においては、図4に示す如く、各作用部材217は各把持手段188の一対の把持部材210,212に作用することはなく、一対の把持部材210,212は自重により内側に旋回し、苺2が存在しないときには上記閉じ位置に保持されるが、苺2が存在するときには、図4に示すように、それらの自重でもって先端把持部が苺2の外周部に作用し、移送手段180が上方に移動することによって、一対の把持部材210,212は苺2を把持した状態にて上方に持ち上げる。このように自重でもって苺2を把持するので、一対の把持部材210,212の先端把持部が苺2(冷凍充填苺)に強く作用することがなく、苺2を傷付けることなく持ち上げて移送することができる。
【0045】
また、移動部材214が矢印220で示す下方に移動して図5に示す作用位置に位置付けられると、各作用部材217が各把持手段188の一対の把持部材210,212の後端部に作用し、前端把持部を外側に拡げて図5に実線で示す開放位置に保持される。この開放位置においては、一対の把持部材210,212の先端把持部の間隔は苺2の最大径部(収容トレイ102に収容された状態において上端部)よりも大きくなり、一対の把持部材210,212による把持状態が解除される(また、把持する際に、苺2の最大径部を通過可能となる)。
【0046】
尚、上述した実施形態では、移動部材214の移動とともに作用部材217を移動させて一対の把持部材210,212を拡げているが、一対の把持部材210,212の形状に修正を施し、移送手段180を下方に移動させた際に、一対の把持部材210,212の先端把持部が苺2自体によって外側に拡がるように構成することもでき、このように構成した場合、移動部材214及び作用部材217を省略することができる。
【0047】
以上、本発明に従う冷凍充填苺並びにその製造方法及び製造装置の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】冷凍充填苺の製造方法を製造工程の順に示す簡略図。
【図2】一実施形態の製造装置の冷凍域よりも上流側の構成を簡略的に示す斜視図。
【図3】図2の製造装置の冷凍装置よりも下流側の構成を簡略的に示す図。
【図4】図2の製造装置における移送手段の一部を、冷凍充填苺を把持した状態で示す部分断面図。
【図5】図4の移送手段の一部を、冷凍充填苺を把持する前の状態で示す部分断面図。
【符号の説明】
【0049】
2 苺
8 充填凹部
14 練乳
16 チョコレート
18 冷凍装置
20,102 収容トレイ
104 載置域
106 第1充填域
108 第2充填域
110 冷凍域
112 第1搬送手段
114 移送域
116 取出域
136 第1充填手段
144 第2充填手段
152 冷凍手段
158 第2搬送手段
180 移送手段
182 移送搬送手段
184 包装装置
210,212 把持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新鮮な苺の芯をくり抜いて開口部を有する充填凹部を形成し、前記開口部を通して前記苺の前記充填凹部に練乳又は蜂蜜を充填し、その後充填した前記練乳又は蜂蜜を覆うように前記苺の前記開口部にチョコレートを充填し、しかる後に前記練乳又は蜂蜜を前記チョコレートで覆った苺を冷凍処理することを特徴とする冷凍充填苺の製造方法。
【請求項2】
前記苺に前記充填凹部を形成した後に、前記苺をクエン酸処理することを特徴とする請求項1に記載の冷凍充填苺の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法を用いて製造したことを特徴とする冷凍充填苺。
【請求項4】
複数の苺収容部を備えた収容トレイを第1充填域、第2充填域及び冷凍域を順に通して搬送する間に冷凍充填苺を製造する冷凍充填苺の製造装置であって、
前記第1充填域には練乳又は蜂蜜を充填するための第1充填手段が設けられ、前記第2充填域にはチョコレートを充填するための第2充填手段が設けられ、前記冷凍域には急速冷凍するための冷凍手段が設けられており、
前記収容トレイの前記複数の苺収容部には、芯をくり抜いて形成された充填凹部の開口部を上にして苺が収容保持され、前記収容トレイが前記第1充填域に搬送されたときには、前記第1充填手段は、前記収容トレイに収容保持された前記苺の前記充填凹部に前記練乳又は蜂蜜を充填し、前記収容トレイとが前記第2充填域に搬送されたときには、前記第2充填手段は、前記収容トレイに収容保持された前記苺の前記開口部に、前記練乳又は蜂蜜を覆うようにチョコレートを充填し、また前記収容トレイが前記冷凍域に搬送されたときには、前記冷凍手段は、前記収容トレイに収容保持された前記苺を急速冷凍することを特徴とする冷凍充填苺の製造装置。
【請求項5】
前記冷凍域の下流側には、前記収容トレイに収容された前記苺を移送搬送装置に移送するための移送域が設けられ、前記移送域には前記苺を保持して前記移送搬送装置に移送するための移送手段が設けられ、前記移送手段は前記苺を把持するための一対の把持部材を有し、前記一対の把持部材は自重を利用して前記苺を把持して移送することを特徴とする請求項4に記載の冷凍充填苺の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−48632(P2008−48632A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226022(P2006−226022)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(392021632)スリーエス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】