説明

冷凍卵加工食品

【課題】冷凍後解凍しても通常の卵加工食品と同等の味、食感、物性等を維持している冷凍卵加工食品および該冷凍卵加工食品用の組成物の提供。
【解決手段】キサンタンガムおよびグルコマンナンと卵を必須の成分として含む、蒸気加熱して得られる卵加工食品用の組成物を用いることで、冷凍後解凍しても通常の卵加工食品と同等の味、食感、物性等を維持している冷凍卵加工食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍卵加工食品および該冷凍卵加工食品の製造に用いる組成物に関する。さらに詳しくは、冷凍後解凍しても通常の卵加工食品と同等の味、食感、物性等を維持している冷凍卵加工食品および該冷凍卵加工食品用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
卵を主原料とする卵焼き、茶碗蒸し、卵豆腐など卵加工食品は、冷凍すると氷結晶が生じて組織が破壊される冷凍変性によって、解凍後の味や食感が悪くなるという問題があり、真空パックや冷蔵によって提供されているものがほとんどであった。
【0003】
近年これらの問題を解決するために、様々な技術が開発されている。
例えば、特許文献1では、卵黄および植物ステロール類と、デンプン、デキストリン、還元デキストリン、ゼラチンおよび増粘多糖類から選ばれる1種又は2種以上とを含み、加熱凝固してなる冷凍卵加工食品としてオムレツ、卵豆腐等の冷凍品を製造している。
特許文献2では、加熱膨潤したカラギーナンと、液卵と、デキストリン及び/又は還元デキストリンとを混合して調製した液卵混合液を加熱調理してゼリー状とする、カスタードプリン、茶碗蒸し等のゼリー状卵調理冷凍食品を製造している。
【0004】
特許文献3では、5〜25質量%の食用油脂、3〜15質量%の糖類及び0.05〜3質量%のゼラチンを含有し、更に50〜90質量%の液卵を含有するものを焼成により加熱凝固し、これによって得られる冷凍流出用の加熱凝固卵加工食品として、卵焼き、オムレツ、茶碗蒸し等を製造している。
特許文献4では、膨潤させたカードラン、糖質賦形剤、カードラン以外のゲル化合剤、あんこうの肝などの珍味素材を含有する調味成分と卵成分の混合物を加熱し、急速凍結することで、優れた冷凍耐性を有する珍味冷凍卵豆腐を製造している。
【0005】
さらに、特許文献5では、全卵、キサンタンガム、ゼラチン及び糖類が配合された全卵組成物を加熱凝固することで、加熱調理した後に冷凍しても、解凍時に離水せず、冷凍しない場合とほとんど同等の食感を有する卵加工食品として卵豆腐、茶碗蒸し等を製造している。
しかし、これらによって製造される卵加工食品は、原料に添加している植物ステロール類、デンプン、デキストリン、ゼラチン、食用油脂、カードラン等の効果によって冷凍による変性が抑えられているものの、製造時または冷凍前の本来の卵加工食品の味、食感、物性等を維持しておらず、摂食者が満足して摂食できる冷凍卵加工食品とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−267704号公報
【特許文献2】特許第4420873号
【特許文献3】特許第4530168号
【特許文献4】特開2000−157219号公報
【特許文献5】特開2001−252050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、冷凍後解凍しても通常の卵加工食品と同等の味、食感、物性等を維持している冷凍卵加工食品および該冷凍卵加工食品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、キサンタンガムおよびグルコマンナンと卵を必須の成分として含む、蒸気加熱して得られる卵加工食品用の組成物を開発し、該組成物を蒸気加熱して得られる卵加工食品が、冷凍後解凍しても通常の卵加工食品と同等の味、食感、物性等を維持している冷凍卵加工食品となり得ることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の該組成物はさらにカラギーナンを含んでいても良い。
【0009】
即ち、本発明は次の(1)〜(6)の、蒸気加熱して得られる卵加工食品用の組成物、および卵加工食品等に関する。
(1)キサンタンガムおよびグルコマンナンと卵を含むことを特徴とする、蒸気加熱して得られる卵加工食品用の組成物。
(2)さらにカラギーナンを含む上記(1)に記載の組成物。
(3)下記の(A)または(B)の濃度が0.1〜2wt%である上記(1)または(2)に記載の組成物。
(A)キサンタンガムおよびグルコマンナン
(B)キサンタンガム、グルコマンナンおよびカラギーナン
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物を蒸気加熱して得られる卵加工食品。
(5)卵加工食品が卵豆腐または茶碗蒸しである上記(4)に記載の卵加工食品。
(6)上記(4)または(5)に記載の卵加工食品を冷凍して得られる冷凍卵加工食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、冷凍後解凍しても通常の卵加工食品と同等の味、食感、物性等を維持している冷凍卵加工食品の提供が容易となる。
本発明によって得られる冷凍卵加工食品は、冷凍した状態で流通させ、解凍することで簡便に摂食できる卵加工食品として幅広く提供することができる。また、解凍後の離水率が低いことから、誤嚥の可能性が低く、嚥下困難者等を対象とする食品として提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の「蒸気加熱して得られる卵加工食品用の組成物」とは、茶碗蒸し、卵豆腐、プリン等の蒸気加熱によって得られる卵加工食品の製造において使用される、卵を主とする材料を組み合わせたもののことをいう。
本発明のこの組成物は、キサンタンガム、グルコマンナンおよび卵を含むことを必須とするものであり、これら以外に「蒸気加熱して得られる卵加工食品」の製造に有用な材料として、例えば醤油、塩、砂糖等の調味料や水等を含むものであっても良い。
【0012】
製造する「蒸気加熱して得られる卵加工食品」の種類によって、組成物に含まれる卵は全卵であっても、卵黄のみ、卵白のみであってもよい。また、組成物に含まれるキサンタンガムやグルコマンナンは、従来知られているいずれのものも用いることができ、市販されているものであっても良い。
この組成物の「蒸気加熱」は、本発明の「卵加工食品」が製造できる温度、湿度等であれば、どのような条件で行っても良く、例えば、スチームコンベクションにて90℃、40分間加熱する、等により行うこともできる。
【0013】
本発明のこの組成物は、さらに、カラギーナンを含むものであることが好ましい。カラギーナンも従来知られているいずれのものも用いることができ、イオタ カラギーナン、カッパー カラギーナンまたはラムダ カラギーナンのいずれの種類であってもよく、市販されているものであっても良い。
キサンタンガムおよびグルコマンナン、または、キサンタンガム、グルコマンナンおよびカラギーナンは本発明のこの組成物に対し、全量で0.1〜2wt%、特に好ましくは0.15〜1wt%となるように含まれていることが好ましい。キサンタンガムおよびグルコマンナン、または、キサンタンガム、グルコマンナンおよびカラギーナンが0.1%未満では凍結、解凍後冷凍変性を抑えきれず、ざらついた悪い食感となり、2%以上では「蒸気加熱して得られる卵加工食品」が硬くなり、食感が好ましくないためである。
【0014】
本発明の「卵加工食品」はこのような組成物を蒸気加熱することによって製造することができる、茶碗蒸し、卵豆腐、プリン等を指す。
本発明の「卵加工食品」は冷凍して、「冷凍卵加工食品」として提供することもでき、摂食する際に解凍しても、冷凍していない通常の「卵加工食品」と同等の味、食感等を維持しているものであることが好ましい。
【0015】
また、本発明の「卵加工食品」は、冷凍した後、解凍した時に、冷凍していない通常の「卵加工食品」と同等の「硬さ応力」や「付着性」を示す物性を有するものであることが好ましい。
この「硬さ応力」および「付着性」は、クリープメータRE−33005B(山電製)を用いて測定することができる。本発明においては、φ40mmx15mmシャーレに合うようくりぬいたサンプルを、クリープメータRE−33005B(山電製)を用いて、温度45±2℃、φ20mmx8mプランジャー、速度10mm/s、歪率66.67%の条件で圧縮することで測定し、3回測定した平均値を本発明における「硬さ応力」および「付着性」として特定した。
本発明の「卵加工食品」は、冷凍後、解凍した時の「硬さ応力」が冷凍していない通常の「卵加工食品」の「硬さ応力」に対し±1500N/m2の範囲内となるものであり、かつ、「付着性」が冷凍していない通常の「卵加工食品」の「付着性」に対し+100J/m3の範囲内となるものであることが好ましい。冷凍後、解凍時の「硬さ応力」および「付着性」がこの範囲内となる「卵加工食品」であれば、冷凍していない通常の「卵加工食品」と同等の硬さ応力や付着性を示す物性を有することになる。
【0016】
例えば、本発明の「卵加工食品」が茶碗蒸しである場合、通常の方法で調製された冷凍されていない茶碗蒸しの「硬さ応力」が1650N/m2であり、かつ、「付着性」が73J/m3であった場合、本発明の「卵加工食品」として調製した茶碗蒸しを冷凍後、解凍したものは、「硬さ応力」が150〜3150N/m2の範囲内となり、かつ、「付着性」が173J/m3以下となるものであることが好ましい。
また、本発明の「卵加工食品」が卵豆腐である場合、通常の方法で調製された冷凍されていない卵豆腐の硬さ応力が8630N/m2であり、かつ、付着性が413J/m3であった場合、本発明の「卵加工食品」として調製した卵豆腐を冷凍後、解凍したものは、硬さ応力が7130〜10130N/m3の範囲内となり、かつ、付着性が513J/m3以下となるものが好ましい。
【0017】
さらに、本発明の「卵加工食品」を冷凍したものは、解凍した時の離水率が低いものであることが好ましい。ここで、「離水率」とは、冷凍後、解凍した際に「卵加工食品」に含まれる水分が「卵加工食品」からしみ出し、「卵加工食品」本体から離れる、水分の離れ易さのことをいう。
本発明では、冷凍後、解凍した「卵加工食品」をザルに乗せて5分間置くことで水切りし、ザルから流れ出た水の重量を離水の重量として測定し、この離水の重量が充填した重量のうちの何%であるかを求めることで「離水率」を調べることができる。
本発明の「卵加工食品」は、この離水率が10%以下であることが好ましい。このような低い離水率の「卵加工食品」は、誤嚥の可能性を下げ、嚥下困難者でも安心して摂食できるという利点がある。
【0018】
「冷凍卵加工食品」の製造における、本発明の「卵加工食品」の冷凍方法や冷凍後の解凍方法は、どのような条件で行う方法であっても良いが、例えば、−40℃のブラストチラーにて1時間冷凍し、これをスチームコンベクションにて80℃、30分で解凍する等の方法が挙げられる。
【0019】
以下、実施例、試験例等をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
[実施例1〜6]
冷凍卵加工食品(茶碗蒸し)の製造
表1に示す各配合において、溶き卵以外の材料を混合して溶解した後、溶き卵を混合し、蒸気加熱して得られる卵加工食品用の組成物を調製した。この組成物(60g)を容器LE110×74−106Tラミコンソフトナチュラル(東罐興業製)に充填し、シールした。
これをスチームコンベクションSCC−61E(ラショナル製)にて90℃で40分間加熱した後、−40℃のブラストチラーにて1時間冷凍した。
増粘多糖類は以下の物をそのまま配合した。
キサンタンガム:サンエースNXG−C(三栄源エフ・エフ・アイ製)
グルコマンナン:レオレックスRS(清水化学製)
イオタ カラギーナン:SATIAGEL KHG30T(ユニテックフーズ製)
カッパー カラギーナン:SATIAGEL ME4(ユニテックフーズ製)
ラムダ カラギーナン:SATIAGEL MM30(ユニテックフーズ製)
【0021】
【表1】

【0022】
[比較例1〜9]
表2に示す各配合において、溶き卵以外の材料を混合して溶解した後、溶き卵を混合し、組成物を調製した。この組成物(60g)を容器LE110×74−106Tラミコンソフトナチュラル(東罐興業製)に充填し、シールした。
これをスチームコンベクションにて90℃で40分間加熱した後、−40℃のブラストチラーにて1時間冷凍した。
【0023】
【表2】

【0024】
[比較例10]
(通常の茶碗蒸し)
溶き卵 250g、昆布だし 5g、塩 5g、水 740gを混合した組成物(60g)を容器LE110×74−106Tラミコンソフトナチュラル(東罐興業製)に充填し、シールした。
これをスチームコンベクションにて90℃、40分間加熱した。この一部を冷凍前サンプルとした。また、スチームコンベクションにて90℃、40分間加熱したものをさらに、−40℃のブラストチラーにて1時間冷凍した。この一部を冷凍後サンプルとした。
【0025】
[比較例11]
特開2007−267704号公報の実施例10と同様に茶碗蒸しを調製した。
即ち、溶き卵 250g、昆布だし 5g、塩 5g、植物ステロール(サンステロールNo.100(三栄源エフ・エフ・アイ製)) 20g、加工デンプン(パインエース#1(松谷化学工業製)) 15g、水 615gを良く撹拌して得た組成物(60g)を、容器LE110×74−106Tラミコンソフトナチュラル(東罐興業製)に充填し、シールした。これをスチームコンベクションにて90℃、40分間加熱した後、−40℃のブラストチラーにて1時間冷凍した。
【0026】
[比較例12]
特許4420873号の実施例6と同様に茶碗蒸しを調製した。
即ち、水 500gにカラギーナン 10gを添加、撹拌し、80℃まで加熱し、完全に溶解させた。その後、60℃まで冷却し、溶き卵 250g、昆布だし 5g、塩 5g、還元デキストリン(原料デキストリンのDE値15、固形分70%;エスイー100、日研化成製) 150g、水 80gを添加し、撹拌して組成物を得た。この組成物(60g)を、容器LE110×74−106Tラミコンソフトナチュラル(東罐興業製)に充填し、シールした。これを、スチームコンベクションにて、90℃、40分間加熱し、−40℃のブラストチラーにて1時間冷凍した。
【0027】
[比較例13]
特許4530168号の実施例4と同様に茶碗蒸しを調製した。
即ち、水 50gにゼラチン 5gを加え、30分放置した。また、溶き卵100gに菜種油 150gを添加し、乳化させた。その後、この乳化させたものに、上記で調製した水とゼラチンの混合物、溶き卵 150g、昆布だし 5g、塩 5g、デキストリンアルコール(原料デキストリンのDE値15、固形分70%;エスイー100、日研化成製) 70g、水 465gを添加し、撹拌して組成物を得た。この組成物(60g)を、容器LE110×74−106Tラミコンソフトナチュラル(東罐興業製)に充填し、シールした。これを、スチームコンベクションにて、90℃、40分間加熱し、−40℃のブラストチラーにて1時間冷凍した。
【0028】
[比較例14]
特開2000−157219号公報の実施例1と同様に茶碗蒸しを調製した。
即ち、カードラン 8gを35℃の水 200gに添加し、撹拌後、85℃の熱水 200gを添加し、さらに撹拌し、品温を約50℃にしてカードラン水分散液を調製した。
あんこうの肝 150g、加工デンプン(パインエース#1(松谷化学工業製)) 40g、キサンタンガム 0.5g、調味料 4g、食塩 3.4g、ピロリン酸ナトリウム 2gおよび氷 192.1gを混合し、上記で調製したカードラン水分散液に添加し、35℃以下で撹拌した。これに溶き卵 200gを添加し、プロペラ撹拌機で混合後、真空ポンプにて脱気して組成物を調製した。
この組成物(60g)を、容器LE110×74−106Tラミコンソフトナチュラル(東罐興業製)に充填し、シールした。これを、スチームコンベクションにて、90℃、40分間加熱し、−40℃のブラストチラーにて1時間冷凍した。
【0029】
[比較例15]
特開2001−252050号公報の実施例1と同様に茶碗蒸しを調製した。
即ち、卵 250gを50℃に加温しながら、撹拌し、キサンタンガム 0.5gを添加した。さらにゼラチン 8gとトレハロース 40gを添加し、60℃に加温し、5分保持した。その後、ポリ袋に入れ、−20℃で凍結した後解凍し、これに水 666.5g、食塩 6g、ポリリン酸ナトリウム 1g、液状調味料 18g、粉末だし10gを添加して、混合することで組成物を調製した。この組成物(60g)を、容器LE110×74−106Tラミコンソフトナチュラル(東罐興業製)に充填し、シールした。これを、スチームコンベクションにて、90℃、40分間加熱し、−40℃のブラストチラーにて1時間冷凍した。
【0030】
<評価方法>
比較例10で調製した冷凍前サンプルは、そのまま以下の方法で、物性測定を行い、離水率を調べた。実施例1〜6で製造した茶碗蒸し、比較例1〜9、比較例10の冷凍後サンプル、比較例11〜15で調製したものは、それぞれスチームコンベクションにて80℃、30分で解凍し、これを以下の方法で、物性測定し、離水率を調べた。
官能評価は比較例10で調製した冷凍前サンプルを通常の茶碗蒸しの基準とし、これと比較して同等の味、食感であるかを以下の評価基準により評価した。
【0031】
<評価基準>
×:通常の茶碗蒸し(比較例10、冷凍前サンプル)と味または食感が全く異なる
△:通常の茶碗蒸し(比較例10、冷凍前サンプル)と味または食感が異なる
○:通常の茶碗蒸し(比較例10、冷凍前サンプル)と味または食感が若干異なるが、同等である
◎:通常の茶碗蒸し(比較例10、冷凍前サンプル)と味または食感が同等である
いずれの基準についても、×を0点、△を1点、○を2点、◎を3点と換算して合計し、これをパネラーの人数(10人)で割ることで平均点数を調べた。
平均点数が0〜0.5を×、0.6〜1.5を△、1.6〜2.5を○、2.6〜3.0を◎として、最終的な評価をした。
【0032】
<物性測定>
クリープメータRE−33005B(山電製)を用い、φ40mm x 15mmシャーレに合うようくりぬいたサンプルを、温度45±2℃、φ20mm x 8mプランジャー、速度10mm/s、歪率66.67%の条件で圧縮したときの硬さ応力(N/m2)および付着性(J/m3)を測定した。3回測定した結果の平均値を硬さ応力(N/m2)および付着性(J/m3)とした。
【0033】
<離水率測定>
サンプル(1容器分)をザルに乗せて5分間置くことで水切りし、ザルから流れ出た水の重量を離水の重量として測定した。この離水の重量が充填した重量(60g)のうちの何%であるかを求め、離水率とした。
【0034】
【表3】

【0035】
【表4−1】

【0036】
【表4−2】

【0037】
通常の茶碗蒸し(比較例10、冷凍前サンプル)を冷凍した後、解凍したもの(比較例10、冷凍後サンプル)や、比較例1〜9で調製したものを冷凍した後、解凍したものは、味は通常の茶碗蒸し(比較例10、冷凍前サンプル)と同等であったが、食感が全く異なるものとなっていた。
また、先行文献に開示された技術に沿って調製した比較例11〜15における茶碗蒸しも、冷凍した後、解凍したものは味および食感において、いずれも通常の茶碗蒸し(比較例10、冷凍前サンプル)と同等であるとはいえなかった。
一方、実施例1〜6で製造した茶碗蒸しはいずれも冷凍した後、解凍しても通常の茶碗蒸し(比較例10、冷凍前サンプル)と同等の味、食感を有しており、特に実施例3〜6で製造した茶碗蒸しの食感が良好であった。
【0038】
また、物性においても、実施例1〜6で製造した茶碗蒸しはいずれも冷凍した後、解凍しても、硬さ応力が通常の茶碗蒸し(比較例10、冷凍前サンプル)の±1500の範囲内(150〜3150N/m2の範囲内)であり、かつ、付着性も通常の茶碗蒸し(比較例10、冷凍前サンプル)の+100以下(173J/m3以下)であり、通常の茶碗蒸しと同等の硬さや付着性を維持していることが確認できた。
これに対し、比較例3〜5、比較例10(冷凍後サンプル)における茶碗蒸し、および比較例11〜14における茶碗蒸しは、いずれも冷凍した後、解凍したものの硬さ応力が通常の茶碗蒸し(比較例10、冷凍前サンプル)の±1500の範囲を超えていたり、付着性が通常の茶碗蒸し(比較例10、冷凍前サンプル)の+100を超えていたりするものであり、通常の茶碗蒸しとは異なる物性を有するものであった。
なお、比較例1、2、6〜9における茶碗蒸しと、比較例15における茶碗蒸しは、いずれも冷凍した後、解凍したものの物性が、実施例と同様に通常の茶碗蒸し(比較例10、冷凍前サンプル)と同等であったが、同等の味および食感は有していなかった。
【0039】
さらに、実施例1〜6で製造した茶碗蒸しの離水率はいずれも10%以下であり、離水が少なく、誤嚥の心配が低いことから、これらの茶碗蒸しは嚥下困難者等への提供にも適していることが示唆された。
このように、実施例1〜6で製造した茶碗蒸しは、冷凍後解凍しても、通常の茶碗蒸し(比較例10、冷凍前サンプル)と同等の味、食感、物性を有する優れた冷凍卵加工食品であった。
【0040】
[実施例7〜8]
冷凍卵加工食品(卵豆腐)の製造
表5に示す各配合において、溶き卵以外の材料を混合して溶解した後、溶き卵を混合し、蒸気加熱して得られる卵加工食品用の組成物を調製した。この組成物(60g)を容器LE110×74−106Tラミコンソフトナチュラル(東罐興業製)の容器に充填し、シールした。
これをスチームコンベクションにて90℃で40分間加熱した後、−40℃のブラストチラーにて1時間冷凍した。
【0041】
【表5】

【0042】
[比較例16]
溶き卵 500g、昆布だし 5g、塩 5g、水 490gを混合した組成物(60g)を容器LE110×74−106Tラミコンソフトナチュラル(東罐興業製)に充填し、シールした。
これをスチームコンベクションにて90℃、40分間加熱した。この一部を冷凍前サンプルとした。また、スチームコンベクションにて90℃、40分間加熱したものをさらに、−40℃のブラストチラーにて1時間冷凍した。この一部を冷凍後サンプルとした。
【0043】
比較例16で調製した冷凍前サンプルは、そのまま茶碗蒸しと同様の方法で、物性測定を行い、離水率を調べた。実施例7、8で製造した卵豆腐、比較例16の冷凍後サンプルは、それぞれスチームコンベクションにて80℃、30分で解凍し、茶碗蒸しと同様の方法で、物性測定し、離水率を調べた。
官能評価は比較例16で調製した冷凍前サンプルを通常の卵豆腐の基準とし、これと比較して同等の味、食感であるかを茶碗蒸しと同様の評価基準により評価した。
【0044】
【表6】

【0045】
通常の卵豆腐(比較例16、冷凍前サンプル)を冷凍した後、解凍したもの(比較例16、冷凍後サンプル)は、味は通常の卵豆腐(比較例16、冷凍前サンプル)と同等であったが、食感が全く異なるものとなっていた。
一方、実施例7、8で製造した卵豆腐はいずれも冷凍した後、解凍しても通常の卵豆腐(比較例16、冷凍前サンプル)と同等の味、食感を有しており、特に実施例8で製造した卵豆腐の食感が良好であった。
【0046】
また、物性においても、実施例7,8で製造した卵豆腐はいずれも冷凍した後、解凍しても、硬さ応力が通常の卵豆腐(比較例16、冷凍前サンプル)の±1500の範囲内(7130〜10130N/m2)であり、かつ、付着性も通常の卵豆腐(比較例16、冷凍前サンプルの+100以下(513J/m3以下)であり、通常の卵豆腐と同等の硬さや付着性を維持していることが確認できた。
これに対し、比較例16(冷凍後サンプル)における卵豆腐は、冷凍した後、解凍したものの硬さ応力が通常の卵豆腐(比較例16、冷凍前サンプル)の±1500の範囲を超えていたり、付着性が通常の卵豆腐(比較例16、冷凍前サンプル)の+100を超えていたりするものであり、通常の卵豆腐とは異なる物性を有するものであった。
【0047】
さらに、実施例7、8で製造した卵豆腐の離水率はいずれも10%以下であり、離水が少なく、誤嚥の心配が低いことから、これらの卵豆腐は嚥下困難者等への提供にも適していることが示唆された。このように、実施例7、8で製造した卵豆腐は、冷凍後解凍しても、通常の卵豆腐(比較例16、冷凍前サンプル)と同等の味、食感、物性を有する優れた冷凍卵加工食品であった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によって冷凍後解凍しても通常の卵加工食品と同等の味、食感、物性等を維持している冷凍卵加工食品の提供が容易となる。
本発明によって得られる冷凍卵加工食品は、冷凍した状態で流通させ、解凍することで簡便に摂食できる卵加工食品として幅広く提供することができる。また、解凍後の離水率が低いことから、誤嚥の可能性が低く、嚥下困難者等を対象とする食品として提供することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサンタンガムおよびグルコマンナンと卵を含むことを特徴とする、蒸気加熱して得られる卵加工食品用の組成物。
【請求項2】
さらにカラギーナンを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
下記の(A)または(B)の濃度が0.1〜2wt%である請求項1または2に記載の組成物。
(A)キサンタンガムおよびグルコマンナン
(B)キサンタンガム、グルコマンナンおよびカラギーナン
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の組成物を蒸気加熱して得られる卵加工食品。
【請求項5】
卵加工食品が卵豆腐または茶碗蒸しである請求項4に記載の卵加工食品。
【請求項6】
請求項4または5に記載の卵加工食品を冷凍して得られる冷凍卵加工食品。

【公開番号】特開2013−13359(P2013−13359A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147884(P2011−147884)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(502138359)イーエヌ大塚製薬株式会社 (56)
【Fターム(参考)】