説明

冷凍密閉容器の特に開口リーフ用断熱グレイジングユニット

その基板間の空間をアルゴン、クリプトン、またはキセノン型の少なくとも1種類の希ガスで満たした断熱グレイジングユニットであり、そのスペーサ(50)が1 W/m・K未満、好ましくは0.3 W/m・K未満の熱伝導率と、それら基板の1枚を少なくとも部分的に被覆する低E被膜と、1枚の基板の外面の少なくとも一部を被覆する霜除け被膜とを有する。このグレイジングユニットは、加熱素子を含有せず、少なくとも85%のガス充填率で1.2 W/m2・K未満の熱伝達係数Uを有し、また最低67%の光の透過率および18%未満の光反射率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その中に冷却または冷凍保存製品、例えば食品または飲料、あるいは冷した状態に保つことが必要な任意の他の製品、例えば医薬品あるいは花類を陳列する冷凍密閉容器の開口リーフ向けの断熱グレイジングユニットに関する。この断熱グレイジングユニットは、少なくとも2枚のガラス基板からなり、それらはガス層によって隔てられ、かつそれらの少なくとも1枚の上に低E(低輻射率)被膜を備えている。
【背景技術】
【0002】
冷凍密閉容器中に保存されている製品が見える状態が継続しなければならない場合、多くの現在の営業用施設がそうなのだが、その冷凍密閉容器はそれを冷凍保管された「陳列ケース」、通称「冷凍型販売飾り棚」に変えるガラス張りの部分を備えている。これらの「陳列ケース」には幾つかの代替形態が存在する。それらの一部は飾り棚の形態であり、この場合はそれ自体が透明な扉である。一方他のものは容器の形態であり、それは内容物を見ることが可能なようにガラス板を嵌めた水平な蓋である。
【0003】
これらの型の陳列ケースでは、顧客が「陳列ケース」を開けることなく商品を予め選ぶことができるようにその商品が顧客に完全に見える状態のままであることが必要である。
【0004】
しかし、これらの陳列ケースが遭遇する主な問題の一つは、その商店すなわち店の方に向いている側で開口リーフの外面に曇りが形成されることである。これはこの外面が、より高い湿度を有しかつずっと高い温度であるその商店すなわち店を取り巻く大気と接したままの状態で、その反対側にある冷却された環境、すなわちその密閉容器に内部環境と接している内面側によって冷されるためである。すなわちこの外面の温度が露点よりも低い温度である場合に曇りが生ずる。これは商品を見えにくくする。
【0005】
別の主要な問題はまた、商品を取り出すために陳列ケースを開けた際の開口リーフの内面の曇り、またさらに結霜の形成である。これは、きわめて低い温度、実際には0℃未満でなければならい内方のガラス基板の表面が、今度はそれよりずっと高湿度かつずっと高温度の周囲大気と接触するようになるためである。その時この内方の基板の温度は露点温度より低く、これが基板の結露現象、また基板が氷点下の場合には結霜さえひき起す。曇りまたは結霜の存在は商品を見にくくし、その曇りまたは霜付が完全に消えるのに数分、またさらには数10分もかかる。
【0006】
これらの欠点を軽減するために従来技術では断熱グレイジングユニットは、より高度な断熱性、すなわち1または複数層の低E被膜を備えた二重または三重グレイジングユニットを有するように設計され、密閉容器の内側と接しているその基板を加熱している。
【0007】
また冷凍密閉容器用の断熱性を高めたグレイジングユニットは、国際出願WO03/008877号からも分かる。上記文書によれば商店すなわち店の方に向いている側の開口リーフの外面で曇りは確実に消滅する。
【0008】
この型の断熱グレイジングユニットは、厚さ8または13 mmのガス層により等しい間隔で隔てられた厚さ3 mmの3枚のガラス基板を備えた三重グレイジングユニットからなる。このガス層は、空気、アルゴン、またはクリプトンからなり、2枚の低E被膜がグレイジングユニットの第二および第五面(密閉容器の閉じられた位置でグレイジングユニットの最外面から数えて)上に配置されている。
【0009】
この文書によればそのグレイジングユニットは、0.2 BTU/時・平方フィート・華氏度すなわち1.11 W/m2・Kを超えない熱伝達係数Uを有する。1 W/m2・Kは0.18 BTU/時・平方フィート・華氏度に相当すると言い換えられる。
【0010】
熱伝達係数Uの改良により、開口リーフが閉じられた位置にある状態でその外方の面は、その反対側に存在する冷えた環境故に有する温度と比べて比較的暖かいことが確実になる。したがって商店すなわち店側ではこの外方の面は露点を超える温度となり、陳列ケースを閉じた場合にその外方の面での曇りの形成を防止する。だが、外方の基板上に加熱素子は必要でない。
【0011】
しかしながら、商店すなわち店側での曇りの欠点は解決されたが密閉容器側での霜付の欠点は潜在的に残ったままである。これは、グレイジングユニットの内方の表面の霜が消えるまでにこのようなグレイジングユニットはある程度の遅れ、数分さえも必要とするためである。さらに熱伝達係数Uがより高いことにより、冷却された環境と接している内側の基板の外方の面はより一層冷えることになり、それによって陳列ケースを開けたとき基板上に一層多くの結霜が形成されるように仕向け、霜が消えるまでにより長時間を必要とすることになる。
【0012】
この第二の欠点を解決するために、すなわち密閉容器の内側と接しているグレイジングユニットの内面に形成された曇りまたは霜付を防止または迅速に排除するために、すでに述べたようにこのグレイジングユニットの内面に配置される加熱素子を設けることもまた知られている。
【0013】
しかしながら、このような冷凍陳列ケースにより、特に基板を被覆する加熱素子により消費される電気は、省エネ、すなわち永続的成長および環境保護というきわめて現在的な関心事にそむき、かつまたそれら店にとってより高コストの典型となる。
【0014】
さらに低E被膜を含めて使用される様々な機能層は、グレイジングユニットの光の透過を低下させることが知られている。商品が密閉容器の外側から正確に見えることを確実にするために、店は照明を密閉容器の内側に備え付けることで躊躇しない。照明は、追加のエネルギーが費やされることを別としても、陳列時に冷凍製品の品質を低下させる恐れのある熱を必然的に発生させ、かつその対応する冷凍ユニットがより多くのエネルギーを消費することになる
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって本発明の目的は、冷凍陳列ケースに使用することを意図した高い熱的性質を有する断熱グレイジングユニット用の最適な解決策を提供することである。この解決策は、陳列ケースの外部および内部環境の点で困難な条件下、すなわち陳列ケースから商品を取り出しまたは補充するためにケースを開けることがしばしば起る状態でさえ曇りや霜付の形成を避ける。しかもこの解決策は、省エネの点で有効であり、また上記陳列ケース中に陳列された製品が高品質であり、かつそれを容易に見ることができることを確実にする。
【0016】
記述のほかの部分で「内方」および「外方」とは、開口リーフが閉じた位置にあるとき冷凍密閉容器のそれぞれ内側および外側を向くエレメントを指す用語であることを理解されたい。
【0017】
「内の」および「外の」とは、断熱グレイジングユニットのそれぞれ内側および外側を向くエレメントを指す用語であることを理解されたい。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、特に冷凍密閉容器の開口リーフ向けのこの断熱グレイジングユニットは、少なくとも2枚のガラス基板と、これら2枚の基板を隔てた状態に保つ少なくとも1個の低熱伝導性のスペーサと、これら基板の少なくとも1枚を少なくとも部分的に被覆する低E(低輻射率)被膜とを備え、これらは、
−そのスペーサが、1 W/m・K未満、好ましくは0.3 W/m・K未満の熱伝導率を有し、
−少なくとも2枚の基板間の空間が、少なくとも1種類の希ガスで満たされ、
−そのグレイジングユニットが、加熱素子を含有せず、
−このグレイジングユニットが、少なくとも85%のガス充填率で1.2 W/m2・K未満、好ましくは1.15 W/m2・K未満の熱伝達係数Uを有し、
−このグレイジングユニットが、最低67%の光の透過率および18%未満の光反射率を有し、かつ
−このグレイジングユニットが、さらに基板の外面の少なくとも一部を被覆する霜除け被膜を含む
ことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
一つの特徴によればこのガスは、アルゴン、クリプトン、およびキセノンの中から選択される。
【0020】
別の特徴によれば低E被膜が、グレイジングユニットの少なくとも第二面および/または第三面および/または第四面上に配置される。
【0021】
グレイジングユニットの面は、二重グレイジングユニットの場合には第1から第4まで、また三重グレイジングユニットの場合には第1から第6までの番号が付けられ、これらグレイジングユニットの面、例えば第一面は周囲大気と接触しているグレイジングユニットの外方の表面に対応し、一方、第四面あるいは第六面は冷凍密閉容器と接触している表面に対応する。
【0022】
好ましくは反射防止被膜で、基板の少なくとも1枚、好ましくはグレイジングユニットの第一面および/または第三面および/または第五面が被覆される。
【0023】
本発明の第一の実施形態によれば断熱グレイジングユニットは、3枚のガラス基板、すなわち開口リーフがその閉じられた位置にある状態でその基板外面が密閉容器の内側と接するためのものである第一基板と、第二基板すなわち中間基板と、その基板外面が密閉容器の外部環境と接するためのものである第三基板とを備え、これら基板が低熱伝導性のスペーサによって互いに隔離されている三重グレイジングユニットであり、
−これら基板の厚さが2から5 mmの間、好ましくは3または4 mmであり、
−これら基板間の空間の少なくとも1つが少なくとも1種類の希ガスで満たされ、
−それらガス層の厚さが少なくとも4 mmであり、
−低E被膜でこのグレイジングユニットの第二面および/または第四面が被覆され、
−霜除け被膜で第三基板の外面の少なくとも一部が被覆され、
−そのグレイジングユニットが、少なくとも85%のガス充填率で1.1 W/m2・K未満、さらには0.95または0.80 W/m2・K未満の熱伝達係数Uさえ有し、かつ
−そのグレイジングユニットが、最低67%の光の透過率および18%未満の外部光反射率を有する。
【0024】
一つの特徴によればこの三重グレイジングユニットは、第二および第四面上に低E被膜を含み、かつ1.0 W/m2・K未満の熱伝達係数Uを有する。
【0025】
有利にはこの低E被膜で、より厚いガス層を伴ったグレイジングユニットの面が被覆される。
【0026】
好ましくは少なくとも1層の反射防止被膜が、グレイジングユニットの面の1つ、好ましくは第一、第三、および第五面のうちの少なくとも1面に塗布される。
【0027】
この実施形態の変形形態によればガス層の1層は8 mmの厚さを有するのに対し、もう一方のガス層は少なくとも10 mmの厚さを有し、これらガス層がアルゴンである。
【0028】
この実施形態の別の変形形態によればガス層の1層はクリプトンであり、かつ8 mmの厚さを有するのに対し、もう一方のガス層は空気であり、かつ少なくとも10 mmの厚さを有する。
【0029】
本発明の第二の実施形態によればグレイジングユニットは、2枚のガラス基板、すなわち開口リーフがその閉じた位置にあるときその基板外面が密閉容器の内側と接するためのものである第一基板と、その基板外面が密閉容器の外部環境と接するためのものである第二基板とを備え、これらが低熱伝導性のスペーサによって隔離され、基板間の空間が希ガスで満たされ、
−これら基板の厚さが3または4 mmであり、
−基板間の空間が少なくとも1種類の希ガスで満たされ、
−そのガス層の厚さが少なくとも8 mmであり、
−低E被膜でこのグレイジングユニットの少なくとも第二面が被覆され、
−霜除け被膜で第一基板の外面の少なくとも一部が被覆され、
−そのグレイジングユニットが、少なくとも85%のガス充填率で1.15 W/m2・K未満の熱伝達係数Uを有し、かつ
−そのグレイジングユニットが、最低75%の光の透過率および12%未満の外部光反射率を有する。
【0030】
一つの特徴によれば別の低E被膜で、この第二の実施形態によるグレイジングユニットの第三面が被覆される。
【0031】
好ましくはこのグレイジングユニットは、少なくとも92%のガス充填率で1.05 W/m2・K未満の熱伝達係数Uを有する。
【0032】
この実施形態の変形形態によればガス層はクリプトンである。
【0033】
この実施形態の別の変形形態によればガス層が、8 mmの厚さを有するキセノンである。
【0034】
有利にはこの二重グレイジングユニットは、第一面および/または第三面上に反射防止被膜を含み、80%を超える光の透過率および10%未満の外部光反射率を有する。
【0035】
本発明の断熱グレイジングユニットの別の特徴によればこの霜除け被膜は、その霜除け被膜を備えたグレイジングユニットをその被膜側で低くて−30℃、具体的には−15℃、−18℃、または−24℃まで下がる温度環境と接触させ、次いで最低0℃、好ましくは10℃から35℃の間、特に15℃と30℃の間、具体的には23℃と27℃の間の、少なくとも25%の湿度の残る大気と接触させた場合、少なくとも12秒間、好ましくは少なくとも1分間、具体的には2分間、あるいは少なくとも3分間もの長い間さえ霜が形成されないようなものである。
【0036】
この霜除け被膜は、結晶化温度を下げる不凍化合物、例えば溶液状態の塩、特にKCl、NaCl、もしくは同等物、および/またはアルコール、および/または任意選択で水中にある適切な親水性のポリマー、コポリマー、プレポリマー、もしくはオリゴマーと、任意選択で1または複数種の界面活性剤とを含む。この化合物は、任意選択でその表面の一部が疎水性を有する。
【0037】
有利には、その被膜を機械的に補強する物理的または化学的相互作用を得るために、この不凍化合物を少なくとも1種類の他の化合物と結合させる。
【0038】
この不凍化合物は、例えばポリビニルピロリドンであり、これはポリウレタンと結合して物理的相互作用を生み出す。またこの不凍化合物はポリオールであってもよく、これは少なくとも1種類のイソシアネート官能基と結合して化学的相互作用を生み出す。
【0039】
この断熱グレイジングユニットの別の特徴によれば、基板間に配置されるスペーサは一実施形態では、ガラス型の補強繊維と混ぜ合わせたスチレンアクリロニトリル(SAN)またはポリプロピレン型の熱可塑性樹脂から作られる本体と、この熱可塑性樹脂を部分的に覆うアルミニウムまたはステンレススチールタイプの金属箔とからなる第一のシーリングバリヤーならびに液体および蒸気に対してシールするポリスルフィド型の第二のシーリングバリヤーを備える。
【0040】
スペーサの別の実施形態によればそれは、グレイジングユニットの周囲の少なくとも一部を覆い、基板の縁部に固定され、かつステンレススチール、アルミニウム、または補強繊維で補強されたプラスチックから作られ、ガス層とは反対側の面に蒸気、ガス、および液体に対してシールするバリヤーを構成する金属被膜を備えたほぼ平坦なストリップからなる。さらにこのスペーサは、少なくとも400 N/mの線形の坐屈強さを有する。
【0041】
好ましくは本発明の断熱グレイジングユニットの少なくとも外方の基板は、強化ガラスで作られる。
【0042】
上記の特徴を有するこのような断熱グレイジングユニットは、好都合には特に冷凍密閉容器用の開口リーフとして用いられる。
【0043】
グレイジングユニットを支持するために開口リーフが、アルミニウムから形成されかつサーマル・ブリッジ・ブレイク(thermal bridge break)を有するフレームを含む場合、その開口リーフは有利には少なくとも92%のガス充填率に対して1.25 W/m2・K未満の総括熱伝達係数Uwを有する。
【0044】
開口リーフがPVCから形成されるフレームを含む場合、その開口リーフは92%のガス充填率に対して1.20 W/m2・K未満の総括熱伝達係数Uwを有する。
【0045】
したがって本発明者等は、グレイジングユニットを冷凍密閉容器において開口リーフとして使用する場合、そのグレイジングユニットの断熱および光透過性能に関して最適な解を得るために、またグレイジングユニットの外方および内方の面でそれぞれ曇りおよび霜付の形成を防止するために採用しなければならないグレイジングユニットの様々な形状構成の組合せの型について実証した。
【0046】
したがって本発明は、グレイジングユニットの一組の形状構成の組合せに関するものであり、これらは具体的にはガス層の厚さ、ガスの種類、スペーサの種類、使用される機能被膜の種類とそれらの位置、グレイジングユニットの熱伝達係数、および不凍層の存在である。
【0047】
本発明の他の利点および特徴は、添付の図面に関する残りの説明のなかで明らかになるはずである。これらの図面は一定の縮尺にしておらず、また図1および2はそれぞれ本発明によるグレイジングユニットの2つの実施形態の2つの部分断面図を示す。
【0048】
図1は、本発明の第一の実施形態として、発熱素子を含有せず、少なくとも1層の低E被膜30および霜除け被膜40を有し、かつ少なくとも85%のガス充填率で1.2 W/m2・K未満、好ましくは1.15 W/m2・K未満の熱伝達係数Uと、18%未満の光反射率と併せて最低67%の外部光透過率とを示すガス充填した断熱グレイジングユニット10を示す。
【0049】
三重グレイジングユニット10は、3枚のガラス基板、すなわち開口リーフが閉じた位置にあるときその基板外面11aが密閉容器の内側と接するものである第一基板すなわち内方の基板11と、第二すなわち中間の基板12と、その基板外面13aが密閉容器の外部の環境と接するものである第三基板すなわち外方の基板13とを備える。この第一および第三基板11および13は、好ましくは強化ガラスから作られる。
【0050】
これら基板の面は第一から第六で示され、図中では参照符号(1)から(6)を持つ。この2つの参照符号は、それぞれ密閉容器の外部の環境と接するものである外面13aおよび開口リーフが閉じた位置にあるとき密閉容器の内側と接するものである面11aに対応する。
【0051】
これら基板のそれぞれの厚さは、2から5 mmの間にあり、またそれはグレイジングユニット全体の重量をできるだけ軽くし、かつ光の透過を最適化するために好ましくは3または4 mmである。
【0052】
これら基板は低熱伝導性のスペーサ50によって互いに隔離され、そのスペーサは2個の別々のエレメントか、または中間の基板にまたがる単一のエレメントからなる。
【0053】
このスペーサは、せいぜい1 W/m・K(すなわち1.88 BTU/時・フィート・華氏度)、好ましくは0.7 W/m・K未満、より一層好ましくは0.4 W/m・K未満の熱伝導率を有する。1 BTU/時・フィート・華氏度は0.534 W/m・Kに相当すると言い換えられる。
【0054】
スペーサの一例は、スチレンアクリロニトリル(SAN)またはポリプロピレン型の熱可塑性樹脂およびこの熱可塑性樹脂と混ぜ合わせたガラス型の補強繊維から作られた本体と、この本体の一部(グレイジングユニットの内部空間と反対側にある)に接着剤で接着され、ガスおよび水蒸気に対するシールを与える金属箔とを有する。この本体は、また脱水剤を含み、基板の周辺部に、また基板間の分離空間内に挿入される。液体および蒸気に対してスペーサをシールする、例えばポリスルフィド、ポリウレタン、またはシリコーンから作られた追加のバリヤーが、そのスペーサの金属箔と同じ側に配置される。
【0055】
SANおよびガラス繊維を基材とするこのようなスペーサは、例えば、本体の金属箔がアルミニウムで作られている場合はSaint-Gobain Glassから入手できるブランド名SWISSPACER(登録商標)により、また本体の金属箔がステンレススチールで作られている場合は名称SWISSPACER V(登録商標)により知られており、このスペーサは二重ポリスルフィドバリヤーを伴っており、SWISSPACER(登録商標)の場合は0.64 W/m・K(すなわち1.20 BTU/時・フィート・華氏度)、またSWISSPACER V(登録商標)の場合は0.25 W/m・K(すなわち0.47 BTU/時・フィート・華氏度)の熱伝導率を有する。
【0056】
またスペーサの型としては国際出願WO01/79644号に開示されているスペーサを挙げることができ、これはグレイジングユニットの内側ではなく外側に配置されたほぼ平坦な外形からなり、基板の縁部に固定される。このストリップは、ステンレススチールまたはアルミニウム、あるいは補強繊維で補強されたプラスチックを基材とすることができ、その線形坐屈強さは少なくとも400 N/mである。この型のスペーサは、その面の少なくとも1面にガス、塵、および液体に対してシールするシーリングバリヤーを含み、金属被膜または任意の他の好適な材料の被膜によって形成される。
【0057】
スペーサは、例えば全体が厚さ0.5 mmのアルミニウムで作られ、0.25 W/m・K(すなわち0.47 BTU/時・フィート・華氏度)の熱伝導率を有する。
【0058】
内方の基板11と中間の基板12の間の空間は内方のガス層14により形成され、また外方の基板13と中間の基板12の間の空間は外方のガス層15からなり、これらガス層の厚さは少なくとも4 mmであり、熱伝達係数Uに関して所望の性能に応じて調整されるが、16 mmを超えない。
【0059】
ガス層の少なくとも1層は、少なくとも85%の充填率のアルゴン、クリプトン、およびキセノンから選択される希ガスからなる。一層良好な熱伝達係数Uの場合にはクリプトンまたはキセノンで少なくとも92%まで満たすことが好ましいはずである。
【0060】
グレイジングユニットが2層以上のガス層を有する場合、それらの1層は空気であってもよく、この場合その空気層の厚さは少なくとも10 mmである。
【0061】
グレイジングユニットは、そのグレイジングユニットの内側に面した外方の基板13の面13b(第二面)の少なくとも一部の上に配置された低E被膜30および/または内方の基板11に面する中間の基板12の面12a(第四面)の少なくとも一部を被覆している同じ型の別の低E被膜31を含む。
【0062】
これら低E被膜はまた、第二および第三面上に設けることもできる。グレイジングユニットが単純に単一の被膜を備える場合、それはより厚いガス層の厚さを伴う表面に配置されるのが好ましい。
【0063】
これら低E被膜は、様々な方法により、すなわち真空プロセス(熱蒸着、マグネトロン陰極スパッタリング)により、あるいは加熱した基板表面へキャリヤーガスによって推し進められる液体、固体、または気体の形態の有機金属化合物の熱分解析出により得ることができる金属および金属酸化物の層から作られる。
【0064】
好ましくは金属層は銀から作られ、また金属酸化物層は、亜鉛、スズ、チタン、アルミニウム、ニッケル、クロム、またはアンチモン(Sb)の化合物または窒化化合物、あるいはこれら化合物の少なくとも2種類の混合物と、任意選択で銀の上側の層としての遮断層、例えばTi型の遮断金属(metal bloqueur)または遮断金属合金とから作られる。
【0065】
例として次の多層被膜、すなわち
ガラス/SnO2/(TiO2)/ZnO/Ag/TiまたはNiCrまたはNiCrOx/ZnO/SnO2またはSi3N4/SnZnOx:SbまたはTiOx
ガラス/SnO2/TiO2/ZnO/Ag/NiCrOx/(TiO2)/SnO2/SnZnOx:Sb
を挙げることができる。この場合、表記法(TiO2)はそれが任意のエレメントであることを意味する。
【0066】
さらに詳細には、具体的にこれら多層被膜、厚さ、および化合物の量の様々な実施形態に関してフランス特許出願第2 783 918号または欧州特許第1 042 247号を参照することができる。
【0067】
本発明によれば被膜の種類により基板の光学的特性、具体的にはその可視光線の光透過に関する特性と、その赤外線の反射特性との間の適切な妥協点が可能になる。
【0068】
本発明のグレイジングユニットに使用される低E被膜は、0.3を超えない、好ましくは0.05を超えない輻射率と、75%を超える、好ましくは85%を超える光の透過率とを有する。
【0069】
さらにSaint-Gobain Glassから入手できる製品PLANITHERM(登録商標)FUTUR N(ガラスの厚さ4 mm、輻射率0.04、および光の反射率88.4%)は、このような被膜を備えた基板として用いることができる。
【0070】
また本発明による別の好適な製品は、Saint-Gobain Glassから入手できるPLANITHERM(登録商標)ULTRA(ガラスの厚さ4 mm、輻射率0.02、および光の反射率86.7%)である。このような製品を基板の1枚またはすべてに用いた場合、熱伝達係数Uは製品PLANITHERM(登録商標)FUTUR Nの場合よりも断熱に関してはより一層良好である可能性があるが、そのグレイジングユニットは光の透過に関してはわずかに失われることになる。
【0071】
さらに、少なくとも1層の反射防止被膜32を1または複数枚の基板上に、好ましくは第一面および/または第三面および/または第五面上に設けることができる。これは、その反射防止機能は別として、グレイジングユニットの光の透過を増し、また陳列ケース中の製品の見やすさをさらに改善する利点を有する。
【0072】
最後にこのグレイジングユニットは、内方の基板11の外面11a上に霜除け被膜40を含む。この被膜は、基板を直接被覆する層であっても、また基板に固定されたプラスチックフィルムを被覆する層であってもよい。
【0073】
具体的にはこの霜除け被膜は、その霜除け被膜を備えたグレイジングユニットをその被膜側で低くて−30℃、具体的には−15℃、−18℃、または−24℃まで下がる温度環境と接触させ、次いで最低0℃、好ましくは10℃から35℃の間、特に15℃と30℃の間、具体的には23℃と27℃の間の、少なくとも25%の湿度の残る大気と接触させた場合、少なくとも12秒間、好ましくは少なくとも1分間、具体的には2分間、あるいは少なくとも3分間もの長い間さえ霜が形成されないようなものである。
【0074】
EN441規格によるこの3分の値は、店内で使用される通常の条件に対して与えられる。この被膜はまた開口リーフが開いている任意の時間に対して、またそれが開かれる頻度に関係なく3分未満の任意の時間に対して、また反対側の温度が0℃を超えているのにその被膜側の温度が0℃か0℃未満であるとすぐに、またさらに高湿度を伴う場合でさえもその霜除け機能を果たすことは言うまでもない。
【0075】
この霜除け被膜は、吸着性かつ吸収性である。
【0076】
それは、基板の表面に到達する水分子がその表面に付着し、その表面と結合し、被膜が十分にその吸収機能を演じることを可能にするするという意味で吸着性である。
【0077】
この被膜は、水分子がその中に浸透し、こうして吸収されるので吸収性(親水性)である。
【0078】
この被膜は、結晶化温度を下げる不凍化合物、例えば溶液状態の塩、特にKCl、NaCl、もしくはこの同等物、および/またはアルコール、および/または任意選択で水中にある適切な親水性のポリマー、コポリマー、プレポリマー、もしくはオリゴマーと、任意選択で1または複数種の界面活性剤とを含む。この化合物は、任意選択でその表面の一部が疎水性を有する。
【0079】
したがってこの不凍化合物は、その化合物と水分子の間に結合が生ずることを可能にし、水分子が互いに結合しないようにし、霜を構成する水の結晶を形成しないようにする。
【0080】
不凍化合物中のアルコールとしてはエタノールまたはイソプロピルアルコールが、特に使用される。
【0081】
溶液の成分としての親水性のポリマー、コポリマー、プレポリマー、またはオリゴマーは、具体的にはポリ(n−ビニル−2−ピロリドン)またはポリ(1−ビニルピロリドン)型のポリビニルピロリドン、あるいはポリ(n−ビニル−2−ピリジン)型、ポリ(n−ビニル−3−ピリジン)型、またはポリ(n−ビニル−4−ピリジン)型のポリビニルピリジン、あるいはポリ(2−ヒドロキシエチルアクリラート)型のポリアクリラート、あるいはポリ(N′, N−ヒドロキシアクリルアミド)型のポリアクリルアミド、あるいはポリビニルアセテート、あるいはポリアクリロニトリル、あるいはポリオール型のもの、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンを基材とする。具体的にはコポリマーは、これらポリマーの構成モノマーの少なくとも1種類を基材とする。
【0082】
親水性ポリマーおよび多孔度の選択により、具体的には水吸収速度および水吸収率の調節が可能になる。層の多孔度は、有利には0.1から100 cm3/gの間、好ましくは20 cm3/g未満である。多孔度は、その層の単位重量当りの細孔の空隙率と定義する。
【0083】
界面活性剤としては親油性部分Yを含む化合物を挙げることができ、この部分Yは不飽和の線状また分枝脂肪族鎖、あるいは芳香族またはアルキル芳香族鎖で、かつイオンまたは非イオン親水性頭部であることができる。
【0084】
これらの例は、
−アニオン界面活性剤、すなわちY−CO2-M+、Y−OSO3-M+、Y−SO3-M+、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホン化脂肪酸および脂肪酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、
−カチオン界面活性剤、すなわちY−(R)nNH+(4-n),X-、Y−R4N+,X-、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、イミダゾリニウム塩、アミン塩、
−両性イオン界面活性剤、すなわちY−N+------CO2-、Y−N+------SO3-、ベタイン、スルホベタイン、イミダゾリウム塩、および
−非イオン界面活性剤、すなわちY−OR、Y−OH、Y−CO2R、Y−CONHR、Y−(CH2−CH2−O)n−、ポリオール、アルコール、酸、エステル、ポリエトキシル化脂肪アルコール
である。
【0085】
さらにこの被膜の凍結防止機能は持続性があることが望ましく、具体的にはその不凍化合物を取り込んだ層が不定期的な機械的接触を受ける可能性のある場合、またはそれを清掃しなければならない場合、上記層の機械的強度を改良することが必要なことがある。この目的のためにはその不凍化合物を少なくとも1種類の他の化合物と架橋および/または混合してそれとの物理的相互作用または化学的相互作用を起こさせることができ、かつ/あるいはこれを固体マトリックス、例えば有機または無機質のマトリックス、またはORMOCER(有機変性セラミック)型の混合マトリックス、またはゾル−ゲル化合物中に分散させることができる。
【0086】
用語「物理的相互作用」とは、本明細書中では水素結合、ファンデルワールス型の極性相互作用、または疎水性相互作用を意味するものと解釈され、これらの相互作用は架橋に似た機械的補強を与えることができる。このような機械的相互作用は、例えば不凍化合物としてのポリビニルピロリドンを、上記不凍化合物に対するマトリックス化合物としてのポリウレタンと混ぜ合わせることによって達成される。
【0087】
一方、化学的相互作用は、不凍化合物を少なくとも1種類の他の化合物とブレンドし、このブレンドを周知のように、例えば熱処理、またはUV架橋工程、室温架橋工程などにかけてそれらの間に共有結合を作り出すことにより生ずる。したがって不凍化合物としてのポリオールをイソシアネート官能基を有する別の化合物とブレンドし、このブレンドを加熱してその不凍化合物による親水官能性と、ポリオールの水酸官能基およびイソシアネート官能基の間の化学的相互作用による機械的完全性とを有するポリウレタンを得ることができる。
【0088】
特定の組成物の例については国際出願WO00/71481号およびフランス特許第05/50271号を参照することができる。
【実施例】
【0089】
本発明のこの第一の実施形態では熱伝達係数Uの所望レベル、ならびにグレイジングユニットの大きさおよび重量とその光学的性質の間の兼ね合いに応じて幾つかの代替形態を想定することができる。
【0090】
下記の表Iは、断熱性の点で、またグレイジングユニットの加熱を必要とせずに曇りまたは霜付きがないという点で所望の性能必要条件を満たす三重グレイジングユニットの幾つかの実施形態例AからEを示す。
【0091】
この表中にはグレイジングユニットの全体の厚さと、ガラス基板の厚さと、低E被膜を含むグレイジングユニットの面または複数の面と、ガス層の厚さと、ガスの種類と、そのようなグレイジングユニットによって与えられる光の透過率および外方の光の反射率、例えばその選択されたガスに対して、またガス充填率(85%または92%)に対して得られるグレイジングユニットの熱伝達係数Uと、そのようなグレイジングユニットを組み込んだ開口リーフの総括熱伝達係数Uwとを示す。
【0092】
これらの例のそれぞれに対して、
−低熱伝導率のスペーサ50は、前述のSaint-Gobain Glassから入手できる製品SWISSPACER V(登録商標)そのものであるグレイジングユニットの2つの空間のそれぞれに対する2つの隔離エレメントからなる。
−低E被膜30および31で、実施例Aに対応する実施例A1を除いてはSaint-Gobain Glassから入手できる製品PLANITHERM(登録商標)FUTUR Nそのものであるガラス基板を被覆する。実施例A1については基板の1枚をSaint-Gobain Glassから入手できる製品PLANITHERM(登録商標)ULTRAで置き換え、この固有の詳細は下記で述べる。
−霜除け被膜40でガラス基板を直接被覆する。これはSaint-Gobain Glassによって販売されているEVERCLEAR(登録商標)被膜である。
−反射防止被膜32でこれらガラス基板を被覆する。これはSaint-Gobain Glassから入手できる製品VISION-LITE Plus(登録商標)そのものである。
【0093】
このグレイジングユニットの熱伝達係数Uは、ユニットの中央でprEN 673およびprEN 410規格に従って計算した。この計算はまたスペーサの型には無関係であった。
【0094】
開口リーフの総括熱伝達係数Uwは、サーマル・ブリッジ・ブレイクを有するアルミニウムフレーム中、冷凍密閉容器に対する通常のフレーム中、およびPVCフレーム中にそれぞれ組み込まれたグレイジングユニットについて計算した。EN ISO 10077−2規格によるこの計算は、開口リーフ、グレイジングユニット、およびフレームの寸法、ならびにスペーサおよびフレームの種類を考慮に入れている。
【0095】
開口リーフは1800 mm×800 mmの形であり、フレームはアルミニウムの場合は2.6 W/m2・Kの、またPVCの場合は1.8 W/m2・Kの熱伝達係数Uを有する40 mm×40 mmの正方形断面であった。グレイジングユニットは、幅25 mmにわたって枠のしゃくりにはめ込まれた。
【0096】
【表1】

【0097】
したがってこれらのグレイジングユニットは、少なくとも85%のガス充填率で1.1 W/m2・K未満の熱伝達係数U、またさらにアルゴンをガス層のうちの1層に対して厚さ16 mmで使用する場合は0.80 W/m2・K未満の熱伝達係数Uを有し(実施例DおよびE)、また好ましくはクリプトンを両方のガス層に対して使用しかつ少なくとも92%の充填率では0.65 W/m2・K未満の熱伝達係数Uさえ有する(実施例B)。
【0098】
このようなグレイジングユニットを組み込んだ開口リーフの総括熱伝達係数Uwは、少なくとも92%の充填率で1.25 W/m2・Kを超えない。
【0099】
したがってこれらのグレイジングユニットにより、最低67%の光の透過率および18%未満の外部光反射率を得ることが可能になる。これらの示した数値は、不凍層の存在を考慮に入れており、これは光の透過率をわずか約0.5%下げる。
【0100】
実施例A1の場合は、すでに上記で説明したように低Eガラス基板PLANITHERM(登録商標)ULTRAの使用により、実施例Aと比較してさらに断熱性能を増すことが可能になるが、光学的特性に関してはわずかに失われる。それにもかかわらずその光学的特性は依然として十分許容できる。
【0101】
例えば第一、第三、および第五面上への反射防止層の使用(実施例E)は、低い光反射率、すなわち7.2%で79.8%の全体的透過率をもたらし、これはグレイジングユニットに十分無理のない光学的性質を与える。
【0102】
単一のクリプトン層のみを用いた実施例Cは、クリプトンは高価なガスであるためグレイジングユニットのコストが関心事である場合には実施例Bより好ましい。
【0103】
さらにこの実施例Cはまた、実施例Bの2層のガス層のうちの1層からガスが完全に漏出した場合に起こるであろう状況を実証する。
【0104】
最後に、時間の経過によるグレイジングユニット中のガスの損失は1年当り1%(prEN 1279−3規格)と見積もられる。したがって数年後にはグレイジングユニットはそのガス充填率の低下が目に見えるようになり、その結果、その断熱性能もまた低下することになる。したがって85%の充填率での熱伝達係数Uを示す表中の横列は、最初92%のガスを満たした場合の7年後のグレイジングユニットの熱的性能をシミュレートしたものである。
【0105】
図2は、開口リーフ1がキセノンおよび/またはクリプトンおよび/またはアルゴンで満たされ、加熱素子を持たないが、少なくとも1層の低E被膜30と霜除け被膜40を含む断熱二重グレイジングユニットを備えた本発明の第二の実施形態を示す。この二重グレイジングユニットは、1.2 W/m2・K未満、好ましくは1.15 W/m2・K未満の熱伝達係数Uおよび最低75%の光の透過率を有する。
【0106】
二重グレイジングユニット20は、冷凍密封容器の環境および外部環境とそれぞれ接するように設計された2枚のガラス基板21および22を備える。これらは、低熱伝導率のスペーサ50、例えば第一の実施形態で述べたものにより隔てられる。
【0107】
これら2枚のガラス基板間のガス層23は、4から16 mmの間、好ましくは少なくとも8 mmの厚さを有する。
【0108】
低E被膜30がグレイジングユニットの少なくとも1つの内方の面、すなわち第二面および/または第三面上に配置される。この被膜は、第一の実施形態で述べた型のものであり、銀および金属酸化物から作られる。
【0109】
霜除け被膜40で内方の基板の外面21aが被覆され、これは第一の実施形態で述べたものそのものである。
【0110】
反射防止被膜32を基板の少なくとも1枚の上、好ましくはグレイジングユニットの第一面および/または第三面上に設けることができる。
【0111】
下記の表IIは、本発明による二重グレイジングユニットの3つの実施例F、G、およびHを示す。熱伝達係数Uは、グレイジングユニットの中央でprEN 673およびprEN 410規格に従って計算した。この計算はまたスペーサの型には無関係であった。
【0112】
この低E被膜は、Saint-Gobain Glassから入手できるPLANITHERM(登録商標)FUTUR Nそのものである。霜除け被膜はSaint-Gobain Glassから入手できるEVERCLEAR(登録商標)そのものであり、また反射防止被膜はSaint-Gobain Glassから入手できるVISION-LITE Plus(登録商標)そのものであった。
【0113】
第一の実施形態と同様に、これらの型のグレイジングユニットを組み込んだ開口リーフの総括熱伝達係数Uwを、同じ寸法、同じ型のスペーサ、および同じ型のフレームで上記で説明したと同様に計算した。
【0114】
【表2】

【0115】
より小さな寸法を必要とする開口リーフ用に設計されたこれらグレイジングユニットは全体の厚さがより薄く、したがって85%のガス充填率に対して1.15 W/m2・K未満、また少なくとも92%のガス充填率に対して1.05 W/m2・K未満の熱伝達係数Uを有する。したがってこれら開口リーフの総括熱伝達係数Uwは、アルミニウムフレームでは少なくとも92%のガス充填率に対して1.25 W/m2・K未満、またさらにPVCフレームでは少なくとも92%のガス充填率に対して1.20 W/m2・K未満でさえある。
【0116】
実施例FおよびGの光の透過率は、最低でも78%であり、反射防止被膜を加えた場合きわめて有利には81.5%を超え、それぞれ9.6%および6.2%の光反射率を有する。
【0117】
本発明の第一および第二の実施形態によるグレイジングユニットは、EN441規格で与えられ、下記の表III中で再度述べる環境クラス(classes d’ambiance)2、3、4、および5を満足する。具体的にはそれらは実施例B、D、およびEの場合のように熱伝達係数Uが0.8未満のときクラス6を満足する。
【0118】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明によるグレイジングユニットの第一の実施形態の部分断面図である。
【図2】本発明によるグレイジングユニットの第二の実施形態の部分断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚のガラス基板と、前記2枚のガラス基板を隔てた状態に保つ低熱伝導率の少なくとも1個のスペーサ(50)と、前記基板の少なくとも1枚を少なくとも部分的に被覆する低E(低輻射率)被膜とを備えた、特に冷凍密閉容器の開口リーフを意図した断熱グレイジングユニットであって、
−前記スペーサが、1 W/m・K未満、好ましくは0.3 W/m・K未満の熱伝導率を有し、
−少なくとも2枚の基板間の空間が少なくとも1種類の希ガスで満たされ、
−前記グレイジングユニットが加熱素子を含有せず、
−前記グレイジングユニットが、少なくとも85%のガス充填率で1.2 W/m2・K未満、好ましくは1.15 W/m2・K未満の熱伝達係数Uを有し、
−前記グレイジングユニットが、最低67%の光の透過率および18%未満の光反射率を有し、かつ
−前記グレイジングユニットが、さらに基板の外面の少なくとも一部を被覆している霜除け被膜を含む
ことを特徴とする、グレイジングユニット。
【請求項2】
前記ガスが、アルゴン、クリプトン、およびキセノンの中から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のグレイジングユニット。
【請求項3】
低E被膜が、少なくとも第二面および/または第三面および/または第四面上に配置されることを特徴とする、請求項2または3に記載のグレイジングユニット。
【請求項4】
反射防止被膜で前記基板の少なくとも1枚、好ましくは前記グレイジングユニットの第一面および/または第三面および/または第五面を被覆することを特徴とする、請求項1から3の一項に記載のグレイジングユニット。
【請求項5】
3枚のガラス基板、すなわち前記開口リーフがその閉じた位置にある状態で外面(11a)が前記密閉容器の内側と接するためのものである第一基板(11)と、第二基板すなわち中間基板(12)と、その外面(13a)が前記密閉容器の外部環境と接するためのものである第三基板(13)とを備え、これら基板が低熱伝導率のスペーサ(50)により互いに隔離され、
−前記基板の厚さが、2から5 mmの間、好ましくは3または4 mmであり、
−前記基板(11、12、13)間の空間の少なくとも1つが、少なくとも1種類の希ガスで満たされ、
−前記ガス層の厚さが、少なくとも4 mmであり、
−低E被膜(30、31)で前記グレイジングユニットの第二面および/または第四面が被覆され、
−前記霜除け被膜(40)で前記第三基板の前記外面(11a)の少なくとも一部が被覆され、
−前記グレイジングユニットの熱伝達係数Uが、少なくとも85%のガス充填率で1.1 W/m2・K未満、さらには0.95または0.80 W/m2・K未満でさえあり、かつ
−前記グレイジングユニットが、最低67%の光の透過率および18%未満の外部光反射率を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の断熱三重グレイジングユニット(10)。
【請求項6】
前記断熱三重グレイジングユニットが、第二および第四面上に低E被膜(30、31)を含み、かつ1.0 W/m2・K未満の熱伝達係数Uを有することを特徴とする、請求項5に記載の三重グレイジングユニット。
【請求項7】
前記低E被膜で、より厚いガス層を伴っている前記グレイジングユニットの面を被覆することを特徴とする、請求項5および6のいずれかに記載の三重グレイジングユニット。
【請求項8】
少なくとも1層の反射防止被膜で、前記グレイジングユニットの前記面の少なくとも1つ、好ましくは第一、第三、および第五面の少なくとも1つを被覆することを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の三重グレイジングユニット。
【請求項9】
前記ガス層の一方が厚さ8 mmを有するのに対し、もう一方のガス層が少なくとも厚さ10 mmを有し、これらガス層がアルゴンであることを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の三重グレイジングユニット。
【請求項10】
前記ガス層の一方がクリプトンであり、厚さ8 mmを有するのに対し、もう一方のガス層が空気であり、少なくとも厚さ10 mmを有することを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の三重グレイジングユニット。
【請求項11】
前記断熱グレイジングユニットが、2枚のガラス基板、すなわち前記開口リーフがその閉じた位置にあるとき外面(21a)が前記密閉容器の内側と接するためのものである第一基板(21)と、その外面が前記密閉容器の外部環境と接するためのものである第二基板(22)とを備え、これらが低熱伝導率のスペーサ(50)により互いに隔離され、前記基板間の空間が希ガスで満たされ、
−これら基板の厚さが3または4 mmであり、
−前記基板(21、22)間の空間が、少なくとも1種類の希ガスで満たされ、
−前記ガス層(23)の厚さが、少なくとも8 mmであり、
−低E被膜で前記グレイジングユニットの少なくとも第二面が被覆され、
−前記霜除け被膜(40)で前記第一基板(21)の前記外面(21a)の少なくとも一部が被覆され、
−前記グレイジングユニットが、少なくとも85%のガス充填率で1.15 W/m2・K未満の熱伝達係数Uを有し、かつ
−前記グレイジングユニットが、最低75%の光の透過率および12%未満の外部光反射率を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の断熱二重グレイジングユニット(20)。
【請求項12】
別の低E被膜(31)で前記グレイジングユニットの第三面を被覆することを特徴とする、請求項11に記載の二重グレイジングユニット。
【請求項13】
前記二重グレイジングユニットが、少なくとも92%のガス充填率で1.05 W/m2・K未満の熱伝達係数Uを有することを特徴とする、請求項11または12に記載の二重グレイジングユニット。
【請求項14】
前記ガス層がクリプトンであることを特徴とする、請求項11から13の一項に記載の二重グレイジングユニット。
【請求項15】
前記ガス層が厚さ8 mmのキセノンであることを特徴とする、請求項11から14の一項に記載の二重グレイジングユニット。
【請求項16】
第一面および/または第三面上に反射防止被膜(32)を含み、かつ80%を超える光の透過率および10%未満の外部光反射率を有することを特徴とする、請求項11から15の一項に記載の二重グレイジングユニット。
【請求項17】
前記霜除け被膜(40)が、前記霜除け被膜を備えた前記グレイジングユニットを、その被膜側で低くて−30℃、具体的には−15℃、−18℃、または−24℃まで低下する温度環境と接触させ、次いで最低0℃、好ましくは10℃から35℃の間、特に15℃と30℃の間、具体的には23℃と27℃の間の、少なくとも25%の湿度の残る大気と接触させた場合、少なくとも12秒間、好ましくは少なくとも1分間、具体的には少なくとも2分間、あるいは少なくとも3分間もの長い間さえ霜が形成されないようなものであることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載のグレイジングユニット。
【請求項18】
前記霜除け被膜(40)が、結晶化温度を下げる不凍化合物、例えば溶液状態の塩、特にKCl、NaCl、もしくはこの同等物、および/またはアルコール、および/または任意選択で水中にある適切な親水性のポリマー、コポリマー、プレポリマー、もしくはオリゴマーと、任意選択で1または複数種の界面活性剤とを含み、この化合物が任意選択でその表面の一部で疎水性を有することを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載のグレイジングユニット。
【請求項19】
前記不凍化合物を、前記被膜を機械的に補強する物理的または化学的相互作用を得るために少なくとも1種類の他の化合物と結合させることを特徴とする、請求項18に記載のグレイジングユニット。
【請求項20】
前記不凍化合物がポリビニルピロリドンであり、それをポリウレタンと結合させて物理的相互作用を生ずることを特徴とする、請求項19に記載のグレイジングユニット。
【請求項21】
前記不凍化合物がポリオールであり、それを少なくとも1種類のイソシアネート官能基と結合させて化学的相互作用を生ずることを特徴とする、請求項18に記載のグレイジングユニット。
【請求項22】
前記基板間に配置された前記スペーサが、ガラス型の補強繊維と混ぜ合わせたスチレンアクリロニトリル(SAN)またはポリプロピレン型の熱可塑性樹脂から作られた本体と、この熱可塑性樹脂を部分的に覆うアルミニウムまたはステンレススチール型の金属箔とからなる第一のシーリングバリヤー、ならびに液体および蒸気に対してシールするポリスルフィド型の第二のシーリングバリヤーを備えることを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載のグレイジングユニット。
【請求項23】
前記スペーサは、前記グレイジングユニットの周囲の少なくとも一部を覆い、その基板の縁部に固定され、かつステンレススチール、アルミニウム、または補強繊維で補強されたプラスチックから作られたほぼ平坦なストリップからなり、またそのガス層とは反対側の面に、蒸気、ガス、および液体に対してシールするバリヤーを構成する金属被膜を備えることを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載のグレイジングユニット。
【請求項24】
前記スペーサが、少なくとも400 N/mの線形の坐屈強さを有することを特徴とする、請求項23に記載のグレイジングユニット。
【請求項25】
少なくとも前記外方の基板(11、13、21、22)が強化ガラスで作られることを特徴とする、請求項1〜24のいずれか一項に記載のグレイジングユニット。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか一項に記載のグレイジングユニットを組み込んだ開口リーフ。
【請求項27】
アルミニウムから形成され、かつサーマル・ブリッジ・ブレイク(thermal bridge break)を有するグレイジングユニット支持用のフレームを含む開口リーフであって、その開口リーフが少なくとも92%のガス充填率に対して1.25 W/m2・K未満の総括熱伝達係数Uwを有することを特徴とする、請求項26に記載の開口リーフ。
【請求項28】
PVCから形成されたグレイジングユニット支持用のフレームを含む開口リーフであって、その開口リーフが少なくとも92%のガス充填率に対して1.20 W/m2・K未満の総括熱伝達係数Uwを有することを特徴とする、請求項26に記載の開口リーフ。
【請求項29】
請求項26から28の一項に記載の開口リーフを含む冷凍密封容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−545465(P2008−545465A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512859(P2008−512859)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050744
【国際公開番号】WO2006/125874
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】