説明

冷凍機油組成物

本発明の冷凍機油組成物は、所定基油と、リン系極圧剤と、油性剤と、を含有することを特徴とする。本発明の冷凍機油組成物によれば、上記構成を有するために、HFC冷媒等が用いられる冷凍空調機器において優れた潤滑性を発揮し、冷凍空調機器を長期にわたって安定的に運転することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷凍空調機器の圧縮機に使用される冷凍機油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
モントリオール議定書に基づくオゾン層破壊型フロン類からの冷媒代替化が進められる中、代替冷媒に適した冷凍機油について検討がなされている。例えば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒用冷凍機油としては、HFC冷媒に対して相溶性を示すポリオールエステルやエーテル系などの合成油を使用したものが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特表平3−505602号公報
【特許文献2】特開平3−128992号公報
【特許文献3】特開平3−200895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、含酸素系合成油を含む上記従来の冷凍機油を用いる場合、冷凍機油自体の潤滑性が鉱油系冷凍機油に比べて低いことに加え、併用される代替冷媒の潤滑性もオゾン層破壊型フロン類に比べて低いため、冷凍空調機器の運転の不安定化や装置寿命の低下が起こりやすくなる。
【0004】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、HFC等の種々の冷媒が用いられる冷凍空調機器において優れた潤滑性を発揮し、冷凍空調機器を長期にわたって安定的に運転することが可能な冷凍機油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、所定基油と、リン系極圧剤と、エステル系添加剤と、を含有する冷凍機油組成物を提供する。
【0006】
本発明の冷凍機油組成物においては、リン系極圧剤と油性剤とを併用することによって、冷凍機油組成物の耐摩耗性及び摩擦特性の双方が十分に高められるため、HFC冷媒等と共に用いる場合であっても、冷凍空調機器を長期にわたって安定的に運転することが可能となる。
【0007】
また、本発明の冷凍機油組成物による耐摩耗性及び摩擦特性の向上効果は冷凍空調機器のエネルギー効率の向上にも寄与し得るため、省エネルギー、さらには冷凍空調機器の製造コストの削減の観点からも非常に有用である。すなわち、従来の冷凍空調機器においては、冷凍機油による摩耗・摩擦の低減は十分に検討されておらず、また、耐摩耗性向上剤や油性剤の使用による悪影響が懸念されるため、圧縮機等のハード側の改良により耐摩耗性や摩擦特性の改善を図るのが一般的であった。これに対して、本発明の冷凍機油組成物によれば、その優れた耐摩耗性及び摩擦特性により圧縮機内部における摺動の負荷が十分に低減されるため、圧縮機や熱交換機等のハード側の改良を行わなくとも冷凍空調機器のエネルギー効率を向上させることができる。さらに、本発明による耐摩耗性及び摩擦特性の向上効果により、材質グレードの低い摺動部材、すなわち安価な摺動部材を圧縮機の摺動部材として使用することができ、冷凍空調機器のコスト低減が実現可能となる。またその一方で、本発明の冷凍機油組成物と耐摩耗性が改善された圧縮機等とを組み合わせることによって、エネルギー効率を飛躍的に向上させることができる。
【0008】
本発明の冷凍機油組成物における耐摩耗性及び摩擦特性の向上効果はリン系極圧剤と油性剤との併用により初めて得られるものであり、かかる向上効果はリン系極圧剤又は油性剤のいずれか一方を単独で使用した場合に比べて飛躍的なものである。例えば、これらの添加剤のうち油性剤のみをHFC系冷媒用冷凍機油に用いる場合には、耐摩耗性や摩擦特性の向上効果が不十分となったり、冷凍機油の熱・酸化安定性や冷媒雰囲気下及び低温下での析出防止性が損なわれたりすることがある。また、リン系化合物等の極圧剤を単独で用いる場合には摩擦特性が低下することがある。これに対して、本発明の冷凍機油組成物によればこれらの特性を高水準で維持することが可能である。
【0009】
なお、本発明でいう「リン系極圧剤」には、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル、亜リン酸エステルなどのリン系添加剤、並びにフォスフォロチオネート(チオリン酸エステル)が包含される。
【0010】
本発明の冷凍機油組成物においては、リン系極圧剤がフォスフォロチオネートを含むことが好ましい。フォスフォロチオネートと油性剤とを併用することによって、冷凍機油組成物の耐摩耗性及び摩擦特性の双方を高水準でバランスよく達成することができる。
【0011】
また、本発明の冷凍機油組成物においては、リン系極圧剤が、フォスフォロチオネートと、該フォスフォロチオネート以外のリン系極圧剤との双方を含むことが好ましい。これにより、フォスフォロチオネートと該フォスフォロチオネート以外のリン系極圧剤との相乗作用、並びにこれらのリン系極圧剤それぞれと油性剤との相乗作用に起因して、本発明による上述の効果をより高水準で得ることができ、特に耐摩耗性を一層向上させることができる。
【0012】
また、本発明の冷凍機油組成物は、エポキシ化合物を更に含有することが好ましい。リン系極圧剤と油性剤とエポキシ化合物を併用すると、上述した本発明による効果をより高水準で得ることができ、特に摩擦特性を更に向上させることができる点で有効である。
【0013】
また、本発明の冷凍機油組成物においては、油性剤がエステル油性剤を含むことが好ましい。これにより、リン系極圧剤とエステル油性剤との相乗作用に起因して、本発明による上述の効果をより高水準で得ることができる。
【0014】
本発明の冷凍機油組成物においては、油性剤が、一塩基酸と一価アルコールとのエステル及び鎖状二塩基酸と一価アルコールとのエステルから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、炭素数12以上の一塩基酸と一価アルコールとのエステル及び鎖状二塩基酸と一価アルコールとのエステルから選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。かかる油性剤を用いることで、耐摩耗性及び摩擦特性を更に向上させることができる。
【0015】
また、本発明の冷凍機油組成物においては、油性剤がエステル油性剤を含み、該エステル油性剤の含有量が組成物全量基準で0.01〜10質量%であることが好ましい。エステル油性剤の含有量を上記範囲内とすることで、耐摩耗性及び摩擦特性、更には熱・酸化安定性をさらに向上させることができる。
【0016】
また、本発明の冷凍機油組成物においては、基油が多価アルコールと一価脂肪酸とのエステル及び脂肪族環式二塩基酸と一価アルコールとのエステルから選ばれる少なくとも1種を含み、油性剤が一塩基酸と一価アルコールとのエステル及び鎖状二塩基酸と一価アルコールとのエステルから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。かかるエステル系基油とエステル油性剤との組み合わせにより、耐摩耗性及び摩擦特性、更には冷媒雰囲気下及び低温下での析出防止性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の冷凍機油組成物によれば、HFC等の種々の冷媒が用いられる冷凍空調機器において優れた潤滑性を得ることができ、冷凍空調機器を長期にわたって安定的に運転することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
(基油)
【0020】
本発明で用いられる基油は、鉱油、合成油のいずれであってもよく、また、鉱油と合成油との混合基油であってもよい。
【0021】
鉱油としては、例えば、パラフィン基系原油、中間基系原油又はナフテン基系原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理の1種もしくは2種以上の精製手段を適宜組み合わせて適用して得られるパラフィン系鉱油又はナフテン系鉱油が挙げられる。
【0022】
これらの鉱油の中でも、熱安定性により優れる点から、高度に精製された鉱油(以下、「高度精製鉱油」という)を用いることが好ましい。高度精製鉱油の具体例としては、パラフィン基系原油、中間基系原油又はナフテン基系原油を常圧蒸留するかあるいは常圧蒸留の残渣油を減圧蒸留して得られる留出油を常法に従って精製することによって得られる精製油;精製後さらに深脱ロウ処理することによって得られる深脱ろう油;水素化処理によって得られる水添処理油、等が挙げられる。
【0023】
なお、上記の精製工程における精製法は特に制限されず、従来公知の方法を使用することができるが、例えば、(a)水素化処理、(b)脱ロウ処理(溶剤脱ロウ又は水添脱ロウ)、(c)溶剤抽出処理、(d)アルカリ洗浄又は硫酸洗浄処理、(e)白土処理のうちのいずれかの処理を単独で、あるいは2つ以上を適宜の順序で組み合わせて行う方法が挙げられる。また、上記処理(a)〜(e)のうちのいずれかの処理を複数段に分けて繰り返し行うことも有効である。より具体的には、(i)留出油を水素化処理する方法、又は水素化処理した後、アルカリ洗浄又は硫酸洗浄処理を行う方法;(ii)留出油を水素化処理した後、脱ロウ処理する方法;(iii)留出油を溶剤抽出処理した後、水素化処理する方法;(iv)の留出油に二段あるいは三段の水素化処理を行う、又はその後にアルカリ洗浄又は硫酸洗浄処理する方法;(v)上述した処理(i)〜(iv)の後、再度脱ロウ処理して深脱ロウ油とする方法、等が挙げられる。
【0024】
上記の精製方法により得られる高度精製鉱油の中でも、ナフテン系鉱油及び深脱ロウ処理することにより得られる鉱油が、低温流動性、低温時でのワックス析出がない等の点から好適である。この深脱ロウ処理は、通常、苛酷な条件下での溶剤脱ロウ処理法やゼオライト触媒を用いた接触脱ロウ処理法などによって行われる。
【0025】
また、かかる高度精製鉱油の非芳香族不飽和分(不飽和度)は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。非芳香族不飽和分が10質量%を超えると、スラッジが発生しやすくなり、その結果、冷媒循環システムを構成するキャピラリー等の膨張機構が閉塞しやすくなる傾向にある。
【0026】
他方、本発明において用いられる合成油としては、オレフィン重合体、ナフタレン化合物、アルキルベンゼン等の炭化水素系油;エステル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ケトン、ポリフェニルエーテル、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテル等の含酸素合成油、などが挙げられる。
【0027】
オレフィン重合体としては、炭素数2〜12のオレフィンを重合させて得られるもの、並びにその重合により得られる化合物を水素化処理したもの等が挙げられ、ポリブテン、ポリイソブテン、炭素数5〜12のα−オレフィンのオリゴマー(ポリαオレフィン)、エチレン−プロピレン共重合体及びこれらの水素化処理したものなどが好ましく用いられる。
【0028】
オレフィン重合体の製造方法は特に制限されず、種々の公知の方法で製造できる。例えば、ポリαオレフィンは、エチレンから製造されたαオレフィンを原料とし、これをチーグラー触媒法、ラジカル重合法、塩化アルミニウム法、フッ化ホウ素法等の公知の重合方法によって処理することにより製造される。
【0029】
ナフタレン化合物としては、ナフタレン骨格を有するものであれば特に限定はないが、冷媒に対する相溶性に優れる点から、炭素数1〜10のアルキル基を1〜4個有し、かつアルキル基の合計炭素数が1〜10であるものが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基を1〜3個有し、かつアルキル基の合計炭素数が3〜8であるものがより好ましい。
【0030】
ナフタレン化合物が有する炭素数1〜10のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、直鎖状又は分枝状のブチル基、直鎖状又は分枝状のペンチル基、直鎖状又は分枝状のヘキシル基、直鎖状又は分枝状のヘプチル基、直鎖状又は分枝状のオクチル基、直鎖状又は分枝状のノニル基、直鎖状又は分枝状のデシル基等が挙げられる。
【0031】
なお、ナフタレン化合物を用いる場合は、単一の構造の化合物を単独で用いてもよく、構造の異なる化合物の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
また、上記ナフタレン化合物の製造方法は特に制限されず、種々の公知の方法で製造できる。この例としては例えば、炭素数1〜10の炭化水素のハロゲン化物、炭素数2〜10のオレフィン類又は炭素数8〜10のスチレン類を硫酸、リン酸、ケイタングステン酸、フッ化水素酸等の鉱酸、酸性白土、活性白土等の固体酸性物質又は塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のハロゲン化金属であるフリーデルクラフツ触媒等の酸触媒の存在下、ナフタレンへ付加する方法等が挙げられる。
【0033】
本発明にかかるアルキルベンゼンとしては、特に限定されないが、冷媒に対する相溶性に優れる点から、炭素数1〜40のアルキル基を1〜4個有し、かつアルキル基の合計炭素数が1〜40であるものが好ましく、炭素数1〜30のアルキル基を1〜4個有し、かつアルキル基の合計炭素数が3〜30であるものがより好ましい。
【0034】
アルキルベンゼンが有する炭素数1〜40のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、直鎖状又は分枝状のブチル基、直鎖状又は分枝状のペンチル基、直鎖状又は分枝状のヘキシル基、直鎖状又は分枝状のヘプチル基、直鎖状又は分枝状のオクチル基、直鎖状又は分枝状のノニル基、直鎖状又は分枝状のデシル基、直鎖状又は分枝状のウンデシル基、直鎖状又は分枝状のドデシル基、直鎖状又は分枝状のトリデシル基、直鎖状又は分枝状のテトラデシル基、直鎖状又は分枝状のペンタデシル基、直鎖状又は分枝状のヘキサデシル基、直鎖状又は分枝状のヘプタデシル基、直鎖状又は分枝状のオクタデシル基、直鎖状又は分枝状のノナデシル基、直鎖状又は分枝状のイコシル基、直鎖状又は分枝状のヘンイコシル基、直鎖状又は分枝状のドコシル基、直鎖状又は分枝状のトリコシル基、直鎖状又は分枝状のテトラコシル基、直鎖状又は分枝状のペンタコシル基、直鎖状又は分枝状のヘキサコシル基、直鎖状又は分枝状のヘプタコシル基、直鎖状又は分枝状のオクタコシル基、直鎖状又は分枝状のノナコシル基、直鎖状又は分枝状のトリアコンチル基、直鎖状又は分枝状のヘントリアコンチル基、直鎖状又は分枝状のドトリアコンチル基、直鎖状又は分枝状のトリトリアコンチル基、直鎖状又は分枝状のテトラトリアコンチル基、直鎖状又は分枝状のペンタトリアコンチル基、直鎖状又は分枝状のヘキサトリアコンチル基、直鎖状又は分枝状のヘプタトリアコンチル基、直鎖状又は分枝状のオクタトリアコンチル基、直鎖状又は分枝状のノナトリアコンチル基、直鎖状又は分枝状のテトラコンチル基(すべての異性体を含む)等が挙げられる。
【0035】
上記のアルキル基は直鎖状、分枝状のいずれであってもよいが、冷媒循環システムに使用される有機材料との適合性の点では直鎖状アルキル基が好ましい。一方、冷媒相溶性、熱安定性、潤滑性等の点から分枝状アルキル基が好ましく、特に入手可能性の点から、プロピレン、ブテン、イソブチレンなどのオレフィンのオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基がより好ましい。
【0036】
なお、アルキルベンゼンを用いる場合は、単一の構造の化合物を単独で用いてもよく、構造の異なる化合物の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記アルキルベンゼンの製造方法は任意であり、何ら限定されるものでないが、例えば以下に示す合成法によって製造できる。
【0038】
原料となる芳香族化合物としては、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、ジエチルベンゼン及びこれらの混合物等が用いられる。またアルキル化剤として、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン等の低級モノオレフィン(好ましくはプロピレン)の重合によって得られる炭素数6〜40の直鎖状又は分枝状のオレフィン;ワックス、重質油、石油留分、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱分解によって得られる炭素数6〜40の直鎖状又は分枝状のオレフィン;灯油、軽油等の石油留分からn−パラフィンを分離し、これを触媒によりオレフィン化することによって得られる炭素数9〜40の直鎖状オレフィン、並びにこれらの混合物等を使用することができる。
【0039】
また、上記の芳香族化合物とアルキル化剤とを反応させる際には、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のフリーデルクラフツ型触媒、硫酸、リン酸、ケイタングステン酸、フッ化水素酸、活性白土等の酸性触媒等の従来より公知のアルキル化触媒を用いることができる。
【0040】
エステルとしては、例えば、芳香族エステル、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、コンプレックスエステル、炭酸エステル及びこれらの混合物等が例示される。
【0041】
かかる芳香族エステルとしては、1〜6価、好ましくは1〜4価、より好ましくは1〜3価の芳香族カルボン酸と、炭素数1〜18、好ましくは1〜12の脂肪族アルコールとのエステル等が挙げられる。1〜6価の芳香族カルボン酸としては、具体的には、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの混合物等が挙げられる。また、炭素数1〜18の脂肪族アルコールとしては、直鎖状のものでも分枝状のものであってもよく、具体的には、メタノール、エタノール、直鎖状又は分枝状のプロパノール、直鎖状又は分枝状のブタノール、直鎖状又は分枝状のペンタノール、直鎖状又は分枝状のヘキサノール、直鎖状又は分枝状のヘプタノール、直鎖状又は分枝状のオクタノール、直鎖状又は分枝状のノナノール、直鎖状又は分枝状のデカノール、直鎖状又は分枝状のウンデカノール、直鎖状又は分枝状のドデカノール、直鎖状又は分枝状のトリデカノール、直鎖状又は分枝状のテトラデカノール、直鎖状又は分枝状のペンタデカノール、直鎖状又は分枝状のヘキサデカノール、直鎖状又は分枝状のヘプタデカノール、直鎖状又は分枝状のオクタデカノール及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0042】
上記の芳香族化合物と脂肪族アルコールとを用いて得られる芳香族エステルとしては、具体的には、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジドデシル、フタル酸ジトリデシル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリノニル、トリメリット酸トリデシル、トリメリット酸トリドデシル、トリメリット酸トリトリデシル等が挙げられる。なお、当然のことながら、2価以上の芳香族カルボン酸を用いた場合、1種の脂肪族アルコールからなる単純エステルであってもよいし、2種以上の脂肪族アルコールからなる複合エステルであってもよい。
【0043】
二塩基酸エステルとしては、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸等の炭素数5〜10の鎖状若しくは環状の脂肪族二塩基酸と、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール等の直鎖又は分枝の炭素数1〜15の一価アルコールとのエステル及びこれらの混合物が好ましく用いられ、より具体的には、ジトリデシルグルタレート、ジ2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ2−エチルヘキシルセバケート、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と炭素数4〜9の一価アルコールとのジエステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸と炭素数4〜9の一価アルコールとのジエステル及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0044】
また、ポリオールエステルとしては、ジオールあるいは水酸基を3〜20個有するポリオールと、炭素数6〜20の脂肪酸とのエステルが好ましく用いられる。ここで、ジオールとしては、具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。ポリオールとしては、具体的には、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜20量体)、1,3,5−ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトース等の糖類及びこれらの部分エーテル化物、並びにメチルグルコシド(配糖体)並びにが挙げられる。これらの中でもポリオールとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)等のヒンダードアルコールが好ましい。
【0045】
ポリオールエステルに用いられる脂肪酸において、その炭素数は特に制限されないが、通常、炭素数1〜24のものが用いられる。炭素数1〜24の脂肪酸の中でも、潤滑性の点から炭素数3以上のものが好ましく、炭素数4以上のものがより好ましく、炭素数5以上のものがさらに好ましく、炭素数10以上のものが特に好ましい。また、冷媒との相溶性の点から、炭素数18以下のものが好ましく、炭素数12以下のものがより好ましく、炭素数9以下のものがさらに好ましい。
【0046】
また、かかる脂肪酸は直鎖状脂肪酸、分枝状脂肪酸のいずれであってもよいが、潤滑性の点からは直鎖状脂肪酸が好ましく、加水分解安定性の点からは分枝状脂肪酸が好ましい。さらに、かかる脂肪酸は飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。
【0047】
脂肪酸としては、具体的には、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、オレイン酸等が挙げられ、これらの脂肪酸は直鎖状脂肪酸、分枝状脂肪酸のいずれであってもよく、さらにはα炭素原子が4級炭素原子である脂肪酸(ネオ酸)であってもよい。これらの中でも、吉草酸(n−ペンタン酸)、カプロン酸(n−ヘキサン酸)、エナント酸(n−ヘプタン酸)、カプリル酸(n−オクタン酸)、ペラルゴン酸(n−ノナン酸)、カプリン酸(n−デカン酸)、オレイン酸(cis−9−オクタデセン酸)、イソペンタン酸(3−メチルブタン酸)、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸が好ましく用いられる。
【0048】
なお、本発明にかかるポリオールエステルは、2個以上のエステル基を有する限りにおいて、ポリオールが有する水酸基のうちの一部がエステル化されずに残っている部分エステルであってもよく、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであってもよく、さらには部分エステルと完全エステルの混合物であってもよいが、完全エステルであることが好ましい。
【0049】
コンプレックスエステルとは、脂肪酸及び二塩基酸と、一価アルコール及びポリオールとのエステルのことであり、脂肪酸、二塩基酸、一価アルコール、ポリオールとしては、上記二塩基酸エステル及びポリオールエステルの説明において例示された脂肪酸、二塩基酸、一価アルコール及びポリオールが使用できる。
【0050】
また、炭酸エステルとは、分子内に下記式(1):
【0051】
−O−CO−O− (1)
で表される炭酸エステル結合を有する化合物である。なお、上記式(1)で表される炭酸エステル結合の個数は一分子当たり1個でもよく2個以上でもよい。
【0052】
炭酸エステルを構成するアルコールとしては、上記二塩基酸エステル及びポリオールエステルの説明において例示された一価アルコール、ポリオール等、並びにポリグリコールやポリオールにポリグリコールを付加させたものを使用することができる。また、炭酸と脂肪酸及び/又は二塩基酸とから得られる化合物を使用してもよい。
【0053】
また、当然のことながら、エステルを用いる場合は、単一の構造の化合物を単独で用いてもよく、構造の異なる化合物の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
上記のエステルの中でも、冷媒との相溶性に優れることから、二塩基酸エステル、ポリオールエステル及び炭酸エステルが好ましい。
【0055】
さらには、二塩基酸エステルの中でも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸エステルは、冷媒との相溶性及び熱・加水分解安定性の点からより好ましい。
【0056】
本発明において好ましく用いられる二塩基酸エステルの具体例としては、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール及びノナノールからなる群より選ばれる少なくとも1種の一価アルコールと、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の二塩基酸とから得られる二塩基酸エステル、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0057】
本発明にかかる二塩基酸エステルにおいては、冷凍機油組成物の低温特性や冷媒との相溶性が向上する傾向にあることから、当該二塩基酸エステルを構成する一価アルコールが2種以上であることが好ましい。なお、2種以上の一価アルコールから構成される二塩基酸エステルとは、二塩基酸と1種のアルコールとのエステルの2種以上の混合物、並びに二塩基酸と2種以上の混合アルコールとのエステルを包含するものである。
【0058】
また、ポリオールエステルの中でも、より加水分解安定性に優れることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)等のヒンダードアルコールのエステルがより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン及びペンタエリスリトールのエステルがさらに好ましく、冷媒との相溶性及び加水分解安定性に特に優れることからペンタエリスリトールのエステルが最も好ましい。
【0059】
本発明において好ましく用いられるポリオールエステルの具体例としては、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸と、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン及びペンタエリスリトールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコールとから得られるジエステル、トリエステル、テトラエステル及びこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
本発明にかかるポリオールエステルにおいては、冷凍機油組成物の低温特性や冷媒との相溶性が向上する傾向にあることから、ポリオールエステルを構成する脂肪酸が2種以上であることが好ましい。なお、2種以上の脂肪酸で構成されるポリオールエステルとは、ポリオールと1種の脂肪酸とのエステルの2種以上の混合物、並びにポリオールと2種以上の混合脂肪酸とのエステルを包含するものである。
【0061】
また、炭酸エステルの中でも、下記一般式(2):
(XO)−B−[O−(AO)−CO−O−(AO)−Y(2)
[式(2)中、Xは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は下記一般式(3):
【0062】
−(OA−(3)
(式(3)中、Yは水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、eは1〜50の整数を示す)
で表される基を表し、A及びAは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Yは水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、Bは水酸基3〜20個を有する化合物の残基を表し、aは1〜20、bは0〜19で且つa+bが3〜20となる整数を表し、cは0〜50の整数を表し、dは1〜50の整数を表す]
で表される構造を有するものが好ましい。
【0063】
上記式(2)において、Xは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は上記式(3)で表される基を表す。ここでいうアルキル基の炭素数は特に制限されないが、通常1〜24、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜12である。また、当該アルキル基は直鎖状、分枝状のいずれであってもよい。
【0064】
炭素数1〜24のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖又は分枝ペンチル基、直鎖又は分枝ヘキシル基、直鎖又は分枝ヘプチル基、直鎖又は分枝オクチル基、直鎖又は分枝ノニル基、直鎖又は分枝デシル基、直鎖又は分枝ウンデシル基、直鎖又は分枝ドデシル基、直鎖又は分枝トリデシル基、直鎖又は分枝テトラデシル基、直鎖又は分枝ペンタデシル基、直鎖又は分枝ヘキサデシル基、直鎖又は分枝ヘプタデシル基、直鎖又は分枝オクタデシル基、直鎖又は分枝ノナデシル基、直鎖又は分枝イコシル基、直鎖又は分枝ヘンイコシル基、直鎖又は分枝ドコシル基、直鎖又は分枝トリコシル基、直鎖又は分枝テトラコシル基等が挙げられる。
【0065】
また、シクロアルキル基としては、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などが挙げられる。
【0066】
上記式(2)においてAで表される炭素数2〜4のアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基等が挙げられる。
【0067】
上記式(2)におけるYは、水素原子、アルキル基又はシクロアルキルキル基を表す。ここでいうアルキル基の炭素数は特に制限されないが、通常1〜24、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜12である。また、当該アルキル基は直鎖状、分枝状のいずれであってもよい。炭素数1〜24のアルキル基としては、上記Xの説明において例示されたアルキル基が挙げられる。
【0068】
また、シクロアルキル基としては、具体的には例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などが挙げられる。
【0069】
上記Yで表される基の中でも、水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、iso−ヘプチル基、
n−オクチル基、iso−オクチル基、n−ノニル基、iso−ノニル基、n−デシル基、iso−デシル基、n−ウンデシル基、iso−ウンデシル基、n−ドデシル基又はiso−ドデシル基のうちのいずれかであることがより好ましい。また、eは1〜50の整数を表す。
【0070】
また、Xで表される基としては、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は上記一般式(3)で表される基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、iso−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、n−ノニル基、iso−ノニル基、n−デシル基、iso−デシル基、n−ウンデシル基、iso−ウンデシル基、n−ドデシル基、iso−ドデシル基又は一般式(3)で表される基のうちのいずれかであることがより好ましい。
【0071】
Bを残基とし3〜20個の水酸基を有する化合物としては、具体的には、前述のポリオールが挙げられる。
【0072】
また、A及びAは同一でも異なっていても良く、それぞれ炭素数2〜4のアルキレン基を表す。当該アルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基等が挙げられる。
【0073】
また、Yは、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。ここでいうアルキル基の炭素数は特に制限されないが、通常1〜24、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜12である。また、当該アルキル基は直鎖状、分枝状のいずれであってもよい。炭素数1〜24のアルキル基としては、具体的には、Xの説明において例示されたアルキル基が挙げられる。
【0074】
また、シクロアルキル基としては、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
【0075】
これらの中でもYで表される基としては、水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、iso−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、n−ノニル基、iso−ノニル基、n−デシル基、iso−デシル基、n−ウンデシル基、iso−ウンデシル基、n−ドデシル基又はiso−ドデシル基のうちのいずれかであることがより好ましい。
【0076】
上記式(2)及び(3)において、c、d及びeはポリオキシアルキレン鎖の重合度を表すが、分子中のポリオキシアルキレン鎖は同一でも異なっていてもよい。また、上記式(2)で表される炭酸エステルが複数の異なるポリオキシアルキレン鎖を有する場合、オキシアルキレン基の重合形式に特に制限はなく、ランダム共重合していてもブロック共重合していてもよい。
【0077】
本発明に用いられる炭酸エステルの製造法は任意であるが、例えば、ポリオール化合物にアルキレンオキサイドを付加せしめてポリアルキレングリコールポリオールエーテルを製造し、これとクロロフォーメートとを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、あるいは金属ナトリウム等のアルカリの存在下、0〜30℃で反応せしめることにより得られる。あるいはポリアルキレングリコールポリオールエーテルに、炭酸ジエステル、ホスゲン等の炭酸の供給源を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド又は金属ナトリウム等のアルカリの存在下、80〜150℃で反応せしめることにより得られる。この後、必要に応じて遊離の水酸基をエーテル化せしめる。
【0078】
上記の原料より得られた生成物を精製して副生成物や未反応物を除去してもよいが、少量の副生成物や未反応物は、本発明の潤滑油の優れた性能を損なわない限り、存在していても支障はない。
【0079】
本発明において炭酸エステルを用いる場合は、単一の構造の化合物を単独で用いてもよく、構造の異なる化合物の2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明にかかる炭酸エステルの分子量は特に限定されるものではないが、圧縮機の密閉性をより向上させる点から、数平均分子量が200〜4000であることが好ましく、300〜3000であることがより好ましい。さらに、本発明にかかる炭酸エステルの動粘度は、100℃において好ましくは2〜150mm/s、より好ましくは4〜100mm/sである。
【0080】
本発明の潤滑油に使用されるポリオキシアルキレングリコールとしては、例えば下記一般式(4):
【0081】
−〔(OR−OR(4)
[式(4)中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアシル基又は水酸基を2〜8個有する化合物の残基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアシル基を表し、fは1〜80の整数を表し、gは1〜8の整数を表す]
で表される化合物が挙げられる。
【0082】
上記一般式(4)において、R、Rで表されるアルキル基は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、直鎖状又は分枝状のブチル基、直鎖状又は分枝状のペンチル基、直鎖状又は分枝状のヘキシル基、直鎖状又は分枝状のヘプチル基、直鎖状又は分枝状のオクチル基、直鎖状又は分枝状のノニル基、直鎖状又は分枝状のデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。このアルキル基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、相分離が起こりやすくなる傾向にある。好ましいアルキル基の炭素数は1〜6である。
【0083】
また、R、Rで表されるアシル基のアルキル基部分は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アシル基のアルキル基部分の具体例としては、上記アルキル基の具体例として例示されたアルキル基のうち炭素数1〜9のものが挙げられる。このアシル基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、相分離を生じる場合がある。好ましいアシル基の炭素数は2〜6である。
【0084】
、Rで表される基が、ともにアルキル基である場合、あるいはともにアシル基である場合、R、Rで表される基は同一でも異なっていてもよい。さらにgが2以上の場合は、同一分子中の複数のR、Rで表される基は同一でも異なっていてもよい。
【0085】
で表される基が水酸基を2〜8個有する化合物の残基である場合、この化合物は鎖状のものであってもよいし、環状のものであってもよい。水酸基を2個有する化合物としては、具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
【0086】
また、水酸基を3〜8個有する化合物としては、具体的には、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜6量体)、1,3,5−ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトース等の糖類、並びにこれらの部分エーテル化物、及びメチルグルコシド(配糖体)等が挙げられる。
【0087】
上記一般式(4)で表されるポリオキシアルキレングリコールの中でも、R、Rのうちの少なくとも1つがアルキル基(より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)であることが好ましく、特にメチル基であることが冷媒相溶性の点から好ましい。さらには、熱・化学安定性の点から、RとRとの双方がアルキル基(より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)であることが好ましく、とりわけ双方がメチル基であることが好ましい。また、製造容易性及びコストの点から、R又はRのいずれか一方がアルキル基(より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)であり、他方が水素原子であることが好ましく、とりわけ一方がメチル基であり、他方が水素原子であることが好ましい。
【0088】
上記一般式(4)中のRは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、このようなアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。また、ORで表される繰り返し単位のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。同一分子中のオキシアルキレン基は同一であってもよく、また、2種以上のオキシアルキレン基が含まれていてもよい。
【0089】
上記一般式(4)で表されるポリオキシアルキレングリコールの中でも、冷媒相溶性及び粘度−温度特性の観点からは、オキシエチレン基(EO)とオキシプロピレン基(PO)とを含む共重合体が好ましく、このような場合、焼付荷重、粘度−温度特性の点から、オキシエチレン基とオキシプロピレン基との総和に占めるオキシエチレン基の割合(EO/(PO+EO))が0.1〜0.8の範囲にあることが好ましく、0.3〜0.6の範囲にあることがより好ましい。
【0090】
また、吸湿性や熱酸化安定性の点ではEO/(PO+EO)の値が0〜0.5の範囲にあることが好ましく、0〜0.2の範囲にあることがより好ましく、0(すなわちプロピレンオキサイド単独重合体)であることが最も好ましい。
【0091】
上記一般式(4)中のfは1〜80の整数、gは1〜8の整数である。例えばRがアルキル基又はアシル基である場合、gは1である。また、Rが水酸基を2〜8個有する化合物の残基である場合、gは当該化合物が有する水酸基の数となる。
【0092】
また、fとgとの積(f×g)については特に制限されないが、前記した冷凍機用潤滑油としての要求性能をバランスよく満たすためには、f×gの平均値が6〜80となるようにすることが好ましい。
【0093】
上記の構成を有するポリオキシアルキレングリコールの中でも、下記一般式(5):
【0094】
CHO−(CO)−CH(5)
(式中、hは6〜80の数を表す)
で表されるポリオキシプロピレングリコールジメチルエーテル、並びに下記一般式(6):
【0095】
CHO−(CO)−(CO)−CH(6)
(式中、i及びjはそれぞれ1以上であり且つiとjとの合計が6〜80となる数を表す)
で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジメチルエーテルが経済性及び前述の効果の点で好適であり、また、下記一般式(7):
【0096】
O−(CO)−H(7)
(式中、kは6〜80の数を示す)
で表されるポリオキシプロピレングリコールモノブチルエーテル、さらには下記一般式(8):
【0097】
CHO−(CO)−H(8)
(式中、lは6〜80の数を表す)
で表されるポリオキシプロピレングリコールモノメチルエーテル、下記一般式(9):
【0098】
CHO−(CO)−(CO)−H(9)
(式中、m及びnはそれぞれ1以上であり且つmとnとの合計が6〜80となる数を表す)
で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールモノメチルエーテル、下記一般式(10):
【0099】
O−(CO)−(CO)−H(10)
(式中、m及びnはそれぞれ1以上であり且つmとnとの合計が6〜80となる数を表す)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールモノブチルエーテル、下記一般式(11):
【0100】
CHCOO−(CO)−COCH(11)
(式中、lは6〜80の数を表す)
で表されるポリオキシプロピレングリコールジアセテートが、経済性等の点で好適である。
【0101】
また、本発明においては、上記ポリオキシアルキレングリコールとして、一般式(12):
【化1】

[式(12)中、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜10の一価の炭化水素基又は下記一般式(13):
【化2】

(式(13)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜10の一価の炭化水素基又は炭素数2〜20のアルコキシアルキル基を表し、R10は炭素数2〜5のアルキレン基、アルキル基を置換基として有する総炭素数2〜5の置換アルキレン基又はアルコキシアルキル基を置換基として有する総炭素数4〜10の置換アルキレン基を表し、rは0〜20の整数を表し、R13は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す)
で表される基を表し、R〜R11の少なくとも1つが一般式(13)で表される基である]
で表される構成単位を少なくとも1個有するポリオキシアルキレングリコール誘導体を使用することができる。
【0102】
上記式(12)中、R〜Rはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10の一価の炭化水素基又は上記一般式(13)で表される基を表すが、炭素数1〜10の一価の炭化水素基としては、具体的には、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数2〜10の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基又はアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又はアルキルアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基等があげられる。これらの一価の炭化水素基の中でも、炭素数6以下の一価の炭化水素基、特に炭素数3以下のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
【0103】
また、上記一般式(13)において、R及びRはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10の一価の炭化水素基又は炭素数2〜20のアルコキシアルキル基を表すが、これらの中でも炭素数3以下のアルキル基又は炭素数6以下のアルコキシアルキル基が好ましい。炭素数3以下のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。また、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基としては、具体的には、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、イソブトキシメチル基、sec−ブトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、ペントキシメチル基(すべての異性体を含む)、メトキシエチル基(すべての異性体を含む)、エトキシエチル基(すべての異性体を含む)、プロポキシエチル基(すべての異性体を含む)、ブトキシエチル基(すべての異性体を含む)、メトキシプロピル基(すべての異性体を含む)、エトキシプロピル基(すべての異性体を含む)、プロポキシプロピル基(すべての異性体を含む)、メトキシブチル基(すべての異性体を含む)、エトキシブチル基(すべての異性体を含む)、メトキシペンチル基(すべての異性体を含む)等が挙げられる。
【0104】
上記一般式(13)中、R10は炭素数2〜5のアルキレン基、アルキル基を置換基として有する総炭素数2〜5の置換アルキレン基又はアルコキシアルキル基を置換基として有する総炭素数4〜10の置換アルキレン基、好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基及び総炭素数6以下の置換エチレン基を表す。炭素数2〜4のアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。また、総炭素数6以下の置換エチレン基としては、具体的には1−(メトキシメチル)エチレン基、2−(メトキシメチル)エチレン基、1−(メトキシエチル)エチレン基、2−(メトキシエチル)エチレン基、1−(エトキシメチル)エチレン基、2−(エトキシメチル)エチレン基、1−メトキシメチル−2−メチルエチレン基、1,1−ビス(メトキシメチル)エチレン基、2,2−ビス(メトキシメチル)エチレン基、1,2−ビス(メトキシメチル)エチレン基、1−メチル−2−メトキシメチルエチレン基、1−メトキシメチル−2−メチルエチレン基、1−エチル−2−メトキシメチルエチレン基、1−メトキシメチル−2−エチルエチレン基、1−メチル−2−エトキシメチルエチレン基、1−エトキシメチル−2−メチルエチレン基、1−メチル−2−メトキシエチルエチレン基、1−メトキシエチル−2−メチルエチレン基等が挙げられる。
【0105】
上記一般式(13)中、R11は炭素数の1〜10の一価の炭化水素基を表すが、当該炭化水素基としては、具体的には、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数2〜10の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基又はアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又はアルキルアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数6以下の一価の炭化水素基が好ましく、特に炭素数3以下のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
【0106】
上記一般式(12)中、R〜Rのうち少なくとも1つは上記一般式(13)で表される基である。特に、R又はRはのいずれか一つが上記一般式(13)で表される基であり、且つR又はRの残りの一つ及びR、Rがそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基であることが好ましい。
【0107】
本発明において好ましく用いられる、上記一般式(12)で表される構成単位を有するポリオキシアルキレングリコールは、一般式(12)で表される構成単位のみからなる単独重合体;一般式(12)で表され且つ構造の異なる2種以上の構成単位からなる共重合体、並びに一般式(12)で表される構成単位と他の構成単位、例えば下記一般式(14):
【化3】

[式(14)中、R12〜R13は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す]
で表される構成単位からなる共重合体の三種類に大別することができる。上記単独重合体の好適例は、一般式(12)で表される構成単位Aを1〜200個有するとともに、末端基がそれぞれ水酸基、炭素数1〜10のアシルオキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基あるいはアリーロキシ基からなるものを挙げることができる。一方、共重合体の好適例は、一般式(12)で表される二種類の構成単位A、Bをそれぞれ1〜200個有するか、あるいは一般式(12)で表される構成単位Aを1〜200個と一般式(12)で表される構成単位Cを1〜200個有するとともに、末端基がそれぞれ水酸基、炭素数1〜10のアシルオキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基あるいはアリーロキシ基からなるものを挙げることができる。これらの共重合体は、構成単位Aと構成単位B(あるいは構成単位C)との交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合体あるいは構成単位Aの主鎖に構成単位Bがグラフト結合したグラフト共重合体のいずれの重合形式であってもよい。
【0108】
また、本発明において用いられるポリビニルエーテルとしては、例えば下記一般式(15):
【化4】

[式(15)中、R16〜R18は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R19は炭素数1〜10の2価の炭化水素基又は炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表し、R20は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、sはその平均値が0〜10の数を表し、R16〜R20は構成単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよく、また一般式(15)で表される構成単位が複数のR19Oを有するとき、複数のR19Oは同一でも異なっていてもよい]
で表される構成単位を有するポリビニルエーテル系化合物が挙げられる。
【0109】
また、上記一般式(15)で表される構成単位と、下記一般式(16):
【化5】

[式(16)中、R21〜R24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R21〜R24は構成単位毎に同一でも異なっていてもよい]
で表される構成単位とを有するブロック共重合体又はランダム共重合体からなるポリビニルエーテル系化合物も使用することができる。
【0110】
上記一般式(15)中のR16〜R18はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基(好ましくは1〜4の炭化水素基)を表し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。かかる炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基等のアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基等のアリールアルキル基、等が挙げられるが、R22〜R24としては素原子が好ましい。
【0111】
一方、上記一般式(15)中のR19は、炭素数1〜10(好ましくは2〜10)の2価の炭化水素基又は炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表す。炭素数1〜10の2価の炭化水素基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、フェニルエチレン基、1,2−プロピレン基、2−フェニル−1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種ヘプチレン基、各種オクチレン基、各種ノニレン基、各種デシレン基等の2価の脂肪族鎖式炭化水素基;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素に2個の結合部位を有する脂環式炭化水素基;各種フェニレン基、各種メチルフェニレン基、各種エチルフェニレン基、各種ジメチルフェニレン基、各種ナフチレン基等の2価の芳香族炭化水素基;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等のアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分と芳香族部分にそれぞれ一価の結合部位を有するアルキル芳香族炭化水素基;キシレン、ジエチルベンゼン等のポリアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分に結合部位を有するアルキル芳香族炭化水素基、等が挙げられる。これらの中でも炭素数2〜4の脂肪族鎖式炭化水素基が特に好ましい。
【0112】
また、炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基の具体例としては、メトキシメチレン基、メトキシエチレン基、メトキシメチルエチレン基、1,1−ビスメトキシメチルエチレン基、1,2−ビスメトキシメチルエチレン基、エトキシメチルエチレン基、(2−メトキシエトキシ)メチルエチレン基、(1−メチル−2−メトキシ)メチルエチレン基等を好ましく挙げることができる。なお、上記一般式(15)中のsはR19Oの繰り返し数を表し、その平均値が0〜10、好ましくは0〜5の範囲の数である。同一の構成単位内にR19Oが複数ある場合には、複数のR19Oは同一でも異なっていてもよい。
【0113】
さらに、上記一般式(15)におけるR20は炭素数1〜20、好ましくは1〜10の炭化水素基を表すが、かかる炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種プロピルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種プロピルフェニル基、各種トリメチルフェニル基、各種ブチルフェニル基、各種ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基、各種フェニルプロピル基、各種フェニルブチル基等のアリールアルキル基、等が挙げられる。なお、R22〜R26は構成単位毎に同一であっても異なっていてもよい。
【0114】
本発明にかかるポリビニルエーテルが上記一般式(15)で表される構成単位のみからなる単独重合体である場合、その炭素/酸素モル比は4.2〜7.0の範囲にあるものが好ましい。当該モル比が4.2未満であると吸湿性が過剰に高くなり、また、7.0を超えると冷媒との相溶性が低下する傾向にある。
【0115】
上記一般式(16)において、R21〜R24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、上記一般式(15)中のR20の説明において例示された炭化水素基が挙げられる。なお、R21〜R24は構成単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよい。
【0116】
本発明にかかるポリビニルエーテルが一般式(15)で表される構成単位と一般式(16)で表される構成単位とを有するブロック共重合体又はランダム共重合体である場合、その炭素/酸素モル比は4.2〜7.0の範囲にあることが好ましい。当該モル比が4.2未満であると吸湿性が過剰に高くなり、また、7.0を超えると冷媒との相溶性が低下する傾向にある。
【0117】
さらに本発明においては、上記一般式(15)で表される構成単位のみからなる単独重合体と、上記一般式(15)で表される構成単位と上記一般式(16)で表される構成単位とからなるブロック共重合体又はランダム共重合体と、の混合物も使用することができる。これらの単独重合体及び共重合体は、それぞれ対応するビニルエーテル系モノマーの重合、及び対応するオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーと対応するビニルエーテル系モノマーとの共重合により製造することができる。
【0118】
本発明に用いられるポリビニルエーテルとしては、その末端構造のうちの一方が、下記一般式(17)又は(18):
【化6】

[式(17)中、R25〜R27は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R28は炭素数1〜10の2価の炭化水素基又は炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表し、R29は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、tはその平均値が0〜10の数を表し、上記一般式(17)で表される末端構造が複数のR28Oを有するとき、複数のR28Oはそれぞれ同一でも異なっていてもよい]
【化7】

[式(18)中、R30〜R31は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す]
で表されるものであり、且つ他方が下記一般式(19)又は(20):
【化8】

[式(19)中、R34〜R36は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R37は炭素数1〜10の2価の炭化水素基又は炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表し、R38は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、tはその平均値が0〜10の数を表し、上記一般式(19)で表される末端構造が複数のR37Oを有するとき、複数のR37Oはそれぞれ同一でも異なっていてもよい]
【化9】

[式(20)中、R39〜R42は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す]
で表される構造を有するもの;及び
その末端の一方が、上記一般式(17)又は(18)で表され、且つ他方が下記一般式(21):
【化10】

[式(21)中、R43〜R45は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す]
で表される構造を有するものが好ましい。このようなポリビニルエーテルの中でも、次に挙げるものが特に好適である。
(1)末端の一方が一般式(17)又は(18)で表され、他方が一般式(19)又は(20)で表される構造を有しており、一般式(15)におけるR16〜R18がいずれも水素原子であり、sが0〜4の数であり、R19が炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、且つR20が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの;
(2)一般式(15)で表される構成単位のみを有するものであって、その末端の一方が一般式(17)で表され、他方が一般式(18)で表される構造を有しており、一般式(15)におけるR16〜R18がいずれも水素原子であり、sが0〜4の数であり、R19が炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、且つR20が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの;
(3)末端の一方が一般式(17)又は(18)で表され、他方が一般式(19)で表される構造を有しており、一般式(15)におけるR16〜R18がいずれも水素原子であり、sが0〜4の数であり、R19が炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、且つR20が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの;
(4)一般式(15)で表される構成単位のみを有するものであって、その末端の一方が一般式(17)で表され、他方が一般式(20)で表される構造を有しており、一般式(15)におけるR16〜R18がいずれも水素原子であり、sが0〜4の数であり、R19が炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、且つR20が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
【0119】
また、本発明においては、上記一般式(15)で表される構成単位を有し、その末端の一方が一般式(17)で表され、かつ他方が下記一般式(22):
【化11】

[式(22)中、R46〜R48は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R49及びR51は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜10の2価の炭化水素基を表し、R50及びR52は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜10の炭化水素基を表し、u及びvは同一でも異なっていてもよく、それぞれその平均値が0〜10の数を表し、上記一般式(22)で表される末端構造が複数のR49O又はR51Oを有するとき、複数のR49O又はR51Oは同一であっても異なっていてもよい]
で表される構造を有するポリビニルエーテル系化合物も使用することができる。
【0120】
さらに、本発明においては、下記一般式(23)又は(24):
【化12】

[式(23)中、R53は炭素数1〜8の炭化水素基を示す]
【化13】

[式(24)中、R54は炭素数1〜8の炭化水素基を示す]
で表される構成単位からなり、かつ重量平均分子量が300〜5,000であって、末端の一方が下記一般式(25)又は(26):
【化14】

[式(25)中、R55は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R56は炭素数1〜8の炭化水素基を示す]
【化15】

[式(26)中、R57は炭素数1〜8の炭化水素基を示す]
で表される構造を有するアルキルビニルエーテルの単独重合物又は共重合物からなるポリビニルエーテル系化合物も使用することができる。
【0121】
本発明においては、上記した鉱油及び合成油からなる群より選ばれる1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、上記の鉱油及び合成油の中でも、HFC系冷媒を使用する場合、カーエアコン等の開放型圧縮機用としてポリオキシアルキレングリコール、エステル、ポリビニルエーテル、冷蔵庫や空調機器等の密閉型圧縮機用としてアルキルベンゼン、エステル、ポリビニルエーテルが好ましく用いられる。
【0122】
(リン系極圧剤)
【0123】
本発明の冷凍機油組成物に含まれるリン系極圧剤としては、フォスフォロチオネート(チオリン酸エステル)、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル及び亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。上記の好ましいリン系極圧剤のうち、フォスフォロチオネート以外のリン系添加剤は、リン酸又は亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
【0124】
本発明にかかるフォスフォロチオネートは、下記一般式(27):
【化16】

[式中、R58〜R60は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜24の炭化水素基を示す]
で表される化合物である。
【0125】
58〜R60で示される炭素数1〜24の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。
【0126】
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)が挙げられる。
【0127】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。また上記アルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である)が挙げられる。
【0128】
アルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)が挙げられる。
【0129】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。また上記アルキルアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である)が挙げられる。
【0130】
アリールアルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)が挙げられる。
【0131】
上記R58〜R60で示される炭素数1〜24の炭化水素基は、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基であることが好ましく、炭素数4〜18のアルキル基、炭素数7〜24のアルキルアリール基、フェニル基がより好ましい。
【0132】
一般式(27)で表されるフォスフォロチオネートとしては、具体的には、トリブチルフォスフォロチオネート、トリペンチルフォスフォロチオネート、トリヘキシルフォスフォロチオネート、トリヘプチルフォスフォロチオネート、トリオクチルフォスフォロチオネート、トリノニルフォスフォロチオネート、トリデシルフォスフォロチオネート、トリウンデシルフォスフォロチオネート、トリドデシルフォスフォロチオネート、トリトリデシルフォスフォロチオネート、トリテトラデシルフォスフォロチオネート、トリペンタデシルフォスフォロチオネート、トリヘキサデシルフォスフォロチオネート、トリヘプタデシルフォスフォロチオネート、トリオクタデシルフォスフォロチオネート、トリオレイルフォスフォロチオネート、トリフェニルフォスフォロチオネート、トリクレジルフォスフォロチオネート、トリキシレニルフォスフォロチオネート、クレジルジフェニルフォスフォロチオネート、キシレニルジフェニルフォスフォロチオネート、トリス(n−プロピルフェニル)フォスフォロチオネート、トリス(イソプロピルフェニル)フォスフォロチオネート、トリス(n−ブチルフェニル)フォスフォロチオネート、トリス(イソブチルフェニル)フォスフォロチオネート、トリス(s−ブチルフェニル)フォスフォロチオネート、トリス(t−ブチルフェニル)フォスフォロチオネート等、が挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
【0133】
フォスフォロチオネートの含有量は特に制限されないが、通常、冷凍機油組成物全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)でその含有量が0.01〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜3質量%である。
【0134】
また、フォスフォロチオネート以外のリン系極圧剤のうち、リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等;
【0135】
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェート等;
【0136】
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン等のアミンとの塩等;
【0137】
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェート等;
【0138】
亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等、が挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
【0139】
フォスフォロチオネート以外のリン系極圧剤を本発明の冷凍機油組成物に配合する場合、その配合量は特に制限されないが、通常、冷凍機油組成物全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)でその含有量が0.01〜5.0質量%、より好ましくは0.02〜3.0質量%となるような量のリン系極圧剤を配合することが望ましい。
【0140】
本発明の冷凍機油組成物においては、上記のリン系極圧剤のうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、より熱安定性に優れる点から、フォスフォロチオネートを用いることが好ましい。
【0141】
更に、リン系極圧剤として、フォスフォロチオネートと該フォスフォロチオネート以外のリン系極圧剤とを組み合わせて用いると、これらのリン系極圧剤同士の相乗作用、及びリン系極圧剤それぞれと油性剤との相乗作用に起因して、本発明による上述の効果をより高水準で得ることができ、特に耐摩耗性を一層向上させることができる。
【0142】
(油性剤)
【0143】
本発明にかかる油性剤としては、エステル油性剤、1価アルコール油性剤、カルボン酸油性剤、エーテル油性剤などが挙げられる。
【0144】
エステル油性剤は、天然物(通常は動植物などに由来する天然油脂に含まれるもの)であっても合成物であってもよい。本発明では、得られる冷凍機油組成物の安定性やエステル成分の均一性などの点から、合成エステルであることが好ましい。
【0145】
エステル油性剤としての合成エステルは、アルコールとカルボン酸とを反応させることにより得られる。アルコールとしては、1価アルコールでも多価アルコールでもよい。また、カルボン酸としては、一塩基酸でも多塩基酸であってもよい。
【0146】
エステル油性剤を構成する一価アルコールとしては、通常炭素数1〜24、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8のものが用いられ、このようなアルコールとしては直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。炭素数1〜24のアルコールとしては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状又は分岐状のプロパノール、直鎖状又は分岐状のブタノール、直鎖状又は分岐状のペンタノール、直鎖状又は分岐状のヘキサノール、直鎖状又は分岐状のヘプタノール、直鎖状又は分岐状のオクタノール、直鎖状又は分岐状のノナノール、直鎖状又は分岐状のデカノール、直鎖状又は分岐状のウンデカノール、直鎖状又は分岐状のドデカノール、直鎖状又は分岐状のトリデカノール、直鎖状又は分岐状のテトラデカノール、直鎖状又は分岐状のペンタデカノール、直鎖状又は分岐状のヘキサデカノール、直鎖状又は分岐状のヘプタデカノール、直鎖状又は分岐状のオクタデカノール、直鎖状又は分岐状のノナデカノール、直鎖状又は分岐状のイコサノール、直鎖状又は分岐状のヘンイコサノール、直鎖状又は分岐状のトリコサノール、直鎖状又は分岐状のテトラコサノール及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0147】
また、エステル油性剤を構成する多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のものが用いられる。2〜10の多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜15量体)、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜8量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜8量体、ペンタエリスリトール及びこれらの2〜4量体、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロース等の糖類、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0148】
これらの多価アルコールの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜10量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜10量体)、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の2〜6価の多価アルコール及びこれらの混合物等が好ましい。さらにより好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、及びこれらの混合物等である。これらの中でも、より高い酸化安定性が得られることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びこれらの混合物等が好ましい。
【0149】
本発明にかかるエステル油性剤を構成するアルコールは、上述したように一価アルコールであっても多価アルコールであってもよいが、リン系極圧剤と併用した場合に耐摩耗性及び摩擦特性がより高められる点、冷媒雰囲気下及び低温下での析出防止性の点などから、一価アルコールであることが好ましい。
【0150】
また、本発明にかかるエステル油性剤を構成する酸のうち、一塩基酸としては、通常炭素数2〜24の脂肪酸が用いられ、その脂肪酸は直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、直鎖状又は分岐状のブタン酸、直鎖状又は分岐状のペンタン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタン酸、直鎖状又は分岐状のオクタン酸、直鎖状又は分岐状のノナン酸、直鎖状又は分岐状のデカン酸、直鎖状又は分岐状のウンデカン酸、直鎖状又は分岐状のドデカン酸、直鎖状又は分岐状のトリデカン酸、直鎖状又は分岐状のテトラデカン酸、直鎖状又は分岐状のペンタデカン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデカン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデカン酸、直鎖状又は分岐状のオクタデカン酸、直鎖状又は分岐状のヒドロキシオクタデカン酸、直鎖状又は分岐状のノナデカン酸、直鎖状又は分岐状のイコサン酸、直鎖状又は分岐状のヘンイコサン酸、直鎖状又は分岐状のドコサン酸、直鎖状又は分岐状のトリコサン酸、直鎖状又は分岐状のテトラコサン酸等の飽和脂肪酸、アクリル酸、直鎖状又は分岐状のブテン酸、直鎖状又は分岐状のペンテン酸、直鎖状又は分岐状のヘキセン酸、直鎖状又は分岐状のヘプテン酸、直鎖状又は分岐状のオクテン酸、直鎖状又は分岐状のノネン酸、直鎖状又は分岐状のデセン酸、直鎖状又は分岐状のウンデセン酸、直鎖状又は分岐状のドデセン酸、直鎖状又は分岐状のトリデセン酸、直鎖状又は分岐状のテトラデセン酸、直鎖状又は分岐状のペンタデセン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデセン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデセン酸、直鎖状又は分岐状のオクタデセン酸、直鎖状又は分岐状のヒドロキシオクタデセン酸、直鎖状又は分岐状のノナデセン酸、直鎖状又は分岐状のイコセン酸、直鎖状又は分岐状のヘンイコセン酸、直鎖状又は分岐状のドコセン酸、直鎖状又は分岐状のトリコセン酸、直鎖状又は分岐状のテトラコセン酸等の不飽和脂肪酸、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0151】
多塩基酸としては、二塩基酸、トリメリット酸等が挙げられるが、冷媒雰囲気下及び低温下での析出防止性の点から、二塩基酸であることが好ましい。二塩基酸は鎖状二塩基酸、環状二塩基酸のいずれであってもよい。また、鎖状二塩基酸の場合、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、また、飽和、不飽和のいずれであってもよい。鎖状二塩基酸としては、炭素数2〜16の鎖状二塩基酸が好ましく、具体的には例えば、エタン二酸、プロパン二酸、直鎖状又は分岐状のブタン二酸、直鎖状又は分岐状のペンタン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタン二酸、直鎖状又は分岐状のオクタン二酸、直鎖状又は分岐状のノナン二酸、直鎖状又は分岐状のデカン二酸、直鎖状又は分岐状のウンデカン二酸、直鎖状又は分岐状のドデカン二酸、直鎖状又は分岐状のトリデカン二酸、直鎖状又は分岐状のテトラデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプテン二酸、直鎖状又は分岐状のオクテン二酸、直鎖状又は分岐状のノネン二酸、直鎖状又は分岐状のデセン二酸、直鎖状又は分岐状のウンデセン二酸、直鎖状又は分岐状のドデセン二酸、直鎖状又は分岐状のトリデセン二酸、直鎖状又は分岐状のテトラデセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデセン二酸及びこれらの混合物等が挙げられる。また、環状二塩基酸としては、1、2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、安定性の点から、鎖状二塩基酸が好ましい。
【0152】
エステル油性剤を構成する酸としては、上述したように一塩基酸であっても多塩基酸であってもよいが、耐摩耗性及び摩擦特性の向上効果がより優れる点から、一塩基酸が好ましい。
【0153】
エステル油性剤におけるアルコールと酸との組み合わせは任意であって特に制限されないが、例えば下記(i)〜(vii)の組み合わせによるエステルを挙げることができる。
【0154】
(i)一価アルコールと一塩基酸とのエステル
【0155】
(ii)多価アルコールと一塩基酸とのエステル
【0156】
(iii)一価アルコールと多塩基酸とのエステル
【0157】
(iv)多価アルコールと多塩基酸とのエステル
【0158】
(v)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と多塩基酸との混合エステル
【0159】
(vi)多価アルコールと一塩基酸、多塩基酸との混合物との混合エステル
【0160】
(vii)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と一塩基酸、多塩基酸との混合エステル。
【0161】
上記(ii)〜(vii)のエステルのそれぞれは、多価アルコールの水酸基又は多塩基酸のカルボキシル基の全てがエステル化された完全エステルであってもよく、また、一部が水酸基又はカルボキシル基として残存する部分エステルであってもよいが、冷媒雰囲気下及び低温下での析出防止性への影響がより小さい点からは完全エステルであることが好ましく、また、摩擦特性の向上効果の点からは部分エステルであることが好ましい。
【0162】
上記(i)〜(vii)のエステルの中でも、(i)一価アルコールと一塩基酸とのエステル、(iii)一価アルコールと多塩基酸とのエステルが好ましく、(i)のエステルがより好ましい。これらのエステルは、耐摩耗性及び摩擦特性の向上効果が非常に高く、また、冷媒雰囲気下及び低温下での析出防止性や熱・酸化安定性に及ぼす影響も小さいものである。
【0163】
また、上記(i)のエステルにおいて、一塩基酸の炭素数は、リン系極圧剤と併用したときの耐摩耗性及び摩擦特性がより向上する点、並びに熱・酸化安定性の点から、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、さらに好ましくは14以上である。また、一塩基酸の炭素数は、冷媒雰囲気下及び低温下での析出防止性の点から、好ましくは28以下、より好ましくは26以下、さらに好ましくは24以下である。このようなエステルとしては、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸イソプロピルなどが挙げられる。
【0164】
また、上記(i)のエステルを構成する一塩基酸及び一価アルコールはそれぞれ直鎖又は分岐のいずれであってもよいが、摩擦特性の点から、直鎖の一塩基酸のエステルであることが好ましい。
【0165】
また、上記(iii)のエステルにおいて、二塩基酸は鎖状であることが好ましい。このようなエステルとしては、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソブチルアジペートなどが挙げられる。
【0166】
本発明の冷凍機油組成物はエステルを基油として含有する場合があるが、基油としてのエステルがポリオールエステル及び脂肪族環式二塩基酸のジエステルから選ばれる少なくとも1種であり、エステル油性剤が一価アルコールと一塩基酸とのエステル及び鎖状二塩基酸と一価アルコールとのエステルから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0167】
1価アルコール油性剤としては、上記エステル油性剤の説明において例示された1価アルコールが挙げられる。1価アルコール油性剤の合計炭素数は、摩擦特性及び摩耗特性の向上の点から、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上が最も好ましい。また、合計炭素数が大き過ぎると冷媒雰囲気下で析出しやすくなる恐れがあることから、合計炭素数は20以下が好ましく、18以下がより好ましく、16以下が最も好ましい。
【0168】
カルボン酸油性剤としては、一塩基酸でも多塩基酸でもよい。このようなカルボン酸としては、例えば、エステル油性剤の説明において例示された一塩基酸及び多塩基酸が挙げられる。これらの中では、摩擦特性及び摩耗特性の向上の点から一塩基酸が好ましい。また、カルボン酸油性剤の合計炭素数は、摩擦特性及び摩耗特性の向上の点から、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上が最も好ましい。また、カルボン酸油性剤の合計炭素数が大き過ぎると冷媒雰囲気下で析出しやすくなる恐れがあることから、合計炭素数は20以下が好ましく、18以下がより好ましく、16以下が最も好ましい。
【0169】
エーテル油性剤としては、3〜6価の脂肪族多価アルコールのエーテル化物、3〜6価の脂肪族多価アルコールの二分子縮合物又は三分子縮合物のエーテル化物などが挙げられる。
【0170】
3〜6価の脂肪族多価アルコールのエーテル化物は、例えば、下記一般式(28)〜(33)で表される。
【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

[式中、R61〜R85は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、アリル基、アラルキル基、−(RO)−R(Rは炭素数2〜6のアルキレン基、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリル基、アラルキル基、nは1〜10の整数を示す)で示されるグリコールエーテル残基を示す。]
【0171】
3〜6価の脂肪族多価アルコールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、ソルビトール、マンニトールなどが挙げられる。上記一般式(28)〜(33)中のR61〜Rと85としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基、フェニル基、ベンジル基などが挙げられる。また、上記エーテル化物は、R61〜R85の一部が水素原子である部分エーテル化物も包含する。
【0172】
3〜6価の脂肪族多価アルコールの二分子縮合物又は三分子縮合物のエーテル化物としては、上記一般式(28)〜(33)で表される化合物のうちの同種又は異種の縮合物が挙げられる。例えば、一般式(28)で表されるアルコールの二分子縮合物及び三分子縮合物のエーテル化物はそれぞれ一般式(34)及び(35)で表される。また、一般式(30)で表されるアルコールの二分子縮合物及び三分子縮合物のエーテル化物はそれぞれ一般式(36)及び(37)で表される。
【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

[式中、R61〜R63及びR71〜R74はそれぞれ式(28)中のR61〜R63及び式(31)中のR71〜R74と同一の定義内容を示す。]
【0173】
3〜6価の脂肪族多価アルコールの二分子縮合物,三分子縮合物の具体例としては、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ジソルビトール、トリグリセリン、トリトリメチロールプロパン、トリペンタエリスリトール、トリソルビトールなどが挙げられる。
【0174】
一般式(28)〜(37)で表されるエーテル油性剤の具体例としては、グリセリンのトリヘキシルエーテル、グリセリンのジメチルオクチルトリエーテル、グリセリンのジ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルトリエーテル、グリセリンのジフェニルオクチルトリエーテル、グリセリンのジ(フェニルオキシイソプロピレン)ドデシルトリエーテル、トリメチロールプロパンのトリヘキシルエーテル、トリメチロールプロパンのジメチルオクチルトリエーテル、トリメチロールプロパンのジ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルトリエーテル、ペンタエリスリトールのテトラヘキシルエーテル、ペンタエリスリトールのトリメチルオクチルテトラエーテル、ペンタエリスリトールのトリ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルテトラエーテル、ソルビトールのヘキサプロピルエーテル、ソルビトールのテトラメチルオクチルペンタエーテル、ソルビトールのヘキサ(メチルオキシイソプロピレン)エーテル、ジグリセリンのテトラブチルエーテル、ジグリセリンのジメチルジオクチルテトラエーテル、ジグリセリンのトリ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルテトラエーテル、トリグリセリンのペンタエチルエーテル、トリグリセリンのトリメチルジオクチルペンタエーテル、トリグリセリンのテトラ(メチルオキシイソプロピレン)デシルペンタエーテル、ジトリメチロールプロパンのテトラブチルエーテル、ジトリメチロールプロパンのジメチルジオクチルテトラエーテル、ジトリメチロールプロパンのトリ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルテトラエーテル、トリトリメチロールプロパンのペンタエチルエーテル、トリトリメチロールプロパンのトリメチルジオクチルペンタエーテル、トリトリメチロールプロパンのテトラ(メチルオキシイソプロピレン)デシルペンタエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサプロピルエーテル、ジペンタエリスリトールのペンタメチルオクチルヘキサエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサ(メチルオキシイソプロピレン)エーテル、トリペンタエリスリトールのオクタプロピルエーテル、トリペンタエリスリトールのペンタメチルオクチルヘキサエーテル、トリペンタエリスリトールのヘキサ(メチルオキシイソプロピレン)エーテル、ジソルビトールのオクタメチルジオクチルデカエーテル、ジソルビトールのデカ(メチルオキシイソプロピレン)エーテルなどが挙げられる。これらの中でも、グリセリンのジフェニルオクチルトリエーテル、トリメチロールプロパンのジ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルトリエーテル、ペンタエリスリトールのテトラヘキシルエーテル、ソルビトールのヘキサプロピルエーテル、ジグリセリンのジメチルジオクチルテトラエーテル、トリグリセリンのテトラ(メチルオキシイソプロピレン)デシルペンタエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサプロピルエーテル、トリペンタエリスリトールのペンタメチルオクチルヘキサエーテルが好ましい。
【0175】
本発明の冷凍機油組成物においては、リン系極圧剤と併用する限りにおいて、エステル油性剤、1価アルコール油性剤、カルボン酸油性剤及びエーテル油性剤のうちの1種を単独で用いてもよく、又、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの油性剤の中でも、摩擦特性、摩耗特性、析出防止性、及び安定性を高水準でバランスよく達成する点からは、エステル油性剤を必須成分として含有することが好ましい。エステル油性剤は、耐摩耗性及び摩擦特性を高水準で達成可能であるだけでなく、1価アルコール油性剤やエーテル油性剤よりも析出防止性に優れており、また、カルボン酸油性剤よりも安定性に優れている。
【0176】
上記油性剤の含有量は任意であるが、リン系極圧剤との併用による耐摩耗性及び摩擦特性の向上効果に優れる点から、合計組成物全量を基準として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。また、当該含有量は、冷媒雰囲気下及び低温下での析出防止性、並びに冷凍機油組成物の熱・酸化安定性により優れる点から、組成物全量を基準として、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0177】
また、リン系極圧剤と上記油性剤との比率は、質量比で、好ましくは1:10〜10:1、より好ましくは1:5〜5:1、さらに好ましくは1:3〜1:1である。リン系極圧剤と上記油性剤との比率を前記範囲内とすることにより、耐摩耗性及び摩擦特性をさらに向上させることができる。
【0178】
本発明の冷凍機油組成物は、上述のように、所定基油、リン系極圧剤及び油性剤を必須成分として含有するが、後述するベンゾトリアゾール及び/又はその誘導体、エポキシ化合物、さらにはその他の添加剤をさらに含有してもよい。
【0179】
(ベンゾトリアゾール及び/又はその誘導体)
【0180】
本発明の冷凍機油組成物は、ベンゾトリアゾール及び/又はその誘導体をさらに含有することが好ましい。ベンゾトリアゾール及び/又はその誘導体を含有せしめることで、耐摩耗性及び摩擦特性の向上効果をより高めることができる。
【0181】
ベンゾトリアゾールとは、下記式(38)で表される化合物である。
【化27】

【0182】
また、ベンゾトリアゾール誘導体としては、例えば、下記一般式(39)で表されるアルキルベンゾトリアゾールや、一般式(40)で表される(アルキル)アミノアルキルベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【化28】

【化29】

【0183】
上記式(39)中、R86は炭素数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を、好ましくはメチル基又はエチル基を示し、またxは1〜3、好ましくは1又は2の数を示す。R86としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。式(39)で表されるアルキルベンゾトリアゾールとしては、特に酸化防止性に優れるという点から、R86がメチル基又はエチル基であり、xが1又は2である化合物が好ましく、例えば、メチルベンゾトリアゾール(トリルトリアゾール)、ジメチルベンゾトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、エチルメチルベンゾトリアゾール、ジエチルベンゾトリアゾール又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0184】
上記式(40)中、R87は炭素数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基を示し、R88はメチレン基又はエチレン基を示し、R89及びR90は同一でも異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜18の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、好ましくは炭素数1〜12の直鎖状又は分枝状のアルキル基を示し、またyは0〜3、好ましくは0又は1の数を示す。R87としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。R89及びR90としては、例えば、別個に、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖又は分枝のペンチル基、直鎖又は分枝のヘキシル基、直鎖又は分枝のヘプチル基、直鎖又は分枝のオクチル基、直鎖又は分枝のノニル基、直鎖又は分枝のデシル基、直鎖又は分枝のウンデシル基、直鎖又は分枝のドデシル基、直鎖又は分枝のトリデシル基、直鎖又は分枝のテトラデシル基、直鎖又は分枝のペンタデシル基、直鎖又は分枝のヘキサデシル基、直鎖又は分枝のヘプタデシル基、直鎖又は分枝のオクタデシル基等のアルキル基が挙げられる。
【0185】
上記式(40)で表される(アルキル)アミノベンゾトリアゾールとしては、特に酸化防止性に優れるという点から、R87がメチル基であり、yが0又は1であり、R88がメチレン基又はエチレン基であり、R89及びR90が炭素数1〜12の直鎖状又は分枝状のアルキル基であるジアルキルアミノアルキルベンゾトリアゾールやジアルキルアミノアルキルトリルトリアゾール又はこれらの混合物等が好ましく用いられる。これらのジアルキルアミノアルキルベンゾトリアゾールとしては、例えば、ジメチルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジエチルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)プロピルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ブチルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ペンチルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ヘキシルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ヘプチルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)オクチルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ノニルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)デシルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ウンデシルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ドデシルアミノメチルベンゾトリアゾール;ジメチルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジエチルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)プロピルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ブチルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ペンチルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ヘキシルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ヘプチルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)オクチルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ノニルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)デシルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ウンデシルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ドデシルアミノエチルベンゾトリアゾール;ジメチルアミノメチルトリルトリアゾール、ジエチルアミノメチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)プロピルアミノメチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ブチルアミノメチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ペンチルアミノメチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ヘキシルアミノメチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ヘプチルアミノメチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)オクチルアミノメチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ノニルアミノメチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)デシルアミノメチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ウンデシルアミノメチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ドデシルアミノメチルトリルトリアゾール;ジメチルアミノエチルトリルトリアゾール、ジエチルアミノエチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)プロピルアミノエチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ブチルアミノエチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ペンチルアミノエチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ヘキシルアミノエチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ヘプチルアミノエチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)オクチルアミノエチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ノニルアミノエチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)デシルアミノエチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ウンデシルアミノエチルトリルトリアゾール、ジ(直鎖又は分枝)ドデシルアミノエチルトリルトリアゾール;又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0186】
本発明の冷凍機油組成物におけるベンゾトリアゾール及び/又はその誘導体の含有量は任意であるが、組成物全量基準で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上である。0.001質量%未満の場合には、ベンゾトリアゾール及び/又はその誘導体の含有による耐摩耗性及び摩擦特性の向上効果が不十分となるおそれがある。また、ベンゾトリアゾール及び/又はその誘導体の含有量は、組成物全量基準で、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。1.0質量%を超える場合は、含有量に見合うだけの耐摩耗性及び摩擦特性の向上効果が得られず経済的に不利となるおそれがある。
【0187】
(エポキシ化合物)
【0188】
本発明の冷凍機油組成物において、その摩擦特性及び熱・加水分解安定性をさらに改良するために、
(1)フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物
(2)アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物
(3)グリシジルエステル型エポキシ化合物
(4)アリルオキシラン化合物
(5)アルキルオキシラン化合物
(6)脂環式エポキシ化合物
(7)エポキシ化脂肪酸モノエステル
(8)エポキシ化植物油
からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を配合することが好ましい。
【0189】
(1)フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエーテル又はアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1〜13のアルキル基を1〜3個有するものが挙げられ、中でも炭素数4〜10のアルキル基を1個有するもの、例えばn−ブチルフェニルグリシジルエーテル、i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテル等が好ましいものとして例示できる。
【0190】
(2)アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル等が例示できる。
【0191】
(3)グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、具体的には下記一般式(41):
【化30】

(上記式(41)中、Rは炭素数1〜18の炭化水素基を表す)
で表される化合物が挙げられる。
【0192】
上記式(41)中、Rは炭素数1〜18の炭化水素基を表すが、このような炭化水素基としては、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜18のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜18のアルキルアリール基、炭素数7〜18のアリールアルキル基等が挙げられる。この中でも、炭素数5〜15のアルキル基、炭素数2〜15のアルケニル基、フェニル基及び炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルフェニル基が好ましい。
【0193】
グリシジルエステル型エポキシ化合物の中でも、好ましいものとしては、具体的には例えば、グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾエート、グリシジル−tert−ブチルベンゾエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が例示できる。
【0194】
(4)アリルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシスチレン、アルキル−1,2−エポキシスチレン等が例示できる。
【0195】
(5)アルキルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,1,2−エポキシオクタデカン、2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサン等が例示できる。
【0196】
(6)脂環式エポキシ化合物としては、下記一般式(42):
【化31】

で表される化合物のように、エポキシ基を構成する炭素原子が直接脂環式環を構成している化合物が挙げられる。
【0197】
脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルボルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3’−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1’−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサン等が例示できる。
【0198】
(7)エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、具体的には、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と炭素数1〜8のアルコール又はフェノール、アルキルフェノールとのエステル等が例示できる。特にエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニル及びブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
【0199】
(8)エポキシ化植物油としては、具体的には、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物等が例示できる。
【0200】
これらのエポキシ化合物の中でも、より熱・加水分解安定性を向上させることができることから、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルが好ましく、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物がより好ましい。
【0201】
これらのエポキシ化合物を本発明の冷凍機油組成物に配合する場合、その配合量は特に制限されないが、通常、冷凍機油組成物全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)でその含有量が0.1〜5.0質量%、より好ましくは0.2〜2.0質量%となるような量のエポキシ化合物を配合することが望ましい。
【0202】
また、上記エポキシ化合物を2種以上併用してもよいことは勿論である。
【0203】
(その他の添加剤)
【0204】
さらに、本発明における冷凍機油組成物に対して、その性能をさらに高めるため、必要に応じて従来より公知の冷凍機油添加剤、例えばジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール系の酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛等の摩耗防止剤、塩素化パラフィン、硫黄系極圧剤などのリン系極圧剤以外の極圧剤、シリコーン系等の消泡剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤等の添加剤を単独で、又は数種類組み合わせて配合することも可能である。これらの添加剤の合計配合量は特に制限されないが、冷凍機油組成物全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)で好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0205】
本発明の冷凍機油組成物の体積抵抗率は特に限定されないが、1.0×10Ω・cm以上であることが好ましい。特に、密閉型冷凍機に用いる場合には高い電気絶縁性が必要となる傾向にある。なお、ここでいう体積抵抗率とは、JIS C 2101「電気絶縁油試験方法」に準拠して測定した25℃での値[Ω・cm]を意味する。
【0206】
さらに、本発明の冷凍機油組成物の水分含有量は特に限定されないが、冷凍機油組成物全量基準で好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下とすることができる。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、油の熱・加水分解安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
【0207】
さらにまた、本発明の冷凍機油組成物の酸価は特に限定されないが、冷凍機又は配管に用いられている金属への腐食を防止するため、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下とすることができる。なお、ここでいう酸価とは、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」に準拠して測定した値[mgKOH/g]を意味する。
【0208】
さらにまた、本発明の冷凍機油組成物の灰分は特に限定されないが、本発明の冷凍機油組成物の熱・加水分解安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するため、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とすることができる。なお、本発明において、灰分とは、JIS K 2272「原油及び石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」に準拠して測定した値[ppm]を意味する。
【0209】
本発明の冷凍機油組成物を用いる冷凍機に用いられる冷媒は、HFC冷媒、パーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ジメチルエーテル等の非フッ素含有エーテル系冷媒及び二酸化炭素やアンモニア,炭化水素等の自然系冷媒であるが、これらは各々単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0210】
HFC冷媒としては、炭素数1〜3、好ましくは1〜2のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。具体的には例えば、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)等のHFC、又はこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばHFC−32単独;HFC−23単独;HFC−134a単独;HFC−125単独;HFC−134a/HFC−32=60〜80質量%/40〜20質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/60〜30質量%の混合物;HFC−125/HFC−143a=40〜60質量%/60〜40質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/15〜35質量%/5〜40質量%の混合物;HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=35〜55質量%/1〜15質量%/40〜60質量%の混合物等が好ましい例として挙げられる。さらに具体的には、HFC−134a/HFC−32=70/30質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=60/40質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=50/50質量%の混合物(R410A);HFC−32/HFC−125=45/55質量%の混合物(R410B);HFC−125/HFC−143a=50/50質量%の混合物(R507C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=30/10/60質量%の混合物;HFC−32/HFC−125/HFC−134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)等が挙げられる
【0211】
また、自然系冷媒としては二酸化炭素やアンモニア、炭化水素等が挙げられる。ここで、炭化水素冷媒としては、25℃、1気圧で気体のものが好ましく用いられる。具体的には炭素数1〜5、好ましくは1〜4のアルカン、シクロアルカン、アルケン又はこれらの混合物である。具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、シクロプロパン、ブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパン又はこれらの2種以上の混合物等があげられる。これらの中でも、プロパン、ブタン、イソブタン又はこれらの混合物が好ましい。
【0212】
本発明の冷凍機油組成物は、通常、冷凍機中においては上述したような冷媒と混合された冷凍機用流体組成物の形で存在している。この流体組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合は特に制限されないが、冷媒100重量部に対して冷凍機油が好ましくは1〜500重量部、より好ましくは2〜400重量部である。
【0213】
本発明の冷凍機油組成物は、潤滑性、冷媒相溶性、低温流動性、安定性などの要求性能全てをバランスよく十分に満足させるものであり、往復動式あるいは回転式の開放型や半密閉型又は密閉型圧縮機を有する冷凍機器あるいはヒートポンプなどに好適に使用することができる。特に、アルミニウム系部材を用いた冷凍機器に用いた場合には、アルミニウム系部材の摩耗防止性と熱・化学的安定性との双方を高水準で両立することが可能となる。かかる冷凍機器として、より具体的には、自動車用エアコン、除湿器、冷蔵庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラントなどの冷却装置、住宅用エアコン、パッケージエアコン、給湯用ヒートポンプ等が挙げられる。さらに、本発明の冷凍機油組成物は、往復動式、回転式、遠心式等のいずれの形式の圧縮機にも使用可能である。
【0214】
本発明の冷凍機油組成物を好適に用いることのできる冷媒循環システムの構成としては、代表的には、冷媒圧縮機、凝縮器、膨張機構、蒸発器がこの順でそれぞれ流路を介して接続されており、必要に応じて該流路中に乾燥器を具備するものが例示される。
【0215】
冷媒圧縮機としては、冷凍機油を貯留する密閉容器内に回転子と固定子からなるモータと、回転子に嵌着された回転軸と、この回転軸を介して、モータに連結された圧縮機部とを収納し、圧縮機部より吐出された高圧冷媒ガスが密閉容器内に滞留する高圧容器方式の圧縮機、冷凍機油を貯留する密閉容器内に回転子と固定子からなるモータと、回転子に嵌着された回転軸と、この回転軸を介して、モータに連結された圧縮機部とを収納し、圧縮機部より吐出された高圧冷媒ガスが密閉容器外へ直接排出される低圧容器方式の圧縮機、等が例示される。
【0216】
モータ部の電機絶縁システム材料である絶縁フィルムとしては、ガラス転移点50℃以上の結晶性プラスチックフィルム、具体的には例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドイミド、ポリイミド群から選ばれる少なくとも一種の絶縁フィルム、あるいはガラス転移温度の低いフィルム上にガラス転移温度の高い樹脂層を被覆した複合フィルムが、引っ張り強度特性、電気絶縁特性の劣化現象が生じにくく、好ましく用いられる。また、モータ部に使用されるマグネットワイヤとしては、ガラス転移温度120℃以上のエナメル被覆、例えば、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミド及びポリアミドイミド等の単一層、あるいはガラス転移温度の低い層を下層に、高い層を上層に複合被覆したエナメル被覆を有するものが好ましく用いられる。複合被覆したエナメル線としては、ポリエステルイミドを下層に、ポリアミドイミドを上層に被覆したもの(AI/EI)、ポリエステルを下層に、ポリアミドイミドを上層に被覆したもの(AI/PE)等が挙げられる。
【0217】
乾燥器に充填する乾燥剤としては、細孔径3.3オングストローム以下、25℃の炭酸ガス分圧250mmHgにおける炭酸ガス吸収容量が、1.0%以下であるケイ酸、アルミン酸アルカリ金属複合塩よりなる合成ゼオライトが好ましく用いられる。具体的には例えば、ユニオン昭和(株)製の商品名XH−9,XH−10,XH−11,XH−600等が挙げられる。
【実施例1】
【0218】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0219】
[実施例1〜125、比較例1〜52]
実施例1〜125及び比較例1〜52においては、それぞれ以下に示す基油及び添加剤を用いて、表1〜20に示す組成を有する冷凍機油組成物を調製した。
【0220】
(基油)
基油1:ペンタエリスリトールと2−エチルヘキサン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸の等モル混合物とのテトラエステル(40℃における動粘度:68.5mm/s、流動点:−25℃)
基油2:1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−エチルヘキサノールとのジエステル(40℃における動粘度:15mm/s、流動点:−40℃)
基油3:ビニルエチルエーテルとビニルイソブチルエーテルとのランダム共重合体(ビニルエチルエーテルとビニルイソブチルエーテルとのモル比:7/1、数平均分子量:900、40℃における動粘度:68.5mm/s、100℃における動粘度:8mm/s、流動点:−40℃)
基油4:ナフテン系鉱油(40℃における動粘度:56.6mm/s、流動点:−30℃)
基油5:ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:1000、40℃における動粘度:46mm/s、100℃における動粘度:10mm/s、流動点:−40℃)。
【0221】
(リン系極圧剤)
A1:トリクレジルホスフェート
A2:トリフェニルホスフェート
A3:トリ(n−オクチル)ホスフェート。
【0222】
(油性剤)
B1:ステアリン酸ブチル
B2:ジイソブチルアジペート
B3:ジイソデシルアジペート
B4:グリセリンモノオレート
B5:グリセリントリオレート
B6:オレイルアルコール
B7:グリセリルエーテル
B8:ステアリン酸。
【0223】
(その他の添加剤)
C1:ジ−t−ブチル−p−クレゾール
C2:グリシジル−2,2’−ジメチルオクタノエート
C3:ベンゾトリアゾール。
【0224】
次に、実施例1〜125及び比較例1〜52の各冷凍機油組成物について以下に示す評価試験を行った。表1〜21中の「冷媒」の欄には、摩擦特性及び摩耗特性の評価試験並びに安定性評価試験に使用した冷媒の種類を示した。
【0225】
[摩擦特性及び摩耗特性の評価試験1]
FALEX試験機(ASTM D2714)の摺動部を耐圧容器内に設置し、容器内に冷媒を導入して下記条件でFALEX試験を実施した。
試験材:鋼リング、鋼ブロック
試験開始温度:80℃
試験時間:1時間
すベリ速度:0.5m/s
荷重:1250N
冷媒雰囲気の圧力:500kPa。
【0226】
FALEX試験の開始から1秒おきに摩擦係数及び油温を測定し、それらの平均値(以下、「平均摩擦係数1」及び「平均油温1」という)を求めた。また、試験終了後のブロックの摩耗量を体積の減少量(以下、「摩耗体積1」という)として求めた。得られた結果を表1〜20に示す。
【0227】
[析出防止性評価試験1]
各冷凍機油組成物を、当該組成物に含まれる基油の流動点よりも5℃高い温度まで冷却し、このときの組成物の外観を目視により観察した。得られた結果を表1〜20に示す。表中のA〜Dは以下の状態を意味する。
A:透明である
B:若干の曇りがある
C:不透明である
D:添加剤が完全に分離している。
【0228】
[安定性評価試験1]
JIS K 2211に準拠し、鉄、銅及びアルミニウムを触媒としてシールドガラスチューブ試験を行い、200℃で2週間保持した後のスラッジの有無を観察した。得られた結果を表1〜20に示す。表中のAはスラッジが認められなかったことを、Bはスラッジが認められたことをそれぞれ意味する。
【0229】
[析出防止性評価試験2]
先ず、基油1〜5について、基油20容量%、冷媒80容量%の試料溶液を調製し、基油と冷媒との二層分離温度を測定した。得られた結果は以下の通りである。
基油1とR410A:10℃
基油2とR134a:−35℃
基油3とR410A:−50℃
基油4とR22:−8℃
基油5とR134a:−45℃。
【0230】
次に、JIS K 2211に準拠して析出防止性評価試験を実施した。具体的には、冷凍機油組成物20容量%、冷媒80容量%の試料溶液を調製し、試料溶液を当該組成物に含まれる基油の二層分離温度よりも5℃高い温度まで冷却して組成物の外観を目視により観察し、以下の基準に基づいて析出防止性を評価した。得られた結果を表1〜20に示す。
A:透明である
B:若干曇っている
C:完全に不透明である
D:添加剤が分離している。
【0231】
[安定性評価試験2]
JJS K 2211に準拠し、鉄、銅及びアルミニウムを触媒としてシールドガラスチューブ試験を行い、175℃で2週間保持した後のスラッジの有無を観察した。得られた結果を表1〜20に示す。表中のAはスラッジが認められなかったことを、Bはごく少量スラッジが認められたこと、Cは多量のスラッジが認められたことをそれぞれ意味する。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【0232】
[摩擦特性評価試験2]
実施例1、21、41、43、56、78、91、93、103、121の各冷凍機油組成物について、Optimol社製SRV試験機を使用し、1/2インチSUJ2鋼球および、SUJ2ディスク(φ10mm)間の摩擦係数を測定した。試験条件は、荷重100N、振幅1mm、周波数25Hzとし、試験開始から20分終了までの摩擦係数を1秒ごとに記録し平均化して平均摩擦係数(以下、「平均摩擦係数2」という)とした。また、摺動部へ冷媒を10L/hの流量で流した。得られた結果を表21〜22に示す。なお、本試験では、冷凍機油組成物の基油の種類によって冷媒の種類を選定した。使用した冷媒の種類を表21〜22に併せて示す。
【表21】

【表22】

【0233】
[実施例126〜452、比較例53〜100]
実施例126〜452及び比較例53〜100においては、それぞれ以下に示す基油及び添加剤を用いて、表23〜74に示す組成を有する冷凍機油組成物を調製した。
【0234】
(基油)
基油1:ペンタエリスリトールと2−エチルヘキサン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸の等モル混合物とのテトラエステル(40℃における動粘度:68.5mm/s、流動点:−25℃)
基油2:1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−エチルヘキサノールとのジエステル(40℃における動粘度:15mm/s、流動点:−40℃)
基油3:ビニルエチルエーテルとビニルイソブチルエーテルとのランダム共重合体(ビニルエチルエーテルとビニルイソブチルエーテルとのモル比:7/1、数平均分子量:900、40℃における動粘度:68.5mm/s、100℃における動粘度:8mm/s、流動点:−40℃)
基油4:ナフテン系鉱油(40℃における動粘度:56.6mm/s、流動点:−30℃)
基油5:ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:1000、40℃における動粘度:46mm/s、100℃における動粘度:10mm/s、流動点:−40℃)
基油6:ジペンタエリスリトールとペンタエリスリトールとの混合物(混合比(モル比)1:1)と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合物(混合比(モル比)1:1)との完全エステル(40℃における動粘度:195mm/s、流動点:−30℃)
基油7:パラフィン系鉱油(40℃における動粘度:92mm/s、流動点:−15℃)
基油8:パラフィン系鉱油(40℃における動粘度12mm/s、流動点:−30℃)。
【0235】
(リン系極圧剤)
A4:トリフェニルフォスフォロチオネート
A5:トリクレジルフォスフォロチオネート
A6:トリ(n−オクチル)フォスフォロチオネート。
【0236】
(油性剤)
B1:ステアリン酸ブチル
B2:ジイソブチルアジペート
B3:ジイソデシルアジペート
B4:グリセリンモノオレート
B5:グリセリントリオレート
B6:オレイルアルコール
B7:2−エチルヘキシルグリセリルエーテル
B8:ステアリン酸。
【0237】
(その他の添加剤)
C1:ジ−t−ブチル−p−クレゾール
C2:グリシジル−2,2’−ジメチルオクタノエート
C3:ベンゾトリアゾール。
【0238】
[摩擦特性及び摩耗特性の評価試験3]
次に、実施例126〜452及び比較例41〜100各冷凍機油組成物について以下に示す評価試験を行った。表23〜74中の「冷媒」の欄には、摩擦特性及び摩耗特性の評価試験に使用した冷媒の種類を示した。
【0239】
冷凍機油組成物に冷媒を吹き込みながら、下記条件でFALEX試験(ASTM D2670)を実施した。
試験開始温度:25℃
試験時間:30分
荷重:1334N
冷媒の吹き込み量:10L/h。
【0240】
FALEX試験の開始から1秒おきに摩擦係数及び油温を測定し、それらの平均値(以下、「平均摩擦係数3」及び「平均油温3」という)を求めた。また、試験終了後のピンとブロックの重量を測定し、摩耗量を重量の減少量(以下、「摩耗量3」という)として求めた。得られた結果を表23〜74に示す。
【表23】

【表24】

【表25】

【表26】

【表27】

【表28】

【表29】

【表30】

【表31】

【表32】

【表33】

【表34】

【表35】

【表36】

【表37】

【表38】

【表39】

【表40】

【表41】

【表42】

【表43】

【表44】

【表45】

【表46】

【表47】

【表48】

【表49】

【表50】

【表51】

【表52】

【表53】

【表54】

【表55】

【表56】

【表57】

【表58】

【表59】

【表60】

【表61】

【表62】

【表63】

【表64】

【表65】

【表66】

【表67】

【表68】

【表69】

【表70】

【表71】

【表72】

【表73】

【表74】

【0241】
次に、実施例126〜133、実施例181〜188、実施例236〜243、実施例291〜298、並びに実施例346〜353の各冷凍機油組成物について以下に示す評価試験を行った。表46〜50中の「冷媒」の欄には、評価試験に使用した冷媒の種類を示した。
【0242】
[析出防止性試験2]
先ず、基油1〜5について、基油20容量%、冷媒80容量%の試料溶液を調製し、基油と冷媒との二層分離温度を測定した。得られた結果は以下の通りである。
基油1とR410A:10℃
基油2とR134a:−35℃
基油3とR410A:−50℃
基油4とR22:−8℃
基油5とR134a:−45℃。
【0243】
次に、JIS K 2211に準拠して析出防止性評価試験を実施した。具体的には、冷凍機油組成物20容量%、冷媒80容量%の試料溶液を調製し、試料溶液を当該組成物に含まれる基油の二層分離温度よりも5℃高い温度まで冷却して組成物の外観を目視により観察し、以下の基準に基づいて析出防止性を評価した。得られた結果を表75〜79に示す。
A:透明である
B:若干曇っている
C:完全に不透明である
D:添加剤が分離している。
【0244】
[安定性評価試験2]
JJS K 2211に準拠し、鉄、銅及びアルミニウムを触媒としてシールドガラスチューブ試験を行い、175℃で2週間保持した後のスラッジの有無を観察した。得られた結果を表75〜79に示す。表中のAはスラッジが認められなかったことを、Bはごく少量スラッジが認められたこと、Cは多量のスラッジが認められたことをそれぞれ意味する。
【表75】

【表76】

【表77】

【表78】

【表79】

[摩擦特性評価試験2]
実施例174、179、230、234、284、289、339、344、394、399の各冷凍機油組成物について、Optimol社製SRV試験機を使用し、1/2インチSUJ2鋼球および、SUJ2ディスク(φ10mm)間の摩擦係数を測定した。試験条件は、荷重100N、振幅1mm、周波数25Hzとし、試験開始から20分終了までの摩擦係数を1秒ごとに記録し平均化して平均摩擦係数(以下、「平均摩擦係数2」という)とした。また、摺動部へ冷媒を10L/hの流量で流した。得られた結果を表80〜81に示す。なお、本試験では、冷凍機油組成物の基油の種類によって冷媒の種類を選定した。使用した冷媒の種類を表80〜81に併せて示す。
【表80】

【表81】

【0245】
[実施例453〜463]
上記基油1〜5及び添加剤A1、A4、B2、B4、B6を用いて、表82に示す組成を有する冷凍機油組成物を調製した。
【0246】
[スラッジ防止性評価試験]
実施例453〜463の各冷凍機油組成物について以下の手順でスラッジ防止性を評価した。先ず、冷凍機油組成物99gに対して塩素系加工油1gを添加した。この試料油の含水率を、実施例279及び比較例64の場合は100ppm、それ以外は500ppmに調整した。次に、試料油100gを、鉄、銅及びアルミニウムの各触媒(いずれも1mmφ×10cm)と共に300mlオートクレーブに入れ、オートクレーブ内を脱気して冷媒50gを封入した。冷凍機油組成物と冷媒との組み合わせは表82に示す通りとした。このオートクレーブを150℃で14日間保持し、試験後のスラッジの有無を観察した。得られた結果を表82に示す。表中のAはスラッジが認められなかったことを、Bはスラッジが認められたことをそれぞれ意味する。
【表82】

【0247】
[実施例464〜569]
実施例464〜569においては、それぞれ上記の基油1〜8、並びに添加剤A1、A4、B1〜B8を用いて、下記表83〜94に示す組成を有する冷凍機油組成物を調製した。これらの冷凍機油組成物は、トリクレジルホスフェート(A1)及びトリフェニルフォスフォロチオネート(A4)の双方を必須成分として含有するものである。
【0248】
次に、実施例464〜569の各冷凍機油組成物について、以下に示す評価試験を行った。表83〜94中の「冷媒」の欄には、評価試験に使用した冷媒の種類を示した。
【0249】
[摩擦特性及び摩耗特性の評価試験1]
FALEX試験機(ASTM D2714)の摺動部を耐圧容器内に設置し、容器内に冷媒を導入して下記条件でFALEX試験を実施した。
試験材:鋼リング、鋼ブロック
試験開始温度:80℃
試験時間:1時間
すベリ速度:0.5m/s
荷重:1250N
冷媒雰囲気の圧力:500kPa。
【0250】
FALEX試験の開始から1秒おきに摩擦係数及び油温を測定し、それらの平均値(「平均摩擦係数1」及び「平均油温1」)を求めた。また、試験終了後のブロックの摩耗量を体積の減少量(「摩耗体積1」)として求めた。得られた結果を表83〜94に示す。
【0251】
[摩擦特性及び摩耗特性の評価試験3]
冷凍機油組成物に冷媒を吹き込みながら、下記条件でFALEX試験(ASTM D2670)を実施した。
試験開始温度:25℃
試験時間:30分
荷重:1334N
冷媒の吹き込み量:10L/h。
【0252】
FALEX試験の開始から1秒おきに摩擦係数及び油温を測定し、それらの平均値(「平均摩擦係数3」及び「平均油温3」)を求めた。また、試験終了後のピンとブロックの重量を測定し、摩耗量を重量の減少量(「摩耗量3」)として求めた。得られた結果を表83〜94に示す。
【表83】

【表84】

【表85】

【表86】

【表87】

【表88】

【表89】

【表90】

【表91】

【表92】

【表93】

【表94】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定基油と、リン系極圧剤と、油性剤と、を含有することを特徴とする冷凍機油組成物。
【請求項2】
前記リン系極圧剤がフォスフォロチオネートを含むことを特徴とする、請求項1に記載の冷凍機油組成物。
【請求項3】
前記リン系極圧剤が、フォスフォロチオネートと、該フォスフォロチオネート以外のリン系極圧剤との双方を含有することを特徴とする、請求項1に記載の冷凍機油組成物。
【請求項4】
エポキシ化合物を更に含有することを特徴とする、請求項1に記載の冷凍機油組成物。
【請求項5】
前記油性剤がエステル油性剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の冷凍機油組成物。
【請求項6】
前記油性剤が一塩基酸と一価アルコールとのエステル及び鎖状二塩基酸と一価アルコールとのエステルから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の冷凍機油組成物。
【請求項7】
前記油性剤が炭素数12以上の一塩基酸と一価アルコールとのエステル及び鎖状二塩基酸と一価アルコールとのエステルから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の冷凍機油組成物。
【請求項8】
前記油性剤がエステル油性剤を含み、該エステル油性剤の含有量が組成物全量基準で0.01〜10質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の冷凍機油組成物。
【請求項9】
前記基油が多価アルコールと一価脂肪酸とのエステル及び脂肪族環式二塩基酸と一価アルコールとのエステルから選ばれる少なくとも1種を含み、前記油性剤が一塩基酸と一価アルコールとのエステル及び鎖状二塩基酸と一価アルコールとのエステルから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の冷凍機油組成物。

【国際公開番号】WO2005/012469
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【発行日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512513(P2005−512513)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010840
【国際出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】