説明

冷凍焼き鯖寿司及びその製造方法

【課題】 型の収容部にシャリを詰め、その上に焼き鯖を載せて押圧・成型した焼き鯖寿司を冷凍した冷凍焼き鯖寿司であって、解凍しても寿司飯がバサ付くことなく、又酢の含有量が良好で美味しい冷凍焼き鯖寿司の提供。
【解決手段】 シャリは少なくとも70%以上の欠米を含む米を炊飯し、上記焼き鯖は片身の皮に複数の穴を明けて焼いたものを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷凍焼き鯖寿司及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一口に寿司と行ってもその種類は色々あり、大きく分けるならば、握り寿司、巻き寿司、散らし寿司、押し寿司などが知られている。寿司の起源は古く、平安時代には「タイ寿司」、「フナ寿司」、「アユ寿司」などが食されている旨の記録が存在する。しかし、この頃の寿司は「飯」は用いられずに魚介類を塩付け発酵させたものであり、熟成に2〜3ヶ月かかっていた。
【0003】
その後、これに「飯」(シャリ)を加えた現在の形になったのは江戸時代であると言われている。ところで、本発明が対象とする「焼き鯖寿司」もその起源は江戸時代であると思われるが、焼いた鯖の切り身を酢を加えた飯(シャリ)の上に載せて組み合わせた寿司であり、これが冷凍保存される。一般的に鯖寿司と言えば、生の鯖の切り身を酢飯の上に載せたものであるが、焼いた鯖の切り身を用いることで酢飯(シャリ)との相性が向上する。
【0004】
鯖を焼くことで脂がにじみ出し、香ばしさ備わる。この香ばしさは酢飯によって鯖の脂っこさを中和することが出来るために、生臭さがなくなって一段と美味しくなる。勿論、生の鯖の切り身を酢飯と組み合わせた〆鯖寿司に比較して、一般的に美味しいと言われる。
【0005】
ところで、このように作られる焼き鯖寿司を冷凍保存する場合、大きな冷凍装置が必要となる。約−40℃まで瞬時に冷却して保存する方が解凍時の味が良くなることから好ましい為に、冷却能力の大きな冷凍装置でなくてはならない。すなわち、この際に米自体の水分含有量並びに飯への酢の浸透が解凍した焼き鯖寿司の味に大きく影響する。冷凍する際には真空パックした状態で行われるが、酢飯から水分が取られてしまって、解凍した焼き鯖寿司はパサ付いた酢飯(シャリ)と成ってしまう。
【0006】
従来においても冷凍寿司に関する文献は数多く存在している。特開平10−290673号に係る「冷凍寿司」は、種々の素材の寿司種で複数個作られ、平板状の容器に並べて収容され、冷凍寿司は容器に収容された状態で高周波解凍加熱装置で解凍され、高周波解凍加熱装置のマイクロ波の電界強度分布に合わせて、解凍されにくい素材の寿司種から順に、電界強度の強い部分に位置するように配置している。
【0007】
特開平10−56995号に係る「冷凍寿司の解凍方法」は、寿司容器の中に寿司ネタを上にして冷凍寿司を並べ、寿司容器の縁に蓋状に作られた磁気シールド材を載せて上面を閉じ、その磁気シールド材によって寿司ネタの上部と側面を覆って電磁加熱し、寿司ネタに比較して寿司飯をやや高温に解凍することが出来る。
【0008】
これらの他にも、特開平8−214805号に係る「包装冷凍寿司」、特開2001−128628号に係る「超低温冷凍寿司及びその製造方法」、特開平7−322839号に係る「冷凍寿司」、特開2000−316499号に係る「冷凍寿司シャリの製造方法」などが知られている。しかし、従来では解凍した冷凍寿司の寿司飯の水分や酢の含有量と味との関係については何ら言及していない。
【特許文献1】特開平10−290673号に係る「冷凍寿司」
【特許文献2】特開平10−56995号に係る「冷凍寿司の解凍方法」
【特許文献3】特開平8−214805号に係る「包装冷凍寿司」
【特許文献4】特開2001−128628号に係る「超低温冷凍寿司及びその製造方法」
【特許文献5】特開平7−322839号に係る「冷凍寿司」
【特許文献6】特開2000−316499号に係る「冷凍寿司シャリの製造方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように従来の冷凍寿司には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、解凍しても寿司飯がバサ付くことなく、又酢の含有量が良好で美味しい冷凍焼き鯖寿司及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る冷凍焼き鯖寿司は、次の工程を経て作られる。
(1)鯖の漬け込み
鯖の片身(骨なし)を漬け込み液に約15分〜20分間漬ける。上記漬け込み液は醤油、砂糖、魚しょう、酒、みりんで構成したものであるが、その成分及び成分割合は特に限定しないことにする。
(2)鯖焼き
漬け込み液に漬けた鯖の片身を焼く。この際にタレは使用しないが、鯖の表面に複数の穴を適当に設けておく。これは、焼くことで皮が破損することを防止する為である。
(3)炊飯
米を炊飯して寿司飯(シャリ)を作るが、本発明で使用する米は欠米を使用する。すなわち、一部欠けた状態の小さな米が使用される。勿論、全ての米が欠米である必要はなく、少なくとも70%が欠米であればよく、好ましくは80%〜90%とする。そして、この欠米を炊飯してシャリを作る。
(4)成型
型にシャリを詰めてその上に上記焼き鯖を載せて押圧・成型する。従って、所定形状の押し寿司が出来上がる。
(5)冷凍
成型された焼き鯖寿司は真空パックされ、冷凍庫に入れていっきに−40℃で冷凍される。一般には2〜3分かけて庫内温度を−40℃まで冷却し、その後、約2時間その温度に保たれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る冷凍焼き鯖寿司は、次のような効果がある。
(1)鯖の片身を焼く場合、その皮に複数の穴を適度に設けることで、該皮は熱で縮んで破損することなく、奇麗な皮の状態で焼かれる為に、表面に載せられて押し成型した焼き鯖寿司の外観が良くなる。
(2)シャリは一部が欠けている欠米が使用される為に、含まれる水分量は普通の米に比較して多くなる。従って、モチと同じような粘りが発生し、押し寿司にすることで米の潰れが大きく成って、各米間の隙間は小さくなる。このことは、冷凍に適した押し寿司となる。
(3)本発明では、庫内温度を−40℃に2〜3分で冷却する為に、焼き鯖寿司はその品質が崩れることなく冷凍保存され、食べる際には電子レンジで簡単に解凍することで、冷凍前の作りたての焼き鯖寿司となる。勿論、自然解凍してもよいが、欠米を用いていることで解凍が簡単に出来る。
【実施例】
【0012】
以下、本発明に係る焼き鯖寿司の製造工程を図面に基づいて詳細に説明する。
(1)鯖の漬け込み工程
図1は鯖の片身1を示している。該片身1は鯖の骨を取除いた片側半分であり、身2と表面を覆う皮3から成っている。この片身1は漬け込み液に約15分〜20分間漬けられ、片身1には漬け込み液が浸透する。ここで、該漬け込み液の成分は焼き鯖寿司の味に影響するが、本発明の焼き鯖寿司の製造工程に直接影響するものではない為に、特に限定しない。一般には醤油、砂糖、魚しょう、酒、みりんが用いられ、これらの混合割合は微妙な味に影響するノウハウ的な要素である。
(2)鯖焼き工程
図2は上記漬け込みされた鯖の片身1を焼く場合であり、表面の皮3には複数の穴4,4・・を適当に設ける。穴4の明け方は自由であるが、先の尖った針状のもを刺すことで簡単に明けられる。そして、穴4,4・・が設けられた片身1はガス又は炭火にて焼かれるが、複数の穴4,4・・が設けられることで皮3は熱によって縮んでも裂けることはない。従って、皮3が破損することなく奇麗に焼き上がる。
(3)炊飯工程
寿司のシャリはご飯に酢を混ぜて作られるが、原料となる米は欠米が使用される。図3は欠米5の具体例であり、点線部分が欠けた状態の米である。本発明の焼き鯖寿司のシャリは100%が欠米5である必要はなく、70%以上、好ましくは80%〜90%が欠米5であればよい。ところで、この欠米5の選別方法としては、一定間隔で張設した複数本の細いワイヤーにて構成した選別装置を用いることが出来、これらワイヤーに沿って米を流すならば、小さな欠米は各ワイヤーの隙間から落下する。
【0013】
ところで、このように一部が欠けた欠米5は表皮が一部破損している為に、正規の米に比較してシャリとした場合の水分含有量が多くなる。従って、モチと同じような粘りが発生し、押し寿司にすることで各シャリ粒の潰れが大きく成って、シャリ粒間の隙間が小さくなり、冷凍に適した状態となる。すなわち、シャリ粒間に空気が介在した状態で冷凍する場合、水分が取除かれて解凍時のシャリはバサついてしまう。すなわち、押し寿司の味が大きく低下する。
【0014】
図4は通常米6と欠米5を使用したシャリ粒に圧力Pを負荷した場合の、潰れ具合を表している。(a)の通常米6の場合では表面全体が表皮で覆われているが、強い圧力Pが作用すればシャリ粒全体が潰れる。このことは、寿司の食感が失われ、美味しさが低下すると言われる。(b)の欠米5の場合では欠米5は押し潰されるが、表皮がない部分から中身7が押出される。その為に、押し寿司の密度は高くなり、シャリ粒間の隙間はなくなる。
【0015】
(4)押し成型工程
図5は押し型を表している具体例であり、本体8と押し蓋9で構成している。本体8には収容部10が形成され、この収容部10にシャリを詰め、その上に焼き鯖を載せて押し蓋9にて押圧される。そこで、シャリは押し潰され、欠米5から成るシャリ粒は前記図4(b)に示すように潰れて、中身7が押出される。その結果、シャリ粒間はほぼ隙間なく押し成型される。
【0016】
(5)冷凍工程
押し型で成型された押し寿司は冷凍されるが、その温度は約−40℃とする。冷凍庫内の温度を2分〜3分の短時間で上記−40℃に冷却し、その後、2時間ほど保つことで焼き鯖寿司は完全に冷凍される。本発明では、欠米5を使用している為に押し寿司としてのシャリ粒間の隙間が殆どなく、内部の水分が取除かれ難い為に冷凍に適した押し寿司と成っている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】鯖の片身
【図2】鯖の片身の皮に穴を明けた場合。
【図3】欠米の具体例。
【図4】通常米と欠米の潰れ具合。
【図5】押し型
【符号の説明】
【0018】
1 片身
2 身
3 皮
4 穴
5 欠米
6 通常米
7 中身
8 本体
9 押し蓋
10 収容部















【特許請求の範囲】
【請求項1】
型の収容部にシャリを詰め、その上に焼き鯖を載せて押圧・成型した焼き鯖寿司を冷凍した冷凍焼き鯖寿司において、上記シャリは少なくとも70%以上の欠米を含む米を炊飯し、上記焼き鯖は片身の皮に複数の穴を明けて焼いたことを特徴とする焼き鯖寿司。
【請求項2】
上記欠米の割合を80%〜90%とした請求項1記載の冷凍焼き鯖寿司。
【請求項3】
型の収容部にシャリを詰め、その上に焼き鯖を載せて押圧・成型した焼き鯖寿司を冷凍する冷凍焼き鯖寿司の製造方法において、骨を除去した鯖の片身を漬け込み液に15分〜20分間漬け、この片身の皮に複数の小さな穴を明けて焼き、一方の少なくとも70%の欠米を含む米を炊飯した飯に酢を加えて混ぜ合わせてシャリを作り、これを型本体の収容部に詰め、その上に上記焼き鯖の片身を載せて押し蓋にて押圧し、この押し寿司を急速冷凍することを特徴とする冷凍焼き鯖寿司の製造方法。
【請求項4】
上記焼き鯖寿司を−40℃に冷凍する請求項3記載の冷凍焼き鯖寿司の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−28986(P2007−28986A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216665(P2005−216665)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(505284574)有限会社 武生水産 (1)
【Fターム(参考)】