説明

冷凍装置

【課題】二酸化炭素冷媒が充填される冷媒回路を備える冷凍装置において、膨張機構の閉塞を抑制することができる冷凍装置の提供。
【解決手段】空気調和装置1は、圧縮機11と、室内熱交換器31と、室外熱交換器13と、第1キャピラリ15と、第2キャピラリ17とが接続されている冷媒回路2を備えている。また、冷媒回路2には二酸化炭素冷媒が充填されている。そして、主に圧縮機11には潤滑油が充填されている。さらに、親油基を含む分散剤が潤滑油に混入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張機構の閉塞を抑制することができる冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハイドロフルオロカーボン系冷媒が用いられる空気調和装置において、ハイドロフルオロカーボン系冷媒使用時に発生する物質によるキャピラリならびに膨張弁の閉塞を防止する試みがなされている。例えば、特許文献1に開示される空気調和装置では、圧縮機の潤滑油であるポリビニルエーテルに、ポリアルキレングリコールが添加されている。ポリアルキレングリコールは、ハイドロフルオロカーボン系冷媒と相溶性を有するとともにハイドロフルオロカーボン系冷媒使用時に発生するキャピラリ閉塞の原因となる物質との相溶性をも有している。これによって、キャピラリや膨張弁の閉塞を抑制している。
【0003】
また、HFC系冷媒が用いられる空気調和装置において、圧縮機の潤滑油としてエステル系合成油が用いられる場合がある。エステル系合成油は、加水分解反応により生成されるカルボン酸がキャピラリや膨張弁の閉塞の原因となる。そこで、特許文献2に開示される空気調和装置では、エステル系合成油に、エステル系合成油よりも優先的に加水分解反応を起こすモノカーボネート化合物が添加されている。このため、カルボン酸の生成が抑制され、キャピラリや膨張弁の閉塞を抑制している。
【0004】
さらに、特許文献3で開示される空気調和装置では、ハイドロフルオロカーボン系冷媒のかわりに二酸化炭素冷媒が用いられており、圧縮機の潤滑油に水分捕捉剤としてエポキシ化合物が添加されている。このため、エポキシ化合物が冷媒回路中の水分と水和反応することでアルコールに転化され、冷媒中に存在する水分が除去されることで冷媒回路における各種機器の故障を防止している。また、水分捕捉剤であるエポキシ化合物の反応生成物はアルコールであるため、キャピラリや膨張弁の閉塞を抑制している。
【特許文献1】特開平10−173323号公報
【特許文献2】特開2000−290674号公報
【特許文献3】特開2002−71231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷凍装置の冷媒として二酸化炭素冷媒が用いられる場合、冷媒は圧縮機において超臨界状態となる。このとき、冷媒によって、圧縮機内のモータの絶縁材料中に含有されるワニス等の樹脂成分からオリゴマー成分が溶出され、このオリゴマー成分がキャピラリ及び膨張弁を閉塞させるおそれがある。
【0006】
このような問題に対し、特許文献1及び特許文献2に開示される添加剤を利用することが考えられるが、冷媒として二酸化炭素冷媒が用いられる場合、キャピラリ及び膨張弁の閉塞を抑制できないおそれがある。
【0007】
また、特許文献3には、二酸化炭素冷媒が用いられる空気調和装置における発明が記載されている。しかしながら、この発明は冷媒回路内の水分除去を目的とした発明であり、このような物質を添加しても、絶縁材料の樹脂成分から溶出されるオリゴマー成分によるキャピラリ及び膨張弁の閉塞を抑制できないおそれがある。
【0008】
本発明の課題は、二酸化炭素冷媒が充填される冷媒回路を備える冷凍装置において、膨張機構の閉塞を抑制することができる冷凍装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る冷凍装置は、圧縮機と、利用側熱交換器と、熱源側熱交換器と、膨張機構とが接続されている冷媒回路を備えている。また、冷媒回路には二酸化炭素冷媒が充填されている。そして、主に圧縮機には潤滑油が充填されている。さらに、親油基を含む分散剤が潤滑油に混入されている。
【0010】
二酸化炭素冷媒を用いる冷凍装置では、超臨界状態となる二酸化炭素冷媒によって、圧縮機内のモータの絶縁材料に含有されている樹脂成分のオリゴマー成分が溶出する場合がある。この樹脂成分のオリゴマー成分は、オリゴマー成分同士で凝集し、冷凍装置が備えている膨張機構に堆積する。このため、膨張機構が閉塞するおそれがある。
【0011】
そこで、第1発明に係る冷凍装置では、冷媒回路に接続されている圧縮機には分散剤が混入されている潤滑油が充填されている。このため、樹脂成分のオリゴマー成分が有する極性基と分散剤の極性基とが静電的な結合をすることによって、オリゴマー成分同士が凝集する可能性を減らすことができる。
【0012】
これによって、キャピラリ及び膨張弁の閉塞を抑制することができる。
【0013】
第2発明に係る冷凍装置は、第1発明の冷凍装置であって、分散剤は、コハク酸イミド系、フェノール系、エステル系及びポリイソブチレン/ポリエーテルアミン系よりなる群から選択される少なくとも1つの分散剤である。
【0014】
第2発明に係る冷凍装置では、分散剤は、コハク酸イミド系、フェノール系、エステル系及びポリイソブチレン/ポリエーテルアミン系からなる群から選択される少なくとも1つの分散剤であり、親油基であるポリイソブチレンを有している。ポリイソブチレンは、高温時及び低温時に関わらず潤滑油への溶解度が安定しているという性質を持っている。このため、コハク酸イミド系、フェノール系、エステル系及びポリイソブチレン/ポリエーテルアミン系が分散剤に適している。
【0015】
これによって、さらにオリゴマー成分同士が凝集する可能性を減らすことができる。
【発明の効果】
【0016】
第1発明に係る冷凍装置では、キャピラリ及び膨張弁の閉塞を抑制することができる。
【0017】
第2発明に係る冷凍装置では、さらにオリゴマー成分同士が凝集する可能性を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
〈空気調和装置の構成〉
本発明の実施形態に係る空気調和装置1の概略冷媒回路2を図1に示す。
【0019】
この空気調和装置1は、冷房運転及び暖房運転が可能な空気調和装置であって、主に、冷媒回路2及び送風ファン26,32等から構成されている。なお、この冷媒回路には、二酸化炭素冷媒が充填されている。
【0020】
冷媒回路2には、主に、圧縮機11、四路切換弁12、室外熱交換器13、内部熱交換器14、第1キャピラリ15、受液器16、第2キャピラリ17及び室内熱交換器31が配備されており、各装置は、図1に示されるように、冷媒配管を介して接続されている。
【0021】
そして、本実施形態において、空気調和装置は1、分離型の空気調和装置であって、室内熱交換器31及び室内ファン32を主に有する室内ユニット30と、圧縮機11、四路切換弁12、室外熱交換器13、内部熱交換器14、第1キャピラリ15、受液器16及び第2キャピラリ17を主に有する室外ユニット10と、室内ユニット30の冷媒液配管33と室外ユニット10の冷媒液配管20とを接続する第1連絡配管41と、室内ユニット30の冷媒ガス配管34と室外ユニット10の冷媒ガス配管21とを接続する第2連絡配管42とから構成されている。なお、室外ユニット10の冷媒液配管20と第1連絡配管41とは室外ユニット10の第1閉鎖弁18を介して、室外ユニット10の冷媒ガス配管21と第2連絡配管42とは室外ユニット10の第2閉鎖弁19を介してそれぞれ接続されている。
【0022】
(1)室内ユニット
室内ユニット30は、主に、室内熱交換器31及び室内ファン32等を有している。
【0023】
室内熱交換器31は、空調室内の空気である室内空気と冷媒との間で熱交換をさせるため熱交換器である。
【0024】
室内ファン32は、室内ユニット30内に空調室内の空気を取り込み、室内熱交換器31を介して冷媒と熱交換した後の空気である調和空気を再び空調室内へ送り出すためのファンである。
【0025】
そして、この室内ユニット30は、このような構成を採用することによって、冷房運転時には室内ファン32により内部に取り込んだ室内空気と室内熱交換器31を流れる液冷媒とを熱交換させて調和空気(冷気)を生成し、暖房運転時には室内ファン32により内部に取り込んだ室内空気と室内熱交換器31を流れる超臨界状態の冷媒とを熱交換させて調和空気(暖気)を生成することが可能となっている。
【0026】
(2)室外ユニット
室外ユニット10は、主に、圧縮機11、四路切換弁12、室外熱交換器13、内部熱交換器14、第1キャピラリ15、受液器16、第2キャピラリ17及び室外ファン26等を有している。
【0027】
圧縮機11は、吸入管を流れる低圧のガス冷媒を吸入し、圧縮して超臨界状態とした後、吐出管に吐出するための装置である。なお、この圧縮機11には、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリアルファオレフィン、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル、ナフテン油、パラフィン油、カーボネート油及びアルキルベンゼン油よりなる群から選択される少なくとも1つの潤滑油が注入されている。
【0028】
また、この潤滑油には、分散剤として親油基であるポリイソブチレン(PIB)(下記化式1参照)を有している無灰系分散剤が添加されている。なお、この無灰系分散剤は、コハク酸イミド系(下記化式2参照)、フェノール系(下記化式3参照)、エステル系(下記化式4参照)、ポリイソブチレンアミン系(下記化式5参照)及びポリエーテルアミン系(下記化式6参照)に分類される。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【0029】
無灰系分散剤の親油基であるポリイソブチレンの分子量は大きくなるほど分散性が向上することが知られている。しかし、本発明において、分散剤としてコハク酸イミド系分散剤を使用した場合、その分子量が500未満では、十分な効果を得ることができないおそれがある。また、その分子量が1000を超えるとキャピラリを閉塞させるおそれがあるため、コハク酸イミド系分散剤の重量平均分子量は500〜1000の範囲内であることが好ましい。
【0030】
また、潤滑油に対する分散剤の添加量は0.05wt%〜2wt%の範囲内であることが好ましい。この配合量が0.05wt%未満では十分な効果を得られないおそれがある。また、配合量が2wt%を超えても、それ以上の効果を得ることができない可能性があり、不経済である。
【0031】
四路切換弁12は、各運転に対応して冷媒の流れ方向を切り換えるための弁であり、冷房運転時には圧縮機11の吐出側と室外熱交換器13のガス側とを接続するとともに圧縮機11の吸入側と室内熱交換器31のガス側とを内部熱交換器14を介して接続し、暖房運転時には圧縮機11の吐出側と第2閉鎖弁19とを内部熱交換器14を介して接続するとともに圧縮機11の吸入側と室外熱交換器13のガス側とを接続することが可能である。
【0032】
室外熱交換器13は、冷房運転時において圧縮機11から吐出された高圧の超臨界状態の冷媒を空調室外の空気を熱源として冷却させることが可能であり、暖房運転時には、室内熱交換器31から戻る液冷媒を蒸発させることが可能である。
【0033】
内部熱交換器14は、室外熱交換器13の液側と第1キャピラリ15とを接続する冷媒配管(以下、第1冷媒配管という)と、四路切換弁12と圧縮機11とを接続する冷媒配管(以下、第2冷媒配管という)とを近傍に配置することによって構成された熱交換器である。この内部熱交換器14では、冷房運転時において第1冷媒配管に流れる高温高圧の超臨界状態の冷媒と第2冷媒配管を流れる低温低圧のガス冷媒との間で熱交換が行われる。
【0034】
第1キャピラリ15は、室外熱交換器13の液側から流出する超臨界状態の冷媒(冷房運転時)あるいは受液器16を通って流入する液冷媒(暖房運転時)を減圧するためのものである。
【0035】
受液器16は、運転モードや空調負荷に応じて余剰となる冷媒を貯蔵しておくためのものである。
【0036】
第2キャピラリ17は、受液器16を通って流入してくる液冷媒(冷房運転時)あるいは室内熱交換器31の液側から流出する超臨界状態の冷媒(暖房運転時)を減圧するためのものである。
【0037】
室外ファン26は、室外ユニット10内に室外の空気を取り込み、室外熱交換器13を介して冷媒と熱交換した後の空気を排出するためのファンである。
【0038】
〈空気調和装置の動作〉
空気調和装置1の運転動作について、図1を用いて説明する。この空気調和装置1は、上述したように冷房運転及び暖房運転を行うことが可能である。
【0039】
(1)冷房運転
冷房運転時は、四路切換弁12が図1の実線で示される状態、即ち、圧縮機11の吐出側が室外熱交換器13のガス側に接続され、かつ、圧縮機11の吸入側が内部熱交換器14を介して第2閉鎖弁19に接続された状態となる。また、このとき、第1閉鎖弁18及び第2閉鎖弁19は開状態となる。
【0040】
この冷媒回路2の状態で、圧縮機11が起動されると、ガス冷媒が、圧縮機11に吸入されて圧縮されて超臨界状態となった後、四路切換弁12を経由して室外熱交換器13に送られ、室外熱交換器13において冷却される。
【0041】
そして、この冷却された超臨界状態の冷媒は、内部熱交換器14を経由して第1キャピラリ15に送られる。なお、このとき、この超臨界状態の冷媒は、内部熱交換器14の第2冷媒配管に流れる低温のガス冷媒により冷却される。そして、第1キャピラリ15に送られた超臨界状態の冷媒は、減圧されて飽和状態とされたあとに受容器16を経由して第2キャピラリ17に送られる。第2キャピラリ17に送られた飽和状態の冷媒は、減圧されて液冷媒となった後に第1閉鎖弁18を経由して室内熱交換器31に供給され、室内空気を冷却するとともに、蒸発されてガス冷媒となる。
【0042】
そして、そのガス冷媒は、第2閉鎖弁19、内部熱交換器14及び四路切換弁12を経由して、再び、圧縮機11に吸入される。なお、このとき、このガス冷媒は、内部熱交換器14の第1冷媒配管に流れる高温の超臨界状態の冷媒により加熱される。このようにして、冷房運転が行われる。
【0043】
(2)暖房運転
暖房運転時は、四路切換弁12が図1の破線で示される状態、即ち、圧縮機11の吐出側が第2閉鎖弁19に接続され、かつ、圧縮機11の吸入側が内部熱交換器14を介して室外熱交換器13のガス側に接続された状態となっている。また、このとき、第1閉鎖弁18及び第2閉鎖弁19は開状態とされる。
【0044】
この冷媒回路2の状態で、圧縮機11が起動されると、ガス冷媒が、圧縮機11に吸入され圧縮されて超臨界状態となった後、四路切換弁12及び第2閉鎖弁19を経由して室内熱交換器31に供給される。
【0045】
そして、その超臨界状態の冷媒は、室内熱交換器31において室内空気を加熱するとともに冷却される。冷却された超臨界状態の冷媒は、第1閉鎖弁18を通って第2キャピラリ17に送られる。第2キャピラリ17に送られた超臨界状態の冷媒は、減圧されて飽和状態とされた後に受液器16を経由して第1キャピラリ15に送られる。第1キャピラリ15に送られた飽和状態の冷媒は、減圧されて液冷媒となった後に内部熱交換器14を経由して室外熱交換器13に送られて、室外熱交換器13において蒸発されてガス冷媒となる。なお、このとき、このガス冷媒は、内部熱交換器14の第2冷媒配管に流れる高温の超臨界状態の冷媒により加熱される。そして、このガス冷媒は、四路切換弁12を経由して、再び、圧縮機11に吸入される。このようにして、暖房運転が行われる。
【0046】
〈コハク酸イミド系分散剤の分子量〉
本発明において、コハク酸イミド系分散剤の分子量の特定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)を用いた分子量分布測定によって行った。
【0047】
GPCは示差屈折率検出器によって検出を行い、GPCによる測定には、カラムとしてShim−pack GPC−803(島津製作所製Shim−packシリーズ)を、溶媒としてテトラヒドロフランを使用した。また、GPCの測定条件としては、溶媒流量を1.0ml/min、カラム温度を40℃、試料濃度を10wt%〜20wt%、試料注入量を50〜300μlとした。
【実施例1】
【0048】
本発明のつまり評価試験に使用する冷媒回路102を図2に示す。
【0049】
冷媒回路102には、圧縮機111、凝縮器113及びキャピラリ115が配備されている。また、この冷媒回路102には、バイパス配管120が接続されている。
【0050】
バイパス配管120は、一端が圧縮機111の吐出側と凝縮器113とを接続する冷媒配管(以下、第1冷媒配管という)に、他端がキャピラリ115と圧縮機111の吸入側とを接続する配管(以下、第2冷媒配管という)に配管接続されている。なお、以下、バイパス配管と第1冷媒配管との接合点を第1接合点BC1といい、バイパス配管と第2冷媒配管との接合点を第2接合点BC2という。そして、バイパス配管120には、電磁弁100が配備されている。
【0051】
また、つまり評価試験は、冷媒として二酸化炭素冷媒を使用し、圧縮機の潤滑油としてポリビニルエーテルを、ポリビニルエーテルに添加する分散剤としてコハク酸イミドを用いた。また、ポリビニルエーテル99.5wt%に対してコハク酸イミドを0.5wt%となるように添加した。さらに、ポリビニルエーテルには、分散剤の他に、微量の極圧剤、酸化防止剤及び酸捕捉剤を添加した。
【0052】
この冷媒回路102において、電磁弁100が開状態で圧縮機111を起動すると、ガス冷媒が、圧縮機111に吸入されて圧縮された後、第1接合点BC1に至る。そして、第1接合点BC1に至ったガス冷媒は、凝縮器113に向かう第1経路と、バイパス配管を介して第2接合点BC2に向かう第2経路とに分配される。
【0053】
第1経路に分配されたガス冷媒は、凝縮器113において凝縮されて液冷媒となる。この液冷媒は、キャピラリ115に送られ、キャピラリで減圧されて第2接合点BC2に至る。
【0054】
そして、キャピラリを介して第2接合点BC2に至った液冷媒と、バイパス配管を介して第2接合点BC2に至ったガス冷媒とは、第2接合点BC2で合流する。ここで、合流した液冷媒は、ガス冷媒の温熱によってガス状の冷媒となる。
【0055】
そして、このガス冷媒は、再び、圧縮機に吸入される。
【0056】
これを200時間実施し、キャピラリが閉塞しているか否かを確認したところ、キャピラリは閉塞していなかった。
【実施例2】
【0057】
潤滑油としてポリビニルエーテルをポリアルキレングリコールに代え、ポリアルキレングリコール99.0wt%に対して分散剤としてコハク酸イミドを1.0wt%となるように添加したことに代えた以外は、実施例1と同様のつまり評価試験を行った。この結果、キャピラリは閉塞していなかった。
【0058】
(比較例)
潤滑油としてポリビニルエーテルを使用し、分散剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様につまり評価試験を行った。この結果、キャピラリは閉塞した。
【0059】
〈特徴〉
(1)
空気調和装置1の冷媒として二酸化炭素冷媒が用いられる場合、圧縮機11において超臨界状態となる冷媒によって、圧縮機11内のモータの絶縁材料中に含有されるワニス等の樹脂成分からオリゴマー成分が溶出され、キャピラリ15,17を閉塞させ、空気調和装置1の信頼性を損なうおそれがある。このため、キャピラリ15,17の閉塞を防ぐ必要がある。
【0060】
上記実施形態では、冷媒回路2には二酸化炭素冷媒が充填されており、圧縮機11には分散剤が混入されている潤滑油が充填されている。これによって、樹脂成分から溶出したオリゴマー成分が有する極性基と分散剤の極性基とが静電的な結合をすることによって、オリゴマー成分同士の凝集を抑制する。したがって、キャピラリの閉塞を防ぐことができている。
【0061】
(2)
上記実施形態では、圧縮機11に充填されている潤滑油には分散剤が混入されている。これによって、分散剤が潤滑油に溶解することで、冷媒中のオリゴマーと接触しやすくなっている。したがって、分散剤がその機能を発揮しやすくなっている。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る冷凍装置は、キャピラリの閉塞が抑制されているため、冷媒として二酸化炭素冷媒が用いられる冷凍装置への適用が有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態に係る空気調和装置の冷媒回路図。
【図2】本発明の実施例に係るつまり評価試験の冷媒回路図。
【符号の説明】
【0064】
1 冷凍装置
2 冷媒回路
11 圧縮機
13 室外熱交換器(熱源側熱交換器)
15 第1キャピラリ(膨張機構)
17 第2キャピラリ(膨張機構)
31 室内熱交換器(利用側熱交換器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(11)と、利用側熱交換器(31)と、熱源側熱交換器(13)と、膨張機構(15,17)とが接続されている冷媒回路(2)と、
前記冷媒回路(2)に充填される二酸化炭素冷媒と、
主に前記圧縮機(11)に充填される潤滑油と、
前記潤滑油に混入され、親油基を含む分散剤と、
を備える冷凍装置(1)。
【請求項2】
前記分散剤は、コハク酸イミド系、フェノール系、エステル系およびポリイソブチレン/ポリエーテルアミン系よりなる群から選択される少なくとも1つの分散剤である、
請求項1に記載の冷凍装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−215779(P2008−215779A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57862(P2007−57862)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】