説明

冷凍解凍耐性のあるクリーム状組成物及びその製造方法

【目的】 ホイップさせた状態もしくは更にこれをケーキ等にデコレーションした状態で冷凍保存し、解凍しても、組織の荒れ、ひび割れ、風味の劣化を起こすことがなく、かつ優れた特性を有するクリーム状組成物を提供すること。
【構成】 油脂35〜55重量%、無脂乳固形分1〜10重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤0.1〜2重量%、ソルビトール及び/又は平均分子量が500以下の還元澱粉糖化物1〜10重量%、シクロデキストリン0.2〜2重量%及び水を含有することを特徴とするクリーム状組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、クリーム状組成物及びその製造方法に関するものである。更に詳しくは、ホイップした状態もしくは更にケーキ等にデコレーションした状態で冷凍保存し、あるいは解凍しても外観、風味ともに良好な、冷凍解凍耐性効果のあるクリーム状組成物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ケーキ等のデコレーションに用いるクリーム類は、使用の度にホイップし、いわゆるホイップドクリームの状態にして使用されてきた。このホイップするという作業は熟練を要する上、相応の時間と労力を必要とするものであるため、昨今の適切な人手が不足するなか、洋菓子業界においても省力化、合理化が進められてきており、その対策の一つに連続ホイッパーの開発が挙げられている。このようなホイッパーの導入により、一時に大量のホイップドクリームを得ることが出来るようになったが、ホイップドクリームもしくはそれを使用したデコレーションケーキを冷蔵状態で長期間保存しておくことは、該クリームの物性の変化や腐敗等の衛生面から実質的に不可能であった。そこで、冷凍処理により長期保存が可能なホイップドクリームの開発が求められている。このような問題点を解決するため、これまでにも冷凍解凍耐性のある起泡性クリーム類が種々提案されている。例えば、特公昭58−57145、特開昭52−79059、特開昭58−51864、特公平3−62386各号公報が掲げられるが、これらはいずれも油分35%以下のクリーム組成物に関するものであり、多量の糖類または/及びガム類が添加されており、高粘度やオーバーラン、安定性の低下の点で高油分のクリームへの応用は困難であった。また、特公平4−12101号公報には、油脂分が35〜50重量%と比較的高油分のクリームが開示されているが、該クリームは同時に、糖類、加工澱粉およびガム類等を含むことを必須としている。本発明者らの実験によると加工澱粉やガム類をクリームに添加すると、通常のホイップドクリームと比較して明らかに口溶けが悪くなり、満足できるものではない。
【0003】一方、近年において消費者は、食生活の充実・高級化を反映して、クリーム類においてもより乳脂肪率が高く、風味、口溶けの良い、生クリームに近いものを要望する傾向がますます増大している。それらのニーズに対して原料成分として例えばバターオイルのような乳脂肪が用いられることも多く、さらに本来の生クリームの風味を出すために、クリーム製造時に生クリームを加えることは広く行われている。乳脂肪源として生クリームを用いない場合においても、凍結処理を行えば乳化状態の破壊、乾燥がおこり、使用に耐えられないものとなるが、生クリームを加えたクリームにおいては、生クリームがいわば天然の乳化物であり、品質が一定しないという難点を有することから、クリームの物性、機能性をコントロールすることはさらに困難であり、凍結処理を行うことはできなかった。したがって前述のような消費者の要望を満足させるような、冷凍解凍耐性のあるクリームは未だ開発されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ホイップさせた状態もしくは更にこれをケーキ等にデコレーションした状態で冷凍保存し、解凍しても、組織の荒れ、ひび割れ、風味の劣化を起こすことがなく、かつ優れた特性を有するクリーム状組成物を提供することを目的とする。又、本発明は、冷凍解凍耐性に優れたクリーム状組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、数ある糖類のなかでも、特定の2種類の糖を併用し、かつ特定の乳化剤を使用すると上記課題を有効に解決できるとの知見に基づいてなされたのである。すなわち、本発明は、油脂35〜55重量%、無脂乳固形分1〜10重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤0.1〜2重量%、ソルビトール及び/又は平均分子量が500以下の還元澱粉糖化物1〜10重量%、シクロデキストリン0.2〜2重量%及び水を含有することを特徴とするクリーム状組成物を提供する。本発明は、又、水に無脂乳固形分、ソルビトール及び/又は平均分子量が500以下の還元澱粉糖化物、シクロデキストリン及びポリグリセリン脂肪酸エステルを含む親水性乳化剤を添加して形成した水相を加温し、油脂に親油性乳化剤、例えばレシチンとグリセリン脂肪酸エステルからなる乳化剤を添加して形成した油相であって加温して溶融した油相を該水相に加えた後、乳化することを特徴とするクリーム状組成物の製造方法を提供する。
【0006】本発明に用いる原料油脂には、バターオイル等の動物性油脂及び/又は汎用的な植物性油脂が使用でき、又はそれらの加工油脂を用いることができる。動物性油脂としては、牛脂、ラード、魚油、乳脂等、植物性油脂としては大豆油、やし油、パーム油、パーム核油、菜種油等、加工油脂としてはそれらの油脂に硬化、エステル交換、分別等の処理を施したものが挙げられる。このうち、ホイップドクリームの保型性向上のため融点が25〜45℃の範囲のものが好ましい。硬化油が好適であり、必要に応じて配合できる。尚、本発明では風味を良くするため、生クリーム由来のものを含めた乳脂肪が、総油脂量の20重量%以上となるよう生クリームとバターオイルを使用することが望ましい。本発明においては、油脂をクリーム状組成物中35〜55重量%となるように使用することが必要であるが、好ましくは36〜55重量%、より好ましくは40〜50重量%である。本発明で使用する無脂乳固形分としては、脱脂粉乳、脱脂乳、乳清蛋白質等があげられる。無脂乳固形分の量は、1〜10重量%であるが、2〜6重量%とするのがよい。本発明における乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤をクリーム状組成物に対し、0.1〜2重量%使用する。ポリグリセリン脂肪酸エステルは公知のものが使用できるが、特にグリセリンの重合度が4〜10でステアリン酸モノエステルであるものがよい。なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルに加えて、レシチン及び/又はグリセリン脂肪酸エステルを併用するのが好ましい。これらに加えて、又その代わりに他の乳化剤、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。これらはいずれもクリーム類の製造において使用される公知のものでよい。
【0007】本発明では、上記成分に加えて、ソルビトール及び/又は平均分子量が500以下の還元澱粉糖化物とシクロデキストリンとを併用することを特徴とする。ここで、ソルビトール及び/又は平均分子量が500以下、好ましくは200〜500の還元澱粉糖化物は、クリーム状組成物に対し1〜10重量%、好ましくは3〜10重量%使用する。10重量%を超えて使用すると、クリーム状組成物の粘度の上昇が起こり、また、甘味が強くなり、通常ホイップ時に添加する砂糖による甘味のコントロールが出来なくなるので好ましくない。還元澱粉糖化物のうち、平均分子量が500を超えるものはそれ自体の粘度が高く、これを配合したクリーム状組成物においても粘度上昇を起こさせ、また冷凍解凍処理により目的とするクリームの物性に変化を起こすので好ましくない。シクロデキストリンはデンプンにシクロデキストリン生成酵素を作用させて得られる、グルコースが6個以上環状に連なったオリゴ糖であり、グルコースが6、7又は8個であるα、β又はγ−シクロデキストリンが主な生成物である。本発明に用いるシクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン単品、あるいはα、β、γ−シクロデキストリンの混合品のいずれでもよく、また、グルコース、マルトース、オリゴ糖等を含有しているものでもよい。その使用量は0.2〜2重量%であり、0.2重量%未満では本発明の目的とする冷凍解凍耐性に対して効果なく、2重量%を超えて配合するとクリームそのものの物性・ホイップ性にも悪影響を及ぼし、好ましくない。
【0008】本発明のクリーム状組成物を製造するには、まず、無脂乳固形分、ソルビトール及び/又は平均分子量が500以下の還元澱粉糖化物、シクロデキストリン、親水性の乳化剤等を溶解させた水溶液に、必要であれば、生クリームを加えて水相部とし、この水相部に、原料油脂に親油性の乳化剤を溶解させた油相部を加え、予備乳化させたあと、さらにホモジナイザー等を用いて均質化し、殺菌、冷却工程を経て、本発明のクリーム状組成物を得ることができる。このうち、水相に加える乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを含む親水性乳化剤を使用するのが好ましく、該水相を形成した後、50〜70℃に加熱するのが好ましい。又、油脂に添加する乳化剤としてレシチン及び/又はグリセリン脂肪酸エステルを含む親油性乳化剤を使用し、該油相を水相とほぼ同じ温度に加熱して溶融した油相を該水相に加えた後、60〜80℃で乳化するのが好ましい。とりわけ望ましい乳化剤の組合せは、水相側がポリグリセリン脂肪酸エステル、油相側がレシチンおよびグリセリン脂肪酸エステルである。なお水相にはさらにショ糖脂肪酸エステルを添加するのも良い。
【0009】
【実施例】次に実施例により本発明を説明する。尚、以下の実施例および比較例における部および%は特に規定しない限り重量基準である。
実施例1バターオイル20部と融点40℃の大豆硬化油10部を混合し、この中へレシチン(日清製油(株)製「ベイシスLP−20」)0.2部、グリセリン脂肪酸エステル(花王(株)製「エキセルO−95R」)0.15部を分散溶解して油相部とした。一方、脱脂粉乳3部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.1部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品工業(株)製「SYグリスター MS−500」)0.5部、α−シクロデキストリン(日本食品化工(株)製「セルデックス−A」)0.5部、平均分子量が370〜430で固形分が70%である還元澱粉糖化物(東和化成工業(株)製「PO−500」)5部および脂肪率45%の生クリーム30部を残部(全量を100部とし、これから水以外の成分量を除いた量。以下同じ)の水に加えて水相部とした。この水相部を約60℃に加温し、同温度に加温溶融した油相部を加え、約70〜75℃で予備乳化後、ホモジナイザーを用い、50Kg/cm2 の圧力で均質化を行った。ついで、90℃で15秒間の殺菌後、10℃まで急冷し、さらに5℃で1晩のエージングを行い、クリーム状組成物を得た。このクリーム状組成物1Kgに60gの砂糖を加えて、ホバートミキサー(130rpm)にて最適状態までホイップし、該ホイップドクリームのオーバーラン、硬度の測定及び風味の評価を行った。このホイップドクリームは、通常のクリームと同等のホイップ性を有し、良好な風味で口溶けの良いものだった。またこのホイップドクリームをスポンジケーキにデコレーションし、−30℃の冷凍庫で10日間保存後、5℃の冷蔵庫内で5時間解凍した。その外観の観察および風味の評価を行ったところ、ひび割れ、変色などを起こさず、風味も良好であった。同時にシャーレ、ポリカップに満杯充填したものについても同様に冷凍保存後、解凍し、乾燥度、硬度の測定を行ったところ、冷凍保存による乾燥が比較的少なく、硬度変化の少ないものだった。評価結果を表1に示した。
【0010】比較例1実施例1において、α−シクロデキストリンと還元澱粉糖化物を使用せず、同様の方法でクリーム状組成物を得、同様の評価を行った。表1に示したように、このクリーム状組成物はホイップ後の冷凍解凍耐性がないものであった。
比較例2実施例1において、還元澱粉糖化物を使用せず、同様の方法でクリーム状組成物を得、同様の評価を行った。表1に示したように、このクリーム状組成物は、造花物の組織がやや荒れる傾向にあり、またホイップ後の冷凍解凍耐性も十分ではなかった。
比較例3実施例1において、α−シクロデキストリンを使用せず、カラギーナン(三菱レイヨン(株)製「ソアギーナMV320」)0.03部を加え、同様にクリーム状組成物を得、同様の評価を行った。表1に示したように、このクリーム状組成物はホイップ後の冷凍解凍耐性がなく、また、クリーム粘度が高く、口溶けの悪いものだった。
比較例4実施例1において、α−シクロデキストリンを使用せず、架橋澱粉(松谷化学工業(株)製「ファリネックスVA70C」)0.5部、キサンタンガム 0.05部を使用し、同様にクリーム状組成物を得、同様の評価を行った。表1に示したように、このクリーム状組成物はホイップ後の冷凍解凍耐性は有していたが、口溶けが悪いものだった。
【0011】
【表1】 表1 実施例 比較例 比較例 比較例 比較例 1 1 2 3 4 クリーム粘度(cp) *1 180 100 150 3800 300ホイップ時間 3’50” 5’00” 3’10” 3’30” 4’50”オーバーラン(%)*2 130 145 115 120 130硬度(g)*3 40 37 55 30 65造花性 *4 良好 良好 やや不良 良好 良好風味・口溶け*5 良好 良好 良好 やや不良 不良 冷凍解凍後乾燥度(%)*6 4.5 9.7 5.1 5.3 6.4硬度(g)*3 60 145 150 115 180ひびの有無 なし あり わずかに わずかに なし あり あり風味 良好 やや不良 やや不良 不良 不良
【0012】*1) クリーム粘度(cp):B型粘度計により測定。No. 2ローターを用い、30rpm、10℃で測定した。
*2) オーバーラン(%)=100 ×〔(一定容積のクリーム重量)−(同容積のホイップドクリームの重量)〕/(同容積のホイップドクリームの重量)
*3) 硬度(g) :レオメーター(不動工業製)により測定。冷凍解凍後の硬度は、直径5cm、深さ6cmのポリカップにホイップドクリームを満杯充填したものを−30℃で10日間冷凍保存後、5℃で5時間解凍したものについて測定した。
*4) 造花性 :ホイップドクリームを絞り袋にいれ、造花したときの絞りやすさ、造花物の組織の状態、形状等について総合的に評価した。
*5) 風味・口溶け :パネラーによる風味試験により評価した。
*6) 乾燥度(%):ホイップドクリームを直径9cmのシャーレに満杯充填したものを同様に冷凍保存後解凍し、その前後のクリームの重量から、次式により求めた。
乾燥度(%)=100×冷凍解凍後の乾燥減量(g)/冷凍前のホイップドクリーム重量(g)
【0013】実施例2バターオイル5部と融点が34℃のやし硬化油35部を混合し、この中へ実施例1と同一のレシチン0.2部、グリセリン脂肪酸エステル0.15部を分散溶解して油相部とした。一方、脱脂粉乳4部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.1部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品工業(株)製「SYグリスター MS−310」)0.5部、α、βおよびγ−シクロデキストリンと水飴の混合物(日本食品化工(株)製「セルデックスCH−20」)8部(全シクロデキストリン含量1.2部)、ソルビトール(固形分70%)7部、および脂肪率45%の生クリーム10部を残部の水に加えて水相部とした。かかる油相部および水相部を用い、実施例1と同様の操作で、本発明のクリーム状組成物を得た。このクリーム状組成物について、実施例1と同様に評価を行った。このクリーム状組成物は通常のクリームと同等のホイップ性を有し、風味・口溶けの良いものであった。また、スポンジケーキにデコレーションし冷凍保存後解凍したものはひび割れ、変色などを起こさず、風味も良好であった。評価結果を表2に示した。
【0014】比較例5実施例2において「セルデックスCH−20」8部を使用せず、同様にクリーム状組成物を得、同様の評価を行った。表2に示したようにこのクリーム状組成物は通常のクリームと同等のホイップ性を有していたが、ホイップ後の冷凍解凍耐性のないものだった。
比較例6実施例2においてソルビトール 7部を使用せず、同様にクリーム状組成物を得、同様の評価を行った。このクリーム状組成物は通常のクリームと同等のホイップ性を有していたが、ホイップ後の冷凍解凍耐性のないものだった。
【0015】比較例7実施例2において、水30部を水17部に、およびソルビトール7部をソルビトール20部に代え、同様にクリーム状組成物を得、同様の評価を行った。表2に示したように、このクリーム状組成物は、ホイップ後の冷凍解凍耐性は有していたが、甘味が強く、また、ホイップ時間が短く、オーバーランが低いなどホイップ性の悪いものだった。
比較例8実施例2において、水30部を水18部に、および「セルデックスCH−20」8部を「セルデックスCH−20」20部とし、同様にクリーム状組成物を得、同様の評価を行った。表2に示したように、このクリーム状組成物はホイップ時間が短い、オーバーランが低いなどホイップ性が悪く、また、ひび割れが生じ、ホイップ後の冷凍解凍耐性も良くなかった。
【0016】
【表2】 表2 実施例 比較例 比較例 比較例 比較例 2 5 6 7 8 クリーム粘度(cp) *1 150 110 125 520 630ホイップ時間 3’30” 3’45” 3’40” 0’55” 0’40”オーバーラン(%)*2 125 140 135 70 65硬度(g)*3 50 45 45 90 115造花性 *4 良好 良好 良好 不良 不良 (粘り強)(粘り強)
風味・口溶け*5 良好 良好 良好 不良 不良 (甘味強) 冷凍解凍後乾燥度(%)*6 5.2 6.8 7.3 4.3 4.7硬度(g)*3 70 95 110 105 165ひびの有無 なし あり あり なし わずかに あり風味 良好 やや不良 やや不良 不良 不良 *1〜*6は表1の注釈参照。
【0017】実施例3融点が34℃の菜種硬化油8部に、実施例1と同一のレシチン0.2部、グリセリン脂肪酸エステル0.15部を分散溶解して油相部とした。一方、脱脂粉乳2部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.1部、実施例2と同一のポリグリセリン脂肪酸エステル0.3部、「セルデックスCH−20」5部、「PO−500」10部、および脂肪率が45%である生クリーム70部を残部の水に加えて水相部とした。かかる油相部および水相部を用い、実施例1と同様の操作で、本発明のクリーム状組成物を得た。このクリーム状組成物について、実施例1と同様に評価を行った。このクリーム状組成物は通常のクリームと同等のホイップ性を有し、風味・口溶けの良好なものであった。また、冷凍保存後解凍してもひび割れ、変色などを起こさず、風味も良好であった。評価結果を表3に示した。
比較例9実施例3においてポリグリセリン脂肪酸エステル 0.3部を使用せず、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化成食品(株)製「リョートーシュガーエステルS−570」)0.3部を加え、同様にクリーム状組成物を得、同様の評価を行った。表3に示したように、このクリーム状組成物はクリーム粘度が高く、また、ひび割れが生じるなど冷凍解凍耐性も劣っていた。
【0018】
【表3】 表3 実施例3 比較例9 クリーム粘度(cp) *1 130 580 ホイップ時間 3’35” 3’40” オーバーラン(%)*2 120 110 硬度(g)*3 38 55 造花性 *4 良好 やや不良 風味・口溶け*5 良好 良好 冷凍解凍後 乾燥度(%)*6 4.3 4.5 硬度(g)*3 65 145 ひびの有無 なし わずかにあり 風味 良好 良好 *1〜*6は表1の注釈参照。
【0019】実施例4バターオイル10部と、ヤシ油および大豆硬化油の混合物(融点40℃)20部を混合し、この中へ実施例1と同一のレシチン0.2部、グリセリン脂肪酸エステル0.15部を分散溶解して油相部とした。一方、脱脂粉乳3部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.1部、実施例1と同一のポリグリセリン脂肪酸エステル0.7部、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化成食品(株)「リョートーシュガーエステルS−1570」)0.1部、「セルデックスCH−20」5部、「PO−500」7部、および脂肪率45%の生クリーム40部を残部の水に加えて水相部とした。かかる油相部および水相部を用い、実施例1と同様の操作で、本発明のクリーム状組成物を得た。このクリーム状組成物について、実施例1と同様に評価を行った。このクリーム状組成物は通常のクリームと同等のホイップ性を有し、風味・口溶けの良いものであった。また、スポンジケーキにデコレーションし冷凍保存後解凍したものはひび割れ、変色などを起こさず、風味も良好であった。評価結果を表4に示した。
【0020】実施例5バターオイル5部と融点が34℃のやし硬化油35部を混合し、この中へ実施例1と同一のレシチン0.3部、ソルビタン脂肪酸エステル(花王(株)製「エマゾール O−10(F))0.2部を分散溶解して油相部とした。一方、脱脂粉乳4部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.1部、実施例2と同一のポリグリセリン脂肪酸エステル0.5部、「セルデックスCH−20」8部、ソルビトール7部、および脂肪率45%の生クリーム10部を残部の水に加えて水相部とした。かかる油相部および水相部を用い、実施例1と同様の操作で、本発明のクリーム状組成物を得た。このクリーム状組成物について、実施例1と同様に評価を行った。このクリーム状組成物は通常のクリームと同等のホイップ性を有し、風味・口溶けの良いものであった。また、スポンジケーキにデコレーションし冷凍保存後解凍したものはひび割れ、変色などを起こさず、風味も良好であった。評価結果を表4に示した。
【0021】実施例6バターオイル30部と融点が34℃の菜種硬化油15部を混合し、この中へ実施例1と同一のレシチン0.3部、「エマゾール O−10(F)」0.2部を分散溶解して油相部とした。一方、脱脂粉乳5部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.1部、実施例1と同一のポリグリセリン脂肪酸エステル0.5部、「セルデックスCH−20」5部、「PO−500」10部を残部の水に加えて水相部とした。かかる油相部および水相部を用い、実施例1と同様の操作で、本発明のクリーム状組成物を得た。このクリーム状組成物について、実施例1と同様に評価を行った。このクリーム状組成物は通常のクリームと同等のホイップ性を有し、風味・口溶けは良いものであった。また、スポンジケーキにデコレーションし冷凍保存後解凍したものは、ひび割れ、変色などを起こさず、風味も良好であった。評価結果を表4に示した。
【0022】
【表4】 表4 実施例4 実施例5 実施例6 クリーム粘度(cp) *1 140 140 120 ホイップ時間 3’40” 3’35” 4’05” オーバーラン(%)*2 140 125 135 硬度(g)*3 45 50 40 造花性 *4 良好 良好 良好 風味・口溶け*5 良好 良好 良好 冷凍解凍後 乾燥度(%)*6 4.2 5.1 4.8 硬度(g)*3 60 70 55 ひびの有無 なし なし なし 風味 良好 良好 良好 *1〜*6は表1の注釈参照。
【0023】
【発明の効果】上述のようにして得られるクリーム状組成物は、ホイップさせた状態もしくは更にこれをケーキ等にデコレーションした状態で冷凍保存し、解凍しても、組織の荒れ、ひび割れ、風味の劣化を起こすことがなく、また、一時に大量にホイップして冷凍保存することにより、効率的にデコレーションケーキ類を製造することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 油脂35〜55重量%、無脂乳固形分1〜10重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤0.1〜2重量%、ソルビトール及び/又は平均分子量が500以下の還元澱粉糖化物1〜10重量%、シクロデキストリン0.2〜2重量%及び水を含有することを特徴とするクリーム状組成物。
【請求項2】 油脂が乳脂肪を20重量%以上含むものである請求項1に記載のクリーム状組成物。
【請求項3】 シクロデキストリンがα−シクロデキストリンを含むものである請求項1又は2に記載のクリーム状組成物。
【請求項4】 クリーム状組成物がさらに生クリームを含むものである請求項1〜3の何れか1項に記載のクリーム状組成物。
【請求項5】 クリーム状組成物がホイップしたクリームである請求項1〜4の何れか1項に記載のクリーム状組成物。
【請求項6】 水に無脂乳固形分、ソルビトール及び/又は平均分子量が500以下の還元澱粉糖化物、シクロデキストリン及びポリグリセリン脂肪酸エステルを含む親水性乳化剤を添加して形成した水相を加温し、油脂に親油性乳化剤を添加して形成した油相であって加温して溶融した油相を該水相に加えた後、乳化することを特徴とするクリーム状組成物の製造方法。
【請求項7】 親水性乳化剤がポリグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルであり、親油性乳化剤がレシチンおよびグリセリン脂肪酸エステルである請求項6記載の製造方法。
【請求項8】 水相にさらに生クリームが添加されている請求項6又は7に記載の製造方法。