説明

冷凍車用冷凍機ユニット

【課題】圧縮機を、走行風が積極的に当たる部位に配置することで、システム効率を向上させるようにした、冷凍車用冷凍機ユニットを提供する。
【解決手段】冷凍車10のキャビン11屋根部に隣接する、冷凍庫12を形成する外パネル13屋根部に冷凍車用冷凍機ユニット14を配置する。
前記圧縮機15を、凝縮器16側に設け、ユニットを囲う樹脂製筐体カバー18内の上部に配置する。圧縮機15前方の筐体カバー18には、開口部23を設けて、走行風が好適に圧縮機15にもたらされるようにしている。
筐体カバー18内において、凝縮器16と圧縮機15との間に仕切板24を介在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動コンプレッサを冷凍機ユニット内に配置し、且つ電動コンプレッサを、ユニット内で積極的に走行風があたる部位に配置し冷却することで、架装性を向上させると共にシステム効率を向上させるようにした、冷凍車用冷凍機ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における、冷凍設備を有するトラックなどの車両1において、たとえば図2(特許文献1)に示すように、コンプレッサ2以外の主要部品である、コンデンサ3、エバポレータ4を一体化したユニットがある。これは、冷凍機部品であるコンプレッサ2、コンデンサユニットUc、エバポレータユニットU、そしてそれらをつなぐ冷媒配管5、各々を車両1に架装していたものを、コンデンサユニットUcと、エバポレータユニットUを一体化した冷凍機ユニットU以外に、コンプレッサ2と冷凍機ユニットUとをつなぐ冷媒配管5があるため、大幅な架装工数削減には至っていない。
【0003】
それに対し、特許文献2では、冷媒を圧縮する圧縮機、凝縮器、減圧手段、および蒸発器からなる冷凍サイクル装置をユニット化し、このユニットを、車両キャビン屋根部に設置するようにしている。
このように、冷凍サイクル装置をユニット化したことで、大幅な工数削減が可能となったとしているものの、ユニットに内蔵され、モータの放熱が必要とされるモータ動力の圧縮機の配置に関しては、特に限定されてはおらず、圧縮機の効率が最大限に発揮される構造となっているとはいえない。
【0004】
【特許文献1】特開平11−20460号公報
【特許文献2】特開2005−126052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、上記特許文献2における車両の冷凍サイクル装置をユニット化したものは、車両のキャビン屋根部に配置されることから、走行時、風を常に受けるようになっているにもかかわらず、発熱部位であるモータ動力の圧縮機の配置は、必ずしも走行風を当てるといった、設計になっているわけではない。
本発明は、以上のような背景から提案されたものであって、電動コンプレッサをユニット内で走行風が、積極的に当たる部位に配置することで、架装性を向上させると共にシステム効率を向上させるようにした、冷凍車用冷凍機ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明における請求項1では、ユニット化し、キャビン(11)屋根部に設置するようにした、冷凍車用の冷凍サイクル装置(19)において、圧縮機(15)は、凝縮器(16)側に設け、凝縮器(16)コアの風流れに対し側方に配置し、且つ圧縮機(15)前方のカバーに開口部(23)を設けるようにしたので、走行風は、圧縮機(15)に好適にもたらされ、圧縮機(15)に対し、放熱を促進し、熱的効率を高め、省エネ化を可能とする。
【0007】
また本発明における請求項2では、前記凝縮器(16)と圧縮機(15)との間に仕切板(24)を設けて、凝縮器(16)の排熱を前記圧縮機(15)に当たらないように構成したことで、走行風により好適に、圧縮機(15)からの発熱が吸収され、しかも、凝縮器(16)の排熱を仕切板(24)により遮断することができ、効率の低下を防止することができる。
【0008】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明にかかる冷凍車用冷凍機ユニットにつき、一つの実施の形態を示し、添付の図面に基づいて説明する。
図1に示す冷凍車10は、内燃機関と電気モータの二つの動力源を有するいわゆるハイブリッド車である。ハイブリッド車は、燃費性能や、排ガス汚染など環境保全の観点から、徐々に増加してきており、乗用車に限らず、トラック、バスなどの貨物、大型車両にも拡大してきている。
このハイブリッド車である冷凍車10には、キャビン11屋根部に隣接する、冷凍庫12を形成する外パネル13屋根部に、本発明にかかる冷凍車用冷凍機ユニット14を配置している。
【0010】
すなわち、冷凍車用冷凍機ユニット14は、周知の構成要素である、冷媒を圧縮する圧縮機15と、凝縮器16と、減圧手段(図示省略)と、および蒸発器17とを樹脂製筐体カバー18内に配設すると共に、それぞれ配管Pによって連絡接続してユニット化し、冷凍車用の冷凍サイクル装置19を構成している。これら冷凍サイクル装置19の各構成要素は、冷凍庫12を形成する外パネル13下方車体側に配置した高電圧バッテリ20、または図示しないが、車両用エンジンまたは電動機などの車両用動力源の駆動により、発電される電気を蓄電する蓄電手段を電源として駆動する構成としている。
【0011】
圧縮機15は、電動による圧縮機であって、冷凍庫12外パネル13下方車体側に配置した高電圧バッテリ20とインバータ(図示省略)を介して電気的に接続しており、冷凍車10が停止していても、またエンジンが停止していても、車両用エンジンまたは電動機などの車両用動力源の駆動により、発電される電気を蓄電する蓄電手段、または高電圧バッテリ20からの電力によって駆動する構成である。
【0012】
凝縮器16は、圧縮機15により圧縮された高温高圧の冷媒ガスを凝縮するものであり、凝縮ファン16aと組み合わされ、カバー16外から空気を冷凍車10の停止時においても、強制的に取り入れたり、走行風を取り入れて、凝縮器16と熱交換させている。
【0013】
減圧手段は、流入した液冷媒を減圧して膨張させるものである。
蒸発器17は、減圧された冷媒を蒸発する熱交換器であり、送風機17aと組み合わせて冷凍庫12内に臨むように冷凍庫12の開口部21に配設している。この場合、開口部21には、蒸発器17および送風機17aを介して、断熱パネル22で取り囲むように閉止している。
送風機17aの作動により冷凍庫12内の空気を循環させて蒸発器17と熱交換させて、冷凍庫12内の空気を冷やしている。そして、蒸発器17により蒸発された冷媒は、圧縮機15の吸入側に流入するようにしている。
【0014】
そして、前記圧縮機15はインバータ(図示省略)と共に、凝縮器16側に設け、凝縮器16コアの風流れに対し側方に配置している。すなわち、圧縮機15は、図中、ユニットを囲う樹脂製筐体カバー18内の上部に配置している。
また、圧縮機15前方の筐体カバー18には、開口部23を設けて、走行風が好適に圧縮機15にもたらされるようにしている。
【0015】
さらに、前記筐体カバー18内において、凝縮器16と圧縮機15との間には、仕切板24を介在している。凝縮器16の排熱を前記圧縮機15に及ぼさないように遮断している。
【0016】
本発明にかかる冷凍車用冷凍機ユニット14は、以上のように構成されるものであり、次に、その作用を説明する。
先ず、冷凍車10における冷凍庫12は、被冷凍物を保管するときは、常時冷凍状態にあることが必要であり、冷凍車用冷凍機ユニット14を動作状態にしておくことが必要である。
冷凍車10が駐車状態にあるときは、すなわち、エンジン(およびモータ)が完全に停止状態にあるときでも、冷凍車用冷凍機ユニット14の運転スイッチ(図示せず)はオン状態にしておく。
この際、冷凍車用冷凍機ユニット14の各構成要素は、冷凍庫12を形成する外パネル13下方車体側に配置した高電圧バッテリ20を電源として作動し、冷凍庫12により、冷凍を維持することができる。
【0017】
冷凍車用冷凍機ユニット14の運転スイッチをオンとすることで、圧縮機15は駆動し、冷凍サイクル装置19内の冷媒が配管Pを通して循環する。
凝縮器16は、圧縮機15により圧縮された高温高圧の冷媒ガスを凝縮し、凝縮ファン16aによって、カバー16外から空気を強制的に取り入れ、凝縮器16と熱交換を行う。
次いで減圧手段は、流入した液冷媒を減圧して膨張させ、蒸発器17に送る。
一方、送風機17aの作動により、冷凍庫12の空気は循環する一方、循環する冷媒が蒸発器17に取り入れられ、減圧された冷媒が蒸発器17で蒸発して、循環する冷凍庫12の空気と熱交換を行い、蒸発器17により冷却された冷凍庫12の空気が循環することで、冷凍庫12は冷凍される。
【0018】
冷凍車10を動かすときは、勿論、高電圧バッテリ20みのならず、車両用エンジンまたは電動機などの車両用動力源の駆動により、発電される電気を動力として冷凍車用冷凍機ユニット14を運転することができる。
この場合は、凝縮器16は、圧縮機15により圧縮された高温高圧の冷媒ガスを凝縮し、凝縮ファン16aによって、カバー16外から空気を強制的に取り入れるだけでなく、走行風が入り、凝縮器16と熱交換を行うことができる。
同様に、冷媒が循環し、蒸発器17に取り入れられ、減圧された冷媒が蒸発器17で蒸発して、循環する冷凍庫12の空気と熱交換を行い、蒸発器17により蒸発された冷媒は、圧縮機15の吸入側に流入し、再び冷媒は高温高圧化されて凝縮器16へと循環する。
【0019】
冷凍車10が走行中、圧縮機15へは、圧縮機15前方の筐体カバー18の開口部23から、外気が導入されるので、走行風により好適に、圧縮機15の駆動源であるモータ(図示省略)、並びにインバータ(図示省略)からの発熱が吸収される。
また、圧縮機15と凝縮器16とは、筐体カバー18に設けた仕切板24により、凝縮器16における排熱を遮断することができ、効率の低下を抑制することができる。
【0020】
以上のように、本発明にかかる冷凍車用冷凍機ユニット14では、冷凍車10の、キャビン11屋根部に隣接する、冷凍庫12を形成する外パネル13屋根部に装着され、この際、圧縮機15は、圧縮機15前方の筐体カバー18の開口部23から、外気が導入される構成であり、しかも、圧縮機15と凝縮器16とは、筐体カバー18に設けた仕切板24により、凝縮器16における排熱を遮断することができ、効率の低下を防止することができる。
さらには、冷凍車用冷凍機ユニット14は、冷凍車10が停車状態でも、駐車状態でも勿論、運転させることができ、冷凍機として、必要不可欠な要素を備えているということができ、しかも、冷凍庫12を形成する外パネル13下方車体側に配置した高電圧バッテリ20を電源として作動し、冷凍庫12により、冷凍を維持することができ、いわゆるハイブリッド車に適応した冷凍車用冷凍機ユニット14であるということができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかる冷凍車用冷凍機ユニットを用いた冷凍車の全体構成を示す模式図である。
【図2】従来の冷凍車用冷凍機ユニットを用いた冷凍車の全体構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0022】
10 冷凍車
11 キャビン
12 冷凍庫
13 外パネル
14 冷凍機ユニット
15 圧縮機
16 凝縮器
16a 凝縮ファン
17 蒸発器
17a 送風機
18 筐体カバー
19 冷凍サイクル装置
20 高電圧バッテリ
21 開口部
22 断熱パネル
23 開口部
24 仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機(15)、凝縮器(16)、減圧手段、および蒸発器(17)をユニット化し、このユニットを、キャビン(11)屋根部に設置するようにした、冷凍車用の冷凍サイクル装置(19)において、
前記圧縮機(15)は、凝縮器(16)側に設け、凝縮器(16)コアの風流れに対し側方に配置し、且つ圧縮機(15)前方のカバーに開口部(23)を設ける構成としたことを特徴とする冷凍車用冷凍機ユニット。
【請求項2】
前記凝縮器(16)と圧縮機(15)との間に仕切板(24)を介在して、凝縮器(16)の排熱を前記圧縮機(15)に及ぼされないように遮断する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の冷凍車用冷凍機ユニット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−128540(P2008−128540A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312946(P2006−312946)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】