説明

冷却ファン装置及びこの装置を備えた電子装置並びに冷却方法

【課題】筐体内部の高温箇所を、冷却ファンの回転速度の高速化に基づく消費電力や騒音の増加なしに、予め定めた温度よりも低くする。
【解決手段】筐体の内部を複数の冷却ファン2により冷却する冷却方法において、筐体内部の複数の予め定めた位置の温度情報をそれぞれ受け、予め定めた温度よりも高い温度情報を示すこの温度情報に対応する予め定めた位置に近い冷却ファン2を複数の冷却ファン2のうちから選択し、選択した冷却ファン2に近い予め定めた位置の温度情報が予め定めた温度よりも低くなるように選択した冷却ファン2の送風方向を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却ファン装置及びこの装置を備えた電子装置並びに冷却方法に関し、冷却ファンの送風方向を制御する冷却ファン装置及びこの装置を備えた電子装置並びに冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバ装置、コンピュータ装置等の電子装置には、内部を冷却するための冷却ファンが備えられている。この冷却ファンは、電子装置に搭載可能なCPU(Central Processing Unit)、メモリ、オプションパーツ等を最大の構成で搭載した場合や、冷却ファンが故障した場合でも十分な冷却効率を実現できるよう、冷却ファンを冗長に多めの個数搭載している。また、これらの冷却ファンは、最大構成を考慮して決められた場所に固定して設定される。しかし、発熱量の少ないパーツを組み合わせた装置構成等の場合、この冗長して設定された冷却ファンは無駄となる。
【0003】
そこで、発熱量の少ないパーツを組み合わせた装置構成等の場合、いくつかの冷却ファンを取り外すことが考えられる。しかし、冷却ファンの取り付け位置が固定されているため、電子装置内の温度上昇箇所の発生等、取り外した冷却ファンの影響をカバーするために他の冷却ファンを高速回転させる必要がある。このため、冷却ファンを取り外すことによりかえって消費電力が多くなったり、騒音が増加したりするといった問題がある。また、冷却ファンが故障した場合、隣接した冷却ファンを高速回転させることにより、故障した冷却ファンがカバーしていたエリアを冷却させて電子装置を稼働させることは可能である。しかし、冷却ファンを高速回転させるため、消費電力が多くなったり、騒音が増加したりするといった問題がある。
【0004】
この問題を解決する方法として、冷却ファンを必要位置に移動させることが考えられる。冷却ファンを必要位置に移動できるようにした冷却ファン装置を有する電子装置が特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0005】
特許文献1は、電子機器の冷却構造を開示している。この電子機器の冷却構造は、外気温度を検出する外気温度センサと、筐体の内部温度を検出する機器温度センサと、筐体の外壁に沿設されたアクチュエータによって位置移動が可能な空冷ファンと、各温度センサの検出温度信号を入力し、これらの信号に基づいて空冷ファンの位置を制御する制御手段とで構成している。そして、特許文献1では、空冷ファンを動かし外気温度と筐体の内部温度との温度差が最小となる位置に空冷ファンを保持している。しかし、この電子機器の冷却構造は、空冷ファンの位置を移動できるようにしたものの、外気温度と筐体の内部温度との温度差が最小となるように、空冷ファンを移動しているのみであるので、電子機器内の温度上昇箇所を冷却することはできない。
【0006】
特許文献2は、ラック冷却装置開示している。このラック冷却装置は、ラックの背面に一つの冷却ファンを備え、ラック内の温度を検出し最も冷却したい位置にこの冷却ファンを背面に沿って移動させるようにしている。しかし、このラック冷却装置は、一つの冷却ファンしか備えていないので、ラック内の最も冷却したい位置にこの冷却ファンを移動させると、ラック内の他の位置の温度が上昇し、ラック内に設定されている装置が正常に動作しなくなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−145261号公報
【特許文献2】特開2003−152377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した、最大構成を考慮して冷却ファンを固定して設定する電子装置は、発熱量の少ないパーツを組み合わせた装置構成の場合に、いくつかの冷却ファンを取り外したときに、電子装置内の温度上昇箇所の発生等の取り外した冷却ファンの影響をカバーするために他の冷却ファンを高速回転させる必要がある。このため、消費電力が多くなったり、騒音が増加したりするといった問題がある。また、冷却ファンが故障した場合は、故障した冷却ファンがカバーしていたエリアを冷却させるために、隣接した冷却ファンを高速回転させる。このため、消費電力が多くなったり、騒音が増加したりするといった問題がある。
【0009】
また、上述した特許文献1に開示された電子機器の冷却構造は、外気温度と筐体の内部温度との温度差が最小となるように空冷ファンの位置を移動できるようにしている。このため、外気温度と筐体の内部温度との温度差が最小となるように空冷ファンを移動しているのみであるので、電子機器内の温度上昇箇所に対して冷却することはできないといった問題がある。
【0010】
更に、上述した特許文献2に開示されたラック冷却装置は、ラックの背面に一つの冷却ファンを備え、ラック内の温度を検出し最も冷却したい位置にこの冷却ファンを背面に沿って移動させるようにしている。このため、このラック冷却装置は、一つの冷却ファンしか備えていないので、ラック内の最も冷却したい位置にこの冷却ファンを移動させると、ラック内の他の位置の温度が上昇し、ラック内に設定されている装置が正常に動作しなくなるおそれがあるといった問題がある。
【0011】
本発明の目的は、上記課題を解決する冷却ファン装置及びこの装置を備えた電子装置並びに冷却方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の冷却ファン装置は、筐体内部の複数の箇所に温度センサをそれぞれ備えた前記筐体の内部に設定される冷却ファン装置において、複数の冷却ファンと、前記複数の温度センサから温度情報をそれぞれ受け、予め定めた温度よりも高い温度情報を示す前記温度センサが設定された前記箇所に近い冷却ファンを前記複数の冷却ファンのうちから選択し、前記選択した冷却ファンに近い前記箇所の前記温度センサの示す温度情報が前記予め定めた温度よりも低くなるように前記選択した冷却ファンの送風方向を制御する制御ユニットと、を備えている。
【0013】
本発明の冷却方法は、筐体内部の複数の箇所に温度センサをそれぞれ備えた前記筐体の内部を複数の冷却ファンにより冷却する冷却方法において、前記複数の温度センサから温度情報をそれぞれ受け、予め定めた温度よりも高い温度情報を示す前記温度センサが設定された前記箇所に近い冷却ファンを前記複数の冷却ファンのうちから選択し、前記選択した冷却ファンに近い前記箇所の前記温度センサの示す温度情報が前記予め定めた温度よりも低くなるように前記選択した冷却ファンの送風方向を制御するようにしている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、筐体内部に備えた複数の温度センサから温度情報をそれぞれ受け、予め定めた温度よりも高い温度情報を示す温度センサが設定された箇所に近い冷却ファンを複数の冷却ファンのうちから選択し、この選択した冷却ファンに近い箇所の温度センサの示す温度情報が予め定めた温度よりも低くなるように、この選択した冷却ファンの送風方向を制御する。
【0015】
このため、発熱量の少ないパーツを組み合わせた装置構成の場合に、いくつかの冷却ファンを取り外したときや冷却ファンが故障したときにおいても、予め定めた温度よりも高い温度の箇所に近い冷却ファンの送風方向を制御することにより、この箇所の温度を予め定めた温度よりも低くなるようにする。このため、冷却ファンの送風強度を変更せずに、すなわち冷却ファンの回転速度の高速化に基づく消費電力や騒音の増加なしに、予め定めた温度よりも低くすることができる。
【0016】
また、予め定めた温度よりも高い温度の箇所に近い冷却ファンの送風方向を制御することにより、この箇所の温度を予め定めた温度よりも低くなるようにするので、電子機器内の温度上昇箇所を冷却することができる。
【0017】
更に、予め定めた温度よりも高い温度の箇所に近い冷却ファンの送風方向を制御することにより、この箇所の温度を予め定めた温度よりも低くなるようにするため、この箇所の温度を低くするときに、この箇所以外の他の箇所に近い冷却ファンの送風方向は変わらないので、例え、ラック内の最も冷却したい位置にこの冷却ファンを移動させても、ラック内の他の位置の温度の上昇が抑えられる。このため、ラック内に設定されている装置が正常に動作しなくなるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の冷却ファン装置の第1の実施の形態を示す図である。
【図2】本発明の冷却ファン装置の第2の実施の形態を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態の冷却ファン装置の伸縮ユニットと制御ユニットを上方向から見たときの一例を示す説明図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態の冷却ファン装置の伸縮ユニットと移動ユニットを伸縮ユニットの伸縮方向から見たときの一例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態の動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の電子装置の実施の形態を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態の冷却ファンの移動後の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の冷却ファン装置の第1の実施の形態を示す図である。
【0021】
本実施の形態は、複数の冷却ファン2と、制御ユニット3とにより構成する。
【0022】
本実施の形態の冷却ファン装置1は、筐体の内部に設定される。この筐体の内部には複数の予め定められた位置の箇所に温度センサ(不図示)がそれぞれ備えてある。温度センサは、例えばCPU等の発熱により冷やす必要のあるデバイス等のそばに設定してある。
【0023】
複数の冷却ファン2は、各温度センサの備えられた方向に送風する。
【0024】
制御ユニット3は、複数の温度センサから温度情報をそれぞれ受け、温度センサ毎に設定された予め定めた温度よりも高い温度情報を示す温度センサを選択する。予め定めた温度とは、例えば、CPU等のデバイスのそばに設定された温度センサの場合は、そのCPUが正常に動作する温度の上限値等である。予め定めた温度は、温度センサ毎にそれぞれ適宜設定し予め制御ユニット3に格納しておく。
【0025】
そして、制御ユニット3は、この選択した温度センサが設定された箇所に近い冷却ファン2を複数の冷却ファン2のうちから選択する。温度センサの位置情報と冷却ファン2の位置情報は、例えば本冷却ファン装置1を筐体の内部に設置するときに、本冷却ファン装置1に設定しておく。
【0026】
次に、制御ユニット3は、この選択した温度センサの示す温度情報が予め定めた温度よりも低くなるようにこの選択した冷却ファン2の送風方向を制御する。ここで、冷却ファン2の送風方向を制御するとは、次の二つのことを想定している。一つ目は、例えば冷却ファン2自体の位置を平行移動させることにより冷却ファン2の送風方向を平行移動させる。二つ目は、冷却ファン2自体の位置を変えずに、冷却ファン2に備えられた冷却ファン2が送風する風の方向を定めるルーバを制御して冷却ファン2の送風方向を回転移動させる。
【0027】
このように、本発明の冷却ファン装置の第1の実施の形態によれば、予め定めた温度よりも高い温度の箇所に近い冷却ファン2の送風方向を制御することにより、この箇所の温度を予め定めた温度よりも低くなるようにする。このため、冷却ファン2の送風強度を変更せずに、すなわち冷却ファン2の回転速度の高速化に基づく消費電力や騒音の増加なしに、予め定めた温度よりも低くすることができる。また、電子機器内の温度上昇箇所を冷却することができる。
【0028】
更に、予め定めた温度よりも高い温度の箇所の温度を低くするときに、この箇所以外の他の箇所に近い冷却ファン2の送風方向は変わらないので、筐体内の他の箇所の温度の上昇が抑えられる。このため、筐体内に設定されている装置等が正常に動作しなくなるおそれがない。
【0029】
図2は、本発明の冷却ファン装置の第2の実施の形態を示す図である。
【0030】
本実施の形態は、複数の冷却ファン5と、複数の伸縮ユニット6と、移動ユニット7と、制御ユニット8とにより構成する。
【0031】
本実施の形態の冷却ファン装置4は、筐体の内部に設置される。この筐体の内部には複数の予め定められた位置の箇所に温度センサ(不図示)がそれぞれ備えてある。
温度センサは、例えばCPU等の発熱するために冷やす必要のあるデバイス等のそばに設定してある。
【0032】
移動ユニット7は例えばスライドレールであり、スライドレールの一端部に第1の固定板91を備え他の端部に第2の固定板92を備える。そして、第1の固定板91と第2の固定板92間を、複数の伸縮ユニット6(図では第1の伸縮ユニット61〜第5の伸縮ユニット65)と複数の冷却ファン5(図では第1の冷却ファン51〜第4の冷却ファン54)とを交互に配置して直線状に並べる。
【0033】
複数の冷却ファン5は、予め定めた幅を有し各温度センサの備えられた方向に送風する。
【0034】
複数の伸縮ユニット6のそれぞれは、前面と後面と例えば蛇腹状の側面とに囲まれている。第1の伸縮ユニット61の前面は第1の固定板91に接続され、後面は第1の冷却ファン51に接続される。第5の伸縮ユニット65の前面は第4の冷却ファン54に接続され、後面は第2の固定板92に接続される。他の伸縮ユニット6の前面と後面はそれぞれ冷却ファン5に接続される。そして、複数の伸縮ユニット6のそれぞれは、内部に液状化した熱可塑性樹脂12を、チューブ18を介して制御ユニット8から充填することにより蛇腹状の側面が伸縮方向に伸び、内部から液状化した熱可塑性樹脂12を、チューブ18を介して制御ユニット8に抜き取ることにより蛇腹状の側面が伸縮方向に縮む。熱可塑性樹脂12の充填量又は抜き取り量を調整することによりその伸縮量を調整する。複数の伸縮ユニット6は、熱可塑性樹脂12の充填及び抜き取りの替わりに、内部に気体を送り込むことにより伸び、内部から気体を抜き取ることにより縮むようにしても良い。
【0035】
制御ユニット8は、複数の温度センサから温度情報をそれぞれ受け、温度センサ毎に設定された予め定めた温度よりも高い温度情報を示す温度センサを選択する。予め定めた温度は第1の実施の形態で示したものと同じである。そして、制御ユニット8は、この選択した温度センサが設定された箇所に近い冷却ファン5を複数の冷却ファン5のうちから選択する。温度センサの位置情報と冷却ファン5の位置情報は、例えば本冷却ファン装置4を筐体の内部に設置するときに、本冷却ファン装置4の制御ユニット8に設定しておく。次に、制御ユニット8は、この選択した冷却ファン5を挟む伸縮ユニット6を伸縮させることにより、この冷却ファン5に近い箇所の温度センサの示す温度情報が予め定めた温度よりも低くなるようにこの冷却ファン5をスライドレール上で移動させて、この冷却ファン5の送風方向を制御する。
【0036】
次に、本実施の形態の冷却ファン装置4の動作を図3、図4、及び図5を参照して詳細に説明する。
【0037】
図3は、本実施の形態の冷却ファン装置の伸縮ユニットと制御ユニットを上方向から見たときの一例を示す説明図である。
【0038】
伸縮ユニット6の内部には、熱可塑性樹脂12が充填してある。また、伸縮ユニット6の内部には伸縮ユニット6の前面と後面間の距離を測定する距離センサ14がある。この距離センサ14により伸縮ユニット6の伸縮具合を測定する。更に、伸縮ユニット6の内部には熱可塑性樹脂12を暖めて液状化させるためのヒータ13がある。伸縮ユニット6の側面を介して、ヒータ13に電力を供給する電力線(不図示)と距離センサ14の値を出力する信号線(不図示)とが制御ユニット8に接続されている。また、伸縮ユニット6の側面には、熱可塑性樹脂12を充填したり抜き取ったりするためのチューブ18が制御ユニット8に接続されている。
【0039】
制御ユニット8は、制御用プロセッサ10と、コンプレッサ11とを備えている。また、内部に熱可塑性樹脂12及びこの熱可塑性樹脂12を暖めて液状化させるためのヒータ13がある。制御用プロセッサ10は、本冷却ファン装置4が設定された筐体の内部の複数箇所に備えられたそれぞれの温度センサから温度情報をそれぞれ受ける。制御用プロセッサ10は、この温度情報に基づいて制御ユニット8内及び対象となる伸縮ユニット6内の熱可塑性樹脂12をヒータ13により暖めて液状化させ、コンプレッサ11に熱可塑性樹脂12の充填又は抜き取りの指示をする。コンプレッサ11は、この指示を受け、チューブ18を介して液状化した熱可塑性樹脂12を伸縮ユニット6に充填したり伸縮ユニット6から抜き取ったりして伸縮ユニット6を伸縮させる。チューブ18は熱可塑性樹脂12の充填や抜き取りによって伸縮する伸縮ユニット6の状態に応じて自由に動けるものとする。
【0040】
図4は、本実施の形態の冷却ファン装置の伸縮ユニットと移動ユニットを伸縮ユニットの伸縮方向から見たときの一例を示す図である。この図は、伸縮ユニット6の下部が移動ユニット7に組み込まれてスライドする様子を示している。ヒータ13に電力を供給する電力線と距離センサ14の値を出力する信号線とは制御ユニット8に接続される。
【0041】
図5は、本発明の第2の実施の形態の動作の一例を示すフローチャートである。
【0042】
ここで、図5を参照して、本実施の形態で示す冷却ファン装置の動作について説明する。
【0043】
最初に、冷却ファン5は、予め定めた回転数で回転している。
【0044】
図5のステップS1では、制御ユニット8の制御用プロセッサ10は、本冷却ファン装置4が設定された筐体の内部の複数箇所に備えられたそれぞれの温度センサから例えば信号線(不図示)により温度情報をそれぞれ受ける。
【0045】
図5のステップS2では、制御用プロセッサ10は、それぞれの温度センサに対してそれぞれ設定された予め定められた温度よりも高い温度情報を示した温度センサがあるか否かを調べる。調べた結果が、予め定められた温度よりも高い温度情報を示す温度センサがない場合はステップS1へ戻る。調べた結果が、予め定められた温度よりも高い温度情報を示す温度センサがある場合は、ステップS3へと続ける。
【0046】
図5のステップS3では、制御用プロセッサ10は、予め定められた温度よりも高い温度情報を示す温度センサが複数ある場合は、予め定められた温度と温度情報との差分がより大きい温度情報を示す温度センサを選択する。予め定められた温度よりも高い温度情報を示す温度センサが一つの場合は、この温度センサを選択する。そして、この温度センサの位置に最も近い冷却ファン5を選択する。
【0047】
図5のステップS4では、制御用プロセッサ10は、この選択した冷却ファン5に隣接する二つの伸縮ユニット6と制御ユニット8の各ヒータ13を加熱させる。すなわち、制御用プロセッサ10は、制御ユニット8内に予め備えられた電源(不図示)をONにしてヒータ13に電力を供給しヒータ13を加熱する。これにより、伸縮ユニット6内と制御ユニット8内の熱可塑性樹脂12を暖め液状化させる。
【0048】
図5のステップS5では、制御用プロセッサ10は、この選択した冷却ファン5をこの温度センサの位置の方向へ、すなわち予め定められた温度よりも低くなる方向へ、この冷却ファン5に隣接する二つの伸縮ユニット6を伸縮させることにより、移動させる。
【0049】
ここで、温度センサの位置の方向とは、スライドレール上のこの冷却ファン5の位置から、この温度センサの位置をスライドレール上へ垂直に投影した位置への方向である。
【0050】
温度センサの位置情報と冷却ファン5の位置情報は、例えば2次元情報として、一方の方向をスライドレールの長尺方向とし、他の方向をスライドレールの長尺方向に垂直な方向として、本冷却ファン装置4を筐体の内部に設置するときに、本冷却ファン装置4の制御ユニット8に設定しておく。冷却ファン5の位置情報は、冷却ファン5が移動したときに更新して制御ユニット8に設定する。
【0051】
冷却ファン5の移動方法は、例えば冷却ファン5を挟んだ伸縮ユニット6のうち、冷却ファン5を移動させたい方向にある伸縮ユニット6からコンプレッサ11により熱可塑性樹脂12を抜き取ることにより予め定めた距離(例えば10mm)縮め、他方の伸縮ユニット6にコンプレッサ11により熱可塑性樹脂12を充填することによりを例えば10mm伸ばす。これにより、伸縮ユニット6に挟まれた冷却ファン5は移動させたい方向に10mm移動する。この移動距離は10mmでなくてもよく、任意に設定してよい。
【0052】
図5のステップS6では、制御用プロセッサ10は、この温度センサの温度情報を監視しつつ、10mmの移動を繰り返してこの冷却ファン5を移動させる。そして、この温度情報が上昇に転ずる位置でこの伸縮ユニット6の伸縮を停止させてこの冷却ファン5の移動を止める。
【0053】
図5のステップS7では、制御用プロセッサ10は、この冷却ファン5に隣接する二つの伸縮ユニット6内のヒータ13の加熱を停止させ、伸縮ユニット6内の熱可塑性樹脂12を個体化させる。これにより、これらの伸縮ユニット6に挟まれた冷却ファン5の位置は固定される。
【0054】
図5のステップS8では、次に、制御用プロセッサ10は、この固定した冷却ファン5に対応する温度センサの温度情報を監視しつつ、この温度情報がこの温度センサに対応する予め定めた温度を超えない回転数までこの冷却ファン5の回転数を下げ、ステップS1へ戻る。
【0055】
このように、本発明の冷却ファン装置の第2の実施の形態によれば、予め定めた温度よりも高い温度の箇所に近い冷却ファン5の位置を移動させてこの冷却ファン5の送風方向を制御することにより、この箇所の温度を予め定めた温度よりも低くなるようにする。このため、冷却ファン5の送風強度を変更せずに、すなわち冷却ファン5の回転速度の高速化に基づく消費電力や騒音の増加なしに、予め定めた温度よりも低くすることができる。
【0056】
また、予め定めた温度よりも高い温度の箇所の温度を予め定めた温度よりも低くした後に、伸縮ユニット6内の熱可塑性樹脂12を個体化させることにより冷却ファン5の位置を固定するので、冷却ファン5の位置の保持にエネルギーを消費しない。
【0057】
更に、予め定めた温度よりも高い温度の箇所の温度を予め定めた温度よりも低くした後に、この温度が予め定めた温度を超えない範囲で、この冷却ファン5の回転数を下げるので、冷却ファン5の消費電力を節約できる。
【0058】
また、予め定めた温度よりも高い温度の箇所の温度を予め定めた温度よりも低くなるようにするので、電子機器内の温度上昇箇所を冷却することができる。
【0059】
また、予め定めた温度よりも高い温度の箇所の温度を予め定めた温度よりも低くなるようにするため、この箇所の温度を低くするときに、この箇所以外の他の箇所に近い冷却ファン5の送風方向は変わらないので、筐体内の他の箇所の温度の上昇が抑えられる。このため、筐体内に設定されている装置等が正常に動作しなくなるおそれがない。
【0060】
更に、冷却ファン5の移動を、モータや励磁コイルで行うのではなく熱可塑性樹脂12の充填と抜き取りにより行うので、冷却ファン5の移動時に電磁波(雑音)が発生しない。このため、電子装置内に使用できる。
【0061】
図6は、本発明の電子装置の実施の形態を示す図である。
【0062】
本実施の形態は、マザーボード15と、冷却ファン装置4と、を備える。
【0063】
本実施の形態では、電子装置の一例としてサーバ装置を使用して説明する。
【0064】
本実施の形態の電子装置は、ラック、ボックス、アングル等の筐体を有しこの筐体の内部に、複数の箇所に温度センサ16(図では第1の温度センサ161〜第4の温度センサ164)がそれぞれ備えてあるマザーボード15と、その横にマザーボード15に送風する冷却ファン装置4と、その横にハードディスクドライブ(HDD)等の補助装置と、電源が備えられている。
【0065】
マザーボード15には、電子装置を制御する複数のCPU、これらのCPUが電子装置を制御するときに使用する複数のメモリ、例えば補助的に使用するデバイス、マザーボード15を制御するBMC(Baseboard Management Controller)等の複数のデバイスが備えられている。
【0066】
温度センサ16は、例えば4カ所設定され、第1の温度センサ161は第1のCPUに、第2の温度センサ162は第2のCPUに、第3の温度センサ163はオプションカード位置に、第4の温度センサ164はBMCにそれぞれ設定されている。
【0067】
冷却ファン装置4は、図2で示した本発明の第2の実施の形態と同様である。冷却ファン装置4の各冷却ファン5は、図6の矢印で示すように、第1の冷却ファン51は第1の温度センサ161の方向に、第2の冷却ファン52は第2の温度センサ162の方向に、第3の冷却ファン53は第2の温度センサ162と第3の温度センサ163の間の方向に、第4の冷却ファン54は第4の温度センサ164の方向に、それぞれ送風している。
【0068】
次に、本実施の形態の電子装置の動作を図5及び図7を参照して詳細に説明する。
【0069】
図7は、本実施の形態の電子装置の冷却ファンの移動後の一例を示す図である。この図は、図6で示すオプションカード17がない状態で構成された電子装置に、オプションカード17を設定したときの冷却ファン5の移動後の位置関係を示している。
【0070】
図5は、本発明の第2の実施の形態の動作の一例を示すフローチャートであるが、本実施の形態の電子装置では、この第2の実施の形態を使用している。このため、本実施の形態の電子装置の動作を図5を使用して説明する。
【0071】
この図5を参照して、本実施の形態で示す電子装置の動作について説明する。
【0072】
最初に、オプションカード17がない状態で構成された電子装置に対し、オプションカード17をオプションカード位置に設定する。このときには、オプションカード17がない状態で構成された電子装置の場合と同様に、各冷却ファン5は、図6で示す位置で予め定めた回転数で回転している。
【0073】
図5のステップS1では、制御ユニット8の制御用プロセッサ10は、マザーボード15の複数箇所に設けられたそれぞれの温度センサ16から温度情報をそれぞれ受ける。例えば、それぞれの温度センサ16からの温度情報をBMCで受け、BMCからこれらの情報を信号線(不図示)を介して制御ユニット8の制御プロセッサで受ける。または、それぞれの温度センサ16からの温度情報を信号線(不図示)を介して制御プロセッサで受けてもよい。
【0074】
図5のステップS2では、制御用プロセッサ10は、それぞれの温度センサ16に対してそれぞれ設定された予め定められた温度よりも高い温度情報を示した温度センサ16があるか否かを調べる。調べた結果が、予め定められた温度よりも高い温度情報を示す温度センサ16がない場合はステップS1へ戻る。調べた結果が、予め定められた温度よりも高い温度情報を示す温度センサ16がある場合は、ステップS3へと続ける。
【0075】
図5のステップS3では、制御用プロセッサ10は、予め定められた温度よりも高い温度情報を示す温度センサ16が複数ある場合は、予め定められた温度と温度情報との差分がより大きい温度情報を示す温度センサ16を選択する。予め定められた温度よりも高い温度情報を示す温度センサ16が一つの場合は、この温度センサ16を選択する。そして、この温度センサ16の位置に最も近い冷却ファン5を選択する。
【0076】
ここで、図6に示すように、オプションカード17をオプションカード位置に設定した後のオプションカード17への冷却ファン5の風あたりは弱い。このため、オプションカード位置の温度を示す第3の温度センサ163がオプションカード17の通常使用時の温度(予め定められた温度)よりも高くなる。このため、このステップS3における第1回目の処理では、制御用プロセッサ10は、この第3の温度センサ163の位置に最も近い冷却ファン5(第3の冷却ファン53)を選択する。
【0077】
図5のステップS4からステップS8は、本発明の冷却ファン装置の第2の実施の形態の説明と同じである。
【0078】
尚、以上の説明では、制御ユニット8の制御を制御用プロセッサ10により行ったが、制御用プロセッサ10の替わりにマザーボード15上のBMCを使用しても良い。また、制御用プロセッサ10の替わりにこのBMCを使用し、BMCからの指示を制御ユニット8の制御用プロセッサ10で受け、この制御用プロセッサ10が制御ユニット8内に指示しても良い。
【0079】
このように、本発明の電子装置の実施の形態によれば、予め定めた温度よりも高い温度の箇所に近い冷却ファン5の位置を移動させてこの冷却ファン5の送風方向を制御することにより、この箇所の温度を予め定めた温度よりも低くなるようにする。このため、オプションカード17がない状態で構成された電子装置にオプションカード17を設定しても、冷却ファン5の送風強度を変更せずに、すなわち冷却ファン5の回転速度の高速化に基づく消費電力や騒音の増加なしに、オプションカード17の温度を予め定めた温度よりも低くすることができる。
【0080】
以上のように、本発明に係る実施の形態によれば、予め定めた温度よりも高い温度の箇所に近い冷却ファンの送風方向を制御することにより、この箇所の温度を予め定めた温度よりも低くなるようにする。このため、冷却ファンの送風強度を変更せずに、すなわち冷却ファンの回転速度の高速化に基づく消費電力や騒音の増加なしに、予め定めた温度よりも低くすることができる。また、電子機器内の温度上昇箇所を冷却することができる。
【0081】
更に、予め定めた温度よりも高い温度の箇所の温度を低くするときに、この箇所以外の他の箇所に近い冷却ファンの送風方向は変わらないので、筐体内の他の箇所の温度の上昇が抑えられる。このため、筐体内に設定されている装置等が正常に動作しなくなるおそれがない。
【符号の説明】
【0082】
1 冷却ファン装置
2 冷却ファン
3 制御ユニット
4 冷却ファン装置
5 冷却ファン
6 伸縮ユニット
7 移動ユニット
8 制御ユニット
9 固定板
10 制御用プロセッサ
11 コンプレッサ
12 熱可塑性樹脂
13 ヒータ
14 距離センサ
15 マザーボード
16 温度センサ
17 オプションカード
18 チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部に設定される冷却ファン装置において、
複数の冷却ファンと、
前記筐体内部の複数の予め定めた位置の温度情報をそれぞれ受け、予め定めた温度よりも高い温度情報を示すこの温度情報に対応する前記予め定めた位置に近い冷却ファンを前記複数の冷却ファンのうちから選択し、前記選択した冷却ファンに近い前記予め定めた位置の前記温度情報が前記予め定めた温度よりも低くなるように前記選択した冷却ファンの送風方向を制御する制御ユニットと、
を備えたことを特徴とする冷却ファン装置。
【請求項2】
自らが伸縮する複数の伸縮ユニットと、
前記複数の冷却ファンと前記複数の伸縮ユニットとを交互に配置して直線状に並べた移動ユニットとを更に備え、
前記制御ユニットは、前記選択した冷却ファンを挟む前記伸縮ユニットを伸縮させることにより、
前記選択した冷却ファンに近い前記予め定めた位置の前記温度情報が前記予め定めた温度よりも低くなるように前記選択した冷却ファンを移動させて、前記冷却ファンの送風方向を制御する、
ようにしたことを特徴とする請求項1記載の冷却ファン装置。
【請求項3】
前記冷却ファンは、送風方向を定めるルーバを備え、
前記制御ユニットは、前記ルーバの方向を制御することにより前記冷却ファンの送風方向を制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の冷却ファン装置。
【請求項4】
前記伸縮ユニットは、内部に液状化した熱可塑性樹脂を充填することにより伸び、内部から液状化した前記熱可塑性樹脂を抜き取ることにより縮むようにした、ことを特徴とする請求項2記載の冷却ファン装置。
【請求項5】
前記伸縮ユニットは、内部に気体を送り込むことにより伸び、内部から前記気体を抜き取ることにより縮むようにした、ことを特徴とする請求項2記載の冷却ファン装置。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記伸縮ユニットを伸縮させることにより、前記選択した冷却ファンに近い前記予め定めた位置の前記温度情報が前記予め定めた温度よりも低くなる方向に前記選択した冷却ファンを移動させ、この冷却ファンに近い前記予め定めた位置の前記温度情報を監視し、前記温度情報が上昇に転ずる位置で前記伸縮ユニットの伸縮を停止させて前記選択した冷却ファンの移動を止める、
ようにしたことを特徴とする請求項2又は4記載の冷却ファン装置。
【請求項7】
前記制御ユニットは、前記伸縮ユニットの伸縮を停止させて前記選択した冷却ファンの移動を止めた後、この冷却ファンに近い前記予め定めた位置の前記温度情報が前記予め定めた温度を超えない回転数までこの冷却ファンの回転数を下げる、
ようにしたことを特徴とする請求項6記載の冷却ファン装置。
【請求項8】
前記制御ユニットは、前記伸縮ユニットの伸縮を停止させて前記選択した冷却ファンの移動を止めた後に、前記伸縮ユニット内の前記熱可塑性樹脂を個体化させる、ようにしたことを特徴とする請求項6記載の冷却ファン装置。
【請求項9】
筐体を有し自らを冷却する冷却ファンを備えた電子装置であって、
複数のデバイスと前記筐体内部の複数の予め定めた位置の前記温度情報を出力する複数の温度センサとを有するマザーボードを備え、前記冷却ファン装置を、この冷却ファン装置の備えた前記複数の冷却ファンによる風が前記マザーボードに向かって吹き付ける位置に設定する、
ようにしたことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の冷却ファン装置を備えた電子装置。
【請求項10】
筐体の内部を複数の冷却ファンにより冷却する冷却方法において、
前記筐体内部の複数の予め定めた位置の温度情報をそれぞれ受け、
予め定めた温度よりも高い温度情報を示すこの温度情報に対応する前記予め定めた位置に近い冷却ファンを前記複数の冷却ファンのうちから選択し、前記選択した冷却ファンに近い前記予め定めた位置の前記温度情報が前記予め定めた温度よりも低くなるように前記選択した冷却ファンの送風方向を制御する、
ようにしたことを特徴とする冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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