説明

冷却ブロワおよび冷却システム

【課題】冷却ブロワの動作異常の原因をより簡易に解析でき得る冷却システムを提供する。
【解決手段】冷却システムは、車両に搭載された電気機器を送風により冷却する冷却ブロワ12と、冷却ブロワ12の駆動を制御する車両ECU10と、冷却ブロワに電力を供給する電源14と、を備え、冷却ブロワ12は、回転することにより送風する羽部材を備えたファンユニット26と、ファンユニット26を回転駆動するモータ24と、車両ECU10からの指示に基づいてモータ24の駆動を制御するとともに駆動結果を車両ECU10側に出力する制御マイコン22と、冷却ブロワ12の動作異常が発生した際に、冷却ブロワ12の制御情報をブロワ側障害情報として記憶するメモリ28と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載の電気機器、例えば、バッテリなどを冷却する冷却ブロワ、および、当該冷却ブロワを用いて電気機器を冷却する冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される電気機器の中には、駆動に伴い多量の熱を発生するものがある。こうした熱は、当該電気機器や周辺の他の電気機器の劣化を招くおそれがある。例えば、エンジンに代えて、または、エンジンに加えて、走行用モータを搭載した電気自動車やハイブリッド自動車には、走行用モータに駆動電力を供給する高圧バッテリが搭載される。かかる高圧バッテリは、充放電時に発熱して高温になり、結果的にバッテリが劣化することがある。こうした高温に起因する電気機器の劣化を防止するために、車両には、通常、当該電気機器を冷却するための冷却ブロワが搭載される。
【0003】
通常、こうした冷却ブロワは、車両ECU(Electronic Control Unit)により、その駆動が制御される。車両ECUは、冷却対象機器(例えば高圧バッテリなど)の温度や、ブロワに吸気される空気温度、現在のブロワの風量などに基づいて、対象機器の冷却に必要な冷却ブロワの回転数を算出する。そして、その回転数で駆動するべく、冷却ブロワに駆動指示を出力する。
【0004】
こうした冷却システムは、電気機器を正常動作させる為に非常に重要である。したがって、冷却ブロワの動作異常が発生した場合には、迅速な対応が望まれる。そこで、従来から、車両ECUにおいて、冷却ブロワの動作状況を監視し、動作異常を検知した場合には、そのときの状況(例えば指令回転数など)を障害情報として記録するようになっている。そして、修理・メンテナンスの際には、この車両ECUに記録されている障害情報に基づいて、動作異常の原因を解析するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−9298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この従来の技術では、車両ECUに記録される障害情報は、当該車両ECUで生成された情報(指令回転数など)、あるいは、車両ECUに入力される情報(実回転数など)に限られるという問題があった。そのため、動作異常が検知されたとしても、その動作異常の原因の特定が困難な場合が多かった。例えば、何らかの原因で、冷却ブロワの実回転数を車両ECUに出力する信号ラインに障害が発生し、実回転数が車両ECUに到達しなかったとする。この場合、車両ECUは、本来入力されるべき実回転数が入力されないため、何らかの動作異常が発生していることは検知できる。しかし、車両ECUに記録される障害情報には、実回転数が入力されないという情報しか記録されていないため、この障害情報を解析しても、動作異常の原因が、冷却ブロワに電力を供給する電源ラインにあるのか、冷却ブロワそのものにあるのか、あるいは、各部を接続する信号ラインにあるのか、といった原因解析に時間がかかるという問題があった。
【0007】
なお、特許文献1には、情報処理装置等の電子機器を冷却するために複数のファンユニットを設けた装置が開示されている。この装置では、この複数のファンユニットの駆動を制御するファン制御回路が、何らかの障害を検知すると、当該障害の情報を、システムバスを介して接続されたキャッシュメモリに記録するようになっている。この技術でも、障害情報に基づいて障害の要因を特定することは一応可能であるが、キャッシュメモリに記録される情報は、制御部側(ファン制御回路)に入力された情報に限られ、制御部に直接関与しない情報は記録されない。そのため、やはり、動作異常の原因を解析することに時間がかかる場合があった。
【0008】
つまり、従来、冷却ブロワの動作異常の原因をより簡易に解析でき得る冷却ブロワおよび冷却システムは無かった。
【0009】
そこで、本発明では、冷却ブロワの動作異常の原因をより簡易に解析でき得る冷却ブロワおよび冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の冷却システムは、車載の電気機器を、冷却ブロワを用いて冷却する冷却システムであって、車両に搭載された電気機器を送風により冷却する冷却ブロワと、前記冷却ブロワの駆動を制御する車両ECUと、前記冷却ブロワに電力を供給する電源ユニットと、を備え、前記冷却ブロワは、回転することにより送風する羽部材を備えたファンユニットと、前記ファンユニットを回転駆動するモータと、前記車両ECUからの指示に基づいて前記モータの駆動を制御するとともに、駆動結果を前記車両ECU側に出力するブロワ制御部と、前記冷却ブロワの動作異常が発生した際に、冷却ブロワの制御情報をブロワ側障害情報として記憶する記憶部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
好適な態様では、前記ブロワ側障害情報は、当該冷却ブロワへの電力供給状態を示す電源情報と、当該冷却ブロワ内部の故障状態を示す回転情報と、前記冷却ブロワの前記車両ECU側に出力した冷却ブロワの実回転数を示す回転数出力情報と、前記車両ECUから受け取る指示内容を示す回転指令情報と、を含む。
【0012】
他の好適な態様では、前記ブロワ制御部は、少なくとも、前記車両ECUから動作異常の発生を示す信号を受けた際に、前記ブロワ側障害情報を前記記憶部に記憶する。この場合、前記車両ECUは、指令回転数に応じたデューティ比のデューティ信号を出力することで回転指示し、前記回転指示に用いない特定のデューティ比のデューティ信号を出力することで動作異常の発生を通知する、ことが望ましい。
【0013】
他の本発明である冷却ブロワは、車載の電気機器を送風により冷却する冷却ブロワであって、回転することにより送風する羽部材を備えたファンユニットと、前記ファンユニットを回転駆動するモータと、前記車両ECUからの指示に基づいて前記モータの駆動を制御するとともに、駆動結果を前記車両ECU側に出力するブロワ制御部と、前記冷却ブロワの動作異常が発生した際に、冷却ブロワの制御情報をブロワ側障害情報として記憶する記憶部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷却ブロワ側に障害情報を記憶する記憶部が設けられているため、冷却ブロワの動作異常の原因をより簡易に解析できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態である冷却システムの概略構成図である。
【図2】車両ECUによる冷却ブロワの駆動制御の流れを示すフローチャートである。
【図3】動作異常の原因特定の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である冷却システムの構成図である。この冷却システムは、車両、例えば電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される冷却システムで、走行用モータに電力を供給する高圧バッテリ(図示せず)を冷却するための冷却システムである。
【0017】
なお、本実施形態においては、走行用モータに電力を供給する高圧バッテリを冷却対象としているが、車両に搭載されて冷却が必要な電気機器であれば、他の電気機器、例えば、キャパシタや燃料電池、インバータなどを冷却対象としてもよい。
【0018】
この冷却システムには、高圧バッテリ(冷却対象の電気機器)を送風により冷却する冷却ブロワ12と、当該冷却ブロワ12に電力を供給する電源14、冷却ブロワ12を初めとする車載電気機器の駆動を制御する車両ECU10、および、車両ECU10が制御する各種電気機器の状態を収集して車両ECU10に送る監視ユニット18が設けられている。
【0019】
冷却ブロワ12は、冷却対象の電気機器である高圧バッテリを送風により冷却するものである。この冷却ブロワ12は、回転に伴い送風する羽部材を備えたファンユニット26と、当該ファンユニット26を回転駆動させる駆動モータ24、および、当該駆動モータ24の駆動を制御する制御マイコン22を備えている。制御マイコン22には、モータ24の駆動を制御するとともに、駆動結果を車両ECU10側に出力するブロワ制御部として機能する。この制御マイコン22には、障害情報を記録するメモリ28が搭載されているが、これについては、後に詳説する。
【0020】
駆動モータ24は、車両ECU10及び制御マイコン22によって制御されるようになっている。すなわち、制御マイコン22には、車両ECU10から、指令回転数に対応したデューティ比のデューティ信号が入力される。制御マイコン22は、この指令デューティ信号に応じて駆動モータ24への通電をデューティ制御する機能を有している。
【0021】
駆動モータ24には、当該駆動モータ24の実際の回転数である実回転数を検知する回転数センサ(図示せず)が設けられている。この回転数センサとしては、例えば、ホール素子、レゾルバなどが設けられている。この回転数センサで検知された実回転数は、アナログ信号として監視ユニット18に出力される。
【0022】
監視ユニット18は、冷却ブロワ12を始めとして、車両ECU10が制御対象とする各種電気機器の情報を収集し、車両ECU10に出力するユニットである。冷却ブロワ12の制御に関していえば、この監視ユニット18は、冷却ブロワ12から入力された実回転数を表すアナログ信号を、デジタル信号に変換し、車両ECU10に出力する。したがって、冷却ブロワ12の駆動状況(実回転数など)は、冷却ブロワ12から直接車両ECU10にはいかず、必ず、監視ユニット18を介することになる。また、監視ユニット18は、冷却ブロワ12の実回転数の他に、高圧バッテリの温度や、冷却ブロワ12により吸気される空気の温度(吸気温度)、電源14である補機バッテリの電圧値なども収集し、車両ECU10に送る。
【0023】
車両ECU10は、冷却ブロワ12を始めとして、車両に搭載された各種電気機器の駆動を制御する。具体的には、車両ECU10は、高圧バッテリの充電状態を制御したり、車両の状態に応じて回転電機および車両に搭載された各種電気機器を制御したりする。
【0024】
冷却ブロワ12の制御に関して説明すると、車両ECU10は、高圧バッテリの温度や、吸気温度、現時点での目標回転数と実回転数との差などに基づいて、冷却ブロワ12の新たな目標回転数を算出する。そして、その目標回転数を表すデューティ比の信号を、指令デューティ信号として、冷却ブロワ12に出力する。既述したように、冷却ブロワ12の制御マイコン22は、この指令デューティ信号に応じて駆動モータ24への通電をデューティ制御する。
【0025】
また、車両ECU10は、現時点での目標回転数や、監視ユニット18から送られる実回転数などに基づいて、冷却ブロワ12の動作異常の有無を判断する。具体的には、例えば、目標回転数と実回転数との差が過度に大きい場合(規定閾値を上回る場合)や、そもそも、監視ユニット18から実回転数が送られてこない場合などには、何らかの動作不良が生じたと判断する。動作不良を検知した場合、車両ECU10は、その時点での冷却ブロワ12の制御に関する各種パラメータの値を、ECU側障害情報としてメモリ20に記録する。ここで、ECU側障害情報としては、目標回転数や、実回転数、補機バッテリの電圧値、高圧バッテリの温度、吸気温度など、冷却ブロワ12の駆動制御に関連して車両ECU10において算出または車両ECU10に入力される情報が含まれる。
【0026】
従来の冷却システムでは、動作異常の原因を、このメモリ20に記憶されたECU側障害情報に基づいて、判断していた。しかし、こうした従来の構成では、原因解析に必要な情報が少なく、原因特定に時間がかかるという問題があった。例えば、リレー・ヒューズと冷却ブロワ12とを結ぶ電力ラインに何らの問題が生じ、冷却ブロワ12が正常に回転できなかった場合を考える。この場合、車両ECU10から出力された指令回転数と、実際に回転した実回転数とに大きな差が生じることになるので、何らかの問題が生じていることは把握できる。しかし、その原因が電力ラインにあるのか、冷却ブロワ12そのものの故障であるのか、車両ECU10から冷却ブロワ12への信号ラインにあるのか、あるいは、監視ユニット18を経由して冷却ブロワ12から車両ECU10に向かう信号ラインにあるのか、が全く判断できなかった。その結果、動作異常の原因を厳密に特定するためには、一つ一つの電力ラインや信号ライン等を物理的に検査しなければならず、非常に手間であった。特に、ラジオノイズにより信号ラインに一時的にノイズが乗り、これが原因で動作異常が生じた場合には、その後のメンテナンス時に信号ラインを検査したとしても、その原因を特定することは不可能であった。
【0027】
そこで、本実施形態では、上述したように、冷却ブロワ12の制御マイコン22に記憶手段としてのメモリ28(RAMなど)を設け、動作異常発生時において制御マイコン22で検知した各種情報をブロワ側障害情報として記憶するようにしている。このメモリ28に記憶されるブロワ側障害情報には、電源情報と、回転情報、回転数出力情報、回転指令情報が含まれる。電源情報は、電源14(補機バッテリ)から冷却ブロワ12への電力の供給状態を示す情報で、例えば、供給電力の電圧値などが含まれる。回転情報は、冷却ブロワ12そのものの駆動状態を示す情報であり、冷却ブロワ12が故障しているか否かといった情報である。かかる情報は、制御マイコン22に搭載された自己診断機能で得られる。回転数出力情報は、制御マイコン22が監視ユニット18に出力した実回転数を示す情報である。回転指令情報は、車両ECU10から受け取る指令回転数(指令デューティ信号のデューティ比)を示す情報である。
【0028】
制御マイコン22は、車両ECU10から障害情報保存の指示を受けた場合には、これらブロワ側障害情報をメモリ28に記憶する。冷却ブロワ12の障害対応の際に、車両ECU10に記憶されているECU側障害情報に加え、このブロワ側障害情報も参照することにより、動作異常の要因をより迅速に解析することができる。
【0029】
図2は、車両ECU10におけるブロワ制御の流れを示す図である。車両ECU10は、冷却対象である高圧バッテリの温度や、冷却ブロワ12で吸気される空気温度、現在の目標回転数と実回転数との差分値などに基づいて、高圧バッテリの冷却に必要な冷却ブロワ12の目標回転数を算出する(S10)。そして、この目標回転数を実現する為に必要な駆動電圧値を求め、当該駆動電圧値に応じたデューティ比の信号を、指令デューティ信号として冷却ブロワ12に出力する(S12)。
【0030】
冷却ブロワ12の制御マイコン22は、指令されたデューティ信号に応じて、駆動モータ24への通電をデューティ制御する。そして、駆動モータ24が、印加された電圧に応じて回転駆動することにより、ファンユニット26が回転し、高圧バッテリに対して送風が行なわれる。
【0031】
駆動モータ24に設けられたホール素子は、このときの駆動モータ24の回転数を、実回転数として、制御ユニットに出力する。制御ユニットは取得した実回転数を、デジタル信号に変換したうえで、車両ECU10に送る。
【0032】
車両ECU10は、この送られてきた実回転数や目標回転数などに基づいて、動作異常の有無を判断する(S14)。具体的には、車両ECUは、実回転数として有効な数値が入力されているか、実回転数と目標回転数との差分値が規定閾内に収まっているか、などに基づいて動作異常の有無を判断する。動作異常がないと判断された場合は、ステップS10に戻り、冷却ブロワ12の通常の制御動作を続行する。
【0033】
一方、動作異常が検知された場合、車両ECU10は、その時点で、冷却ブロワ12の制御に関するパラメータを、メモリ20にECU側障害情報として記録する(S16)。具体的には、動作異常が検知された際の目標回転数、実回転数、バッテリ温度などがECU側障害情報として記録される。
【0034】
また、動作異常が検知された場合、車両ECU10は、冷却ブロワ12に、ブロワ側障害情報の記録も指示する(S18)。この記録指示は、例えば、指令デューティ信号として、通常使用しないデューティ比のデューティ信号(例えばデューティ比100%の信号など)を冷却ブロワ12に出力することで行なわれる。このように、特殊なデューティ比のデューティ信号で、障害情報の記録を指示することにより、従来の信号ラインをそのまま流用できる。そして、その結果、従来の冷却システムからの設計変更の量を少なくできる。
【0035】
冷却ブロワ12の制御マイコン22は、特殊なデューティ比のデューティ信号を受け取ると、その時点で制御マイコン22が把握する各種情報をブロワ側障害情報としてメモリ28に記録する。具体的には、上述したように、電源情報と、回転情報、回転数出力情報、回転指令情報をブロワ障害情報として記録する。
【0036】
続いて、実際に障害の原因特定を行なう場合の流れについて説明する。車両のメンテナンスの際、当該車両の異常履歴に、冷却ブロワ12の動作異常が含まれていれば、当該冷却ブロワ12の動作異常の原因特定を行なう。
【0037】
冷却ブロワ12の動作異常の原因を特定する際には、電源ラインの診断(S20)、回転数指令状態の診断(S22)、回転状態の診断(S24)、回転数出力状態の診断(S26)を行なう。
【0038】
電源ラインの診断(S20)では、リレー・ヒューズの確認と、ECU側障害情報およびブロワ側障害情報のうち電源関連の情報の確認を行なう。リレー・ヒューズの確認では、電源14と冷却ブロワ12の間に設けられたリレー・ヒューズが物理的に故障していないかを確認する。また、ECU側障害情報に含まれる電源関係の情報、例えば、電源14(補機バッテリ)の電圧値などを確認する。また、ブロワ側障害情報に含まれる電源関係の情報、例えば、冷却ブロワ12への供給電圧値などを確認する。これらの確認の結果、リレー・ヒューズに何らかの問題があった場合、リレー・ヒューズが動作異常の原因の一つと推測できる。また、補機バッテリの電圧値が過度に低い場合には、当該電圧の低下が動作異常の原因の一つと推測できる。さらに、リレー・ヒューズに問題がなく、かつ、補機バッテリにも問題がないにも関わらず、ブロワ側障害情報に記録されている冷却ブロワ12への供給電力の電圧値が、正常な範囲にない場合には、電力を供給する電源ライン上に何らかの問題があり、当該問題が動作異常の原因の一つと推測できる。
【0039】
回転数指令状態診断(S22)では、ECU側障害情報およびブロワ側障害情報のうち回転数指令に関連する情報の確認を行なう。具体的には、例えば、ECU側障害情報に記録されている指令回転数や、ブロワ側障害情報に記録されている指令回転数を確認する。確認の結果、二つ障害情報に記録されている指令回転数の値が過度に異なるような場合には、車両ECU10から冷却ブロワ12への指令ラインに何らかの問題が発生し、当該問題が動作異常の原因の一つと推測できる。
【0040】
回転状態診断(S24)では、ブロワ側障害情報に基づいて、ブロワ内部の故障の有無を確認する。このブロワ内部の故障は、制御マイコン22に搭載された自己判断機能での診断結果に基づいて判断される。ブロワ内部の故障があった場合には、当該故障が動作異常の原因の一つと推測できる。
【0041】
回転数出力状態診断(S26)は、ECU側障害情報およびブロワ側障害情報のうち回転数出力に関連する情報の確認を行なう。具体的には、例えば、ECU側障害情報に記録されている実回転数(監視ユニット18から出力された実回転数)と、ブロワ側障害情報に記録されている実回転数(冷却ブロワ12から監視ユニット18に出力した実回転数)とを確認する。そして、確認の結果、両者の値が過度に異なる場合には、冷却ブロワ12から監視ユニット18、監視ユニット18から車両ECU10の信号ライン、あるいは、実回転数を示す信号のA/D変換を行なう監視ユニットに何らかの問題が発生し、当該問題が動作異常の原因の一つと推測できる。
【0042】
以上の説明から明らかなとおり、ECU側障害情報に加えて、ブロワ側障害情報も参照することにより、従来に比して、動作異常の原因を簡易に解析することが可能となる。特に、従来、信号ラインに一時的にノイズが乗ったことに起因する一時的な信号ラインの障害は、メンテナンスの際に当該信号ラインを物理的に検査しても検知することは不可能であった。一方、本実施形態によれば、障害が発生した時点の冷却ブロワ側の情報をブロワ側障害情報として記録しているため、一時的な信号ラインの障害の有無も推定することができる。その結果、冷却ブロワ12の障害の原因をより簡易、かつ、確実に特定することができ、メンテナンスに際して、より的確な対応を選択することが可能となる。
【0043】
なお、車両ECU10から冷却ブロワ12への指令ラインに問題が発生した場合には、車両ECU10から出力されるブロワ側障害情報の記録指示(特殊なデューティ比のデューティ信号)も冷却ブロワ12に到達できず、ブロワ側障害情報そのものが記録されないことも考えられる。このように、ブロワ側障害情報が存在しない場合には、上述したような各種確認を行なうことはできないが、このブロワ側障害情報が存在しないということが一つの情報となり、車両ECU10から冷却ブロワ12への指令ラインに何らかの問題が生じたと推測できる。
【0044】
また、本実施形態では、車両ECU10からの指示に基づいて、ブロワ側障害情報を記憶する構成としているが、冷却ブロワ12の制御マイコン22側で自動的に判断して、ブロワ側障害情報を記録するようにしてもよい。具体的には、過電流が検知された場合や、供給電力の電圧が低下した場合には、車両ECU10からの指示がなくても、ブロワ側障害情報を記録するようにしてもよい。かかる構成とすることで、より簡易に、動作異常の原因を特定することができる。
【0045】
また、本実施形態では、実回転数を監視ユニット18を介して車両ECU10に入力する構成となっているが、監視ユニット18は、省略し、冷却ブロワ12から直接、車両ECU10に実回転数を出力するようにしてもよい。
【0046】
また、上述の実施形態では、動作異常の原因特定の際、電源ラインの診断、回転数指令状態の診断、回転状態の診断、回転数出力状態の診断の順で診断を行なっているが、この順序は、当然ながら、適宜、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
車両ECU 10、12 冷却ブロワ、14 電源、18 監視ユニット、20,28 メモリ、22 制御マイコン、24 駆動モータ、26 ファンユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載の電気機器を、冷却ブロワを用いて冷却する冷却システムであって、
車両に搭載された電気機器を送風により冷却する冷却ブロワと、
前記冷却ブロワの駆動を制御する車両ECUと、
前記冷却ブロワに電力を供給する電源ユニットと、
を備え、
前記冷却ブロワは、
回転することにより送風する羽部材を備えたファンユニットと、
前記ファンユニットを回転駆動するモータと、
前記車両ECUからの指示に基づいて前記モータの駆動を制御するとともに、駆動結果を前記車両ECU側に出力するブロワ制御部と、
前記冷却ブロワの動作異常が発生した際に、冷却ブロワの制御情報をブロワ側障害情報として記憶する記憶部と、
を備えることを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却システムであって、
前記ブロワ側障害情報は、
当該冷却ブロワへの電力供給状態を示す電源情報と、
当該冷却ブロワ内部の故障状態を示す回転情報と、
前記冷却ブロワの前記車両ECU側に出力した冷却ブロワの実回転数を示す回転数出力情報と、
前記車両ECUから受け取る指示内容を示す回転指令情報と、
を含むことを特徴とする冷却システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷却システムであって、
前記ブロワ制御部は、少なくとも、前記車両ECUから動作異常の発生を示す信号を受けた際に、前記ブロワ側障害情報を前記記憶部に記憶する、
ことを特徴とする冷却システム。
【請求項4】
請求項3に記載の冷却システムであって、
前記車両ECUは、指令回転数に応じたデューティ比のデューティ信号を出力することで回転指示し、前記回転指示に用いない特定のデューティ比のデューティ信号を出力することで動作異常の発生を通知する、ことを特徴とする冷却システム。
【請求項5】
車載の電気機器を送風により冷却する冷却ブロワであって、
回転することにより送風する羽部材を備えたファンユニットと、
前記ファンユニットを回転駆動するモータと、
前記車両ECUからの指示に基づいて前記モータの駆動を制御するとともに、駆動結果を前記車両ECU側に出力するブロワ制御部と、
前記冷却ブロワの動作異常が発生した際に、冷却ブロワの制御情報をブロワ側障害情報として記憶する記憶部と、
を備えることを特徴とする冷却ブロワ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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