説明

冷却剤

本発明は、水と、太陽放射線を強く散乱する強散乱ミネラル粉末と、を含む特定の流体であって、前記強散乱ミネラル粉末が、1〜3質量%の濃度、0.8〜10μmのメジアン粒子径を有し、前記粉末の粒子が、0.7を超える平均光エネルギー散乱係数を有する、特定の流体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー転換の部位(場)である特定の流体(specific fluid)、即ち、特定の熱伝導流体に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの熱伝導流体(heat-transfer fluid)が知られていて、様々な分野において使用されている。空気および水は、その天然的利用可能性(natural availability) に基づいて通常利用されている。それ以外の周知の熱伝導流体として、有機流体(organic fluid)、溶融塩(molten salt)、および、液体金属(liquid metal)がある。
【0003】
特定の用途に適した熱伝導流体を選択する際に、次のようないくつかの基準が考慮される:
−流体の吸収性
−使用される温度範囲:最低温度および最高温度)
−時間の経過と有効性の持続:設置に用いられる材料に対する流体の攻撃性、汚染又は腐食のリスク等
−安全性:火傷の危険性、電気的危険性、火災の危険、爆発の危険、毒性の危険、加圧装置にかかわる危険、流体の処分およびリサイクルの規制
−技術的経済的条件:投資およびランニングコスト
【0004】
家庭用水を加熱するための家庭用のソーラーコレクタ(solar collector)の場合、一般的に用いられる熱伝導流体は、水と凍結防止剤(即ち、不凍剤)との混合物である。これは、この流体が、この種の適用に対する前述の条件全てを満たすからである。
【0005】
しかしながら、この種の流体は、制限された吸収性(absorptivity)のため、光から熱への転換を向上させるようソーラーコレクタを設ける必要がある。ソーラーコレクタからの収率は制限されている。
【0006】
米国特許第4083490号は、太陽放射線を吸収するための収集器(即ち、コレクタ)であって、エチレングリコール、水、約1μmの粒子を有する黒鉛のコロイド状懸濁液で構成された吸収媒体(absorbent medium)を含む収集器を開示する。黒鉛のコロイド状の懸濁液は、大量の放射エネルギーを直接的に吸収する微細黒体(finely divided black bodies)として行動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、家庭用ソーラーコレクタにおける使用に特に適した特定の流体(specific fluid)を提供することである。詳しくは、本発明の目的は、特定の流体の吸収性(absorptivity)を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、水と、太陽放射線を強く散乱する強散乱ミネラル粉末と、を含む特定の流体であって、前記強散乱ミネラル粉末が、1〜3質量%の濃度、0.8〜10μmのメジアン粒子径を有する、特定の流体を提供する。
【0009】
これらの特徴に基づいて、特定の流体は、エネルギー転換の場(site of energy conversion)であるので、高い吸収性(absorptivity)を示す。したがって、ソーラーコレクタに用いられたとき、この流体は、コレクタのエネルギー収率(energy yield)を向上させることができる。また、ソーラーコレクタは、その他のエネルギー転換改善手段を要することなく、流体のほうに光を向けるように設けられ得る。
【0010】
好ましくは、強散乱ミネラル粉末の粒子は、平均して、0.7を超える光エネルギー散乱係数(light energy scattering coefficient)を有し、好ましくは、0.9を超える光エネルギー散乱係数を有する。かかるエネルギー散乱係数は、反射率計(reflectometer)を用いて、例えば、積分球(integrating sphere)を用いる測定方法を採用することによって、測定することができる。かかる方法において、実質的に球状のコレクタの中心部に配置された粒子は、入射光エネルギー流れ(incident light energy flow)を収容する。その実質的に球状のコレクタは、全体の空間における粒子によって散乱されたエネルギーの流れを測定する。エネルギー散乱係数は、散乱された総流対入射された流れの比率として定義される。散乱係数1に対する余り(remainder)は粒子のエネルギー吸収係数(energy absorption coefficient)を構成する。
【0011】
好ましくは、強散乱ミネラル粉末は、炭酸カルシウム、又は、合成若しくは天然ミネラル粉末を含む。一実施形態によれば、強散乱ミネラル粉末は炭酸カルシウム粉末である。
【0012】
好ましくは、強散乱ミネラル粉末は、1〜3μmのメジアン粒子径を有する。
【0013】
好ましくは、強散乱ミネラル粉末は、実質的に球状粒子で構成されている。されたこうした形状は、光散乱を向上させる。
【0014】
好ましくは、特定の流体は凍結防止剤を含むが、その濃度は、0〜40質量%である。
【0015】
凍結防止液(不凍液)は、特に、低温に露呈され得る適用(例えば、屋外設置、設置場所の気候による)に適している。例えば、エチレングリコール系凍結防止液を用いることができる。グリコールを含まない有機凍結防止液を用いることができるが、それは毒性の面から有利である。
【0016】
好ましくは、その流体は、太陽放射線に対し、0.1〜10cm-1の範囲、好ましくは、1cm-1のエネルギー吸収性を有する。この程度の吸収性によって、約20〜30mmの厚さ後の略合計(almost total)の吸収が可能となる。このため、流体に1以上の顔料を含ませることができる。例えば、有機液体顔料を0.2〜1%の濃度で含ませる。この目的のために色のかかった凍結防止剤製品(coloured antifreeze product)を用いることもできる。その吸収性は、流体の全体(bulk)における熱転換を可能とするよう強過ぎないし、かつ、流体の表面層の過剰な局所加熱を引き起こし得る薄膜の流体に限られた表面吸収(superficial absorption)ではない。
【0017】
好ましくは、特定の流体は、界面活性剤を含むが、その濃度は、0〜3質量%である。
【0018】
好ましくは、特定の流体は、消泡剤を含むが、その濃度は、0〜3質量%である。
【0019】
消泡剤を使用することによって、特に、流体の表面反射性を増加させて、総吸収(性)を減少させ得る泡の形状を防止することができる。
【0020】
一実施形態によれば、ミネラル粉末の濃度は3質量%であり、凍結防止剤の濃度は、30質量%であり、界面活性剤の濃度は、0.2〜0.3%であり、かつ、消泡剤の濃度は、0.2〜0.3質量%である。
【0021】
好ましくは、特定の流体は,殺菌製品を含む。殺菌製品は、常温(ambient temperature)で有意義な時間保持されるべき設備における使用(用途)において特に好ましい。例えば、その年の一部の期間にのみ働く太陽熱利用設備(solar heating installation)等がある。
【0022】
また、本発明は、光放射線を熱に転換するための装置における特定の流体の使用を提供する。ここで、光放射線は特定の流体に向けられ、そして、特定の流体は、エネルギー転換の場となる。
【0023】
また、本発明は、エネルギー転換の場となるよう、光放射線を収容できるように置された特定の流体を含む、光放射線を熱に転換するための装置を提供する。この装置が、ソーラーコレクタを含むのが好ましい。
【0024】
本発明の特定の側面は、流体における多重光散乱現象(a phenomenon of multiple light scattering)を引き起こすために、エネルギー転換流体中の懸濁液に強光散乱粉末のフィラーを用いることに基づく。かかる現象に基づいて、所定のボリュームの流体における光の実際伝播の距離が増加し、かつ、流体における光の流れの分布が均一になる。したがって、散乱粉末粒子による光放射線の散乱と、実質的に液体において起こる放射線の吸収との組み合わせによって、エネルギーの転換及び実質的なボリュームの液体の加熱が可能となる。この全体ボリュームの加熱は、特に、比較的温暖な温度で液体の比較的高い流速又は流量(flow rate)の液体を加熱することが望ましい適用に適したものである。本発明の特定の側面は、散乱粉末を用いるという思想に基づく。ここで、その散乱粉末の粒子径は、太陽放射線の主な成分の波長に匹敵する。それによって、その粒子の有効散乱断面を改善できる共鳴現象を促進することができる。
【0025】
太陽放射線において、ほとんどのエネルギーは約0.5〜約1.6μm、特に、0.5〜0.7μmのスペクトル範囲にある。
【発明の効果】
【0026】
本発明の目的、詳細、特徴、効果等は、後述する実施形態から明らかになる。しかしながら、その実施形態は、例として挙げたものに過ぎず、いかなる形でも本発明を制限するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
一実施形態において、本発明は、特に家庭用ソーラーコレクタ(domestic solar collector)に用いられる特定の流体を提案する。この特定の流体は、水、炭酸カルシウム粉末、任意に、凍結防止剤(即ち、不凍剤)、および/又は、顔料(colorant)、任意に、殺菌剤、任意に、界面活性剤、および、任意に、消泡剤を含む。
【0028】
以下に示す含量(%)は全て質量%である。
【0029】
炭酸カルシウム粉末の濃度、および、そのメジアン粒子径(median particle size)は、特定の粒子の吸収性、および、その特定の流体に懸濁される粒子の能力に基づいて、決定される。発明者によって行われたテストによれば、特定の流体の吸収性、および、ソーラーコレクタの収率は、粒子の濃度が増加するにつれて、増加し、98%以上に達する。これは、本発明の特徴である、特定の流体がエネルギー転換の場である事実に基づく。
【0030】
これらのテストによって、粉末のメジアン粒子径が、循環熱伝導流体(circulating heat-transfer fluid)に懸濁され、かつ、循環熱伝導流体中の懸濁液に保持される能力に影響を与えることが分かった。本明細書において使用する「メジアン粒子径」は、Malvern Mastersizer 2000 laser instrument(その計量は、標準ISO13320(公認標準物質(certified reference material;CRM)を用い較正)において調べられた粒子径を意味する。
【0031】
これらのテストの結果は、次のとおりである:
テスト1(対照群):テストされた組成物は、水であった。吸光度は、実質的に0であった。
【0032】
テスト2:テストされた組成物は、水(98%)と炭酸カルシウム粉末(2%)の混合物であった。炭酸カルシウム粉末は、10μmのメジアン粒子径を有する。吸光度は、3cmの水位(water height)に対して40%であった。
【0033】
テスト3:テストされた組成物は、水(95%)と、炭酸カルシウム粉末(2.5%)と、凍結防止剤(2.5%)との混合物であった。炭酸カルシウム粉末は、10μmのメジアン粒子径を有する。吸光度は、3cmの水位(water height)に対して80%であった。
【0034】
テスト4:テストされた組成物は、水(66.7〜66.8%)と、凍結防止剤(30%)と、炭酸カルシウム粉末(3%)と、界面活性剤(0.2〜0.3%)との混合物であった。炭酸カルシウム粉末は、2μmのメジアン粒子径を有する。界面活性剤の使用によって、懸濁液の中で粉末が長時間保持されるようになる。
【0035】
本発明者は、これらのテストの結果に基づいて、炭酸カルシウム粉末の濃度は1〜3%であり、その粉末は、0.8〜10μmのメジアン粒子径を有するべきであるとの結論に至った。例えば、粉末は、Omya SAS社製のDurcal1又はDurcal2粉末である。
【0036】
こうした粉末は、高純度の、例えば、98%超の、非常に高い光度(luminosity)を有する炭酸カルシウムで構成されている。
【0037】
一実施形態によれば、その粉末は、DIN6174に基づいて測定されたときに、パラメーター L*が94〜98となる、および/又は、パラメーターa*が0.1〜1.5となる、および/又は、パラメーターb*が0.5〜4となるように、CIE白色度(CIE whiteness)を有する。好ましくは、パラメーターL*が94〜98となり、パラメーターa*が0.1〜1.5となり、かつ、パラメーター b*が0.5〜4となるように、CIE白色度を有する。DIN6174に基づいて測定されたCIE L*、a*、b*白色度は、より好ましくは、実質的に97.5/0.5/2.4である。
【0038】
凍結防止剤の存在によって、氷点下の温度においても、熱伝導流体の凍結が回避できる。例えば、商品名Neutragardにて販売されている凍結防止剤がある。凍結防止剤の濃度は、0〜40%、例えば、30%であり得る。
【0039】
界面活性剤を用いることによって、熱伝導流体中に懸濁され、かつ、熱伝導流体中の懸濁液に保持される粉末の能力が改善される。界面活性剤の濃度は、0〜3%、好ましくは、0.2〜0.3%であり得る。
【0040】
最後に、消泡剤を用いることによって、泡の形成を妨げる。参考までに、泡は、ソーラーコレクタの正常的な作動に弊害をもたらし得る。消泡剤の濃度は、0〜3%、好ましくは、0.2%〜0.3%であり得る。消泡剤は、例えば、登録商標Agitan305であり得る。
【0041】
本発明に基づく特定の流体の実施形態は、適量(総量100%に調整するための量)の水、Neutragard凍結防止剤30%、Durcal1粉末3%、界面活性剤0.2〜0.3%、Agitan305消泡剤0.2〜0.3%を含む。
【0042】
この特定の流体は、家庭用のソーラーコレクタに適している。特に、その様々な部品は、健康弊害をもたらさないし(水ヒーターへの熱伝導流体漏れが発生した場合)、比較的安く利用でき、設置に伴う(損害の)リスクがなく、簡単に配置およびリサイクルできる。また、水に比べて、吸収性又は吸光係数(absorptivity)が大きいため、ソーラーコレクタの収率を改善することができる。
【0043】
特定の流体は、その他の別の用途、例えば、光放射を熱に転換する家庭用又は産業用の用途に用いられる。それは、天然、又は、人工の、可視光線、又は、赤外線を含み得る。
【0044】
本発明は特定の実施形態について説明されたが、本発明がそれらに制限されるものではなく、技術的な均等物、その組み合わせ(本発明の範囲に含まれる。)を含むと解すべきである。
【0045】
特に、本発明は、炭酸カルシウム粉末に限られず、その他の天然又は合成ミネラル粉末を用いられる。
【0046】
この特定の流体の製造の際には、乾燥粉末(dry powder)又は液体懸濁液(liquid suspension)の形態でミネラル粉末を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、太陽放射線を強く散乱する強散乱ミネラル粉末と、を含む特定の流体であって、
前記強散乱ミネラル粉末が、1〜3質量%の濃度、及び0.8〜10μmのメジアン粒子径を有し、かつ、
前記強散乱ミネラル粉末の粒子が、平均して0.7を超える光エネルギー散乱係数を有する、特定の流体。
【請求項2】
前記強散乱ミネラル粉末が、炭酸カルシウム、又は、合成若しくは天然ミネラル粉末を含む、請求項1に記載の特定の流体。
【請求項3】
前記強散乱ミネラル粉末が、炭酸カルシウム粉末である、請求項1又は2に記載の特定の流体。
【請求項4】
前記強散乱ミネラル粉末が、1〜3μmのメジアン粒子径を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の特定の流体。
【請求項5】
前記強散乱ミネラル粉末が、実質的に球状粒子で構成された、請求項1〜4のいずれか一項に記載の特定の流体。
【請求項6】
前記強散乱ミネラル粉末が、DIN6174に基づいて測定されたときに、パラメーターL*が94〜98となる、および/又は、パラメーターa*が0.1〜1.5となる、および/又は、パラメーターb*が0.5〜4となるように、CIE白色度を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の特定の流体。
【請求項7】
前記特定の流体が、0〜40質量%の凍結防止剤を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の特定の流体。
【請求項8】
前記特定の流体が、太陽放射線に対し0.1〜10cm-1のエネルギー吸収性を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の特定の流体。
【請求項9】
前記特定の流体が、0〜3質量%の界面活性剤を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の特定の流体。
【請求項10】
前記特定の流体が、0〜3質量%の消泡剤を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の特定の流体。
【請求項11】
前記ミネラル粉末が3質量%、凍結防止剤が30質量%、界面活性剤が0.2〜0.3%、消泡剤が0.2〜0.3質量%である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の特定の流体。
【請求項12】
殺菌製品を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の特定の流体。
【請求項13】
光放射線を熱に転換する装置における請求項1〜12のいずれか一項に記載の特定の流体の使用であって、前記光放射線が前記特定の流体に向けられ、そして、前記特定の流体が、エネルギー転換の場である、使用。
【請求項14】
光放射線を収容してエネルギー転換の場となるように配置された請求項1〜12のいずれか一項に記載の特定の流体を含む、光放射線を熱に転換するための装置。
【請求項15】
ソーラーコレクタを含む、請求項14に記載の装置。

【公表番号】特表2012−531501(P2012−531501A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518111(P2012−518111)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051293
【国際公開番号】WO2011/001072
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(505351050)オムヤ・デベロツプメント・アー・ゲー (22)
【出願人】(512002068)
【Fターム(参考)】