説明

冷却器

【課題】製造コストの増大を招くことなく冷却性能を向上することができる冷却器を提供すること。
【解決手段】本発明による冷却器1は、電子部品2の被冷却部2cを冷却する冷却流路3bと、冷却流路3bに入口3fから冷却媒体を導入する導入流路3cと、冷却流路3bから冷却媒体を出口3gへ排出する排出流路3dとを含むとともに、導入流路3c及び排出流路3dの少なくともいずれかの流路面積は、所定位置においてよりも、入口3f又は出口3gから所定位置よりも遠い位置において大きいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば乗用車、トラック、バス等の車両を始めとした輸送用機器、電力供給設備を含む産業用機器又は家庭用機器に用いられる半導体素子等の電子部品の冷却に適用されて好適な冷却器に関する。
【背景技術】
【0002】
IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やIPM(Intelligent Power Module)等のスイッチング素子つまり半導体素子等の電子部品において、部品相互間又は部位毎に冷却効率が異なることは、電子部品に通電される電流の不均一を招き、保守管理が困難となる等の不都合を招き、一般に好ましくない。このため電子部品を冷却する冷却器においては、冷却に供される冷却媒体を電子部品の冷却対象面の全てに均等に分配することが要求される。
【0003】
このような冷却器として、例えば特許文献1に記載されたような冷却ジャケットが提案されている。この冷却ジャケットは例えば合成樹脂等の非金属材料の成形によって、長方形板状に形成されている。つまり、縦辺の一方である左辺に沿って導入路が形成され、縦辺の他方である右辺に沿って排出路が形成され、導入路と排出路を横辺方向に複数条に延在する主流路で連通させて、主流路の表面側に電気素子を配置することによって冷却ジャケットが構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−179771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述した従来技術の冷却ジャケットにおいては、導入路と排出路が冷却ジャケットの縦辺方向に延びる中空構造であるため、冷却ジャケットを一体成形する場合の難易性が増すこととなる。すなわち製造コストの増大を招く。
【0006】
あるいは、導入路及び導入路と主流路を連通させる導入連通部分と、排出路と排出路と主流路を連通させる排出連通部分とを、それぞれ冷却ジャケットの本体とは別個の別部品として成形して、冷却ジャケットの本体に嵌め込む構成とした場合には、嵌め込み構造固有の問題として、冷却媒体の通流により別部品の本体に対する移動やずれが発生することが問題となる。このため、別部品の本体への固定のための設計が別途必要となり、これによっても製造コストの増大を招く。
【0007】
加えて、一体成形又は別部品使用のいずれの手法によっても、導入路と排出路を形成するためには、製造時において、縦辺方向にスライド型を挿入する必要があり、縦辺方向における流路断面の選択自由度が制限され、冷却媒体の通流設計の自由度も制限され、冷却性能を高めることが困難となる。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑み、製造コストの増大を招くことなく冷却性能を向上することができる冷却器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題を解決するため、本発明による冷却器は、
電子部品の被冷却部を冷却する冷却流路と、
当該冷却流路に入口から冷却媒体を導入する導入流路と、
前記冷却流路から前記冷却媒体を出口へ排出する排出流路と、を含むとともに、
前記導入流路及び前記排出流路の少なくともいずれかの流路面積は、所定位置においてよりも、前記入口又は前記出口から当該所定位置よりも遠い位置において大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造コストの増大を招くことなく冷却性能を向上することができる冷却器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施例1の冷却器1の一実施形態を示す模式図である。
【図2】実施例1の冷却器1の一実施形態を示す模式図である。
【図3】実施例1の冷却器1の一実施形態を示す模式図である。
【図4】実施例2の冷却器11の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
図1に示すように、本実施例1の冷却器1は、デバイス2(電子部品)と、ハウジング3とを含んで構成される。デバイス2は、例えばアルミニウム、銅等の熱伝導性の高い材質からなる長方形板状の冷却板2aの表面上に、素子2bが例えば二行三列を一群として二群実装されている。
【0014】
素子2b内の発熱部分は冷却板2aに対して熱伝導可能に接触されており、冷却板2aの背面側には、背面側に突出するフィンを含むフィンエリア2cが形成されている。フィンエリア2cを構成するフィンの形状は、必要とされる冷却性能に合致させて、図1には図示しないが、ストレートフィン、オフセットフィン、ウェーブフィン等の適宜の形態が選択され適用されている。
【0015】
ハウジング3は、例えば合成樹脂によって構成され、図1に示すように、冷却板2aの背面側に対向する位置に、奥側が第一長辺で手前側が第一短辺をなす第一台形を開口3aとする凹部を有している。この凹部の底面は、図1に示すように、第一台形の第一短辺よりも短い第二長辺を手前に含み、奥側に第二短辺を有する第二台形を表面とする台形柱状の陸部3bを有しており、陸部3bの縦方向中央には陸部3bよりも表側に突出するランド3baを有している。陸部3b及びランド3baの表面は、ハウジング3の背面に対して平行をなしている。
【0016】
底面の陸部3bが形成されない部分、つまり、図1中の左方に形成される縦方向に細長い溝部3cと、右方に形成される縦方向に長い溝部3dは、ともに、図1中表側から見て、左右対称の縦方向に細長い奥側の辺が手前側の辺よりも長い第三台形をなす。溝部3cと溝部3dはともに、手前側の深さよりも奥側の深さを深くするように形成されている。
【0017】
ハウジング3の開口3aよりも外側には外枠が長方形状で内枠が第一台形をなす枠部3eが形成されており、枠部3eの図1中手前側部分の左側には、中空円筒状の入口3fが手前側に突出させて一体的に形成され、右側には中空円筒状の出口3gが手前側に突出させて一体的に形成されている。入口3fの内周面は溝部3cと図1中縦方向に連通されており、出口3gの内周面は溝部3dと図1中縦方向に連通されている。
【0018】
ハウジング3の枠部3eの開口3aよりも外側の縁部には、例えばOリングやパッキン等の適宜のシール手段が配設されるシールエリア3hが形成されている。枠部3eのシールエリア3hよりも外側には、縦方向三箇所、横方向二箇所の合計六箇所に、図示しないナットが螺合されるナット穴3iが穿設される。デバイス2の冷却板2aにはナット穴3iに対応する六箇所の位置に、図示しないナットが挿通されるとともにナットの頭部が収納される取付穴2dが形成されている。
【0019】
シール手段をシールエリア3hに配設した後、上述したハウジング3にデバイス2を、図示しないナットを冷却板2aの取付穴2dから挿入して、ナット穴3iにナットを螺合することにより、本実施例1の冷却器1が構成される。冷却器1の陸部3bのランド3baを除く部分は冷却流路3bを構成し、溝部3cは導入流路3cを構成し、溝部3dは排出流路3dを構成する。
【0020】
冷却器1の入口3fは、図示しない冷却装置の導入配管が液密に連結され、出口3gは、排出配管が液密に連結されて、冷却器1内には冷却媒体が充填される。なお、冷却媒体は、LLC(Long life coolant)、水やエチレングリコール等の適宜の液体であってもよく、空気等の気体であってもよい。冷却装置は、図示しない放熱器、冷却媒体循環用のポンプ、冷却媒体タンク等の循環系統を備えており、冷却媒体がこの循環系統を循環されて、脱熱と放熱が循環系統内で行われるよう構成されている。
【0021】
すなわち、本実施例1の冷却器1は、デバイス2(電子部品)のフィンエリア2c(被冷却部)を冷却する冷却流路3bと、冷却流路3bに入口3fから冷却媒体を導入する導入流路3cと、冷却流路3bから冷却媒体を出口3gへ排出する排出流路3dとを含むとともに、導入流路3c及び排出流路3dの少なくともいずれかの流路面積は、所定位置においてよりも、入口3f又は出口3gから所定位置よりも遠い位置において大きいこととしている。
【0022】
本実施例1においては、冷却流路3bは、導入流路3cに交差する図1中右方向に導入流路3cが延在する導入方向Iつまり図1中縦方向の手前から奥側に向かう方向に幅を有して延在しており、導入方向Iの入口3f寄りの入口側から入口側の反対側つまり図1中奥側まで流路面積は徐々に拡大されることとしている。
【0023】
さらに本実施例1においては、上述した関係と同様の関係を排出流路3d側においても有している。すなわち、冷却流路3bは、排出流路3dに交差する方向に排出流路3dが延在する排出方向Oつまり図1中縦方向の奥側から手前側に向かう方向に幅を有して延在しており、排出方向Oの出口3g寄りの出口側から出口側の反対側まで流路面積を徐々に拡大されることとしている。
【0024】
以上の関係を、ハウジング3のみを表現した図2に示す平面図及び断面図を用いて説明する。図2中左図は、図1に示した冷却器1を表面側から視て示す平面図であり、Xは横方向を、Yは縦方向を示す。横方向Xは冷却流路3bの延在方向であり、縦方向Yは図1における導入方向Iであり、反縦方向Yは図1における排出方向Oである。
【0025】
図2中右上段は、図2中左図のAA断面を示し、図2中右中段は、図2中左図のBB断面を示し、図2中右下段は、図2中左図のCC断面を示す。なお、図2中左図において、AA断面は横方向Xに垂直で手前側と奥側の冷却流路3bの双方を含む断面であり、BB断面は縦方向Yに垂直で奥側の冷却流路3bを含む断面であり、CC断面は縦方向Yに垂直で手前側の冷却流路3bを含む断面である。図2左図に示すようにCC断面と、入口3fの端部との縦方向Yにおける距離を所定距離Lとし、入口3fの端部から所定距離L離隔した位置を所定位置Pとしている。
【0026】
図2中右上段に示すように、本実施例1の冷却流路3bは、陸部3bのランド3baが位置しない部分により構成されており、冷却流路3bに冷却媒体を導入する導入流路3cは、図2中右中段及び下段に示すように、CC断面においてよりも、BB断面において、深さ及び幅の大きいものとして、流路面積を大きいものとしている。これとともに、冷却流路3bから冷却媒体を排出する排出流路3dについても、CC断面においてよりも、BB断面において、深さ及び幅の大きいものとして、流路面積を大きいものとしている。
【0027】
さらに、図2中左図に示すように、導入流路3cの平面図内の形状は台形を深さ方向つまり表裏方向に投影した台形柱状とし、導入流路3cの側壁はハウジング3の表面及び裏面に対して垂直としている。同様に、排出流路3dも、図2中左図に示すように、台形を深さ方向つまり表裏方向に投影した台形柱状とし、側壁をハウジング3の表面及び裏面に対して垂直としている。
【0028】
図2に示したハウジング3にデバイス2側のフィンエリア2cが組み合わされた状態について、図3に示す平面図及び断面図を用いて説明する。図3中左図は、図1に示した冷却器1を表面側からデバイス2を透かして視て示す平面図であり、図2と同様に、Xは横方向を、Yは縦方向を示す。図3中右上段は、図3中左図のAA断面を示し、図3中右中段は、図3中左図のBB断面を示し、図3中右下段は、図3中左図のDD断面を示す。
【0029】
なお、図3中左図において、AA断面は横方向に垂直で手前側と奥側の冷却流路3bの双方とフィンエリア2cを含む断面であり、BB断面は縦方向Yに垂直で奥側の冷却流路3bとフィンエリア2cを含む断面であり、DD断面は縦方向Yに垂直で導入流路3c及び入口3fの横方向中央を含む断面である。
【0030】
図3中右上段に示すように、フィンエリア2cの高さに対して、陸部3bの表面のハウジング3の表面に対してのオフセット量、つまり窪み量は、冷却流路3bからフィンエリア2cの被冷却面への冷却媒体の効率的な分配を目的としてのクリアランス量を確保するため、わずかに大きく設定される。
【0031】
これに対して、図3中右中段に示すように、導入流路3cの底面と、排出流路3dの底面のハウジング3の表面に対してのオフセット量は、冷却媒体の円滑な運搬、搬送を目的として、フィンエリア2cの高さに対して、ある程度大きく設定される。ランド3baについては、デバイス2の冷却板2aの横方向及び縦方向の中央部近傍を支持することを目的として、枠部3eと同一の高さに設定している。
【0032】
図3中右下段に示すように、導入流路3cの深さは、入口3fから離隔するにつれて徐々に深くなる形態をなし、入口3fから離隔する方向、つまり導入方向に冷却媒体が進行するにあたって、図3では図示しない幅の拡大とも併せて、流路面積は徐々に大きく設定される。
【0033】
導入流路3cを流れる冷却媒体は、図3中右下段に示すように、フィンエリア2cの底面側から表面側に向かって案内されながら、冷却流路3b内に導入される。ここで管路内を流れる流体の流量は流速と流路面積の積であって、図3中右下段の矢印の太さに示されるように、入口3fに近い側の冷却媒体の速度は、遠い側の冷却媒体の速度よりも高く設定される。
【0034】
本実施例1の冷却器1によれば、上述した特徴事項を含むことによって、以下のように冷却性能面において有利な作用効果を得ることができる。図3中右下段に示すように、冷却媒体の速度を、導入流路3cの流路面積の導入方向への漸次の増大に伴わせて、漸次減少させることによって、図3中左図に示す平面図内において、入口3fから冷却流路3bを経由して出口3gに向かう経路のうち、入口3f及び出口3gに近い箇所を経由する経路に、遠い箇所を経由する経路よりもより多くの冷却媒体が導入されてしまうことを防止することができる。換言すれば、入口3f及び出口3gから遠い箇所を経由する経路に冷却媒体を導くことができる。
【0035】
これにより、入口3f及び出口3gからの離隔量にかかわらずに冷却媒体の冷却流路3bへの供給量を均一化することができる。例えば、図3左図に示すように、入口3fからの離隔量が大きい順番に、経路をR1、R2、R3、R4と定義した場合に、より冷却媒体が流れやすい符号番号の大きい経路から符号番号の小さい経路に冷却媒体を導くことができる。これによって、経路R1〜R4のいずれの組合せ相互間においても、冷却媒体の供給量を均一化することができる。
【0036】
また、排出流路3dについて入口3f及び出口3gから離隔するに従い流路面積を漸次増大することは、流路面積を排出方向に徐々に小さくすることであって、出口3g近傍の圧力損失を高めることを招く。この圧力損失の増大により冷却媒体の通流抵抗の増大を招き、図3中左図に示す平面図内において、入口3fから冷却流路3bを経由して出口3gに向かう経路のうち、入口3f及び出口3gに近い箇所を経由する経路に、遠い箇所を経由する経路よりもより多くの冷却媒体が導入されてしまうことを防止することができる。これにより、入口3f及び出口3gからの離隔量にかかわらずに冷却媒体の冷却流路3bへの供給量を均一化することができる。
【0037】
以上述べたように、冷却流路3bの入口3f及び出口3gからの離隔量の異なる箇所間において冷却媒体の供給量を均一化することによって、冷却流路3b内を流れる冷却媒体によるデバイス2のフィンエリア2cの冷却効果も、上述した離隔量にかかわらずに均一化することができる。これによって、デバイス2に実装されたいずれの素子2bにおいても均等な冷却を行うことができ、通電電流も均一化することができる。すなわち、冷却器1の冷却性能を高めることができる。
【0038】
さらに、本実施例1の冷却器1によれば、上述した特徴事項を含むことによって、以下のように製造工程面においても有利な作用効果を得ることができる。つまり、図2中左図に示したように、導入流路3c及び排出流路3dの流路面積を縦方向Yに向けて漸次増大させるにあたって、導入流路3c及び排出流路3dの側壁の形態をハウジング3の表面又は表面に対して垂直な面とし、導入流路3c及び排出流路3dについて台形を表裏方向に投影した立体形状とすることにより、本実施例1のハウジング3については、合成樹脂を図2中の紙面方向の一方向のプレス成形によって構成することができる。また、プレス成形において用いられる、ハウジング3の凹部に対応する凸形状を有する雄型を抜く工程をより容易にすることができる。
【0039】
すなわち、本実施例1においては、上述したような流路面積の調節及び設定を、成形が容易な合成樹脂により構成されるハウジング3側のみの変更で行うことができ、デバイス2側については変更する必要がない。このため、設計変更の負荷や、製造工程の増大や複雑化等のコストアップを招くことがない。
【0040】
特に特許文献1に示された従来技術においては、導入路と排出路を形成するための円柱形状のスライド型を、入口及び出口から挿入した上でプレス成形を行い、プレス成形後にスライド型を抜く必要があったことから、製造工程の増大を招きコストアップの増大を招いていた。これとともに、従来技術においては、流路面積はスライド型を導入方向又は排出方向において同一とせざるを得ない制約を有していた。本実施例1においては、この双方を解消した上で、冷却効率の向上を図ることができる。
【0041】
加えて、本実施例1によれば、従来技術に示されたものに比べて、導入流路3cから冷却流路3bへの連通部として表裏方向に貫通する貫通穴を設けることをも廃することができる。すなわち、この観点においても構造を単純化し、製造工程の増大を防止して、コストダウンと図ることができる。また、連通部を別途含む必要もないため、別部品をハウジング3に対して冷却媒体の通流に対して耐久性を有して固定するという対策も講じる必要がない。
【0042】
さらに、本実施例1によれば、冷却器1の入口3fは、図示しない冷却装置の導入配管が液密に連結され、出口3gは、排出配管が液密に連結されて、かつ、入口3f及び出口3gは同一方向に枠部3eに対して突出する形態であるため、冷却装置の配管をより効率的に配置することができる。つまり、図示しない放熱器、冷却媒体循環用のポンプ、冷却媒体タンク等の循環系統の配策に当たりより有利な形態を提供することができる。
【0043】
上述した実施例1においては、導入流路3c及び排出流路3dを、図2左図中縦方向Y全般に亘って徐々に増大させる形態としているが、局所的に増大させる形態とすることもできる。以下それについての実施例2について述べる。以下の説明において、実施例1に示したものと同一又は類似の構成要素については同一の符号を付して、重複する説明は割愛する。
【実施例2】
【0044】
本実施例2の冷却器11の実施例1に対する相違点について、ハウジング3のみを表現した平面図と、フィンエリア2cを含んで示す断面図である図4を用いて説明する。図4中上図は、本実施例2の冷却器11を表面側から視て示す平面図であり、図4中下図は、図4中上図のEE断面を示す。なお、図4中上図において、EE断面は横方向に垂直で冷却流路3b及び入口3fの横方向中央を含む断面である。
【0045】
本実施例2において、冷却流路3bに冷却媒体を導入する導入流路3cは、図4中下図に示すように、横方向に突出する突起3ca、3cbを含み、縦方向において突起3ca、3cbの部分を除き、流路面積を均一なものとしている。これとともに、冷却流路3bから冷却媒体を排出する排出流路3dについても、横方向に突出する突起3da、3dbを含み、縦方向において突起3da、3dbの部分を除き、流路面積を均一なものとしている。
【0046】
さらに、図4中上図に示すように、導入流路3cの平面図内の形状は縦方向に細長い長方形を深さ方向つまり表裏方向に投影した直方体状とし、導入流路3cの側壁はハウジング3の表面及び裏面に対して垂直としている。同様に、排出流路3dも、図4中上図に示すように、細長い長方形を深さ方向つまり表裏方向に投影した直方体状とし、側壁をハウジング3の表面及び裏面に対して垂直としている。
【0047】
図4に示すように本実施例2においても、デバイス2(電子部品)のフィンエリア2c(被冷却部)を冷却する冷却流路3bと、冷却流路3bに入口3fから冷却媒体を導入する導入流路3cと、冷却流路3bから冷却媒体を出口3gへ排出する排出流路3dとを含むとともに、導入流路2c及び排出流路3dの少なくともいずれかの流路面積は、突起3ca、3cb又は3da、3dbが配置される所定位置においてよりも、入口3f又は出口3gから所定位置よりも所定範囲において遠い位置において大きいこととしている。
【0048】
すなわち、本実施例2においては、所定位置において流路面積を縮小する縮小部として、突起3ca、3cb及び3da、3dbを含むこととしている。ここで、突起3ca、3cb、突起3da、3dbの形状については、図4中上図に示すように、導入流路2c又は排出流路3dをなす側壁を一側面とする三角柱状又は楔柱状としている。この三角柱状又は楔柱状の上述した一側面以外の二側面についても、ハウジング3の表面又は背面に対して垂直をなすものとしている。
【0049】
より具体的には冷却流路3bは、導入流路3cに交差する方向に導入流路3cが延在する導入方向に幅を有して二列(複数列)延在しており、突起3ca、3cb(縮小部)は二列(複数列)の冷却流路3bにそれぞれ対応して設けられる。突起3caについては枠部3eに隣接させて設け、突起3cbについてはランド3baに隣接させて設けている。
【0050】
さらに、冷却流路3bは、排出流路3dに交差する方向に排出流路3dが延在する排出方向に幅を有して二列(複数列)延在しており、突起3da、3db(縮小部)は二列(複数列)の冷却流路3bにそれぞれ対応して設けられる。突起3dbについては枠部3eに隣接させて設け、突起3daについてはランド3baに隣接させて設けている。
【0051】
本実施例2の冷却器11によれば、上述した特徴事項を含むことによって、以下のように冷却性能面において有利な作用効果を得ることができる。図4下図に示すように、冷却媒体の速度を、導入流路3cの流路面積の導入方向において、冷却流路2bへの導入直前における増大に伴わせて、減少させることによって、図4中上図に示す平面図内において、入口3fから冷却流路3bを経由して出口3gに向かうコの字状の経路のうち、入口3f及び出口3gに近い箇所を経由する経路に、遠い箇所を経由する経路よりもより多くの冷却媒体が導入されてしまうことを防止することができる。
【0052】
これにより、実施例1と同様に、入口3f及び出口3gからの離隔量にかかわらずに冷却媒体の冷却流路3bへの供給量を均一化することができる。また、排出流路3dについて出口3g近傍及びランド3ba近傍で流路面積を減少することは、出口3g近傍及びランド3ba近傍の圧力損失を高めることを招く。この圧力損失の増大により冷却媒体の通流抵抗の増大を招き、入口3fから冷却流路3bを経由して出口3gに向かう経路のうち、入口3f及び出口3gに近い箇所を経由する経路に、遠い箇所を経由する経路よりもより多くの冷却媒体が導入されてしまうことを防止することができる。これにより、入口3f及び出口3gからの離隔量にかかわらずに冷却媒体の冷却流路3bへの供給量を均一化することができる。
【0053】
すなわち実施例2においても、冷却流路3bの入口3f及び出口3gからの離隔量の異なる箇所間において冷却媒体の供給量を均一化することができ、これによって、冷却流路3b内を流れる冷却媒体によるデバイス2のフィンエリア2cの冷却効果も、上述した離隔量にかかわらずに均一化することができる。つまり、実施例1と同様に、デバイス2に実装されたいずれの素子2bにおいても均等な冷却を行うことができ、通電電流も均一化することができ、冷却器11の冷却性能を高めることができる。
【0054】
本実施例2の冷却器11によっても実施例1と同様に、上述した特徴事項を含むことによって、以下のように製造工程面においても有利な作用効果を得ることができる。つまり、図4上図に示したように、突起3ca、3cb、3da、3dbと、導入流路3c及び排出流路3dの側壁の形態をハウジング3の表面又は表面に対して垂直な面とすることにより、本実施例2のハウジング3についても、合成樹脂を図4中上図の紙面方向の一方向のプレス成形によって成型することができる。
【0055】
つまり、本実施例2においても、上述したような流路面積の調節及び設定を、成形が容易な合成樹脂により構成されるハウジング3側のみの変更で行うことができ、デバイス2側については変更する必要をなくすことができ、設計変更の負荷や、製造工程の増大等のコストアップを招くことを防止できる。この他本実施例2においても、特許文献1に示された従来技術に対する優位性は実施例1で述べたものと同様に得られる。
【0056】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0057】
例えば、実施例1において、流路面積を設定するにあたって、導入流路3c及び排出流路3dの深さ及び幅をともに調節しているが、深さ又は幅のみの調節とすることももちろん可能である。増加形態についてもリニアに増大させることのみならず、二次関数その他の関数に基づいて増大させることも可能である。
【0058】
また、実施例1において、図2中左図に示した左右対称の台形についてもあくまで例示的なものであり、左右非対称で例えば、入口3f及び出口3gと反対側に直角を有する台形状としてもよい。この場合においては、シール手段の形態を四角形状とし従来技術と共通化することができる。デバイス2内の素子2bの設置態様もあくまで例示であり、縦方向Yに二群に分けずに均等配置することも可能であって、この場合においてはハウジング3のランド3baについては省略することも可能である。
【0059】
また、実施例2において、図4中上図においては、突起3ca、3cb、3da、3dbについて横方向に突出する形態を示したが、底面から表方向に突出する形態としてもよい。この場合においても、図4中紙面方向における一方向のプレス成形により、ハウジング3を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、冷却器に関するものであり、製造コストの増大を招くことなく冷却性能を向上することができる冷却器を提供することができるので、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。もちろん車両以外の家庭用機器、産業用機器に用いられる冷却器に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 冷却器
2 デバイス(電子部品)
2a 冷却板
2b 素子
2c フィンエリア(被冷却部)
2d 取付穴
3 ハウジング
3a 開口
3b 陸部(冷却流路)
3ba ランド
3c 溝部(導入流路)
3d 溝部(排出流路)
3e 枠部
3f 入口
3g 出口
3h シールエリア
3i ナット穴
11 冷却器
3ca 突起(縮小部)
3cb 突起
3da 突起
3db 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の被冷却部を冷却する冷却流路と、当該冷却流路に入口から冷却媒体を導入する導入流路と、前記冷却流路から前記冷却媒体を出口へ排出する排出流路とを含むとともに、前記導入流路及び前記排出流路の少なくともいずれかの流路面積は、所定位置においてよりも、前記入口又は前記出口から当該所定位置よりも遠い位置において大きいことを特徴とする冷却器。
【請求項2】
前記冷却流路は、前記導入流路に交差する方向に前記導入流路が延在する導入方向に幅を有して延在しており、当該導入方向の前記入口寄りの入口側から当該入口側の反対側まで前記流路面積は徐々に拡大されることを特徴とする請求項1に記載の冷却器。
【請求項3】
前記冷却流路は、前記排出流路に交差する方向に前記排出流路が延在する排出方向に幅を有して延在しており、当該排出方向の前記出口寄りの出口側から当該出口側の反対側まで前記流路面積は徐々に拡大されることを特徴とする請求項1に記載の冷却器。
【請求項4】
前記所定位置において前記流路面積を縮小する縮小部を含むことを特徴とする請求項1に記載の冷却器。
【請求項5】
前記冷却流路は、前記導入流路に交差する方向に前記導入流路が延在する導入方向に幅を有して複数列延在しており、前記縮小部は前記複数列の前記冷却流路にそれぞれ対応して設けられることを特徴とする請求項4に記載の冷却器。
【請求項6】
前記冷却流路は、前記排出流路に交差する方向に前記排出流路が延在する排出方向に幅を有して複数列延在しており、前記縮小部は前記複数列の前記冷却流路にそれぞれ対応して設けられることを特徴とする請求項4に記載の冷却器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−174963(P2012−174963A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36861(P2011−36861)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】