説明

冷却構造

【課題】冷却構造を設ける装置が必要とする冷却性能に対応した冷却ファンを用いることにより、必要とされる冷却性能を十分に満足させることができ、これによって装置の小型化やコストダウンを可能にする、冷却構造を提供する。
【解決手段】筐体2の一方の側と他方の側との間に、熱源3を配設してなる装置1の冷却構造である。一方の側の筐体2の壁面5aに、吸気側ファン6と、外側に開くことなく内側にのみ開くよう開閉可能に配設された吸気側シャッター7と、を配設している。他方の側の筐体2の壁面5bに、排気側ファン8と、内側に開くことなく外側にのみ開くよう開閉に配設された排気側シャッター9と、を配設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に熱源を配設してなる装置の、冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバ等の熱源を備えた装置では、可用性及び信頼性を高めるため、冷却ファンを二重化したり冗長化することが一般的となっている。これにより、2台のうちの1台、若しくは複数台のうちの1台が停止しても、残りの冷却ファンで冷却性能を維持し、装置の連続稼働を継続できるようにしている。
ところが、ある冷却ファンが停止すると通常状態とは異なる冷却条件となるため、従来の装置では二つ(複数)の異なる冷却状態(条件)を網羅するように設計するか、機構的な工夫によって冷却環境を切り替えるようにする必要がある。
【0003】
すなわち、筐体の相対向する壁面にそれぞれ冷却ファンを配設し、これらを直列に配設した場合、一方の冷却ファンが停止するとこれが他方の冷却ファンの空気抵抗となり、風量が減少してしまう。また、吸気側の冷却ファンと排気側の冷却ファンとを同じ壁面に配設し、これらを並列に配設した場合には、例えば排気側の冷却ファンが停止すると、筐体内が正圧になることにより、吸気側ファンで外気を吸気するのとは別に、筐体内の空気を外側に排気する逆流を生じてしまう。したがって、このような課題を解消するための対策が必要になっている。
【0004】
このような背景のもとに、例えば冷却ファンを並列に配置する方式の場合では、冷却ファン毎に風圧によって開閉する逆流防止用シャッター(弁)を設置する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−022698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、冷却ファンを相対向する壁面にそれぞれ配設し、これらを直列に配設する方式の冷却構造にあっては、風向きの関係で前記特許文献1の技術を採ることができない。したがって、停止した一方の冷却ファンが空気抵抗となって他方の冷却ファンによる風量が減少する分を見越して、大型ファン又は高性能ファンを採用するしかないのが現状である。しかし、このような大型ファンや高性能ファンを用いるのでは、この冷却構造を設ける装置が必要とする冷却性能より高い性能を有し、したがって過剰な性能を有することになってしまい、コストアップや装置の大型化を招くといった新たな課題を生じている。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、冷却構造を設ける装置が必要とする冷却性能に対応した冷却ファンを用いることにより、必要とされる冷却性能を十分に満足させることができ、これによって装置の小型化やコストダウンを可能にする、冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の冷却構造は、筐体の一方の側と他方の側との間に、熱源を配設してなる装置の冷却構造であって、
前記一方の側の筐体の壁面に、吸気側ファンと、外側に開くことなく内側にのみ開くよう開閉可能に配設された吸気側シャッターと、を配設し、
前記他方の側の筐体の壁面に、排気側ファンと、内側に開くことなく外側にのみ開くよう開閉に配設された排気側シャッターと、を配設してなることを特徴としている。
【0009】
この冷却構造によれば、一方の側の吸気側ファンが停止し、他方の側の排気側ファンのみが稼働した場合、筐体内は、外気の供給がなされずに排気側ファンによる排気のみがなされることにより、負圧になる。すると、吸気側シャッターは内側にのみ開くよう開閉可能に配設されているので、筐体の内外の圧力差によって内側に開く。このように吸気側シャッターが開くと、ここから外気が導入され、排気側ファンによって排気される過程で、熱源を冷却するようになる。また、停止した吸気側ファンが大きな空気抵抗となってしまうことも抑制される。
【0010】
また、他方の側の排気側ファンが停止し、一方の側の吸気側ファンのみが稼働した場合、筐体内は、内部の空気の排出がなされずに吸気側ファンによる吸気のみがなされることにより、正圧になる。すると、排気側シャッターは外側にのみ開くよう開閉可能に配設されているので、筐体の内外の圧力差によって外側に開く。このように排気側シャッターが開くと、ここから筐体内の空気が排出され、したがって熱源を冷却し熱交換した空気が筐体内に留まることなく、排出されるようになる。また、停止した排気側ファンが大きな空気抵抗となってしまうことも抑制される。
【0011】
また、前記冷却構造においては、前記吸気側シャッターが、前記吸気側ファンと同じ壁面でかつ該吸気側ファンの近傍に配設され、前記排気側シャッターが、前記排気側ファンと同じ壁面でかつ該排気側ファンの近傍に配設され、前記吸気側ファンが配設された壁面と前記排気側ファンが配設された壁面とが、相対向して配置されているのが好ましい。
このように吸気側ファンと排気側ファンとが相対向して配置され、したがってこれらが直列に配設された方式とすれば、吸気側ファンから導入した外気を熱源に対して良好に接触させ、さらに熱交換後の外気(空気)を排気側ファンから良好に排出することが可能になる。
【0012】
また、前記冷却構造においては、前記熱源が放熱板を有しているのが好ましい。
このようにすれば、熱源の放熱効果が高くになり、冷却構造による冷却効率も高くなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の冷却構造にあっては、前述したように吸気側ファン、排気側ファンのうちの一方のファンが停止しても、稼働しているファンの動作によって停止した側のシャッターが自動的に開くため、従来のように停止したファンが空気抵抗となり、通風量が減少してしまうことが防止される。したがって、装置が必要とする冷却性能に対応した冷却ファンを、吸気側ファン、排気側ファンとしてそれぞれ用いることで、必要とされる冷却性能を十分に満足させることができ、これによって装置の小型化やコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の冷却構造の一実施形態を示す要部切欠斜視図である。
【図2】吸気側ファン、排気側ファンの両方が稼働している状態を説明するための、平面視した断面図である。
【図3】吸気側ファンが停止している状態を説明するための、平面視した断面図である。
【図4】排気側ファンが停止している状態を説明するための、平面視した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の冷却構造の一実施形態を示す要部切欠斜視図であり、図1中符号1はこの冷却構造を備えた装置である。
【0016】
装置1は、例えばモーター等の駆動部やCPUなどを備えた電子機器であって、直方体状の筐体2内のほぼ中央部に、前記駆動部やCPUなどの熱源3を配設したものである。熱源3には、平行に配列された多数(複数)の放熱板4aからなる放熱器4が接続されている。これによって熱源3は、発生した熱が放熱器4(放熱板4a)に伝わってここで熱交換され、自身は冷却されるようになっている。また、多数の放熱板4aは、筐体2の長辺2aの長さ方向に沿って配列されている。
【0017】
筐体2には、前記長辺2aの一方の側となる壁面5aに、吸気側ファン6と一対の吸気側シャッター7、7とが配設されている。また、前記長辺2aの他方の側となる壁面5b、すなわち前記壁面5aと相対向する壁面5bに、排気側ファン8と一対の排気側シャッター8、8とが配設されている。
吸気側ファン6は、外気を筐体2内に導入するよう構成された公知の構造のものであり、排気側ファン8は、筐体2内の空気を外に排出するよう構成された公知の構造のものである。
【0018】
吸気側シャッター7、7は、吸気側ファン6を挟んでこれの横方向(水平方向)の両側に配設されたもので、開口7aと、これを開閉可能に閉塞するシャッター本体7bとを備えたものである。シャッター本体7bは、図1及び装置1の平面視した断面図である図2示すように、筐体2の壁面5aの内面側に取り付けられたものである。すなわち、シャッター7bは、内面(壁面5a)に取り付けられた軸受け(図示せず)や蝶番(図示せず)などによって回動可能に設けられ、これにより前記開口7aを覆ってこれを閉塞し、さらにその状態から回動することでこれを開くように構成されたものである。
【0019】
ただし、このシャッター本体7bは、壁面5aの内面側に取り付けられているので、筐体2の外側に向けて開くことはなく、内側に向けてのみ開くように構成されている。
また、このシャッター本体7bには、トーションバネ等の付勢手段によって開口7aを閉じる方向、すなわち壁面5aの内面に向く方向に所定の付勢力が付与されており、これによってこの付勢力より大きな力が作用することで、はじめて開口7aを開く方向、つまり内側に向く方向に回動するようになっている。
【0020】
排気側シャッター9、9は、排気側ファン8を挟んでこれの横方向(水平方向)の両側に配設されたもので、前記吸気側シャッター7と同様に、開口9aと、これを開閉可能に閉塞するシャッター本体9bとを備えたものである。シャッター本体9bは、図1及び図2示すように、筐体2の壁面5bの外面側に取り付けられたものである。すなわち、シャッター9bは、外面(壁面5b)に取り付けられた軸受け(図示せず)や蝶番(図示せず)などによって回動可能に設けられ、これにより前記開口9aを覆ってこれを閉塞し、さらにその状態から回動することでこれを開くように構成されたものである。
【0021】
ただし、このシャッター本体9bは、壁面5bの外面側に取り付けられているので、筐体2の内側に向けて開くことはなく、外側に向けてのみ開くように構成されている。
また、このシャッター本体9bには、トーションバネ等の付勢手段によって開口9aを閉じる方向、すなわち壁面5bの外面に向く方向に所定の付勢力が付与されており、これによってこの付勢力より大きな力が作用することで、はじめて開口9aを開く方向、つまり外側に向く方向に回動するようになっている。
【0022】
ここで、この付勢力や前記吸気側シャッター7における付勢力は、両方のファン6、8が稼働している正常時には開くことなく、後述するように一方のファンが不測に停止した際、筐体2内に生じる圧力変化によって開くよう、調整されている。
【0023】
このような構成からなる装置1にあっては、図2に示すように両方のファン6、8が稼働している正常時には、吸気側シャッター7、排気側シャッター9のいずれも、開口7a(9a)がシャッター本体7b(9b)によって閉塞させられていることで、開くことなく閉じた状態になっている。
【0024】
すなわち、吸気側ファン6側では、これから導入された外気(空気)の一部が前記放熱器4(放熱板4a)によって遮られることで、この放熱器4と吸気側ファン6との間が大気圧に比べてやや高い正圧となる。したがって、吸気側シャッター7のシャッター本体7bは、この正圧と筐体2外との間の圧力差によって開口7aに向かう方向、つまり開口7aを閉塞する方向に付勢されるため、吸気側シャッター7はその開口7aを閉じた状態に保持される。
【0025】
一方、排気側ファン8側では、これから筐体2内の空気を排出することで、放熱器4と排気側ファン8との間が大気圧に比べてやや低い負圧となる。したがって、排気側シャッター9のシャッター本体9bは、この負圧と筐体2外との間の圧力差によって開口9aに向かう方向、つまり開口9aを閉塞する方向に付勢されるため、排気側シャッター9はその開口9aを閉じた状態に保持される。
【0026】
また、図3に示すように吸気側ファン6が不測に停止し、排気側ファン8のみが稼働した場合、筐体2内は、外気の供給がなされずに排気側ファン8による排気のみがなされることにより、排気側ファン8の側はもちろん、吸気側ファン6の側も負圧になる。すると、吸気側シャッター7のシャッター本体7bは、筐体2の内外の圧力差によって内側に回動し、開口7aを開く。したがって、このようにして吸気側シャッター7が開くと、その開口7aから外気が導入され、排気側ファン9によって排気される過程で、熱源3を良好に冷却するようになる。
【0027】
なお、このように吸気側ファン6の側が負圧になることにより、吸気側ファン6に関しても、これが停止しているにもかかわらず、筐体2の内外の圧力差によって僅かに回転し、あるいはここに形成されている開口を通って、外気が導入されるようになる。よって、停止した吸気側ファン6が大きな空気抵抗となってしまい、排気側ファン8に大きな負荷がかかるといったことも防止される。
【0028】
また、図4に示すように排気側ファン8が不測に停止し、吸気側ファン6のみが稼働した場合、筐体2内は、内部の空気の排出がなされずに吸気側ファン6による吸気のみがなされることにより、吸気側ファン6の側はもちろん、排気側ファン8の側も正圧になる。すると、排気側シャッター9のシャッター本体9bは、筐体2の内外の圧力差によって外側に回動し、開口9aを開く。したがって、このようにして排気側シャッター9が開くと、その開口9aから筐体2内の空気が排出され、したがって熱源3を冷却し熱交換した空気が筐体2内に留まることなく、排出されるようになる。
【0029】
なお、このように排気側ファン8の側が正圧になることにより、排気側ファン8に関しても、これが停止しているにもかかわらず、筐体2の内外の圧力差によって僅かに回転し、あるいはここに形成されている開口を通って、筐体2内の空気が排出されるようになる。よって、停止した排気側ファン8が、大きな空気抵抗となってしまい、吸気側ファン6に大きな負荷がかかるといったことも防止される。
【0030】
以上説明したように本実施形態における装置1の冷却構造にあっては、吸気側ファン6、排気側ファン8のうちの一方が停止しても、稼働しているファンの動作によって停止した側のシャッター(7、9)が自動的に開くため、従来のように停止したファンが空気抵抗となり、通風量が減少してしまうことが防止される。したがって、装置1が必要とする冷却性能に対応した冷却ファンを、吸気側ファン6、排気側ファン8としてそれぞれ用いることで、必要とされる冷却性能を十分に満足させることができ、これによって装置1の小型化やコストダウンを図ることができる。
【0031】
また、この冷却構造においては、壁面5aに配設された吸気側ファン6と、壁面5bに配設された排気側ファン8とを、相対向させて直列に配置しているので、吸気側ファン6から導入した外気を熱源3に対して良好に接触させ、さらに熱交換後の外気(空気)を排気側ファン8から良好に排出することができ、したがって冷却効率が高いものとなる。
【0032】
また、吸気側シャッター7を吸気側ファン6と同じ壁面5aでかつ該吸気側ファン6の近傍に配設し、排気側シャッター9を排気側ファン8と同じ壁面5bでかつ該排気側ファン8の近傍に配設したので、吸気側ファン6あるいは排気側ファン8が停止した際にも、前述したように吸気側シャッター7あるいは排気側シャッター9を開かせることで、吸気側ファン6あるいは排気側ファン8が稼働している場合と同様に空気の流れを生じさせることができ、したがって効率良く熱源3を冷却することができる。
【0033】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記実施形態では、吸気側シャッター7、排気側シャッター9をそれぞれ開口7a、9aとシャッター本体7b、9bとによって構成したが、特にシャッター本体7b、9bについては、その形状やトーションバネ等の付勢手段について、従来公知の種々のものが使用可能であるのはもちろんである。
すなわち、シャッター本体7b、9bの形状や重量のバランスを変えたり、付勢手段によるシャッター7、9の開閉条件については、これを任意に設定することができる。
【0034】
また、吸気側ファン6や排気側ファン8、吸気側シャッター7や排気側シャッター9の取り付け位置についても、前記実施形態に限定されることなく、吸気側ファン6と吸気側シャッター7については筐体2の一方の側の壁面であり、排気側ファン8と排気側シャッター9については筐体2の他方の側の壁面であれば、これらを任意の位置に配設することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…装置、2…筐体、3…熱源、4…放熱器、4a…放熱板、5a、5b…壁面、6…吸気側ファン、7…吸気側シャッター、7a…開口、7b…シャッター本体、8…排気側ファン、9…排気側シャッター、9a…開口、9b…シャッター本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の一方の側と他方の側との間に、熱源を配設してなる装置の冷却構造であって、
前記一方の側の筐体の壁面に、吸気側ファンと、外側に開くことなく内側にのみ開くよう開閉可能に配設された吸気側シャッターと、を配設し、
前記他方の側の筐体の壁面に、排気側ファンと、内側に開くことなく外側にのみ開くよう開閉に配設された排気側シャッターと、を配設してなることを特徴とする冷却構造。
【請求項2】
前記吸気側シャッターは、前記吸気側ファンと同じ壁面でかつ該吸気側ファンの近傍に配設され、
前記排気側シャッターは、前記排気側ファンと同じ壁面でかつ該排気側ファンの近傍に配設され、
前記吸気側ファンが配設された壁面と前記排気側ファンが配設された壁面とは、相対向して配置されていることを特徴とする請求項1記載の冷却構造。
【請求項3】
前記熱源は放熱板を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の冷却構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate