説明

冷却装置

【課題】電気炉集塵システムの操業停止後に、温風循環用の設備を付設することなく水冷ダクト内の温度の低下による結露を防止し、水冷ダクトの内表面の腐食を抑制することのできる冷却装置を提供すること。
【解決手段】高温の排ガスを所定温度に冷却するための冷却媒体を流通させる流路Rを形成した水冷ダクト30を備えた冷却装置3において、蓄熱機構を有する蓄熱ダクト35を連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関し、例えば、電気炉等から排出される排ガスを直接吸引し、集塵機で浄化処理する電気炉集塵システムの配管経路に用いられる冷却装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気炉等から排出される塵埃等を含む高温の排ガスを直接吸引し、所定温度に冷却し、集塵機で浄化処理する電気炉集塵システムにおいては、図7に示すように、電気炉1から排出される1400〜1500℃程度の排ガスを通す燃焼塔2や冷却装置3’の水冷ダクト30を含む配管ダクトに二重管構造(図7において、破線で示す。)を採用し、二重管構造の間隙に冷却システム6(例えば、クーリングタワー等)によって調整された冷却水を循環させることによって、排ガスを、400℃(好ましくは250℃)以下に冷却した状態で、配管4を介して集塵機5に導入するようにしている。
そして、このような高温の排ガスを所定温度に冷却するための冷却装置3’として、図8に示す水冷ダクト30を多数連結した冷却装置3’が提案され、実用化されている。
この水冷ダクト30は、筒状の配管である内筒31と外筒32との二重管構造として、その間隙に冷却水を流し、内筒31内を通過する排ガスを冷却するものである。
【0003】
この場合、内筒31と外筒32との間隙に、給水口30aから排水口30bにわたって冷却水を周回しながら流通させる流路Rを形成する流水ガイド33を配設し、内筒31の内表面から伝わる排ガスの熱を冷却水側に放熱させ、排ガスによって加熱された内筒31を、その外表面から冷却するようにしている。
給水口30aから供給される冷却水は、流水ガイド33によって区画される流路Rによって、排水口30bに至るまでの間、内筒31と外筒32との間隙を旋回するように流れ、排水口30bを介して水槽Wに返還される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この水冷ダクト30を使用する冷却装置3’では、電気炉等の用途で24時間運転を行わない場合、水冷ダクト30に冷却水を送水するポンプPは、操業停止後、一定時間経過後に停止するため、冷却水によって内筒31が冷却されている状態が続くものではないが、水冷ダクト30内の温度は外気温度近傍まで低下するため、内筒31の内表面(排ガスとの接触面)が結露し、腐食が発生する場合があるという問題があり、かかる問題に対処するために、水冷ダクト30内に温風を循環させる方法等が採用されているが、温風循環用の設備が必要となり、設備全体の大型化や、製造費用が高騰するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の冷却装置の有する問題点に鑑み、電気炉集塵システムの操業停止後に、温風循環用の設備を付設することなく水冷ダクト内の温度の低下による結露を防止し、水冷ダクトの内表面の腐食を抑制することのできる冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の冷却装置は、高温の排ガスを所定温度に冷却するための冷却媒体を流通させる流路を形成した水冷ダクトを備えた冷却装置において、蓄熱機構を有する蓄熱ダクトを連結したことを特徴とする。
【0007】
この場合において、前記蓄熱ダクトを、水冷ダクトの上流側に配設することができる。
【0008】
また、これらの場合において、前記蓄熱ダクトを、ダクトの内表面に蓄熱材を配設して構成することができる。
【0009】
この場合において、前記蓄熱材を、耐火コンクリートとすることができる。
【0010】
更に、これらの場合において、蓄熱ダクトに冷却機構を配設することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の冷却装置によれば、蓄熱機構を有する蓄熱ダクトを連結するから、電気炉集塵システムの操業停止後に、蓄熱ダクトによって排ガス通過の際の熱が蓄熱され、操業停止後も蓄熱ダクトに蓄熱された熱が伝達することによって水冷ダクト内の温度の低下による結露を防止し、水冷ダクトの内表面の腐食を抑制することができる。
また、別途、温風循環用の設備を用いる必要がないので、設備全体を大型化することなく、設備費用全体のコストダウンを図ることができる水冷ダクトを提供することができる。
【0012】
また、前記蓄熱ダクトを、水冷ダクトの上流側に配設することによって、電気炉集塵システムの操業停止後も操業時と同じ方向に流れるダクト内の空気によって蓄熱ダクトに蓄熱された熱を容易に水冷ダクト内に伝達させることができ、水冷ダクト内の温度の低下による結露を防止することができる。
【0013】
また、前記蓄熱ダクトを、ダクトの内表面に蓄熱材を配設して構成するときは、操業時の排ガスの熱を十分に蓄熱することができる。
【0014】
また、前記蓄熱材を、耐火コンクリートとするときは、蓄熱ダクトの内表面に耐火コンクリートを塗着することによって蓄熱ダクト内の保温効果を得ることができ、塗着の厚みを変えることによって、対象排ガスに応じた蓄熱効果を得ることができる。
【0015】
また、蓄熱ダクトに冷却機構を配設するとき、冷却装置として操業する際の冷却効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の水冷ダクトの実施の形態を、図面に基づいて説明する。なお、従来装置と同様の構造については同一の符号、一連の符号を付し説明を省略する。
【実施例1】
【0017】
図1〜図3に、本発明の冷却装置の第1実施例を示す。
この冷却装置3は、高温の排ガスを所定温度に冷却するための冷却媒体を流通させる流路Rを形成した水冷ダクト30と、蓄熱機構を有する蓄熱ダクト35とを連結するようにしている。
水冷ダクト30は、従来例と同様、電気炉1から排出される1400〜1500℃程度の排ガスを400℃(好ましくは250℃程度)以下に冷却するために使用されるもので、通常、長さが4〜5mの水冷ダクト30を複数連結して使用される。
蓄熱ダクト35は、図2〜図3に示すように、筒体36の内表面に蓄熱材40を配設して構成するようにしている。
【0018】
蓄熱材40の種類は、特に限定されるものではなく、耐火性、断熱性のある材料であればよく、例えば、耐火コンクリートを使用することができる。
耐火コンクリートは、骨材として、例えば、耐火骨材の粗粒と微粉とを使い、結合材として、例えば、アルミナセメント等、耐火性のあるセメントを使ったもの(以下、「キャスタC」という)が好ましい。
【0019】
キャスタCは、筒体36の内表面に一定の厚みTをもって塗着するもので、厚みTによって、蓄熱ダクト35の蓄熱効率が決まるため、排ガスの種類、排出温度、及び、使用する冷却水温度によって決定される。
【0020】
なお、キャスタCは筒体36の内表面の全面に塗着することなく、塗着個所と非塗着個所を交互に設けるなどして、蓄熱効率を変更させることもできる。
【0021】
蓄熱ダクト35と水冷ダクト30との連結数の割合は、特に限定されるものではないが、蓄熱ダクト35の連結数を、水冷ダクト30の連結数の1/3〜1/6程度とすることが好ましく、図1に示すように、4本の水冷ダクト30に対して、1本の蓄熱ダクト35を使用するようにしている。
また、蓄熱ダクトの35を連結する位置は、水冷ダクトの上流側とすることが好ましい。
これにより、電気炉集塵システムの操業停止後も操業時と同じ方向に流れるダクト内の空気によって蓄熱ダクト35に蓄熱された熱を容易に水冷ダクト30側に伝達し、水冷ダクト30内の温度の低下による結露を防止することができる。
【0022】
上記構成で連結された冷却装置3において、電気炉1から排出される排ガスが冷却装置3の水冷ダクト30を通過する際、内筒31の内表面から外表面に熱が伝達し、従来例と同様に、流水ガイド33から放熱し、冷却される。
【0023】
そして、電気炉集塵システムが停止した後において、水冷ダクト30の上流側に連結された蓄熱ダクト35では、筒体36の内表面に塗着したキャスタCに蓄えられた排ガスの熱が放熱されはじめ、蓄熱ダクト35の下流側に位置する水冷ダクト30内の温度を高い温度で維持することができる。
【0024】
これによって、筒体36の内表面にキャスタCを塗着した蓄熱ダクト35を水冷ダクト30と共に連結するという比較的安価な方法で、温風循環用の設備を付設することなく水冷ダクト30の内筒31の内表面の腐食を抑制し、水冷ダクト30の延命化を図ることができる。
【実施例2】
【0025】
図4〜図6に、本発明の冷却装置の第2実施例を示す。
この冷却装置3は、高温の排ガスを所定温度に冷却するための冷却媒体を流通させる流路Rを形成した水冷ダクト30と、蓄熱機構を有する蓄熱ダクト35とを連結するようにしている点、第1実施例と同様である。
そして、この冷却装置3に使用する蓄熱ダクト35には冷却機構を配設するようにしている。
【0026】
この蓄熱ダクト35は、冷却機構として、従来と同様の構造をした水冷ダクト30に用いられている二重管構造の間隙に冷却媒体を流すようにしており、二重管構造の内側となる筒体(排ガスとの接触側の筒体)の内表面に蓄熱材40を配設するようにしたものである。
なお、すべての水冷ダクト30をこの蓄熱ダクト35と置換すると電気炉集塵システム停止時の保温効率は上がるものの、電気炉集塵システム稼働時の冷却効率が低下することとなり好ましくない。
【0027】
この蓄熱ダクト35は、図5〜図6に示すように、第1実施例及び従来例の水冷ダクト30と同様、筒状の配管である内筒31と外筒32との二重管構造を採用し、その間隙に冷却媒体を流し、内筒31内を通過する排ガスの熱を内筒31の内表面から流路内の冷却水側に放熱させて冷却するもので、内筒の31の内表面(排ガスとの接触面)に蓄熱材40を配設するようにしている。
【0028】
蓄熱材40の種類は、第1実施例と同様、特に限定されるものではなく、耐火性、断熱性のある材料であればよく、例えば、耐火コンクリートを使用することができる。
耐火コンクリートは、骨材として、第1実施例と同様、キャスタCを使用することが好ましい。
【0029】
また、キャスタCは、内筒31の内表面に一定の厚みTをもって塗着するもので、厚みTによって、冷却機構としての冷却効率と、蓄熱ダクト35としての蓄熱効率とが決まるため、排ガスの種類、排出温度、及び、使用する冷却水温度によって決定される。
【0030】
なお、キャスタCは内筒31の内表面の全面に塗着することなく、塗着個所と非塗着個所を交互に設けるなどして、冷却機構としての冷却効率を向上させることもできる。
【0031】
蓄熱ダクト35と水冷ダクト30との連結数の割合は、特に限定されるものではないが、第1実施例と同様、蓄熱ダクト35の連結数を、水冷ダクト30の連結数の1/3〜1/6程度とすることが好ましく、図4に示すように、4本の水冷ダクト30に対して、1本の蓄熱ダクト35を使用するようにしている。
また、蓄熱ダクトの35を連結する位置は、第1実施例と同様、水冷ダクトの上流側とすることが好ましい。
【0032】
上記構成で連結された冷却装置3に対して電気炉1から排出される排ガスが冷却装置3の水冷ダクト30及び蓄熱ダクト35を通過する際、内筒31の内表面から外表面に、また、蓄熱ダクト35の場合には、蓄熱材40を介して、内筒31の内表面から外表面に熱が伝達し、従来例と同様に、流水ガイド33から放熱し、冷却される。
【0033】
そして、電気炉集塵システムが停止した後において、内筒31の内表面にキャスタCを塗着した蓄熱ダクト35では、キャスタCに蓄えられた排ガスの熱が放熱されはじめ、蓄熱ダクト35の下流側に位置する水冷ダクト30内の温度を高い温度で維持することができる。
【0034】
これによって、水冷ダクト30の内表面にキャスタCを塗着し、蓄熱ダクト35とするという比較的安価な方法で、かつ、ダクト形状を変更したり、温風循環用の設備を付設することなく内筒31の内表面の腐食を抑制し、水冷ダクト30の延命化を図ることができる。
【0035】
以上、本発明の冷却装置について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の冷却装置は、温風循環用の設備を付設することなく、冷却装置に使用する水冷ダクト内の温度の低下による結露を防止し、水冷ダクトの内表面の腐食を抑制することができるという特性を有していることから、24時間運転を行わない電気炉集塵システムにおいて好適に用いることができる。
また、適用対象も、新規の電気炉集塵システムに用いることができるほか、既設の電気炉集塵システムにおける冷却装置の代替の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の冷却装置を使用する、電気炉集塵システムの全体図である。
【図2】同冷却装置に使用する蓄熱ダクトの一実施例を示す平面図である。
【図3】(a)は、図2のX−X断面図を、(b)は、図2のY部詳細図を示す。
【図4】本発明の別の冷却装置を使用する、電気炉集塵システムの全体図である。
【図5】同冷却装置に使用する蓄熱ダクトの一実施例を示す平面図である。
【図6】(a)は、図5のX1−X1断面図を、(b)は、図5のY1部詳細図を示す。
【図7】従来の冷却装置を使用する、電気炉集塵システムの全体図である。
【図8】従来の冷却装置に使用する水冷ダクトの平面図である。
【符号の説明】
【0038】
3 冷却装置
30 水冷ダクト
30a 給水口
30b 排水口
31 内筒
32 外筒
35 蓄熱ダクト
36 筒体
39 蓄熱ダクト
40 蓄熱材
C キャスタ(耐火コンクリート)
R 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温の排ガスを所定温度に冷却するための冷却媒体を流通させる流路を形成した水冷ダクトを備えた冷却装置において、蓄熱機構を有する蓄熱ダクトを連結したことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記蓄熱ダクトを、水冷ダクトの上流側に配設したことを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記蓄熱ダクトを、ダクトの内表面に蓄熱材を配設して構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の冷却装置。
【請求項4】
前記蓄熱材を、耐火コンクリートとしたことを特徴とする請求項3記載の冷却装置。
【請求項5】
前記蓄熱ダクトに水冷機構を配設したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−109107(P2009−109107A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283090(P2007−283090)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】