説明

冷却装置

【課題】発熱器が近傍に配置されパワー素子がケース内に収容されたユニットを冷却するものにおいて、ケース内の各部を効率良く冷却する。
【解決手段】表面の2箇所にフィン34a,34bを形成すると共に冷却水用パイプ32から冷却水を導入してインバータ12を冷却する冷却器34を配置すると共に、ケース18のエンジンとは反対側の面の吸気口41から吸気し冷却器34のフィン34aに送る吸気用ファン44と冷却器34のフィン34bを通過した空気をエンジン側の面の排気口48から排出する排気用ファン46とを配置し、吸気口41からの吸気が吸気用ファン44,冷却器34のフィン34a,インバータ12およびモータECU14,冷却器34のフィン34b,排気用ファン46を介して排気口48から排出されるようインバータ12と冷却器34とをレイアウトする。また、ケース18の排気口48が形成されたエンジン側の面に遮蔽板50を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の冷却装置としては、冷媒空気が流れる冷媒空気用パイプを介してシロッコファンとラジエータとプリント基板に当接するコールドプレートとを接続して循環路を形成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、シロッコファンを駆動して冷媒空気用パイプ内の冷媒空気を循環させることにより、ラジエータにより冷却された後にコールドプレートに送られた冷媒空気との熱交換によってプリント基板上に実装されたLSIを冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−227576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ケースに収容された素子を冷却する場合を考えると、ケース内に熱がこもり易いため、ケース内の素子を効率良く冷却することは冷却装置において重要な課題の一つとして考えることができる。また、搭載スペースの都合上、素子を収容するケースの近傍に発熱器が搭載されたシステムでは、こうした発熱器からの熱による影響も十分に考慮しなければならない。
【0005】
本発明の冷却装置は、発熱器が近傍に配置されパワー素子がケース内に収容されたユニットを冷却する装置において、ケース内の各部を効率良く冷却することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷却装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の冷却装置は、
発熱器の近傍に配置されパワー素子が実装された回路基板を備えるユニットを冷却する冷却装置において、
表面にフィンが形成されると共に内部に冷却水を導入して該冷却水との熱交換により前記パワー素子を冷却可能な冷却器と、
前記発熱器とは反対側の面に冷却用の空気を吸入するための吸入口が形成されると共に前記発熱器側の面に前記吸入した冷却用の空気を排出するための排出口が形成され、冷却用の空気が前記吸入口から前記冷却器のフィン,前記回路基板を順に通過して前記排出口から排出されるよう前記回路基板と前記冷却器とがレイアウトされたケースと、
前記吸入口から冷却用の空気を吸入させる吸入用ファンと、
前記排出口から冷却用の空気を排出させる排出用ファンと、
前記ケースの前記発熱器側の面に所定の空間を隔てて覆うように取り付けられた遮蔽板と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の冷却装置では、内部に冷却水を導入して冷却水との熱交換によりパワー素子を冷却可能な冷却器の表面にフィンを形成し、ケースの発熱器とは反対側の面に冷却用の空気を吸入するための吸入口を形成すると共に発熱器側の面に吸入した冷却用の空気を排出するための排出口を形成し、冷却用の空気が吸入口から冷却器のフィン,回路基板を順に通過して排出口から排出されるよう回路基板と冷却器とをレイアウトし、吸入口から冷却用の空気を吸入させる吸入用ファンと排出口から冷却用の空気を排出させる排出用ファンとを設ける。そして、ケースの発熱器側の面に所定の空間を隔てて覆うように遮蔽板を取り付ける。これにより、冷却器内の冷却水によりパワー素子を冷却することができると共に冷却器のフィンを通過した冷却用の空気により回路基板を冷却することができる。また、ケースの面とこの面を覆う遮蔽板とにより囲まれる空間に冷却用の空気を排出するから、この空間内の空気を断熱層として機能させることができ、発熱器からの受熱による温度上昇を抑制することができる。これらの結果、発熱器が近傍に配置されパワー素子がケース内に収容されたユニットを冷却する装置において、ケース内の各部を効率良く冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例としての冷却装置20が組み込まれたパワーコントロールユニット10の構成の概略を示す構成図である。
【図2】変形例の冷却装置20Bが組み込まれたパワーコントロールユニット10の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の一実施例としての冷却装置20が組み込まれたパワーコントロールユニット10の構成の概略を示す構成図である。パワーコントロールユニット10は、内燃機関としてのエンジン60と交流電流により駆動する走行用のモータとが搭載されたハイブリッド自動車におけるモータを駆動するためのユニットとして構成されている。このパワーコントロールユニット10は、図1に示すように、複数のトランジスタ素子(IGBTなどのパワートランジスタ素子)11が基板上に実装されトランジスタ素子11のスイッチングにより図示しない高圧バッテリからの直流電流を交流電流に変換する電力変換装置としてのインバータ12と、インバータ12のトランジスタ素子11をスイッチング制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)14と、インバータ12の母線間に取り付けられた平滑用のコンデンサ16とを備え、これらは上からモータECU14,インバータ12,コンデンサ16の順にレイアウトされた状態でケース18に収容されている。また、パワーコントロールユニット10は、エンジンコンパートメント(エンジン60が搭載される空間)内にエンジン60と隣接して配置されている。
【0012】
実施例の冷却装置20は、図1に示すように、冷却水により冷却する水冷系30と外気(空気)により冷却する空冷系40とを併用してパワーコントロールユニット10の各部を冷却するものとして構成されている。この冷却装置20は、水冷系30としては、冷却水の経路をなす冷却水用パイプ32により循環路を形成するよう図示しないラジエータとウォーターポンプとに接続され、ウォーターポンプを駆動して冷却水を循環させることにより冷却水との熱交換によりトランジスタ素子11を冷却する冷却器34を備える。冷却器34は、ケース18内における空間をコンデンサ16が配置された空間とインバータ12の基板部分とモータECU14とが配置された空間とに区画しており、冷却器34を通過して両空間を行き来する空気が内部の冷却水との熱交換により冷却されるよう冷却器34の表面における冷却水の入口に対して手前側(エンジン60とは反対側)と奥側(エンジン60側)の2箇所にフィン34a,34bが形成されている。
【0013】
また、実施例の冷却装置20は、空冷系40としては、ケース18のエンジン60とは反対側の面で且つ冷却器34よりも下方に形成された吸気口41から空気を吸入すると共に吸入した空気を吸気用ダクト42を介して上方の冷却器34のフィン34aに送る吸気用ファン44と、冷却器34のフィン34bを通過した空気を排気用ダクト45を介してケース18のエンジン60側の面で且つ冷却器34よりも下方に形成された排気口48から排気する排気用ファン46と、を備え、図示しない補機用の低圧バッテリからの電力の供給を受けて作動するようになっている。この空冷系40では、各ファン44,46が作動すると、吸気口41から吸入された空気が、吸気用ダクト42,吸気用ファン44を介して冷却器34のフィン34aに送られて冷却され、この冷却された空気がインバータ12の基板面とモータECU14の基板面とを冷却しながら通過する。そして,インバータ12の基板面とモータECU14の基板面を通過した空気は、冷却器34のフィン34bで冷却された後、排気用ダクト45,排気用ファン46を介して排気口48から排出される。
【0014】
また、実施例の冷却装置20は、ケース18の排気口48が形成されたエンジン60側の面にこの面を覆うように箱状の遮蔽板50が取り付けられている。この遮蔽板50は、内壁面の全面にフィン52が形成されており、排気口48から排出された空気はフィン52を通過して上部の外気口51に抜けるようになっている。前述したように、排気口48から排出される空気は冷却器34のフィン34bで冷却されており、また、遮蔽板50によって囲まれる空間は空気層による断熱層を形成するから、エンジン60側からの輻射熱はケース18内に伝わりにくくなる。なお、遮蔽板50は、ケース18に対して別部品として構成されており、ケース18に組み付け固定されている。
【0015】
以上説明した実施例の冷却装置20によれば、水冷系30として、表面の2箇所にフィン34a,34bを形成すると共に冷却水用パイプ32から冷却水を導入し冷却水との熱交換によりインバータ12のトランジスタ素子11を冷却する冷却器34を配置し、空冷系40として、ケース18のエンジン60とは反対側の面に形成された吸気口41から吸気し冷却器34のフィン34aに送る吸気用ファン44と、冷却器34のフィン34bを通過した空気をエンジン60側の面に形成された排気口48から排出する排気用ファン46とを配置し、吸気口41から吸入された空気が吸気用ファン44,冷却器34のフィン34a,インバータ12の基板面およびモータECU14の基板面,冷却器34のフィン34b,排気用ファン46を介して排気口48から排出されるようインバータ12と冷却器34とをレイアウトしたから、水冷系30によりインバータ12のトランジスタ素子11を冷却することができると共に空冷系40により冷却器34のフィン34aで冷却した空気によりインバータ12の基板部分やモータECU14を冷却することができる。また、ケース18の排気口48が形成されたエンジン60側の面に遮蔽板50を取り付けているから、遮蔽板50によって囲まれる空間に排気口48から排出される空気による断熱層を形成することができ、エンジン60側からの輻射熱がケース18内に伝わりにくくすることができる。これらの結果、発熱器としてのエンジン60が近傍に配置されトランジスタ素子11がケース18内に収容されたユニットを冷却するものにおいて、ケース18内の各部を効率良く冷却することができる。
【0016】
また、実施例の冷却装置20によれば、遮蔽板50をケース18に対して別部品として構成しているから、エンジン60などの発熱器が近傍にないシステムにおいては遮蔽板50を取り付けない構成とするだけでよく、部品を共通化することができる。
【0017】
実施例の冷却装置20では、吸気用ファン44と排気用ファン46とが補機用の低圧バッテリからの給電を受けて作動するよう構成するものとしたが、これに限定されるものではなく、図2の変形例の冷却装置20Bに示すように、遮蔽板50の外壁面に温度差を電力に変換する熱電変換素子(ゼーベック素子)54を取り付け、この熱電変換素子54によりエンジン60からの輻射熱を電力に変換することにより、その電力を用いて吸気用ファン44と排気用ファン46とが作動するよう構成するものとしてもよい。これにより、エンジン60からの輻射熱をケース18内に更に伝わりにくくすると共にバッテリからの電力消費を抑制して装置のエネルギー効率を向上させることができる。また、イグニッションオフ直後などバッテリからの給電は遮断されるがケース18内の冷却が必要な場合であっても、ファン44,46を作動させることができる。なお、熱電変換素子54により変換された電力は、吸気用ファン44と排気用ファン46の両方の作動に用いる他、いずれか一方のみの作動に用いるものとしてもよい。
【0018】
実施例の冷却装置20では、遮蔽板50をケース18に対して別部品として構成するものとしたが、これらを一体の部品として構成するものとしてもよい。
【0019】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例のエンジン60が「発熱器」に相当し、トランジスタ素子11が実装されたインバータ12が「回路基板」に相当し、表面にフィン34a,34bが形成されると共に内部の冷却水との熱交換によりインバータ12のトランジスタ素子11を冷却する冷却器34が「冷却器」に相当し、吸気口41がエンジン60とは反対側の面に形成されると共に排気口48がエンジン60側の面に形成され、吸気口41からの吸気が吸気用ファン44,冷却器34のフィン34a,インバータ12およびモータECU14,冷却器34のフィン34b,排気用ファン46を介して排気口48から排出されるようインバータ12とモータECU14とコンデンサ16とがレイアウトされたケース18が「ケース」に相当し、吸気用ファン44が「吸入用ファン」に相当し、排気用ファン46が「排出用ファン」に相当し、ケース18の排気口48が形成されたエンジン60側の面を覆うよう取り付けられた遮蔽板50が「遮蔽板」に相当する。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0020】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、冷却装置の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
10 パワーコントロールユニット、11 トランジスタ素子、12 インバータ、14 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、16 コンデンサ、18 ケース、20 冷却装置、30 水冷系、32 冷却水用パイプ、34 冷却器、34a,34b フィン、40 空冷系、41 吸気口、42 吸気用ダクト、44 吸気用ファン、45 排気用ダクト、46 排気用ファン、48 排気口、50 遮蔽板、51 外気口、52 フィン、54 熱電変換素子、60 エンジン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱器の近傍に配置されパワー素子が実装された回路基板を備えるユニットを冷却する冷却装置において、
表面にフィンが形成されると共に内部に冷却水を導入して該冷却水との熱交換により前記パワー素子を冷却可能な冷却器と、
前記発熱器とは反対側の面に冷却用の空気を吸入するための吸入口が形成されると共に前記発熱器側の面に前記吸入した冷却用の空気を排出するための排出口が形成され、冷却用の空気が前記吸入口から前記冷却器のフィン,前記回路基板を順に通過して前記排出口から排出されるよう前記回路基板と前記冷却器とがレイアウトされたケースと、
前記吸入口から冷却用の空気を吸入させる吸入用ファンと、
前記排出口から冷却用の空気を排出させる排出用ファンと、
前記ケースの前記発熱器側の面に所定の空間を隔てて覆うように取り付けられた遮蔽板と、
を備える冷却装置。

【図1】
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【図2】
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