説明

冷却装置

【課題】冷却対象となる電子機器の吸気側の温度を下げる冷却方式を省スペースで実現するとともに、多様な冷却方式を実現することができるようにする。
【解決手段】
ラック1の内部に搭載された通信装置2(電子機器)を冷却用エアにより冷却する冷却機構(冷却装置)において、通信装置2の吸気側に設置されたエアフィルタ3と、ラック1に設置された冷却部5と、エアフィルタ3に取り付けられるとともにエアフィルタ取り付け側とは反対側が冷却部5に接続されたヒートパイプ4と、を備える。エアフィルタ3を、ラック1の内部における冷却用エアが流れる経路に位置する通信装置2の吸気側に対して取り外し可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラックの内部に搭載された通信装置の冷却を行う冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラックの内部に搭載されて使用される通信装置がある。この種の通信装置においては、通信装置内に実装されているCPU等のデバイスの故障を防止するため、所定の冷却方式を用いて通信装置の冷却を行っている。この冷却方式は、通信装置内の温度をデバイスの許容温度以下に保つように設計されている。
【0003】
近年、CPUの高性能化と、通信装置内における部品の実装の高密度化に伴い、通信装置内の発熱が多くなり、ファンを用いた空冷では限られたスペースで冷却することが難しくなっている。空冷以外にも冷却能力の高い液冷などの様々な冷却方式が実用化されているが、液冷方式は空冷方式に比較すると構造が複雑であり、高価になる。
【0004】
上記の空冷による冷却技術に関しては、例えば特許文献1に記載の過給機の吸気冷却・消音装置が知られている。この装置は、吸気用のフィルタを伝熱面としてヒートパイプを介して冷却媒体と熱交換することで、コンプレッサに吸引される空気を冷却するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−150367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来のラック内部に搭載される通信装置においては次のような課題がある。
第1の課題は、ラック内の温度上昇に伴って通信装置の吸気側の温度が上昇するため、通信装置内の温度がデバイス許容温度よりも上昇するという厳しい条件になり、空冷では通信装置を十分に冷却できないことがある。
第2の課題は、通信装置が搭載されるラック内部は限られたスペースであるため、通信装置の冷却に必要な吸気スペースをラック内部に確保するのが困難である。
第3の課題は、通信装置の発熱量や通信装置の環境温度には様々な条件があるため、冷却方式が固定であると、様々な条件に対応した複数の冷却方式が必要となるため過剰スペックとなり、冷却装置が高価になる。
【0007】
一方、上述した特許文献1には、フィルタを用いて冷却を行う技術が開示されているが、フィルタが取り外し可能かどうかについては記載されていない。フィルタが取り外し可能でないと、上記第3の課題と同様に、様々な条件に対応した複数の冷却方式が必要となり過剰スペックとなることが考えられる。
【0008】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、冷却対象となる電子機器の吸気側の温度を下げる冷却方式を省スペースで実現するとともに、多様な冷却方式を実現することができる冷却装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明の第1の構成は、ラックの内部に搭載された電子機器を冷却用エアにより冷却する冷却装置であって、前記電子機器の吸気側に設置されたエアフィルタと、前記ラックに設置された冷却部と、前記エアフィルタに取り付けられるとともにエアフィルタ取り付け側とは反対側が前記冷却部に接続されたヒートパイプと、を備え、前記エアフィルタを、前記ラックの内部における冷却用エアが流れる経路に位置する前記電子機器の吸気側に対して取り外し可能に構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
この発明の構成によれば、電子機器の吸気側の温度を下げる冷却方式としているので、従来、空冷だけでは十分に冷却できなかった電子機器を的確に冷却できる。また、電子機器の吸気側に設置するエアフィルタにヒートパイプを取り付けた冷却方式としているので、省スペースを実現できる。また、電子機器の吸気側にエアフィルタを取り外し可能としているので、多様な冷却方式を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の第1の実施形態である通信装置を搭載したラックにおいて通信装置冷却用のエアがラックの前面側から後面側に流れる様子を模式的に示す側面図である。
【図2】エアフィルタにおけるヒートパイプの配置状態及びヒートパイプと冷却部の接続状態を模式的に示す下面図である。
【図3】この発明の第2の実施形態である通信装置を搭載したラックにおいて通信装置冷却用のエアが下面側から上面側に流れる様子を模式的に示す側面図である。
【図4】この発明の第3の実施形態である通信装置を搭載したラックにおいて通信装置冷却用のエアが左側から右側に流れる様子を模式的に示す上面図である。
【図5】この発明の第4の実施形態である通信装置を搭載したラックにおいて通信装置冷却用のエアが右側から左側に流れる様子を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ラックの内部に搭載された電子機器を冷却用エアにより冷却する冷却装置であって、前記電子機器の吸気側に設置されたエアフィルタと、前記ラックに設置された冷却部と、前記エアフィルタの下面に接した状態に取り付けられるとともにエアフィルタ取り付け側とは反対側が前記冷却部に接続され、前記下面において一定の間隔で配置された複数本のヒートパイプとを備え、前記エアフィルタを、前記ラックの内部における冷却用エアが流れる経路に位置する前記電子機器の吸気側に対して取り外し可能に構成することで、この発明の好適な実施形態を実現した。
【実施形態1】
【0013】
以下、図面を参照して、この発明の各実施形態について説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態である通信装置を搭載したラックにおいて通信装置冷却用のエアがラックの前面側から後面側に流れる様子を模式的に示す側面図である。
まず、冷却機構の構成について説明する。ラック1の内部には、通信装置2が搭載されている。冷却機構は、ラック1内部の通信装置2を冷却用エアにより冷却する。通信装置2の吸気口には、エアフィルタ3が取り外し可能に設置されている。エアフィルタ3には、複数本の冷却用のヒートパイプ4が接した状態に取り付けられている。
一方、ラック1の外壁部には、冷却部5が設置されている。冷却部5には、エアフィルタ3に取り付けられたヒートパイプ4が接続されている。エアフィルタ3、ヒートパイプ4、冷却部5から冷却機構が構成される。なお、エアフィルタ3及びヒートパイプ4の詳細は図2により後述する。
【0014】
ヒートパイプ4によって冷却されたエアが、エアフィルタ3を通り、通信装置2内部のエアフロー(図中矢印で示す冷却用エアが流れる経路)となる。すなわち、通信装置2内部のエアフローは、必ず、通信装置2の吸気口に設置されているエアフィルタ3を通過し、通信装置2内部を通り、ラック1の外部へ排気口(図示略)から排出される。
図1では、ラック1において、紙面左側がラック1の前面側、紙面右側がラック1の後面側を示している。冷却用のエアがラック1の前面側からエアフィルタ3を介して通信装置2内部を通りラック1の後面側に排出される、前後エアフローに設定されている。
【0015】
図2は、エアフィルタにおけるヒートパイプの配置状態及びヒートパイプと冷却部の接続状態を模式的に示す下面図である。
エアフィルタ3には、その下面に対して複数本(実施形態では6本)のヒートパイプ4が接した状態に取り付けられるとともに等間隔で平行に配置されている。各ヒートパイプ4におけるエアフィルタ取り付け側とは反対側の端部は、冷却部5に接続されている。図2の構造を有するヒートパイプ4が取り付けられたエアフィルタ3は、図1の前後エアフローのラック内の通信装置2の吸気口に実装される。
【0016】
ヒートパイプ4は、熱伝導性が高い材質から形成されたパイプの内部に揮発性の液体(作動液)を封入したものである。ヒートパイプ4の軸方向の一方を加熱部(図示略)により加熱し、ヒートパイプ4の軸方向の他方を冷却部5により冷却することで、作動液の蒸発(潜熱の吸収)→作動液の凝縮(潜熱の放出)のサイクルを発生させる。これにより、エアフィルタ3側の熱、すなわち、通信装置2の吸気側の熱を冷却部5側へ移動することができる。
また、ヒートパイプ4は、ラック1の外壁部における冷却部5の設置箇所を加熱部よりも高い位置に設定することにより、凝縮後の作動液を加熱部に戻すことができる構造となっている。
【0017】
次に、図1及び図2を参照して、第1の実施形態の動作について説明する。
ラック1内部の通信装置2を冷却する場合、上述したように、ヒートパイプ4の軸方向の一方を加熱部により加熱し、もう一方を冷却部5により冷却する。これに伴って、ヒートパイプ4内部に封入されている作動液の蒸発(潜熱の吸収)→作動液の凝縮(潜熱の放出)のサイクルが発生する。
これにより、ヒートパイプ4を通してエアフィルタ3側の熱を冷却部5側に移動することができる。その結果、エアフィルタ3が設置されている通信装置2の吸気口の温度(吸気温度)を下げることができ、通信装置2内部を的確に冷却することができる。
【0018】
第1の実施形態では、図1に示すように、冷却用のエアはラック1の前面側から通信装置2の吸気口に設置されているエアフィルタ3を通過した後、通信装置2内部を通り、ラック1の後面側へ排出される。この前後エアフローにより、通信装置3が冷却される。
なお、冷却性能は、ヒートパイプ4の設置本数、ヒートパイプ4の性能、冷却部5の性能に依存するので、これらの組み合わせにより多様な冷却条件に対応することができる。
【0019】
以上のように、冷却用の複数本のヒートパイプ4をエアフィルタ3に接した状態に取り付けるとともに、ラック1内部に搭載された通信装置2の吸気側に、エアフィルタ3を取り外し可能に設置する。これにより、通信装置の吸気口の温度を下げる多様な冷却方式を省スペースで実現することができる。
【0020】
第1の実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
第1の効果としては、通信装置2の吸気側の温度を下げる冷却方式を実現しているので、通信装置内の許容温度上昇にマージンをもたせることができる。従って、従来、空冷だけでは十分に冷却できなかった通信装置2を的確に冷却することができる。
第2の効果としては、通信装置2の吸気側に設置されるエアフィルタ3にヒートパイプ4を接して取り付けた冷却方式を実現しているので、エアフィルタ3と冷却スペースを一体化して省スペースを実現することができる。
第3の効果としては、通信装置2の吸気側に対して取り外し可能なエアフィルタ3により冷却方式を実現しているので、多様な冷却方式を実現することができる。
【実施形態2】
【0021】
次に、この発明の第2の実施形態について説明する。
図3は、この発明の第2の実施形態である通信装置を搭載したラックにおいて通信装置冷却用のエアが下面側から上面側に流れる様子を模式的に示す側面図である。なお、図3に示す各部は図1に示す各部と共通のため同じ符号を付記する。
図3では、ラック1において、紙面下方がラック1の下面側、紙面上方がラック1の上面側を示している。冷却用のエアがラック1の下面側からエアフィルタ3を介して通信装置2内部を通りラック1の上面側に排出される、下から上へのエアフローに設定されている。
【0022】
第2の実施形態では、図3に示すように、冷却用のエアはラック1の下面側から通信装置2の吸気口に設置されているエアフィルタ3を通過した後、通信装置2内部を通り、ラック1の上面側へ排出される。この下から上へのエアフローにより、通信装置3が冷却される。
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、通信装置2を的確に冷却できる、エアフィルタ3と冷却スペースを一体化してラック1内部の省スペースを実現できる、多様な冷却方式を実現できる、といった効果がある。
【実施形態3】
【0023】
次に、この発明の第3の実施形態について説明する。
図4は、この発明の第3の実施形態である通信装置を搭載したラックにおいて通信装置冷却用のエアが左側から右側に流れる様子を模式的に示す上面図である。なお、図4に示す各部は図1に示す各部と共通のため同じ符号を付記する。
図4では、ラック1において、紙面左側がラック1の左側、紙面右側がラック1の右側を示している。冷却用のエアがラック1の左側からエアフィルタ3を介して通信装置2内部を通りラック1の右側に排出される、左から右へのエアフローに設定されている。
【0024】
この第3の実施形態では、図4に示すように、冷却用のエアはラック1の左側から通信装置2の吸気口に設置されているエアフィルタ3を通過した後、通信装置2内部を通り、ラック1の右側へ排出される。この左から右へのエアフローにより、通信装置3が冷却される。
第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、通信装置2を的確に冷却できる、エアフィルタ3と冷却スペースを一体化してラック1内部の省スペースを実現できる、多様な冷却方式を実現できる、といった効果がある。
【実施形態4】
【0025】
次に、この発明の第4の実施形態について説明する。
図5は、この発明の第4の実施形態である通信装置を搭載したラックにおいて通信装置冷却用のエアが右側から左側に流れる様子を模式的に示す上面図である。なお、図5に示す各部は図1に示す各部と共通のため同じ符号を付記する。
図5では、ラック1において、紙面左側がラック1の左側、紙面右側がラック1の右側を示している。冷却用のエアがラック1の右側からエアフィルタ3を介して通信装置2内部を通りラック1の左側に排出される、右から左へのエアフローに設定されている。
【0026】
第4の実施形態では、図5に示すように、冷却用のエアはラック1の右側から通信装置2の吸気口に設置されているエアフィルタ3を通過した後、通信装置2内部を通り、ラック1の左側へ排出される。この右から左へのエアフローにより、通信装置3が冷却される。
第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、通信装置2を的確に冷却できる、エアフィルタ3と冷却スペースを一体化してラック1内部の省スペースを実現できる、多様な冷却方式を実現できる、といった効果がある。
【0027】
以上、この発明の一実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあってもこの発明に含まれる。
各実施形態では、エアフィルタ3に取り付けるヒートパイプ4の本数を6本としたが、これに限らない。上述したように、ヒートパイプ4の設置本数、ヒートパイプ4の性能、冷却部5の性能を適宜組み合わせることで、冷却対象に応じた所望の冷却性能を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明の冷却装置は、ラック内部に搭載された通信装置の冷却以外にも、ラック内部に搭載された通信装置以外の各種の電子機器の冷却にも適用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 ラック
2 通信装置(電子機器)
3 エアフィルタ
4 ヒートパイプ
5 冷却部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラックの内部に搭載された電子機器を冷却用エアにより冷却する冷却装置であって、
前記電子機器の吸気側に設置されたエアフィルタと、
前記ラックに設置された冷却部と、
前記エアフィルタに取り付けられるとともにエアフィルタ取り付け側とは反対側が前記冷却部に接続されたヒートパイプと、を備え、
前記エアフィルタを、前記ラックの内部における冷却用エアが流れる経路に位置する前記電子機器の吸気側に対して取り外し可能に構成したことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
ラックの内部に搭載された電子機器を冷却用エアにより冷却する冷却装置であって、
前記電子機器の吸気側に設置されたエアフィルタと、
前記ラックに設置された冷却部と、
前記エアフィルタの下面に接した状態に取り付けられるとともにエアフィルタ取り付け側とは反対側が前記冷却部に接続され、前記下面において一定の間隔で配置された複数本のヒートパイプとを備え、
前記エアフィルタを、前記ラックの内部における冷却用エアが流れる経路に位置する前記電子機器の吸気側に対して取り外し可能に構成したことを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
前記ラックにおける冷却用エアが流れる経路とは、冷却用エアを前記ラックの前面側から前記エアフィルタを介して前記通信装置の内部を通過させ前記ラックの後面側に排出させる経路であることを特徴とする請求項1又は2記載の冷却装置。
【請求項4】
前記ラックにおける冷却用エアが流れる経路とは、冷却用エアを前記ラックの下面側から前記エアフィルタを介して前記通信装置の内部を通過させ前記ラックの上面側に排出させる経路であることを特徴とする請求項1又は2記載の冷却装置。
【請求項5】
前記ラックにおける冷却用エアが流れる経路とは、冷却用エアを前記ラックの左側から前記エアフィルタを介して前記通信装置の内部を通過させ前記ラックの右側に排出させる経路であることを特徴とする請求項1又は2記載の冷却装置。
【請求項6】
前記ラックにおける冷却用エアが流れる経路とは、冷却用エアを前記ラックの右側から前記エアフィルタを介して前記通信装置の内部を通過させ前記ラックの左側に排出させる経路であることを特徴とする請求項1又は2記載の冷却装置。
【請求項7】
前記ヒートパイプは、熱伝導性が高い材質から形成されるとともに揮発性の液体である作動液が封入されていることを特徴とする請求項1又は2記載の冷却装置。
【請求項8】
前記ヒートパイプの軸方向の一方を加熱部により加熱し軸方向の他方を前記冷却部により冷却することで、前記作動液の蒸発、凝縮のサイクルを発生させ、前記エアフィルタ側の熱を前記冷却部に移動させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記ヒートパイプは、前記ラックにおける前記冷却部の設置箇所を前記加熱部よりも高い位置に設定することで、凝縮後の作動液を前記加熱部に戻すことが可能な構造を有することを特徴とする請求項8記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−160490(P2012−160490A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17208(P2011−17208)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(390001074)NECネットワークプロダクツ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】