説明

冷却装置

【課題】冷房能力を確保しつつ発熱源を確実に冷却でき、圧縮機の消費動力を低減できる冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却装置1は、冷媒を循環させるための圧縮機12と、冷媒と外気との間で熱交換する熱交換器14および熱交換器15と、冷媒を減圧する膨張弁16と、冷媒と空調用空気との間で熱交換する熱交換器18と、熱交換器14と熱交換器15との間を流通する冷媒の経路上に設けられ、冷媒を用いてHV機器31を冷却する冷却部30と、冷却部30と熱交換器15との間を冷媒が流通する冷媒通路24と、熱交換器18と圧縮機12との間を冷媒が流通する冷媒通路27と、冷媒通路24を流通する冷媒と冷媒通路27を流通する冷媒とが熱交換する内部熱交換器40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関し、特に、蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用して発熱源を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題対策の一つとして、モータの駆動力により走行するハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車などが注目されている。このような車両において、モータ、ジェネレータ、インバータ、コンバータおよびバッテリなどの電気機器は、電力の授受によって発熱する。そのため、これらの電気機器を冷却する必要がある。そこで、車両用空調装置として使用される蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用して、発熱体を冷却する技術が提案されている。
【0003】
たとえば特開2006−290254号公報(特許文献1)には、ガス冷媒を吸入圧縮可能なコンプレッサと、高圧のガス冷媒を凝縮させるための周囲空気で冷却可能なるメインコンデンサと、低温の液冷媒を蒸発させて被冷媒物を冷却可能なるエバポレータと、減圧手段とを含み、モータから吸熱可能な熱交換器及び第2減圧手段を減圧手段とエバポレータとに並列に接続してなる、ハイブリッド車両の冷却システムが開示されている。特開2007−69733号公報(特許文献2)には、膨張弁から圧縮機へ至る冷媒通路に、空調用の空気と熱交換する熱交換器と、発熱体と熱交換する熱交換器と、を並列に配置し、空調装置用の冷媒を利用して発熱体を冷却するシステムが開示されている。
【0004】
特開2005−90862号公報(特許文献3)には、空調用の冷凍サイクルの減圧器、蒸発器および圧縮機をバイパスするバイパス通路に、発熱体を冷却するための発熱体冷却手段を設けた、冷却システムが開示されている。特開2001−309506号公報(特許文献4)には、車両走行モータを駆動制御するインバータ回路部の冷却部材に車両空調用冷凍サイクル装置の冷媒を還流させ、空調空気流の冷却が不要な場合に車両空調用冷凍サイクル装置のエバポレータによる空調空気流の冷却を抑止する、冷却システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−290254号公報
【特許文献2】特開2007−69733号公報
【特許文献3】特開2005−90862号公報
【特許文献4】特開2001−309506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている冷却装置では、モータ、DC/DCコンバータおよびインバータに代表される電気機器などの発熱源を冷却するために、常時コンプレッサを運転する必要がある。そのため、コンプレッサの消費動力が増大し、車両の燃費が悪化する問題があった。また、発熱源と熱交換する熱交換器がエバポレータと並列に接続されるので、発熱源を冷却するための冷媒は冷房に使用されず、冷房能力が犠牲になる問題があった。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、冷房能力を確保しつつ発熱源を確実に冷却でき、圧縮機の消費動力の低減を可能とする、冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る冷却装置は、発熱源を冷却する冷却装置であって、冷媒を循環させるための圧縮機と、冷媒と外気との間で熱交換する第一熱交換器および第二熱交換器と、冷媒を減圧する減圧器と、冷媒と空調用空気との間で熱交換する第三熱交換器と、第一熱交換器と第二熱交換器との間を流通する冷媒の経路上に設けられ、冷媒を用いて発熱源を冷却する冷却部と、冷却部と第二熱交換器との間を冷媒が流通する第一通路と、第三熱交換器と圧縮機との間を冷媒が流通する第二通路と、第一通路を流通する冷媒と第二通路を流通する冷媒とが熱交換する内部熱交換器と、を備える。
【0009】
上記冷却装置において好ましくは、圧縮機と第一熱交換器との間を冷媒が流通する第三通路と、第二通路と第三通路とを連通する連通路と、を備える。好ましくは、連通路と、第二通路および第三通路と、の連通状態を切り換える切換弁を備える。好ましくは、冷却部は、第一熱交換器よりも下方に配置されている。
【0010】
上記冷却装置において好ましくは、圧縮機から第一熱交換器へ向かう冷媒の流れと、圧縮機から第三熱交換器へ向かう冷媒の流れと、を切り換える四方弁を備える。
【0011】
上記冷却装置において好ましくは、第一熱交換器と第二熱交換器とは、一体的に配置される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の冷却装置によると、冷房能力を確保しながら発熱源を確実に冷却することができ、かつ、圧縮機の消費動力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1の冷却装置の構成を示す模式図である。
【図2】実施の形態1の蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図3】流量調整弁の開度制御の概略を示す図である。
【図4】四方弁を切り換えた状態の冷却装置を示す模式図である。
【図5】実施の形態1の蒸気圧縮式冷凍サイクルの暖房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図6】蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転中の、HV機器を冷却する冷媒の流れを示す模式図である。
【図7】蒸気圧縮式冷凍サイクルの停止中の、HV機器を冷却する冷媒の流れを示す模式図である。
【図8】実施の形態2の冷却装置の構成を示す模式図である。
【図9】実施の形態2の熱交換器の内部構造の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の冷却装置1の構成を示す模式図である。図1に示すように、冷却装置1は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10を備える。蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、たとえば、車両の車内の冷暖房を行なうために、車両に搭載される。蒸気圧縮式冷凍サイクル10を用いた冷房は、たとえば、冷房を行なうためのスイッチがオンされた場合、または、自動的に車両の室内の温度を設定温度になるように調整する自動制御モードが選択されており、かつ、車室内の温度が設定温度よりも高い場合に行なわれる。蒸気圧縮式冷凍サイクル10を用いた暖房は、たとえば、暖房を行なうためのスイッチがオンされた場合、または、自動制御モードが選択されており、かつ、車室内の温度が設定温度よりも低い場合に行なわれる。
【0016】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12と、第一熱交換器としての熱交換器14と、第二熱交換器としての熱交換器15と、減圧器の一例としての膨張弁16と、第三熱交換器としての熱交換器18と、を含む。蒸気圧縮式冷凍サイクル10はまた、四方弁13を含む。四方弁13は、圧縮機12から熱交換器14へ向かう冷媒の流れと、圧縮機12から熱交換器18へ向かう冷媒の流れと、を切り換え可能に配置されている。
【0017】
圧縮機12は、車両に搭載されたモータまたはエンジンを動力源として作動し、冷媒ガスを断熱的に圧縮して過熱状態冷媒ガスとする。圧縮機12は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の作動時に流通する気相冷媒を吸入圧縮して、高温高圧の気相冷媒を吐出する。圧縮機12は、冷媒を吐出することで、蒸気圧縮式冷凍サイクル10に冷媒を循環させる。
【0018】
熱交換器14,15,18は、冷媒を流通するチューブと、チューブ内を流通する冷媒と熱交換器14,15,18の周囲の空気との間で熱交換するためのフィンと、を含む。熱交換器14,15,18は、車両の走行によって発生する自然の通風によって供給された空気流れ、またはファンによって供給された空気流れと、冷媒と、の間で熱交換を行なう。
【0019】
膨張弁16は、高圧の液相冷媒を小さな孔から噴射させることにより膨張させて、低温・低圧の霧状冷媒に変化させる。膨張弁16は、凝縮された冷媒液を減圧して、気液混合状態の湿り蒸気とする。なお、冷媒液を減圧するための減圧器は、絞り膨張する膨張弁16に限られず、毛細管であってもよい。
【0020】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10はまた、冷媒通路21〜28を含む。冷媒通路21は、圧縮機12と四方弁13とを連通する。冷媒は、冷媒通路21を経由して、圧縮機12から四方弁13へ向かって流通する。冷媒通路22は、四方弁13と熱交換器14とを連通する。冷媒は、冷媒通路22を経由して、四方弁13と熱交換器14との一方から他方へ向かって流通する。冷媒通路23は、熱交換器14と後述する冷却部30とを連通する。冷媒は、冷媒通路23を経由して、熱交換器14と冷却部30との一方から他方へ向かって流通する。冷媒通路24は、冷却部30と熱交換器15とを連通する。冷媒は、冷媒通路24を経由して、冷却部30と熱交換器15との一方から他方へ向かって流通する。
【0021】
冷媒通路25は、熱交換器15と膨張弁16とを連通する。冷媒は、冷媒通路25を経由して、熱交換器15と膨張弁16との一方から他方へ向かって流通する。冷媒通路26は、膨張弁16と熱交換器18とを連通する。冷媒は、冷媒通路26を経由して、膨張弁16と熱交換器18との一方から他方へ向かって流通する。冷媒通路27は、熱交換器18と四方弁13とを連通する。冷媒は、冷媒通路27を経由して、熱交換器18と四方弁13との一方から他方へ向かって流通する。冷媒通路28は、四方弁13と圧縮機12とを連通する。冷媒は、冷媒通路28を経由して、四方弁13から圧縮機12へ向かって流通する。
【0022】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12、熱交換器14,15、膨張弁16および熱交換器18が、冷媒通路21〜28によって連結されて構成される。なお、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷媒としては、たとえば二酸化炭素、プロパンやイソブタンなどの炭化水素、アンモニアまたは水などを用いることができる。
【0023】
熱交換器14と熱交換器15との間を流通する冷媒の経路上には、冷却部30が設けられている。冷却部30が設けられるので、熱交換器14と熱交換器15との間の冷媒の経路は、冷却部30よりも熱交換器14に近接する側の冷媒通路23と、冷却部30よりも膨張弁16に近接する側の冷媒通路24と、に二分割されている。冷却部30は、車両に搭載される電気機器であるHV(Hybrid Vehicle)機器31と、冷媒が流通する配管である冷却通路32とを含む。HV機器31は、発熱源の一例である。冷却通路32の一方の端部は、冷媒通路23に接続される。冷却通路32の他方の端部は、冷媒通路24に接続される。
【0024】
熱交換器14と膨張弁16との間を流通する冷媒は、冷却通路32を経由して流れる。冷媒は、冷却通路32内を流通するとき、HV機器31から熱を奪って、HV機器31を冷却させる。冷却部30は、冷却通路32によってHV機器31と冷媒との間で熱交換が可能な構造を有するように設けられる。本実施の形態においては、冷却部30は、たとえば、HV機器31の筐体に冷却通路32の外周面が直接接触するように形成された冷却通路32を有する。冷却通路32は、HV機器31の筐体と隣接する部分を有する。当該部分において、冷却通路32を流通する冷媒と、HV機器31との間で、熱交換が可能となる。
【0025】
HV機器31は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の熱交換器14から熱交換器15に至る冷媒の経路の一部を形成する冷却通路32の外周面に直接接続されて、冷却される。冷却通路32の外部にHV機器31が配置されるので、冷却通路32の内部を流通する冷媒の流れにHV機器31が干渉することはない。そのため、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の圧力損失は増大しないので、圧縮機12の動力を増大させることなく、HV機器31を冷却することができる。
【0026】
代替的には、冷却部30は、HV機器31と冷却通路32との間に介在して配置された任意の公知のヒートパイプを備えてもよい。この場合HV機器31は、冷却通路32の外周面にヒートパイプを介して接続され、HV機器31から冷却通路32へヒートパイプを経由して熱伝達することにより、冷却される。HV機器31をヒートパイプの加熱部とし冷却通路32をヒートパイプの冷却部とすることで、冷却通路32とHV機器31との間の熱伝達効率が高められるので、HV機器31の冷却効率を向上できる。たとえばウィック式のヒートパイプを使用することができる。
【0027】
ヒートパイプによってHV機器31から冷却通路32へ確実に熱伝達することができるので、HV機器31と冷却通路32との間に距離があってもよく、HV機器31に冷却通路32を接触させるために冷却通路32を複雑に配置する必要がない。その結果、HV機器31の配置の自由度を向上することができる。
【0028】
HV機器31は、電力の授受によって発熱する電気機器を含む。電気機器は、たとえば、直流電力を交流電力に変換するためのインバータ、回転電機であるモータジェネレータ、蓄電装置であるバッテリ、バッテリの電圧を昇圧させるためのコンバータ、バッテリの電圧を降圧するためのDC/DCコンバータなどの、少なくともいずれか一つを含む。バッテリは、リチウムイオン電池あるいはニッケル水素電池等の二次電池である。バッテリに代えてキャパシタが用いられてもよい。
【0029】
熱交換器18は、空気が流通するダクト90の内部に配置されている。熱交換器18は、冷媒とダクト90内を流通する空調用空気との間で熱交換して、空調用空気の温度を調節する。ダクト90は、ダクト90に空調用空気が流入する入口であるダクト入口91と、ダクト90から空調用空気が流出する出口であるダクト出口92と、を有する。ダクト90の内部の、ダクト入口91の近傍には、ファン93が配置されている。
【0030】
ファン93が駆動することにより、ダクト90内に空気が流通する。ファン93が稼働すると、ダクト入口91を経由してダクト90の内部へ空調用空気が流入する。ダクト90へ流入する空気は、外気であってもよく、車両の室内の空気であってもよい。図1,4中の矢印95は、熱交換器18を経由して流通し、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷媒と熱交換する空調用空気の流れを示す。冷房運転時には、熱交換器18において空調用空気が冷却され、冷媒は空調用空気からの熱伝達を受けて加熱される。暖房運転時には、熱交換器18において空調用空気が加熱され、冷媒は空調用空気へ熱伝達することにより冷却される。矢印96は、熱交換器18で温度調節され、ダクト出口92を経由してダクト90から流出する、空調用空気の流れを示す。
【0031】
冷却部30と熱交換器15との間の第一通路としての冷媒通路24を流通する冷媒と、熱交換器18と四方弁13との間の第二通路としての冷媒通路27を流通する冷媒とは、内部熱交換器40において熱交換する。冷却装置1は、冷媒通路24を流通する冷媒と冷媒通路27を流通する冷媒とが熱交換する内部熱交換器40を備える。内部熱交換器40が設けられることにより、冷媒通路24は、内部熱交換器40よりも冷却部30に近接する側の冷媒通路24aと、内部熱交換器40よりも熱交換器15に近接する側の冷媒通路24bと、に二分割されている。冷媒通路27は、内部熱交換器40よりも熱交換器18に近接する側の冷媒通路27aと、内部熱交換器40よりも四方弁13に近接する側の冷媒通路27bと、に二分割されている。
【0032】
内部熱交換器40は、冷媒通路24に連通する熱交換通路41と、冷媒通路27に連通する熱交換通路42と、を有する。熱交換通路41の一方の端部は、冷媒通路24aに接続され、他方の端部は、冷媒通路24bに接続される。図1に示す冷房運転時には、冷媒は、冷却部30から冷媒通路24aを経由して内部熱交換器40へ流れ、熱交換通路41内を流通し、冷媒通路24bを経由して熱交換器15へ至る。熱交換通路42の一方の端部は、冷媒通路27aに接続され、他方の端部は、冷媒通路27bに接続される。図1に示す冷房運転時には、冷媒は、熱交換器18から冷媒通路27aを経由して内部熱交換器40へ流れ、熱交換通路42内を流通し、冷媒通路27bを経由して四方弁13へ至り、さらに冷媒通路28を経由して圧縮機12へ流入する。
【0033】
内部熱交換器40は、熱交換通路41を流通する冷媒と熱交換通路42を流通する冷媒との間で熱交換が可能な、任意の構造を有するように設けられる。たとえば、熱交換通路41を形成する配管と熱交換通路42を形成する配管とが、それぞれの外周面を直接接触するように配置されてもよく、または、それらの間に高熱伝導性の部材もしくはヒートパイプを介在させて配置されてもよい。またたとえば、熱伝導性の良好な金属製のブロック状の部材に二つの貫通孔を形成し、一方の貫通孔を熱交換通路41とし他方の貫通孔を熱交換通路42としてもよい。
【0034】
冷房運転時には、図1に示すA点、B点、C点、D点、E点、F点、G点およびH点を順に通過するように蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を冷媒が流れ、圧縮機12と熱交換器14,15と膨張弁16と熱交換器18とに冷媒が循環する。冷媒は、圧縮機12と熱交換器14,15と膨張弁16と熱交換器18とが冷媒通路21〜28によって順次接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。
【0035】
図2は、実施の形態1の蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図2中の横軸は、冷媒の比エンタルピー(単位:kJ/kg)を示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力(単位:MPa)を示す。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。図2中には、圧縮機12から熱交換器14を経由して冷媒通路23へ流入し、HV機器31を冷却し、冷媒通路24から熱交換器15、膨張弁16、熱交換器18を経由して圧縮機12へ戻る、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点(すなわちA,B,C,D,E,F,GおよびH点)における冷媒の熱力学状態が示される。
【0036】
図2に示すように、圧縮機12に吸入された過熱蒸気状態の冷媒(A点)は、圧縮機12において等比エントロピー線に沿って断熱圧縮される。圧縮するに従って冷媒の圧力と温度とが上昇し、高温高圧の過熱度の大きい過熱蒸気になって(B点)、冷媒は熱交換器14へと流れる。
【0037】
熱交換器14へ入った高圧の冷媒蒸気は、熱交換器14において外気と熱交換して冷却される。冷媒は、等圧のまま過熱蒸気から乾き飽和蒸気になり、凝縮潜熱を放出し徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になり、冷媒の全部が凝縮すると飽和液になる(C点)。熱交換器14は、圧縮機12において圧縮された過熱状態冷媒ガスを、外部媒体へ等圧的に放熱させて冷媒液とする。圧縮機12から吐出された気相冷媒は、熱交換器14において周囲に放熱し冷却されることによって、凝縮(液化)する。熱交換器14における熱交換によって、冷媒の温度は低下し冷媒は液化する。
【0038】
熱交換器14で液化した高圧の液相冷媒は、冷媒通路23を経由して冷却部30へ流れ、HV機器31を冷却する。冷却部30において、熱交換器14を通過して凝縮された液冷媒に熱を放出することで、HV機器31が冷却される。HV機器31との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。冷媒は、HV機器31から潜熱を受け取って一部気化することにより、飽和液と飽和蒸気とが混合した湿り蒸気となる(D点)。
【0039】
冷却部30から流出した冷媒は、冷媒通路24aを経由して内部熱交換器40へ流れる。内部熱交換器40の内部で、熱交換通路41を流通する冷媒から熱交換通路42を流通する冷媒へ熱伝達されることにより、熱交換通路41を流通する冷媒は冷却され、熱交換通路42を流通する冷媒は加熱される。内部熱交換器40における熱交換により、熱交換通路41を流通する冷媒のうち飽和液の割合が増加し飽和蒸気の割合が減少するために、熱交換通路41を流通する湿り蒸気状態の冷媒の乾き度が減少(湿り度が増大)する(E点)。
【0040】
その後冷媒は、熱交換器15に流入する。冷媒の湿り蒸気は、熱交換器15において外気と熱交換して冷却されることにより再度凝縮され、冷媒の全部が凝縮すると飽和液になり、さらに顕熱を放出して過冷却された過冷却液になる(F点)。その後冷媒は、冷媒通路25を経由して膨張弁16に流入する。膨張弁16において、過冷却液状態の冷媒は絞り膨張され、比エンタルピーは変化せず温度と圧力とが低下して、低温低圧の気液混合状態の湿り蒸気となる(G点)。
【0041】
膨張弁16から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路26を経由して熱交換器18へ流入する。熱交換器18のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。冷媒は、熱交換器18のチューブ内を流通する際に、フィンを経由して車両の室内の空気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって、等圧のまま蒸発する。全ての冷媒が乾き飽和蒸気になると、さらに顕熱によって冷媒蒸気は温度上昇して、過熱蒸気となる(H点)。冷媒は、熱交換器18において周囲から吸熱し加熱される。
【0042】
熱交換器18から流出した冷媒は、冷媒通路27aを経由して内部熱交換器40へ流れ、熱交換通路42を流通する。上述した内部熱交換器40における熱交換により、熱交換通路42を流通する冷媒は加熱され、熱交換通路42を流通する過熱蒸気状態の冷媒の過熱度が増大する(A点)。その後冷媒は、冷媒通路27b、四方弁13および冷媒通路28を経由して圧縮機12に吸入される。圧縮機12は、内部熱交換器40から流通する冷媒を圧縮する。冷媒はこのようなサイクルに従って、圧縮、凝縮、絞り膨張、蒸発の状態変化を連続的に繰り返す。
【0043】
なお、上述した蒸気圧縮式冷凍サイクルの説明では、理論冷凍サイクルについて説明しているが、実際の蒸気圧縮式冷凍サイクル10では、圧縮機12における損失、冷媒の圧力損失および熱損失を考慮する必要があるのは勿論である。
【0044】
冷房運転時に、熱交換器18は、その内部を流通する霧状冷媒が気化することによって、熱交換器18に接触するように導入された周囲の空気の熱を吸収する。熱交換器18は、膨張弁16によって減圧された冷媒を用いて、冷媒の湿り蒸気が蒸発して冷媒ガスとなる際の気化熱を、車両の室内へ流通する空調用空気から吸収して、車両の室内の冷房を行なう。熱が熱交換器18に吸収されることによって温度が低下した空調用空気が車両の室内に流入することによって、車両の室内の冷房が行なわれる。
【0045】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10の運転中に、冷媒は、熱交換器18において気化熱を車両の室内の空気から吸収して、車室内の冷房を行なう。加えて、熱交換器14から出た高圧の液冷媒が冷却部30へ流通し、HV機器31と熱交換することでHV機器31を冷却する。冷却装置1は、車両に搭載された発熱源であるHV機器31を、車両の室内の空調用の蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、冷却する。なお、HV機器31を冷却するために必要とされる温度は、少なくともHV機器31の温度範囲として目標となる温度範囲の上限値よりも低い温度であることが望ましい。
【0046】
冷房運転時に冷媒は、熱交換器14において飽和液の状態にまで冷却され、HV機器31から蒸発潜熱を受け取り一部気化した湿り蒸気の状態の冷媒は、熱交換器15で再度冷却される。湿り蒸気状態の冷媒を凝縮させ完全に飽和液にするまで、冷媒は一定の温度で状態変化する。熱交換器15はさらに、車両の室内の冷房のために必要な程度の過冷却度にまで、液相冷媒を過冷却する。冷媒の過冷却度を過度に大きくする必要がないので、熱交換器14,15の容量を低減することができる。したがって、車室用の冷房能力を確保でき、かつ、熱交換器14,15のサイズを低減することができるので小型化され車載用に有利な、冷却装置1を得ることができる。
【0047】
膨張弁16を通過した後の低温低圧の冷媒をHV機器31の冷却に使用すると、熱交換器18における車室内の空気の冷却能力が減少して、車室用の冷房能力が低下する。これに対し、本実施の形態の冷却装置1では、蒸気圧縮式冷凍サイクル10において、圧縮機12から吐出された高圧の冷媒は、第一の凝縮器としての熱交換器14と、第二の凝縮器としての熱交換器15と、の両方によって凝縮される。圧縮機12と膨張弁16との間に二段の熱交換器14,15を配置し、HV機器31を冷却する冷却部30は、熱交換器14と熱交換器15との間に設けられている。熱交換器15は、冷却部30から膨張弁16に向けて流通する冷媒の経路上に設けられている。
【0048】
HV機器31から蒸発潜熱を受けて加熱された冷媒を熱交換器15において十分に冷却することにより、膨張弁16の出口において、冷媒は、車両の室内の冷房のために本来必要とされる温度および圧力を有する。そのため、熱交換器18において冷媒が蒸発するときに外部から受け取る熱量を十分に大きくすることができる。このように、冷媒を十分に冷却できる熱交換器15の放熱能力を定めることにより、車室内の空気を冷却する冷房の能力に影響を与えることなく、HV機器31を冷却することができる。したがって、HV機器31の冷却能力と、車室用の冷房能力との両方を、確実に確保することができる。
【0049】
熱交換器14から冷却部30へ流れる冷媒は、HV機器31を冷却するときに、HV機器31から熱を受け取り加熱される。冷却部30において冷媒が飽和蒸気温度以上に加熱され冷媒の全量が気化すると、冷媒とHV機器31との熱交換量が減少してHV機器31を効率よく冷却できなくなり、また冷媒が配管内を流れる際の圧力損失が増大する。そのため、HV機器31を冷却した後に冷媒の全量が気化しない程度に、熱交換器14において十分に冷媒を冷却するのが望ましい。
【0050】
具体的には、熱交換器14の出口における冷媒の状態を飽和液に近づけ、典型的には熱交換器14の出口において冷媒が飽和液線上にある状態にする。このように冷媒を十分に冷却できる能力を熱交換器14が有する結果、熱交換器14の冷媒から熱を放出させる放熱能力は、熱交換器15の放熱能力よりも高くなる。放熱能力が相対的に大きい熱交換器14において冷媒を十分に冷却することにより、HV機器31から熱を受け取った冷媒を湿り蒸気の状態に留めることができ、冷媒とHV機器31との熱交換量の減少を回避できるので、HV機器31を十分に効率よく冷却することができる。HV機器31を冷却した後の湿り蒸気の状態の冷媒は、熱交換器15において効率よく再度冷却され、飽和温度を下回る過冷却液の状態にまで冷却される。したがって、車室用の冷房能力とHV機器31の冷却能力との両方を確保した、冷却装置1を提供することができる。
【0051】
図1に戻って、熱交換器14と熱交換器15との間を流通する冷媒の経路には、冷媒通路23,24と、冷媒通路23および冷媒通路24を直に連通する冷媒通路29と、が並列に接続されて設けられている。冷媒通路29は、熱交換器14と熱交換器15との間を流通する冷媒の経路の一部を形成する。冷却装置1は、冷却部30を経由しない経路である冷媒通路29と、冷却部30を通過する経路である冷媒通路23,24および冷却通路32と、を含む。熱交換器14と熱交換器15との間の冷媒の経路が分岐して、冷媒の一部が冷却部30へ流通する。
【0052】
熱交換器14と熱交換器15との間を冷媒が流通する経路として、冷却部30を通過する経路である冷媒通路23,24および冷却通路32と、冷却部30を通過しない経路である冷媒通路29と、が並列に設けられる。冷媒通路23,24を含むHV機器31の冷却系は、冷媒通路29と並列に接続されている。熱交換器14と熱交換器15との間を冷却部30を経由せずに流れる冷媒の経路と冷却部30を経由して流れる冷媒の経路とを並列に設け、一部の冷媒のみを冷媒通路23,24へ流通させることで、熱交換器14と熱交換器15との間を流れる冷媒の一部のみが冷却部30へ流れる。
【0053】
冷却部30においてHV機器31を冷却するために必要な量の冷媒を冷媒通路23,24へ流通させ、全ての冷媒が冷却部30に流れない。したがって、HV機器31は適切に冷却され、HV機器31が過冷却されることを防止できる。また、冷媒通路23,24および冷却通路32を含むHV機器31の冷却系への冷媒の流通に係る、圧力損失を低減することができる。それに伴い、冷媒を循環させるための圧縮機12の運転に必要な消費電力を低減することができる。
【0054】
冷媒通路29には、流量調整弁39が設けられている。流量調整弁39は、熱交換器14と熱交換器15との間を流通する冷媒の経路の一部を形成する冷媒通路29に配置されている。流量調整弁39は、その弁開度を変動させ、冷媒通路29を流れる冷媒の圧力損失を増減させることにより、冷媒通路29を流れる冷媒の流量と、冷却通路32を含むHV機器31の冷却系を流れる冷媒の流量と、を任意に調節する。
【0055】
たとえば、流量調整弁39を全閉にして弁開度を0%にすると、熱交換器14を出た冷媒の全量が冷却部30へ流入する。流量調整弁39の弁開度を大きくすれば、熱交換器14から冷媒通路23へ流れる冷媒のうち、冷媒通路29を経由して熱交換器15へ直接流れる流量が大きくなり、冷却部30へ流れHV機器31を冷却する冷媒の流量が小さくなる。流量調整弁39の弁開度を小さくすれば、熱交換器14から冷媒通路23へ流れる冷媒のうち、冷媒通路29を経由して熱交換器15へ直接流れる流量が小さくなり、冷却部30へ流れHV機器31を冷却する冷媒の流量が大きくなる。
【0056】
流量調整弁39の弁開度を大きくするとHV機器31を冷却する冷媒の流量が小さくなり、HV機器31の冷却能力が低下する。流量調整弁39の弁開度を小さくするとHV機器31を冷却する冷媒の流量が大きくなり、HV機器31の冷却能力が向上する。流量調整弁39を使用して、HV機器31に流れる冷媒の量を最適に調節できるので、HV機器31の過冷却を確実に防止することができ、加えて、HV機器31の冷却系の冷媒の流通に係る圧力損失および冷媒を循環させるための圧縮機12の消費電力を、確実に低減することができる。
【0057】
流量調整弁39の弁開度調整に係る制御の一例について、以下に説明する。図3は、流量調整弁39の開度制御の概略を示す図である。図3のグラフ(A)〜(D)に示す横軸は、時間を示す。グラフ(A)の縦軸は、流量調整弁39がステッピングモータを用いた電気式膨張弁である場合の弁開度を示す。グラフ(B)の縦軸は、流量調整弁39が温度の変動により開閉動作する温度式膨張弁である場合の弁開度を示す。グラフ(C)の縦軸
は、HV機器31の温度を示す。グラフ(D)の縦軸は、HV機器31の出入口温度差を示す。
【0058】
冷媒が冷却部30を経由して流通することで、HV機器31は冷却される。流量調整弁39の弁開度調整は、たとえば、HV機器31の温度、またはHV機器31の出口温度と入口温度との温度差を監視することにより、行なわれる。たとえばグラフ(C)を参照して、HV機器31の温度を継続的に計測する温度センサを設け、HV機器31の温度を監視する。またたとえば、グラフ(D)を参照して、HV機器31の入口温度と出口温度とを計測する温度センサを設け、HV機器31の出入口の温度差を監視する。
【0059】
HV機器31の温度が目標温度を上回る、または、HV機器31の出入口温度差が目標温度差(たとえば3〜5℃)を上回ると、グラフ(A)およびグラフ(B)に示すように、流量調整弁39の開度を小さくする。流量調整弁39の開度を絞ることにより、上述した通り、冷却部30へ流れる冷媒の流量が大きくなるので、HV機器31をより効果的に冷却できる。その結果、グラフ(C)に示すようにHV機器31の温度を低下させて目標温度以下にすることができ、または、グラフ(D)に示すようにHV機器31の出入口温度差を小さくして目標温度差以下にすることができる。
【0060】
このように、流量調整弁39の弁開度を最適に調整することで、HV機器31を適切な温度範囲に保つために必要な放熱能力を得られる量の冷媒を確保し、HV機器31を適切に冷却することができる。したがって、HV機器31が過熱して損傷する不具合の発生を、確実に抑制することができる。
【0061】
図4は、四方弁13を切り換えた状態の冷却装置1を示す模式図である。図1と図4とを比較して、四方弁13が90°回転することにより、圧縮機12出口から四方弁13へ流入した冷媒が四方弁13を出る経路が切り換えられている。図1に示す冷房運転時には、圧縮機12において圧縮された冷媒は、圧縮機12から熱交換器14へ向かって流れる。一方、図4に示す暖房運転時には、圧縮機12において圧縮された冷媒は、圧縮機12から熱交換器18へ向かって流れる。
【0062】
暖房運転時には、図4に示すA点、B点、H点、G点、F点、E点、D点およびC点を順に通過するように蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を冷媒が流れ、圧縮機12と熱交換器18と膨張弁16と熱交換器15,14とに冷媒が循環する。冷媒は、圧縮機12と熱交換器18と膨張弁16と熱交換器15,14とが冷媒通路21〜28によって順次接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。
【0063】
図5は、実施の形態1の蒸気圧縮式冷凍サイクル10の暖房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図5中の横軸は、冷媒の比エンタルピー(単位:kJ/kg)を示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力(単位:MPa)を示す。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。図5中には、圧縮機12から熱交換器18、膨張弁16および熱交換器15を経由して冷媒通路24へ流入し、HV機器31を冷却し、冷媒通路23から熱交換器14を経由して圧縮機12へ戻る、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点(すなわちA,B,H,G,F,E,DおよびC点)における冷媒の熱力学状態が示される。
【0064】
図5に示すように、圧縮機12に吸入された過熱蒸気状態の冷媒(A点)は、圧縮機12において等比エントロピー線に沿って断熱圧縮される。圧縮するに従って冷媒の圧力と温度とが上昇し、高温高圧の過熱度の大きい過熱蒸気になる(B点)。圧縮機12から流出した冷媒は、内部熱交換器40へ流れる。内部熱交換器40の内部で、熱交換通路42を流通する冷媒から熱交換通路41を流通する冷媒へ熱伝達されることにより、熱交換通路42を流通する冷媒は冷却され、熱交換通路41を流通する冷媒は加熱される。内部熱交換器40における熱交換により、熱交換通路42を流通する冷媒の過熱度が減少する。つまり、過熱蒸気状態の冷媒の温度が低下し、冷媒蒸気の飽和温度に近づく(H点)。
【0065】
その後冷媒は熱交換器18へと流れる。熱交換器18へ入った高圧の冷媒蒸気は、熱交換器18において冷却され、等圧のまま過熱蒸気から乾き飽和蒸気になり、凝縮潜熱を放出し徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になり、冷媒の全部が凝縮すると飽和液になり、さらに顕熱を放出して過冷却液になる(G点)。熱交換器18は、圧縮機12において圧縮された過熱状態冷媒ガスを、外部媒体へ等圧的に放熱させて冷媒液とする。圧縮機12から吐出された気相冷媒は、熱交換器18において周囲に放熱し冷却されることによって、凝縮(液化)する。熱交換器18における熱交換によって、冷媒の温度は低下し冷媒は液化する。冷媒は、熱交換器18において周囲へ放熱し冷却される。
【0066】
熱交換器18で液化した高圧の液相冷媒は、冷媒通路26を経由して膨張弁16に流入する。膨張弁16において、過冷却液状態の冷媒は絞り膨張され、冷媒の比エンタルピーは変化せず温度と圧力とが低下して、低温低圧の気液混合状態の湿り蒸気となる(F点)。膨張弁16において温度が下げられた冷媒は、冷媒通路25を経由して熱交換器15へ流入する。熱交換器15のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。冷媒は、チューブ内を流通する際に、フィンを経由して外気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって等圧のまま蒸発する。熱交換器15における外気との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。熱交換器15において潜熱を受け取って一部の冷媒が気化することにより、湿り蒸気状態の冷媒中に含まれる飽和蒸気の割合が増加する(E点)。
【0067】
熱交換器15から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路24bを経由して内部熱交換器40へ流れ、熱交換通路41を流通する。上述した内部熱交換器40における熱交換により、熱交換通路41を流通する冷媒は加熱され、熱交換通路41を流通する湿り蒸気状態の冷媒の乾き度が増大する(D点)。次に冷媒は、冷却部30の冷却通路32へ流れ、HV機器31を冷却する。HV機器31との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。HV機器31から潜熱を受け取って一部の冷媒が気化することにより、湿り蒸気状態の冷媒中に含まれる飽和蒸気の割合がさらに増加する(C点)。
【0068】
冷却部30から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路23を経由して熱交換器14へ流入する。熱交換器14のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。冷媒は、チューブ内を流通する際に、フィンを経由して外気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって等圧のまま蒸発する。全ての冷媒が乾き飽和蒸気になると、さらに顕熱によって冷媒蒸気は温度上昇して、過熱蒸気となる(A点)。気化した冷媒は、冷媒通路22を経由して圧縮機12に吸入される。圧縮機12は、熱交換器14から流通する冷媒を圧縮する。冷媒はこのようなサイクルに従って、圧縮、凝縮、絞り膨張、蒸発の状態変化を連続的に繰り返す。
【0069】
暖房運転時に、熱交換器18は、その内部を流通する冷媒蒸気が凝縮することによって、熱交換器18に接触するように導入された周囲の空気へ熱を加える。熱交換器18は、圧縮機12で断熱圧縮された高温高圧の冷媒を用いて、冷媒ガスが凝縮して冷媒の湿り蒸気となる際の凝縮熱を、車両の室内へ流通する空調用空気へ放出して、車両の室内の暖房を行なう。熱交換器18から熱を受け取ることによって温度が上昇した空調用空気が車両の室内に流入することによって、車両の室内の暖房が行なわれる。
【0070】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10の運転中に、冷媒は、熱交換器18において凝縮熱を車両の室内の空気へ放熱して、車室内の暖房を行なう。加えて、熱交換器15から出た湿り蒸気状態の冷媒が冷却部30へ流通し、HV機器31と熱交換することでHV機器31を冷却する。冷却装置1は、冷房時と同様に暖房時においても、車両の室内の空調用の蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、HV機器31を冷却する。
【0071】
四方弁13を使用して、冷房運転時と暖房運転時とで蒸気圧縮式冷凍サイクル10内の冷媒の流れる方向が切り換えられる。冷房運転中に、熱交換器18において、膨張弁16で絞り膨張された低温低圧の冷媒が空調用空気から熱を吸収して、車室内の冷房を行なう。暖房運転中に、熱交換器18において、圧縮機12で断熱圧縮された高温高圧の冷媒が空調用空気に熱を放出して、車室内の暖房を行なう。冷却装置1は、一台の熱交換器18を使用して、冷房運転時と暖房運転時との両方の場合に、車両の室内へ流通する空調用空気の温度を適切に調節できる。したがって、空調用空気と熱交換する熱交換器を二台配置する必要がないので、冷却装置1のコストを低減することができ、加えて、冷却装置1を小型化することができる。
【0072】
冷房運転時と暖房運転時との両方において、冷媒が冷却部30へ流通しHV機器31と熱交換することで、HV機器31を冷却する。冷却装置1は、車両に搭載された発熱源であるHV機器31を、車両の室内の空調用の蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、冷却する。熱交換器18において空調用空気と熱交換することで車両の室内の冷暖房を行なうために設けられた蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、HV機器31の冷却が行なわれる。
【0073】
HV機器31の冷却のために、専用の水循環ポンプまたは冷却ファンなどの機器を設ける必要はない。そのため、HV機器31の冷却装置1のために必要な構成を低減でき、装置構成を単純にできるので、冷却装置1の製造コストを低減することができる。加えて、HV機器31の冷却のためにポンプや冷却ファンなどの動力源を運転する必要がなく、動力源を運転するための消費動力を必要としない。したがって、HV機器31の冷却のための消費動力を低減することができる。
【0074】
図1および図4を参照して、本実施の形態の冷却装置1はさらに、連通路51を備える。連通路51は、圧縮機12と熱交換器14との間を冷媒が流通する第三通路としての冷媒通路22と、第一通路としての冷媒通路24(24b)とを連通する。冷媒通路24および連通路51には、連通路51と冷媒通路24,22との連通状態を切り換える切換弁52が設けられている。切換弁52は、その開閉を切り換えることにより、連通路51を経由する冷媒の流通を可能または不可能にする。切換弁52を使用して冷媒の経路を切り換えることにより、HV機器31を冷却した後の冷媒を、冷媒通路24を経由させて熱交換器15へ、または、連通路51および冷媒通路22を経由して熱交換器14へ、のいずれかの経路を任意に選択して、流通させることができる。
【0075】
より具体的には、切換弁52として二つの弁57,58が設けられている。蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷房運転中には、弁57を全開(弁開度100%)とし弁58を全閉(弁開度0%)とし、流量調整弁39の弁開度を冷却部30に十分な冷媒が流れるように調整する。これにより、HV機器31を冷却した後の冷媒を冷媒通路24を経由させて、確実に熱交換器15へ流通させることができる。一方、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の停止中には、弁58を全開とし弁57を全閉とし、さらに流量調整弁39を全閉とする。これにより、冷却部30と熱交換器14との間に冷媒を循環させる環状の経路を形成することができる。
【0076】
図6は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷房運転中の、HV機器31を冷却する冷媒の流れを示す模式図である。圧縮機12を駆動させ蒸気圧縮式冷凍サイクル10が運転しているときには、流量調整弁39は、冷却部30に十分な冷媒が流れるように、弁開度を調整される。切換弁52は、冷媒を冷却部30から熱交換器15を経由して膨張弁16へ流通させるように操作される。すなわち、弁57を全開にし弁58を全閉にすることで、冷媒が冷却装置1の全体を流れるように冷媒の経路が選択される。そのため、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷却能力を確保できるとともに、HV機器31を効率よく冷却することができる。
【0077】
図7は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の停止中の、HV機器31を冷却する冷媒の流れを示す模式図である。図7に示すように、圧縮機12を停止させ蒸気圧縮式冷凍サイクル10が停止しているときには、冷媒を冷却部30から熱交換器14へ循環させるように切換弁52を操作する。すなわち、弁57を全閉にし弁58を全開にし、さらに流量調整弁39を全閉にすることで、冷媒は連通路51を経由して流通する。これにより、熱交換器14から、冷媒通路23を経由して冷却部30へ至り、さらに冷媒通路24、連通路51、冷媒通路22を順に経由して熱交換器14へ戻る、閉じられた環状の経路が形成される。
【0078】
この環状の経路を経由して、圧縮機12を動作することなく、熱交換器14と冷却部30との間に冷媒を循環させることができる。冷媒は、HV機器31を冷却するとき、HV機器31から蒸発潜熱を受けて蒸発する。HV機器31との熱交換により気化された冷媒蒸気は、冷媒通路24、連通路51および冷媒通路22を順に経由して、熱交換器14へ流れる。熱交換器14において、車両の走行風またはエンジン冷却用のラジエータファンからの通風により、冷媒蒸気は冷却されて凝縮する。熱交換器14で液化した冷媒液は、冷媒通路23を経由して、冷却部30へ戻る。
【0079】
このように、冷却部30と熱交換器14とを経由する環状の経路によって、HV機器31を加熱部とし熱交換器14を冷却部とする、ヒートパイプが形成される。したがって、蒸気圧縮式冷凍サイクル10が停止しているとき、すなわち車両用の冷房が停止しているときにも、圧縮機12を起動する必要なく、HV機器31を確実に冷却することができる。HV機器31の冷却のために圧縮機12を常時運転する必要がないことにより、圧縮機12の消費動力を低減して車両の燃費を向上することができ、加えて、圧縮機12を長寿命化できるので圧縮機12の信頼性を向上することができる。
【0080】
図6および図7には、地面60が図示されている。地面60に対して垂直な鉛直方向において、冷却部30は、熱交換器14よりも下方に配置されている。熱交換器14と冷却部30との間に冷媒を循環させる環状の経路において、冷却部30が下方に配置され、熱交換器14が上方に配置される。熱交換器14は、冷却部30よりも高い位置に配置される。
【0081】
この場合、冷却部30で加熱され気化した冷媒蒸気は、環状の経路内を上昇して熱交換器14へ到達し、熱交換器14において冷却され、凝縮されて液冷媒となり、重力の作用により環状の経路内を下降して冷却部30へ戻る。つまり、冷却部30と、熱交換器14と、これらを連結する冷媒の経路とによって、サーモサイフォン式のヒートパイプが形成される。ヒートパイプを形成することでHV機器31から熱交換器14への熱伝達効率を向上することができるので、蒸気圧縮式冷凍サイクル10が停止しているときにも、動力を加えることなく、HV機器31をより効率よく冷却することができる。
【0082】
連通路51と冷媒通路24,22との連通状態を切り換える切換弁52としては、上述した一対の弁57,58を使用してもよく、または、冷媒通路24と連通路51との分岐に配置された三方弁を使用してもよい。いずれの場合でも、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の運転時および停止時の両方において、HV機器31を効率よく冷却することができる。弁57,58は、冷媒通路の開閉ができる単純な構造であればよいので安価であり、二つの弁57,58を使用することにより、より低コストな冷却装置1を提供することができる。一方、二つの弁57,58を配置するよりも三方弁の配置に要する空間はより小さくてよいと考えられ、三方弁を使用することにより、より小型化され車両搭載性に優れた冷却装置1を提供することができる。
【0083】
以上のように、本実施の形態の冷却装置1では、冷却部30でHV機器31を冷却した後の冷媒と、熱交換器18で車室用空気と熱交換した後の冷媒とが、内部熱交換器40にて熱交換する。これにより、冷房運転時には、HV機器31との熱交換により加熱された冷媒が、内部熱交換器40において冷却される。そのため、熱交換器15の容量を増大させることなく、熱交換器15を通過した後の冷媒を過冷却液の状態にまで冷却できるので、熱交換器15を小型化することができる。HV機器31の発熱量が少ないときは冷媒の過冷却度が増大するため冷房能力を向上することができ、この場合、圧縮機12の動力を低減することもできるので冷却装置1を省動力化できる。HV機器31の発熱量が大きいときにも冷媒が確実に過冷却液の状態にまで冷却されるように制御することで、冷房運転の制御性を向上することができる。
【0084】
暖房運転時には、冷媒は、熱交換器15,14において外気から吸熱することにより加熱される。冷媒はまた、内部熱交換器40においても加熱され、冷却部30においてHV機器31から吸熱することによりさらに加熱される。熱交換器15,14に加えて内部熱交換器40および冷却部30においても冷媒が加熱されることにより、熱交換器14の出口において冷媒を十分な過熱蒸気の状態にまで加熱できるので、車両の室内の優れた暖房性能を維持しつつ、HV機器31を適切に冷却できる。
【0085】
そのため、熱交換器15,14の容量を増大させることなく、熱交換器14を通過した後の冷媒を過熱蒸気の状態にまで加熱できるので、熱交換器14,15を小型化することができる。冷却部30で冷媒が加熱され、HV機器31の廃熱を室内の暖房に有効利用できるので、成績係数が向上し、暖房運転時の圧縮機12での冷媒の断熱圧縮のための消費動力を低減することができる。
【0086】
(実施の形態2)
図8は、実施の形態2の冷却装置1の構成を示す模式図である。実施の形態2の冷却装置1は、熱交換器14と熱交換器15とが一体の熱交換器として製作されている点で、実施の形態1と異なっている。
【0087】
図9は、実施の形態2の熱交換器14,15の内部構造の一例を示す模式図である。図9に示すように、熱交換器14と、熱交換器15とは、一体的に配置される。一体的に配置された熱交換器14および熱交換器15は、たとえば、車両に搭載されたエンジン冷却用ラジエータに隣接して設けられ、車両の走行風または冷却ファンによって供給された冷却風と冷媒との間で熱交換を行なう。
【0088】
熱交換器14は、冷媒を流通する複数のチューブ146、および、複数のチューブ146内の冷媒と熱交換器14の周囲の空気との間で熱交換するための複数のフィン148を含む。複数のチューブ146は、冷媒通路22に接続され圧縮機12から冷媒を導入する入口部142と、冷却部30に至る冷媒通路23に接続される出口部144との間に並列に配置される。入口部142から導入された冷媒は、複数のチューブ146の各々に分散して流通する。
【0089】
複数のフィン148は、入口部142と、出口部144との間であって、複数のチューブ146の各々の間に隣接して配置される。複数のチューブ146の各々において冷媒はフィン148を経由した熱交換器14の周囲の空気との熱交換によって凝縮される。熱交換器14内で凝縮された後の冷媒は、出口部144から冷却部30に流通する。
【0090】
熱交換器15は、冷媒を流通する複数のチューブ156、および、複数のチューブ156内の冷媒と熱交換器15の周囲の空気との間で熱交換するためのフィン158を含む。複数のチューブ156は、冷媒通路24に接続され冷却部30から冷媒を導入する入口部152と、膨張弁16に至る冷媒通路25に接続される出口部154との間に並列に配置される。入口部152から導入された冷媒は、複数のチューブ156の各々に分散して流通する。
【0091】
複数のフィン158は、入口部152と、出口部154との間であって、複数のチューブ156の各々の間に隣接して配置される。複数のチューブ156の各々において冷媒はフィン158を経由した熱交換器15の周囲の空気との熱交換によって冷却される。熱交換器15内で冷却された後の冷媒は、出口部154から膨張弁16を経由して熱交換器18に流通する。
【0092】
図9に示すように、一体の熱交換器に仕切りと個別の出入口とを設けることにより、一体の熱交換器を熱交換器14,15の2つに分けることができるので、熱交換器14,15の製造コストを低減することができる。
【0093】
実施の形態2の冷却装置1はまた、逆止弁54を備える。逆止弁54は、圧縮機12と熱交換器14との間の冷媒通路22の、冷媒通路22と連通路51との接続箇所よりも圧縮機12に近接する側に、配置されている。逆止弁54は、圧縮機12から熱交換器14へ向かう冷媒の流れを許容するとともに、その逆向きの冷媒の流れを禁止する。
【0094】
このようにすれば、流量調整弁39を全閉(弁開度0%)にし、冷媒通路24から連通路51へ冷媒が流れ熱交換器15へは流れないように切換弁52を調整したとき、熱交換器14と冷却部30との間に冷媒を循環させる閉ループ状の冷媒の経路を、確実に形成することができる。
【0095】
逆止弁54がない場合、冷媒が連通路51から圧縮機12側の冷媒通路22へ流れる虞がある。逆止弁54を備えることによって、連通路51から圧縮機12側へ向かう冷媒の流れを確実に禁止できるので、環状の冷媒経路で形成するヒートパイプを使用した、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の停止時のHV機器31の冷却能力の低下を防止できる。したがって、車両の車室用の冷房が停止しているときにも、HV機器31を効率よく冷却することができる。
【0096】
また、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の停止中に、閉ループ状の冷媒の経路内の冷媒の量が不足する場合には、圧縮機12を短時間のみ運転することで、逆止弁54を経由して閉ループ経路に冷媒を供給できる。これにより、閉ループ内の冷媒量を増加させ、ヒートパイプの熱交換処理量を増大させることができる。したがって、ヒートパイプの冷媒量を確保することができるので、冷媒量の不足のためにHV機器31の冷却が不十分となることを回避することができる。
【0097】
実施の形態2の冷却装置1はさらに、気液分離器70を備える。熱交換器14から流出した冷媒は、気液分離器70内において、気相と液相とに分離される。気液分離器70で分離された液相冷媒は、冷媒通路23を経由して流通し、冷却部30に供給されてHV機器31を冷却する。この液相冷媒は、過不足の全くない真に飽和液状態の冷媒である。気液分離器70から液相の冷媒のみを取り出し冷却部30へ流すことにより、熱交換器14の能力を最大限に活用してHV機器31を冷却することができるので、HV機器31の冷却能力を向上させた冷却装置1を提供することができる。
【0098】
気液分離器70の出口で飽和液の状態にある冷媒をHV機器31を冷却する冷却通路32に導入することにより、冷媒通路23,24および冷却通路32を含むHV機器31の冷却系を流れる冷媒のうち、気相状態の冷媒を最小限に抑えることができる。そのため、HV機器31の冷却系を流れる冷媒蒸気の流速が早くなり圧力損失が増大することを抑制でき、冷媒を流通させるための圧縮機12の消費電力を低減できるので、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の性能の悪化を回避することができる。
【0099】
気液分離器70の内部には、図8に示すように、飽和液状態の冷媒液が貯留されている。気液分離器70は、その内部に冷媒液を一時的に溜める蓄液器として機能する。気液分離器70内に所定量の冷媒液が溜められることにより、負荷変動時にも気液分離器70から冷却部30へ流れる冷媒の流量を維持できる。気液分離器70が液だめ機能を有し、負荷変動に対するバッファとなり負荷変動を吸収できるので、HV機器31の冷却性能を安定させることができる。
【0100】
なお、これまでの実施の形態においては、HV機器31を例として車両に搭載された電気機器を冷却する冷却装置1について説明した。電気機器としては、少なくとも作動によって熱を発生させる電気機器であれば、インバータ、モータジェネレータなどの例示された電気機器に限定されるものではなく、任意の電気機器であってもよい。冷却の対象となる電気機器が複数個ある場合においては、複数の電気機器は、冷却の目標となる温度範囲が共通していることが望ましい。冷却の目標となる温度範囲は、電気機器を作動させる温度環境として適切な温度範囲である。
【0101】
さらに、本発明の冷却装置1により冷却される発熱源は、車両に搭載された電気機器に限られず、熱を発生する任意の機器、または任意の機器の発熱する一部分であってもよい。
【0102】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、各実施の形態の構成を適宜組合せてもよい。また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の冷却装置は、モータジェネレータおよびインバータなどの電気機器を搭載するハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車などの車両における、車内の冷暖房を行なうための蒸気圧縮式冷凍サイクルを使用した電気機器の冷却に、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0104】
1 冷却装置、10 蒸気圧縮式冷凍サイクル、12 圧縮機、13 四方弁、14,15,18 熱交換器、16 膨張弁、21,22,23,24,24a,24b,25,26,27,27a,27b,28,29 冷媒通路、30 冷却部、31 HV機器、32 冷却通路、39 流量調整弁、40 内部熱交換器、41,42 熱交換通路、51 連通路、52 切換弁、54 逆止弁、57,58 弁、60 地面、70 気液分離器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱源を冷却する冷却装置であって、
冷媒を循環させるための圧縮機と、
前記冷媒と外気との間で熱交換する第一熱交換器および第二熱交換器と、
前記冷媒を減圧する減圧器と、
前記冷媒と空調用空気との間で熱交換する第三熱交換器と、
前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間を流通する前記冷媒の経路上に設けられ、前記冷媒を用いて前記発熱源を冷却する冷却部と、
前記冷却部と前記第二熱交換器との間を前記冷媒が流通する第一通路と、
前記第三熱交換器と前記圧縮機との間を前記冷媒が流通する第二通路と、
前記第一通路を流通する前記冷媒と前記第二通路を流通する前記冷媒とが熱交換する内部熱交換器と、を備える、冷却装置。
【請求項2】
前記圧縮機と前記第一熱交換器との間を前記冷媒が流通する第三通路と、
前記第二通路と前記第三通路とを連通する連通路と、を備える、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記連通路と、前記第二通路および前記第三通路と、の連通状態を切り換える切換弁を備える、請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記冷却部は、前記第一熱交換器よりも下方に配置されている、請求項2または請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記圧縮機から前記第一熱交換器へ向かう前記冷媒の流れと、前記圧縮機から前記第三熱交換器へ向かう前記冷媒の流れと、を切り換える四方弁を備える、請求項1から請求項4のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項6】
前記第一熱交換器と前記第二熱交換器とは、一体的に配置される、請求項1から請求項5のいずれかに記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−243982(P2012−243982A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113372(P2011−113372)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】