説明

冷媒液面測定装置及び冷媒液面測定方法並びにそれを用いた超電導マグネット装置

【課題】冷媒液面を短時間で測定する冷媒液面測定装置を得る。
【解決手段】超電導線に常電導体ヒーターを電気的に接続すると共に、前記超電導線と前記常電導体ヒーターを熱的に接触させたセンサ素子の複数個を、電気的に直列に接続した直列センサ体10であって、前記直列センサ体10を、冷媒液を収容する容器3の冷媒液面と交差させると共に、前記直列センサ体10の前記センサ素子の1つ8とその他18を上下関係に配置させ、前記直列センサ体10に通電して、前記直列センサ体10の前記超電導線の常電導部の電気抵抗値を測定することにより冷媒液面を測定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体ヘリウムや液体窒素等の液化ガス冷媒を用いる極低温装置に係わり、特に、その液化ガス冷媒液面(液面レベル)を測定する超電導線を用いた冷媒液面測定装置及び冷媒液面測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、極低温装置である超電導マグネット装置では、超電導コイルを超電導状態に維持することが必須である。液体ヘリウム等の冷媒液浸漬方式の超電導マグネット装置は、超電導コイルを液体ヘリウムに浸漬し極低温に保つことで超電導状態を維持している。超電導マグネット装置は、液体ヘリウムを低温容器(クライオスタット)内に保持し液体ヘリウムの蒸発を防いでいる。しかし外部からの熱侵入を完全になくすことはできないため、液体ヘリウムはわずかずつ蒸発する。クライオスタット中のガスヘリウムを液体ヘリウムに凝縮させるための冷凍機を備えた超電導マグネット装置であっても、マグネットの励磁、消磁等に伴い、液体ヘリウムは蒸発し減少する。液体ヘリウムが減少すると、超電導コイルの冷却作用が不足するため、超電導状態が壊れやすくなり、超電導マグネットのクエンチを引き起こす原因となる。そのため、超電導マグネット装置を運転する上で液体ヘリウムの量を監視することは重要であり、多くの超電導マグネット装置は内部に液体ヘリウム液面測定装置を備えている。
【0003】
液体ヘリウム液面測定装置は、以下のような構造を持つ。例えばニオブチタン合金等の超電導材のフィラメント(超電導線)をクライオスタット内の液体ヘリウムの液面と交差するように上下方向に配置する。超電導フィラメントの上部に、例えばマンガニン線で作られた常電導体ヒーターを電気的に直列に接続すると共に、超電導フィラメントとヒーターを熱的に接触させて超電導フィラメント製のセンサ素子とする。この超電導フィラメント製のセンサ素子に、図8に示すような一定電流を通電すると、その電流によってヒーターはジュール熱を発生し、液体ヘリウム液面よりも上部の超電導フィラメントは常電導状態となる。常電導となった部分の超電導フィラメントは電気抵抗を持つが、液体ヘリウム液面よりも下部の超電導フィラメントは超電導状態を保ち電気抵抗は零となる。このとき超電導フィラメントの抵抗値は、常電導状態にある超電導フィラメントの部分のみの抵抗値であり、超電導フィラメントが液面上に出ている長さに応じて変化することになる。そのため、超電導フィラメント両端の発生電圧を電圧計で観測し、通電電流とから抵抗値を測定することにより、液面(液面の高さ)を求めることができる。
【0004】
しかしながら、従来の超電導線を用いた冷媒液面測定装置による液体ヘリウムの液面測定方法では、(1)冷媒液面測定装置の長さが長くなると長い距離の超電導線を常電導にする必要があること、(2)ヒーターと超電導線の熱的な接触具合が工作精度の範囲内でまちまちであること、等の理由から、超電導線の超電導状態の部分と常電導状態の部分の境目が、ヘリウム液面と同じレベルに下りてくるまで長い時間を要する問題があった。またこの時間は、冷媒液面測定装置のヒーターと超電導線の熱的な接触具合の個体差の影響を大きく受ける。そのため、設計上同一構造の冷媒液面測定装置であっても、超電導線の超電導状態の部分と常電導状態の部分の境目がヘリウム液面と同じレベルに下りてくるまでの時間が個体差によって大きく異なり、画一的な通電電流・通電時間で測定すると正しく液面レベルを測定できない場合があるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】国際公開第97/08518号パンフレット(要約、図1)
【特許文献2】実開昭62−141721号公報(実用新案登録請求の範囲、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、短時間の通電時間で、超電導線の超電導部と常電導部の境目をヘリウム液面と同じレベルにし、冷媒液面を短時間で測定する冷媒液面測定装置及び冷媒液面測定方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係わる冷媒液面測定装置は、超電導線に常電導体ヒーターを電気的に接続すると共に、前記超電導線と前記常電導体ヒーターを熱的に接触させたセンサ素子の複数個を、電気的に直列に接続した直列センサ体であって、前記直列センサ体を、冷媒液を収容する容器の冷媒液面と交差させると共に、前記直列センサ体の前記センサ素子の1つとその他を上下関係に配置させ、前記直列センサ体に通電して、前記直列センサ体の前記超電導線の常電導部の電気抵抗値を測定することにより冷媒液面を測定するようにしたものである。
【0008】
また、この発明に係わる冷媒液面測定装置は、超電導線に常電導体ヒーターを電気的に接続すると共に、前記超電導線と前記常電導体ヒーターを熱的に接触させたセンサ素子の複数個を、電気的に直列に接続した直列センサ体であって、前記直列センサ体を、冷媒液を収容する水平円筒形容器の冷媒液面と交差させ、前記直列センサ体の前記センサ素子の1つとその他を上下関係に位置させると共に、前記直列センサ体を湾曲又は角張らせて配置させ、前記直列センサ体に通電して、前記直列センサ体の前記超電導線の常電導部の電気抵抗値を測定することにより冷媒液面を測定するようにしたものである。
【0009】
さらに、この発明に係わる冷媒液面測定方法は、超電導線に常電導体ヒーターを電気的に接続すると共に、前記超電導線と前記常電導体ヒーターを熱的に接触させたセンサ素子の複数個を、電気的に直列に接続した直列センサ体を、冷媒液を収容する容器の冷媒液面と交差させると共に、前記直列センサ体の前記センサ素子の1つとその他を上下関係に配置させた冷媒液面測定装置を用いて、前記直列センサ体に比較的大きな第一の電流を通電した後に比較的小さな第二の電流を通電し、前記直列センサ体の前記超電導線の常電導部の電気抵抗値を測定することにより冷媒液面を測定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の冷媒液面測定装置及び冷媒液面測定方法によれば、直列センサ体の各センサ素子毎に常電導体ヒーターを有しているので、直列センサ体の上部の1つのセンサ素子のみならず下部のその他のセンサ素子が、冷媒ガス中にあっても、冷媒ガス中の超電導線を短時間で、常電導状態にすることができて、直列センサ体の超電導線の常電導部と超電導部の境目を冷媒液面と同レベルにすることができ、短時間で冷媒液面の測定ができる。
【0011】
また、この発明の冷媒液面測定装置によれば、直列センサ体を、冷媒液を収容する水平円筒形容器の冷媒液面と交差させ、前記直列センサ体のセンサ素子の1つとその他を上下関係に位置させると共に、前記直列センサ体を湾曲又は角張らせて配置させるので、水平円筒形容器の冷媒液面の広範囲の変動を測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。図1は、この発明の基礎技術を説明する冷媒液面測定装置を示す構成図である。図2は、冷媒液面測定装置に通電する電流と時間との関係を示す図である。液体ヘリウム冷媒液面測定装置を例に説明する。図1において、超電導フィラメント1は、例えばニオブチタン合金等の超電導材料を細い線状にした例えば1m弱の超電導線で、全体が常電導状態になったときに60Ωの電気抵抗を有する。ヒーター2は、例えばマンガニン線による常電導体ヒーターで、2Ωの電気抵抗を有する。超電導線1及びヒーター2は、電気的に直列に接続されていると共に、ヒーター2は、超電導線1の上部数cmの長さで熱的に接触しておいる。取扱いを容易にするために、超電導線1及びヒーター2を、例えば金属製又は樹脂製の管に収納し、管には液体ヘリウムが流出入できるように多数の貫通孔が設けられている。このように製作された超電導線1及びヒーター2でセンサ素子8を構成している。
【0013】
センサ素子8の両端のリードには、電源装置6及び電圧計7が接続されている。電源装置6は測定時にセンサ素子8に所望する所定電流を流すことができる。図では、電源装置6からの電流リード及び電圧計7からの電圧リードを低温容器(クライオスタット)3の内部まで配線しているが、低温容器3の内部は1本で、外部で分岐してもよい。また、上部の電圧リードは、超電導線1とヒーター2間に接続して、超電導線1の電圧を測定することもできる。センサ素子8は、低温容器3の中で液体ヘリウム5の液面と交差して上下方向に配置され、ガスヘリウム4、液体ヘリウム5と共に、低温容器3の中に収納されている。センサ素子8はヘリウム液面と直角又は斜めに交差している。
【0014】
次に動作について説明する。液体ヘリウムの液面(液面レベル)を測定する際には、図2に示したように、電源装置6から最初の3秒間で300mAを通電し、その後250mAを9秒間通電する。250mAの通電終了前に、電圧計7によってセンサ素子8両端の電圧を測定する。超電導線1は通電前には全長にわたって超電導状態であったが、初めの300mAの通電によってヒーター2が発熱し、その熱によって常電導状態への転移が上部から下部に向かって進行し、3秒後には液体ヘリウム5の液面レベルよりも下まで常電導状態となる。その後、通電電流が250mAに下がると、液体ヘリウム5による冷却効果がヒーター2及び常電導状態になった超電導線1のジュール発熱よりも勝るため、液体ヘリウム中の超電導線1は超電導転移する。250mA通電を始めて9秒後には、超電導線1の超電導部と常電導部の境目が液体ヘリウムの液面と等しくなるので、この時点での超電導線1及びヒーター2、即ちセンサ素子8両端の電圧を計測する。
【0015】
通電電流250mA、ヒーター2の抵抗2Ωから、超電導線1の電気抵抗Rは、発生電圧Vを用いて
R[Ω]=V[V]/0.25[A]―2[Ω] (1)
という式で求めることができる。この場合、超電導線は全長にわたって常電導状態の時は60Ωの電気抵抗を有することから、例えばR=30Ωの場合は、液体ヘリウムの液面が超電導線の半分のところにあり、R=20Ωの場合は、液体ヘリウムの液面が超電導線の上1/3のところにあることがわかる。
【0016】
このように、液体ヘリウム冷媒液面測定方法は、センサ素子8に初めに液面測定時の通電電流よりも大きな電流を流して、ガスヘリウム中のみならず液体ヘリウム中の超電導線までも常電導状態にする。しかる後に測定時の電流を通電し、超電導線の超電導部と常電導部の境目がヘリウム液面と同じレベルに上がってくるのを待ち、センサ素子の超電導線の常電導部の電気抵抗値を測定するものである。
【0017】
図3は、この発明の実施の形態1による冷媒液面測定装置を示す構成図である。各図において、同一符号は同一又は相当部分を示すので、その説明を一部省略する。図1と同様に製作した超電導線1及びヒーター2から構成されたセンサ素子8、例えば金属製又は樹脂製の管に収納したものを複数個用意する。図3では、第1センサ素子8の他に、超電導線11及びヒーター12から構成される第2センサ素子18を設けている。第1センサ素子8の下端リード(超電導線1の下端リード)と、第2センサ素子18の上端リード(ヒーター12のリード)とを電気的に接続し、第1センサ素子8と第2センサ素子18を電気的に直列に接続した直列センサ体10が構成される。機械的には、第1センサ素子8の超電導線1の下端と、第2センサ素子18の超電導線11の上端とを高さ方向に間隙を無くして、配置し支持されている。
【0018】
直列センサ体10は、低温容器3の中で液体ヘリウム5の液面と直角又は斜めに交差して上下方向に配置され、ガスヘリウム4、液体ヘリウム5と共に、低温容器3の中に収納されている。直列センサ体10のセンサ素子の1つ8とその他18は低温容器3の中で上下関係に配置させている。このように、センサ素子の複数個を、電気的に直列に接続して、上下関係に配置させることによって、低温容器3が深く、液体ヘリウム液面測定装置の長さが不足するときでも、センサ素子の数を増やし、直列接続することにより、電源装置6及び電圧計7の数を増やすことなく液面測定をすることができる。
【0019】
実施の形態1においても、図2に示したように初めの3秒間300mA通電し、その後9秒間250mA通電し、通電終了前に電圧測定を行う。これにより、液体ヘリウム中にまで常電導状態を伝播させ、しかる後に250mAの電流に落として液体ヘリウム液面に対して、超電導部と常電導部の境目を同じ高さにすることができる。直列センサ体10はこの場合は、センサ素子1,18が2個で、ヒーター2,12も2個になっているため、測定電圧から抵抗値Rを求める際には、
R[Ω]=V[V]/0.25[A]―4[Ω] (2)
という式で求められることになる。このときの超電導線の電気抵抗Rは、センサ素子8の超電導線1とセンサ素子18の超電導線11の電気抵抗の合計である。この場合、超電導線1,18は全長にわたって常電導状態の時はそれぞれ60Ωの電気抵抗を有することから、例えばR=90Ωの場合は、液体ヘリウムの液面が2つの超電導線1,18(即ち直列センサ体10)の上から3/4のところにあり、R=30Ωの場合は、液体ヘリウムの液面が2つの超電導線1,18の上から1/4のところにあることがわかる。
【0020】
このように、液体ヘリウム冷媒液面測定方法は、直列センサ体10に初めに液面測定時の通電電流よりも大きな電流を流して、ガスヘリウム中のみならず液体ヘリウム中の超電導線1,18までも常電導状態にする。しかる後に測定時の電流を通電し、超電導線1,18の超電導部と常電導部の境目がヘリウム液面と同じレベルに上がってくるのを待ち、直列センサ体10の超電導線1,18の常電導部の電気抵抗値を精度よく測定するものである。
【0021】
前述のように、電流の大きさが2段階である手順で液面計測をするが、これに要する時間は、最初から測定時の電流を通電して、超電導線の超電導部と常電導部の境目がヘリウム液面と同じレベルに下りてくるのに要する時間よりも短い。また、センサ素子毎にヒーターを設けると、超電導線とヒーターの熱的接触度合いの個体差による影響を受けにくい。このため、冷媒液面の計測方法が短時間で、画一的な通電電流と通電時間で個体差による影響を減少して精度よく液面レベルを計測することが可能になる。
【0022】
この発明では、直列センサ体10の各センサ素子8,18毎に常電導体ヒーター2,12を有しているので、直列センサ体10の上部の1つのセンサ素子8のみならず下部のその他のセンサ素子18が、冷媒ガス中にあっても、冷媒ガス中の超電導線1,18を短時間で、常電導状態にすることができて、直列センサ体10の超電導線1,18の常電導部と超電導部の境目を冷媒液面と同レベルにすることができ、短時間で冷媒液面の測定ができる。例えば、冷媒ガス中の超電導線の長さが2m弱のものを1つのヒーターで温め常電導状態にするのに、2−6秒要する場合に、図3のように、直列センサ体10の各センサ素子8,18(それぞれ1m弱)毎に常電導体ヒーター2,12を有しているときは、1−3秒と短時間に常電導状態にすることができる。短時間に常電導状態にすることができるため、それだけ冷媒液の消費を減少させることができる。
【0023】
センサ素子を温めて常電導状態にするとき、ヒーターと超電導線との熱的接触度合いの個体差によって、常電導状態にする時間が影響を受けるが、ヒーターが1つの場合より、センサ素子毎にヒーターを設ける方が、常電導状態にする時間が影響を受ける度合いが減少する。
【0024】
実施の形態2.
図4は、冷媒液面測定装置に通電する実施の形態2による電流の時間変化を示す図である。実施の形態1では、図2に示すように、最初の3秒間は300mA、その後の9秒間は250mAの電流を通電する、1段の階段状の通電曲線となるが、実施の形態2では、図4に示すように、最初に300mA通電をし、1秒後に280mA、3秒後に250mA電流というように、2段の階段状の通電曲線としても、実施の形態1と同じ作用効果を得ることができる。
【0025】
最初の比較的大きな電流(300mA、280mA)の通電により、超電導線1,11を液体ヘリウム中まで常電導状態にすることができ、その後の比較的小さな電流(250mA)で液体ヘリウム液面に対して超電導部と常電導部の境目を同じ高さにすることができる。280mAの通電電流値を適当に変更することでヒーター2,12及び超電導線1,11に供給する熱量を抑えることができ、液面測定に伴う液体ヘリウムの消費を少なくすることができる。
【0026】
実施の形態3.
図5は、冷媒液面測定装置に通電する実施の形態3による電流の時間変化を示す図である。実施の形態1,2では、通電電流は段階的に変化するものであるが、実施の形態3では、通電電流を連続的に漸減させていっても、実施の形態2と同様の作用効果を得ることができる。実施の形態3においては、1−3秒までの通電電流の傾きを適当に調整することで、ヒーター2,12及び超電導線1,11に供給する熱量を抑えることができ、液面測定に伴う液体ヘリウムの消費を少なくすることができる。
【0027】
実施の形態4.
図6は、実施の形態4による冷媒液面測定装置を超電導マグネット装置に適用した構成断面図である。実施の形態4は、水平円筒形容器に液体ヘリウムを収容した、例えば磁気共鳴画像診断装置に用いられる水平磁場形超電導マグネット装置に冷媒液面測定装置を適用した。超電導マグネット装置は、主として中心部に必要な磁場を発生する小径の主コイル21と超電導マグネット装置の外周部の磁場を低減する大径のシールドコイル22等からなる超電導コイル23を有し、超電導コイル23は液体ヘリウム24中に浸漬され超電導状態を維持し、液体ヘリウム24と共にヘリウム容器25に収納されている。ヘリウム容器25は内部を真空に維持された真空容器26に収納され、真空断熱されている。さらにヘリウム容器25は主として真空容器26からの輻射熱を遮蔽する熱シールド27によって包囲されている。
【0028】
実施の形態1と同様に各センサ素子8,18は超電導線とヒーターで構成され、それらを直列に接続して直列センサ体が構成されている。ヘリウム容器25即ち水平円筒形容器には直列センサ体のセンサ素子8,18を内部の主コイル21に沿わせるように角張らして、即ち角度を持って設置支持させている。直列センサ体は外部の電源装置6及び電圧計7に接続されている。水平円筒形容器に直列センサ体を垂直に設置した場合は、超電導線の部分が容器の上下端部に届かなく、液面が上下端部に存在する場合は測定できないが、センサ素子8,18を角張らして設置支持させると、水平円筒形容器の上下端部にセンサ素子8,18の超電導線が届くので、液面が上下端部に存在する場合でも充分に測定可能となる。製作が可能であれば、センサ素子8,18で構成される直列センサ体を湾曲させて、水平円筒形容器に設置支持させてもよい。
【0029】
実施の形態5.
図7は実施の形態5による冷媒液面測定装置を超電導マグネット装置に適用した場合を透視的に示す構成斜視図である。実施の形態5は、垂直二段円筒形容器に液体ヘリウムを収容した、例えば磁気共鳴画像診断装置に用いられる垂直磁場形超電導マグネット装置に冷媒液面測定装置を適用した。図7の超電導マグネット装置は、上段円筒形容器31と下段円筒形容器32を柱を兼ねた接続管33で結合し、接続管33の内部を液体ヘリウムが流通できるように構成されている。液体ヘリウムの液面は、下段円筒形容器32から上段円筒形容器31にかけて測定する必要がある。接続管33部分の液面の測定は、接続管33部分の容量が少ないので、省略することができる。 超電導コイル(図示せず)は液体ヘリウム中に浸漬され超電導状態を維持し、液体ヘリウムと共に垂直二段円筒形容器に収納されている。
【0030】
実施の形態1と同様に各センサ素子8,18は超電導線とヒーターで構成され、それらを直列に接続して直列センサ体が構成されている。実施の形態5では、直列センサ体のセンサ素子8が上段円筒形容器31内に液面と交差するように配置支持され、直列センサ体のセンサ素子18が下段円筒形容器32内に液面と交差するように配置支持されている。上段円筒形容器31内のセンサ素子8と下段円筒形容器32内のセンサ素子18は、接続管33に相当する間が途切れており(直列センサ体の超電導線が途切れており)、その間をリードによって、接続管33を経由して接続されている。そして、直列センサ体は外部の電源装置6及び電圧計7に接続されている。
【0031】
このように上段円筒形容器31内と下段円筒形容器32内にそれぞれセンサ素子8,18を配置することにより、上段円筒形容器31内と下段円筒形容器32内の液面を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の基礎技術を説明する冷媒液面測定装置を示す構成図である。
【図2】冷媒液面測定装置に通電する電流と時間との関係を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1による冷媒液面測定装置を示す構成図である。
【図4】冷媒液面測定装置に通電する実施の形態2による電流の時間変化を示す図である。
【図5】冷媒液面測定装置に通電する実施の形態3による電流の時間変化を示す図である。
【図6】実施の形態4による冷媒液面測定装置を超電導マグネット装置に適用した構成断面図である。
【図7】実施の形態5による冷媒液面測定装置を超電導マグネット装置に適用した場合を透視的に示す構成斜視図である。
【図8】冷媒液面測定装置に対する従来の通電電流と時間の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 超電導線 2 ヒーター
3 低温容器 4 ガスヘリウム
5 液体ヘリウム 6 電源装置
7 電圧計 8 センサ素子
10 直列センサ体 11 超電導線
12 ヒーター 18 センサ素子
24 液体ヘリウム 25 ヘリウム容器
31 上段円筒形容器 32 下段円筒形容器
33 接続管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導線に常電導体ヒーターを電気的に接続すると共に、前記超電導線と前記常電導体ヒーターを熱的に接触させたセンサ素子の複数個を、電気的に直列に接続した直列センサ体であって、
前記直列センサ体を、冷媒液を収容する容器の冷媒液面と交差させると共に、前記直列センサ体の前記センサ素子の1つとその他を上下関係に配置させ、
前記直列センサ体に通電して、前記直列センサ体の前記超電導線の常電導部の電気抵抗値を測定することにより冷媒液面を測定するようにした冷媒液面測定装置。
【請求項2】
冷媒液を収容する前記容器は、垂直上段円筒形容器と垂直下段円筒形容器を冷媒液を流通させる接続管で接続するものであり、
前記垂直上段円筒形容器には、第1のセンサ素子を、前記垂直下段円筒形容器には、第2のセンサ素子を配置し、前記第1のセンサ素子と前記第2のセンサ素子で前記直列センサ体を構成するようにした請求項1記載の冷媒液面測定装置。
【請求項3】
超電導線に常電導体ヒーターを電気的に接続すると共に、前記超電導線と前記常電導体ヒーターを熱的に接触させたセンサ素子の複数個を、電気的に直列に接続した直列センサ体であって、
前記直列センサ体を、冷媒液を収容する水平円筒形容器の冷媒液面と交差させ、前記直列センサ体の前記センサ素子の1つとその他を上下関係に位置させると共に、前記直列センサ体を湾曲又は角張らせて配置させ、
前記直列センサ体に通電して、前記直列センサ体の前記超電導線の常電導部の電気抵抗値を測定することにより冷媒液面を測定するようにした冷媒液面測定装置。
【請求項4】
超電導線に常電導体ヒーターを電気的に接続すると共に、前記超電導線と前記常電導体ヒーターを熱的に接触させたセンサ素子の複数個を、電気的に直列に接続した直列センサ体を、冷媒液を収容する容器の冷媒液面と交差させると共に、前記直列センサ体の前記センサ素子の1つとその他を上下関係に配置させた冷媒液面測定装置を用いて、
前記直列センサ体に比較的大きな第一の電流を通電した後に比較的小さな第二の電流を通電し、前記直列センサ体の前記超電導線の常電導部の電気抵抗値を測定することにより冷媒液面を測定するようにした冷媒液面測定方法。
【請求項5】
冷媒液面測定時の通電電流よりも大きな電流を流して、冷媒ガス中のみならず冷媒液中の前記直列センサ体の前記超電導線までも常電導状態し、その後に冷媒液面測定時の電流を通電し、前記直列センサ体の前記超電導線の超電導部と常電導部の境目が冷媒液面と同じレベルになるのを待ち、前記直列センサ体の前記超電導線の常電導部の電気抵抗値を測定するようにした請求項4記載の冷媒液面測定方法。
【請求項6】
冷媒液面測定時の通電電流よりも大きな電流を段階的に減少させて、冷媒ガス中のみならず冷媒液中の前記超電導線までも常電導状態し、その後に冷媒液面測定時の電流を通電し、前記超電導線の超電導部と常電導部の境目が冷媒液面と同じレベルになるのを待ち、前記直列センサ体の前記超電導線の常電導部の電気抵抗値を測定するようにした請求項4記載の冷媒液面測定方法。
【請求項7】
冷媒液面測定時の通電電流よりも大きな電流を連続的に減少させて、冷媒ガス中のみならず冷媒液中の前記超電導線までも常電導状態し、その後に冷媒液面測定時の電流を通電し、前記超電導線の超電導部と常電導部の境目が冷媒液面と同じレベルになるのを待ち、前記直列センサ体の前記超電導線の常電導部の電気抵抗値を測定するようにした請求項4記載の冷媒液面測定方法。
【請求項8】
前記した請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の冷媒液面測定装置を用いたことを特徴とする超電導マグネット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−175640(P2008−175640A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8263(P2007−8263)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】