説明

冷感マット

【課題】、身体を冷やす効果をいつまでも維持することができ、また軽量で取り扱いが容易であると共に容易に洗うことができ、さらに蒸れを感じることなく使用することができる冷感マットを提供する。
【解決手段】熱伝導性ゴムシート1の両面に不織布2,3を積層して冷却シート4を形成する。そしてこの冷却シート4を布地5で覆って冷感マットAを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敷布団の上に敷いたり、枕の上に敷いたり、車の座席の上に敷いたりして用いられる冷感マットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
夏場などにおいて、快適な睡眠をとるために身体を冷やす冷感マットが提供されている。この冷感マットは、高吸水性樹脂に水を吸収させて調製されるジェルを樹脂フィルムのパックに充填し、このジェル入りパックをシート状に連ねて、布製のカバーで覆うようにしたものである(例えば特許文献1、特許文献2等参照)。
【0003】
ジェルは水を多く含むので熱容量が大きい。このため、例えば上記の冷感マットを敷布団などの上に敷き、その上に身体を横たえて寝ると、体温が冷感マットのジェルに吸収され、身体を冷やすことができるものであり、夏場の暑い夜でも快適に就寝することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−144036号公報
【特許文献2】特開2009−148455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のようにジェルは熱容量が大きいために体温を吸収するが、放熱性は低いために熱を吸収する一方であり、所定の時間を経過すると、ジェルの温度が体温に近くなる。このためジェルを用いた冷感マットは、身体を冷やす効果が長続きしないという問題があった。
【0006】
またジェルは上記のように水を多く含むので、比重が高く、ジェルを用いた冷感マットは重量が重くなり、収納したり取り出したりする際の取り扱いに問題を有するものであった。
【0007】
さらに、ジェルを充填するパックは水が漏れないように樹脂フィルムで形成する必要があるので、冷感マットは通気性が悪くなり、冷感マットの上に寝ると、蒸れを感じることがあるという問題もあった。
【0008】
加えて、冷感マットは布製のカバー内にジェルを充填するパックが入っているために、そのままでは洗うことができず、清潔に使用することができなくなるという問題もあった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、身体を冷やす効果をいつまでも維持することができ、また軽量で取り扱いが容易であると共に容易に洗うことができ、さらに蒸れを感じることなく使用することができる冷感マットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る冷感マットは、熱伝導性ゴムシート1の両面に不織布2,3を積層して冷却シート4を形成し、この冷却シート4を布地5で覆って成ることを特徴とするものである。
【0011】
この発明によれば、冷感マットの上に身体を横たえると、冷却シート4の熱伝導性ゴムシート1に身体の熱が熱伝導することによって体温が奪われ、身体を冷やすことができるものである。そして身体を横たえている部分の熱伝導性ゴムシート1は体温で温度上昇するが、寝返りをうったりして冷感マット上で身体が移動すると、身体が移動した部分では熱伝導性ゴムシート1の温度が低いので、この部位の熱伝導性ゴムシート1に身体の熱が熱伝導して再度身体を冷やすことができると同時に、体温で温度上昇した上記の部分の熱伝導性ゴムシート1からは放熱がされて短時間で温度が下がるものであり、寝返りをうつなど身体が冷感マット上で移動することによって、身体を冷やす効果をいつまでも維持することができるものである。
【0012】
そして身体を冷やす作用をなす冷却シート4は、熱伝導性ゴムシート1の両面に不織布2,3を積層して形成されたものであって、水分を多量に含むジェルに比べてはるかに軽量であり、取り扱いが容易であると共に、洗濯も問題なく行なうことができるものであり、さらに熱伝導性ゴムシート1に積層した不織布2,3に汗が吸収されることによって、蒸れを感じることなく使用することができるものである。
【0013】
また本発明において、上記の熱伝導性ゴムシート1は、ゴム及び熱可塑性エラストマーのうち少なくとも一方と、無機充填材とを含有する熱伝導性ゴム組成物をシート状に成形したものであることを特徴とするものである。
【0014】
この発明によれば、熱伝導性ゴムシート1を高い熱伝導率のシートとして形成することができるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、冷感マットの上に身体を横たえることによって、冷却シート4の熱伝導性ゴムシート1に身体の熱が熱伝導して、身体から体温が奪われて冷やすことができるものであり、そして寝返りをうったりして冷感マット上で身体が移動すると、温度上昇した部分の熱伝導性ゴムシート1から放熱がされて短時間で温度が下がり、身体を冷やす効果をいつまでも維持することができるものである。また、熱伝導性ゴムシート1の両面に不織布2,3を積層して形成される冷却シート4は軽量であって取り扱いが容易であると共に、洗濯も容易に行なうことができ、さらに不織布2,3に汗が吸収されることによって、蒸れを感じることなく使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a)は斜視図、(b)はイ−イ線部分の拡大した断面図、(c)は冷却シートの一部破断した拡大断面図である。
【図2】三次元立体編物の布地を示すものであり、(a)は一部を破断した拡大斜視図、(b)は一部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
本発明に係る冷感マットAは、冷却シート4の両面を布地5で覆って形成されるものであり、この冷却シート4は熱伝導性ゴムシート1の両面に不織布2,3を積層して形成されるものである。
【0019】
熱伝導性ゴムシート1は、ゴムに熱伝導率が高い無機充填材を配合して調製される熱伝導性ゴム組成物をシート状に成形して作製したものを用いることができるものであり、熱伝導率が0.5W/mK以上、より好ましくは0.7W/mK以上、さらに好ましくは1.0W/mK以上の、高熱伝導性を有するものが望ましい。
【0020】
熱伝導性ゴムシート1はこのように高熱伝導性を有するものであればよく、そのゴム組成は特に具体的に限定されるものではないが、例えば特開平10−330575号公報、特開2001−310984号公報、特開2006−52273号公報、特開2008−266659号公報に開示されているゴム組成のものを用いることができる。
【0021】
すなわち、ゴム組成物の主成分となるゴムとしては、アクリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムや、熱可塑性エラストマーを用いることができる。また無機充填材としては、水酸化アルミニウム、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などを用いることができる。そしてゴムに無機充填材を50〜80質量%の質量比率で配合して混練することによって、ゴム組成物を調製することができるものであり、このゴム組成物をシート状に成形することによって、本発明において用いる熱伝導性ゴムシート1を得ることができるものである。無機充填材が50質量%未満では、高い熱伝導率を得ることが難しいものであり、逆に無機充填材が80質量%を超えると、加工性が悪くなって、シート状に成形することが困難になる。
【0022】
ここで、ゴムとしてエチレンプロピレンゴムを用いる場合には、シートを成形する際に加硫することが必要であり、またゴムとして熱可塑性ポリマーを用いる場合には、高温加熱による溶融押し出しを行なってシート状に成形することが必要である。これに対して、ゴムとしてアクリルゴムを用いる場合、カレンダー加工によって容易にシート状に成形することができ、また加硫することも特に必要でないので、本発明ではアクリルゴムを用いて作製した熱伝導性ゴムシート1を用いるのが好ましい。
【0023】
熱伝導性ゴムシート1の厚みは特に限定されるものではないが、0.15〜0.4mm程度の範囲が好ましい。この範囲より厚みが薄いと、熱伝導性ゴムシート1の熱容量が小さくなって、身体を冷やす効果が不十分になるおそれがある。逆にこの範囲を超えて厚みが厚いと、重量が重くなるなどして、冷感マットAの取り扱い性が悪くなるおそれがある。
【0024】
熱伝導性ゴムシート1の上下の各表面に積層される不織布2,3としては、特に限定されるものではないが、レーヨン系の不織布が好ましい。例えば、レーヨン50〜100質量%、ポリエステル0〜50質量%の比率の、レーヨン100%の不織布や、レーヨンとポリエステルを混合した不織布を用いることができる。この不織布2,3の厚みは特に限定されるものではないが、0.1〜0.3mmの範囲が好ましいものであり、また熱伝導性ゴムシート1に不織布2,3を積層して形成される冷却シート4の全体の厚みは0.35〜1.0mmの範囲であることが好ましい。
【0025】
このように熱伝導性ゴムシート1の上下両面に不織布2,3を積層することによって、図1(c)のような冷却シート4を作製することができるものであり、熱伝導性ゴムシート1に不織布2,3を積層接着するにあたっては、例えば、上記のようにゴム組成物をカレンダー加工して熱伝導性ゴムシート1を成形する際に、熱伝導性ゴムシート1の両面に不織布2,3を重ねた状態でロールに通すようにすれば、熱伝導性ゴムシート1の成形と同時に行なうことができる。
【0026】
上記のように形成される冷却シート4の上下に布地5を重ね、布地5の周囲をパイピング布10で包んだ状態で縫い糸11で縫着し、冷却シート4とその上下の布地5を同時に縫い合わせることによって、冷却シート4を布地5で覆った図1(a)(b)のような構造の冷感マットAを作製することができるものである。
【0027】
冷却シート4を覆う布地5としては、特に限定されるものではないが、上側の布地5aは、冷却シート4への熱の伝導や、冷却シート4からの熱の放熱を妨げないように、綿の織布など薄手の生地であることが好ましい。特にキシリトール加工した綿布は、ひんやりとした涼感を感じさせることでき、より好ましい。また下側の布地5bは、冷感マットAにクッション性と通気性を与えるために、厚手の三次元立体編物で形成するのが好ましい。三次元立体編み物は、例えば図2に示すように、ハニカムメッシュ状の上編地12と下編地13の間をモノフィラメントの連結糸14で連結して形成されるものである。材質は任意であるが、例えば上編地12や下編地13はポリエステルや綿などで、連結糸14はポリエステルやナイロンなどで作製することができる。このような構成の三次元立体編物は特許第2847651号公報や特許第4001890号公報などで提案されており、旭化成工業株式会社から「フュージョン」として市販されているものを用いることができる。
【0028】
上記のように形成される本発明の冷感マットAは、夏場などにおいて身体に冷感を与えるために用いられるものであり、例えば敷布団の上に敷いてその上に寝たり、枕の上に敷いてその上に頭を乗せたり、車の座席の上に敷いてその上に座ったりして使用することができるものである。
【0029】
例えば上記のように敷布団の上に冷感マットAを敷いて、その上に身体を横たえて寝る場合、身体は冷感マットAの冷却シート4に布地5を介して接することになるが、冷却シート4の熱伝導シート1は熱伝導性が高いため、身体の熱が熱伝導性ゴムシート1に熱伝導することによって体温が奪われることになり、身体を冷やすことができるものである。そして熱伝導性ゴムシート1のうち身体を横たえている部分の温度は体温の吸収によって上昇するが、冷感マットAの上で寝返りをうつと、熱伝導性ゴムシート1に対して身体が接する部分が移動することになり、身体が移動した部分では熱伝導性ゴムシート1の温度は低いので、この温度が低い部位において熱伝導性ゴムシート1に身体の熱が熱伝導して、寝返りをうったこの部位で身体を冷やすことができるものである。そして同時に、熱伝導性ゴムシート1のうち上記のように体温を吸収して温度が上昇した部分では、身体が他の箇所に移動しているために、この部分の熱伝導性ゴムシート1から放熱がされる。熱伝導性ゴムシート1は熱伝導性が高いので放熱性も良好であり、体温を吸収して上昇した温度は、短時間で下がる。このため、再度寝返りをうつなどして身体がこの部分に戻っても、この部分の温度は既に低下しているので、身体を再度冷却することができるものである。このように、冷感マットAの上で寝返りをうつなどして移動することによって、身体を冷やす効果をいつまでも維持することができるものであり、例えば夏場において、夜間から朝に至るまで、寝苦しい暑さを感じることなく、就寝することが可能になるものである。
【0030】
また身体の体温を吸収して冷やす冷却シート4は、熱伝導性ゴムシート1の両面に不織布2,3を積層して形成してあるので、冷感マットAの上に体を横たえたりする際に、汗は不織布2,3に吸収されるものであり、このため、蒸れを感じることなく、快適に就寝することができるなど、快適な使用が可能になるものである。
【0031】
そしてこのように冷却シート4は熱伝導性ゴムシート1からなるので、従来の冷感マットを形成するジェルのように多量の水分を含有して重量が重くなるようなことがなく、冷感マットAを軽量に且つ薄く形成することができるものであり、例えば押入れに折り畳んで収納したり、取り出して敷布団の上に敷いたりする際の、取り扱いが容易になり、使い勝手が向上するものである。また冷却シート4を構成する熱伝導性ゴムシート1は耐水性を有するので、冷却シート4を冷感マットAから取り出したりするような必要なく、冷感マットAをそのまま丸洗いして洗濯することができるものである。
【実施例】
【0032】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0033】
(実施例)
古河電気工業株式会社製「TMシート TP−SS」(アクリルゴム、水酸化アルミニウム60質量%含有)からなる厚み0.2mmの熱伝導性ゴムシート1の両面に、レーヨン90質量%、ポリエステル10質量%の不織布2,3を積層し、厚み0.5mmの冷却シート4を作製した(図1(c)参照)。
【0034】
この冷却シート4の上にシキリトール加工した綿布からなる布地5aを、冷却シート4下に三次元立体編物(旭化成株式会社製「フュージョンAKE64030」)からなる布地5bを重ね、周囲をパイピング布10で包んで縫着することによって、寸法が1m×1m、厚みが6mmの冷感マットAを作製した(図1(a)(b)参照)。
【0035】
(比較例)
実施例において、冷却シートの代わりに、フィルム袋にジェルを充填したものを用いるようにした。ジェルはポリアクリル酸系高吸水性樹脂(ハイモ(株)製「ハイモサブHS−960」)に水を99.0質量%の量で吸水させたものであり、厚みが約7mmになるように10cm×12cmのフィルム袋に封入し、このフィルム袋を6個連ねたものを1枚として、6枚を平行に配列して用いた。
【0036】
実施例及び比較例の冷感マットの重量をそれぞれ測定したところ、実施例のものは約1kgであるのに対して、比較例のものは約4kgであり、実施例のものは比較例の1/4程度に軽量化することができた。
【0037】
次に、実施例や比較例の冷感マットを敷布団の上に敷いて、その上に身体を横たえる試験を、室温を28℃、湿度60%RHに保った部屋で行なった。
【0038】
実施例のものでは、同一箇所に30分横たわっていると、最初に感じたような冷たさをあまり感じなくなったが、寝返りをうって横たわる場所を変えた後、5分後に再度寝返りをうって元の位置に戻ったところ、最初と同じ冷たさを感じた。この寝返りを30分ごとに数十回行なっても、寝返りをうつたびに、最初と同じ冷たさを感じることができた。
【0039】
一方、比較例のものでは、同一箇所に30分横たわっていると、最初に感じたような冷たさをあまり感じなくなった。次に、寝返りをうって横たわる場所を変えた後、30分後に再度寝返りをうって元の位置に戻ったところ、最初のような冷たさを殆ど感じることができないものであった。この寝返りを何度行なっても、二度と最初のような冷たさを感じることはできないものであった。
【0040】
また10人のパネラーに、8月の初旬に、大阪府内の住宅において、実施例や比較例の冷感マットを敷布団の上に敷いて就寝する試験をしてもらった。その結果、実施例の冷感マットを用いた場合には、10人中、8人の人から快適に就寝をすることができたという報告を得たが、比較例の冷感マットを用いた場合には、10人中、3人の人からしか、快適に就寝をすることができたという報告を得ることができなかった。
【0041】
このように、比較例のものでは、体温を吸収して一旦温度が上がるともはや身体を冷やすことができなくなったが、実施例のものでは、寝返りをうつことによって、冷たさを取り戻せるので、夏場において夜間から朝に至るまで身体を冷やすことができ、快適な就寝に役立つことが確認された。
【符号の説明】
【0042】
1 熱伝導性ゴムシート
2 不織布
3 不織布
4 冷却シート
5 布地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性ゴムシートの両面に不織布を積層して冷却シートを形成し、この冷却シートを布地で覆って成ることを特徴とする冷感マット。
【請求項2】
熱伝導性ゴムシートは、ゴム及び熱可塑性エラストマーのうち少なくとも一方と、無機充填材とを含有する熱伝導性ゴム組成物をシート状に成形したものであることを特徴とする請求項1に記載の冷感マット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−78506(P2011−78506A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231921(P2009−231921)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(595081688)野村貿易株式会社 (2)
【出願人】(509277523)合名会社ウェンディー (3)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】