説明

冷気循環式ショーケースの冷却器

【課題】庫内の冷気循環通風路空間に配置した冷却器ので熱交換した低温空気を庫内に循環送風して陳列商品を保冷する冷気循環式ショーケースで、冷却器前面面積を拡大することで、冷却器前面の霜閉鎖が生じてもフィン間への冷気流れが阻害されないで、庫内吹出し風速が維持できて、庫内冷却性能が除霜直前まで保てる。
【解決手段】端板22とこの端板22に間隔を存して並行に配置したフィン23の間を蒸発コイルを蛇行するように配管し、上面を上板28で閉塞して、流入側前面の流入口29と流出側後面の流出口30を有するものとして横置にしたフィンチューブ形蒸発コイルの冷却器10において、前記流入側前面の流入口29を拡大するものとして、冷却器10の上側にフィン23が存在しない空気流入開口αを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンショーケースを対象とする冷気循環式ショーケースの冷却器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず、オープンショーケースの一例である平形オープンショーケースを対象に、冷気循環式ショーケースの全体構造を図5に示す。
【0003】
上面開放形ケース本体の断熱筐体になる外箱1の内側に、内箱2を配置し、外箱1と内箱2の間を循環風路空間3として確保し、この循環風路空間3の一端を吸込口4、他の一端を送風口5として形成し、ケース本体の上面開放面に臨ませる。図中6は送風口5に配設する整流板である。
【0004】
内箱2の内側は庫内として、底部にベースデッキ7を配し、その上にすのこ8を配置して商品収納スペース9として形成する。
【0005】
前記循環風路空間3には、冷却器(冷凍機の蒸発器(エバポレータ))10を設置し、冷却器10の上流側に配置したファンプレナム11により、送風ファン12を支承した。
【0006】
外箱1の下部は機械室13となり、ここにアキュームレーター14、凝縮器15、圧縮器16、吸入管マフラー17等を配置する。
【0007】
上記の構成で、ショーケースの保冷運転時には図示矢印のように冷風が循環送風され、その循環通風の途上で冷却器10との熱交換により低温になった冷気が庫内に吹き出して、ケース本体の上面開放面を閉塞する冷気エアーカーテン18を形成し、これが商品収納スペース9に陳列した商品を保冷することは周知の通りである。
【0008】
前記の冷却器10としては、従来のショーケースでは冷却面積を大きくするためにフィンチューブ形の蒸発コイルが一般に採用されており、図6に示すようにこの蒸発コイル21には高圧側冷媒配管24から膨張弁25を介して液冷媒を供給している。また、蒸発コイル21は端板22とこの端板22に間隔を存して並行に配置したフィン23の間を蛇行状(ジグザグ)するように配管される。
【0009】
また、冷却器10の蒸発コイル21では蒸発コイル21が2系統に分けて配管され、各系統の蒸発コイル21が分岐ヘッダー26を介し低圧側冷媒配管27に接続される。
【0010】
図中28は、冷却器10の上面を閉塞する上板で、平坦なものとして冷却器10の上面を覆い、冷却器10にはフィン23が臨む、流入側側面と流出側側面のみの流入口29、流出口30が形成される。
【0011】
ところで、フィンチューブ形蒸発コイルの冷却器11は保冷運転時に湿気を含んだ庫内空気が冷却器11を通風することから、蒸発コイル21、フィン23の表面(低温)に霜が発生し、保冷運転の時間経過とともにこの着霜量が増加してフィン間の通風路が狭まるようになると冷却器の風損が増大して庫内の循環通風量が減少し、これが原因でショーケースの保冷性能が低下するようになる。
【0012】
空気中の水分は、霜となってフィン23および蒸発コイル21に付着する。特に冷媒の蒸発温度が低い場合には、前記霜は運転時間の経過とともに、空気の入口側のフィン先端に団子状の霜に成長する。このため、冷却器10では、フィン23の間の空気が通る隙間が小さくなり、冷却能力が低下する不都合を生じる。
【0013】
なお、ショーケースは周期的に保冷運転と除霜運転を交互に繰り返し、除霜運転時には冷却器11にヒーターで加熱した空気を送り込んで蒸発コイル、フィンの着霜を除去するようにしている。
【0014】
前記性能低下を抑制するため、従来では蒸発器アルミフィンに均一に霜が着霜するようなフィンの親水性処理や、下記特許文献1に示すように蒸発器空気入口側のアルミフィンがくし歯状になるように長さの異なるフィンを互い違いに設ける等の対策(ステージング)を実施している。
【特許文献1】実開昭60−68365号公報
【0015】
この特許文献1によれば、フィンの先端が、軸線部を除いて交互に高低しているために、フィンの先端に団子状上に霜が成長しても、空気の通る隙間はさほど狭くならず、所要の冷却能力が保持される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前記特許文献1の冷却器では、フィンピッチを広げるために、フィンの欠如部を空気入口に設けることになり、好ましくない。
【0017】
さらに、冷却器全体で見ると着霜による通風路の目詰まり防止機能が十分に発揮されない。
【0018】
本発明は前記不都合を解消し、冷却器前面面積を拡大することで、冷却器前面の霜閉鎖が生じても冷気流れが阻害されないようにすることができる冷気循環式ショーケースの冷却器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、庫内の冷気循環通風路空間に配置した冷却器の配管に高圧側冷媒配管、膨張弁を通じて冷媒を供給し、該冷却器で熱交換した低温空気を庫内に循環送風して陳列商品を保冷する冷気循環式ショーケースで、端板とこの端板に間隔を存して並行に配置したフィンの間を蒸発コイルを蛇行するように配管し、上面を上板で閉塞して、流入側前面の流入口と流出側後面の流出口を有するものとして横置にしたフィンチューブ形蒸発コイルの冷却器において、前記流入側前面の流入口を拡大するものとして、冷却器の上側にフィンが存在しない空気流入開口を設けたことを要旨とするものである。
【0020】
請求項1記載の本発明によれば、冷却器の流入面が拡大されるものであり、その分、霜での閉鎖が少なくなる。特に、冷却器前面の流入面積を拡大するのに、冷却器前面上側にも空間を設け、冷気流れが冷却器フィンの前面だけでなく、上面の一部からも冷却器フィン間を通過できるようになる。
【0021】
請求項2記載の本発明は、フィンが存在しない空気流入開口は、左右の端板を前方が拡径する台形状とし、前方が拡径しない長方形フィンに対して、前端同士に上下幅の差があるものとし、その結果として、上板前端をフィン前端から上方に離間させて形成することを要旨とするものである。
【0022】
請求項2記載の本発明によれば、冷却器前面の流入面積を拡大するものとして冷却器前面上側にも空間を設けるのに、左右の端板の形状工夫を凝らすだけで、簡単に実現できる。
【0023】
請求項3記載の本発明は、フィンが存在しない空気流入開口は、長方形の場合に比してフィンの前端上側を切り欠き、前端同士に上下幅の差があるものとし、その結果として、左右の長方形の端板間に載せる上板前端からフィン前端を下方に離間させて形成することを要旨とするものである。
【0024】
請求項3記載の本発明によれば、冷却器前面の流入面積を拡大するものとして冷却器前面上側にも空間を設けるのに、フィンの形状に工夫を凝らすだけで、簡単に実現できる。
【0025】
請求項4記載の本発明は、フィンが存在しない空気流入開口は、長方形の場合に比してフィンの前端上側と下側を切り欠き、前端同士に上下幅の差があるものとし、左右の長方形の端板間に載せる上板前端からフィン前端を下方に離間させ、かつ左右の長方形の端板の下方に固定する底面前端からフィン前端を上方に離間させて形成することを要旨とするものである。
【0026】
請求項4記載の本発明によれば、冷却器前面の流入面積を拡大するものとして冷却器前面上側に加えて下側にも切欠を加えることで、フィンへの着霜防止が期待できる。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように本発明の冷気循環式ショーケースの冷却器は、冷却器前面面積を拡大することで、冷却器前面の霜閉鎖が生じてもフィン間への冷気流れが阻害されないで、庫内吹出し風速が維持できる。吹出し風速が維持できることにより、庫内冷却性能が除霜直前まで保たてる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の冷却器を備えた冷気循環式ショーケースの1実施形態を示す縦断側面図で、図2同上要部の説明図、図3は同上の斜視図である。
【0029】
平形オープンショーケースとしては、その基本構成は前記図5で説明した通りであり、同一構成要素には同一参照符号を付したが、図1に示すように、平形オープンショーケースとしては、上面開放形ケース本体の断熱筐体になる外箱1の内側に、内箱2を配置し、外箱1と内箱2の間を循環風路空間3として確保し、この循環風路空間3の一端を吸込口4、他の一端を送風口5として形成して、ケース本体の上面開放面に臨ませるものである。図中6は送風口5に配設する整流板を示す。
【0030】
内箱2の内側は庫内として、底部にベースデッキ7を配し、その上にすのこ8を配置して商品収納スペース9として形成する。
【0031】
また、前記循環風路空間3には、冷却器10を設置し、冷却器10の上流側に配置したファンプレナム11により、送風ファン12を支承した。
【0032】
外箱1の下部は機械室13となり、ここにアキュームレーター14、凝縮器15、圧縮器16、吸入管マフラー17等を配置する。
【0033】
前記冷却器10は、周知なように、冷却面積を大きくするためにフィンチューブ形の蒸発コイル21が一般に採用されており、図3に示すように、蒸発コイル21には高圧側冷媒配管24から膨張弁25を介して液冷媒を供給している。また、蒸発コイル21は端板22とこの端板22に間隔を存して並行に配置したフィン23の間を蛇行状(ジグザグ)するように配管される。
【0034】
また、蒸発コイル21は2系統に分けて配管され、各系統の蒸発コイル21が分岐ヘッダー26を介し低圧側冷媒配管27に接続される。
【0035】
図3に示すように、冷却器10は端板22とこの端板22に間隔を存して並行に配置したフィン23の上面を上板28で上面を覆い、閉塞して、フィン23が臨む流入口29は冷却器10の流入側側面に、流出口30は冷却器10の流入側側面に形成するものであるが、本発明は、このような冷却器10において、フィン23が存在しない空気流入開口αを前記流入側前面の流入口29を拡大するものとして上側に設けた。
【0036】
該空気流入開口αを形成するには、図2に示すように、前記左右の端板22は、前方が拡径する台形状とし、前方が拡径しない長方形フィン23に対して、
前端同士に上下幅の差があるものとし、その結果、上板28の前端28aをフィン23の前端23aから上方に離間させた。
【0037】
前記端板22の台形状は、前端側と後端側の寸法比は、およそ、1.10〜1.15:1とする。
【0038】
図4は本発明の第2実施形態を示すもので、前記フィン23が存在しない空気流入開口αは、長方形の場合に比してフィン23の前端上側に三角形状の切り欠き23bを形成し、長方形の場合に比して前端同士に上下幅の差があるものとし、その結果として、左右の長方形の端板22間に載せる上板28の前端28aからフィン23の前端23aを下方に離間させて形成する。
【0039】
フィン23の形状を寸法は、前端側:後端側寸法比はおよそ0.80〜0.90:1とし、前記三角形状の切り欠き23bは1/5〜1/3Dとなるようにした。
【0040】
このように、フィン23が存在しない空気流入開口αを設けて冷却器前面面積を拡大することで、冷却器前面の霜閉鎖が生じてもフィン間への冷気流れが阻害されないで、庫内吹出し風速が維持できる。吹出し風速が維持できることにより、庫内冷却性能が除霜直前まで保たてる。
さらに、前記フィン23については三角形状の切り欠きをフィン23の下側にも形成させれば、冷却器前面の下側の面積を拡大するのと同じ効果をもたらすこととなる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の冷却器を備えた冷気循環式ショーケースの1実施形態を示す縦断側面図である。
【図2】本発明の冷却器の第1実施形態を示す要部の説明図である。
【図3】本発明の冷却器の第1実施形態を示す斜視図である。
【図4】本発明の冷却器の第1実施形態を示す要部の説明図である。
【図5】平形オープンショーケースの全体構造を示す縦断側面図である。
【図6】従来例を示す冷却器の斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1 外箱 2 内箱
3 循環風路空間 4 吸込口
5 送風口 6 整流板
7 ベースデッキ 8 すのこ
9 商品収納スペース 10 冷却器(エバポレータ)
10a 蒸発コイル 10b 端板
10c フィン 11 ファンプレナム
12 送風ファン 13 機械室
14 アキュームレーター 15 凝縮器
16 圧縮器 17 吸入管マフラー
18 冷気エアーカーテン
21 蒸発コイル 22 端板
22a 前端 23 フィン
23a 前端 23b 切り欠き
24 高圧側冷媒配管
25 膨張弁 26 分岐ヘッダー
27 低圧側冷媒配管 28 上板
28a 前端
29 流入口 30 流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
庫内の冷気循環通風路空間に配置した冷却器の配管に高圧側冷媒配管、膨張弁を通じて冷媒を供給し、該冷却器で熱交換した低温空気を庫内に循環送風して陳列商品を保冷する冷気循環式ショーケースで、
端板とこの端板に間隔を存して並行に配置したフィンの間を蒸発コイルを蛇行するように配管し、上面を上板で閉塞して、流入側前面の流入口と流出側後面の流出口を有するものとして横置にしたフィンチューブ形蒸発コイルの冷却器において、
前記流入側前面の流入口を拡大するものとして、冷却器の上側にフィンが存在しない空気流入開口を設けたことを特徴とする冷気循環式ショーケースの冷却器。
【請求項2】
フィンが存在しない空気流入開口は、左右の端板を前方が拡径する台形状とし、前方が拡径しない長方形フィンに対して、前端同士に上下幅の差があるものとし、その結果として、上板前端をフィン前端から上方に離間させて形成する請求項1記載の冷気循環式ショーケースの冷却器。
【請求項3】
フィンが存在しない空気流入開口は、長方形の場合に比してフィンの前端上側を切り欠き、前端同士に上下幅の差があるものとし、その結果として、左右の長方形の端板間に載せる上板前端からフィン前端を下方に離間させて形成する請求項1記載の冷気循環式ショーケースの冷却器。
【請求項4】
フィンが存在しない空気流入開口は、長方形の場合に比してフィンの前端上側と下側を切り欠き、前端同士に上下幅の差があるものとし、左右の長方形の端板間に載せる上板前端からフィン前端を下方に離間させ、かつ左右の長方形の端板の下方に固定する底面前端からフィン前端を上方に離間させて形成する請求項1または請求項3記載の冷気循環式ショーケースの冷却器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−102972(P2012−102972A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253735(P2010−253735)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(510146137)三菱電機冷熱応用システム株式会社 (33)