説明

冷菓製造装置

【課題】シリンダから冷菓をスムーズに排出することによって、シリンダの内圧の上昇を抑制することができるとともに、滞留やコンタミネーションをなくすことができる冷菓製造装置を提供すること。
【解決手段】冷菓排出ヘッダ5の冷菓排出口50を、冷菓排出口50の先端側の側縁50aを規定する端面板52の内平面5Bを包含する面S1と、冷菓排出口50の攪拌手段20の回転方向Rに対する上流側の縁50cを規定する円筒体51の内周面5Aの接線Lを包含する面S3とによって規定される形状で、円筒体51の内周面5Aの最低位置Pを含み、かつ、接線Lの内周面5Aとの接点Dから攪拌手段20の回転方向Rで水平又は下方に向けて開口するように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷菓製造装置に関するものであって、特に、冷菓製造装置のシリンダから冷菓をスムーズに排出することによって、シリンダの内圧の上昇を抑制することができるとともに、滞留やコンタミネーションをなくすることができるようにした冷菓製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷菓製造装置として、図7に示すように、基端側に冷菓原料が供給される原料供給ヘッダ4を、先端側に冷菓を排出する冷菓排出口63を形成した冷菓排出ヘッダ61をそれぞれ設けたシリンダ2と、このシリンダ2の外表面2Aを冷却する冷却手段3と、シリンダ2内で回転駆動することにより、シリンダ2の内表面2Bに氷着する冷菓原料を掻き取りながら攪拌する攪拌手段20とから構成される冷菓製造装置60が提案され、実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この冷菓製造装置60の冷菓排出ヘッダ61は、シリンダ2の先端側の開口端部を覆う、冷菓排出口63を開口した円盤状の端面板62と、冷菓排出口63に接続される冷菓排出管64とからなり、シリンダ2内で冷菓原料を冷却して攪拌することによって製造された冷菓は、原料供給ヘッダ4の原料供給口40から連続して供給される冷菓原料によって、冷菓排出ヘッダ61に向けて押圧されながら、シリンダ2の軸心(攪拌手段20の駆動軸23)の方向と平行に冷菓排出ヘッダ61に向けて移動し、冷菓排出ヘッダ61に形成された冷菓排出口63を介して冷菓排出管64から排出され次工程に送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−169096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の冷菓製造装置60の冷菓排出ヘッダ61の冷菓排出口63の開口部は、冷菓排出ヘッダ61の最低位置付近の端面板62に開口するようにしている。
このため、シリンダ2内で回転駆動する攪拌手段20によって、シリンダ2内を周回しながらシリンダ2の軸心方向に移動する冷菓は、図8に示すように、その一部が冷菓排出ヘッダ61近傍のシリンダ2の上方位置Cに滞留しやすく、冷菓排出口63からスムーズに排出されず、シリンダ2の内圧が上昇することとなる。
【0006】
ところで、シリンダ2の内圧が上昇すると、シリンダ2内での冷菓原料に攪拌手段20から過度な衝撃や攪拌作用が加えられることとなり、冷菓原料内に含まれる成分のうち、脂肪球が結集してバター状になる、所謂、チャーニングが発生することとなる。
一般に、冷菓には、すっきりした食感が求められることから、濃厚な食感が求められる場合を除き、冷菓の製造中に冷菓原料にチャーニングが発生することは好ましくない。
【0007】
また、冷菓排出ヘッダ61における冷菓の滞留は、コンタミネーションを起こしやすいことからも好ましくない。
【0008】
本発明は、上記従来の冷菓製造装置が有する問題点に鑑み、シリンダから冷菓をスムーズに排出することによって、シリンダの内圧の上昇を抑制することができるとともに、滞留やコンタミネーションをなくすことができる冷菓製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の冷菓製造装置は、基端側に冷菓原料が供給される原料供給ヘッダを、先端側に冷菓を排出する冷菓排出口を形成した冷菓排出ヘッダをそれぞれ設けたシリンダと、該シリンダの外表面を冷却する冷却手段と、前記シリンダ内で回転駆動することにより、シリンダの内表面に氷着する冷菓原料を掻き取りながら攪拌する攪拌手段とを備えてなる冷菓製造装置において、冷菓排出ヘッダが、前記冷菓排出口を形成した円筒形状の円筒体と、その先端側を覆う端面板を有して形成され、前記冷菓排出口が、該冷菓排出口の先端側の側縁を規定する前記端面板の内平面を包含する面と、冷菓排出口の前記攪拌手段の回転方向に対する上流側の縁を規定する前記円筒体の内周面の接線を包含する面とによって規定される形状で、前記円筒体の内周面の最低位置を含み、かつ、前記接線の内周面との接点から前記攪拌手段の回転方向で水平又は下方に向けて開口するように形成され、前記冷菓排出口の開口方向に連続するように冷菓排出管が接続されてなることを特徴とする。
この冷菓製造装置は、冷菓排出口を、冷菓排出ヘッダの円筒体の内周面の最低位置を含み、かつ、攪拌手段の回転方向で水平又は下方に向けて開口するとともに、冷菓排出口の先端側の側縁を端面板の内平面を包含する面により規定することによって、冷菓が冷菓排出ヘッダの最奥部となる端面板に接する箇所で滞留することを防止しながら、冷菓排出口の攪拌手段の回転方向に対する上流側の縁を円筒体の内周面の接線を包含する面により規定することによって、冷菓をスムーズに排出することができる。
【0010】
この場合において、前記冷菓排出口が、さらに、該冷菓排出口の基端側の側縁を規定する前記先端側の側縁を規定する前記端面板の内平面を包含する面に対して平行な面と、冷菓排出口の前記攪拌手段の回転方向に対する下流側の縁を規定する前記上流側の縁を規定する前記円筒体の内周面の接線を包含する面に対して平行な面とによって規定される形状からなるようにすることができる。
これによって、冷菓排出ヘッダに形成する排出口を矩形形状とすることができる。
【0011】
また、前記攪拌手段の冷菓排出ヘッダの位置に、前記冷菓排出ヘッダ内の冷菓を冷菓排出口に向けて掻き出す掻出羽根を配設することができる。
掻出羽根によって、冷菓排出ヘッダ内の冷菓を冷菓排出口に向けて掻き出すことができる。
【0012】
冷菓排出管の横断面形状を、断面積が略一定で、先端側が円形になるように漸次変形させることができる。
これによって、製造した冷菓を冷菓排出管から次工程にスムーズに送ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の冷菓製造装置によれば、冷菓排出口を、冷菓排出ヘッダの円筒体の内周面の最低位置を含み、かつ、攪拌手段の回転方向で水平又は下方に向けて開口するとともに、冷菓排出口の先端側の側縁を端面板の内平面を包含する面により規定することによって、基端側から先端側に向けてシリンダ内を移動し冷菓排出ヘッダ内に到達した冷菓が、冷菓排出ヘッダの最奥部となる端面板の内平面に沿ってスムーズに冷菓排出口に導かれ、端面板の内平面や円筒体の内周面の最低位置の箇所で滞留することを防止することができる。さらに、冷菓排出口の攪拌手段の回転方向に対する上流側の縁を円筒体の内周面の接線を包含する面により規定することによって、冷菓を回転方向の流動成分を利用してスムーズに排出することができる。
これによって、シリンダの内圧の上昇を抑制して、チャーニングの発生を防止することができるとともに、冷菓排出ヘッダの位置での滞留やコンタミネーションをなくすことができる。
【0014】
また、前記冷菓排出口が、さらに、該冷菓排出口の基端側の側縁を規定する前記先端側の側縁を規定する前記端面板の内平面を包含する面に対して平行な面と、冷菓排出口の前記攪拌手段の回転方向に対する下流側の縁を規定する前記上流側の縁を規定する前記円筒体の内周面の接線を包含する面に対して平行な面とによって規定される形状からなるようにすることにより、円筒状に形成した冷菓排出ヘッダの内周面に開口する排出口を矩形形状とし、排出口を容易に形成することができ、冷菓排出ヘッダの製造コストの低廉化を図ることができる。
【0015】
また、前記攪拌手段の冷菓排出ヘッダの位置に、前記冷菓排出ヘッダ内の冷菓を冷菓排出口に向けて掻き出す掻出羽根を配設することにより、冷菓排出ヘッダ内に冷菓を滞留させることなく、冷菓排出口に向けて掻き出し、冷菓をスムーズに排出し、シリンダの内圧の上昇をさらに有効に抑制することができる。
【0016】
また、冷菓排出管の横断面形状を、断面積が略一定で、先端側が円形になるように漸次変形させることにより、製造した冷菓を冷菓排出管から次工程に均一な流速でスムーズに送ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の冷菓製造装置の一実施例を示す一部切り欠き断面の正面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】同装置の冷菓排出ヘッダを示し、(a)は一部切り欠き断面の正面図、(b)は(a)のY−Y断面図、(c)は冷菓排出管の流路を説明する斜視図である。
【図4】冷菓排出口の開口位置を変えた冷菓排出ヘッダ側から見た側面図である。
【図5】同装置の攪拌手段に掻出羽根を配設した例を示し、(a)は一部切り欠き断面の側面図、(b)は(a)のZ−Z断面図である。
【図6】攪拌筒に配設するスクレーパの正面図である。
【図7】従来の冷菓製造装置を示す一部切り欠き断面の正面図である。
【図8】同装置の冷菓排出ヘッダ付近での冷菓の流れを説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の冷菓製造装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1〜図6に、本発明の冷菓製造装置の一実施例を示す。
この冷菓製造装置1は、基端側に冷菓原料が供給される原料供給ヘッダ4を、先端側に冷菓を排出する冷菓排出口50を形成した冷菓排出ヘッダ5をそれぞれ設けたシリンダ2と、シリンダ2の外表面2Aを冷却する冷却手段3と、シリンダ2内で回転駆動することにより、シリンダ2の内表面2Bに氷着する冷菓原料を掻き取りながら攪拌する攪拌手段20とを備え、冷菓排出ヘッダ5が、冷菓排出口50を形成した円筒形状の円筒体51と、その先端側を覆う端面板52を有して形成され、冷菓排出口50が、冷菓排出口50の先端側の側縁50aを規定する端面板52の内平面5Bを包含する面S1と、冷菓排出口50の攪拌手段20の回転方向Rに対する上流側の縁50cを規定する円筒体51の内周面5Aの接線Lを包含する面S3とによって規定される形状で、円筒体51の内周面5Aの最低位置Pを含み、かつ、接線Lの内周面5Aとの接点Dから攪拌手段20の回転方向で水平又は下方に向けて開口するように形成され、冷菓排出口50の開口方向に連続するように冷菓排出管55が接続されるようにしている。
ここで、「攪拌手段20の回転方向Rに対する上流側」とは、冷菓排出口50を基準としたもので、例えば、図3(a)において、左側を意味する。
【0020】
そして、冷菓排出ヘッダ5の円筒体51に形成する冷菓排出口50の形状を規定する各縁は、上記面S1、S3によって規定される、冷菓排出口50の先端側の側縁50a及び冷菓排出口50の攪拌手段20の回転方向Rに対する上流側の縁50cを有する限りにおいて、特に限定されるものではないが、本実施例においては、図3に示すように、冷菓排出口50の基端側の側縁50bを規定する先端側の側縁50aを規定する端面板52の内平面5Bを包含する面S1に対して平行な面S2と、冷菓排出口50の攪拌手段20の回転方向に対する下流側の縁50dを規定する上流側の縁50cを規定する円筒体51の内周面5Aの接線Lを包含する面S3に対して平行な面S4とによって規定される形状、すなわち、冷菓排出口50の形状が矩形形状となるようにしている。
これによって、冷菓排出ヘッダ5に開口する冷菓排出口50を容易に形成することができ、冷菓排出ヘッダ5の製造コストの低廉化を図ることができる。
なお、基端側の側縁50bは、上記面S1に対して平行に設定した面S2によって規定される鉛直状のもののほか、傾斜した直線状や曲線状(この場合、冷菓排出口50の攪拌手段20の回転方向Rに対する下流側の開口面積が、小さくならないようにすることが望ましい。)等に設定することができる。
また、下流側の縁50dは、上記面S3に対して平行に設定した面S4によって規定される直線状のもののほか、傾斜した直線状、三角状(この場合、冷菓排出口50は五角形となる。)、半円形等の曲線状等に設定することができる。
【0021】
シリンダ2の基端側に設けられる原料供給ヘッダ4は、シリンダ2の開口端部を覆う円盤状の端面板42からなり、端面板42には、原料供給口40を開口するとともに、中心にシリンダ2内で回転駆動する攪拌手段20の駆動軸23を支持する軸受部43を備えている。
原料供給口40から供給される冷菓原料、例えば、アイスクリームの原料は、原料供給ポンプ(図示省略)によって、例えば、0.2〜0.4MPaの圧力で供給される。
【0022】
シリンダ2の先端側に設けられる冷菓排出ヘッダ5は、冷菓排出口50を形成した円筒形状の円筒体51と、その先端側を覆う端面板52を有して形成されており、端面板52には、攪拌手段20を支持する支持部53と、シリンダ2内に溜まる空気を外部に排出するために間歇的に開閉する開閉バルブ(図示省略)を接続した空気排出口54を備えている。
支持部53は、角穴状に形成され、攪拌手段20内に固定される三角ロータ22から延出される軸端の角柱形状に形成された先端部分が嵌入され固定されている。
【0023】
冷却手段3は、シリンダ2の外表面2Aを冷却することによって、シリンダ2の内表面2Bに接する冷菓原料を冷却することができるものであれば、その構成は特に限定されるものではないが、本実施例においては、シリンダ2の外表面2Aを覆う筒状部材30で構成するようにしている。
【0024】
筒状部材30は、下部に冷媒導入口31を、上部に冷媒排出口32を配設する。
冷却方式は、特に限定されるものではないが、本実施例においては、直接膨張満液式を採用し、冷媒導入口31から導入される冷媒の蒸発によって直接シリンダ2の外表面2Aを冷却するようにしている。
そして、冷媒の蒸発で、外表面2Aを均一に冷却するために、筒状部材30の軸心を、シリンダ2の軸心よりも上方に位置させ(上方に偏心させ)、シリンダ2の外表面2Aと筒状部材30の内表面によって仕切られる冷却空間を、下方より上方の体積が大きくなるようにしている。
これによって、冷媒の蒸発に伴う膨張が、冷却空間全体で均一に行われ、シリンダ2の外表面2Aの全体を均一に冷却することができる。
【0025】
なお、冷却手段3はシリンダ2の外表面2Aを、間接的に冷却、例えば、冷媒が通過する細い銅管等からなる冷却管をシリンダ2の外表面2Aに巻き付けるようにして構成することもできる。
【0026】
シリンダ2内で回転駆動する攪拌手段20は、原料供給ヘッダ4側で、駆動軸23の回転駆動が伝達されて回転する攪拌筒21と、攪拌筒21内で、攪拌筒21の内周面に摺接して固定される三角ロータ22と、攪拌筒21の外表面に配設され、シリンダ2の内表面2Bに氷着する冷菓原料を掻き取るスクレーパ21Aとからなる。
三角ロータ22の冷菓排出ヘッダ5側の軸端部は、上記のとおり、角柱形状に形成され、冷菓排出ヘッダ5の端面板52に形成される角穴状の支持部53に嵌入されて固定されており、原料供給ヘッダ4側の端部は、駆動軸23の軸端部にベアリング等の軸受を介して嵌入し、駆動軸23によって支持されている。
攪拌筒21と駆動軸23との連結方法は、駆動軸23の回転駆動が伝達されるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、駆動軸23の先端にスプラインG1を形成した円盤を嵌入して固定し、攪拌筒21の内周面にスプライン軸受G2を形成し、スプラインG1とスプライン軸受G2とを噛合させることによって、駆動軸23の回転駆動を攪拌筒21に伝達するように構成することができる。
また、攪拌筒21の冷菓排出ヘッダ5側の端部は、三角ロータ22から延出される軸端の円柱部分に軸受を介して回転可能に支持されている。
なお、本実施例においては、駆動軸23を、原料供給ヘッダ4側から攪拌筒21に連結する例をもって説明したが、冷菓排出ヘッダ5側から攪拌筒21に連結することもでき、この場合、原料供給ヘッダ4の軸受部43と冷菓排出ヘッダ5の支持部53とが入れ替わって構成される。
【0027】
ここで、攪拌筒21は、原料供給ヘッダ4を介してシリンダ2内に供給された冷菓原料を攪拌しながら、かつ、冷却手段3によって冷却されてシリンダ2の内表面2Bに氷着した冷菓原料をスクレーパ21Aで掻き取りながら回転する。
スクレーパ21Aで掻き取った冷菓原料は、攪拌筒21の内部に連通するように攪拌筒21の外表面に開口された流通窓21Bを通って攪拌筒21内に移動し、攪拌筒21の内周面と三角ロータ22の外表面で形成される空間で攪拌及び混練され、攪拌手段20の回転に伴ってこの空間に出現する、攪拌手段20の回転方向Rの下流側の流通窓21Bから再び攪拌筒21の外表面とシリンダ2の内表面2Bとで仕切られる空間に移動し、内表面2Bに接触することで、再び冷却される。これによって、内表面2Bに氷着した冷菓原料は、スクレーパ21Aによって掻き取られ、係る動作が繰り返される(図2に示す、実線矢印Aの流れ)。
そして、冷却と攪拌が繰り返される冷菓原料は、原料供給ヘッダ4から連続して供給される冷菓原料によって、冷菓排出ヘッダ5に向けて押圧されながら移動する。
【0028】
シリンダ2の内表面2Bに氷着した冷菓原料を掻き取るスクレーパ21Aは、図6に示すように、切り欠き部分Kを設け、攪拌筒21に取り付けた状態で、攪拌筒21の外表面とスクレーパ21Aとの間に、切り欠き部分Kによって隙間を生じさせ、掻き取った冷菓原料及び攪拌筒21の外表面とシリンダ2の内表面2Bとで仕切られる空間を流れる冷菓原料の一部を、切り欠き部分Kによって形成した隙間を介して、攪拌手段20の回転方向Rの上流側に流通(図2に示す、破線矢印Bの流れ)させるようにしている。
これによって、攪拌する冷菓原料に、攪拌手段20から過度な衝撃や攪拌作用が加えられることを抑制し、チャーニングの発生を防止することができる。
【0029】
そして、この冷菓製造装置1は、冷菓排出口が端面板52に開口される従来の冷菓製造装置と異なり、冷菓排出口50を、冷菓排出ヘッダ5の円筒体51の内周面5Aの最低位置Pを含み、かつ、攪拌手段20の回転方向Rで水平又は下方に向けて開口するとともに、冷菓排出口50の先端側の側縁50aを端面板52の内平面5Bを包含する面S1により規定することによって、基端側から先端側に向けてシリンダ2内を移動し冷菓排出ヘッダ5内に到達した冷菓が、冷菓排出ヘッダ5の最奥部となる端面板52の内平面5Bに沿ってスムーズに冷菓排出口50に導かれ、端面板52の内平面5Bや円筒体51の内周面5Aの最低位置Pの箇所で滞留することを防止することができる。さらに、冷菓排出口50の攪拌手段20の回転方向Rに対する上流側の縁50cを円筒体51の内周面5Aの接線Lを包含する面S3により規定することによって、冷菓を回転方向の流動成分を利用してスムーズに排出することができる。
このとき、図4に示すように、冷菓排出ヘッダ5の円筒体51の内周面5Aの最低位置Pが、攪拌手段20の回転方向Rに対する上流側の縁50cと、攪拌手段20の回転方向Rに対する下流側の縁50dとの間に位置するように冷菓排出ヘッダ5をシリンダ2に取り付けるときは、製造された冷菓は自重によっても冷菓排出管55に送られることとなり、よりスムーズに排出される。
【0030】
また、冷菓排出管55を冷菓排出ヘッダ5の内周面5Aの接線Lを包含する面S3に対して直交する面で切断したときの冷菓排出管55の流路の横断面の面積は一定となるようにしている。
具体的には、図3(c)に示すように、横断面の面積A1(矩形形状の面積)から面積A2(円形状の面積)までが略一定で、先端側が円形になるように漸次変形させるようにしている。
これによって、製造した冷菓を冷菓排出管55から次工程に均一な流速でスムーズに送ることができる。
【0031】
また、攪拌手段20の冷菓排出ヘッダ5の位置に、冷菓排出ヘッダ5内の冷菓を冷菓排出口50に向けて掻き出す掻出羽根24を配設することができる。
掻出羽根24は、図5に示すように、冷菓排出ヘッダ5の端面板52の内平面5B、内周面5A及び攪拌手段20を支持する支持部53の外周面で区画される環状空間内に位置するように、攪拌手段20の攪拌筒21の冷菓排出ヘッダ5側の端部に配設される。
掻出羽根24の配設数は、特に限定されるものではないが、本実施例においては、周上180°の間隔で、2枚配設するようにしている。
【0032】
これによって、冷菓排出ヘッダ5の環状空間内、特に、最低位置Pから離れた最高位置付近に送られる冷菓を冷菓排出口50に向けて効果的に掻き出し、シリンダ2の内圧が上昇することを抑制することができ、シリンダ2内での冷菓原料に攪拌手段20から過度な衝撃や攪拌作用が加えられることを抑制し、チャーニングの発生を防止して高品質な冷菓の製造をすることができる。
【0033】
次に、この冷菓製造装置1の運転手順を説明する。
まず、原料供給ヘッダ4の原料供給管41に接続される原料供給ポンプ(図示省略)から原料供給ヘッダ4に開口する原料供給口40を介してシリンダ2内に冷菓原料を、例えば、0.2〜0.4MPa圧力で供給する。
【0034】
そして、シリンダ2の外表面2Aを冷却する冷却手段3の運転を開始するとともに、シリンダ2内の攪拌手段20の運転を開始する。
供給される冷菓原料は、冷却手段3によって冷却され、シリンダ2の内表面2Bに氷着し、攪拌手段20のスクレーパ21Aによって、シリンダ2の内表面2Bから掻き取られ、攪拌筒21と三角ロータ22とによって攪拌されながら、冷菓排出ヘッダ5に向かって移動する。
【0035】
冷菓排出ヘッダ5に到達した冷菓は、上記のように、冷菓排出ヘッダ5の最奥部となる端面板52の内平面5Bに沿ってスムーズに冷菓排出口50に導かれ、端面板52の内平面5Bや円筒体51の内周面5Aの最低位置Pの箇所で滞留することなく、冷菓排出口50からスムーズに排出される。
これにより、シリンダ2の内圧の上昇を抑制し、チャーニングの発生を防止することができる。
このとき、攪拌手段20の攪拌筒21に掻出羽根24を配設することにより、冷菓排出ヘッダ5に到達した冷菓は、冷菓排出ヘッダ5で滞留することなくスムーズに冷菓排出口50に向かって掻き出され、シリンダ2の内圧の上昇をさらに有効に抑制し、チャーニングの発生を防止することができる。
【0036】
以上、本発明の冷菓製造装置について、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の冷菓製造装置は、シリンダから冷菓をスムーズに排出することによって、シリンダの内圧の上昇を抑制することができるとともに、滞留やコンタミネーションをなくすことができるという特性を有していることから、アイスクリーム等の各種冷菓を製造する冷菓製造装置の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 冷菓製造装置
2 シリンダ
2A 外表面
2B 内表面
20 攪拌手段
24 掻出羽根
3 冷却手段
4 原料供給ヘッダ
40 原料供給口
5 冷菓排出ヘッダ
50 冷菓排出口
50a 先端側の側縁
50b 基端側の側縁
50c 上流側の縁
50d 下流側の縁
51 円筒体
5A 円筒体の内周面
52 端面板
5B 端面板の内平面
55 冷菓排出管
D 接点
L 接線
P 最低位置
R 攪拌手段の回転方向
S1 面
S2 面
S3 面
S4 面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側に冷菓原料が供給される原料供給ヘッダを、先端側に冷菓を排出する冷菓排出口を形成した冷菓排出ヘッダをそれぞれ設けたシリンダと、該シリンダの外表面を冷却する冷却手段と、前記シリンダ内で回転駆動することにより、シリンダの内表面に氷着する冷菓原料を掻き取りながら攪拌する攪拌手段とを備えてなる冷菓製造装置において、冷菓排出ヘッダが、前記冷菓排出口を形成した円筒形状の円筒体と、その先端側を覆う端面板を有して形成され、前記冷菓排出口が、該冷菓排出口の先端側の側縁を規定する前記端面板の内平面を包含する面と、冷菓排出口の前記攪拌手段の回転方向に対する上流側の縁を規定する前記円筒体の内周面の接線を包含する面とによって規定される形状で、前記円筒体の内周面の最低位置を含み、かつ、前記接線の内周面との接点から前記攪拌手段の回転方向で水平又は下方に向けて開口するように形成され、前記冷菓排出口の開口方向に連続するように冷菓排出管が接続されてなることを特徴とする冷菓製造装置。
【請求項2】
前記冷菓排出口が、さらに、該冷菓排出口の基端側の側縁を規定する前記先端側の側縁を規定する前記端面板の内平面を包含する面に対して平行な面と、冷菓排出口の前記攪拌手段の回転方向に対する下流側の縁を規定する前記上流側の縁を規定する前記円筒体の内周面の接線を包含する面に対して平行な面とによって規定される形状からなることを特徴とする請求項1記載の冷菓製造装置。
【請求項3】
前記攪拌手段の冷菓排出ヘッダの位置に、前記冷菓排出ヘッダ内の冷菓を冷菓排出口に向けて掻き出す掻出羽根を配設したこと特徴とする請求項1又は2記載の冷菓製造装置。
【請求項4】
冷菓排出管の横断面形状を、断面積が略一定で、先端側が円形になるように漸次変形させてなることを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷菓製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−55176(P2012−55176A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198694(P2010−198694)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000127237)株式会社イズミフードマシナリ (53)
【Fターム(参考)】