冷蔵庫
【課題】青果物の栄養分の中でも特に食味に大きな影響を及ぼす甘味成分を、効率的に省エネルギーで増加または維持することが可能な冷蔵庫を提供する。
【解決手段】冷蔵庫1は、青果物を収容するための野菜室101と、野菜室101内の温度を制御するための温度制御ユニット151とを備え、温度制御ユニット151は、野菜室101に収容される青果物の生育期に応じて野菜室101の温度を制御するように構成されている。
【解決手段】冷蔵庫1は、青果物を収容するための野菜室101と、野菜室101内の温度を制御するための温度制御ユニット151とを備え、温度制御ユニット151は、野菜室101に収容される青果物の生育期に応じて野菜室101の温度を制御するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には冷蔵庫に関し、特定的には、家庭用の冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜や果実等の作物を低温に貯蔵することによって、作物の呼吸や酵素活性などの代謝を抑え、作物の保存中に作物中から栄養分が減少することを防ぐ方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、従来の方法は、作物中の栄養分が減少することを抑えるにとどまり、作物中の栄養分を積極的に増加させる方法ではなかった。
【0004】
そこで、作物中の栄養分を積極的に増加させる方法としては、例えば、特開2001−275606号公報(特許文献1)には、いも類を低温条件下で保存することによって、低温ストレスを与え、いも類のアスコルビン酸を増加する方法が提案されている。
【0005】
また、特開平7−115952号公報(特許文献2)には、呼吸をしている食品類の生体に、0℃以下の低温帯下で乾燥や加水等のストレスを付与して旨みを向上させる方法が記載されている。
【特許文献1】特開2001−275606号公報
【特許文献2】特開平7−115952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2001−275606号公報(特許文献1)や、特開平7−115952号公報(特許文献2)に記載の方法では、時期に関係なく、所定の低温度下でいも類などの食品類を保存している。青果物が低温ストレスを感じる温度は、その青果物がさらされてきた温度環境に依存する。例えば、食品類を保存する温度を0℃とした場合、夏に27℃の外気温度下で生育された食品類は、栄養分を増加させるための低温ストレスを受ける温度としては、発明者の知見によれば、十分すぎる低温度で保存されていることになる。一方、冬に0℃の外気温度下で生育された食品類であれば、0℃で保存することによってはじめて、低温をストレスと感じて、栄養分が増加させられる。このように、低温で保存しても、季節によっては、発明者の知見によれば十分すぎる低温ストレスを与えていることが、これまでの事例ではしばしば見られていた。
【0007】
低温ストレスによって青果物中の栄養分を増加させるために、青果物の保存温度をきわめて低温に維持することにより、どのような環境下で生育した青果物であっても、栄養分を増加させることが可能となる。しかしながら、一方で、青果物の生育環境に無関係に青果物に過剰な低温ストレスを与えて栄養分を増加させることは、栄養分の増加という目的のために余分なエネルギーを投入することになる。民生用の冷蔵庫にこの機能を展開するためには、省エネルギーの点できわめて問題であった。
【0008】
そこで、この発明の目的は、青果物の栄養分の中でも特に食味に大きな影響を及ぼす甘味成分を、効率的に省エネルギーで増加または維持することが可能な冷蔵庫を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従った冷蔵庫は、青果物を収容するための野菜室と、野菜室内の温度を制御するための温度制御手段とを備え、温度制御手段は、野菜室に収容される青果物の生育期に応じて野菜室の温度を制御するように構成されている。
【0010】
青果物は、低温で保存されることによって、低温ストレスを受ける。低温ストレスを受けた青果物においては、青果物中の水分が凍結されないように、防御反応が引き起こされる。この防御反応としては、例えば、タンパク質分解酵素や糖分解酵素、糖の合成酵素が発現される。低温ストレスに対する防御反応としてどのような酵素が発現されるかということは、青果物の種類や品種に依存する。タンパク質分解酵素が発現された場合には、青果物中のタンパク質が分解されてアミノ酸になり、青果物中のアミノ酸量が増加する。水溶性のアミノ酸量が増加することによって、青果物中の水分は、凝固点降下によって凍結しにくくなる。また、糖分解酵素のインベルターゼが発現された場合には、青果物中においては、二糖類であるスクロースが単糖類であるフルクトースとグルコースに分解される。フルクトースとグルコースは青果物中の水分に溶解し、青果物中の水分の凝固点を下げて、青果物を凍結しにくくする。このようにして、青果物は、低温ストレスに対する防御反応としてタンパク質分解酵素や糖分解酵素を発現させ、青果物中の低分子量の物質を増加させて、青果物中の水分の凝固点降下によって、凍結から身を守る備えをする。
【0011】
このように、低温ストレスに対する青果物の防御反応によって、青果物中にはアミノ酸や糖類が増加する。アミノ酸には、旨みを感じさせる旨み成分や、甘味を感じさせる甘味成分として知られているものがある。また、糖類は、甘味を感じさせる。そこで、青果物に低温ストレスを加えて、低温に対する青果物の防御反応を引き起こすことによって、青果物の旨みや甘味を増すことができる。
【0012】
しかしながら、例えば夏に栽培され、比較的高い温度下で生育された青果物と、冬に栽培され、比較的低い温度下で生育された青果物とは、同じ低温に対しても、低温ストレスの感度が異なる。例えば、一般的には低温とみなされないような7℃程度の温度であっても、比較的高温度下で生育された青果物には低温ストレスと感じられ、旨みや甘味成分が増加させられる。一方、比較的低温下で生育された青果物では、一般的に低温と感じられるような0℃〜−1℃に置かれることによってはじめて低温ストレスと感じられ、旨みや甘味成分を増加させる。
【0013】
本願の発明者らは、青果物中に増加するアミノ酸や糖類の量、特に、甘味成分に関連するアミノ酸や糖類の量が、青果物が保存される温度ではなく、青果物が生育された温度と保存される温度との差に依存することを見出した。
【0014】
また、本願の発明者らは、青果物が保存中に受ける低温ストレスの大きさは、生育された温度と保存される温度との差が大きいほど大きくなり、すなわち、青果物が低温ストレスと感じる温度の臨界点は、青果物が生育された温度に依存することを見出した。
【0015】
例えば、夏に27℃の外気温度下で生育された青果物は、7℃程度の温度で保存されても低温ストレスを受ける。一方、冬に5℃以下の外気温度下で生育された青果物は、7℃程度の温度では、低温ストレスを受けない。青果物の種類が同じであっても、生育期の温度が異なれば、青果物が低温ストレスを受けて防御反応が引き起こされる臨界温度が異なる。
【0016】
このように、低温ストレスを受けるかどうかの臨界温度は生育期の温度によって異なることが見出された。しかし、低温ストレスの強さは、保存温度が低ければ低いほど強くなると考えられるので、低温ストレスによって青果物中に発現される酵素の量は、青果物を保存する温度が低い方が多くなると考えられる。
【0017】
一方で、低温ストレスによって青果物中に発現された酵素には、最適温度があり、冷蔵庫の野菜室内の温度範囲内では、温度が低いと酵素活性が低くなる。酵素活性が低ければ、低温ストレスによって酵素が発現されたとしても、酵素はタンパク質や多糖類を分解しにくくなるので、青果物中にアミノ酸や糖類が増加しにくくなる。
【0018】
このように、青果物中の酵素活性の大きさは、冷蔵庫の野菜室の温度範囲内では、青果物を保存する温度が高い方が大きくなると考えられる。
【0019】
すなわち、低温で保存することによって増加する青果物中のアミノ酸や糖類の量は、低温ストレスの大きさによって決まるタンパク質分解酵素や糖分解酵素の量と、温度によって決まるこれらの酵素の酵素活性の大きさとの両方に依存する。
【0020】
例えば、冬に5℃の外気温度下で生育された青果物は、7℃で保存されても低温ストレスを受けないが、−1℃で保存されることによって低温ストレスを受け、酵素が発現され、青果物中のアミノ酸や糖類が増加する。一方、夏に27℃の外気温度下で生育された青果物は、7℃で保存されても十分に低温ストレスを受けて酵素を発現させ、アミノ酸や糖類が増加する。夏に生育された青果物を、さらに低い−1℃で保存すると、発現される酵素量が増えても酵素活性が低く、タンパク質や多糖類が分解されないので、アミノ酸や糖類が増加しにくくなる。
【0021】
また、青果物の代謝によって、青果物中に生成された糖やアミノ酸が青果物自体によって消費される。例えば、冬に5℃以下の外気温度下で生育された青果物は、7℃程度の温度では、低温ストレスを受けず、むしろ生育温度よりも保存温度の方が高いので、代謝が進み、青果物中の旨み成分、甘味成分であるアミノ酸や糖類が代謝によって消費されてしまう。
【0022】
青果物中のアミノ酸や糖の量の総量は、低温ストレスに対する防御反応として生成されたアミノ酸や糖の量と、代謝によって消費されるアミノ酸や糖の量の差である。
【0023】
本願の発明者らが見出した、青果物中に増加するアミノ酸や糖類の量が、青果物が保存される温度ではなく、青果物が生育された温度と、保存される温度との差に依存することは、上述のような理由によると考えられる。この発明は、このような発明者の知見に基づいてなされたものである。
【0024】
そこで、この発明においては、冷蔵庫が、青果物を収容するための野菜室と、野菜室内の温度を制御するための温度制御手段とを備え、温度制御手段は、野菜室に収容される青果物の生育期に応じて野菜室の温度を制御するように構成されていることにより、青果物中の旨みや甘味成分を効果的に増加させることができる。
【0025】
また、青果物の生育温度によって保存温度を変えることにより、冷蔵庫の野菜室を不要に低温にする必要がないので、省エネルギーにも効果がある。
【0026】
このようにすることにより、青果物の栄養分の中でも特に食味に大きな影響を及ぼす甘味成分を、効率的に省エネルギーで増加または維持することが可能な冷蔵庫を提供することができる。
【0027】
この発明に従った冷蔵庫は、現在の日付を認識するための日付認識手段を備え、温度制御手段は、日付認識手段によって認識された日付に基づいて野菜室の温度を制御するように構成されていることが好ましい。
【0028】
このようにすることにより、青果物が生育された季節の外気温に合わせて、青果物を、簡単に、旨み成分や甘味成分を増加させるのに最適な温度で保存することができる。
【0029】
この発明に従った冷蔵庫は、外気温度を検知するための外気温検知手段を備え、温度制御手段は、外気温検知手段によって検知された外気温度に基づいて野菜室の温度を制御するように構成されていることが好ましい。
【0030】
このようにすることにより、気温の高い時期に生育された青果物と、気温の低い時期に生育された青果物を、簡単に、旨み成分や甘味成分を増加させるのに最適な温度で保存することができる。
【0031】
この発明に従った冷蔵庫は、野菜室に収容される青果物の生育期に応じて温度制御手段が野菜室の温度を制御する第一の温度制御と、外気温検知手段によって検知された外気温度に基づいて温度制御手段が野菜室の温度を制御する第二の温度制御と、野菜室に収容される青果物の生育期または外気温検知手段によって検知された外気温度のいずれに基づいても野菜室の温度を制御しない第三の温度制御とを切り替えるための温度制御切替手段を備えることが好ましい。
【0032】
このようにすることにより、野菜室に収容されている青果物に合わせて、使用者の判断に基づいて、青果物を、旨み成分や甘味成分を増加させるのに最適な温度で保存することができる。
【0033】
この発明に従った冷蔵庫においては、温度制御手段は、野菜室内の温度を所定の温度範囲内において周期的に変化させることが可能であるように構成されていることが好ましい。
【0034】
このようにすることにより、野菜室に収容されている様々な青果物について、低温ストレスを受ける臨界温度を通過させながら保存することができるので、様々な青果物中のアミノ酸や糖類を増加させることができる。
【発明の効果】
【0035】
以上のように、この発明によれば、青果物の栄養分の中でも特に食味に大きな影響を及ぼす甘味成分を、効率的に省エネルギーで増加または維持することが可能な冷蔵庫を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0037】
図1は、この発明の一つの実施の形態として、冷蔵庫の全体の構成を概略的に示す断面図である。
【0038】
図1に示すように、冷蔵庫1の外周面は、外箱と内箱との間に断熱材が充填されて構成される断熱箱体100と、断熱箱体100の前面の開口部を覆う断熱扉によって形成されている。断熱箱体100の内部は、複数の断熱仕切板によって上下方向に複数の貯蔵室に区切られている。貯蔵室は、上から順に、食品を貯蔵するための冷蔵室104、氷を作製するための製氷室103、食品を冷凍するための冷凍室102、青果物を収容して保存するための野菜室101である。冷蔵室104、製氷室103、冷凍室102、野菜室101のそれぞれの前面の開口部は、冷蔵室扉114、製氷室扉113、冷凍室扉112、野菜室扉111によって開放または閉塞される。断熱箱体100の内部において貯蔵室の背面側には、冷凍サイクルユニット、電装ボックス150、冷気回路130等が配置されている。
【0039】
断熱箱体100、冷蔵室扉114、製氷室扉113、冷凍室扉112、野菜室扉111、断熱仕切板の内部には断熱材が充填されており、貯蔵室内の温度が外気の影響を受けないように構成されている。
【0040】
冷凍サイクルユニットは、圧縮器121と蒸発器122と凝縮器125とから構成されている。冷凍サイクルユニットは、冷凍サイクルを構成するユニットであり、圧縮器121と、補助放熱器と、凝縮器125と、減圧器(コールドガス用キャピラリーチューブ、C用キャピラリーチューブ)と、蒸発器(主蒸発器)122とが、冷媒パイプ(冷媒管)によって順に接続されて構成されている。冷凍サイクルの作動媒体である冷媒が、圧縮器121、凝縮器125、蒸発器122の順に流れて圧縮器121に戻るサイクルをコールドガスサイクルとする。圧縮器121は、冷媒を高温、高圧下において圧縮する。圧縮器121は作動熱を発生するため、密閉度が高く断熱性の高い機械室内に配置されている。凝縮器125は、除霜水によって、冷媒を凝縮、液化している。凝縮器125は、蒸発器122が除霜(霜取り)するときに生じる水(除霜水)を蒸発させる機能も有している。蒸発器122は、凝縮器125を経ることによって低温、低圧になった液化冷媒(冷媒液)を気化させる。蒸発器122は、冷蔵庫1内の周囲の空気の熱を奪うことによって、冷媒液を蒸発(ガス化)させる。蒸発器122としては様々な方式が用いられるが、一例としては、フィンチューブ型の熱交換器が挙げられる。蒸発器122において熱を奪われた空気は、−25℃程度の冷気となる。
【0041】
蒸発器122の上方には、ファン131が配置されている、ファン131は、蒸発器122の近くで冷却された空気、すなわち冷気を冷気回路130内に送り込む。
【0042】
冷気回路130内においては、蒸発器122の下方にガラス管ヒータ123と排水管124が配置され、凝縮器125の下方には蒸発皿126が配置されている。ガラス管ヒータ123は、蒸発器122につく霜を融解させる。除霜水は、排水管124を通って蒸発皿126に排出される。
【0043】
蒸発器122によって−25℃程度に冷却された空気、すなわち、冷気は、ファン131が駆動することによって、冷気回路130内に吹き出される。ファン131によって冷気回路130内に吹き出された冷気は、冷気回路130内を流れて、各貯蔵室の背面側から各貯蔵室内に流入する。
【0044】
電装ボックス150内には、温度制御手段として温度制御ユニット、日付認識手段としてカレンダー部、冷蔵庫1の制御部などが配置されている。制御部は、冷蔵庫1の全体の動作制御等を行う中枢部分となっており、冷凍サイクルユニット等の各部材の駆動を有機的に制御して、冷蔵庫1の動作を統括制御するものである。外気温検出手段として外気サーミスタ142は、電装ボックス150から冷蔵庫1の外部に向かって突出している。断熱箱体100の前面には、使用者が温度制御を切り替えるための温度制御切替手段と、使用者が野菜室101内の温度を設定するための温度切替スイッチが配置されている。温度制御切替手段と温度切替スイッチは、冷蔵庫1の側面など、別の位置に配置されていてもよい。
【0045】
冷蔵庫1内の冷気の流れを以下に説明する。各貯蔵室の背面側には、複数の開口部を有する断熱壁が形成されている。冷蔵庫1において断熱壁よりも背面側には冷凍サイクルユニットが配置されており、冷凍サイクルユニットから発生する冷風が、冷気回路130内を流通し、断熱壁の開口部を通って、冷蔵庫1の背面側から前方側に向かって、図中に二点鎖線の矢印で示す方向に、各貯蔵室の内部に吹き込む。各貯蔵室は、このような間接冷却方式によって冷却される。
【0046】
各貯蔵室内に流入した冷気は、各貯蔵室内を通って、食品を冷凍、冷蔵し、各貯蔵室の前面側から流出する。冷気は、冷蔵庫1の前面側から背面側に向かって断熱仕切板の内部を通って、貯蔵室の後方に配置されている冷凍サイクルユニットの蒸発器122の近傍に流出する。
【0047】
蒸発器122の近傍では、空気は再び冷却されて、ファン131によって冷気回路130内に吹き出される。冷気回路130は、このように、冷気の循環経路を構成している。
【0048】
例えば、冷気回路130から野菜室101に流入した冷気は、内部容器115の外周面に沿って、野菜室101の内部を冷却しながら流れて、野菜室101の上面を形成する断熱仕切板の前面から、断熱仕切板の内部に流入し、冷蔵庫1の背面側に戻り、背面側冷気流出路内に流れ込む。
【0049】
野菜室101の内部には、青果物が直接冷気に触れないようにするために、内部容器115が配置されている。青果物は、内部容器115内に収容される。内部容器115の近傍には、野菜室101内の温度を検出するための野菜室サーミスタ141が取り付けられている。また、野菜室101の内部においては、冷気回路130の開口部に、野菜室ダンパ132が配置されている。野菜室ダンパ132は、冷気回路130の開口部を開放または閉塞して、冷気を野菜室101の内部に流通させるか、流通させないかを切り替えることができる。野菜室ダンパ132は、温度制御ユニットによって開閉を制御される。野菜室ダンパ132は、野菜室101内の温度制御と連動し、野菜室101内を冷却する必要があるときには開かれて、冷気回路130内の冷気を野菜室101に導入する。
【0050】
図2は、野菜室と、野菜室の温度の検出と制御を行う構成を模式的に示す図である。野菜室は、側面から見た状態が示されている。
【0051】
図2に示すように、野菜室101の内部容器115には、野菜室サーミスタ141が取り付けられている。野菜室サーミスタ141は、電装ボックス150内の温度制御ユニット151と接続されている。温度制御ユニット151は、冷蔵庫1の全体の制御部の制御基板に、一体に配置されてもよい。
【0052】
図3は、この発明の一つの実施の形態として、冷蔵庫の温度制御関連の構成を示すブロック図である。
【0053】
図3に示すように、野菜室サーミスタ141は、野菜室101内の温度を検知して、温度制御ユニット151に信号を送信する。温度制御ユニット151は、野菜室サーミスタ141から受信した信号に基づいて、野菜室101内の温度が目的の温度に保たれるように、野菜室ダンパ132に制御信号を送信して野菜室ダンパ132の開閉を制御する。野菜室ダンパ132を開放すると、野菜室101内に冷気が導入されて野菜室101内の温度が下がる。野菜室ダンパ132を閉塞すると、野菜室101内に冷気が導入されず、野菜室101内の温度は冷気によって下げられない。
【0054】
カレンダー部152は、冷蔵庫1の工場出荷時に日時が設定され、その後も継続して日時を更新し続ける。カレンダー部152の初期設定の日時は、使用者が各家庭に冷蔵庫1を設置する時に現在日時を設定する構成としてもよい。カレンダー部152は、現在日時の情報を含む信号を温度制御ユニット151に送信する。温度制御ユニット151は、カレンダー部152から受信した信号に基づいて、現在の日付に応じて野菜室101内の温度を調整するように、野菜室ダンパ132に制御信号を送信して野菜室ダンパ132の開閉を制御する。
【0055】
外気サーミスタ142は、外気の温度を検知して、温度制御ユニット151に信号を送信する。温度制御ユニット151は、外気サーミスタ142から受信した信号に基づいて、外気サーミスタ142によって検知された外気の温度に応じて野菜室101内の温度を調整するように、野菜室ダンパ132に制御信号を送信して野菜室ダンパ132の開閉を制御する。
【0056】
温度切替スイッチ154は、使用者が設定した野菜室101内の温度を含む信号を、温度制御ユニット151に送信する。温度制御ユニット151は、温度切替スイッチ154から受信した信号に基づいて、使用者が温度切替スイッチ154を通して設定した設定温度に野菜室101内の温度を保つように、野菜室ダンパ132に制御信号を送信して野菜室ダンパ132の開閉を制御する。
【0057】
温度制御切替手段153は、使用者が、現在の日付に基づいて野菜室101内の温度を制御する第一の温度制御と、外気温度に基づいて野菜室101内の温度を制御する第二の温度制御と、使用者が温度切替スイッチ154を通して設定した温度に基づいて野菜室101内の温度を制御する第三の温度制御とを切替えるための切替手段である。
【0058】
ここで、青果物を冷蔵庫1の野菜室101で保存することによって、青果物中のアミノ酸や糖といった旨み成分、甘味成分が増加する過程について説明する。
【0059】
図4は、低温ストレスを受けた青果物中においてタンパク質が分解され、アミノ酸が合成される様子を模式的に示す図である。
【0060】
図4に示すように、生育温度T0(℃)で生育された青果物としてアスパラガス200を、生育温度T0(℃)よりもΔT(℃)だけ低温の保存温度T(℃)で保存すると、アスパラガス200には、低温ストレスSが与えられる。生育温度T0(℃)においては、アスパラガス200中のタンパク質210は、糖やアミノ酸に分解されていない。
【0061】
低温の保存温度T(℃)では、低温ストレスSが与えられることによって、青果物は、凍結に対する防御反応として酵素Eを発現させ、タンパク質210をアミノ酸220に分解する。酵素Eの種類によっては、多糖類が分解されて単糖類が生成されたり、糖類が合成されたりする場合もある。アスパラガス200中に発現する酵素Eの量は、低温ストレスSの大きさ、すなわち、生育温度T0(℃)と保存温度T(℃)との温度差ΔT(℃)に依存する。一方、酵素Eによるタンパク質210の分解の程度は、酵素活性の大きさに依存し、酵素活性は、保存温度T(℃)が酵素の最適温度に近ければ近いほど、大きくなる。
【0062】
このように、アスパラガス200中のタンパク質210が分解されてアミノ酸220が増加するためには、まず、低温ストレスSがアスパラガス200に与えられることが必要である。低温ストレスSが与えられなければ、酵素Eはアスパラガス200中に発現されない。同じ保存温度T(℃)であっても、低温ストレスSが与えられるかどうかは、アスパラガス200の生育温度T0(℃)に依存する。
【0063】
例えば、夏に27℃の外気温度下で生育されたアスパラガス200は、7℃程度の温度で保存されても低温ストレスSを受ける。一方、冬に5℃以下の外気温度下で生育されたアスパラガス200は、7℃程度の温度では、低温ストレスSを受けない。青果物の種類が同じアスパラガスであっても、生育期の温度が異なれば、アスパラガス200が低温ストレスSであると受け取って防御反応が引き起こされる臨界温度が異なる。
【0064】
一方、アスパラガス200の代謝によって、アスパラガス200中に生成された糖やアミノ酸220がアスパラガス200自体によって消費される。
【0065】
アスパラガス200中のアミノ酸220や糖の量の総量は、低温ストレスSに対する防御反応として生成されたアミノ酸220や糖の量と、代謝によって消費されるアミノ酸220や糖の量によるものである。したがって、低温ストレスSによって酵素Eをできるだけ多く発現させた上に、この酵素Eを活性化させ、アミノ酸220や糖といった旨み成分、甘味成分の増加を促進させて、更に、代謝によるアミノ酸220や糖の減少を抑えることにより、全体として、アスパラガス200の旨みや甘味を増加させることができる。
【0066】
そこで、冷蔵庫1においては、野菜室101内の青果物の生育期に応じて、野菜室101内の温度を制御する。野菜室101内の温度制御について以下に説明する。野菜室101内の温度制御は、以下の第一〜第三の温度制御によって行われる。第一〜第三の温度制御を、図3を用いて説明する。
【0067】
野菜室101内の温度は、第一の温度制御としては、野菜室101に収容される青果物が栽培された生育環境の温度に応じて定められる。
【0068】
例えば、1年のうち、7月1日から10月31日までを夏期間、残りの期間を冬期間とするように予め設定しておく。カレンダー部152が認識した現在日が夏期間であれば、野菜室101の温度が5〜8℃になるように温度制御ユニット151が野菜室ダンパ132を制御する。一方、カレンダー部152が認識した現在日が冬期間であれば、野菜室101の温度が0〜−1℃になるように制御する。現在の青果物の流通では、季節に拘りなく通年で夏野菜、冬野菜が流通する場面もあるが、この実施の形態においては、いわゆる「旬」を基準として大きく2つの季節に分けるとする。また、実際に冷蔵庫1を設置する地域によっては、夏野菜、冬野菜の流通時期も若干異なることもあるので、期間の設定は、使用者によって調整が可能なように構成しておく必要がある。
【0069】
このようにすることにより、野菜室101に収容される青果物が夏に生育されたものであっても、冬に生育されたものであっても、簡単に、旨み成分や甘味成分を増加させるのに最適な温度で保存することができる。また、夏栽培の青果物と冬栽培の青果物とで保存温度を変えることにより、冷蔵庫1の野菜室101を不要に低温にすることがないので、省エネルギーにも効果がある。
【0070】
このように、冷蔵庫1は、現在の日付を認識するためのカレンダー部152を備え、温度制御ユニット151は、カレンダー部152によって認識された日付に基づいて野菜室101の温度を制御するように構成されている。
【0071】
このようにすることにより、青果物が生育された季節の外気温に合わせて、青果物を、簡単に、旨み成分や甘味成分を増加させるのに最適な温度で保存することができる。
【0072】
野菜室101内の温度は、第二の温度制御としては、外気サーミスタ142によって検知された外気温度に基づいて制御される。外気温度が10℃以上であれば、野菜室101内の温度は5℃以上8℃以下に保持され、外気温度が10℃未満であれば、野菜室101内の温度は−1℃以上0℃以下に保持されるように、野菜室ダンパ132が温度制御ユニット151によって制御される。
【0073】
このように、冷蔵庫1は、外気温度を検知するための外気サーミスタ142を備え、温度制御ユニット151は、外気サーミスタ142によって検知された外気温度に基づいて野菜室101の温度を制御するように構成されている。
【0074】
このようにすることにより、気温の高い時期に生育された青果物と、気温の低い時期に生育された青果物を、簡単に、旨み成分や甘味成分を増加させるのに最適な温度で保存することができる。
【0075】
野菜室101内の温度は、第三の温度制御としては、使用者が、温度切替スイッチ154を操作することによって、野菜室101内の温度を調整する。この場合には、冷蔵庫1は報知部を備え、カレンダー部152が認識した現在日に基づいて、使用者に、設定温度を変更するように報知してもよい。
【0076】
また、冷蔵庫1は、野菜室101に収容される青果物の生育期に応じて温度制御ユニット151が野菜室101の温度を制御する第一の温度制御と、外気サーミスタ142によって検知された外気温度に基づいて温度制御ユニット151が野菜室101の温度を制御する第二の温度制御と、野菜室101に収容される青果物の生育期または外気サーミスタ142によって検知された外気温度のいずれに基づいても野菜室101の温度を制御しない第三の温度制御とを切り替えるための温度制御切替手段153を備える。
【0077】
このようにすることにより、野菜室101に収容されている青果物に合わせて、使用者の判断に基づいて、青果物を、旨み成分や甘味成分を増加させるのに最適な温度で保存することができる。
【0078】
第一の温度制御と、第二の温度制御と、第三の温度制御の切替は、使用者によって温度制御切替手段153を通して行われる。
【0079】
図5は、温度制御されている野菜室の温度変化の例を示す図である。
【0080】
図5に示すように、野菜室101の温度は、例えば、−1℃から8℃までの範囲内で周期的に変化するように制御されてもよい。温度制御ユニット151は、野菜室サーミスタ141によって検知された野菜室101の温度が図5に示すように周期的に変化するように、野菜室ダンパ132を制御する。
【0081】
低温ストレスを受ける臨界温度は、青果物の種類や、青果物が生育された温度に依存する。そこで、野菜室101内に様々な青果物が保存されている場合には、野菜室101の温度を周期的に変化させることによって、野菜室101に収容されている全ての青果物の低温ストレスの臨界温度を通過することができる。
【0082】
このように、冷蔵庫1においては、温度制御ユニット151は、野菜室101内の温度を所定の温度範囲内において周期的に変化させることが可能であるように構成されている。
【0083】
このようにすることにより、野菜室101に収容されている様々な青果物について、低温ストレスを受ける臨界温度を通過させながら保存することができるので、様々な青果物中のアミノ酸や糖類を増加させることができる。
【0084】
また、低温で保存されている青果物中においてアミノ酸や糖が増加する期間は、青果物の種類によって若干変動するが、おおむね1週間の保存で最大の量となり、2週間程度保存されると、保存開始直後の量よりも減少してしまうということが今回の研究によって明らかになった。そこで、青果物が野菜室101内に保存される期間は、1週間以内であることが好ましい。
【0085】
以上のように、冷蔵庫1は、青果物を収容するための野菜室101と、野菜室101内の温度を制御するための温度制御ユニット151とを備え、温度制御ユニット151は、野菜室101に収容される青果物の生育期に応じて野菜室101の温度を制御するように構成されている。
【0086】
この実施の形態では、冷蔵庫1が、青果物を収容するための野菜室101と、野菜室101内の温度を制御するための温度制御ユニット151とを備え、温度制御ユニット151は、野菜室101に収容される青果物の生育期に応じて野菜室101の温度を制御するように構成されていることにより、青果物中の旨みや甘味成分を効果的に増加させることができる。
【0087】
また、青果物の生育温度によって保存温度を変えることにより、冷蔵庫1の野菜室101を不要に低温にする必要がないので、省エネルギーにも効果がある。
【0088】
このようにすることにより、青果物の栄養分の中でも特に食味に大きな影響を及ぼす甘味成分を、効率的に省エネルギーで増加または維持することが可能な冷蔵庫1を提供することができる。
【実施例1】
【0089】
この発明の一つの効果として、青果物中のアミノ酸量の増加がある。この効果を以下のように確認した。
【0090】
青果物として、冬栽培のアスパラガス、夏栽培のアスパラガス、夏栽培のキュウリについて、−1℃で保存した場合と7℃で保存した場合のそれぞれの場合のアミノ酸量の時間変化を測定した。
【0091】
冬栽培のアスパラガス、夏栽培のアスパラガス、夏栽培のキュウリを、それぞれ20本ずつ、貯蔵庫内に保存した。貯蔵庫内の温度が−1℃と7℃のそれぞれの場合について、20本の青果物を全量、混合して、アミノ酸の量の変化を測定した。
【0092】
アミノ酸の測定は高速液体クロマトグラフィー測定(HPLC)を利用して行った。
【0093】
アミノ酸分析計としては、株式会社日立製作所製、型番L−8800型の高速アミノ酸分析計を用いた。カラムとしては、株式会社日立製作所製日立カスタムイオン交換樹脂(φ4.6mm×60mm)を用いた。移動相としては、和光純薬工業株式会社製、型番L−8500PFの緩衝液を用いた。反応液としては、和光純薬工業のニンヒドリン試薬を用いた。
【0094】
アミノ酸量の測定に用いる試料は、以下のようにして調製した。
【0095】
まず、試料である各種青果物をホモジナイザーによって破砕した。ここに、除タンパク剤として、10W/V%のスルホサリチル酸を加えた。その後、試料とスルホサリチル酸の混合物をよく振とうした。その結果、試料中に混合しているタンパク質がスルホサリチル酸と反応して沈殿した。これを濾過して、沈殿物を除去した試料溶液を調製した。試料中にタンパク質が残っていると、分解してアミノ酸となる可能性があるため、タンパク質を除去する前処理を試料調製の段階で行うのである。
【0096】
次に、各青果物に予想される本測定法で測定可能な適切な濃度範囲になるように、試料溶液を希釈した。この希釈した溶液を試験溶液とした。液体クロマトグラフィーの原理を利用したアミノ酸自動分析計にこの試験溶液を注入することによってアミノ酸を分析した。
【0097】
アミノ酸の定量は、濃度が既知の標準試料をアミノ酸分析計に注入し、そのピーク面積を予め調べておき、濃度未知な試料のピーク面積が標準試料のピーク面積の何倍かを調べて、標準試料の濃度×倍率で計算して濃度を決定した。
【0098】
今回の測定では、アミノ酸の中でも甘味成分に関与するアミノ酸であるアラニン、グリシン、プロリン、セリン、スレオニンを分析した。甘味成分、すなわち、甘味を呈するアミノ酸が増加した青果物は甘くなり美味しさが増す。
【0099】
図6は、冬栽培のアスパラガスを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)のアミノ酸量の変化を示す図である。
【0100】
図6の(A)に示すように、冬栽培のアスパラガスを−1℃で保存すると、保存開始から3日目にはアミノ酸量は増加していないが、7日目にはアミノ酸量が初期よりも多くなっていた。10日目にも、7日目と比較するとアミノ酸量が減少したが、初期より多いアミノ酸量が検出された。14日目には、初期のアミノ酸量よりも少なくなった。
【0101】
図6の(B)に示すように、冬栽培のアスパラガスを7℃で保存すると、保存開始から3日目にアミノ酸量が大きく減少した。アミノ酸量は、7日目には、3日目よりも増加したが、初期のアミノ酸量よりも少なかった。アミノ酸量は、10日目、14日目には、7日目よりもさらに減少した。
【0102】
このように、冬に栽培され、寒い生育環境で栽培されたアスパラガスでは、−1℃で保存された場合には、甘味成分のアミノ酸が増加したが、7℃で保存されると、初期と比較して、甘味成分のアミノ酸量は増加しなかった。
【0103】
また、冬に栽培され、寒い生育環境で栽培されたアスパラガスでは、アミノ酸量は、−1℃で保存したとき、保存開始から7日目に最大となった。
【0104】
青果物の種類によって、アミノ酸の量が最大量を示す時期は若干異なるが、概ね保存開始から一週間後に最大となる場合が多い。本発明の冷蔵庫において青果物を保存する期間を一週間以内とすることによって、甘味成分のアミノ酸が最も増した状態で青果物を調理に用いる等することができる。また、保存開始から1週間以内程度で青果物中のアミノ酸が増加するため、青果物を低温で保存することによる効果を、週末にまとめ買いするような、通常の生活サイクルの中で享受することができる。
【0105】
青果物が低温ストレスを受ける臨界温度は、個々の青果物固有のものであるが、夏に栽培されたほとんどの青果物に関しては、5〜8℃で保存することが低温ストレスとなった。また、冬に栽培されたほとんどの青果物は−1〜0℃で保存することが低温ストレスとなった。ただし、低温ストレスによって発現する酵素量も酵素活性も青果物固有であるため、アミノ酸の量が食味として明らかに感じられるほど多量に増加する場合もあれば、化学的手法による成分分析をして初めて分かる程度にしか増加しないという場合もまれにあった。
【0106】
図7は、夏栽培のアスパラガスを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)のアミノ酸量の変化を示す図である。
【0107】
図7の(A)に示すように、夏栽培のアスパラガスを−1℃で保存すると、保存開始から3日目には初期よりもアミノ酸量が増加した。保存開始から7日目には、3日目と比較するとわずかにアミノ酸量が減少したが、初期と比較すると増加していた。
【0108】
図7の(B)に示すように、夏栽培のアスパラガスを7℃で保存すると、保存開始から3日目には初期よりもアミノ酸量が増加した。アミノ酸量は、7日目には、3日目と比較すると減少したが、初期と比較すると増加していた。
【0109】
図7の(A)と(B)に示すように、3日目には、7℃で保存したアスパラガスの方が、−1℃で保存したアスパラガスよりもアミノ酸量がわずかに多かった。7日目には、−1℃で保存したアスパラガスと7℃で保存したアスパラガスのアミノ酸量は、ほぼ同じであった。
【0110】
このように、夏に暖かい生育環境で栽培されたアスパラガスでは、−1℃で保存されても、7℃で保存されても、甘み成分のアミノ酸が増加した。
【0111】
図6と図7に示す結果から、冬に寒い生育環境で栽培されたアスパラガスには、−1℃で保存されると低温ストレスが与えられるが、7℃で保存された場合には低温ストレスが与えられないと考えられる。一方、夏に暖かい生育環境で栽培されたアスパラガスには、−1℃で保存されても、7℃で保存されても、低温ストレスが与えられると考えられる。このことから、低温ストレスが与えられるか否かは、生育環境と保存環境との温度差(ΔT)に依存すると推測される。すなわち、冬の環境下では栽培温度が低温であるため、低温である7℃で保存してもΔTが小さく、低温ストレスが与えられないが、より低温である−1℃で保存された場合に低温ストレスが与えられると推測される。また、夏の環境下では栽培温度が高温であるため、7℃で保存してもΔTが大きくなり、7℃でも低温ストレスが与えられると考えられる。
【0112】
また、図7に示すように、夏栽培のアスパラガスを用いた実験では、アミノ酸量は、−1℃よりも7℃の方がやや多かった。生育温度と保存温度との差ΔTは、−1℃で保存される方が大きく、低温ストレスの強さは、−1℃で保存される方が強いので、酵素発現量は−1℃で保存される方が多い。一方、酵素活性は、最適温度に近い7℃の方が−1℃よりも大きい。アミノ酸の増加量(酵素発現量×酵素活性)は、全体として、−1℃で保存される方が7℃で保存される場合よりも上回ったと考えられる。
【0113】
図8は、夏栽培のキュウリを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)のアミノ酸量の変化を示す図である。
【0114】
図8の(A)に示すように、夏栽培のキュウリを−1℃で保存すると、保存開始から3日目には初期の約1.4倍のアミノ酸量となり、8日目には約1.8倍、14日目には約2倍、と、次第にアミノ酸量が増加した。
【0115】
図8の(B)に示すように、夏栽培のキュウリを7℃で保存すると、保存開始から3日目には初期の約1.2倍のアミノ酸量となり、8日目には約1.5倍、14日目には約1.6倍、と、次第にアミノ酸量が増加した。
【0116】
このように、夏に比較的暖かい生育環境で栽培されたキュウリは、−1℃で保存されても、7℃で保存されても、低温ストレスを受けることがわかった。
【0117】
以上の結果から、低温で保存することによって青果物中の甘味成分のアミノ酸が増加する温度は、その青果物の生育環境の温度帯に依存することがわかった。そこで、青果物の生育温度に応じて、青果物の保存温度を制御することによって、青果物中のアミノ酸、すなわち、旨み成分や甘味成分を増加させることができる。
【実施例2】
【0118】
この発明の一つの効果として、青果物中の糖量の増加がある。この効果を以下のように確認した。
【0119】
青果物として、冬栽培のキャベツ、夏栽培のニンジン、夏栽培のスイカについて、−1℃で保存した場合と7℃で保存した場合のそれぞれの場合の糖量の時間変化を測定した。
【0120】
冬栽培のキャベツ、夏栽培のニンジン、夏栽培のスイカは、それぞれ20個ずつ、貯蔵庫内に保存した。貯蔵庫内の温度が−1℃と7℃のそれぞれの場合について、20個の青果物を全量、混合して、アミノ酸の量の変化を測定した。
【0121】
糖量の測定は、酵素反応を利用した遊離糖測定キット(Fキット:(株)J.K.インターナショナル社販売、ロシュ、ダイアグノスティックス社製造)を用いて行なった。
【0122】
遊離糖測定用の試料は以下の手順で調製した。まず、試料である各種青果物をホモジナイザーにより破砕した。破砕した試料をガーゼでろ過し、比較的大きな残留物のみ除去した。ろ過した試料溶液を沸騰する直前まで加熱した。この操作により、試料中に含まれている酵素が失活した。試料を3000rpmで1分間ほど遠心分離し透明な上清液を得た。この上清液をFキットにて分析し、ショ糖、ブドウ糖、果糖を定量した。
【0123】
Fキットの測定原理を以下に示す。グルコース(ブドウ糖)の測定では、次の反応を利用する。
【0124】
(1)グルコース+ATP→グルコース‐6-リン酸+ADP(酵素反応)
(2)グルコース‐6-リン酸→グルコン酸‐6‐リン酸+NADPH+H+(酵素反応)
生成したNADPHの量はグルコース量に相当するので、340nmの吸光度の増加により定量を行う。
【0125】
フルクトース(果糖)の測定では、次の反応を利用する。
【0126】
(3)フルクトース+ATP→フルクトース‐6-リン酸+ADP(酵素反応)
(4)フルクトース‐6-リン酸→グルコース‐6-リン酸(酵素反応)
グルコース‐6-リン酸は(2)の反応によりグルコン酸‐6‐リン酸になるが、その際に生成するNADPHの量はフルクトースの量に相当する。
【0127】
サッカロース(ショ糖)の測定では、次の反応を利用する。
【0128】
(5)サッカロース+H2O→グルコース+フルクトース
遊離のグルコースとショ糖を加水分解してできたグルコースを(1)(2)の反応でトータルのグルコース量として求めた後、ショ糖の濃度をグルコースとトータルのグルコース量の差より算出した。
【0129】
図9は、冬栽培のキャベツを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)の糖量の変化を示す図である。
【0130】
図9の(A)に示すように、冬栽培のキャベツを−1℃で保存すると、糖量は、保存開始から3日目には初期よりもわずかに増加した。7日目には、糖量は、3日目とほぼ同じであった。
【0131】
図9の(B)に示すように、冬栽培のキャベツを7℃で保存すると、糖量は、保存開始から3日目には初期よりもわずかに減少した。7日目には、糖量は、3日目とほぼ同じであった。
【0132】
このように、冬に栽培され、寒い生育環境で栽培されたキャベツでは、−1℃で保存された場合には、糖の量が増加したが、7℃で保存されると、初期と比較して、糖量は増加せず、次第に減少した。
【0133】
図10は、夏栽培のスイカを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)の糖量の変化を示す図である。
【0134】
図10の(A)に示すように、夏栽培のスイカを−1℃で保存すると、保存開始後3日目には糖量が増加し、7日目には、さらに増加していた。
【0135】
図10の(B)に示すように、夏栽培のスイカを7℃で保存すると、保存開始後3日目には糖量が増加し、7日目には、さらに増加していた。
【0136】
このように、夏に栽培され、暖かい生育環境で栽培されたスイカでは、−1℃で保存されても、7℃で保存されても、保存開始後、糖量が増加した。
【0137】
図11は、夏栽培のニンジンを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)の糖量の変化を示す図である。
【0138】
図11の(A)に示すように、夏栽培のニンジンを−1℃で保存すると、保存開始後3日目には糖量が増加し、8日目には、さらに増加していた。14日目には、8日目と比較して、糖量がわずかに減少していた。
【0139】
図11の(B)に示すように、夏栽培のニンジンを7℃で保存すると、保存開始後3日目には糖量が増加し、8日目には、さらに増加していた。14日目には、8日目と比較して、糖量が減少していた。
【0140】
このように、夏に栽培され、暖かい生育環境で栽培されたニンジンでは、−1℃で保存されても、7℃で保存されても、保存開始後糖量が増加した。糖量は、8日目に最大になった。
【0141】
青果物の種類によって、糖の量が最大量を示す時期は若干異なるが、概ね保存開始から一週間後に最大となる場合が多い。本発明の冷蔵庫において青果物を保存する期間を一週間以内とすることによって、糖が最も増した状態で青果物を調理に用いる等することができる。また、保存開始から1週間以内程度で青果物中の糖が増加するため、青果物を低温で保存することによる効果を、週末にまとめ買いするような、通常の生活サイクルの中で享受することができる。このような、糖の量が1週間以内に増加するという傾向は、他の青果物でも同様に見られた。
【0142】
以上の結果から、低温で保存することによって青果物の糖量が増加する温度は、その青果物の生育環境の温度帯に依存することがわかった。そこで、青果物の生育温度に応じて、青果物の保存温度を制御することによって、青果物中の糖類、すなわち、甘味成分を増加させることができる。
【0143】
青果物が低温ストレスを受ける臨界温度は、個々の青果物に固有の温度であり、青果物の種類や生育温度に依存する。夏に栽培されたほとんどの青果物に関しては、5〜8℃で保存することが低温ストレスとなった。また、冬に栽培されたほとんどの青果物は−1〜0℃で保存することが低温ストレスとなった。ただし、低温ストレスによって発現する酵素量も酵素活性も青果物固有であるため、糖の量が食味として明らかに感じられるほど多量に増加する場合もあれば、化学的手法による成分分析をして初めて分かる程度にしか増加しないという場合もまれにあった。
【0144】
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】この発明の一つの実施の形態として、冷蔵庫の全体の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】野菜室と、野菜室の温度の検出と制御を行う構成を模式的に示す図である。
【図3】この発明の一つの実施の形態として、冷蔵庫の温度制御関連の構成を示すブロック図である。
【図4】低温ストレスを受けた青果物中においてタンパク質が分解され、アミノ酸が合成される様子を模式的に示す図である。
【図5】温度制御されている野菜室の温度変化の例を示す図である。
【図6】冬栽培のアスパラガスを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)のアミノ酸量の変化を示す図である。
【図7】夏栽培のアスパラガスを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)のアミノ酸量の変化を示す図である。
【図8】夏栽培のキュウリを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)のアミノ酸量の変化を示す図である。
【図9】冬栽培のキャベツを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)の糖量の変化を示す図である。
【図10】夏栽培のスイカを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)の糖量の変化を示す図である。
【図11】夏栽培のニンジンを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)の糖量の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0146】
1:冷蔵庫、101:野菜室、142:外気サーミスタ、151:温度制御ユニット、152:カレンダー部、153:温度制御切替手段、200:アスパラガス。
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には冷蔵庫に関し、特定的には、家庭用の冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜や果実等の作物を低温に貯蔵することによって、作物の呼吸や酵素活性などの代謝を抑え、作物の保存中に作物中から栄養分が減少することを防ぐ方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、従来の方法は、作物中の栄養分が減少することを抑えるにとどまり、作物中の栄養分を積極的に増加させる方法ではなかった。
【0004】
そこで、作物中の栄養分を積極的に増加させる方法としては、例えば、特開2001−275606号公報(特許文献1)には、いも類を低温条件下で保存することによって、低温ストレスを与え、いも類のアスコルビン酸を増加する方法が提案されている。
【0005】
また、特開平7−115952号公報(特許文献2)には、呼吸をしている食品類の生体に、0℃以下の低温帯下で乾燥や加水等のストレスを付与して旨みを向上させる方法が記載されている。
【特許文献1】特開2001−275606号公報
【特許文献2】特開平7−115952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2001−275606号公報(特許文献1)や、特開平7−115952号公報(特許文献2)に記載の方法では、時期に関係なく、所定の低温度下でいも類などの食品類を保存している。青果物が低温ストレスを感じる温度は、その青果物がさらされてきた温度環境に依存する。例えば、食品類を保存する温度を0℃とした場合、夏に27℃の外気温度下で生育された食品類は、栄養分を増加させるための低温ストレスを受ける温度としては、発明者の知見によれば、十分すぎる低温度で保存されていることになる。一方、冬に0℃の外気温度下で生育された食品類であれば、0℃で保存することによってはじめて、低温をストレスと感じて、栄養分が増加させられる。このように、低温で保存しても、季節によっては、発明者の知見によれば十分すぎる低温ストレスを与えていることが、これまでの事例ではしばしば見られていた。
【0007】
低温ストレスによって青果物中の栄養分を増加させるために、青果物の保存温度をきわめて低温に維持することにより、どのような環境下で生育した青果物であっても、栄養分を増加させることが可能となる。しかしながら、一方で、青果物の生育環境に無関係に青果物に過剰な低温ストレスを与えて栄養分を増加させることは、栄養分の増加という目的のために余分なエネルギーを投入することになる。民生用の冷蔵庫にこの機能を展開するためには、省エネルギーの点できわめて問題であった。
【0008】
そこで、この発明の目的は、青果物の栄養分の中でも特に食味に大きな影響を及ぼす甘味成分を、効率的に省エネルギーで増加または維持することが可能な冷蔵庫を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従った冷蔵庫は、青果物を収容するための野菜室と、野菜室内の温度を制御するための温度制御手段とを備え、温度制御手段は、野菜室に収容される青果物の生育期に応じて野菜室の温度を制御するように構成されている。
【0010】
青果物は、低温で保存されることによって、低温ストレスを受ける。低温ストレスを受けた青果物においては、青果物中の水分が凍結されないように、防御反応が引き起こされる。この防御反応としては、例えば、タンパク質分解酵素や糖分解酵素、糖の合成酵素が発現される。低温ストレスに対する防御反応としてどのような酵素が発現されるかということは、青果物の種類や品種に依存する。タンパク質分解酵素が発現された場合には、青果物中のタンパク質が分解されてアミノ酸になり、青果物中のアミノ酸量が増加する。水溶性のアミノ酸量が増加することによって、青果物中の水分は、凝固点降下によって凍結しにくくなる。また、糖分解酵素のインベルターゼが発現された場合には、青果物中においては、二糖類であるスクロースが単糖類であるフルクトースとグルコースに分解される。フルクトースとグルコースは青果物中の水分に溶解し、青果物中の水分の凝固点を下げて、青果物を凍結しにくくする。このようにして、青果物は、低温ストレスに対する防御反応としてタンパク質分解酵素や糖分解酵素を発現させ、青果物中の低分子量の物質を増加させて、青果物中の水分の凝固点降下によって、凍結から身を守る備えをする。
【0011】
このように、低温ストレスに対する青果物の防御反応によって、青果物中にはアミノ酸や糖類が増加する。アミノ酸には、旨みを感じさせる旨み成分や、甘味を感じさせる甘味成分として知られているものがある。また、糖類は、甘味を感じさせる。そこで、青果物に低温ストレスを加えて、低温に対する青果物の防御反応を引き起こすことによって、青果物の旨みや甘味を増すことができる。
【0012】
しかしながら、例えば夏に栽培され、比較的高い温度下で生育された青果物と、冬に栽培され、比較的低い温度下で生育された青果物とは、同じ低温に対しても、低温ストレスの感度が異なる。例えば、一般的には低温とみなされないような7℃程度の温度であっても、比較的高温度下で生育された青果物には低温ストレスと感じられ、旨みや甘味成分が増加させられる。一方、比較的低温下で生育された青果物では、一般的に低温と感じられるような0℃〜−1℃に置かれることによってはじめて低温ストレスと感じられ、旨みや甘味成分を増加させる。
【0013】
本願の発明者らは、青果物中に増加するアミノ酸や糖類の量、特に、甘味成分に関連するアミノ酸や糖類の量が、青果物が保存される温度ではなく、青果物が生育された温度と保存される温度との差に依存することを見出した。
【0014】
また、本願の発明者らは、青果物が保存中に受ける低温ストレスの大きさは、生育された温度と保存される温度との差が大きいほど大きくなり、すなわち、青果物が低温ストレスと感じる温度の臨界点は、青果物が生育された温度に依存することを見出した。
【0015】
例えば、夏に27℃の外気温度下で生育された青果物は、7℃程度の温度で保存されても低温ストレスを受ける。一方、冬に5℃以下の外気温度下で生育された青果物は、7℃程度の温度では、低温ストレスを受けない。青果物の種類が同じであっても、生育期の温度が異なれば、青果物が低温ストレスを受けて防御反応が引き起こされる臨界温度が異なる。
【0016】
このように、低温ストレスを受けるかどうかの臨界温度は生育期の温度によって異なることが見出された。しかし、低温ストレスの強さは、保存温度が低ければ低いほど強くなると考えられるので、低温ストレスによって青果物中に発現される酵素の量は、青果物を保存する温度が低い方が多くなると考えられる。
【0017】
一方で、低温ストレスによって青果物中に発現された酵素には、最適温度があり、冷蔵庫の野菜室内の温度範囲内では、温度が低いと酵素活性が低くなる。酵素活性が低ければ、低温ストレスによって酵素が発現されたとしても、酵素はタンパク質や多糖類を分解しにくくなるので、青果物中にアミノ酸や糖類が増加しにくくなる。
【0018】
このように、青果物中の酵素活性の大きさは、冷蔵庫の野菜室の温度範囲内では、青果物を保存する温度が高い方が大きくなると考えられる。
【0019】
すなわち、低温で保存することによって増加する青果物中のアミノ酸や糖類の量は、低温ストレスの大きさによって決まるタンパク質分解酵素や糖分解酵素の量と、温度によって決まるこれらの酵素の酵素活性の大きさとの両方に依存する。
【0020】
例えば、冬に5℃の外気温度下で生育された青果物は、7℃で保存されても低温ストレスを受けないが、−1℃で保存されることによって低温ストレスを受け、酵素が発現され、青果物中のアミノ酸や糖類が増加する。一方、夏に27℃の外気温度下で生育された青果物は、7℃で保存されても十分に低温ストレスを受けて酵素を発現させ、アミノ酸や糖類が増加する。夏に生育された青果物を、さらに低い−1℃で保存すると、発現される酵素量が増えても酵素活性が低く、タンパク質や多糖類が分解されないので、アミノ酸や糖類が増加しにくくなる。
【0021】
また、青果物の代謝によって、青果物中に生成された糖やアミノ酸が青果物自体によって消費される。例えば、冬に5℃以下の外気温度下で生育された青果物は、7℃程度の温度では、低温ストレスを受けず、むしろ生育温度よりも保存温度の方が高いので、代謝が進み、青果物中の旨み成分、甘味成分であるアミノ酸や糖類が代謝によって消費されてしまう。
【0022】
青果物中のアミノ酸や糖の量の総量は、低温ストレスに対する防御反応として生成されたアミノ酸や糖の量と、代謝によって消費されるアミノ酸や糖の量の差である。
【0023】
本願の発明者らが見出した、青果物中に増加するアミノ酸や糖類の量が、青果物が保存される温度ではなく、青果物が生育された温度と、保存される温度との差に依存することは、上述のような理由によると考えられる。この発明は、このような発明者の知見に基づいてなされたものである。
【0024】
そこで、この発明においては、冷蔵庫が、青果物を収容するための野菜室と、野菜室内の温度を制御するための温度制御手段とを備え、温度制御手段は、野菜室に収容される青果物の生育期に応じて野菜室の温度を制御するように構成されていることにより、青果物中の旨みや甘味成分を効果的に増加させることができる。
【0025】
また、青果物の生育温度によって保存温度を変えることにより、冷蔵庫の野菜室を不要に低温にする必要がないので、省エネルギーにも効果がある。
【0026】
このようにすることにより、青果物の栄養分の中でも特に食味に大きな影響を及ぼす甘味成分を、効率的に省エネルギーで増加または維持することが可能な冷蔵庫を提供することができる。
【0027】
この発明に従った冷蔵庫は、現在の日付を認識するための日付認識手段を備え、温度制御手段は、日付認識手段によって認識された日付に基づいて野菜室の温度を制御するように構成されていることが好ましい。
【0028】
このようにすることにより、青果物が生育された季節の外気温に合わせて、青果物を、簡単に、旨み成分や甘味成分を増加させるのに最適な温度で保存することができる。
【0029】
この発明に従った冷蔵庫は、外気温度を検知するための外気温検知手段を備え、温度制御手段は、外気温検知手段によって検知された外気温度に基づいて野菜室の温度を制御するように構成されていることが好ましい。
【0030】
このようにすることにより、気温の高い時期に生育された青果物と、気温の低い時期に生育された青果物を、簡単に、旨み成分や甘味成分を増加させるのに最適な温度で保存することができる。
【0031】
この発明に従った冷蔵庫は、野菜室に収容される青果物の生育期に応じて温度制御手段が野菜室の温度を制御する第一の温度制御と、外気温検知手段によって検知された外気温度に基づいて温度制御手段が野菜室の温度を制御する第二の温度制御と、野菜室に収容される青果物の生育期または外気温検知手段によって検知された外気温度のいずれに基づいても野菜室の温度を制御しない第三の温度制御とを切り替えるための温度制御切替手段を備えることが好ましい。
【0032】
このようにすることにより、野菜室に収容されている青果物に合わせて、使用者の判断に基づいて、青果物を、旨み成分や甘味成分を増加させるのに最適な温度で保存することができる。
【0033】
この発明に従った冷蔵庫においては、温度制御手段は、野菜室内の温度を所定の温度範囲内において周期的に変化させることが可能であるように構成されていることが好ましい。
【0034】
このようにすることにより、野菜室に収容されている様々な青果物について、低温ストレスを受ける臨界温度を通過させながら保存することができるので、様々な青果物中のアミノ酸や糖類を増加させることができる。
【発明の効果】
【0035】
以上のように、この発明によれば、青果物の栄養分の中でも特に食味に大きな影響を及ぼす甘味成分を、効率的に省エネルギーで増加または維持することが可能な冷蔵庫を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0037】
図1は、この発明の一つの実施の形態として、冷蔵庫の全体の構成を概略的に示す断面図である。
【0038】
図1に示すように、冷蔵庫1の外周面は、外箱と内箱との間に断熱材が充填されて構成される断熱箱体100と、断熱箱体100の前面の開口部を覆う断熱扉によって形成されている。断熱箱体100の内部は、複数の断熱仕切板によって上下方向に複数の貯蔵室に区切られている。貯蔵室は、上から順に、食品を貯蔵するための冷蔵室104、氷を作製するための製氷室103、食品を冷凍するための冷凍室102、青果物を収容して保存するための野菜室101である。冷蔵室104、製氷室103、冷凍室102、野菜室101のそれぞれの前面の開口部は、冷蔵室扉114、製氷室扉113、冷凍室扉112、野菜室扉111によって開放または閉塞される。断熱箱体100の内部において貯蔵室の背面側には、冷凍サイクルユニット、電装ボックス150、冷気回路130等が配置されている。
【0039】
断熱箱体100、冷蔵室扉114、製氷室扉113、冷凍室扉112、野菜室扉111、断熱仕切板の内部には断熱材が充填されており、貯蔵室内の温度が外気の影響を受けないように構成されている。
【0040】
冷凍サイクルユニットは、圧縮器121と蒸発器122と凝縮器125とから構成されている。冷凍サイクルユニットは、冷凍サイクルを構成するユニットであり、圧縮器121と、補助放熱器と、凝縮器125と、減圧器(コールドガス用キャピラリーチューブ、C用キャピラリーチューブ)と、蒸発器(主蒸発器)122とが、冷媒パイプ(冷媒管)によって順に接続されて構成されている。冷凍サイクルの作動媒体である冷媒が、圧縮器121、凝縮器125、蒸発器122の順に流れて圧縮器121に戻るサイクルをコールドガスサイクルとする。圧縮器121は、冷媒を高温、高圧下において圧縮する。圧縮器121は作動熱を発生するため、密閉度が高く断熱性の高い機械室内に配置されている。凝縮器125は、除霜水によって、冷媒を凝縮、液化している。凝縮器125は、蒸発器122が除霜(霜取り)するときに生じる水(除霜水)を蒸発させる機能も有している。蒸発器122は、凝縮器125を経ることによって低温、低圧になった液化冷媒(冷媒液)を気化させる。蒸発器122は、冷蔵庫1内の周囲の空気の熱を奪うことによって、冷媒液を蒸発(ガス化)させる。蒸発器122としては様々な方式が用いられるが、一例としては、フィンチューブ型の熱交換器が挙げられる。蒸発器122において熱を奪われた空気は、−25℃程度の冷気となる。
【0041】
蒸発器122の上方には、ファン131が配置されている、ファン131は、蒸発器122の近くで冷却された空気、すなわち冷気を冷気回路130内に送り込む。
【0042】
冷気回路130内においては、蒸発器122の下方にガラス管ヒータ123と排水管124が配置され、凝縮器125の下方には蒸発皿126が配置されている。ガラス管ヒータ123は、蒸発器122につく霜を融解させる。除霜水は、排水管124を通って蒸発皿126に排出される。
【0043】
蒸発器122によって−25℃程度に冷却された空気、すなわち、冷気は、ファン131が駆動することによって、冷気回路130内に吹き出される。ファン131によって冷気回路130内に吹き出された冷気は、冷気回路130内を流れて、各貯蔵室の背面側から各貯蔵室内に流入する。
【0044】
電装ボックス150内には、温度制御手段として温度制御ユニット、日付認識手段としてカレンダー部、冷蔵庫1の制御部などが配置されている。制御部は、冷蔵庫1の全体の動作制御等を行う中枢部分となっており、冷凍サイクルユニット等の各部材の駆動を有機的に制御して、冷蔵庫1の動作を統括制御するものである。外気温検出手段として外気サーミスタ142は、電装ボックス150から冷蔵庫1の外部に向かって突出している。断熱箱体100の前面には、使用者が温度制御を切り替えるための温度制御切替手段と、使用者が野菜室101内の温度を設定するための温度切替スイッチが配置されている。温度制御切替手段と温度切替スイッチは、冷蔵庫1の側面など、別の位置に配置されていてもよい。
【0045】
冷蔵庫1内の冷気の流れを以下に説明する。各貯蔵室の背面側には、複数の開口部を有する断熱壁が形成されている。冷蔵庫1において断熱壁よりも背面側には冷凍サイクルユニットが配置されており、冷凍サイクルユニットから発生する冷風が、冷気回路130内を流通し、断熱壁の開口部を通って、冷蔵庫1の背面側から前方側に向かって、図中に二点鎖線の矢印で示す方向に、各貯蔵室の内部に吹き込む。各貯蔵室は、このような間接冷却方式によって冷却される。
【0046】
各貯蔵室内に流入した冷気は、各貯蔵室内を通って、食品を冷凍、冷蔵し、各貯蔵室の前面側から流出する。冷気は、冷蔵庫1の前面側から背面側に向かって断熱仕切板の内部を通って、貯蔵室の後方に配置されている冷凍サイクルユニットの蒸発器122の近傍に流出する。
【0047】
蒸発器122の近傍では、空気は再び冷却されて、ファン131によって冷気回路130内に吹き出される。冷気回路130は、このように、冷気の循環経路を構成している。
【0048】
例えば、冷気回路130から野菜室101に流入した冷気は、内部容器115の外周面に沿って、野菜室101の内部を冷却しながら流れて、野菜室101の上面を形成する断熱仕切板の前面から、断熱仕切板の内部に流入し、冷蔵庫1の背面側に戻り、背面側冷気流出路内に流れ込む。
【0049】
野菜室101の内部には、青果物が直接冷気に触れないようにするために、内部容器115が配置されている。青果物は、内部容器115内に収容される。内部容器115の近傍には、野菜室101内の温度を検出するための野菜室サーミスタ141が取り付けられている。また、野菜室101の内部においては、冷気回路130の開口部に、野菜室ダンパ132が配置されている。野菜室ダンパ132は、冷気回路130の開口部を開放または閉塞して、冷気を野菜室101の内部に流通させるか、流通させないかを切り替えることができる。野菜室ダンパ132は、温度制御ユニットによって開閉を制御される。野菜室ダンパ132は、野菜室101内の温度制御と連動し、野菜室101内を冷却する必要があるときには開かれて、冷気回路130内の冷気を野菜室101に導入する。
【0050】
図2は、野菜室と、野菜室の温度の検出と制御を行う構成を模式的に示す図である。野菜室は、側面から見た状態が示されている。
【0051】
図2に示すように、野菜室101の内部容器115には、野菜室サーミスタ141が取り付けられている。野菜室サーミスタ141は、電装ボックス150内の温度制御ユニット151と接続されている。温度制御ユニット151は、冷蔵庫1の全体の制御部の制御基板に、一体に配置されてもよい。
【0052】
図3は、この発明の一つの実施の形態として、冷蔵庫の温度制御関連の構成を示すブロック図である。
【0053】
図3に示すように、野菜室サーミスタ141は、野菜室101内の温度を検知して、温度制御ユニット151に信号を送信する。温度制御ユニット151は、野菜室サーミスタ141から受信した信号に基づいて、野菜室101内の温度が目的の温度に保たれるように、野菜室ダンパ132に制御信号を送信して野菜室ダンパ132の開閉を制御する。野菜室ダンパ132を開放すると、野菜室101内に冷気が導入されて野菜室101内の温度が下がる。野菜室ダンパ132を閉塞すると、野菜室101内に冷気が導入されず、野菜室101内の温度は冷気によって下げられない。
【0054】
カレンダー部152は、冷蔵庫1の工場出荷時に日時が設定され、その後も継続して日時を更新し続ける。カレンダー部152の初期設定の日時は、使用者が各家庭に冷蔵庫1を設置する時に現在日時を設定する構成としてもよい。カレンダー部152は、現在日時の情報を含む信号を温度制御ユニット151に送信する。温度制御ユニット151は、カレンダー部152から受信した信号に基づいて、現在の日付に応じて野菜室101内の温度を調整するように、野菜室ダンパ132に制御信号を送信して野菜室ダンパ132の開閉を制御する。
【0055】
外気サーミスタ142は、外気の温度を検知して、温度制御ユニット151に信号を送信する。温度制御ユニット151は、外気サーミスタ142から受信した信号に基づいて、外気サーミスタ142によって検知された外気の温度に応じて野菜室101内の温度を調整するように、野菜室ダンパ132に制御信号を送信して野菜室ダンパ132の開閉を制御する。
【0056】
温度切替スイッチ154は、使用者が設定した野菜室101内の温度を含む信号を、温度制御ユニット151に送信する。温度制御ユニット151は、温度切替スイッチ154から受信した信号に基づいて、使用者が温度切替スイッチ154を通して設定した設定温度に野菜室101内の温度を保つように、野菜室ダンパ132に制御信号を送信して野菜室ダンパ132の開閉を制御する。
【0057】
温度制御切替手段153は、使用者が、現在の日付に基づいて野菜室101内の温度を制御する第一の温度制御と、外気温度に基づいて野菜室101内の温度を制御する第二の温度制御と、使用者が温度切替スイッチ154を通して設定した温度に基づいて野菜室101内の温度を制御する第三の温度制御とを切替えるための切替手段である。
【0058】
ここで、青果物を冷蔵庫1の野菜室101で保存することによって、青果物中のアミノ酸や糖といった旨み成分、甘味成分が増加する過程について説明する。
【0059】
図4は、低温ストレスを受けた青果物中においてタンパク質が分解され、アミノ酸が合成される様子を模式的に示す図である。
【0060】
図4に示すように、生育温度T0(℃)で生育された青果物としてアスパラガス200を、生育温度T0(℃)よりもΔT(℃)だけ低温の保存温度T(℃)で保存すると、アスパラガス200には、低温ストレスSが与えられる。生育温度T0(℃)においては、アスパラガス200中のタンパク質210は、糖やアミノ酸に分解されていない。
【0061】
低温の保存温度T(℃)では、低温ストレスSが与えられることによって、青果物は、凍結に対する防御反応として酵素Eを発現させ、タンパク質210をアミノ酸220に分解する。酵素Eの種類によっては、多糖類が分解されて単糖類が生成されたり、糖類が合成されたりする場合もある。アスパラガス200中に発現する酵素Eの量は、低温ストレスSの大きさ、すなわち、生育温度T0(℃)と保存温度T(℃)との温度差ΔT(℃)に依存する。一方、酵素Eによるタンパク質210の分解の程度は、酵素活性の大きさに依存し、酵素活性は、保存温度T(℃)が酵素の最適温度に近ければ近いほど、大きくなる。
【0062】
このように、アスパラガス200中のタンパク質210が分解されてアミノ酸220が増加するためには、まず、低温ストレスSがアスパラガス200に与えられることが必要である。低温ストレスSが与えられなければ、酵素Eはアスパラガス200中に発現されない。同じ保存温度T(℃)であっても、低温ストレスSが与えられるかどうかは、アスパラガス200の生育温度T0(℃)に依存する。
【0063】
例えば、夏に27℃の外気温度下で生育されたアスパラガス200は、7℃程度の温度で保存されても低温ストレスSを受ける。一方、冬に5℃以下の外気温度下で生育されたアスパラガス200は、7℃程度の温度では、低温ストレスSを受けない。青果物の種類が同じアスパラガスであっても、生育期の温度が異なれば、アスパラガス200が低温ストレスSであると受け取って防御反応が引き起こされる臨界温度が異なる。
【0064】
一方、アスパラガス200の代謝によって、アスパラガス200中に生成された糖やアミノ酸220がアスパラガス200自体によって消費される。
【0065】
アスパラガス200中のアミノ酸220や糖の量の総量は、低温ストレスSに対する防御反応として生成されたアミノ酸220や糖の量と、代謝によって消費されるアミノ酸220や糖の量によるものである。したがって、低温ストレスSによって酵素Eをできるだけ多く発現させた上に、この酵素Eを活性化させ、アミノ酸220や糖といった旨み成分、甘味成分の増加を促進させて、更に、代謝によるアミノ酸220や糖の減少を抑えることにより、全体として、アスパラガス200の旨みや甘味を増加させることができる。
【0066】
そこで、冷蔵庫1においては、野菜室101内の青果物の生育期に応じて、野菜室101内の温度を制御する。野菜室101内の温度制御について以下に説明する。野菜室101内の温度制御は、以下の第一〜第三の温度制御によって行われる。第一〜第三の温度制御を、図3を用いて説明する。
【0067】
野菜室101内の温度は、第一の温度制御としては、野菜室101に収容される青果物が栽培された生育環境の温度に応じて定められる。
【0068】
例えば、1年のうち、7月1日から10月31日までを夏期間、残りの期間を冬期間とするように予め設定しておく。カレンダー部152が認識した現在日が夏期間であれば、野菜室101の温度が5〜8℃になるように温度制御ユニット151が野菜室ダンパ132を制御する。一方、カレンダー部152が認識した現在日が冬期間であれば、野菜室101の温度が0〜−1℃になるように制御する。現在の青果物の流通では、季節に拘りなく通年で夏野菜、冬野菜が流通する場面もあるが、この実施の形態においては、いわゆる「旬」を基準として大きく2つの季節に分けるとする。また、実際に冷蔵庫1を設置する地域によっては、夏野菜、冬野菜の流通時期も若干異なることもあるので、期間の設定は、使用者によって調整が可能なように構成しておく必要がある。
【0069】
このようにすることにより、野菜室101に収容される青果物が夏に生育されたものであっても、冬に生育されたものであっても、簡単に、旨み成分や甘味成分を増加させるのに最適な温度で保存することができる。また、夏栽培の青果物と冬栽培の青果物とで保存温度を変えることにより、冷蔵庫1の野菜室101を不要に低温にすることがないので、省エネルギーにも効果がある。
【0070】
このように、冷蔵庫1は、現在の日付を認識するためのカレンダー部152を備え、温度制御ユニット151は、カレンダー部152によって認識された日付に基づいて野菜室101の温度を制御するように構成されている。
【0071】
このようにすることにより、青果物が生育された季節の外気温に合わせて、青果物を、簡単に、旨み成分や甘味成分を増加させるのに最適な温度で保存することができる。
【0072】
野菜室101内の温度は、第二の温度制御としては、外気サーミスタ142によって検知された外気温度に基づいて制御される。外気温度が10℃以上であれば、野菜室101内の温度は5℃以上8℃以下に保持され、外気温度が10℃未満であれば、野菜室101内の温度は−1℃以上0℃以下に保持されるように、野菜室ダンパ132が温度制御ユニット151によって制御される。
【0073】
このように、冷蔵庫1は、外気温度を検知するための外気サーミスタ142を備え、温度制御ユニット151は、外気サーミスタ142によって検知された外気温度に基づいて野菜室101の温度を制御するように構成されている。
【0074】
このようにすることにより、気温の高い時期に生育された青果物と、気温の低い時期に生育された青果物を、簡単に、旨み成分や甘味成分を増加させるのに最適な温度で保存することができる。
【0075】
野菜室101内の温度は、第三の温度制御としては、使用者が、温度切替スイッチ154を操作することによって、野菜室101内の温度を調整する。この場合には、冷蔵庫1は報知部を備え、カレンダー部152が認識した現在日に基づいて、使用者に、設定温度を変更するように報知してもよい。
【0076】
また、冷蔵庫1は、野菜室101に収容される青果物の生育期に応じて温度制御ユニット151が野菜室101の温度を制御する第一の温度制御と、外気サーミスタ142によって検知された外気温度に基づいて温度制御ユニット151が野菜室101の温度を制御する第二の温度制御と、野菜室101に収容される青果物の生育期または外気サーミスタ142によって検知された外気温度のいずれに基づいても野菜室101の温度を制御しない第三の温度制御とを切り替えるための温度制御切替手段153を備える。
【0077】
このようにすることにより、野菜室101に収容されている青果物に合わせて、使用者の判断に基づいて、青果物を、旨み成分や甘味成分を増加させるのに最適な温度で保存することができる。
【0078】
第一の温度制御と、第二の温度制御と、第三の温度制御の切替は、使用者によって温度制御切替手段153を通して行われる。
【0079】
図5は、温度制御されている野菜室の温度変化の例を示す図である。
【0080】
図5に示すように、野菜室101の温度は、例えば、−1℃から8℃までの範囲内で周期的に変化するように制御されてもよい。温度制御ユニット151は、野菜室サーミスタ141によって検知された野菜室101の温度が図5に示すように周期的に変化するように、野菜室ダンパ132を制御する。
【0081】
低温ストレスを受ける臨界温度は、青果物の種類や、青果物が生育された温度に依存する。そこで、野菜室101内に様々な青果物が保存されている場合には、野菜室101の温度を周期的に変化させることによって、野菜室101に収容されている全ての青果物の低温ストレスの臨界温度を通過することができる。
【0082】
このように、冷蔵庫1においては、温度制御ユニット151は、野菜室101内の温度を所定の温度範囲内において周期的に変化させることが可能であるように構成されている。
【0083】
このようにすることにより、野菜室101に収容されている様々な青果物について、低温ストレスを受ける臨界温度を通過させながら保存することができるので、様々な青果物中のアミノ酸や糖類を増加させることができる。
【0084】
また、低温で保存されている青果物中においてアミノ酸や糖が増加する期間は、青果物の種類によって若干変動するが、おおむね1週間の保存で最大の量となり、2週間程度保存されると、保存開始直後の量よりも減少してしまうということが今回の研究によって明らかになった。そこで、青果物が野菜室101内に保存される期間は、1週間以内であることが好ましい。
【0085】
以上のように、冷蔵庫1は、青果物を収容するための野菜室101と、野菜室101内の温度を制御するための温度制御ユニット151とを備え、温度制御ユニット151は、野菜室101に収容される青果物の生育期に応じて野菜室101の温度を制御するように構成されている。
【0086】
この実施の形態では、冷蔵庫1が、青果物を収容するための野菜室101と、野菜室101内の温度を制御するための温度制御ユニット151とを備え、温度制御ユニット151は、野菜室101に収容される青果物の生育期に応じて野菜室101の温度を制御するように構成されていることにより、青果物中の旨みや甘味成分を効果的に増加させることができる。
【0087】
また、青果物の生育温度によって保存温度を変えることにより、冷蔵庫1の野菜室101を不要に低温にする必要がないので、省エネルギーにも効果がある。
【0088】
このようにすることにより、青果物の栄養分の中でも特に食味に大きな影響を及ぼす甘味成分を、効率的に省エネルギーで増加または維持することが可能な冷蔵庫1を提供することができる。
【実施例1】
【0089】
この発明の一つの効果として、青果物中のアミノ酸量の増加がある。この効果を以下のように確認した。
【0090】
青果物として、冬栽培のアスパラガス、夏栽培のアスパラガス、夏栽培のキュウリについて、−1℃で保存した場合と7℃で保存した場合のそれぞれの場合のアミノ酸量の時間変化を測定した。
【0091】
冬栽培のアスパラガス、夏栽培のアスパラガス、夏栽培のキュウリを、それぞれ20本ずつ、貯蔵庫内に保存した。貯蔵庫内の温度が−1℃と7℃のそれぞれの場合について、20本の青果物を全量、混合して、アミノ酸の量の変化を測定した。
【0092】
アミノ酸の測定は高速液体クロマトグラフィー測定(HPLC)を利用して行った。
【0093】
アミノ酸分析計としては、株式会社日立製作所製、型番L−8800型の高速アミノ酸分析計を用いた。カラムとしては、株式会社日立製作所製日立カスタムイオン交換樹脂(φ4.6mm×60mm)を用いた。移動相としては、和光純薬工業株式会社製、型番L−8500PFの緩衝液を用いた。反応液としては、和光純薬工業のニンヒドリン試薬を用いた。
【0094】
アミノ酸量の測定に用いる試料は、以下のようにして調製した。
【0095】
まず、試料である各種青果物をホモジナイザーによって破砕した。ここに、除タンパク剤として、10W/V%のスルホサリチル酸を加えた。その後、試料とスルホサリチル酸の混合物をよく振とうした。その結果、試料中に混合しているタンパク質がスルホサリチル酸と反応して沈殿した。これを濾過して、沈殿物を除去した試料溶液を調製した。試料中にタンパク質が残っていると、分解してアミノ酸となる可能性があるため、タンパク質を除去する前処理を試料調製の段階で行うのである。
【0096】
次に、各青果物に予想される本測定法で測定可能な適切な濃度範囲になるように、試料溶液を希釈した。この希釈した溶液を試験溶液とした。液体クロマトグラフィーの原理を利用したアミノ酸自動分析計にこの試験溶液を注入することによってアミノ酸を分析した。
【0097】
アミノ酸の定量は、濃度が既知の標準試料をアミノ酸分析計に注入し、そのピーク面積を予め調べておき、濃度未知な試料のピーク面積が標準試料のピーク面積の何倍かを調べて、標準試料の濃度×倍率で計算して濃度を決定した。
【0098】
今回の測定では、アミノ酸の中でも甘味成分に関与するアミノ酸であるアラニン、グリシン、プロリン、セリン、スレオニンを分析した。甘味成分、すなわち、甘味を呈するアミノ酸が増加した青果物は甘くなり美味しさが増す。
【0099】
図6は、冬栽培のアスパラガスを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)のアミノ酸量の変化を示す図である。
【0100】
図6の(A)に示すように、冬栽培のアスパラガスを−1℃で保存すると、保存開始から3日目にはアミノ酸量は増加していないが、7日目にはアミノ酸量が初期よりも多くなっていた。10日目にも、7日目と比較するとアミノ酸量が減少したが、初期より多いアミノ酸量が検出された。14日目には、初期のアミノ酸量よりも少なくなった。
【0101】
図6の(B)に示すように、冬栽培のアスパラガスを7℃で保存すると、保存開始から3日目にアミノ酸量が大きく減少した。アミノ酸量は、7日目には、3日目よりも増加したが、初期のアミノ酸量よりも少なかった。アミノ酸量は、10日目、14日目には、7日目よりもさらに減少した。
【0102】
このように、冬に栽培され、寒い生育環境で栽培されたアスパラガスでは、−1℃で保存された場合には、甘味成分のアミノ酸が増加したが、7℃で保存されると、初期と比較して、甘味成分のアミノ酸量は増加しなかった。
【0103】
また、冬に栽培され、寒い生育環境で栽培されたアスパラガスでは、アミノ酸量は、−1℃で保存したとき、保存開始から7日目に最大となった。
【0104】
青果物の種類によって、アミノ酸の量が最大量を示す時期は若干異なるが、概ね保存開始から一週間後に最大となる場合が多い。本発明の冷蔵庫において青果物を保存する期間を一週間以内とすることによって、甘味成分のアミノ酸が最も増した状態で青果物を調理に用いる等することができる。また、保存開始から1週間以内程度で青果物中のアミノ酸が増加するため、青果物を低温で保存することによる効果を、週末にまとめ買いするような、通常の生活サイクルの中で享受することができる。
【0105】
青果物が低温ストレスを受ける臨界温度は、個々の青果物固有のものであるが、夏に栽培されたほとんどの青果物に関しては、5〜8℃で保存することが低温ストレスとなった。また、冬に栽培されたほとんどの青果物は−1〜0℃で保存することが低温ストレスとなった。ただし、低温ストレスによって発現する酵素量も酵素活性も青果物固有であるため、アミノ酸の量が食味として明らかに感じられるほど多量に増加する場合もあれば、化学的手法による成分分析をして初めて分かる程度にしか増加しないという場合もまれにあった。
【0106】
図7は、夏栽培のアスパラガスを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)のアミノ酸量の変化を示す図である。
【0107】
図7の(A)に示すように、夏栽培のアスパラガスを−1℃で保存すると、保存開始から3日目には初期よりもアミノ酸量が増加した。保存開始から7日目には、3日目と比較するとわずかにアミノ酸量が減少したが、初期と比較すると増加していた。
【0108】
図7の(B)に示すように、夏栽培のアスパラガスを7℃で保存すると、保存開始から3日目には初期よりもアミノ酸量が増加した。アミノ酸量は、7日目には、3日目と比較すると減少したが、初期と比較すると増加していた。
【0109】
図7の(A)と(B)に示すように、3日目には、7℃で保存したアスパラガスの方が、−1℃で保存したアスパラガスよりもアミノ酸量がわずかに多かった。7日目には、−1℃で保存したアスパラガスと7℃で保存したアスパラガスのアミノ酸量は、ほぼ同じであった。
【0110】
このように、夏に暖かい生育環境で栽培されたアスパラガスでは、−1℃で保存されても、7℃で保存されても、甘み成分のアミノ酸が増加した。
【0111】
図6と図7に示す結果から、冬に寒い生育環境で栽培されたアスパラガスには、−1℃で保存されると低温ストレスが与えられるが、7℃で保存された場合には低温ストレスが与えられないと考えられる。一方、夏に暖かい生育環境で栽培されたアスパラガスには、−1℃で保存されても、7℃で保存されても、低温ストレスが与えられると考えられる。このことから、低温ストレスが与えられるか否かは、生育環境と保存環境との温度差(ΔT)に依存すると推測される。すなわち、冬の環境下では栽培温度が低温であるため、低温である7℃で保存してもΔTが小さく、低温ストレスが与えられないが、より低温である−1℃で保存された場合に低温ストレスが与えられると推測される。また、夏の環境下では栽培温度が高温であるため、7℃で保存してもΔTが大きくなり、7℃でも低温ストレスが与えられると考えられる。
【0112】
また、図7に示すように、夏栽培のアスパラガスを用いた実験では、アミノ酸量は、−1℃よりも7℃の方がやや多かった。生育温度と保存温度との差ΔTは、−1℃で保存される方が大きく、低温ストレスの強さは、−1℃で保存される方が強いので、酵素発現量は−1℃で保存される方が多い。一方、酵素活性は、最適温度に近い7℃の方が−1℃よりも大きい。アミノ酸の増加量(酵素発現量×酵素活性)は、全体として、−1℃で保存される方が7℃で保存される場合よりも上回ったと考えられる。
【0113】
図8は、夏栽培のキュウリを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)のアミノ酸量の変化を示す図である。
【0114】
図8の(A)に示すように、夏栽培のキュウリを−1℃で保存すると、保存開始から3日目には初期の約1.4倍のアミノ酸量となり、8日目には約1.8倍、14日目には約2倍、と、次第にアミノ酸量が増加した。
【0115】
図8の(B)に示すように、夏栽培のキュウリを7℃で保存すると、保存開始から3日目には初期の約1.2倍のアミノ酸量となり、8日目には約1.5倍、14日目には約1.6倍、と、次第にアミノ酸量が増加した。
【0116】
このように、夏に比較的暖かい生育環境で栽培されたキュウリは、−1℃で保存されても、7℃で保存されても、低温ストレスを受けることがわかった。
【0117】
以上の結果から、低温で保存することによって青果物中の甘味成分のアミノ酸が増加する温度は、その青果物の生育環境の温度帯に依存することがわかった。そこで、青果物の生育温度に応じて、青果物の保存温度を制御することによって、青果物中のアミノ酸、すなわち、旨み成分や甘味成分を増加させることができる。
【実施例2】
【0118】
この発明の一つの効果として、青果物中の糖量の増加がある。この効果を以下のように確認した。
【0119】
青果物として、冬栽培のキャベツ、夏栽培のニンジン、夏栽培のスイカについて、−1℃で保存した場合と7℃で保存した場合のそれぞれの場合の糖量の時間変化を測定した。
【0120】
冬栽培のキャベツ、夏栽培のニンジン、夏栽培のスイカは、それぞれ20個ずつ、貯蔵庫内に保存した。貯蔵庫内の温度が−1℃と7℃のそれぞれの場合について、20個の青果物を全量、混合して、アミノ酸の量の変化を測定した。
【0121】
糖量の測定は、酵素反応を利用した遊離糖測定キット(Fキット:(株)J.K.インターナショナル社販売、ロシュ、ダイアグノスティックス社製造)を用いて行なった。
【0122】
遊離糖測定用の試料は以下の手順で調製した。まず、試料である各種青果物をホモジナイザーにより破砕した。破砕した試料をガーゼでろ過し、比較的大きな残留物のみ除去した。ろ過した試料溶液を沸騰する直前まで加熱した。この操作により、試料中に含まれている酵素が失活した。試料を3000rpmで1分間ほど遠心分離し透明な上清液を得た。この上清液をFキットにて分析し、ショ糖、ブドウ糖、果糖を定量した。
【0123】
Fキットの測定原理を以下に示す。グルコース(ブドウ糖)の測定では、次の反応を利用する。
【0124】
(1)グルコース+ATP→グルコース‐6-リン酸+ADP(酵素反応)
(2)グルコース‐6-リン酸→グルコン酸‐6‐リン酸+NADPH+H+(酵素反応)
生成したNADPHの量はグルコース量に相当するので、340nmの吸光度の増加により定量を行う。
【0125】
フルクトース(果糖)の測定では、次の反応を利用する。
【0126】
(3)フルクトース+ATP→フルクトース‐6-リン酸+ADP(酵素反応)
(4)フルクトース‐6-リン酸→グルコース‐6-リン酸(酵素反応)
グルコース‐6-リン酸は(2)の反応によりグルコン酸‐6‐リン酸になるが、その際に生成するNADPHの量はフルクトースの量に相当する。
【0127】
サッカロース(ショ糖)の測定では、次の反応を利用する。
【0128】
(5)サッカロース+H2O→グルコース+フルクトース
遊離のグルコースとショ糖を加水分解してできたグルコースを(1)(2)の反応でトータルのグルコース量として求めた後、ショ糖の濃度をグルコースとトータルのグルコース量の差より算出した。
【0129】
図9は、冬栽培のキャベツを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)の糖量の変化を示す図である。
【0130】
図9の(A)に示すように、冬栽培のキャベツを−1℃で保存すると、糖量は、保存開始から3日目には初期よりもわずかに増加した。7日目には、糖量は、3日目とほぼ同じであった。
【0131】
図9の(B)に示すように、冬栽培のキャベツを7℃で保存すると、糖量は、保存開始から3日目には初期よりもわずかに減少した。7日目には、糖量は、3日目とほぼ同じであった。
【0132】
このように、冬に栽培され、寒い生育環境で栽培されたキャベツでは、−1℃で保存された場合には、糖の量が増加したが、7℃で保存されると、初期と比較して、糖量は増加せず、次第に減少した。
【0133】
図10は、夏栽培のスイカを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)の糖量の変化を示す図である。
【0134】
図10の(A)に示すように、夏栽培のスイカを−1℃で保存すると、保存開始後3日目には糖量が増加し、7日目には、さらに増加していた。
【0135】
図10の(B)に示すように、夏栽培のスイカを7℃で保存すると、保存開始後3日目には糖量が増加し、7日目には、さらに増加していた。
【0136】
このように、夏に栽培され、暖かい生育環境で栽培されたスイカでは、−1℃で保存されても、7℃で保存されても、保存開始後、糖量が増加した。
【0137】
図11は、夏栽培のニンジンを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)の糖量の変化を示す図である。
【0138】
図11の(A)に示すように、夏栽培のニンジンを−1℃で保存すると、保存開始後3日目には糖量が増加し、8日目には、さらに増加していた。14日目には、8日目と比較して、糖量がわずかに減少していた。
【0139】
図11の(B)に示すように、夏栽培のニンジンを7℃で保存すると、保存開始後3日目には糖量が増加し、8日目には、さらに増加していた。14日目には、8日目と比較して、糖量が減少していた。
【0140】
このように、夏に栽培され、暖かい生育環境で栽培されたニンジンでは、−1℃で保存されても、7℃で保存されても、保存開始後糖量が増加した。糖量は、8日目に最大になった。
【0141】
青果物の種類によって、糖の量が最大量を示す時期は若干異なるが、概ね保存開始から一週間後に最大となる場合が多い。本発明の冷蔵庫において青果物を保存する期間を一週間以内とすることによって、糖が最も増した状態で青果物を調理に用いる等することができる。また、保存開始から1週間以内程度で青果物中の糖が増加するため、青果物を低温で保存することによる効果を、週末にまとめ買いするような、通常の生活サイクルの中で享受することができる。このような、糖の量が1週間以内に増加するという傾向は、他の青果物でも同様に見られた。
【0142】
以上の結果から、低温で保存することによって青果物の糖量が増加する温度は、その青果物の生育環境の温度帯に依存することがわかった。そこで、青果物の生育温度に応じて、青果物の保存温度を制御することによって、青果物中の糖類、すなわち、甘味成分を増加させることができる。
【0143】
青果物が低温ストレスを受ける臨界温度は、個々の青果物に固有の温度であり、青果物の種類や生育温度に依存する。夏に栽培されたほとんどの青果物に関しては、5〜8℃で保存することが低温ストレスとなった。また、冬に栽培されたほとんどの青果物は−1〜0℃で保存することが低温ストレスとなった。ただし、低温ストレスによって発現する酵素量も酵素活性も青果物固有であるため、糖の量が食味として明らかに感じられるほど多量に増加する場合もあれば、化学的手法による成分分析をして初めて分かる程度にしか増加しないという場合もまれにあった。
【0144】
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】この発明の一つの実施の形態として、冷蔵庫の全体の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】野菜室と、野菜室の温度の検出と制御を行う構成を模式的に示す図である。
【図3】この発明の一つの実施の形態として、冷蔵庫の温度制御関連の構成を示すブロック図である。
【図4】低温ストレスを受けた青果物中においてタンパク質が分解され、アミノ酸が合成される様子を模式的に示す図である。
【図5】温度制御されている野菜室の温度変化の例を示す図である。
【図6】冬栽培のアスパラガスを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)のアミノ酸量の変化を示す図である。
【図7】夏栽培のアスパラガスを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)のアミノ酸量の変化を示す図である。
【図8】夏栽培のキュウリを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)のアミノ酸量の変化を示す図である。
【図9】冬栽培のキャベツを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)の糖量の変化を示す図である。
【図10】夏栽培のスイカを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)の糖量の変化を示す図である。
【図11】夏栽培のニンジンを−1℃で保存した場合(A)と、7℃で保存した場合(B)の糖量の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0146】
1:冷蔵庫、101:野菜室、142:外気サーミスタ、151:温度制御ユニット、152:カレンダー部、153:温度制御切替手段、200:アスパラガス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青果物を収容するための野菜室と、
前記野菜室内の温度を制御するための温度制御手段とを備え、
前記温度制御手段は、前記野菜室に収容される青果物の生育期に応じて前記野菜室の温度を制御するように構成されている、冷蔵庫。
【請求項2】
現在の日付を認識するための日付認識手段を備え、
前記温度制御手段は、前記日付認識手段によって認識された日付に基づいて前記野菜室の温度を制御するように構成されている、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
外気温度を検知するための外気温検知手段を備え、
前記温度制御手段は、前記外気温検知手段によって検知された外気温度に基づいて前記野菜室の温度を制御するように構成されている、請求項1または請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記野菜室に収容される青果物の生育期に応じて前記温度制御手段が前記野菜室の温度を制御する第一の温度制御と、前記外気温検知手段によって検知された外気温度に基づいて前記温度制御手段が前記野菜室の温度を制御する第二の温度制御と、前記野菜室に収容される青果物の生育期または前記外気温検知手段によって検知された外気温度のいずれに基づいても前記野菜室の温度を制御しない第三の温度制御とを切り替えるための温度制御切替手段を備える、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記温度制御手段は、前記野菜室内の温度を所定の温度範囲内において周期的に変化させることが可能であるように構成されている、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項1】
青果物を収容するための野菜室と、
前記野菜室内の温度を制御するための温度制御手段とを備え、
前記温度制御手段は、前記野菜室に収容される青果物の生育期に応じて前記野菜室の温度を制御するように構成されている、冷蔵庫。
【請求項2】
現在の日付を認識するための日付認識手段を備え、
前記温度制御手段は、前記日付認識手段によって認識された日付に基づいて前記野菜室の温度を制御するように構成されている、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
外気温度を検知するための外気温検知手段を備え、
前記温度制御手段は、前記外気温検知手段によって検知された外気温度に基づいて前記野菜室の温度を制御するように構成されている、請求項1または請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記野菜室に収容される青果物の生育期に応じて前記温度制御手段が前記野菜室の温度を制御する第一の温度制御と、前記外気温検知手段によって検知された外気温度に基づいて前記温度制御手段が前記野菜室の温度を制御する第二の温度制御と、前記野菜室に収容される青果物の生育期または前記外気温検知手段によって検知された外気温度のいずれに基づいても前記野菜室の温度を制御しない第三の温度制御とを切り替えるための温度制御切替手段を備える、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記温度制御手段は、前記野菜室内の温度を所定の温度範囲内において周期的に変化させることが可能であるように構成されている、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−198097(P2009−198097A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40825(P2008−40825)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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