説明

冷蔵庫

【課題】冷蔵用蒸発器と冷凍用蒸発器の新たな配置を提案すると共に、冷凍用蒸発器内に配置された一部分の冷媒配管内の冷媒滞留量を極力小さく抑える。
【解決手段】冷媒を吐出する圧縮機5と前記圧縮機5と接続し合う凝縮器7と前記凝縮器7からの冷媒の流路又は流量を切替える第1、第2吐出ポート9b、9cとを有する切替弁9と前記切替弁9の第1吐出ポート9bと接続し冷蔵室内を冷却する冷蔵用蒸発器1と前記切替弁9の第2吐出ポート9cと接続し冷凍室を冷却する冷凍用蒸発器3とを備える一方、前記冷蔵用蒸発器1の出口側冷媒配管25の一部分を、前記冷凍用蒸発器3内に配置させると共に外に延長された前記冷媒配管25を、前記圧縮機5へ向かう冷凍用蒸発器3の出口側冷媒配管33と接続し合流させる回路構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷蔵室や冷凍室等を冷却する複数の蒸発器を備えたものに適する冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の冷蔵庫は、冷蔵室や冷凍室等の複数の庫内温度安定化の観点から例えば、冷蔵用蒸発器、冷凍用蒸発器というように複数の蒸発器を用いてそれぞれ独立した庫内冷却が行なわれる。
【0003】
複数の蒸発器を用いてそれぞれの庫内冷却を行なう冷蔵用蒸発器と冷凍用蒸発器は3方弁によって切替え制御される並列配置と直列配置がある。
【0004】
3方弁によって切替え制御される並列配置の冷蔵用蒸発器と冷凍用蒸発器において、冷蔵室の冷却運転時にあっては冷蔵用蒸発器にのみ冷媒が流れる一方、冷凍室の冷却運転時にあっては、冷凍用蒸発器にのみ冷媒が流れる。また、冷蔵室、冷凍室の同時冷却運転時にあっては冷蔵用蒸発器と冷凍用蒸発にそれぞれ同時に冷媒が流れる冷媒回路が構成される(特許文献1参照)。
【0005】
一方、3方弁によって切替え制御される直列配置の冷蔵用蒸発器と冷凍用蒸発器において、冷蔵室の冷却運転時にあっては冷蔵用蒸発器、冷凍用蒸発器の順に冷媒が流れる一方、冷凍室の冷却運転時にあっては冷凍用蒸発器にのみ冷媒が流れる。また、冷蔵室、冷凍室の同時冷却運転時にあっては冷蔵用蒸発器と冷凍用蒸発器にそれぞれ同時に冷媒が流れる冷媒回路が構成される(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−82851号公報
【特許文献2】特開2002−81817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
冷蔵用蒸発器と冷凍用蒸発器が並列配置された前者の手段と直列配置された後者の手段にあっては、それぞれ一長一短があり、例えば、冷蔵室のみを冷却する冷蔵室冷却運転時において冷媒の滞留という問題をかかえる。特に、直列配置された後者の手段にあっては、冷蔵室の冷却時に冷蔵室蒸発器を通過した後、運転停止状態にある冷凍用蒸発器の順に冷媒が通過するため、その通過時に冷凍用蒸発器の温度影響を受けて冷凍用蒸発器内において冷媒の滞留問題が顕著となる。
【0008】
そこで、本発明にあっては、並列配置の長所を採用した新たな配置を提案すると共に、冷凍用蒸発器の冷媒滞留量を極力抑え、好適な冷媒循環量の確保ができるようにした冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明にあっては、冷媒を吐出する圧縮機と前記圧縮機と接続し合う凝縮器と前記凝縮器からの冷媒の流路又は流量を切替える第1、第2吐出ポートとを有する切替弁と前記切替弁の第1吐出ポートと接続し冷蔵室内を冷却する冷蔵用蒸発器と前記切替弁の第2吐出ポートと接続し冷凍室を冷却する冷凍用蒸発器とを備え、前記冷蔵用蒸発器の出口側冷媒配管の一部分を前記冷凍用蒸発器内に配置させると共に外に延長された前記冷媒配管を、前記圧縮機へ向かう冷凍用蒸発器の出口側冷媒配管と接続し合流させたことを特徴とする。
【0010】
本発明を実施するにあたって第1に、前記冷凍用蒸発器内に配置された冷蔵用蒸発器の冷媒配管の配管径を、前記冷凍用蒸発器内の冷媒配管の配管径よりも細径とすることで、一部分となる冷媒配管内に滞留する冷媒の滞留量を少なく抑えることができるようにすることが望ましい。
【0011】
第2に、前記冷凍用蒸発器内に配置された冷蔵用蒸発器の冷媒配管の配管全長を、前記冷凍用蒸発器内の冷媒配管の配管全長よりも短く作ることで、一部分となる冷媒配管内に滞留する冷媒の滞留量を少なく抑えることができるようにすることが望ましい。
【0012】
第3に、前記冷凍用蒸発器内に配置された冷蔵用蒸発器の冷媒配管を、前記冷凍用蒸発器内の冷媒配管よりも風上側に臨む配置とすることで、熱交換時の効率を抑制し一部分となる冷媒配管内に滞留する冷媒の滞留量を少なく抑えることができるようにすることが望ましい。
【0013】
第4に、前記冷凍用蒸発器内に配置された冷蔵用蒸発器の冷媒配管に設けられたフィンのフィンピッチを、前記冷凍用蒸発器内の冷媒配管に設けられたフィンのフィンピッチよりも粗とすることで、熱交換時の効率を抑制し一部分となる冷媒配管内に滞留する冷媒の滞留量を少なく抑えることができるようにすることが望ましい。
【0014】
第5に、前記冷凍用蒸発器内に配置された冷蔵用蒸発器の冷媒配管を、配管全領域にわたってフィンをなくすことで、熱交換時の効率を抑制し一部分となる冷媒配管内に滞留する冷媒の滞留量を少なく抑えることができるようにすることが望ましい。
【0015】
第6に、前記冷凍用蒸発器内に配置された冷蔵用蒸発器の冷媒配管を、内面に溝のない溝なし配管、冷凍用蒸発器内の冷媒配管を内面に溝のある溝あり配管とすることで、熱交換時の効率を抑制し一部分となる冷媒配管内に滞留する冷媒の滞留量を少なく抑えることができるようにすることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、冷蔵室冷却時において、3方弁を切替えることで冷媒は冷蔵用蒸発器を通過した後、冷凍用蒸発器の順に流れ、冷蔵室の庫内冷却を行なうことができる。この時、冷蔵室蒸発器、冷凍室蒸発器の順に流れる冷媒は、冷凍室蒸発器内において温度影響を受けても独立した一部分の冷蔵用蒸発器の冷媒配管によって冷媒配管内に滞留する冷媒の滞留量を小さく抑えることで、好適な冷媒循環量の確保が可能となり、効率のよい冷却運転を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる冷凍サイクルの概要構成図。
【図2】冷蔵用蒸発器の具体例を示した概要説明図。
【図3】冷凍用蒸発器の具体例を示した概要説明図。
【図4】冷凍用蒸発器内において冷蔵用蒸発器の出口側冷媒配管の全領域にわたってフィンをなくした図2と同様の概要説明図。
【図5】冷凍用蒸発器内において冷蔵用蒸発器の出口側冷媒配管の一部分を示した概要斜視図(a)と冷凍用蒸発器の冷媒配管の一部分を示した概要斜視図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1乃至図5の図面を参照しながら本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0019】
図1は本発明にかかる冷蔵庫(図示していない)の冷凍サイクルの概要構成図を示しており、冷蔵室内を冷却する冷蔵用蒸発器1と冷凍室内を冷却する冷凍用蒸発器3の外に、圧縮機5、凝縮器7、切替弁となる3方弁9とを備える。
【0020】
3方弁は冷媒の流路又は流量を切替え制御するもので、入口ポート9aと吐出側となる第1、第2吐出ポート9b,9cとを有する。入口ポート9aは前記凝縮器7と、第1吐出ポート9bは前記冷蔵用蒸発器1の冷蔵用絞り装置11と、第2吐出ポート9cは前記冷凍用蒸発器3の冷凍用絞り装置13とそれぞれ連通している。
【0021】
冷蔵用絞り装置11は、キャピラリチューブとなっている。冷蔵用蒸発器1は、図2に示す如く多数のフィン15と各フィン15を貫通した冷媒配管17と冷蔵用ファン19とを有し、冷蔵用ファン19によって各フィン15の間を空気が通過する時、冷媒配管17内を流れる冷媒との間で熱交換が行なわれることで庫内冷却用の冷却風が生成される。
【0022】
一方、冷凍用絞り装置13はキャピラリチューブとなっている。冷凍用蒸発器3は、図3に示す如く多数のフィン21と各フィン21を貫通した冷媒配管23と、前記した冷蔵用蒸発器1の出口側冷媒配管25の一部分が並列配置された組合せ配管の構造となっている。
【0023】
冷凍用蒸発器3の冷媒配管23の一方となる入口23a側は前記冷凍用絞り装置13と、他方となる出口23b側は逆止弁26を介して前記圧縮機5と連通している。
【0024】
組合せ配管となる前記冷凍用蒸発器3内に配置された前記冷蔵用蒸発器1の一部分となる冷媒配管25の一方の入口25a側は前記冷蔵用蒸発器1の冷媒配管17と、他方となる出口25b側は前記圧縮機5へ向かう冷凍用蒸発器3の出口側冷媒配管33とそれぞれ連通し、冷凍用ファン27によって図3矢印の如く空気の流れが確保され熱交換が行なわれる。
【0025】
冷凍用蒸発器3内に配置された前記冷蔵用蒸発器1の一部分の冷媒配管25の入口25a側から出口25b側まで径は、冷凍用蒸発器3の冷媒配管23の入口23a側から出口23b側までの径より細く作られた細径となっている。
【0026】
冷蔵用蒸発器1の一部分の冷媒配管25の径を細径とする理由は、冷凍用蒸発器3内において一部分の冷媒配管25内に滞留する冷媒の滞留量を小さく抑えるための一手段となっている。この場合、冷凍用蒸発器3内に配置される一部分の冷媒配管25内に滞留する冷媒の滞留量を小さく抑えること手段としては、前記した手段に特定されない。例えば、冷蔵用蒸発器1の冷媒配管25の入口25a側から出口25b側までの長さ(全長)を、冷凍用蒸発器3の冷媒配管23の入口23a側から出口23b側までの長さ(全長)より短くする手段とすることで、一部分の冷媒配管25内に滞留する冷媒の滞留量を小さく抑える手段としてもよい。
【0027】
また、図3に示す如く組合せ配管となる冷蔵用蒸発器1の冷媒配管25を、冷凍用蒸発器3の冷媒配管23より風上側に配置することで、熱交換時の効率を抑制し一部分の冷媒配管25内に滞留する冷媒の滞留量を小さく抑える手段としてもよい。
【0028】
また、図3に示す如く組合せ配管となる冷蔵用蒸発器1の冷媒配管25のフィン29のフィンピッチ(フィンとフィンまでの距離)を、冷凍用蒸発器3の冷媒配管23のフィン21のフィンピッチより粗にすることで、熱交換時の効率を抑制し一部分の冷媒配管25内に滞留する冷媒の滞留量を小さく抑える手段としてもよい。
【0029】
また、図4に示す如く組合せ配管となる冷蔵用蒸発器1の冷媒配管25の全領域にわたってフィンをなくすことで、熱交換時の効率を抑制し一部分の冷媒配管25内に滞留する冷媒の滞留量を小さく抑える手段としてもよい。
【0030】
また、図5に示す如く組合せ配管となる冷蔵用蒸発器1の一部分の冷媒配管25を内面に溝のない溝なし管とし、冷凍用蒸発器3の冷媒配管23を内面にスパイラル状に形成された溝31のある溝あり管とすることで、熱交換時の効率を抑制し一部分の冷媒配管25内に滞留する冷媒の滞留量を小さく抑える手段としてもよい。
【0031】
このように構成された本発明によれば、3方弁9の切替え制御によって圧縮機5から吐出された冷媒が凝縮器7、冷蔵用絞り装置11、冷蔵用蒸発器1、冷凍用蒸発器3の一部分を通り、再び圧縮機5に戻る第1の冷凍サイクル(実線)によって冷蔵室の冷却運転が行なえる。また、3方弁9の切替え制御によって圧縮機5から吐出された冷媒が凝縮器7、冷凍用絞り装置13、冷凍用蒸発器3を通り、再び圧縮機5に戻る第2の冷凍サイクル(点線)によって冷凍室の冷却運転が行なえる。
【0032】
また、第1と第2の冷凍サイクルの組合せによって冷蔵室と冷凍室の同時冷却運転が行なえる。
【0033】
一方、第1の冷凍サイクルによる冷蔵室冷却運転時において、冷凍用蒸発器3内に配置された冷媒配管25内を冷媒が通過する時に冷凍用蒸発器3の低温の温度影響を受けても一部分となっているため冷媒配管25内に滞留する冷媒の滞留量は極力抑えられ、好適な冷媒循環量の確保が可能となり、効率のよい冷却運転が行なえる。
【符号の説明】
【0034】
1 冷蔵用蒸発器
3 冷凍用蒸発器
5 圧縮機
7 凝縮器
9 3方弁(切替弁)
9b 第1吐出ポート
9c 第2吐出ポート
25 冷蔵用蒸発器の出口側の冷媒配管
33 冷凍用蒸発器の出口側の冷媒配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を吐出する圧縮機と前記圧縮機と接続し合う凝縮器と前記凝縮器からの冷媒の流路又は流量を切替える第1、第2吐出ポートとを有する切替弁と前記切替弁の第1吐出ポートと接続し冷蔵室内を冷却する冷蔵用蒸発器と前記切替弁の第2吐出ポートと接続し冷凍室を冷却する冷凍用蒸発器とを備え、
前記冷蔵用蒸発器の出口側冷媒配管の一部分を前記冷凍用蒸発器内に配置させると共に外に延長された前記冷媒配管を、前記圧縮機へ向かう冷凍用蒸発器の出口側冷媒配管と接続し合流させたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記冷凍用蒸発器内に配置された冷蔵用蒸発器の冷媒配管の配管径は、前記冷凍用蒸発器内の冷媒配管の配管径よりも細径であることを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記冷凍用蒸発器内に配置された冷蔵用蒸発器の冷媒配管の配管全長は、前記冷凍用蒸発器内の冷媒配管の配管全長よりも短く作られていることを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記冷凍用蒸発器内に配置された冷蔵用蒸発器の冷媒配管は、前記冷凍用蒸発器内の冷媒配管よりも風上側に臨む配置となっていることを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記冷凍用蒸発器内に配置された冷蔵用蒸発器の冷媒配管に設けられたフィンのフィンピッチは、前記冷凍用蒸発器内の冷媒配管に設けられたフィンのフィンピッチよりも粗であることを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記冷凍用蒸発器内に配置された冷蔵用蒸発器の冷媒配管は、配管全領域にわたってフィンをなくしたことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記冷凍用蒸発器内に配置された冷蔵用蒸発器の冷媒配管は、内面に溝のない溝なし配管、冷凍用蒸発器内の冷媒配管は内面に溝のある溝あり配管となっていることを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−196948(P2010−196948A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41013(P2009−41013)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】