冷蔵庫
【課題】貯蔵室内の温度変動を抑制しつつ、貯蔵室内の食品を速やかに解凍あるいは冷却することのできる冷蔵庫を得る。
【解決手段】貯蔵室6と、圧縮機2、凝縮器、減圧装置、冷却器3を順次接続して構成した冷凍サイクルと、冷却器3によって生成された冷気を貯蔵室6に送風する冷気送風ファン4と、貯蔵室6内の温度が所定の設定温度となるよう冷凍サイクルと冷気送風ファン4の運転制御を行う制御装置20と、貯蔵室6内の食品の温度を検出する食品温度センサ11と、冷気送風ファン4とは別に設けられ、貯蔵室6内の空気を強制対流させる貯蔵室内ファン10と、を備え、制御装置20は、食品温度センサ11が検出した食品温度が、貯蔵室6の設定温度より低い所定の低温度である場合には、貯蔵室内ファン10を動作させて貯蔵室6の空気を強制対流させる解凍運転を行う。
【解決手段】貯蔵室6と、圧縮機2、凝縮器、減圧装置、冷却器3を順次接続して構成した冷凍サイクルと、冷却器3によって生成された冷気を貯蔵室6に送風する冷気送風ファン4と、貯蔵室6内の温度が所定の設定温度となるよう冷凍サイクルと冷気送風ファン4の運転制御を行う制御装置20と、貯蔵室6内の食品の温度を検出する食品温度センサ11と、冷気送風ファン4とは別に設けられ、貯蔵室6内の空気を強制対流させる貯蔵室内ファン10と、を備え、制御装置20は、食品温度センサ11が検出した食品温度が、貯蔵室6の設定温度より低い所定の低温度である場合には、貯蔵室内ファン10を動作させて貯蔵室6の空気を強制対流させる解凍運転を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷蔵庫に関し、特に、冷凍された食品温度を速やかに所定の温度まで昇温させる解凍機能、あるいは食品温度を所定の温度まで速やかに低下させる急速冷却機能を有する冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、冷凍保存した食品を使用する場合、食品の解凍が必要である。従来の解凍方法としては、例えば、室温静置、電子レンジによる方法がある。しかし、室温静置による解凍では、温度が高い環境に長時間置かれるため、菌の繁殖など衛生的に好ましくなく、解凍に長時間を要する場合もある。また、電子レンジによる方法では、短時間で解凍可能であるが、解凍ムラや部分的に加熱変性するなどの課題がある。このような背景により、冷蔵庫においては、所定の温度で食品を保存する機能だけではなく、凍結した食品を失敗なく高品質に解凍する機能も求められている。
【0003】
食品の解凍機能を備えた冷蔵庫として、「急速冷却運転時には、圧縮機11を強制連続運転して(ステップ(1))、導入する冷気の温度を低い状態に維持する」という急速冷却運転を行う冷蔵庫が提案されている。また、この従来の冷蔵庫は、解凍用加熱ヒータを備え、「解凍用加熱ヒータ7で加熱された空気は、貫流ファン8に吸い込まれて貯蔵室3に吐出され、食品15に暖気を供給するので食品15を解凍することができる。」という急速解凍運転を行う(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3251275号公報(第3頁、第1図、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術によれば、急速冷却運転時には導入する冷気の温度を低くし、また、急速解凍運転時にはヒータで加熱して貯蔵室の温度を上昇させる。このため、予め貯蔵室に保蔵されている食品も、急速冷却/急速解凍の対象となる食品とともに温度変化してしまう可能性があった。特に、解凍運転時においては、予め貯蔵室に保蔵されている食品の食品温度は上昇しすぎるおそれがあり、食品の品質が低下する可能性があった。このため、貯蔵室の食品を急速冷凍あるいは急速解凍する場合には、他の食品を別の庫内室へ退避させておく必要があり、ユーザーは食品を他の庫内室へ移動させる手間がかかっていた。
また、特許文献1に記載の解凍運転では、0℃以上である冷蔵温度まで貯蔵室の温度を上昇させるため、解凍に時間がかかる、食品からドリップが流出するなどの問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、貯蔵室内の温度変動を抑制しつつ、貯蔵室内の食品を速やかに解凍あるいは冷却することのできる冷蔵庫を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る冷蔵庫は、貯蔵室と、圧縮機、凝縮器、減圧装置、蒸発器を順次接続して構成した冷凍サイクルと、前記蒸発器によって生成された冷気を前記貯蔵室に送風する冷気送風ファンと、前記貯蔵室内の温度が所定の設定温度となるよう前記冷凍サイクルと前記冷気送風ファンの運転制御を行う制御装置と、前記貯蔵室内の食品温度を検知する食品温度検知装置と、前記冷気送風ファンとは別に設けられ、前記貯蔵室内の空気を強制対流させる貯蔵室内ファンと、を備え、前記制御装置は、前記食品温度検知装置が検知した食品温度が、前記貯蔵室の前記設定温度より低い所定の低温度である場合には、前記貯蔵室内ファンを動作させて前記貯蔵室内の空気を強制対流させる解凍運転を行うものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、貯蔵室内の空気を貯蔵室内ファンにより強制対流させることにより、食品の熱伝達を促進し、食品を昇温させるようにした。貯蔵室内の空気を強制対流させて食品に送風するので、貯蔵室内の温度を変動させることなく、食品を解凍することができる。したがって、貯蔵室内に既に他の食品が保存されている場合であっても、解凍中にその食品の温度をほとんど変化させることがないので、他の食品を別の庫内室に移動させる必要がなく、ユーザーの使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る冷蔵庫の正面図である。
【図2】実施の形態1に係る冷蔵庫の側断面模式図である。
【図3】実施の形態1に係る貯蔵室の側断面模式図である。
【図4】実施の形態1に係る冷蔵庫の制御系統のブロック図である。
【図5】実施の形態1に係る食品温度と切断荷重の関係を表すグラフである。
【図6】実施の形態1に係る貯蔵室の解凍運転を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態2に係る貯蔵室の解凍運転を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態3に係る貯蔵室の解凍/急冷運転を示すフローチャートである。
【図9】図8の急冷運転を示すフローチャートである。
【図10】図8の解凍運転を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る冷蔵庫の正面図である。冷蔵庫1は、最上部に開閉ドアを備えて配置される冷蔵室100、冷蔵室100の下方に配置され引き出しドアを備えた切替室200、切替室200と並列に配置される引き出しドアを備えた製氷室300、切替室200と製氷室300の下方に配置される引き出しドアを備えた冷凍室400、最下部に配置される引き出しドアを備えた野菜室500等を備える。冷蔵室100は、冷蔵温度帯(0℃〜5℃)に温度設定され、製氷室300と冷凍室400は冷凍温度帯(約−18℃)に温度設定され、野菜室500は3℃〜5℃程度に温度設定されている。また、切替室200は、冷凍温度帯(−18℃)から冷蔵(3℃)、チルド(0℃)、ソフト冷凍(−7℃)などの各温度帯に設定温度を切り替えることができる。なお、以降の説明において、冷蔵室100、切替室200、製氷室300、冷凍室400、及び野菜室500を、庫内室と総称する場合がある。
【0011】
冷蔵室100の扉表面には、各室の温度や設定を調節する操作スイッチと、各室の温度などを表示する液晶の表示部などから構成される操作パネル7が設けられている。操作パネル7は、後述するように表示部に文字等を表示することによりユーザーに各種情報を報知可能であり、本発明の第1報知装置及び第2報知装置に相当する。
【0012】
図2は、本発明の実施の形態1に係る冷蔵庫1の側断面模式図である。冷蔵庫1は、圧縮機2、凝縮器(図示せず)、減圧装置(図示せず)、冷却器3(蒸発器)を順次接続して構成した冷凍サイクルを備えている。冷蔵庫1の背面側には、冷凍サイクルを構成する圧縮機2と、同じく冷凍サイクルを構成する冷却器3が配置されている。さらに、冷却器3により冷却された冷気を冷蔵室100等の庫内室に送風するための冷気送風ファン4が設けられ、冷却器3により冷却された冷気を冷蔵室100内に導入するための冷却用風路5が冷蔵庫1の背面側に設けられている。冷却器3により冷却された冷気は、冷却用風路5を通り、冷凍室400、切替室200、冷蔵室100、製氷室300、野菜室500へと送風され、冷気により各庫内室を冷却する。冷凍室400、切替室200、冷蔵室100、製氷室300、野菜室500内に吹き出され、各庫内室を冷却した冷気は、各庫内室に設けられた吸込口(図示せず)に吸い込まれ、冷却器3の下流側に戻る。
【0013】
各庫内室には、それぞれ、冷蔵室温度センサ31、切替室温度センサ32(図2には図示せず。図4参照。)、製氷室温度センサ33、冷凍室温度センサ34、野菜室温度センサ35(これらの温度センサを、庫内室温度センサと総称する場合がある)が設けられている。庫内室温度センサは、各庫内室内の温度を検知し、検知した情報を後述する制御装置20に出力する。
【0014】
冷蔵室100の下部には、貯蔵室6が配置されている。また、冷却用風路5には、貯蔵室6へ導入する冷気量を調整するダンパー14が設けられている。なお、図示しないが、冷蔵庫1は、貯蔵室6以外の各庫内室へ導入する冷気量を調整するダンパーも備えている。
【0015】
図3は、貯蔵室6の側断面模式図である。図3を用いて、貯蔵室6について更に説明する。貯蔵室6は、開閉可能なフタ8と、食品を置くことができるトレイ9とにより、冷蔵室100内部に区画形成されている。トレイ9を手前方向に引き出すと、これに連動してフタ8が開き、トレイ9内に食品を投入することができる構成になっている。
【0016】
貯蔵室6の背面側には、貯蔵室内ファン10が設けられている。貯蔵室内ファン10は、貯蔵室6内の空気を攪拌し、空気を循環させる。すなわち、貯蔵室内ファン10は貯蔵室6の空気を強制対流させる。貯蔵室内ファン10は、トレイ9に載置される食品に直接送風可能なように、あるいは食品の上側や横側に送風可能なように貯蔵室6に配置される。本実施の形態1では、貯蔵室内ファン10を1つ設ける例を示すが、複数の貯蔵室内ファン10を設けて、それぞれが個別に動作ON/OFFや送風量を制御されるように構成してもよい。
【0017】
貯蔵室6には、本発明の食品温度検知装置として、貯蔵室6内に投入された食品の温度を検知可能な食品温度センサ11が設置されている。食品温度センサ11としては、例えば、赤外線センサなど非接触に食品の温度を検知できるものを用いるのが好適であるが、食品に接触して温度を検知する温度検知センサを用いることも可能である。食品温度センサ11は、貯蔵室6の上下面、左右面、前後面のうちいずれかに据え付ければよく、食品温度センサ11の個数は1個でも複数個であってもよい。
【0018】
また、貯蔵室6には、貯蔵室6内の空気温度を検知する貯蔵室内温度センサ13が設置されている。貯蔵室内温度センサ13は、貯蔵室6の上下面、左右面、前後面のうちいずれかに据え付ければよく、その数も限定するものではない。
【0019】
図4は、実施の形態1に係る冷蔵庫1の制御系統のブロック図である。
冷蔵庫1は、圧縮機2や冷気送風ファン4などの各機器の動作を制御する制御基板等を備えた制御装置20を備えている。各庫内室の温度は、各庫内室に設置された庫内室温度センサにより検知され、制御装置20にその温度データが出力される。基本的には、制御装置20は、冷凍室400の冷凍室温度センサ34の出力に基づいて圧縮機2の出力及び冷気送風ファン4の送風量を調整し、更に、各庫内室が予め設定された温度になるようにダンパー14を含め他の庫内室のダンパーの開度を調整する。そのほか、制御装置20は、操作パネル7への設定入力に基づいて霜取り運転や製氷室300の製氷運転を行ったり、各庫内室に設けられた照明の制御を行ったりする。また、制御装置20は、冷蔵庫1の運転状態を、操作パネル7の表示部に表示させる。なお、制御装置20は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、マイコンやCPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成することもできる。
【0020】
次に、貯蔵室6の動作制御の概要を説明する。この貯蔵室6は、本発明の貯蔵室に相当する。
貯蔵室6は、本実施の形態1では、チルド温度帯(0℃〜2℃)に温度設定されている。そして、貯蔵室内温度センサ13が検知する温度が設定温度であるチルド温度帯となるように、貯蔵室6内への冷気の吹き出しを制御するダンパー14の開度が制御装置20により制御され、所定量の冷気が冷却用風路5から貯蔵室6内へ導入される(図3の矢印X参照)。したがって、後述する解凍運転を行っていない通常の運転時には、貯蔵室6内の温度はチルド温度帯に維持されている。また、貯蔵室6内の冷気は図3の矢印Yに示すように貯蔵室6の外部へと流出する。
【0021】
また、本実施の形態1に係る貯蔵室6は、投入された食品を、所定の目標温度まで解凍する解凍運転を行う。ここで、解凍運転時に目標とする食品の温度を、解凍目標温度と称する。以降、解凍運転の概要を説明する。
チルド温度帯に維持された貯蔵室6内に、冷凍状態の食品(本発明に係る低温度の食品。例えば−18℃の食品。)が投入されたものとする。そして、解凍運転を開始すると、食品温度センサ11は貯蔵室6内の食品温度を検知し、検知した情報を制御装置20に出力する。制御装置20は、食品温度センサ11が検知した食品の温度が、貯蔵室6の設定温度(チルド温度帯、0℃〜2℃)よりも低い温度である解凍目標温度よりも更に低ければ、貯蔵室内ファン10を動作させ、貯蔵室6内の空気を強制対流させる。そうすると、貯蔵室6内のチルド温度帯(0℃〜2℃)の空気が食品に送風され(図3の矢印K参照)、貯蔵室6内の食品表面は送風により熱伝達が促進されて温度が上昇して食品が解凍されていく。
【0022】
そして、制御装置20は、食品温度センサ11が検知した食品温度が解凍目標温度まで昇温されたことを検知すると、貯蔵室内ファン10を停止させる。そして、操作パネル7において、解凍が終了したことを表示してユーザーに報知する。
【0023】
解凍運転を開始するタイミングは、例えば、操作パネル7に設けられた解凍運転を指示する操作部をユーザーに操作されたとき、すなわちユーザーからの指示があったときとすることができる。また、ユーザーからの明示の指示があった場合のほか、食品温度センサ11により常時あるいは定期的に食品温度を検知し、上記解凍目標温度よりも低い食品温度が検知された場合に自動的に解凍運転を行うこととしてもよい。
【0024】
また、解凍運転中は、上述した貯蔵室内ファン10の動作とは別に、貯蔵室6内の温度制御がなされる。例えば食品投入により貯蔵室6内の温度が上昇あるいは低下した場合には、ダンパー14の開度が制御装置20により制御される。したがって、解凍運転中には、貯蔵室6内に冷却用風路5から冷気が吹き出されている場合もあるし、冷気が吹き出されていない場合もある。
【0025】
解凍目標温度としては、食品を切断可能な食品温度を設定することができる。具体的には、解凍目標温度は−7℃以上−5℃以下が好ましい。図5は、食品温度と切断荷重の関係を表したものである。図5では、食品として、(a)マグロ肉、(b)豚肉を例に示している。図5に示すように、−7℃以上−5℃以下の食品は、切断するのにちょうどよい硬さ〜少し硬いが切断可能な状態であることがわかる。また、食品温度が−5℃以下であれば、最大氷結晶生成帯(−5℃〜−1℃)の範囲外なので、解凍による食品の品質劣化が少なく、高品質な状態で食品を調理に用いることができる。
【0026】
次に、実施の形態1に係る貯蔵室6の解凍運転についてさらに説明する。図6は、実施の形態1に係る貯蔵室6の解凍運転の一例を説明するフローチャートである。以下の説明では、解凍目標温度を、−7℃に設定しているものとする。
【0027】
ユーザーにより食品が貯蔵室6に投入された状態で、操作パネル7に設けられた解凍ボタンがONされて解凍運転の開始を指示されると(S101)、制御装置20は、食品温度センサ11が検知した貯蔵室6内の食品温度を、初期食品温度T0として取得する(S102)。
【0028】
制御装置20は、初期食品温度T0が、解凍目標温度である−7℃未満であるか否か判断し、−7℃未満であれば(S103:Yes)、貯蔵室内ファン10を動作させる(S104)。そして、制御装置20は、操作パネル7の表示部に「解凍中」と表示させ、解凍運転中であることをユーザーに報知する(S105)。すなわち、初期食品温度T0が、解凍目標温度よりも低い温度であれば、貯蔵室内ファン10によりチルド温度帯(0℃〜2℃)の空気を食品に送風し、食品表面の熱伝達を促して温度を上昇させる。
【0029】
制御装置20は、貯蔵室内ファン10の動作を開始してから所定時間が経過したことを検知すると(S106:Yes)、再び食品温度センサ11が検知した食品温度を、食品温度Tとして取得する(S107)。続けて、制御装置20は、食品温度Tが解凍目標温度である−7℃以上であるか否か判断し、食品温度Tが−7℃以上であれば(S108:Yes)、貯蔵室内ファン10を停止させ(S109)、操作パネル7の表示部に「解凍終了」と表示させて解凍が終了したことをユーザーに報知する(S110)。また、ステップS108において食品温度Tが−7℃未満である場合、すなわち、食品が、解凍目標温度まで昇温されていない場合には(S108:No)、ステップS106に戻って再び所定時間が経過するまで貯蔵室内ファン10の運転を継続する。
【0030】
また、制御装置20は、ステップS103において初期食品温度T0が解凍目標温度である−7℃に到達していると判断すると(S103:No)、貯蔵室内ファン10を動作させずステップS110に進み、解凍が終了したことを操作パネル7に表示させてユーザーに報知する(S110)。
【0031】
なお、解凍が終了したことを報知する方法は、操作パネル7の表示部に、「解凍終了」の文字を表示する方法に限ったものではない。例えば、解凍中には「解凍中」の文字を表示していて解凍終了時にはその文字を非表示にする、ランプを点灯あるいは点滅する、報知音を発するなど、ユーザーが解凍終了を認識できる方法であれば、何でもよい。
【0032】
以上のように、本実施の形態1に係る冷蔵庫1は、貯蔵室内ファン10により貯蔵室6内の空気を強制対流させて食品に送風し、食品の熱伝達を促進して食品を昇温させるようにした。貯蔵室6内の空気を食品に送風するので、貯蔵室6内の温度を変動させることなく、食品を解凍することができる。したがって、貯蔵室6内に既に他の食品が保存されている場合であっても、解凍中にその食品の温度をほとんど変化させることがないので、他の食品を別の庫内室に移動させる必要がなく、ユーザーの使い勝手がよい。
【0033】
また、貯蔵室6内の温度変動はないが、食品の温度を検知する食品温度センサ11を設けたので、食品温度センサ11の検知結果に基づいて食品温度が切断可能な温度(解凍目標温度)となったか否かを判断することができる。
【0034】
また、食品が切断可能な温度(解凍目標温度)になって解凍が完了したことをユーザーに報知するようにしたので、ユーザーは食品の解凍が完了したことを即座に認識しやすい。このため、切断可能となった(すなわち、解凍が完了した)食品を、解凍が完了したタイミングでユーザーが貯蔵室6から取り出すことも可能となり、利便性を向上させることができる。
【0035】
また、解凍が完了したか否かを、食品温度が解凍目標温度に到達したか否かにより判断するようにした。この解凍目標温度(−7℃〜−5℃)は、貯蔵室6の設定温度であるチルド温度帯(0℃〜2℃)よりも低いので、食品が解凍目標温度よりも高いチルド温度帯まで昇温される前に解凍運転を停止できる。このため、解凍運転が完了したことをユーザーに報知することで、ユーザーは完全に解凍される前の食品を手に入れることができ、完全に解凍したときに問題となるドリップの流出を抑制できる。また、食品を切断可能な温度である−7℃以上−5℃以下の温度帯に含まれる温度を、解凍目標温度としたので、解凍が完了した時点で食品は完全に解凍されておらず適度な硬さを維持しており、ユーザーは切断などの加工を行いやすい。
【0036】
実施の形態2.
本実施の形態2では、貯蔵室6内に投入された食品が解凍目標温度まで昇温するのに必要な時間を算出する動作例を説明する。なお、本実施の形態2では実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0037】
まず、食品が解凍目標温度まで昇温するのに必要な時間を算出する方法について説明する。
貯蔵室6に投入された食品の初期食品温度をT0、食品を切断可能な温度である解凍目標温度をT1、貯蔵室内温度センサ13で検知された貯蔵室6の庫内温度をTaとし、食品が初期食品温度T0から解凍目標温度T1まで昇温するのに必要な時間をθとすると、以下の(1)式で近似できることが知られている。
θ=K・ln{(T0−Ta)/(T1−Ta)}・・・・(1)
ここで、Kは食品の性状による定数である。
【0038】
上記(1)式の関係より、食品温度センサ11による温度検知結果をもとに、解凍終了までの所要時間θを算出する。具体的には、まず、食品が投入されたときの初期食品温度T0を、食品温度センサ11で検知する。所定時間θ1(例えば3分)経過後、再び、食品温度センサ11により食品温度Tを取得する。そして、制御装置20は、庫内温度Taと、初期食品温度T0と、食品温度Tと、所定時間θ1と(1)式から、定数Kを求める。このようにして定数Kを求めると、食品が切断可能な温度まで昇温するのに必要な所要時間θを、定数K、食品温度T、庫内温度Taと(1)式から算出することができる。
【0039】
なお、貯蔵室6内の温度は基本的には設定温度付近に保たれているので、上記(1)式において、貯蔵室内温度センサ13で検知された温度を庫内温度Taとするのではなく貯蔵室6の設定温度をTaとして用いてもよい。
【0040】
次に、実施の形態2に係る貯蔵室6の解凍運転についてさらに説明する。図7は、実施の形態2に係る貯蔵室6の解凍運転の一例を説明するフローチャートである。なお、以下の説明では、解凍目標温度T1を−7℃に設定しているものとする。
【0041】
ユーザーにより食品が貯蔵室6に投入された状態で、操作パネル7に設けられた解凍ボタンがONされて解凍運転の開始を指示されると(S201)、制御装置20は、食品温度センサ11が検知した貯蔵室6内の食品温度を、初期食品温度T0として取得する(S202)。
【0042】
制御装置20は、初期食品温度T0が、目標温度T1である−7℃未満であるか否か判断し、−7℃未満であれば(S203:Yes)、貯蔵室内ファン10を動作させる(S204)。すなわち、初期食品温度T0が、目標温度T1よりも低い温度であれば、貯蔵室内ファン10によりチルド温度帯(0℃〜2℃)の空気を食品に送風し、食品表面の熱伝達を促して温度を上昇させる。
【0043】
制御装置20は、貯蔵室内ファン10の動作を開始してから所定時間θ1が経過したことを検知すると(S205:Yes)、食品温度センサ11が検知した貯蔵室6内の食品温度を、食品温度Tとして取得する(S206)。
【0044】
次に、制御装置20は、上述したようにして、貯蔵室内温度センサ13が検知した庫内温度Taと、初期食品温度T0と、食品温度Tと、所定時間θ1と、(1)式とに基づいて、食品が目標温度T1である−7℃に到達するまでの所要時間θを算出する(S207)。そして、制御装置20は、算出した所要時間θを、操作パネル7の表示部に「所要時間θ」のように表示させる(S208)。このとき、貯蔵室内ファン10による送風を継続している状態である。
【0045】
そして、制御装置20は、食品温度Tが目標温度T1(−7℃)に到達したか否か判断し、到達していなければ(S209:No)、ステップS205に戻り、食品温度Tが目標温度T1に到達するまでステップS205〜S208の処理を繰り返す。
また、食品温度Tが目標温度T1に到達していれば(S209:Yes)、制御装置20は、貯蔵室内ファン10を停止させ(S210)、操作パネル7の表示部に「解凍終了」と表示させて解凍が終了したことをユーザーに報知する(S211)。
【0046】
また、制御装置20は、ステップS203において初期食品温度T0が目標温度T1である−7℃に到達していると判断すると(S203:No)、貯蔵室内ファン10を動作させずステップS211に進み、解凍が終了したことを操作パネル7に表示させてユーザーに報知する(S211)。
【0047】
以上のように、本実施の形態2に係る冷蔵庫1は、食品温度が、解凍目標温度T1まで昇温するのに要する所要時間θを算出するようにした。このため、実施の形態1と同様の効果に加え、所要時間θを操作パネル7等を用いてユーザーに報知することで、ユーザーは解凍終了までの時間を把握することができる。したがって、ユーザーは調理の下ごしらえ等を計画的に行うことができるなど、使い勝手を向上させることができる。
【0048】
実施の形態3.
前述の実施の形態1、実施の形態2では、貯蔵室6内の食品を解凍する解凍運転について説明した。本実施の形態3では、解凍運転に加え、急速冷却運転(以下、急冷運転)を行う例を説明する。
【0049】
本実施の形態3に係る冷蔵庫1は、解凍運転と急冷運転とを選択的に実行する。例えば、操作パネル7に、「解凍/急冷」等の文字が表示された1つの操作ボタン(以下、解凍/急冷ボタンと称する)を設ける。そして、解凍/急冷ボタンがONされると、食品温度センサ11が検知した食品温度に基づいて、解凍運転又は急冷運転を自動的に選択して実行する。また、詳細は後述するが、貯蔵室6に投入された食品温度によっては、解凍運転と急冷運転のいずれも行わない場合もある。
【0050】
次に、実施の形態3に係る貯蔵室6の解凍運転と急冷運転について具体的に説明する。図8は、実施の形態3に係る貯蔵室6の運転制御の一例を示すフローチャート、図9は、図8に示す急冷運転の一例を示すフローチャート、図10は、図8に示す解凍運転の一例を示すフローチャートである。
【0051】
まず、図8について説明する。
ユーザーにより食品が貯蔵室6に投入された状態で、操作パネル7に設けられた解凍/急冷ボタンがONされると(S301)、制御装置20は、食品温度センサ11が検知した貯蔵室6内の食品温度を、初期食品温度T0として取得する(S302)。
【0052】
制御装置20は、初期食品温度T0が、貯蔵室6の設定温度であるチルド温度帯(0℃〜2℃)より高い所定の高温度を超えているか否か判定する(S303)。ここでは、冷蔵室100の冷蔵温度帯の最大値である5℃を超えているか否か判定する。そして、制御装置20は、初期食品温度T0が5℃を超えていると判定した場合には(S303:Yes)、食品の温度が高いと判断し、急冷運転を実行する(S304)。また、制御装置20は、初期食品温度T0が5℃以下であると判定した場合には(S303:No)、初期食品温度T0が解凍目標温度である−7℃未満か否か判定する(S305)。制御装置20は、初期食品温度T0が−7℃未満であると判定した場合には(S305:Yes)、食品の温度が低いと判断し、解凍運転を実行する(S306)。
なお、初期食品温度T0が、5℃以下であって(S303:No)、−7℃以上であれば(S305:No)、急冷運転や解凍運転を行わずに処理を終了する。
【0053】
次に、図9を参照して急冷運転について説明する。
急冷運転を開始すると、制御装置20は、貯蔵室内ファン10を動作させる(S311)。そして、制御装置20は、操作パネル7の表示部に「急冷中」などの文字を表示させることにより、急冷運転中であることをユーザーに報知する(S312)。すなわち、急冷運転を行う場合には、食品温度は、貯蔵室6の設定温度であるチルド温度帯よりも高い温度であるので、貯蔵室内ファン10によりチルド温度帯(0℃〜2℃)の空気を食品に送風し、食品表面の熱伝達を促して食品温度を低下させる。
【0054】
制御装置20は、貯蔵室内ファン10の動作を開始してから所定時間が経過したことを検知すると(S313:Yes)、食品温度センサ11が検知した食品温度を、食品温度Tとして取得する(S314)。続けて制御装置20は、食品温度Tが、冷蔵温度帯の最大値である5℃以下か否か判断し、食品温度Tが5℃以下であれば(S315:Yes)、貯蔵室内ファン10を停止させ(S316)、操作パネル7の表示部に「急冷終了」と表示させて急冷運転が終了したことをユーザーに報知する(S317)。また、ステップS315において食品温度Tが5℃を超えている場合、すなわち、食品が、冷蔵温度帯よりも高い温度である場合には(S315:No)、ステップS313に戻って再び所定時間が経過するまで貯蔵室内ファン10の運転を継続する。
【0055】
次に、図10を参照して解凍運転について説明する。
解凍運転を開始すると、制御装置20は、貯蔵室内ファン10を動作させる(S321)。そして、操作パネル7の表示部に「解凍中」などの文字を表示させることにより、解凍運転中であることをユーザーに報知する(S322)。すなわち、解凍運転を行う場合には、食品温度が解凍目標温度よりも低い温度であるので、貯蔵室内ファン10によりチルド温度帯(0℃〜2℃)の空気を食品に送風し、食品表面の熱伝達を促して温度を上昇させる。
【0056】
制御装置20は、貯蔵室内ファン10の動作を開始してから所定時間が経過したら(S323:Yes)、食品温度センサ11が検知した食品温度を、食品温度Tとして取得する(S324)。続けて、制御装置20は、食品温度Tが、解凍目標温度である−7℃以上であるか否か判断し(S325)、食品温度Tが−7℃以上であれば(S325:Yes)、貯蔵室内ファン10を停止させ(S326)、操作パネル7の表示部に「解凍終了」と表示させて解凍運転が終了したことをユーザーに報知する(S327)。また、ステップS325において食品温度Tが−7℃未満である場合、すなわち、食品が、解凍目標温度まで昇温されていない場合には(S325:No)、ステップS323に戻って再び所定時間が経過するまで貯蔵室内ファン10の運転を継続する。
【0057】
以上のように、本実施の形態3に係る冷蔵庫1の貯蔵室6は、解凍運転機能と急冷運転機能の両方を備えた。このため、解凍運転と急冷運転の専用の庫内室を別個に設ける必要がなく、冷蔵庫1の庫内スペースを有効に利用することができる。
【0058】
また、貯蔵室6に投入された食品の温度に応じて、解凍運転を行うか、急冷運転を行うか、いずれも行わないかを自動的に判断する。このため、ユーザーは、解凍したい場合も急速冷却したい場合も、貯蔵室6に食品を投入して解凍/急冷ボタンを押下するだけで食品を解凍あるいは冷却でき、操作が簡単であるので使い勝手がよい。
【0059】
また、急冷運転においては、貯蔵室6内の空気を貯蔵室内ファン10により食品に送風することにより、食品の熱伝達を促進し、食品温度を低下させるようにした。貯蔵室6内の空気を食品に送風するので、貯蔵室6内の温度を変動させることなく、食品を冷却することができる。したがって、貯蔵室6内に既に他の食品が保存されている場合であっても、冷却中にその食品の温度をほとんど変化させることがないので、他の食品を別の庫内室に移動させる必要がなく、ユーザーの使い勝手がよい。
【0060】
なお、本実施の形態3の図10で示した解凍運転は、実施の形態1の図6で示したステップS104〜S110と同じ動作であるが、実施の形態2の図7で示したステップS204〜S211と同じ動作の解凍運転を実施の形態3に組み合わせてもよく、同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお、上記実施の形態1〜実施の形態3では、解凍運転を終了するか否かの判断(食品が解凍されたか否かの判断)を、食品温度センサ11が検知した食品温度に基づいて行うこととして説明した。しかし、実施の形態2で説明したようにして食品が解凍温度まで昇温するのに必要な所要時間θを算出し、この所要時間θが経過した段階で食品の解凍運転を終了してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 冷蔵庫、2 圧縮機、3 冷却器、4 冷気送風ファン、5 冷却用風路、6 貯蔵室、7 操作パネル、8 フタ、9 トレイ、10 貯蔵室内ファン、11 食品温度センサ、13 貯蔵室内温度センサ、14 ダンパー、20 制御装置、31 冷蔵室温度センサ、32 切替室温度センサ、33 製氷室温度センサ、34 冷凍室温度センサ、35 野菜室温度センサ、100 冷蔵室、200 切替室、300 製氷室、400 冷凍室、500 野菜室。
【技術分野】
【0001】
本発明は冷蔵庫に関し、特に、冷凍された食品温度を速やかに所定の温度まで昇温させる解凍機能、あるいは食品温度を所定の温度まで速やかに低下させる急速冷却機能を有する冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、冷凍保存した食品を使用する場合、食品の解凍が必要である。従来の解凍方法としては、例えば、室温静置、電子レンジによる方法がある。しかし、室温静置による解凍では、温度が高い環境に長時間置かれるため、菌の繁殖など衛生的に好ましくなく、解凍に長時間を要する場合もある。また、電子レンジによる方法では、短時間で解凍可能であるが、解凍ムラや部分的に加熱変性するなどの課題がある。このような背景により、冷蔵庫においては、所定の温度で食品を保存する機能だけではなく、凍結した食品を失敗なく高品質に解凍する機能も求められている。
【0003】
食品の解凍機能を備えた冷蔵庫として、「急速冷却運転時には、圧縮機11を強制連続運転して(ステップ(1))、導入する冷気の温度を低い状態に維持する」という急速冷却運転を行う冷蔵庫が提案されている。また、この従来の冷蔵庫は、解凍用加熱ヒータを備え、「解凍用加熱ヒータ7で加熱された空気は、貫流ファン8に吸い込まれて貯蔵室3に吐出され、食品15に暖気を供給するので食品15を解凍することができる。」という急速解凍運転を行う(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3251275号公報(第3頁、第1図、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術によれば、急速冷却運転時には導入する冷気の温度を低くし、また、急速解凍運転時にはヒータで加熱して貯蔵室の温度を上昇させる。このため、予め貯蔵室に保蔵されている食品も、急速冷却/急速解凍の対象となる食品とともに温度変化してしまう可能性があった。特に、解凍運転時においては、予め貯蔵室に保蔵されている食品の食品温度は上昇しすぎるおそれがあり、食品の品質が低下する可能性があった。このため、貯蔵室の食品を急速冷凍あるいは急速解凍する場合には、他の食品を別の庫内室へ退避させておく必要があり、ユーザーは食品を他の庫内室へ移動させる手間がかかっていた。
また、特許文献1に記載の解凍運転では、0℃以上である冷蔵温度まで貯蔵室の温度を上昇させるため、解凍に時間がかかる、食品からドリップが流出するなどの問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、貯蔵室内の温度変動を抑制しつつ、貯蔵室内の食品を速やかに解凍あるいは冷却することのできる冷蔵庫を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る冷蔵庫は、貯蔵室と、圧縮機、凝縮器、減圧装置、蒸発器を順次接続して構成した冷凍サイクルと、前記蒸発器によって生成された冷気を前記貯蔵室に送風する冷気送風ファンと、前記貯蔵室内の温度が所定の設定温度となるよう前記冷凍サイクルと前記冷気送風ファンの運転制御を行う制御装置と、前記貯蔵室内の食品温度を検知する食品温度検知装置と、前記冷気送風ファンとは別に設けられ、前記貯蔵室内の空気を強制対流させる貯蔵室内ファンと、を備え、前記制御装置は、前記食品温度検知装置が検知した食品温度が、前記貯蔵室の前記設定温度より低い所定の低温度である場合には、前記貯蔵室内ファンを動作させて前記貯蔵室内の空気を強制対流させる解凍運転を行うものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、貯蔵室内の空気を貯蔵室内ファンにより強制対流させることにより、食品の熱伝達を促進し、食品を昇温させるようにした。貯蔵室内の空気を強制対流させて食品に送風するので、貯蔵室内の温度を変動させることなく、食品を解凍することができる。したがって、貯蔵室内に既に他の食品が保存されている場合であっても、解凍中にその食品の温度をほとんど変化させることがないので、他の食品を別の庫内室に移動させる必要がなく、ユーザーの使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る冷蔵庫の正面図である。
【図2】実施の形態1に係る冷蔵庫の側断面模式図である。
【図3】実施の形態1に係る貯蔵室の側断面模式図である。
【図4】実施の形態1に係る冷蔵庫の制御系統のブロック図である。
【図5】実施の形態1に係る食品温度と切断荷重の関係を表すグラフである。
【図6】実施の形態1に係る貯蔵室の解凍運転を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態2に係る貯蔵室の解凍運転を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態3に係る貯蔵室の解凍/急冷運転を示すフローチャートである。
【図9】図8の急冷運転を示すフローチャートである。
【図10】図8の解凍運転を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る冷蔵庫の正面図である。冷蔵庫1は、最上部に開閉ドアを備えて配置される冷蔵室100、冷蔵室100の下方に配置され引き出しドアを備えた切替室200、切替室200と並列に配置される引き出しドアを備えた製氷室300、切替室200と製氷室300の下方に配置される引き出しドアを備えた冷凍室400、最下部に配置される引き出しドアを備えた野菜室500等を備える。冷蔵室100は、冷蔵温度帯(0℃〜5℃)に温度設定され、製氷室300と冷凍室400は冷凍温度帯(約−18℃)に温度設定され、野菜室500は3℃〜5℃程度に温度設定されている。また、切替室200は、冷凍温度帯(−18℃)から冷蔵(3℃)、チルド(0℃)、ソフト冷凍(−7℃)などの各温度帯に設定温度を切り替えることができる。なお、以降の説明において、冷蔵室100、切替室200、製氷室300、冷凍室400、及び野菜室500を、庫内室と総称する場合がある。
【0011】
冷蔵室100の扉表面には、各室の温度や設定を調節する操作スイッチと、各室の温度などを表示する液晶の表示部などから構成される操作パネル7が設けられている。操作パネル7は、後述するように表示部に文字等を表示することによりユーザーに各種情報を報知可能であり、本発明の第1報知装置及び第2報知装置に相当する。
【0012】
図2は、本発明の実施の形態1に係る冷蔵庫1の側断面模式図である。冷蔵庫1は、圧縮機2、凝縮器(図示せず)、減圧装置(図示せず)、冷却器3(蒸発器)を順次接続して構成した冷凍サイクルを備えている。冷蔵庫1の背面側には、冷凍サイクルを構成する圧縮機2と、同じく冷凍サイクルを構成する冷却器3が配置されている。さらに、冷却器3により冷却された冷気を冷蔵室100等の庫内室に送風するための冷気送風ファン4が設けられ、冷却器3により冷却された冷気を冷蔵室100内に導入するための冷却用風路5が冷蔵庫1の背面側に設けられている。冷却器3により冷却された冷気は、冷却用風路5を通り、冷凍室400、切替室200、冷蔵室100、製氷室300、野菜室500へと送風され、冷気により各庫内室を冷却する。冷凍室400、切替室200、冷蔵室100、製氷室300、野菜室500内に吹き出され、各庫内室を冷却した冷気は、各庫内室に設けられた吸込口(図示せず)に吸い込まれ、冷却器3の下流側に戻る。
【0013】
各庫内室には、それぞれ、冷蔵室温度センサ31、切替室温度センサ32(図2には図示せず。図4参照。)、製氷室温度センサ33、冷凍室温度センサ34、野菜室温度センサ35(これらの温度センサを、庫内室温度センサと総称する場合がある)が設けられている。庫内室温度センサは、各庫内室内の温度を検知し、検知した情報を後述する制御装置20に出力する。
【0014】
冷蔵室100の下部には、貯蔵室6が配置されている。また、冷却用風路5には、貯蔵室6へ導入する冷気量を調整するダンパー14が設けられている。なお、図示しないが、冷蔵庫1は、貯蔵室6以外の各庫内室へ導入する冷気量を調整するダンパーも備えている。
【0015】
図3は、貯蔵室6の側断面模式図である。図3を用いて、貯蔵室6について更に説明する。貯蔵室6は、開閉可能なフタ8と、食品を置くことができるトレイ9とにより、冷蔵室100内部に区画形成されている。トレイ9を手前方向に引き出すと、これに連動してフタ8が開き、トレイ9内に食品を投入することができる構成になっている。
【0016】
貯蔵室6の背面側には、貯蔵室内ファン10が設けられている。貯蔵室内ファン10は、貯蔵室6内の空気を攪拌し、空気を循環させる。すなわち、貯蔵室内ファン10は貯蔵室6の空気を強制対流させる。貯蔵室内ファン10は、トレイ9に載置される食品に直接送風可能なように、あるいは食品の上側や横側に送風可能なように貯蔵室6に配置される。本実施の形態1では、貯蔵室内ファン10を1つ設ける例を示すが、複数の貯蔵室内ファン10を設けて、それぞれが個別に動作ON/OFFや送風量を制御されるように構成してもよい。
【0017】
貯蔵室6には、本発明の食品温度検知装置として、貯蔵室6内に投入された食品の温度を検知可能な食品温度センサ11が設置されている。食品温度センサ11としては、例えば、赤外線センサなど非接触に食品の温度を検知できるものを用いるのが好適であるが、食品に接触して温度を検知する温度検知センサを用いることも可能である。食品温度センサ11は、貯蔵室6の上下面、左右面、前後面のうちいずれかに据え付ければよく、食品温度センサ11の個数は1個でも複数個であってもよい。
【0018】
また、貯蔵室6には、貯蔵室6内の空気温度を検知する貯蔵室内温度センサ13が設置されている。貯蔵室内温度センサ13は、貯蔵室6の上下面、左右面、前後面のうちいずれかに据え付ければよく、その数も限定するものではない。
【0019】
図4は、実施の形態1に係る冷蔵庫1の制御系統のブロック図である。
冷蔵庫1は、圧縮機2や冷気送風ファン4などの各機器の動作を制御する制御基板等を備えた制御装置20を備えている。各庫内室の温度は、各庫内室に設置された庫内室温度センサにより検知され、制御装置20にその温度データが出力される。基本的には、制御装置20は、冷凍室400の冷凍室温度センサ34の出力に基づいて圧縮機2の出力及び冷気送風ファン4の送風量を調整し、更に、各庫内室が予め設定された温度になるようにダンパー14を含め他の庫内室のダンパーの開度を調整する。そのほか、制御装置20は、操作パネル7への設定入力に基づいて霜取り運転や製氷室300の製氷運転を行ったり、各庫内室に設けられた照明の制御を行ったりする。また、制御装置20は、冷蔵庫1の運転状態を、操作パネル7の表示部に表示させる。なお、制御装置20は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、マイコンやCPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成することもできる。
【0020】
次に、貯蔵室6の動作制御の概要を説明する。この貯蔵室6は、本発明の貯蔵室に相当する。
貯蔵室6は、本実施の形態1では、チルド温度帯(0℃〜2℃)に温度設定されている。そして、貯蔵室内温度センサ13が検知する温度が設定温度であるチルド温度帯となるように、貯蔵室6内への冷気の吹き出しを制御するダンパー14の開度が制御装置20により制御され、所定量の冷気が冷却用風路5から貯蔵室6内へ導入される(図3の矢印X参照)。したがって、後述する解凍運転を行っていない通常の運転時には、貯蔵室6内の温度はチルド温度帯に維持されている。また、貯蔵室6内の冷気は図3の矢印Yに示すように貯蔵室6の外部へと流出する。
【0021】
また、本実施の形態1に係る貯蔵室6は、投入された食品を、所定の目標温度まで解凍する解凍運転を行う。ここで、解凍運転時に目標とする食品の温度を、解凍目標温度と称する。以降、解凍運転の概要を説明する。
チルド温度帯に維持された貯蔵室6内に、冷凍状態の食品(本発明に係る低温度の食品。例えば−18℃の食品。)が投入されたものとする。そして、解凍運転を開始すると、食品温度センサ11は貯蔵室6内の食品温度を検知し、検知した情報を制御装置20に出力する。制御装置20は、食品温度センサ11が検知した食品の温度が、貯蔵室6の設定温度(チルド温度帯、0℃〜2℃)よりも低い温度である解凍目標温度よりも更に低ければ、貯蔵室内ファン10を動作させ、貯蔵室6内の空気を強制対流させる。そうすると、貯蔵室6内のチルド温度帯(0℃〜2℃)の空気が食品に送風され(図3の矢印K参照)、貯蔵室6内の食品表面は送風により熱伝達が促進されて温度が上昇して食品が解凍されていく。
【0022】
そして、制御装置20は、食品温度センサ11が検知した食品温度が解凍目標温度まで昇温されたことを検知すると、貯蔵室内ファン10を停止させる。そして、操作パネル7において、解凍が終了したことを表示してユーザーに報知する。
【0023】
解凍運転を開始するタイミングは、例えば、操作パネル7に設けられた解凍運転を指示する操作部をユーザーに操作されたとき、すなわちユーザーからの指示があったときとすることができる。また、ユーザーからの明示の指示があった場合のほか、食品温度センサ11により常時あるいは定期的に食品温度を検知し、上記解凍目標温度よりも低い食品温度が検知された場合に自動的に解凍運転を行うこととしてもよい。
【0024】
また、解凍運転中は、上述した貯蔵室内ファン10の動作とは別に、貯蔵室6内の温度制御がなされる。例えば食品投入により貯蔵室6内の温度が上昇あるいは低下した場合には、ダンパー14の開度が制御装置20により制御される。したがって、解凍運転中には、貯蔵室6内に冷却用風路5から冷気が吹き出されている場合もあるし、冷気が吹き出されていない場合もある。
【0025】
解凍目標温度としては、食品を切断可能な食品温度を設定することができる。具体的には、解凍目標温度は−7℃以上−5℃以下が好ましい。図5は、食品温度と切断荷重の関係を表したものである。図5では、食品として、(a)マグロ肉、(b)豚肉を例に示している。図5に示すように、−7℃以上−5℃以下の食品は、切断するのにちょうどよい硬さ〜少し硬いが切断可能な状態であることがわかる。また、食品温度が−5℃以下であれば、最大氷結晶生成帯(−5℃〜−1℃)の範囲外なので、解凍による食品の品質劣化が少なく、高品質な状態で食品を調理に用いることができる。
【0026】
次に、実施の形態1に係る貯蔵室6の解凍運転についてさらに説明する。図6は、実施の形態1に係る貯蔵室6の解凍運転の一例を説明するフローチャートである。以下の説明では、解凍目標温度を、−7℃に設定しているものとする。
【0027】
ユーザーにより食品が貯蔵室6に投入された状態で、操作パネル7に設けられた解凍ボタンがONされて解凍運転の開始を指示されると(S101)、制御装置20は、食品温度センサ11が検知した貯蔵室6内の食品温度を、初期食品温度T0として取得する(S102)。
【0028】
制御装置20は、初期食品温度T0が、解凍目標温度である−7℃未満であるか否か判断し、−7℃未満であれば(S103:Yes)、貯蔵室内ファン10を動作させる(S104)。そして、制御装置20は、操作パネル7の表示部に「解凍中」と表示させ、解凍運転中であることをユーザーに報知する(S105)。すなわち、初期食品温度T0が、解凍目標温度よりも低い温度であれば、貯蔵室内ファン10によりチルド温度帯(0℃〜2℃)の空気を食品に送風し、食品表面の熱伝達を促して温度を上昇させる。
【0029】
制御装置20は、貯蔵室内ファン10の動作を開始してから所定時間が経過したことを検知すると(S106:Yes)、再び食品温度センサ11が検知した食品温度を、食品温度Tとして取得する(S107)。続けて、制御装置20は、食品温度Tが解凍目標温度である−7℃以上であるか否か判断し、食品温度Tが−7℃以上であれば(S108:Yes)、貯蔵室内ファン10を停止させ(S109)、操作パネル7の表示部に「解凍終了」と表示させて解凍が終了したことをユーザーに報知する(S110)。また、ステップS108において食品温度Tが−7℃未満である場合、すなわち、食品が、解凍目標温度まで昇温されていない場合には(S108:No)、ステップS106に戻って再び所定時間が経過するまで貯蔵室内ファン10の運転を継続する。
【0030】
また、制御装置20は、ステップS103において初期食品温度T0が解凍目標温度である−7℃に到達していると判断すると(S103:No)、貯蔵室内ファン10を動作させずステップS110に進み、解凍が終了したことを操作パネル7に表示させてユーザーに報知する(S110)。
【0031】
なお、解凍が終了したことを報知する方法は、操作パネル7の表示部に、「解凍終了」の文字を表示する方法に限ったものではない。例えば、解凍中には「解凍中」の文字を表示していて解凍終了時にはその文字を非表示にする、ランプを点灯あるいは点滅する、報知音を発するなど、ユーザーが解凍終了を認識できる方法であれば、何でもよい。
【0032】
以上のように、本実施の形態1に係る冷蔵庫1は、貯蔵室内ファン10により貯蔵室6内の空気を強制対流させて食品に送風し、食品の熱伝達を促進して食品を昇温させるようにした。貯蔵室6内の空気を食品に送風するので、貯蔵室6内の温度を変動させることなく、食品を解凍することができる。したがって、貯蔵室6内に既に他の食品が保存されている場合であっても、解凍中にその食品の温度をほとんど変化させることがないので、他の食品を別の庫内室に移動させる必要がなく、ユーザーの使い勝手がよい。
【0033】
また、貯蔵室6内の温度変動はないが、食品の温度を検知する食品温度センサ11を設けたので、食品温度センサ11の検知結果に基づいて食品温度が切断可能な温度(解凍目標温度)となったか否かを判断することができる。
【0034】
また、食品が切断可能な温度(解凍目標温度)になって解凍が完了したことをユーザーに報知するようにしたので、ユーザーは食品の解凍が完了したことを即座に認識しやすい。このため、切断可能となった(すなわち、解凍が完了した)食品を、解凍が完了したタイミングでユーザーが貯蔵室6から取り出すことも可能となり、利便性を向上させることができる。
【0035】
また、解凍が完了したか否かを、食品温度が解凍目標温度に到達したか否かにより判断するようにした。この解凍目標温度(−7℃〜−5℃)は、貯蔵室6の設定温度であるチルド温度帯(0℃〜2℃)よりも低いので、食品が解凍目標温度よりも高いチルド温度帯まで昇温される前に解凍運転を停止できる。このため、解凍運転が完了したことをユーザーに報知することで、ユーザーは完全に解凍される前の食品を手に入れることができ、完全に解凍したときに問題となるドリップの流出を抑制できる。また、食品を切断可能な温度である−7℃以上−5℃以下の温度帯に含まれる温度を、解凍目標温度としたので、解凍が完了した時点で食品は完全に解凍されておらず適度な硬さを維持しており、ユーザーは切断などの加工を行いやすい。
【0036】
実施の形態2.
本実施の形態2では、貯蔵室6内に投入された食品が解凍目標温度まで昇温するのに必要な時間を算出する動作例を説明する。なお、本実施の形態2では実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0037】
まず、食品が解凍目標温度まで昇温するのに必要な時間を算出する方法について説明する。
貯蔵室6に投入された食品の初期食品温度をT0、食品を切断可能な温度である解凍目標温度をT1、貯蔵室内温度センサ13で検知された貯蔵室6の庫内温度をTaとし、食品が初期食品温度T0から解凍目標温度T1まで昇温するのに必要な時間をθとすると、以下の(1)式で近似できることが知られている。
θ=K・ln{(T0−Ta)/(T1−Ta)}・・・・(1)
ここで、Kは食品の性状による定数である。
【0038】
上記(1)式の関係より、食品温度センサ11による温度検知結果をもとに、解凍終了までの所要時間θを算出する。具体的には、まず、食品が投入されたときの初期食品温度T0を、食品温度センサ11で検知する。所定時間θ1(例えば3分)経過後、再び、食品温度センサ11により食品温度Tを取得する。そして、制御装置20は、庫内温度Taと、初期食品温度T0と、食品温度Tと、所定時間θ1と(1)式から、定数Kを求める。このようにして定数Kを求めると、食品が切断可能な温度まで昇温するのに必要な所要時間θを、定数K、食品温度T、庫内温度Taと(1)式から算出することができる。
【0039】
なお、貯蔵室6内の温度は基本的には設定温度付近に保たれているので、上記(1)式において、貯蔵室内温度センサ13で検知された温度を庫内温度Taとするのではなく貯蔵室6の設定温度をTaとして用いてもよい。
【0040】
次に、実施の形態2に係る貯蔵室6の解凍運転についてさらに説明する。図7は、実施の形態2に係る貯蔵室6の解凍運転の一例を説明するフローチャートである。なお、以下の説明では、解凍目標温度T1を−7℃に設定しているものとする。
【0041】
ユーザーにより食品が貯蔵室6に投入された状態で、操作パネル7に設けられた解凍ボタンがONされて解凍運転の開始を指示されると(S201)、制御装置20は、食品温度センサ11が検知した貯蔵室6内の食品温度を、初期食品温度T0として取得する(S202)。
【0042】
制御装置20は、初期食品温度T0が、目標温度T1である−7℃未満であるか否か判断し、−7℃未満であれば(S203:Yes)、貯蔵室内ファン10を動作させる(S204)。すなわち、初期食品温度T0が、目標温度T1よりも低い温度であれば、貯蔵室内ファン10によりチルド温度帯(0℃〜2℃)の空気を食品に送風し、食品表面の熱伝達を促して温度を上昇させる。
【0043】
制御装置20は、貯蔵室内ファン10の動作を開始してから所定時間θ1が経過したことを検知すると(S205:Yes)、食品温度センサ11が検知した貯蔵室6内の食品温度を、食品温度Tとして取得する(S206)。
【0044】
次に、制御装置20は、上述したようにして、貯蔵室内温度センサ13が検知した庫内温度Taと、初期食品温度T0と、食品温度Tと、所定時間θ1と、(1)式とに基づいて、食品が目標温度T1である−7℃に到達するまでの所要時間θを算出する(S207)。そして、制御装置20は、算出した所要時間θを、操作パネル7の表示部に「所要時間θ」のように表示させる(S208)。このとき、貯蔵室内ファン10による送風を継続している状態である。
【0045】
そして、制御装置20は、食品温度Tが目標温度T1(−7℃)に到達したか否か判断し、到達していなければ(S209:No)、ステップS205に戻り、食品温度Tが目標温度T1に到達するまでステップS205〜S208の処理を繰り返す。
また、食品温度Tが目標温度T1に到達していれば(S209:Yes)、制御装置20は、貯蔵室内ファン10を停止させ(S210)、操作パネル7の表示部に「解凍終了」と表示させて解凍が終了したことをユーザーに報知する(S211)。
【0046】
また、制御装置20は、ステップS203において初期食品温度T0が目標温度T1である−7℃に到達していると判断すると(S203:No)、貯蔵室内ファン10を動作させずステップS211に進み、解凍が終了したことを操作パネル7に表示させてユーザーに報知する(S211)。
【0047】
以上のように、本実施の形態2に係る冷蔵庫1は、食品温度が、解凍目標温度T1まで昇温するのに要する所要時間θを算出するようにした。このため、実施の形態1と同様の効果に加え、所要時間θを操作パネル7等を用いてユーザーに報知することで、ユーザーは解凍終了までの時間を把握することができる。したがって、ユーザーは調理の下ごしらえ等を計画的に行うことができるなど、使い勝手を向上させることができる。
【0048】
実施の形態3.
前述の実施の形態1、実施の形態2では、貯蔵室6内の食品を解凍する解凍運転について説明した。本実施の形態3では、解凍運転に加え、急速冷却運転(以下、急冷運転)を行う例を説明する。
【0049】
本実施の形態3に係る冷蔵庫1は、解凍運転と急冷運転とを選択的に実行する。例えば、操作パネル7に、「解凍/急冷」等の文字が表示された1つの操作ボタン(以下、解凍/急冷ボタンと称する)を設ける。そして、解凍/急冷ボタンがONされると、食品温度センサ11が検知した食品温度に基づいて、解凍運転又は急冷運転を自動的に選択して実行する。また、詳細は後述するが、貯蔵室6に投入された食品温度によっては、解凍運転と急冷運転のいずれも行わない場合もある。
【0050】
次に、実施の形態3に係る貯蔵室6の解凍運転と急冷運転について具体的に説明する。図8は、実施の形態3に係る貯蔵室6の運転制御の一例を示すフローチャート、図9は、図8に示す急冷運転の一例を示すフローチャート、図10は、図8に示す解凍運転の一例を示すフローチャートである。
【0051】
まず、図8について説明する。
ユーザーにより食品が貯蔵室6に投入された状態で、操作パネル7に設けられた解凍/急冷ボタンがONされると(S301)、制御装置20は、食品温度センサ11が検知した貯蔵室6内の食品温度を、初期食品温度T0として取得する(S302)。
【0052】
制御装置20は、初期食品温度T0が、貯蔵室6の設定温度であるチルド温度帯(0℃〜2℃)より高い所定の高温度を超えているか否か判定する(S303)。ここでは、冷蔵室100の冷蔵温度帯の最大値である5℃を超えているか否か判定する。そして、制御装置20は、初期食品温度T0が5℃を超えていると判定した場合には(S303:Yes)、食品の温度が高いと判断し、急冷運転を実行する(S304)。また、制御装置20は、初期食品温度T0が5℃以下であると判定した場合には(S303:No)、初期食品温度T0が解凍目標温度である−7℃未満か否か判定する(S305)。制御装置20は、初期食品温度T0が−7℃未満であると判定した場合には(S305:Yes)、食品の温度が低いと判断し、解凍運転を実行する(S306)。
なお、初期食品温度T0が、5℃以下であって(S303:No)、−7℃以上であれば(S305:No)、急冷運転や解凍運転を行わずに処理を終了する。
【0053】
次に、図9を参照して急冷運転について説明する。
急冷運転を開始すると、制御装置20は、貯蔵室内ファン10を動作させる(S311)。そして、制御装置20は、操作パネル7の表示部に「急冷中」などの文字を表示させることにより、急冷運転中であることをユーザーに報知する(S312)。すなわち、急冷運転を行う場合には、食品温度は、貯蔵室6の設定温度であるチルド温度帯よりも高い温度であるので、貯蔵室内ファン10によりチルド温度帯(0℃〜2℃)の空気を食品に送風し、食品表面の熱伝達を促して食品温度を低下させる。
【0054】
制御装置20は、貯蔵室内ファン10の動作を開始してから所定時間が経過したことを検知すると(S313:Yes)、食品温度センサ11が検知した食品温度を、食品温度Tとして取得する(S314)。続けて制御装置20は、食品温度Tが、冷蔵温度帯の最大値である5℃以下か否か判断し、食品温度Tが5℃以下であれば(S315:Yes)、貯蔵室内ファン10を停止させ(S316)、操作パネル7の表示部に「急冷終了」と表示させて急冷運転が終了したことをユーザーに報知する(S317)。また、ステップS315において食品温度Tが5℃を超えている場合、すなわち、食品が、冷蔵温度帯よりも高い温度である場合には(S315:No)、ステップS313に戻って再び所定時間が経過するまで貯蔵室内ファン10の運転を継続する。
【0055】
次に、図10を参照して解凍運転について説明する。
解凍運転を開始すると、制御装置20は、貯蔵室内ファン10を動作させる(S321)。そして、操作パネル7の表示部に「解凍中」などの文字を表示させることにより、解凍運転中であることをユーザーに報知する(S322)。すなわち、解凍運転を行う場合には、食品温度が解凍目標温度よりも低い温度であるので、貯蔵室内ファン10によりチルド温度帯(0℃〜2℃)の空気を食品に送風し、食品表面の熱伝達を促して温度を上昇させる。
【0056】
制御装置20は、貯蔵室内ファン10の動作を開始してから所定時間が経過したら(S323:Yes)、食品温度センサ11が検知した食品温度を、食品温度Tとして取得する(S324)。続けて、制御装置20は、食品温度Tが、解凍目標温度である−7℃以上であるか否か判断し(S325)、食品温度Tが−7℃以上であれば(S325:Yes)、貯蔵室内ファン10を停止させ(S326)、操作パネル7の表示部に「解凍終了」と表示させて解凍運転が終了したことをユーザーに報知する(S327)。また、ステップS325において食品温度Tが−7℃未満である場合、すなわち、食品が、解凍目標温度まで昇温されていない場合には(S325:No)、ステップS323に戻って再び所定時間が経過するまで貯蔵室内ファン10の運転を継続する。
【0057】
以上のように、本実施の形態3に係る冷蔵庫1の貯蔵室6は、解凍運転機能と急冷運転機能の両方を備えた。このため、解凍運転と急冷運転の専用の庫内室を別個に設ける必要がなく、冷蔵庫1の庫内スペースを有効に利用することができる。
【0058】
また、貯蔵室6に投入された食品の温度に応じて、解凍運転を行うか、急冷運転を行うか、いずれも行わないかを自動的に判断する。このため、ユーザーは、解凍したい場合も急速冷却したい場合も、貯蔵室6に食品を投入して解凍/急冷ボタンを押下するだけで食品を解凍あるいは冷却でき、操作が簡単であるので使い勝手がよい。
【0059】
また、急冷運転においては、貯蔵室6内の空気を貯蔵室内ファン10により食品に送風することにより、食品の熱伝達を促進し、食品温度を低下させるようにした。貯蔵室6内の空気を食品に送風するので、貯蔵室6内の温度を変動させることなく、食品を冷却することができる。したがって、貯蔵室6内に既に他の食品が保存されている場合であっても、冷却中にその食品の温度をほとんど変化させることがないので、他の食品を別の庫内室に移動させる必要がなく、ユーザーの使い勝手がよい。
【0060】
なお、本実施の形態3の図10で示した解凍運転は、実施の形態1の図6で示したステップS104〜S110と同じ動作であるが、実施の形態2の図7で示したステップS204〜S211と同じ動作の解凍運転を実施の形態3に組み合わせてもよく、同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお、上記実施の形態1〜実施の形態3では、解凍運転を終了するか否かの判断(食品が解凍されたか否かの判断)を、食品温度センサ11が検知した食品温度に基づいて行うこととして説明した。しかし、実施の形態2で説明したようにして食品が解凍温度まで昇温するのに必要な所要時間θを算出し、この所要時間θが経過した段階で食品の解凍運転を終了してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 冷蔵庫、2 圧縮機、3 冷却器、4 冷気送風ファン、5 冷却用風路、6 貯蔵室、7 操作パネル、8 フタ、9 トレイ、10 貯蔵室内ファン、11 食品温度センサ、13 貯蔵室内温度センサ、14 ダンパー、20 制御装置、31 冷蔵室温度センサ、32 切替室温度センサ、33 製氷室温度センサ、34 冷凍室温度センサ、35 野菜室温度センサ、100 冷蔵室、200 切替室、300 製氷室、400 冷凍室、500 野菜室。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室と、
圧縮機、凝縮器、減圧装置、蒸発器を順次接続して構成した冷凍サイクルと、
前記蒸発器によって生成された冷気を前記貯蔵室に送風する冷気送風ファンと、
前記貯蔵室内の温度が所定の設定温度となるよう前記冷凍サイクルと前記冷気送風ファンの運転制御を行う制御装置と、
前記貯蔵室内の食品温度を検知する食品温度検知装置と、
前記冷気送風ファンとは別に設けられ、前記貯蔵室内の空気を強制対流させる貯蔵室内ファンと、を備え、
前記制御装置は、前記食品温度検知装置が検知した食品温度が、前記貯蔵室の前記設定温度より低い所定の低温度である場合には、前記貯蔵室内ファンを動作させて前記貯蔵室内の空気を強制対流させる解凍運転を行う
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記制御装置は、前記解凍運転中に検知された前記食品温度が、所定の解凍目標温度になると、前記解凍運転を終了する
ことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記解凍目標温度は、前記貯蔵室の前記設定温度よりも低く、かつ、前記低温度よりも高い温度であることを特徴とする請求項2記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記制御装置は、前記解凍運転開始前の前記食品温度である初期食品温度と、前記貯蔵室内の温度又は前記貯蔵室の設定温度と、前記解凍目標温度とに基づいて、前記食品温度が前記初期食品温度から前記解凍目標温度まで上昇するのに必要な所要時間を算出し、
前記制御装置が算出した前記所要時間を報知する第1報知装置を備えた
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記解凍運転が終了したことを報知する第2報知装置を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記解凍目標温度は、−7℃以上−5℃以下であることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記制御装置は、前記食品温度検知装置が検知した食品温度が、前記貯蔵室の前記設定温度より高い所定の高温度である場合には、前記貯蔵室内ファンを動作させて前記貯蔵室内の空気を強制対流させる急冷運転を行う
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
貯蔵室と、
圧縮機、凝縮器、減圧装置、蒸発器を順次接続して構成した冷凍サイクルと、
前記蒸発器によって生成された冷気を前記貯蔵室に送風する冷気送風ファンと、
前記貯蔵室内の温度が所定の設定温度となるよう前記冷凍サイクルと前記冷気送風ファンの運転制御を行う制御装置と、
前記貯蔵室内の食品温度を検知する食品温度検知装置と、
前記冷気送風ファンとは別に設けられ、前記貯蔵室内の空気を強制対流させる貯蔵室内ファンと、を備え、
前記制御装置は、前記食品温度検知装置が検知した食品温度が、前記貯蔵室の前記設定温度より高い所定の高温度である場合には、前記貯蔵室内ファンを動作させて前記貯蔵室内の空気を強制対流させる急冷運転を行う
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項1】
貯蔵室と、
圧縮機、凝縮器、減圧装置、蒸発器を順次接続して構成した冷凍サイクルと、
前記蒸発器によって生成された冷気を前記貯蔵室に送風する冷気送風ファンと、
前記貯蔵室内の温度が所定の設定温度となるよう前記冷凍サイクルと前記冷気送風ファンの運転制御を行う制御装置と、
前記貯蔵室内の食品温度を検知する食品温度検知装置と、
前記冷気送風ファンとは別に設けられ、前記貯蔵室内の空気を強制対流させる貯蔵室内ファンと、を備え、
前記制御装置は、前記食品温度検知装置が検知した食品温度が、前記貯蔵室の前記設定温度より低い所定の低温度である場合には、前記貯蔵室内ファンを動作させて前記貯蔵室内の空気を強制対流させる解凍運転を行う
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記制御装置は、前記解凍運転中に検知された前記食品温度が、所定の解凍目標温度になると、前記解凍運転を終了する
ことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記解凍目標温度は、前記貯蔵室の前記設定温度よりも低く、かつ、前記低温度よりも高い温度であることを特徴とする請求項2記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記制御装置は、前記解凍運転開始前の前記食品温度である初期食品温度と、前記貯蔵室内の温度又は前記貯蔵室の設定温度と、前記解凍目標温度とに基づいて、前記食品温度が前記初期食品温度から前記解凍目標温度まで上昇するのに必要な所要時間を算出し、
前記制御装置が算出した前記所要時間を報知する第1報知装置を備えた
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記解凍運転が終了したことを報知する第2報知装置を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記解凍目標温度は、−7℃以上−5℃以下であることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記制御装置は、前記食品温度検知装置が検知した食品温度が、前記貯蔵室の前記設定温度より高い所定の高温度である場合には、前記貯蔵室内ファンを動作させて前記貯蔵室内の空気を強制対流させる急冷運転を行う
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
貯蔵室と、
圧縮機、凝縮器、減圧装置、蒸発器を順次接続して構成した冷凍サイクルと、
前記蒸発器によって生成された冷気を前記貯蔵室に送風する冷気送風ファンと、
前記貯蔵室内の温度が所定の設定温度となるよう前記冷凍サイクルと前記冷気送風ファンの運転制御を行う制御装置と、
前記貯蔵室内の食品温度を検知する食品温度検知装置と、
前記冷気送風ファンとは別に設けられ、前記貯蔵室内の空気を強制対流させる貯蔵室内ファンと、を備え、
前記制御装置は、前記食品温度検知装置が検知した食品温度が、前記貯蔵室の前記設定温度より高い所定の高温度である場合には、前記貯蔵室内ファンを動作させて前記貯蔵室内の空気を強制対流させる急冷運転を行う
ことを特徴とする冷蔵庫。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−42137(P2012−42137A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184163(P2010−184163)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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