説明

冷蔵庫

【課題】保存容器内の温度を一定に保つとともに貯蔵物の乾燥を抑えて貯蔵物の鮮度を保つことができる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】貯蔵物を収納する保存容器50を貯蔵室7内に配置した冷蔵庫において、保存容器50が密閉可能に形成されるとともに保存容器50と貯蔵室7の内壁との間に冷気が流通する隙間Sを有して配され、保存容器50の周壁に蓄冷材100を設ける。また保存容器50の開口部52eを開閉する調湿ダンパ55を設け、保存容器50が所定湿度よりも高湿度になった際に、調湿ダンパ55により開口部52eを開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貯蔵室内に保存容器を備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜等の食品の鮮度を長期間維持するには、食品を凍結させない程度の低温度かつ高湿度の環境下で保存すればよいことが知られる。例えば、特許文献1に開示される冷蔵庫は貯蔵室内に設けられる保存容器と調湿板とを備える。調湿板は保存容器の上面に設けられ、食品から出る水分を吸収する親水性多孔質ポリエチレン板等から成る。保存容器内の前後の上部には冷却器からの冷気が流入する開口部と流入した冷気が流出する流出口とを備えている。
【0003】
調湿板によって保存容器内の水分を吸収し、保存容器内の湿度が80〜90%RHに確保されるように開口部と流出口との大きさが決められる。これにより、保存容器内の食品は冷気によって冷却されるとともに、所定の湿度が保たれる構成となっている。
【0004】
特許文献2に開示される冷蔵庫は貯蔵室内に設けられる保存容器とフィルタとを備える。保存容器はアルミニウム、ステンレス、鉄、銅などの熱良導性を有する金属により構成される。貯蔵室内は0℃〜3℃に設定されて保存容器は間接冷却される。フィルタは保存容器の蓋部の開口部に設けられ、保湿性を備えたポリオレフィン系樹脂から成り、保存容器内の水分を吸収する。また、フィルタの一方を保存容器内に露呈し、他方を保存容器の外に露呈している。これにより、フィルタによって保存容器内の結露の発生を抑制する。
【0005】
特許文献3に開示される冷蔵庫には貯蔵室内に設けられる電極と保存容器と加湿装置とを備える。加湿装置は保存容器の上部に設けられ、保存容器内を高湿度になるように加湿する。また、−5℃〜0℃となった貯蔵室の一部に電場を印加し、浅川効果と呼ばれる水の蒸発促進効果を得て保存容器内の結露を除去する。これにより、これにより保存容器内は所定の湿度を維持して貯蔵物を冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第315649号公報
【特許文献2】特許第342879号公報
【特許文献3】特開2008−215716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される冷蔵庫の保存容器は常に開口部及び流出口が開口しており、周囲冷気の温度変化を受けやすい。このため保存容器内の温度を一定に保つことが難しい。また、特許文献2に開示される冷蔵庫の保存容器は熱良導体で構成されるため、周囲冷気の温度変化を受けやすく、保存容器内の温度を一定に保つことが難しい。
【0008】
保存容器内の温度を一定に保つことができない場合、冷蔵庫の扉開閉時や除霜時などの周囲温度の上昇に伴い、保存容器内の温度も同様に上昇する。また、冷却時には保存容器内も同様に温度が下降して氷点以下となり、食品が凍結する可能性がある。このため、貯蔵物が劣化するという問題があった。
【0009】
また、特許文献3に開示される冷蔵庫は加圧装置を備えるため冷蔵庫の構造の複雑化、コスト及びメンテナンス性などの問題がある。
【0010】
本発明は、単純な構成で保存容器内の温度を一定に保つとともに貯蔵物の乾燥を抑えて貯蔵物の鮮度を保つことができる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、貯蔵物を収納する保存容器を貯蔵室内に配置した冷蔵庫において、前記保存容器が密閉可能に形成されるとともに、前記保存容器と前記貯蔵室の内壁との間に冷気が流通する隙間を有し、前記保存容器の周壁に蓄冷材を設けたことを特徴とする。
【0012】
この構成によると、冷却器からの冷気が密閉可能に形成される保存容器と貯蔵室の内壁との間に流通して保存容器を冷却する。また、保存容器の周壁には蓄冷材が設けられ、周囲の温度変動を吸収して保存容器内の温度変化を抑制する。
【0013】
また本発明は、前記保存容器に冷気が通る開口部を開口するとともに、前記開口部を開閉する調湿ダンパを設け、前記保存容器が所定湿度よりも高湿度になった際に前記調湿ダンパにより前記開口部を開いたことを特徴とする。
【0014】
この構成によると、調湿ダンパにより開口部を閉じると保存容器が密閉され、開口部を開くと保存容器の内外が連通して冷気が流通する。
【0015】
また本発明は、前記調湿ダンパは前記開口部を閉じた状態で前記貯蔵室に冷気を吐出する吐出口を開閉することができ、前記貯蔵室の冷却停止時又は冷気を生成する冷却器の除霜時に前記調湿ダンパにより前記吐出口を閉じることを特徴とする。
【0016】
この構成によると、貯蔵室の冷却停止時又は冷却器の除霜時に調湿ダンパにより吐出口及び開口部を閉じる。
【0017】
また本発明は、前記吐出口を前記貯蔵室の背面に設けるとともに、前記開口部を前記保存容器の後壁に設け、前記調湿ダンパは前記保存容器に軸支して前記開口部内に配置されるとともに、前記開口部の周縁又は周囲に当接して開口部を塞ぐ第1当接面及び第2当接面と、前記吐出口の周囲に当接して前記吐出口を塞ぐ第3当接面とを有し、第1当接面により前記開口部を塞いだ際に前記吐出口が開かれ、第2当接面により前記開口部を塞いだ際に前記吐出口が第3当接面により閉じられることを特徴とする。
【0018】
この構成によると、調湿ダンパは保存容器内が低湿度で冷却されている場合には第1当接面によって開口部を塞ぐ。また、保存容器内が高湿度で冷却されている場合には調湿ダンパは回動し、開口部を開口する。また、貯蔵室の冷却停止時又は冷却器の除霜の場合には、吐出口を第3当接面により閉じ、開口部を第2当接面により閉じる。
【0019】
また本発明は、前記吐出口を前記貯蔵室の背面に設けて前記吐出口から流入する冷気の気流が前記貯蔵室の上面に沿って前方に流通し、前記調湿ダンパは前記保存容器に軸支して前記開口部内に配置されるとともに、前記開口部の周縁又は周囲に当接して開口部を塞ぐ第1当接面及び第2当接面と、前記吐出口の周囲に当接して前記吐出口を塞ぐ第3当接面とを有し、第1当接面により前記開口部を塞いだ際に前記吐出口が開かれ、第2当接面により前記開口部を塞いだ際に前記吐出口が第3当接面により閉じられ、前記開口部を開いた際に前記開口部に連通して前記気流に面して開口する細通路が形成されることを特徴とする。
【0020】
この構成によると、保存容器内が高湿度になると、調湿ダンパは回動して開口部を開口する。このとき、開口部に連通する細通路を介して保存容器内の冷気が流出する。
【0021】
また本発明は、前記保存容器の前壁が透明部材から成り、前記前壁を除く前記周壁に前記蓄冷材を配したことを特徴とする。
【0022】
また本発明は、前記蓄冷材が前記周壁に封入される水又は塩化ナトリウム水溶液であることを特徴とする。
【0023】
また本発明は、前記保存容器は上面を開放した箱状の容器部と前記容器部の上面を塞ぐ蓋部とを有し、前記蓋部が前記貯蔵室の上壁に固定されるとともに前記容器部が前後方向にスライドすることを特徴とする。この構成によると、ユーザは容器部を前後方向にスライドさせて貯蔵物を出し入れする。
【0024】
また本発明は、前記保存容器は前面を開放して前記貯蔵室に固定される箱状の容器部と前記容器部の前方を開閉する蓋部とを有することを特徴とする。この構成によると、ユーザは蓋部を前方に開閉して貯蔵物を出し入れする。
【0025】
また本発明は、前記貯蔵室は冷蔵室に隔離して配され、周囲の冷蔵室内よりも低温に維持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、保存容器が密閉可能に形成されるとともに保存容器と貯蔵室の内壁との間に冷気が流通する隙間を有して配され、保存容器の周壁に蓄冷材を設けたため、保存容器内の温度を一定に保つとともに貯蔵物の乾燥を抑えて貯蔵物の鮮度を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態の冷蔵庫を示す側面断面図
【図2】本発明の第1実施形態の保存容器を示す側面断面図
【図3】本発明の第1実施形態の保存容器を示す側面断面図
【図4】本発明の第1実施形態の保存容器を示す側面断面図
【図5】本発明の第1実施形態の保存容器を示す側面断面図
【図6】本発明の第1実施形態の保存容器を示す側面断面図
【図7】本発明の第2実施形態の冷蔵庫を示す側面断面図
【図8】本発明の第2実施形態の保存容器を示す側面断面図
【図9】本発明の第2実施形態の保存容器を示す側面断面図
【図10】本発明の第2実施形態の保存容器を示す側面断面図
【図11】本発明の第2実施形態の保存容器を示す側面断面図
【図12】本発明の第2実施形態の保存容器を示す側面断面図
【図13】本発明の第3実施形態の保存容器を示す側面断面図
【図14】本発明の第3実施形態の保存容器を示す側面断面図
【図15】本発明の第3実施形態の保存容器を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の冷蔵庫を示す側面断面図である。冷蔵庫1は本体部を形成する断熱箱体2を備え、断熱箱体2には上方から順に冷蔵室3、冷凍室4、野菜室5が設けられる。冷蔵室3と冷凍室4とは断熱壁76によって仕切られ、冷凍室4と野菜室5とは断熱壁77によって仕切られる。
【0029】
冷蔵室3は貯蔵物を冷蔵保存し、前面の開口部3aは回動式の扉3bにより開閉される。冷蔵室3には貯蔵物を載置する複数の棚板6a〜6dが上下に並設される。棚板6a〜6dは樹脂成形品により形成され、冷蔵室3内に水平方向に固定される。
【0030】
最下部の棚板6dの下方にはチルド室7が隔離して配される。チルド室7は周囲の冷蔵室3内よりも低温に維持される。これにより冷蔵室3内のフリースペースを中央付近に確保でき、利便性を向上できる。チルド室7及び保存容器50については後述する。
【0031】
冷凍室4は貯蔵物を冷凍保存し、前面の開口部4aは扉4bにより開閉される。野菜室5は貯蔵物を冷蔵室3よりも高温の冷蔵温度で冷蔵保存し、野菜や果物などを収納する。野菜室5の前面の開口部5aは収納ケース78と一体に形成された引き出し式の扉5bにより開閉される。野菜室5の側壁及び収納ケース78の側壁の外側には前後に延びて互いに摺動する案内部(不図示)が設けられる。案内部によって収納ケース78が扉5bとともに前後に円滑に出し入れされる。
【0032】
野菜室5の後方の機械室42内には圧縮機41が配される。圧縮機41には凝縮器、膨張器(いずれも不図示)、冷却器18が順に接続される。圧縮機41の駆動によりイソブタン等の冷媒が循環して冷凍サイクルが構成される。冷蔵室3及び冷凍室4の背後には冷気通路21が設けられ、冷気通路21内に冷却器18、送風ファン19及び温度調整ダンパ16が配される。送風ファン19の駆動により熱交換して冷気が生成される。冷気通路21を流通する冷気は冷凍室4に吐出され、冷凍室4を冷却する。また温度調節ダンパ16を開くと冷気通路21を流通する冷気は冷蔵室3に吐出され、冷蔵室3を冷却する。
【0033】
図2、図3はチルド室7を示す側面断面図である。チルド室7の背壁7dは冷気通路21(図1参照)との隔壁により形成され、上壁は棚板6dにより形成される。チルド室7の前壁7b、側壁(不図示)及び底壁7cは背面を開口して棚板6dに対して前後にスライドするスライド部7aにより形成される。これにより、チルド室7は略六面体になっている。スライド部7aは透明樹脂により形成される。
【0034】
チルド室7の背壁7dには冷気通路21(図1参照)に連通する冷気の吐出口58が開口する。吐出口58の下方には野菜室5(図1参照)に連通して冷気が流出する戻り口59が開口する。チルド室7の周囲の冷蔵室3内の冷気はチルド室7の底壁7cと断熱壁76との間を流通して戻り口59に導かれる。
【0035】
チルド室7内には貯蔵物を収納する保存容器50が配される。保存容器50は樹脂成形品により形成され、容器部52、蓋部51及び背面部60を有している。チルド室7の内壁と保存容器50との間には冷気が流通する隙間Sが形成される。
【0036】
蓋部51及び背面部60はチルド室7内に固定される。容器部52は上面を開放した箱状に形成され、スライド部7aに固定される。スライド部7a及び容器部52を引き出して容器部52内に貯蔵物を出し入れすることができる。容器部52の前壁52aは透明樹脂により形成され、チルド室7の前壁7b及び容器部52の前壁52aを介して容器部52内を視認可能になっている。
【0037】
容器部52をチルド室7内に収納した際に容器部52の上面は蓋部51により塞がれ、背壁52cは背面部60に当接する。蓋部51の前端にはパッキン56が設けられ、容器部52の前壁52aに密接する。背面部60にはパッキン57が設けられ、容器部52の背壁52cに密接する。
【0038】
容器部52の背壁52c及び固定部材60には互いに対向する開口部52e、60aが開口する。後述する調湿ダンパ55により開口部60aが閉じられると保存容器50が密閉される。
【0039】
保存容器50の蓋部51を含む周壁には前壁52aを除き、蓄冷材100が封入される。蓄冷材100は水または塩化ナトリウム水溶液から成り、保存容器50の周囲の温度を吸収する。また、蓋部51の下面には保存容器50内の湿度を検知する湿度センサ63が設けられる。
【0040】
開口部60a内には調湿ダンパ55が配される。調湿ダンパ55は上端の回動部55aで蓋部51に軸支される本体部55bと本体部55bから下方に突出する突出部55cとを有し、回動自在に配される。本体部55bの下面は回動により開口部60aの周縁に当接する第1当接面55dを形成する(図4参照)。突出部55cの背面は回動により開口部60aの周囲に当接する第2当接面55eを形成する(図6参照)。本体部55bの背面は回動により吐出口58の周囲に当接する第3当接面55fを形成する(図6参照)。
【0041】
上記構成の冷蔵庫1において、圧縮機41の駆動により冷却器18と熱交換して生成される冷気は冷蔵室3、チルド室7及び冷凍室4に吐出され、冷蔵室3、チルド室7及び冷凍室4を冷却する。冷凍室4を流通した冷気は冷却器18に戻る。チルド室7及び冷蔵室3を流通した冷気は戻り口59を介して野菜室5に導かれ、野菜室5内を冷却した後、冷却器18に戻る。
【0042】
調湿ダンパ55の回動により図4に示すように第1当接面55dが開口部60aの周縁に当接すると、開口部60aが閉じられて吐出口58が開かれる。これにより、保存容器50内が密閉され、吐出口58からチルド室7に吐出された冷気が矢印D1に示すように保存容器50の周囲の隙間Sを流通する。そして、矢印D2に示すように戻り口59から流出する。これにより、保存容器50内の乾燥を防止して貯蔵物が冷却される。
【0043】
この時、保存容器50の蓄冷材100に冷気の冷熱が蓄冷される。このため、冷蔵室3の扉3bの開成によってチルド室7の周囲温度が上昇した際に、蓄冷材100から放出される冷熱によって保存容器50内の昇温が防止される。従って、蓄冷材100により周囲の冷気の温度変化を吸収し、保存容器50内の温度を一定に保つことができる。
【0044】
貯蔵物から蒸発する水分等によって保存容器50内が所定湿度よりも高湿度になると、湿度センサ63の検知により調湿ダンパ55が回動する。これにより、図5に示すように開口部60aが開かれ、開口部60a、52eを介して保存容器50の内外が連通する。吐出口58から吐出された冷気は矢印D3に示すように開口部60a、52eを介して保存容器50内に流入するとともに流出する。このため、保存容器50内の湿度が低下し、所定湿度よりも低湿度になると前述の図4に示すように開口部60aが閉じられる。従って、保存容器50内を調湿することができ、結露水との接触による貯蔵物の劣化を防止することができる。
【0045】
尚、湿度センサ63に替えてタイマー及び保存容器50の開閉を検知する検知センサを設けてもよい。これにより、保存容器50を開閉した後の経過時間によって保存容器50内が所定湿度よりも高湿度になったか否かを判別することができる。
【0046】
温度調節ダンパ16の閉成によるチルド室7の冷却停止時や、冷却器18の除霜時等には調湿ダンパ55が図6に示すように回動する。即ち、第2当接面55eが開口部60aの周囲に当接し、第3当接面55fが吐出口58の周囲に当接する。これにより、保存容器50内が密閉され、吐出口58を閉じて温度の高い冷気がチルド室7内に吐出されることを防止する。この時、冷却された蓄冷材100によって周囲の冷気の温度変化を吸収し、保存容器50内の昇温が防止される。従って、保存容器50内の温度を一定に保つことができる。
【0047】
本実施形態によると、保存容器50が密閉可能に形成されるとともに、保存容器50とチルド室7の内壁との間に冷気が流通する隙間Sを有し、保存容器50の周壁に蓄冷材100を設けたため、蓄冷材100が周囲の温度変化を吸収して保存容器50内の温度を一定に保つことができる。また保存容器50が密閉されているために貯蔵物の乾燥を抑えて貯蔵物の鮮度を保つことができる。
【0048】
また、保存容器50に設けた開口部60aにより、保存容器50が所定湿度よりも高湿度になった際に開口部60aを開いたため、保存容器50内を調湿して貯蔵物の劣化を防止できる。
【0049】
また、調湿ダンパ55は開口部60aを閉じた状態でチルド室7に冷気を吐出する吐出口58を開閉することができ、チルド室7の冷却停止時又は冷気を生成する冷却器18の除霜時に調湿ダンパ55により吐出口58を閉じるため、吐出口58及び開口部60aからの温度の高い冷気の流入を遮断して貯蔵物の劣化を低減することができる。
【0050】
また、保存容器50に軸支される調湿ダンパ55の第1当接面55dにより開口部60aを塞いだ際に吐出口58が開かれ、第2当接面55eにより開口部60aを塞いだ際に吐出口が第3当接面55fにより閉じられる。これにより、貯蔵物の乾燥を抑えて鮮度を保つことを容易に実現することができる。
【0051】
また、保存容器50の前壁52aが透明部材から成り、前壁52aを除く周壁に蓄冷材100を配したため、保存容器50内の視認性を向上するとともに、結露の発生を抑制することができる。
【0052】
また、蓄冷材100が周壁に封入される水又は塩化ナトリウム水溶液であるため、熱容量が大きく、凍結温度が約−1℃〜0℃である。このため貯蔵物を凍結させずに保存することができる。水又は塩化ナトリウム水溶液は入手が容易であり、冷蔵室3内に漏出しても危険性がなく、清掃が簡単である。
【0053】
また、保存容器50は上面を開放した箱状の容器部52と容器部52の上面を塞ぐ蓋部51とを有し、蓋部51がチルド室7に固定されるとともに容器部52が前後方向にスライドする。このため、チルド室7の内壁との間に隙間Sを有して密閉可能な保存容器50を容易に実現することができる。
【0054】
またチルド室7は冷蔵室3に隔離して配され、蓄冷材100を有する周囲の冷蔵室3内よりも確実に低温に維持される。
【0055】
(第2実施形態)
次に図7は第2実施形態の保存容器150の側面断面図を示している。説明の便宜上、前述の図1〜6を示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。最上部の棚板6aの上部には冷蔵室3に隔離されて配され、周囲の冷蔵室3内よりも低温に維持されるチルド室7が設けられる。これにより冷蔵室3内のフリースペースを中央付近に確保でき、利便性を向上できる。
【0056】
図8及び図9はチルド室7を示す側面断面図である。チルド室7の前壁7bは上部に軸支される回動部7gを備え、回動部7gが回動して前方を開閉する。前壁7bの下部には回動部7f及び係合部7eが設けられる。回動部7fが回動し、係合部7eは保存容器150の下壁7cの前端に設けられた爪部7hと係合する。
【0057】
チルド室7の後方には冷気通路21に連通してチルド室7に冷気を吐出する吐出口58が設けられる。容器部152の下壁152dとチルド室7の下壁を構成する棚板6aの間には冷気が流入する隙間Sが設けられる。棚板6aと前壁7bとの間にはチルド室7内の冷気が流出する流出口159が開口する。
【0058】
保存容器150は前面を開放してチルド室7に固定される箱状の容器部152と、容器部152の前方を開閉する蓋部151と、を有する。蓋部151は前壁7bに固定され、前壁7bとともに回動して前方を開放する。また蓋部151及び前壁7bは透明樹脂により形成される。
【0059】
上壁152aと後壁152bとの間には冷気が流入する開口部152cが設けられる。開口部152c内には調湿ダンパ155が配される。調湿ダンパ155は上端の回動部155aで上壁152aに軸支される本体部155eと本体部155eから下方に突出する突出部155f、155gを備えたコ字状に形成され、回動自在に配される。突出部155fには回動により開口部152cの周縁に当接する第1当接面155bを形成する(図10参照)。突出部155gの内面は回動により開口部152cの周囲に当接する第2当接面155cを形成する(図12参照)。突出部155fの背面は回動により吐出口58の周囲に当接する第3当接面155dを形成する(図12参照)。
【0060】
上記構成の冷蔵庫1において、保存容器150内が低湿度で冷却されているとき、図10に示すように開口部152cは第1当接面155bが当接して閉じられる。このとき冷気通路21を流通する冷気は吐出口58を介して矢印D7に示すように流入し、上下方向に分岐して矢印D8、D9に示すように隙間Sを流通する。そして矢印D9に流れる冷気は流出口159(図8参照)から流出する。
【0061】
貯蔵物から蒸発する水分等によって保存容器150内が所定湿度よりも高湿度になると、湿度センサ63の検知によって調湿ダンパ155が回動する。これにより、図11に示すように開口部152cが開かれ、開口部152cを介して保存容器150の内外が連通する。吐出口58から吐出された冷気は矢印D10に示すように開口部152cを介して保存容器150内に流入するとともに流出する。
【0062】
チルド室7の冷却停止時や、冷却器18の除霜時にはダンパ155は回動して図12に示すように回動する。即ち、第2当接面155cが開口部152cの周囲に当接し、第3当接面155dが吐出口58の周囲に当接する。
【0063】
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、保存容器150は前面を開放してチルド室7に固定される箱状の容器部152と、容器部152の前方を開閉する蓋部151と、を有したため、密封性を向上して貯蔵物を容易に出し入れできる。
【0064】
(第3実施形態)
次に図13〜15は第3実施形態のチルド室7の側面断面図を示している。説明の便宜上、前述の図1〜6を示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態では吐出口58の高さ位置が異なり、吐出口58の下部には冷気を上壁に沿って案内する案内部257が設けられる。また、調湿ダンパ255の形状及び取り付け位置が異なっている。
【0065】
背面部60の上部には開口部60aが設けられ、開口部60a内には調湿ダンパ255が配される。調湿ダンパ255は回動部255aで軸支される本体部255bと本体部255bから突出する突出部255cとを有してL字状に形成され、回動自在に配される。突出部255cは回動により開口部60aの周縁に当接する第1当接面255dを形成する(図13参照)。本体部255bは回動により開口部60aの周囲に当接する第2当接面255eを形成する(図15参照)。突出部255cは回動により吐出口58の周囲に当接する第3当接面255fを形成する(図15参照)。
【0066】
第1、2実施形態と同様に低湿度でチルド室7の冷却時には、図13に示すように第1当接面255dと蓋部51の後部とが当接して開口部60aを閉じる。このとき矢印D4に示すように冷気通路21からの冷気は吐出口58を介して流入し、案内部257を介して上壁に沿って気流を隙間Sに案内する。その後、冷気は矢印D5に示すように戻り口59から吐出される。
【0067】
貯蔵物から蒸発する水分等によって保存容器250内が所定湿度よりも高湿度になると、湿度センサ63の検知により調湿ダンパ255は図14に示すように回動する。これにより、開口部60aが開口する位置まで回動する。この時、開口部60aに連通して気流に面して開口する細通路256を第1当接面255dと蓋部51の後端との間に形成する。これにより、上壁に沿って流通する冷気に保存容器250内の冷気が吸引され、矢印D6に示すように細通路256を介して流出しやすくなる。また、保存容器250内が低圧になった際には細通路256を介して保存容器250内に冷気が流入する。
【0068】
チルド室7の冷却停止時又は冷却器18の除霜時には図15に示すように、第2当接面255eにより開口部60aを塞いだ際に吐出口58が第3当接面255fにより閉じられる。
【0069】
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、吐出口58をチルド室7の背面に設けて吐出口58から流入する気流がチルド室7の上面に沿って前方に冷気が流通し、調湿ダンパ255の第1当接面255dにより開口部60aを塞いだ際に吐出口58が開かれ、第2当接面255eにより開口部60aを塞いだ際に吐出口58が第3当接面255fにより閉じられ、開口部60aを開いた際に開口部60aに連通して気流に面して開口する細通路256を形成する。このため、保存容器250内の湿度の調整を容易に実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によると、貯蔵室内に保存容器を備えた冷蔵庫に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 冷蔵庫
3 冷蔵室
3a 開口部
3b 扉
4 冷凍室
4a 開口部
4b 扉
5 貯蔵室
5a 開口部
5b 扉
6 棚板
7 チルド室(貯蔵室)
7a スライド部
7b 前壁
7c 下壁
7d 背面
7h 爪部
16 温度調節ダンパ
21 冷気通路
30 仕切板
35 調整口
36 吐出口
50 保存容器
51 蓋部
52 容器部
52a 前壁
52b 下面
52c 後壁
52d 後壁
52e 開口部
55 調湿ダンパ
55a 回動部
55b 本体部
55c 突出部
55d 第1当接面
55e 第2当接面
55f 第3当接面
58 吐出口
59 戻り口
60a 開口部
63 湿度センサ
100 蓄冷材
150 保存容器
151 蓋部
151c 開口部
152 容器部
152a 上壁
152b 後壁
152c 開口部
152d 下壁
155 調湿ダンパ
155a 回動部
155b 第1当接面
155c 第2当接面
155d 第3当接面
155e 本体部
155f 突出部
155g 突出部
159 流出口
250 保存容器
255 調湿ダンパ
255a 回動部
255b 本体部
255c 突出部
255d 第1当接面
255e 第2当接面
255f 第3当接面
256 細通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵物を収納する保存容器を貯蔵室内に配置した冷蔵庫において、
前記保存容器が密閉可能に形成されるとともに、前記保存容器と前記貯蔵室の内壁との間に冷気が流通する隙間を有し、前記保存容器の周壁に蓄冷材を設けたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記保存容器に冷気が通る開口部を開口するとともに、前記開口部を開閉する調湿ダンパを設け、前記保存容器が所定湿度よりも高湿度になった際に前記調湿ダンパにより前記開口部を開いたことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記調湿ダンパは前記開口部を閉じた状態で前記貯蔵室に冷気を吐出する吐出口を開閉することができ、前記貯蔵室の冷却停止時又は冷気を生成する冷却器の除霜時に前記調湿ダンパにより前記吐出口を閉じることを特徴とする請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記吐出口を前記貯蔵室の背面に設けるとともに、前記開口部を前記保存容器の後壁に設け、
前記調湿ダンパは前記保存容器に軸支して前記開口部内に配置されるとともに、前記開口部の周縁又は周囲に当接して開口部を塞ぐ第1当接面及び第2当接面と、前記吐出口の周囲に当接して前記吐出口を塞ぐ第3当接面とを有し、
第1当接面により前記開口部を塞いだ際に前記吐出口が開かれ、第2当接面により前記開口部を塞いだ際に前記吐出口が第3当接面により閉じられることを特徴とする請求項2又は3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記吐出口を前記貯蔵室の背面に設けて前記吐出口から流入する冷気の気流が前記貯蔵室の上面に沿って前方に流通し、
前記調湿ダンパは前記保存容器に軸支して前記開口部内に配置されるとともに、前記開口部の周縁又は周囲に当接して開口部を塞ぐ第1当接面及び第2当接面と、前記吐出口の周囲に当接して前記吐出口を塞ぐ第3当接面とを有し、
第1当接面により前記開口部を塞いだ際に前記吐出口が開かれ、第2当接面により前記開口部を塞いだ際に前記吐出口が第3当接面により閉じられ、
前記開口部を開いた際に前記開口部に連通して前記気流に面して開口する細通路が形成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記保存容器の前壁が透明部材から成り、前記前壁を除く前記周壁に前記蓄冷材を配したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記蓄冷材が前記周壁に封入される水又は塩化ナトリウム水溶液であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記保存容器は上面を開放した箱状の容器部と前記容器部の上面を塞ぐ蓋部とを有し、前記蓋部が前記貯蔵室に固定されるとともに前記容器部が前後方向にスライドすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記保存容器は前面を開放して前記貯蔵室に固定される箱状の容器部と前記容器部の前方を開閉する蓋部とを有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項10】
前記貯蔵室は前記冷蔵室内に隔離して配され、周囲の前記冷蔵室内よりも低温に維持されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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