説明

冷蔵庫

【課題】冷媒配管を切り換える際に発生する配管内の残留冷媒による冷媒不足を解消して消費電力量の低減を図ることを目的とする。また、切換弁を冷媒が通過する際に発生する冷媒流動音を低減することを目的とする。
【解決手段】圧縮機と、放熱手段と、減圧手段と、冷却器とを順次接続した冷媒回路を有する冷蔵庫において、前記放熱手段は、庫外への放熱を行う第一の放熱手段と、前記仕切部を加熱する第二の放熱手段とを備え、前記圧縮機により圧縮された冷媒を、前記第一の放熱手段及び前記第二の放熱手段に流す第一の冷媒流路と、前記第一の放熱手段に冷媒を流通させた後に、前記第一の冷媒流路をバイパスさせる第二の冷媒流路と、前記第一の冷媒流路と前記第二の冷媒流路を切り換える流路切換手段とを備え、前記第一の冷媒流路及び前記第二の冷媒流路の内容積は前記第一の放熱手段の内容積よりも小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の冷蔵庫として、貯蔵室の開口縁部に結露防止配管を配置した冷蔵庫が知られている。冷蔵庫本体を構成する断熱箱体には、複数の貯蔵室が設けられ、貯蔵室前方の開口を開閉する断熱性の扉が取り付けられている。開口と扉との接触部、すなわち貯蔵室の開口縁部は、庫内の冷気により冷やされて、その表面は外気との温度差により結露が発生し易くなる。この結露発生現象を抑制するために、冷凍サイクルの放熱パイプを利用した結露防止配管が、貯蔵室の開口縁部に埋設してある。
【0003】
特許文献1に記載の冷蔵庫では、複数に分割された凝縮器の途中に切換え弁を設けて結露防止配管を効率良く加熱し、更に冷凍サイクルの冷媒不足現象を引き起こすことなく結露防止配管をバイパスさせる手段を備えて消費電力量の低減を図っている。
【0004】
また、結露防止配管に冷媒を流通させる加熱モードと、結露防止配管をバイパスさせて冷媒を流通させるモードのいずれかを、切換え弁によって切り換える構成が記載されている。結露防止配管への冷媒の流通を停止した際、結露防止配管内に残留する冷媒によって冷凍サイクル全体としての冷媒不足が発生する。それを回避する手段として、特許文献1では、結露防止配管を圧縮機と凝縮器との間に接続して、結露防止配管を気相域の冷媒で満たすことで、結露防止配管内に閉じ込められる冷媒量を少なくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−174767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の冷蔵庫では、圧縮機、第一凝縮器、結露防止配管、第二凝縮器、絞り、冷却器の順に接続されて冷凍サイクルが構成されている。結露防止配管では主に気相域での放熱を利用するために、第一凝縮器と第二凝縮器の間に結露防止配管を設けている。圧縮機から放出される冷媒ガスは、第一凝縮器、結露防止配管、第二凝縮器を通過する際に、外部に熱を放出して過熱ガス域(気相域)、気液二相域、液相域へと順番に相変化していく。
【0007】
第一凝縮器は冷蔵庫背面側、第二凝縮器は冷蔵庫側面に設けた放熱パイプからそれぞれの壁面を介して外気に熱を放出する方式である。この構成において、例えば、第二凝縮器が設置されている冷蔵庫側壁付近に暖房器具(加熱源)が置かれた場合、第二凝縮器内の冷媒は外部の熱を吸熱して、冷媒の一部が気化してガス(気相)となる。
【0008】
第二凝縮器を流出した冷媒は絞りを経て冷却器に流入するが、冷却器出入り口におけるエンタルピ差が小さくなるので結果的に吸熱量が少なくなり、庫内の冷却性能が悪化して消費電力量が増加する(図11参照)。
【0009】
特許文献1では、上記の課題に関する配慮が不十分である。
【0010】
更に、第一凝縮器と第二凝縮器の間に、切換え弁を配置しているが、切換え弁内部の冷媒の状態は、気相域あるいは気液二相域になっているので、切換え弁を通過する際に冷媒流動音が発生する恐れがある。
【0011】
また、切換え弁によって結露防止配管と、結露防止配管をバイパスさせる配管を切り換えているが、切換え弁からの冷媒漏れを一定量許容している。そのため、例えば、切換え弁を結露防止配管側に固定した場合、結露防止配管のバイパス側に冷媒が滞留するため、冷媒不足を引き起こすことがある。また、一般に冷凍サイクル内の配管に冷媒が滞留する場合、圧縮機吐出側に全閉機能を有する切換え弁で全閉状態にして、冷凍サイクル内の冷媒を回収することが行われている。
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の冷凍サイクルの場合、結露防止配管とそれをバイパスする配管内に滞留する冷媒を、切換え装置によって切り換える度に回収すると、圧縮機の効率低下により消費電力量が増加してしまう恐れがある。
【0013】
ここで、可燃性冷媒ガスを用いた強制循環方式の冷蔵庫における冷媒封入量は、日本では100gと上限値が決められている。日本国内の冷蔵庫は電気部品が多く、また除霜時に電気ヒータ(一例として、ガラス管ヒータ)を用いているため、可燃性冷媒を用いる時の冷媒封入量の上限値が低く抑えられている。
【0014】
一方、欧州の冷蔵庫では冷気自然対流式が多く、電気ヒータを用いずに霜を解かす製品が多いため、冷媒封入量の上限値が日本国内よりも多く、欧州のIEC規格で150gになっている。
【0015】
日本国内の内容積400〜500Lクラスの冷蔵庫では、冷媒封入量は80〜90g程度であるため、凝縮器側を切り換える冷凍サイクルの冷媒不足を解消するために、冷媒封入量を増やそうとしても既に上限値に近いため、冷媒不足を解消することは容易ではない。
【0016】
そこで本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、冷媒配管を切り換える際に発生する配管内の残留冷媒による冷媒不足を解消して消費電力量の低減を図ることを目的とする。また、切換弁を冷媒が通過する際に発生する冷媒流動音を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、例えば特許請求項の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、圧縮機と、放熱手段と、減圧手段と、冷却器とを順次接続した冷媒回路を有する冷蔵庫において、前記放熱手段は、庫外への放熱を行う第一の放熱手段と、前記仕切部を加熱する第二の放熱手段とを備え、前記圧縮機により圧縮された冷媒を、前記第一の放熱手段及び前記第二の放熱手段に流す第一の冷媒流路と、前記第一の放熱手段に冷媒を流通させた後に、前記第一の冷媒流路をバイパスさせる第二の冷媒流路と、前記第一の冷媒流路と前記第二の冷媒流路を切り換える流路切換手段とを備え、前記第一の冷媒流路及び前記第二の冷媒流路の内容積は前記第一の放熱手段の内容積よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、冷媒配管を切り換える際に発生する配管内の残留冷媒による冷媒不足を解消して消費電力量の低減を図ることができる。また、切換弁を冷媒が通過する際に発生する冷媒流動音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の正面外観図である。
【図2】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の庫内断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の放熱器の配置図である。
【図5】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の仕切壁の断面模式図である。
【図6】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の機械室の内部構造を示す模式図である。
【図7】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の機械室に機械室カバーを取り付けた状態の外観図である。
【図8】結露防止配管を切り換える場合の制御イメージを説明する図である。
【図9】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の冷却運転の一例を示すタイムチャートである。
【図10a】放熱器配管内部における冷媒の状態を模式的に表した図である。
【図10b】本発明の実施形態に係る放熱器配管内部における冷媒の状態を模式的に表した図である。
【図11】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の運転状況を表すモリエル線図である。
【図12a】三方弁の内部の冷媒の状態を模式的に示した図である。
【図12b】三方弁の内部の冷媒の状態を模式的に示した図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成図である。
【図14】図13の他の実施形態における冷却運転の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る冷蔵庫の正面外観図である。図2は、本発明の実施形態に係る冷蔵庫の庫内断面図である。図1に示すように、本実施の形態例に係る冷蔵庫1は、上方から冷蔵室2、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6から構成されている。なお、製氷室3、上段冷凍室4は左右に並べて配置されている。冷蔵室2は左右に分割された冷蔵室扉2a、2bを備え、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6は、それぞれ引き出し式の製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、野菜室扉6aを備えている。以下では、冷蔵室扉2a、2b、製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、野菜室扉6aを、単に扉と呼ぶ場合がある。また、冷蔵庫1には各扉の開閉状態をそれぞれ検知する扉センサ(図示せず)と、扉開放状態と判定された状態が所定時間、例えば、1分間以上継続された場合に使用者に報知するアラーム(図示せず)、冷蔵室2や冷凍室5の温度設定をする温度設定器(図示せず)等を備えている。扉2a、2bを回動可能に冷蔵庫1に固定する扉ヒンジが冷蔵庫上部に設けてあり、扉ヒンジは扉ヒンジカバー80で覆われている。各貯蔵室のそれぞれの開口縁、すなわち図2に示す断熱性を有する仕切壁28、29、40には、結露防止配管43が埋設されている(図4、図5参照)。
【0022】
本実施形態の冷蔵庫1は、上側の仕切壁28により冷蔵室2と、上段冷凍室4及び製氷室3(図1参照、図2中で製氷室3は図示されていない)とが断熱的に隔てられ、下側の仕切壁29により、下段冷凍室5と野菜室6とが断熱的に隔てられている。また、図2に示すように、下段冷凍室5の上部には、仕切壁40を備えている。仕切壁40は、製氷室3及び上段冷凍室4と、下段冷凍室5とを上下方向に仕切っている。また、仕切壁40の上部には、製氷室3と上段冷凍室4との間を左右方向に仕切る縦仕切部(図示せず)を備えている。
【0023】
仕切壁40は、仕切壁28前面及び左右側壁前面とともに、下段冷凍室扉5aの貯蔵室側の面に設けたシール部材(図示せず)を受けて、下段冷凍室扉5aとの間での気体の移動を抑制する。また、製氷室扉3a及び上段冷凍室扉4aの貯蔵室側の面に設けたシール部材(図示せず)は、仕切壁40、縦仕切部、仕切壁28及び冷蔵庫1の左右側壁前面と接することで、各貯蔵室と各扉との間での気体の移動をそれぞれ抑制する(詳細構造は後述)。
【0024】
なお、製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5は、いずれも冷凍温度帯なので、仕切壁40及び縦仕切部は、各扉のシール部材を受けるために、少なくとも冷蔵庫の前側にあればよい(図2参照)。すなわち、冷凍温度帯の各貯蔵室間で気体の移動があってもよく、断熱区画しない場合であってもよい。一方、上段冷凍室4を温度切換室とする場合は、断熱区画する必要があるため、仕切壁40及び縦仕切部は、冷蔵庫1の前側から後壁まで延在させる。
【0025】
冷蔵庫1の庫外と庫内は、発泡断熱材を充填することにより形成される断熱箱体10により隔てられている。冷蔵庫1の断熱箱体10には、複数の真空断熱材25を実装している。庫内は仕切壁28により、冷蔵室2と上段冷凍室4及び製氷室3が隔てられている。仕切壁29により、下段冷凍室5と野菜室6が隔てられている。扉2a、2bの庫内側には複数の扉ポケット32が備えられ、冷蔵室2は複数の棚36により縦方向に複数の貯蔵スペースに区画されている。上段冷凍室4と下段冷凍室5の間には、仕切壁40が設けてある。
【0026】
図1、図2に示したように、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5及び野菜室6は、それぞれの冷却室の前方に備えられた扉3a、4a、5a、6aと一体に移動する収納容器3b、4b、5b、6bがそれぞれ設けられており、それぞれの扉4a、5a、6aを手前側に引き出すことにより、収納容器4b、5b、6bがそれぞれ引き出せるようになっている。
【0027】
また、庫外の湿度及び温度を検知する湿度センサー81、温度センサー82は、例えば、冷蔵庫1の天井壁上側の扉ヒンジカバー80の内部に設けている。本実施例で扉ヒンジカバー80の内部に湿度センサー81、温度センサー82設けているのは、冷蔵庫1本体からの温度影響を直接受けにくくして、周囲湿度及び周囲温度を検知するためである。なお、湿度センサー81、温度センサー82の設置箇所はこれに限るものではないが、冷蔵庫1本体からの温度影響を直接受けずに、冷蔵庫1設置環境の周囲湿度及び周囲温度を適切に検知できる場所であればよい。
【0028】
冷却器7は下段冷凍室5の略背部に備えられた冷却器収納室8内に設けられており、冷却器7の上方に設けられた庫内送風機9(一例として、プロペラファン)により冷却器7と熱交換した冷気が、冷蔵室送風ダクト11、上段冷凍室送風ダクト12、下段冷凍室送風ダクト13、及び製氷室送風ダクト(図示なし)を介して、冷蔵室2、上段冷凍室4、下段冷凍室5、製氷室3の各貯蔵室へ送られる。
【0029】
各貯蔵室への送風は冷蔵室ダンパ20と、冷凍室ダンパ34の開閉により制御される。具体的には冷蔵室ダンパ20が開状態、冷凍室ダンパ34が閉状態の時には、冷気は冷蔵室送風ダクト11を経て多段に設けられた吹き出し口2cから冷蔵室2に送られる。冷蔵室2の冷却を終えた後に、冷蔵室2下部に設けた冷蔵室戻り口(図示なし)に冷気が流入し、その後、冷却器7に戻される。野菜室6の冷却手段については種々の方法があるが、例えば、冷蔵室2を冷却した後に野菜室6に冷気を直接送る方法や、冷却器7で発生した冷気を、冷蔵室2を経由しないで野菜室6に単独で送る方法が考えられる。この場合には、野菜室6に供給する冷気を制御するために、野菜室専用のダンパが必要になる。本願においては、野菜室6への冷気の供給方法についてはいずれの場合でも良い。図2に記載の例では、野菜室6に流入した冷気は、仕切壁29の下部前方に設けられた、野菜室戻り口6dから野菜室戻りダクト18を介して、野菜室戻り吐出口18aから冷却器7に流入する。
【0030】
冷凍室に送り込まれた冷気は、上段冷凍室4、下段冷凍室5、及び製氷室3を冷却した後、冷凍室戻り口17から冷却器7に戻される。冷却器7の下部には除霜ヒータ22を設けてあり、除霜時に発生したドレン水は樋23に一旦落下し、ドレン孔27を通じて圧縮機24の上部に設けた蒸発皿21に放出される。冷蔵庫1の天井壁上面にはメモリー、インターフェース回路を搭載した制御装置である制御基板33が配置されており、制御基板33に従って冷凍サイクル、及び送風系の制御が実施される。制御基板33は基板カバー83で覆われている。
【0031】
次に、図3は本発明の実施形態に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成図である。圧縮機24の吐出側のパイプ66には、機械室ファン45(庫外送風機)を備えた第一の放熱器46と、第二の放熱器41a、41b、第三の放熱器42を順番に接続している。前記第三の放熱器42に接続したパイプ51の他端には、三方弁48(流路切換手段)のC側(流入側)に接続している。冷却運転時には、前記三方弁48はその出口側となるサイクルA側とサイクルB側の2方向に分岐して、そのうち1方向に流すことができ、また必要に応じてサイクルA側とサイクルB側の両方の出口を閉じて冷媒の流動を止めることもできる。更に、冷凍サイクルに冷媒を封入する際には、前記三方弁48のサイクルA側、サイクルB側の両方を開放することも可能である。
【0032】
三方弁48のA側にはパイプ52を接続し、パイプ52の他端には第四の放熱器43、すなわち結露防止配管が接続されている。また、三方弁48のB側にはパイプ53、すなわち結露防止配管バイパスパイプを接続している。
【0033】
圧縮機24と三方弁48の間に設けた、第一の放熱器46、第二の放熱器41a、41b、第三の放熱器42をまとめて第一の放熱手段とし、圧縮機24の吐出口から三方弁48のC側(三方弁48入口)までを冷媒流路配管aとする。三方弁48の下流側に分岐して設けて、第四の放熱器43側を第二の放熱手段とし、三方弁48のA側(三方弁48出口)に接続する第四の放熱器43の出口側パイプ54の他端と合流する合流管56(第一の冷媒流路)と、三方弁48のB側(三方弁48出口)に接続するパイプ53の他端と合流する合流管56(第二の冷媒流路)を冷媒流路配管bとする。
【0034】
第四の放熱器43と合流管56の間には、逆止弁55を設けている。合流管56にはパイプ57を接続し、パイプ57の途中にはドライヤ58、二方弁49の順に設けてある。二方弁49の他端にはパイプ60を接続し、絞り61、庫内送風機9を備えた冷却器7の順番に接続している。冷却器7の出口側にはパイプ64を接続し、その途中に絞り61との熱交換部65を設け、パイプ64の他端は圧縮機24の吸込側に接続されている。第四の放熱器43のパイプは仕切壁28、29、40(図2参照)に埋設されているため、冷凍温度帯室からの影響により冷却される。三方弁48によって、第四の放熱器43(サイクルA側)とパイプ53(サイクルB側)が所定の時間ごとに切り換わる。パイプ53(サイクルB側)に冷媒を流している時には、第四の放熱器43には冷媒が流れていないため、冷凍室からの影響により第四の放熱器43の温度は低下する。従って、三方弁48によってパイプ53(サイクルB側)に固定されていても、合流管56を介してパイプ53を流れる冷媒の一部が第四の放熱器43に逆流してしまい、第四の放熱器43のパイプ内に冷媒が残留し、サイクルB側で運転している場合に冷媒不足を引き起こす可能性がある。従って、第四の放熱器43と合流管56の間に逆止弁55を設けて、サイクルB側で運転している場合に第四の放熱器43の配管内に冷媒が流入しないようにしている。
【0035】
図4は、本発明の実施形態に係る冷蔵庫の放熱器の配置図である。図5は、本発明の実施形態に係る冷蔵庫の断熱仕切り壁の断面模式図である。
【0036】
第一の放熱器46は、冷蔵庫1の背面側下部に設けた機械室44内に設置してある(図6参照)。第二の放熱器41a、41bは冷蔵庫1の側面断熱壁内(図4中に破線で記載)、第三の放熱器42は冷蔵庫1の背面断熱壁内に埋設している(図4中に点線で記載)。なお、第二の放熱器41a、41b及び第三の放熱器42は、冷蔵庫1の外観を形成する金属製の外板に接触又は近接して、放熱するように配置されている。第四の放熱器43、すなわち結露防止配管は、各貯蔵室を分割する仕切壁28、29、40に埋設されている(図4に実線で記載)。
【0037】
図5は仕切壁28、29、40の断面模式図である。仕切壁に設けた仕切カバー84(一例として、高熱伝導性の金属板)と接触又は近接するように、第四の放熱器43のパイプを設けている。冷蔵庫周囲の温度が例えば30℃の場合、定常運転時の第四の放熱器43のパイプ温度は約33℃となり、仕切壁28、29、40に近接した約−20℃の冷凍温度帯室(製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5)に対して大きな温度差を形成する。仕切カバー84の表面とその周囲空気は、冷凍温度帯室によって冷やされるため温度が低下し、仕切カバー84近傍の空気中の水分によって仕切カバー84の表面に結露が発生する場合がある。それを回避するために、第四の放熱器43に冷媒を流して仕切カバー84を加熱しているが(図5に符号86で示す熱の流れ)、第四の放熱器43から放出される熱は、温度差が大きい冷凍温度帯室に対しても加熱していることになり(図5に符号85で示す熱の流れ)、省エネ性の悪化、つまり消費電力量の増加原因になっている。
【0038】
図6は本発明の実施形態に係る冷蔵庫の機械室44の内部構造を示す模式図である。図7は本発明の実施形態に係る冷蔵庫の機械室44に機械室カバー87を取り付けた状態の外観図である。
【0039】
機械室44の機械室ベース47には、第一の放熱器46、機械室ファン45(庫外送風機)、圧縮機24の順番に風上側から配置されている。圧縮機24の上部には冷却器7の霜が解けた際に生じるドレン水を受ける蒸発皿21を設けている。三方弁48、二方弁49はそれぞれ予め固定具50に固定しているので、機械室44内でパイプと接続した後でも弁の姿勢をほぼ垂直に保持することができる。機械室44には通常、機械室カバー87(図7参照)を取り付けた状態になっているため、機械室カバー87に設けた空気吸入口62、空気排出口63を利用して第一の放熱器46、圧縮機24の熱を放出している。また、機械室ベース47にも空気吸入口、排出口(図示なし)が設けられている。
【0040】
図8は本発明の実施形態に係る冷凍サイクルにおいて、三方弁48で第四の放熱器43(結露防止配管)を切り換える場合の制御イメージを説明する図である。
【0041】
先に説明したように、結露防止配管、すなわち第四の放熱器43に冷媒を流して仕切カバー84を加熱して、仕切カバー84の表面に空気中の水分が結露することを防止している。
【0042】
サイクルA側、すなわち第四の放熱器43に冷媒を流す場合と、サイクルB側、すなわち第四の放熱器43をバイパスさせてパイプ53に冷媒を流す場合のいずれかに三方弁48で切り換える制御は、冷蔵庫1に設けた庫外湿度センサー81、庫外温度センサー82で得られた冷蔵庫周囲の温度及び湿度によって制御する。仕切壁28、29、40の表面を覆う仕切カバー84に直接温度センサーと湿度センサー、すなわち検知手段を取り付け、その検出温度及び湿度に応じて仕切カバー84の表面に結露が生じないように、三方弁48によって切換え制御を行うことが考えられる。しかしながら、仕切カバー84の表面や仕切壁内に検知手段を取り付けることは設置スペースの問題や、仕切カバー84と接触するドアパッキンとの干渉による熱侵入量の増加が懸念される。そのため、実際には冷蔵庫1の天井面に設けた庫外湿度センサー81、庫外温度センサー82の検出温度及び検出湿度によって、サイクルA側とサイクルB側の切り換え時間を予め決めた値に従って制御する。
【0043】
図8は庫外湿度センサー81、庫外温度センサー82で検出された、ある周囲温度の場合の、三方弁切換え制御の一例を示している。横軸は相対湿度、縦軸は結露防止配管の加熱割合である。例えば、相対湿度が高いRH2の場合、仕切カバー84の表面で結露する可能性が高くなるので、サイクルA側に冷媒を流す時間の割合(tA2)を長く、サイクルB側に冷媒を流す時間の割合(tB2)を短くする。反対に湿度が低いRH1の場合、仕切カバー84の表面で結露する可能性が低くなるので、サイクルA側に冷媒を流す時間の割合(tA1)を短く、サイクルB側に冷媒を流す時間の割合(tB1)を長くすると良い。図5で説明したように、仕切カバー84の表面を冷媒で加熱することにより結露防止を図っているが、結露防止配管の加熱割合、すなわちサイクルA側の時間の割合が長いほど冷凍温度帯室への熱侵入が多くなり、その結果、省エネルギー性が悪化する傾向にある。実際の冷却運転では圧縮機24がONの時に、サイクルA側、サイクルB側の時間を予め決めておき、その時間に従って三方弁48で冷媒流路を切り換えるように運転する。なお、三方弁48のような流路切換手段を持たない冷蔵庫では常時サイクルA側となるので、結露防止配管の加熱割合は100%となる。
【0044】
図9は本発明の実施形態に係る冷蔵庫の冷却運転の一例を示すタイムチャートである。庫内が所定の温度に到達した後の安定状態における冷却運転は、冷蔵温度帯室を冷却する冷蔵運転、冷凍温度帯室を冷却する冷凍運転、圧縮機が停止するOFFからなる運転パターンを基本とし、周囲温度の変動や食品等の投入が行われない限り、これらの運転を繰り返す。すなわち、圧縮機停止中に冷凍室温度TF1まで上昇した時に圧縮機24がONになる。冷蔵室温度が低下して温度TR2になると冷蔵運転が終了し、引き続き冷凍室温度がTF2になるまで冷凍運転を実施する。ここでは主に三方弁48、二方弁49の動作を圧縮機24に関連付けて説明する。圧縮機24が停止中の場合、放熱器側、すなわち、第一の放熱器46から第四の放熱器43、及びパイプ53内の冷媒は冷却器7よりも高温高圧となるため、それらの圧力差によって放熱器側の冷媒が冷却器側に流入する。これにより冷却器7の温度が上昇して、庫内熱負荷が増加するため、消費電力量の増加につながる。従って、圧縮機停止中は、この冷媒の流動を止めるために二方弁49を閉にする。また、本実施例の冷蔵庫では、庫内送風機9をON、冷蔵室ダンパ20を開、冷凍室ダンパ34を閉にして、冷却器7に成長した霜の潜熱により冷気を発生させて冷蔵室2を冷却できるので、圧縮機24が停止中に二方弁49を閉にすると、冷却器7及び霜の温度上昇を抑制することができ、霜を冷熱源とした冷蔵室2の冷却効率が高まることになり、消費電力量の低減に寄与する。
【0045】
圧縮機24が運転中の場合、三方弁48は図8に示した温度及び湿度に応じたサイクルA側(第四の放熱器43;結露防止配管)とサイクルB側(パイプ53)の切換え時間(tA、tB)を予め決めておき、それに従って三方弁48を切り換える。例えば、湿度及び温度が高いRH2の場合、予め決めたサイクルA側の時間の割合tA2、サイクルB側の時間の割合tB2を繰り返し動作させる。切り換える時間は冷蔵庫によって異なるが、例えば、外気30℃、相対湿度70%では、サイクルA側は15分、サイクルB側は30分程度となる。
【0046】
図9に示す冷却運転では、一例として、圧縮機24が停止する前に、三方弁48をサイクルA側に固定している。これは、圧縮機停止中では第四の放熱器43の温度が低温になり易いので、圧縮機停止前に第四の放熱器43によって仕切カバー84の表面温度を高めて結露防止をするためである。圧縮機停止中は、その直前に三方弁48をサイクルA側に固定しているので、圧縮機停止中も継続してサイクルA側にしてある。
【0047】
三方弁48はサイクルA側(第四の放熱器43;結露防止配管)とサイクルB側(パイプ53)の切り換え時間に応じて冷媒の流れを制御しているが、サイクルB側に切り換えた後にはサイクルA側に、またサイクルA側に切り換えた後にはサイクルB側に冷媒が滞留することになる。
【0048】
しかしながら、サイクルを切り換えた後の冷媒不足を解消するために、サイクルを切換える前のパイプ内に滞留している冷媒をサイクルが切り換わる度に回収することは、圧縮機の効率低下により結果的に消費電力量の増加を招くことになる。従って、サイクルを切り換える度に冷媒を回収することなく冷媒不足を解消するために、第四の放熱器43、パイプ53のパイプ容積を小さくし、液相域となるパイプ容積を小さくすることが良い。
【0049】
そこで本実施の形態では冷媒流路配管bのパイプ容積を、冷媒流路配管aのパイプ容積に比べて小さくしている。これにより、液相域で満たされるパイプ容積が小さくなり、消費電力量を抑制しつつ、冷媒不足を解消することが可能となる。
【0050】
なお、野菜室の冷却方法は三方弁48、二方弁49の動作に直接関係していないので、図示していない。
【0051】
図10aは放熱器配管内部における冷媒の状態を模式的に表した図である。圧縮機24の吐出側パイプ66に接続される第一の放熱器46(区間ac)、第二の放熱器41a、41b及び第三の放熱器42(区間cd)、第四の放熱器43及びパイプ53(区間df)で構成される放熱器の、配管内部の冷媒状態を説明する。本実施例の冷蔵庫には、第一の放熱器46、第二の放熱器41a、41b、第三の放熱器42をまとめて第一の放熱手段(冷媒流路配管a)とし、冷媒流路切換手段を設けた第四の放熱器43側を第二の放熱手段とする。そして、三方弁48のA側(三方弁48出口)に接続する第四の放熱器43の出口側パイプ54の他端と合流する合流管56(第一の冷媒流路)と、三方弁48のB側(三方弁48出口)に接続するパイプ53の他端と合流する合流管56(第二の冷媒流路)を冷媒流路配管bとする。
【0052】
圧縮機24で圧縮されて高温高圧になったガス冷媒は、第一の放熱器46、第二の放熱器41a、41b、第三の放熱器42の順に庫外に熱を放出し、気相域、相変化中の気液二相域、液相域と冷媒の状態は変化していく。気相域(気相成分)を符号67、液相域(液相成分)を符号68とすると、気相域67は区間ab、気液二相域(気相域67と液相域68)は区間be、液相域68は区間efとなる。第四の放熱器43、あるいはパイプ53のいずれかを切り換える三方弁48を図中の位置dに設けた場合、区間deでは気相成分69が存在する気液二相域となる。
【0053】
図10bは本発明の実施形態に係る放熱器配管内部における冷媒の状態を模式的に表した図である。三方弁48で切り換える冷媒流路、すなわち第四の放熱器43、パイプ53の領域では、冷媒の状態は液相域68が大部分であるため(図11参照)、第四の放熱器43、またはパイプ53には三方弁48で切り換える度に液冷媒が残留し易くなる。すなわち、図10aで示した三方弁48で分岐される第四の放熱器43、パイプ53のそれぞれのパイプ容積を小さくすると、三方弁48によって切換え制御を行う度にパイプ内に液冷媒が残留する。よって、第四の放熱器43、またはパイプ53の冷媒の気相域を残すことなく(図10aの気相域69)、液相域68で満たすことができるようになる。
【0054】
第四の放熱器43、パイプ53のパイプ容積を小さくする手段としては、例えばパイプ径を小さくすることやパイプ長さを短くすることである。第四の放熱器43、パイプ53のパイプ内径をφ4.0mmからφ3.6mmに小さくすると約20%体積を小さくすることが可能となる。図10bに示すように第二の放熱手段、すなわち第四の放熱器43、またはパイプ53の領域dfを液相域68で満たしておくことにより、冷凍サイクルの運転状況によらず第二の放熱手段に残留する液冷媒量がこれ以上増えることはない。第二の放熱手段を切り換える手段を有する冷蔵庫では、液冷媒が溜まる第二の放熱手段のパイプ容積を、第一の放熱手段を構成するパイプ容積よりも小さくすることで、冷凍サイクルの運転状況によらず、第二の放熱手段を切り換えても冷媒不足が起こり難くすることができる。
【0055】
上記のように、第四の放熱器43、パイプ53の配管内が液相域で満たされるようにしているので、例えば、図3に示すサイクルA側に三方弁48を切り換えると、サイクルB側のパイプ53内は液封状態となり、急激な温度変化によりパイプが破損する恐れがある。これを回避するために、三方弁48をサイクルA側に固定した場合にはサイクルB側へ、サイクルB側に固定した場合はサイクルA側への冷媒漏れ量を許容している。
【0056】
図11は本発明の実施形態に係る冷蔵庫の運転状況を表すモリエル線図である。これにより図10a、図10bで説明した放熱側、すなわち、第一から第四の放熱器の冷媒の状態をモリエル線図上で説明する。圧縮機24で圧縮された冷媒は、パイプ66に接続している第一の放熱器46、第二の放熱器41a、41b、第三の放熱器42、第四の放熱器43の順に冷媒が流れ(三方弁48をサイクルA側に固定の場合)、その間、パイプ内の冷媒は外気に放熱するために、気相域(区間ab)、気液二相域(区間be)、液相域(区間ef、または区間df)の順にその状態は変化する。第四の放熱器43から流出する冷媒は、絞り61で減圧されて冷却器7に流入する。冷却器7を通過する際に冷媒が庫内空気からの熱を吸熱し、庫内の空気は冷却されるが、冷却能力は冷却器7の出入り口のエンタルピ差で表すことができる。従って、状態fから減圧して冷却器7に冷媒が流入する場合の冷却能力はΔh1で表すことができる。
【0057】
一方、特許文献1に示す冷凍サイクルの構成の場合、結露防止配管(本発明では第四の放熱器43)の下流側に、冷蔵庫の側壁面に埋設して別の放熱器が接続されている構成が開示されている。通常、結露防止配管、結露防止配管の下流側に設けた放熱器の順番に庫外の空気に放熱する。しかしながら、結露防止配管の下流側の放熱器の近くに例えば、暖房器具が置かれた場合、冷媒は暖房器具によって加熱され配管内の冷媒が蒸発するため、状態fの冷媒が気液二相域である状態gに変化することがある。この場合、前記放熱器の下流側に別の放熱器を設けていないため、状態gから減圧することになる。従って、冷却器7における冷却能力はΔh2となり、冷却能力が低下する恐れがある。結露防止配管は、通常、貯蔵室開口縁部に埋設されているので、その部分を外部から加熱される心配はなく、複数の放熱器を備えた冷蔵庫の場合には、上記の現象を回避するために、結露防止配管を配置する順番は最後にした方が良い。
【0058】
図12a、12bは、それぞれ三方弁48の内部の冷媒の状態を模式的に示した図である。三方弁48の内部に設けた弁体70、72を駆動させるステッピングモータ等は省略してある。入口側開口部71にはパイプ51(C側)、出口側にはパイプ52(A側:サイクルA側)、パイプ53(B側:サイクルB側)をそれぞれ接続してある。パイプ52とパイプ53の開閉を制御するために弁体70、72を設けてあり、パイプ52(A側:サイクルA側)に冷媒を流す時には弁体70を開、弁体72は閉、パイプ53(B側:サイクルB側)に冷媒を流す時には弁70を閉、弁体72を開にする。パイプ52、パイプ53いずれにも冷媒を流さない場合には弁体70、72を閉、パイプ52、パイプ53いずれにも冷媒を流す場合には弁体70、72を開にすることができ、その制御は制御基板33に設置したメモリー回路によって行われる。
【0059】
図10aに示すように、三方弁48を放熱器の途中、すなわち第四の放熱器43の上流側に設けているため、三方弁48内部の冷媒は、図12aに示すように気液二相流(気相域67、液相域68)になる場合がある。気相域67と液相域68が複雑に混ざりあって三方弁48の弁体70、72、入口側開口部71を通過する場合、三方弁48の内部には、三方弁48と接続するパイプ51、52、53よりも径が小さい流路が一般的に存在するので、冷媒流路の縮小や拡大によって冷媒流動音が発生する場合がある。従って、図10bで説明した通り、第一の放熱手段となる放熱器のパイプ容積に対し、第二の放熱手段となる第四の放熱器43、またはパイプ53のパイプ容積を小さくして、液相域を三方弁48の設置場所まで拡大させると、図12bに示すように三方弁48の内部は液相域68で満たされるので、弁体70、72、入口側開口部71を冷媒が通過する際の冷媒流動音を低減することができる。
【0060】
冷凍サイクルの運転状況によっては、三方弁48内を通過する冷媒が気液二相域となる場合もありうる。万が一そのような状態になった場合には、パイプ51から流入した冷媒を、パイプ51の内径よりも大きい三方弁48の内部で一旦拡大し、気相域67と液相域68を重力方向に対して上下に二分割させてから、三方弁48の下面に設けた弁体70(A側:サイクルA側)、あるいは弁体72(B側:サイクルB側)から冷媒を流出させれば良い。気相域67と液相域68を上下に二分割して(図12a参照)、三方弁48の下面に設けた弁体70、72、入口側開口部71側に液相域となるように、機械室44の内部に取り付ける際の三方弁48の姿勢は、予め固定具50に三方弁48を取り付けることによって、機械室に取り付ける際の姿勢を一義的に決めることができる。
【0061】
以上より、流路切換手段によって該流路切換手段の後流側の放熱手段を分岐した後、再び合流するまでの間に形成される第二の放熱手段となる放熱器のパイプ容積を、圧縮機と冷媒流路切換手段との間に形成される第一の放熱手段となる放熱器のパイプ容積よりも小さくすることによって、三方弁48の設置場所まで液相域を拡大して、三方弁48を通過する際に発生する冷媒流動音を低減することができ、更に三方弁48の取り付け姿勢によっても、三方弁48を通過する際に発生する冷媒流動音を抑えた冷却運転も実現できる。
【0062】
図13は本発明の他の実施形態に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成図である。
【0063】
図3に示す冷凍サイクルに対して、絞り61の手前に二方弁を設けずに、全閉機能を有した三方弁48によって、第二の放熱手段となる、第四の放熱器43とパイプ53を切り換えることを特徴とした冷凍サイクルである。二方弁49、三方弁48の設置場所は、図6に示したように例えば機械室44内であるが、冷蔵庫1の幅が小さい場合、二方弁49と三方弁48の両方を設置するスペースを確保することが困難なことがあるため、三方弁48のみで第二の放熱手段となる第四の放熱器43と、パイプ53を切り換える制御を行うこともできる。
【0064】
図14は、図13の他の実施形態における冷却運転の一例を示すフローチャートである。すなわち、図13に示す冷凍サイクルに関して、第四の放熱器43とパイプ3を切り換える制御である。図9に示した制御と同様に、庫内が所定の温度に到達し、安定状態における冷蔵庫の運転は、冷蔵運転、冷凍運転、圧縮機OFFからなる運転が基本となり、周囲温度の変動や食品等の投入が行われない限り、これらの運転を繰り返す。ここでは主に、三方弁48の動作を圧縮機24に関連付けて説明する。
【0065】
圧縮機24が停止中の場合、放熱器側、すなわち、第一の放熱器46から第四の放熱器43、及びパイプ53内の冷媒は、冷却器7よりも高温高圧となるため、それらの圧力差によって放熱器側の冷媒が冷却器側に流入する。これにより冷却器7を介して庫内への熱負荷が増加することになり、消費電力量の増加につながる。従って、圧縮機停止中に発生する冷媒の流動を止めるために、圧縮機24が停止する前に放熱器側の冷媒を回収する。三方弁48には第四の放熱器43に固定するサイクルA側と、パイプ53側に固定するサイクルB側に加えて、サイクルA側とサイクルB側の両方を閉状態、または両方を開状態とすることができる。それぞれの所定の時間、サイクルA側、あるいはサイクルB側に固定して冷蔵庫を運転すると、冷却器7に対して高温高圧側となるサイクルA側とサイクルB側それぞれに冷媒が残留することになる。圧縮機停止中にこの冷媒が冷却器7に流入しないように、圧縮機24を停止する前に三方弁48を全閉にして第一の放熱器46、第二の放熱器41a、41b、第三の放熱器42内に冷媒を移動させる冷媒回収運転を時間tcloseだけ実施する。冷媒回収時間は3、4分程度で、圧縮機停止中も三方弁48は継続して閉状態にしておく。
【0066】
以上のように二方弁がない場合でも、三方弁48の全閉機能を活用することによって圧縮機停止時の冷却器7への冷媒流入を抑制することができるが、第二の放熱手段を構成する第四の放熱器43、またはパイプ53のパイプ容積を小さくし、液相域となるパイプ容積を小さくすれば冷媒回収時間も短くすることができ、消費電力量を小さくした冷蔵庫の運転が可能である。
【0067】
以上より、本発明の冷蔵庫は、圧縮機と、放熱手段と、減圧手段と、冷却器とを順次接続した冷媒回路を有する冷蔵庫において、前記放熱手段は、庫外への放熱を行う第一の放熱手段と、前記仕切部を加熱する第二の放熱手段とを備え、前記圧縮機により圧縮された冷媒を、前記第一の放熱手段及び前記第二の放熱手段に流す第一の冷媒流路と、前記第一の放熱手段に冷媒を流通させた後に、前記第一の冷媒流路をバイパスさせる第二の冷媒流路と、前記第一の冷媒流路と前記第二の冷媒流路を切り換える流路切換手段とを備え、前記第一の冷媒流路及び前記第二の冷媒流路の内容積は前記第一の放熱手段の内容積よりも小さくする。すなわち、冷媒流路配管b(図3参照)の内容積を、冷媒流路配管a(図3参照)の内容積よりも小さくして第二の放熱手段の配管内部に残留する冷媒量を少なくしている。従って、冷媒不足による冷却性能の悪化を回避することができ、消費電力量を低減する冷却運転が実施できる。
【0068】
また、前記第一の放熱手段を流れる前記冷媒の温度は、所定範囲内で変化しないように流れた後、温度が次第に低下し始める変曲点を有するように流れることを特徴とする。これにより、流路切換手段(三方弁48)の設置場所まで液相域を拡大して、流路切換手段を通過する際に発生する冷媒流動音を低減することができる。
【0069】
また、前記第一の冷媒流路に冷媒を流す第一のモードと、前記第二の冷媒流路に冷媒を流す第二のモードと、前記第一の冷媒流路と第二の冷媒流路のいずれにも冷媒を流さない第三のモードとを備え、前記第一のモード又は前記第二のモードの少なくともいずれかを所定時間実施した場合、前記圧縮機稼働状態で前記第三のモードを実施する。これにより、冷媒流路配管b(図3参照)の配管内に残留した冷媒を圧縮機に回収する運転を実施するので、冷媒不足による冷却性能の悪化を回避して消費電力量の削減を図ることができる。
【0070】
また、温度及び湿度を検知する検知手段を備え、該検知手段によって検出される温度と湿度に応じて前記第一のモードの時間と前記第二のモードの時間を変化させる。これのより、モードの切り換え時間を予め決めた値に従って制御することができる。
【0071】
また、前記第一の冷媒流路と前記第二の冷媒流路が合流した位置よりも下流であって、前記減圧手段の上流に冷媒流路開閉手段を設ける。これにより、圧縮機停止時の冷却器への冷媒流入を抑制することができる。
【0072】
また、前記流路切換手段は前記冷蔵庫の貯蔵室外に設けた三方弁であって、該三方弁の開閉出口部を下部に位置するように配置する。これにより、三方弁の取り付け姿勢によっても、三方弁を通過する際に発生する冷媒流動音を抑えた冷却運転も実現できる。
【符号の説明】
【0073】
1 冷蔵庫
9 庫内送風機
20 冷蔵室ダンパ
28、29、40 仕切壁
34 冷凍室ダンパ
41a、41b 第二の放熱器
42 第三の放熱器
43 第四の放熱器(結露防止配管)
45 庫外送風機(機械室ファン)
46 第一の放熱器
48 三方弁(流路切換手段)
49 二方弁(冷媒流路開閉手段)
51、52、53、54、57、59、60、64、66 パイプ
55 逆止弁
56 合流管
58 ドライヤ
61 絞り
65 熱交換部
67、69 気相域(気相成分)
68 液相域(液相成分)
70、72 弁体
71 入口側開口部
80 扉ヒンジカバー
81 湿度センサー(検知手段)
82 温度センサー(検知手段)
83 基板カバー
84 仕切カバー
85、86 熱の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、放熱手段と、減圧手段と、冷却器とを順次接続した冷媒回路を有する冷蔵庫において、
前記放熱手段は、庫外への放熱を行う第一の放熱手段と、前記仕切部を加熱する第二の放熱手段とを備え、
前記圧縮機により圧縮された冷媒を、前記第一の放熱手段及び前記第二の放熱手段に流す第一の冷媒流路と、
前記第一の放熱手段に冷媒を流通させた後に、前記第一の冷媒流路をバイパスさせる第二の冷媒流路と、
前記第一の冷媒流路と前記第二の冷媒流路を切り換える流路切換手段とを備え、
前記第一の冷媒流路及び前記第二の冷媒流路の内容積は前記第一の放熱手段の内容積よりも小さいことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記第一の放熱手段を流れる前記冷媒の温度は、所定範囲内で変化しないように流れた後、温度が次第に低下し始める変曲点を有するように流れることを特徴とする、請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記第一の冷媒流路に冷媒を流す第一のモードと、前記第二の冷媒流路に冷媒を流す第二のモードと、前記第一の冷媒流路と第二の冷媒流路のいずれにも冷媒を流さない第三のモードとを備え、
前記第一のモード又は前記第二のモードの少なくともいずれかを所定時間実施した場合、前記圧縮機稼働状態で前記第三のモードを実施することを特徴とする、請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
温度及び湿度を検知する検知手段を備え、該検知手段によって検出される温度と湿度に応じて前記第一のモードの時間と前記第二のモードの時間を変化させることを特徴とする、請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記第一の冷媒流路と前記第二の冷媒流路が合流した位置よりも下流であって、前記減圧手段の上流に冷媒流路開閉手段を設けたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記流路切換手段は前記冷蔵庫の貯蔵室外に設けた三方弁であって、該三方弁の開閉出口部を下部に位置するように配置したことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−57415(P2013−57415A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194501(P2011−194501)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】