冷蔵庫
【課題】必要な冷却能力に応じた凝縮熱を維持しつつ、冷蔵庫内の冷却負荷の増加を抑制して消費電力量を低減させることのできる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】冷凍サイクル全体の冷却負荷である全体負荷を検出する全体負荷検出手段と、貯蔵室における冷却負荷である個別負荷を検出する個別負荷検出手段とを備え、凝縮流路切替弁28は、全体負荷が閾値Qa以下であり、かつ、個別負荷が閾値Pa以下である場合には、バイパスパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替え、その他の場合には、キャビネットパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替える。
【解決手段】冷凍サイクル全体の冷却負荷である全体負荷を検出する全体負荷検出手段と、貯蔵室における冷却負荷である個別負荷を検出する個別負荷検出手段とを備え、凝縮流路切替弁28は、全体負荷が閾値Qa以下であり、かつ、個別負荷が閾値Pa以下である場合には、バイパスパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替え、その他の場合には、キャビネットパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネットの開口部周縁にキャビネットパイプが設けられた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷蔵庫は、内箱と外箱によって形成される充填空間に断熱材を充填発泡し、冷蔵庫と外部の断熱を図るようにしたキャビネットと、このキャビネットの前面開口部に設けられた断熱扉とを備えている。このような冷蔵庫では、キャビネットと断熱扉との間から冷気が漏れて、この付近の表面温度が冷蔵庫の外気温度より低下し、さらに露点温度以下になると結露が発生してしまう。このため、冷蔵庫のキャビネットの開口部周縁に高圧冷媒が流れるキャビネットパイプ(結露防止パイプ、防露パイプなどともいう)を設け、キャビネットパイプを流れる冷媒の凝縮熱によりキャビネットの開口部周縁を加熱することで、結露の発生を抑制していた。ところが、キャビネットパイプが必要以上に加熱されると、キャビネットパイプから冷蔵庫内に凝縮熱の一部が侵入し、冷蔵庫内の冷却負荷を増加させるという問題が生じる。
【0003】
そこで従来、キャビネットパイプを備えた冷蔵庫として、「バイパス管と、結露防止コンデンサの圧力を検知する圧力検知装置と、圧力検知装置の出力により冷媒流量を分配する冷媒流量分配装置と、を備えることにより、冷蔵庫本体開口部周縁に結露が生じない必要最小限の冷媒流量を結露防止コンデンサに流入し、残りの冷媒はバイパス管に流入するように冷媒流量を分配する」という冷蔵庫が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、この特許文献1には、圧力検知装置に代えて、結露防止コンデンサ(キャビネットパイプ)の温度を検知する温度検知装置を設けることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−285426号公報(第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の冷蔵庫では、圧力検知装置や温度検知装置により結露防止コンデンサ(キャビネットパイプ)の圧力や温度を検知し、キャビネットパイプによって必要以上の加熱を行わないとされている。
しかしながら、キャビネットパイプは、凝縮器としての機能も有しており、凝縮器における放熱量が少ないと冷却能力不足になる一方で、必要な冷却能力が少ない場合には凝縮器における放熱量も少なくてすむなどの特性もある。このため、冷蔵庫にて必要な冷却能力に応じた凝縮器としての機能をキャビネットパイプに発揮させつつも、キャビネットパイプに高温の冷媒が通ることによる冷却負荷の増加を抑制することのできる冷蔵庫が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、必要な冷却能力に応じた凝縮熱を維持しつつ、冷蔵庫内の冷却負荷の増加を抑制して消費電力量を低減させることのできる冷蔵庫を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る冷蔵庫は、内部が複数の貯蔵室に区画されたキャビネットと、圧縮機、第一凝縮器、前記キャビネットの前面開口縁に内装されたキャビネットパイプからなる第二凝縮器、絞り装置、及び冷却器を有する冷凍サイクルと、前記第一凝縮器と前記絞り装置との間に、前記キャビネットパイプと並列に接続されたバイパスパイプと、前記第一凝縮器からの冷媒の流路を前記キャビネットパイプ又は前記バイパスパイプに切り替える凝縮流路切替手段と、前記冷凍サイクル全体の冷却負荷である全体負荷を検出する全体負荷検出手段と、前記貯蔵室における冷却負荷である個別負荷を検出する個別負荷検出手段とを備え、前記凝縮流路切替手段は、前記全体負荷が第一閾値以下であり、かつ、前記個別負荷が第二閾値以下である場合には、前記バイパスパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替え、その他の場合には、前記キャビネットパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、全体負荷が第一閾値以下であり、かつ、個別負荷が第二閾値以下である場合には、バイパスパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替えるようにし、その他の場合には、キャビネットパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替えるようにした。このため、冷蔵庫の負荷に合わせて凝縮側の放熱量を確保しつつ、キャビネットパイプから貯蔵室内への熱侵入を抑制して庫内負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る冷蔵庫の構造を説明する図である。
【図2】実施の形態1に係る冷蔵庫の機能ブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成を説明する図である。
【図4】実施の形態1に係る冷蔵庫のキャビネットパイプの設置例を説明する図である。
【図5】実施の形態1に係る冷蔵庫の冷凍サイクルをイソブタンのP−H線図上に記載したものである。
【図6】実施の形態1に係る冷蔵庫の冷媒流路切り替え動作を説明するフローチャートである。
【図7】実施の形態1に係る冷蔵庫の冷却負荷と、圧縮機、凝縮流路切替弁、及び絞り流路切替弁の動作を説明するタイミングチャートである。
【図8】実施の形態1に係る冷凍サイクルの構成の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る冷蔵庫を、図面を参照して説明する。なお、この図面の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る冷蔵庫の構造を説明する図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は概略断面図、図1(c)は扉を除いた状態の正面図である。図2は、実施の形態1に係る冷蔵庫の機能ブロック図である。
図1に示すように、冷蔵庫100は、前面側が開口した箱状のキャビネット1を備えている。キャビネット1は、冷蔵庫本体の外郭を形成する外箱11と、本体の内壁を形成する内箱12とを有し、その間に例えばウレタンなどの断熱材が設けられている。キャビネット1の内部には、キャビネット1の内部空間を複数の貯蔵室に仕切るディバイダ(仕切り壁)2が設けられている。本実施の形態1では、貯蔵室として、冷蔵室3、製氷室4、切替室5、冷凍室6、野菜室7が設けられている。また、冷蔵庫100の背面上部には、この冷蔵庫100の運転を制御するマイコン等を備えた制御装置10が設けられている。
【0012】
冷蔵室3は、冷蔵庫100の最上部に設けられており、前面は断熱構造を有する両開き式の扉31により開閉自在に覆われる。製氷室4及び切替室5は、冷蔵室3の下側の左右に並んで設けられており、それぞれの前面は断熱構造を有する引出し式の扉41、扉51により開閉自在に覆われる。冷凍室6は、製氷室4及び切替室5の下側に設けられており、前面は断熱構造を有する引出し式の扉61により開閉自在に覆われる。野菜室7は、冷凍室6の下側、冷蔵庫100の最下部に設けられており、前面は断熱構造を有する引出し式の扉71により開閉自在に覆われる。各貯蔵室の扉には、その開閉状態を検出する扉開閉センサー35、45、55、65、75が設けられている(図2参照)。制御装置10は、各扉開閉センサーからの出力を受けて各扉の開閉状態を検出し、例えば扉が長時間開放されたままの場合には、後述する操作パネル8や音声出力装置により、その旨を使用者に報知することができる。
【0013】
各貯蔵室は、設定可能な温度帯(設定温度帯)によって区別されており、例えば、冷蔵室3は約0℃〜4℃、野菜室7は約3℃〜10℃、製氷室4は約−18℃、冷凍室6は約−16℃〜−22℃にそれぞれ設定可能となっている。また、切替室5は、チルド(約0℃)やソフト冷凍(約−7℃)などの温度帯に切り替えることが可能である。
このように、冷蔵室3及び野菜室7の設定温度帯は、製氷室4、切替室5及び冷凍室6より高い温度帯となるように設定されている。
なお、各貯蔵室の設定温度はこれに限るものではない。
【0014】
各貯蔵室の背面には、それぞれ、当該貯蔵室に冷気を吹き出すための吹出口32、42、52、62、72が開口している。この吹出口32、42、52、62、72は、風路14と連通している。また、各貯蔵室には、それぞれ、当該貯蔵室の温度を検出するための庫内温度センサー33、43、53、63、73が設けられている。各吹出口32、42、52、62、72の風路14側には、ダンパー34、44、54、64、74が設けられている(図2参照)。制御装置10は、各ダンパーの開度を調節することで各吹出口の開度を調節し、各貯蔵室への冷気の流量を調節する。
【0015】
冷蔵室3の扉31の表面には、各貯蔵室の温度や設定を調節する操作スイッチと、そのときの各貯蔵室の温度を表示する液晶などから構成される操作パネル8が設けられている。この操作パネル8には、冷蔵庫100の周囲の外気の温度を検出する外気温度センサー9が設けられている。制御装置10は、各貯蔵室に配置された庫内温度センサーの検出値が、操作パネル8により設定された設定温度となるように、冷凍サイクルの運転やダンパー開閉を含め各部の動作を制御する。
【0016】
各貯蔵室の背面側には、背面壁13が設けられている。背面壁13の裏面(背面)と、キャビネット1の内箱12の前面との間には、風路14と冷却器室15とが形成されている。風路14は、例えば、冷蔵室3、製氷室4、切替室5、冷凍室6、及び野菜室7の背面と対向する範囲に設けられている。風路14は、冷却器室15で生成された冷気を各貯蔵室に供給するための冷気の供給風路である。冷却器室15は、例えば冷凍室6の背面と対向する範囲に設けられている。
【0017】
[冷凍サイクルの構成]
図3は、実施の形態1に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成を説明する図である。以下、図1、図2、図3を参照して、冷蔵庫100に搭載された冷凍サイクルの構成を説明する。
【0018】
冷蔵庫100の冷凍サイクルは、圧縮機21と、第一凝縮器としてのコンデンサ22と、第二凝縮器としてのキャビネットパイプ23と、絞り装置としての第一キャピラリー24及び第二キャピラリー25と、冷却器26とが、配管にて接続されている。また、圧縮機21と絞り装置(第一キャピラリー24及び第二キャピラリー25)との間には、キャビネットパイプ23と並列に、バイパスパイプ27が接続されている。コンデンサ22とキャビネットパイプ23との分岐部には、冷媒の流路を切り替える凝縮流路切替手段として、凝縮流路切替弁28が設けられている。また、第一キャピラリー24と第二キャピラリー25との分岐部には、絞り流路切替弁29が設けられている。キャビネットパイプ23の出口側と絞り流路切替弁29との間には、キャビネットパイプ23への冷媒の逆流を防ぐ逆止弁30が設けられている。
【0019】
圧縮機21は、冷蔵庫100の背面下部に設けられた機械室内に配置されている。
【0020】
コンデンサ22は、冷蔵庫100のキャビネット1の底面、背面、側面、及び天面のいずれか一箇所以上の断熱壁に埋設されている。コンデンサ22は、要求される冷却能力に応じて、キャビネット1の複数箇所に設けてもよい。
【0021】
キャビネットパイプ23は、キャビネット1の前面部分における露付き防止用に設けられた凝縮器である。
凝縮流路切替弁28は、例えば三方弁であり、制御装置10に制御されて、キャビネットパイプ23とバイパスパイプ27のうち少なくともいずれか一方の流路を連通させる。なお、本実施の形態1では、キャビネットパイプ23とバイパスパイプ27の分岐部に例えば三方弁からなる凝縮流路切替弁28を設ける例を示したが、コンデンサ22からの冷媒の流路をキャビネットパイプ23又はバイパスパイプ27に切り替え可能な構成であれば、他の構成を採用することもできる。例えば、キャビネットパイプ23及びバイパスパイプ27の入口側に、それぞれ、制御装置10によって開閉制御される弁を設け、いずれか一方を開放し他方を閉塞することにより、冷媒の流路を切り替えるようにしてもよい。
【0022】
第一キャピラリー24及び第二キャピラリー25は、互いに流路径又は管の長さが異なる(すなわち、流路抵抗が異なる)キャピラリーチューブである。本実施の形態1では、流路抵抗は、第一キャピラリー24に対して第二キャピラリー25の方が小さい。絞り流路切替弁29は、制御装置10に制御されて、第一キャピラリー24又は第二キャピラリー25の流路を連通させる。本実施の形態1では、絞り装置として流路抵抗の異なる第一キャピラリー24及び第二キャピラリー25を設け、絞り流路切替弁29により冷媒流路を切り替えることで絞り量を切り替えるようにした(絞り量切替手段)。しかし、これらに代えて、絞り装置の流路断面積を多段階あるいは無段階に調節可能な弁を設けて絞り量を切り替えるようにしてもよい。
【0023】
冷却器26は、冷蔵庫100の背面側に設けられた冷却器室15内に設定されている。冷却器26の入口側(空気流れ上流側)には、冷却器26へ戻る空気の温度を検出する冷却器入口側温度センサー17が設けられ、出口側(空気流れ下流側)には、冷却器26から出る空気の温度を検出する冷却器出口側温度センサー18が設けられている(図2参照)。
【0024】
冷却器26の上方には、循環ファン16が設けられている。循環ファン16は、冷却器26周辺で冷却された冷気を、風路14を介して各貯蔵室へと送風する。
【0025】
[キャビネットパイプの設置例]
図4は、実施の形態1に係る冷蔵庫のキャビネットパイプの設置例を説明する図である。図4に示すように、キャビネットパイプ23は、キャビネット1の前面開口の周縁部及びディバイダ2の前面側の縁に、折り曲げて配置されている。このキャビネットパイプ23は、ブチルゴムなどの熱容量の大きい弾性部材を介して、キャビネット1やディバイダ2に設置されている。図4(a)に示すように、キャビネット1とディバイダ2のすべての前面側の縁にキャビネットパイプ23を配設してもよい。また、図4(b)に示すように、製氷室4、切替室5、及び冷凍室6に隣接するキャビネット1及びディバイダ2の前面側の縁(冷凍温度帯の冷気が漏れ出しうる領域)にのみ、キャビネットパイプ23を配設してもよい。キャビネットパイプ23の配置は、図示のものに限定されず、低温冷気が外部に漏れ出すことによる露付きを抑制可能な任意の場所に配置することができる。
【0026】
[冷凍サイクルの動作及び庫内空気流れ]
次に、実施の形態1に係る冷蔵庫100の冷凍サイクルの基本的な動作と、庫内の空気流れを説明する。
図5は、実施の形態1に係る冷蔵庫の冷凍サイクルをイソブタンのP−H線図上に記載したものであり、図中の符号は、図1〜図3と同じものを示している。図5において、横軸はエンタルピ、縦軸は圧力である。また、外気温を30℃と想定している。
以下、図1〜図3、図5を参照して説明する。
【0027】
基本的には、制御装置10は、各貯蔵室に設けられた庫内温度センサーの出力に基づいて、圧縮機21の運転制御を行う。すなわち、庫内温度センサー63により検出される冷凍室6内の温度が設定温度(例えば約−18℃)の上限温度を超えて上昇すると、制御装置10は圧縮機21を駆動する。これにより、冷媒が圧縮機21にて圧縮されて高温高圧となり、圧縮機21から吐出される。圧縮機21から吐出された高温高圧の冷媒は、コンデンサ22において凝縮される。
【0028】
そして、本実施の形態1の冷蔵庫100は、後述する条件に応じて凝縮流路切替弁28及び絞り流路切替弁29により冷媒の流路を切り替えて、冷却運転を行うものである。
【0029】
凝縮流路切替弁28によってキャビネットパイプ23が連通状態である場合、冷媒は、キャビネットパイプ23を通過する過程においてさらに凝縮される(図5のAの状態)。そして、キャビネットパイプ23における冷媒の凝縮熱により、キャビネットパイプ23が配設されたキャビネット1及びディバイダ2の前面側の縁が加熱される。これにより、各貯蔵室と扉との隙間から漏れる冷気によって発生する結露を抑制することができる。
凝縮流路切替弁28によりキャビネットパイプ23が連通状態である場合には、絞り流路切替弁29は、第一キャピラリー24を連通状態にしており、キャビネットパイプ23から流出した冷媒は膨張機構である第一キャピラリー24に流入して減圧される(図5のB参照)。
【0030】
一方、凝縮流路切替弁28によってバイパスパイプ27が連通状態である場合、冷媒は、バイパスパイプ27を通る。この場合、冷媒は、コンデンサ22でのみ凝縮されることとなる(図5のCの状態)。凝縮流路切替弁28によってバイパスパイプ27が連通状態である場合には、絞り流路切替弁29は、第二キャピラリー25を連通状態にしており、バイパスパイプ27から流出した冷媒は膨張機構である第二キャピラリー25に流入して減圧される(図5のD参照)。
【0031】
第一キャピラリー24又は第二キャピラリー25を通過した冷媒は、低圧となり、冷却器26にて蒸発する。この蒸発時の吸熱作用により冷却器26の周辺は冷却される。冷却器26にて蒸発した冷媒は、再び圧縮機21に吸入される。
【0032】
循環ファン16は、冷却器26の周辺で冷却された冷気を、各貯蔵室へと送風する。循環ファン16により送風された冷気は、風路14を通って各貯蔵室に設けられた吹出口より各貯蔵室へと供給される(図1参照)。
【0033】
このような基本構成において、制御装置10は、冷凍室6に設けられた庫内温度センサー63により冷凍室6内の温度を検出し、その検出温度が目標とする設定温度となるように、圧縮機21の能力(回転数)及び循環ファン16の回転数を制御する。このとき、冷却負荷が大きいほど回転数が大きくなるように、圧縮機21の回転数が制御される。そして、庫内温度センサー63により検出される冷凍室6内の温度が設定温度に達すると、圧縮機21の運転を停止し、また、冷凍室6内の温度が設定温度の上限温度を超えて上昇すると、圧縮機21の運転を開始する。また、制御装置10は、冷蔵室3、製氷室4、切替室5、及び野菜室7に設けられた庫内温度センサー33、43、53、73により各貯蔵室内の温度を検出し、その検出温度が目標とする設定温度となるように、各貯蔵室の吹出口近傍に設けられたダンパー(図示せず)の開閉動作を制御する。
【0034】
[冷媒流路の切り替え動作]
上述のようにキャビネットパイプ23に冷媒を流して加熱することで、キャビネット1及びディバイダ2と扉との隙間における結露を抑制することができるのであるが、一方で、キャビネットパイプ23の熱は、貯蔵室内に進入して庫内の冷却負荷を上昇させることに繋がりうる。貯蔵室に熱が侵入して庫内負荷が上昇すると、圧縮機21の運転時間が長くなって消費電力が大きくなる。このため、キャビネットパイプ23に起因する庫内負荷の上昇を抑制することを目的として、本実施の形態1では、凝縮流路切替弁28により冷媒流路を切り替える。
【0035】
次に、本実施の形態1に係る凝縮流路切替弁28による冷媒流路の切り替え動作とその作用を説明する。図6は、実施の形態1に係る冷蔵庫の冷媒流路切り替え動作を説明するフローチャートである。
【0036】
ここでは、初期状態として、凝縮流路切替弁28によりバイパスパイプ27が連通状態であるとともに、絞り流路切替弁29により第二キャピラリー25が連通状態であるものとして説明する。
【0037】
図6に示すように、圧縮機21の運転を開始すると(S1)、制御装置10は、全体負荷を検出する(S2)。ここで、全体負荷とは、概念的には、冷蔵庫100の冷凍サイクル全体の冷却負荷(必要とされる冷却能力)をいう。なお、全体負荷の具体例については後述する。全体負荷が閾値Qa(第一閾値)よりも大きい場合には(S2;No)、キャビネットパイプ23を連通状態にする(S3)。このようにすると、キャビネットパイプ23に冷媒が流れ、その周辺のキャビネット1及びディバイダ2が加熱されて結露の発生が抑制される。また、ステップS3でキャビネットパイプ23を連通状態にするのと同期して、絞り流路切替弁29は、冷媒の流路を第一キャピラリー24が連通状態となるように切り替える(S4)。
【0038】
そして、圧縮機21の運転中において、制御装置10は、所定タイミングで全体負荷を検出する(S5)。そして、全体負荷が閾値Qaよりも大きい場合には(S5;No)、キャビネットパイプ23を連通状態としたまま運転を継続する。このようにすることで、結露の抑制に加え、冷凍サイクルにおける必要凝縮熱量を確保し続けることができる。すなわち、冷蔵庫100に必要な冷却能力は、予め定められている冷蔵庫の内容積や断熱仕様に依存する固定分のほか、貯蔵室の扉の開閉状態や外気温度に依存する変動分がある。そして、必要な冷却能力に応じて、凝縮器(コンデンサ22及びキャビネットパイプ23)にて冷媒が放熱する必要がある。必要な冷却能力に対して凝縮器の放熱量が少ないと、冷却能力不足となり、冷蔵庫100内を目標温度まで低下させることができないか、あるいは長時間を要してしまうためである。本実施の形態1の場合、冷媒がキャビネットパイプ23を流れる場合の凝縮熱量に対し(図5のA、B参照)、冷媒がコンデンサ22のみを流れる場合の凝縮熱量の方が小さくなる(図5のC、D参照)。このため、必要な冷却能力(全体負荷)が大きい場合には、キャビネットパイプ23に冷媒を流すようにすることで、コンデンサ22に加えてキャビネットパイプ23において冷媒を凝縮させることができるので、必要な凝縮熱量を確保し続けることが可能となる。
【0039】
ステップS5において、冷蔵庫100の全体負荷が閾値Qa以下であれば(S5;Yes)、制御装置10は、個別負荷を検出する(S6)。ここで、個別負荷とは、概念的には、冷蔵庫100を構成する各貯蔵室の冷却負荷(各貯蔵室で必要とされる冷却能力)のことをいう。なお、個別負荷の具体例については後述する。そして、個別負荷が、閾値Pa(第二閾値)を超えている場合(冷却が不足している場合)には(S6;No)、キャビネットパイプ23を連通状態としたまま運転を継続する。このように、本実施の形態1では、全体負荷が閾値Qa以下となった場合でも、個別負荷が閾値Paを超えている場合には、キャビネットパイプ23に冷媒を流すようにしているので、前述の通り必要な凝縮熱量を確保し続けることができる。
【0040】
ステップS6において、個別負荷が閾値Pa以下である場合には(S6;Yes)、制御装置10は、凝縮流路切替弁28を制御して、バイパスパイプ27を連通状態とする(S7)。
【0041】
このように、全体負荷と個別負荷の双方が低下した場合には、必要とされる冷却能力が相対的に低下している状態であるため、キャビネットパイプ23における凝縮を停止しても必要な冷却能力の維持が可能となる。言い替えると、キャビネットパイプ23に冷媒を流すか否かにより凝縮熱量を変化させて、これによって冷却能力を変化させることができる。例えば、必要とされる冷却能力が低下した場合、圧縮機21の運転周波数を低下させることで冷媒流量を減少させることも可能であるが、圧縮機21の運転周波数が最低周波数であればそれ以上冷媒流量を低下させることができない。また、圧縮機21が一低速圧縮機であれば、圧縮機21の運転によって冷媒流量を減少させることができない。しかしながら、本実施の形態1によれば、圧縮機21によって冷媒流量を減少させることができない場合であっても、キャビネットパイプ23とバイパスパイプ27との冷媒流路切り替えによって凝縮熱量を変化させることで、冷却能力を可変することができる。
【0042】
また、キャビネットパイプ23への冷媒の流通を停止することで、キャビネットパイプ23によるキャビネット1やディバイダ2の加熱も停止される。このようにすることで、キャビネットパイプ23から貯蔵室への熱侵入を停止させることができ、キャビネットパイプ23が配設された貯蔵室の庫内負荷を軽減させることができる。このため、キャビネットパイプ23が配設された貯蔵室は速やかに冷却され、圧縮機21の運転時間を短縮することができる。
【0043】
例えば、冷凍室6に加えて冷蔵室3にも冷気が供給されている(冷蔵室3のダンパーが開)状態のときに、冷蔵室3へのキャビネットパイプ23からの熱侵入が停止すると、冷蔵室3の冷却負荷が減って冷蔵室3が設定温度に冷却されるまでの時間が短縮される。このため、冷蔵室3の吹出口32に設けられたダンパー(図示せず)が閉じられるまでの時間が短縮されることとなる。冷蔵室3のダンパーが閉じられると、それまで冷蔵室3に供給されていた冷気は冷凍室6に供給されることになるため、冷凍室6はより速やかに冷却されて設定温度まで低下し、圧縮機21の運転時間を短縮することができる。ここでは、冷蔵室3を例に説明したが、他の貯蔵室であっても同様のことがいえる。
【0044】
また、例えば、冷凍室6にのみ冷気が供給されている状態のときに、冷凍室6へのキャビネットパイプ23からの熱侵入が停止すると、冷凍室6の冷却負荷が減って冷凍室6が設定温度に冷却されるまでの時間が短縮されるため、圧縮機21の運転時間を短縮することができる。
【0045】
このように、圧縮機21の運転時間を短縮することで、冷蔵庫100の消費電力を軽減することができる。一般に、冷蔵庫における消費電力量の大部分が、圧縮機への入力であるため、圧縮機21の運転時間を短くすることで冷蔵庫の消費電力の軽減効果が大きい。
【0046】
また、ステップS6にてバイパスパイプ27を連通状態にするのと同期して、絞り流路切替弁29は、冷媒の流路を第二キャピラリー25が連通状態となるように切り替える(S8)。バイパスパイプ27を連通状態とした直後は、凝縮熱量が変化(低減)し、膨張機構の入口の冷媒状態は、それまでキャビネットパイプ23を通っていたときよりも低密度となる。この低密度の冷媒を必要な低圧圧力まで低下させるため、流路抵抗の小さい第二キャピラリー25に冷媒を通す。このようにすることで、速やかに冷媒を低圧圧力とすることができる。なお、冷媒の流路をキャビネットパイプ23からバイパスパイプ27へ切り替えた直後には、上述のように第二キャピラリー25に冷媒を通すことが必要であるが、十分時間が経過した後は第一キャピラリー24に流路を戻してもよい。
【0047】
その後は、圧縮機21の運転を継続し、庫内温度センサー63が設定温度を検出すると、圧縮機21の運転を停止する。なお、図6で示した処理の途中において、庫内温度センサー63が冷凍室6の設定温度を検出した場合には、その段階で、圧縮機21の運転を停止する。圧縮機21の運転停止中には、凝縮流路切替弁28は、バイパスパイプ27側へ流路を切り替えておくとともに、絞り流路切替弁29は、第二キャピラリー25へと流路を切り替えておくとよい。このようにすることで、圧縮機21の停止中において、冷媒がキャビネットパイプ23に溜まる状態(いわゆる冷媒の寝込み状態)を抑制することができる。なお、キャビネットパイプ23の出口側には、逆止弁30が設けられているため、キャビネットパイプ23へ冷媒が逆流することもない。圧縮機21の停止中にキャビネットパイプ23内に冷媒が溜まるのを抑制することで、圧縮機21の運転再開時の冷却不良を低減することができる。
【0048】
また、ステップS2において、全体負荷が閾値Qa以下である場合には(S2;Yes)、個別負荷を検出する(S9)。そして、個別負荷が閾値Paよりも大きい場合には(S9;No)、ステップS3に進み、個別負荷が閾値Pa以下であれば(S9;Yes)、バイパスパイプ27、第二キャピラリー25のままで運転を継続する。
【0049】
次に、図6で説明した冷蔵庫100の冷媒流路切り替え動作について、図7のタイミングチャートを参照してさらに説明する。図7は、実施の形態1に係る冷蔵庫の冷却負荷と、圧縮機、凝縮流路切替弁、及び絞り流路切替弁の動作を説明するタイミングチャートである。なお、図7は、冷蔵庫100の連続運転の一部を抜粋して例示したものである。
【0050】
図7(a)は、扉の開閉状態や外気温度等の要因によって冷蔵庫の冷却負荷(全体負荷)が変動する様子を例示している。
庫内温度センサー63により検出される冷凍室6の温度が設定温度の上限値を超えると、図7(b)に示すように、圧縮機21が運転を開始する(A1)。このとき、全体負荷が閾値Qaを超えているため、キャビネットパイプ23に冷媒流路が切り替えられるとともに(B1)、第一キャピラリー24に冷媒流路が切り替えられる(C1)。全体負荷が閾値Qaを超えていて必要な冷却能力が大きい場合には、キャビネットパイプ23に冷媒を流して凝縮熱量を確保するとともに、キャビネットパイプ23でその周囲を加熱して結露を抑制する。
【0051】
そして、図7(a)に示すように全体負荷が閾値Qa以下となり、かつ、個別負荷が所定値を超えているものがなくなると(個別負荷については図7に図示せず)、図7(c)に示すように、バイパスパイプ27へ冷媒流路が切り替えられるとともに(B2)、第二キャピラリー25へ冷媒流路が切り替えられる(C2)。このようにすることで、圧縮機21の運転中における期間X(図7(c)参照)の間は、キャビネットパイプ23による加熱が停止するので、キャビネットパイプ23に由来する冷蔵庫の庫内負荷を低減することができる。なお、キャビネットパイプ23への冷媒の供給を停止した場合でも、キャビネットパイプ23とキャビネット1やディバイダ2との間に介在するブチルゴムなどの弾性材の蓄熱作用により、ある程度の時間はキャビネット1やディバイダ2が保温される。このため、キャビネットパイプ23の加熱が停止した後も、ある程度の時間は、その周囲の温度を外気の露点温度以上に保つことができる。また、結露が発生しやすいのは、外気温度が高く、かつ、湿度が高い環境条件のときであるが、このような条件のときには、圧縮機21はほぼ連続運転を行っているので、上記の手法で流路を切り替えることで、キャビネット1やディバイダ2を露点温度以上に維持することが可能である。
【0052】
また、図7(b)では、(A3)にて圧縮機21が運転を開始しているが、凝縮流路切替弁28は冷媒流路を切り替えず、バイパスパイプ27が連通状態のままであるとともに(B2)、第二キャピラリー25が連通状態のままとなっている(C2)。これは、(A2)にて圧縮機21が運転を開始したときに、全体負荷が閾値Qa以下であって、かつ、個別負荷が閾値Pa以下となっている場合である。このようなケースにおいては、キャビネットパイプ23による加熱を行わないことで、冷蔵庫内の冷却負荷を増加させることがなく、圧縮機21の運転時間を短縮することができる。
【0053】
[全体負荷]
次に、全体負荷の検出例を説明する。
【0054】
(1−1)圧縮機の運転状態に基づく全体負荷の検出
前述のように、本実施の形態1の圧縮機21は、冷凍室6の庫内温度センサー63によって検出される温度に基づいて、運転/停止を制御されるとともに、運転中においては、冷凍室6の温度と設定温度との乖離状態において、その回転数が制御される。このため、圧縮機21の運転状態は、冷蔵庫100の冷凍サイクルの全体的な冷却負荷を示す指標の一つであるといえる。そこで、全体負荷として、圧縮機21の回転数f、又は圧縮機21への入力電力Wを用いることができる。圧縮機21の回転数fが大きい場合(入力電力Wが大きい場合)には、全体負荷が高い状態であり、圧縮機21の回転数が小さい場合(入力電力Wが小さい場合)には、全体負荷が低い状態である。制御装置10は、圧縮機21の運転を制御する際に取得する回転数f又は入力電力Wを取得し、その値と予めマイコンに記憶された閾値とを比較することにより、全体負荷が閾値Qa以下であるか否かを判定する。この場合、制御装置10が、本発明の全体負荷検出手段に相当する。
【0055】
(1−2)冷却器の出入り口温度差による全体負荷の検出
冷却器26へ戻る空気温度が高いということは、庫内負荷が大きい状態であることを示しており、この場合には、冷却器26の出口側と入口側で温度差ΔTeが生じる。このため、冷却器26の出口側と入口側の温度差ΔTeは、冷蔵庫100の冷凍サイクルの全体的な冷却負荷を示す指標の一つであるといえる。そこで、全体負荷として、冷却器26の出口側と入口側の温度差ΔTeを用いることができる。制御装置10は、冷却器26の冷却器入口側温度センサー17と冷却器出口側温度センサー18からの出力を取得し、これらの温度差ΔTeと、予めマイコンに記憶された閾値とを比較することにより、全体負荷が閾値Qa以下であるか否かを判定する。この場合、制御装置10、冷却器入口側温度センサー17、及び冷却器出口側温度センサー18が、本発明の全体負荷検出手段に相当する。
【0056】
[個別負荷]
次に、個別負荷の検出例を説明する。
【0057】
(2−1)冷蔵室の扉開閉回数Rr
冷蔵室3の扉を開放すると、外気が冷蔵室3に流入するとともに冷気が外部へと流出し、冷蔵室3の温度が上昇して冷却負荷が大きくなる。このため、冷蔵室3の扉開閉回数Rrは、冷蔵室3の冷却負荷を示す指標の一つであるといえる。そこで、冷蔵室3の個別負荷として、単位時間当たりの扉開閉回数Rrを用いることができる。制御装置10は、扉31の扉開閉センサーからの出力を受けて単位時間当たりの扉開閉回数Rrをカウントし、予めマイコンに記憶された所定の閾値と扉開閉回数Rrとを比較することにより、冷蔵室3の個別負荷が閾値Pa以下であるか否かを判断する。この場合、冷蔵室3に設けられた扉開閉センサー35及び制御装置10が、本発明の個別負荷検出手段に相当する。
【0058】
(2−2)冷凍室の扉開閉回数Rf
同様にして、冷凍室6の扉開閉回数Rfも、冷凍室6の冷却負荷を示す指標の一つであるといえる。そこで、冷蔵室3における扉開閉回数Rrと同様にして、冷凍室6の個別負荷として、単位時間当たりの扉開閉回数Rfを用いることができる。この場合、冷凍室6に設けられた扉開閉センサー65及び制御装置10が、本発明の個別負荷検出手段に相当する。
【0059】
(2−3)冷蔵室の扉開放時間τr
前述のように、冷蔵室3の扉を開放すると、冷蔵室3の温度が上昇して冷却負荷が大きくなる。このため、冷蔵室3の扉開放時間τr(単位時間当たりに扉が開放されていた時間の累積時間)は、冷蔵室3の冷却負荷を示す指標の一つであるといえる。そこで、冷蔵室3の個別負荷として、冷蔵室3の扉開放時間τrを用いることができる。制御装置10は、扉31の扉開閉センサーからの出力を受けて、扉31が開放されている時間をカウントし、累積する。そして、単位時間当たりの扉開放時間τrと、予めマイコンに記憶された所定の閾値とを比較することにより、冷蔵室3の個別負荷が閾値Pa以下であるか否かを判断する。この場合、冷蔵室3に設けられた扉開閉センサー35及び制御装置10が、本発明の個別負荷検出手段に相当する。
【0060】
(2−4)冷凍室の扉開放時間τf
同様にして、冷凍室6の扉開放時間τfも、冷凍室6の冷却負荷を示す指標の一つであるといえる。そこで、冷蔵室3における扉開放時間τrと同様にして、冷凍室6の個別負荷として、単位時間当たりの扉開放時間τfを用いることができる。この場合、冷凍室6に設けられた扉開閉センサー65及び制御装置10が、本発明の個別負荷検出手段に相当する。
【0061】
(2−5)冷蔵室温度Tr
冷蔵室3に設けられた庫内温度センサー33の検出温度が高温であるほど、冷蔵室3の庫内負荷が大きい状態であるといえる。そこで、冷蔵室3の個別負荷として、冷蔵室温度Trを用いることができる。制御装置10は、冷蔵室3の庫内温度センサー33からの出力を受けて、冷蔵室温度Trと、予めマイコンに記憶された所定の閾値とを比較することにより、冷蔵室3の個別負荷が閾値Pa以下であるか否かを判断する。この場合、冷蔵室3に設けられた庫内温度センサー33及び制御装置10が、本発明の個別負荷検出手段に相当する。
【0062】
(2−6)冷凍室の温度低下量
冷凍室6に、比較的温度が高くて大きな食材が投入されている場合には、冷凍室6の温度低下の速度は遅くなる傾向にある。このような場合には、冷凍室6における冷却負荷が大きい状態であるといえる。そこで、冷凍室6の個別負荷として、単位時間当たりの冷凍室6の温度低下量を用いることができる。制御装置10は、冷凍室6の庫内温度センサー63からの出力を受けて単位時間当たりの温度低下量を算出し、その温度低下量と、予めマイコンに記憶された所定の閾値とを比較することにより、冷凍室6の個別負荷が閾値Pa以下であるか否かを判断する。この場合、冷凍室6に設けられた庫内温度センサー63及び制御装置10が、本発明の個別負荷検出手段に相当する。
【0063】
以上説明した全体負荷及び個別負荷の検出例は、いずれも、キャビネットパイプ23とバイパスパイプ27との冷媒流路の切り替えのために追加部品を設けることなく実現可能なものであり、冷蔵庫100の部品点数を増加させることもない。
【0064】
なお、ここで例示した個別負荷を複数組み合わせて用いてもよく、判定対象としている個別負荷のうち、すべてが閾値Pa以下である場合にキャビネットパイプ23からバイパスパイプ27に流路を切り替えるようにしてもよい。また、上記説明では、冷蔵室3と冷凍室6の個別負荷を説明したが、同様にして他の貯蔵室(製氷室4、切替室5、野菜室7)の個別負荷を検出し、冷媒流路の切り替え条件として用いてもよい。
【0065】
また、全体負荷の閾値Qa及び個別負荷の閾値Paを決定するに際しては、第一凝縮器としてのコンデンサ22の放熱量を考慮する必要がある。すなわち、凝縮流路切替弁28によりバイパスパイプ27に冷媒流路を切り替えると、コンデンサ22でのみ凝縮が行われることとなるため、凝縮熱量はコンデンサ22の放熱量に依存することになる。したがって、バイパスパイプ27に冷媒流路を切り替えた場合に、コンデンサ22の凝縮熱量によって得られる冷却能力と、閾値Qaと閾値Paとでバランスをとる必要がある。
【0066】
次に、全体負荷と個別負荷に基づいて冷媒流路を切り替えることによる作用について説明する。
例えば、上述の(1−1)、(1−2)のようにして検出された全体負荷が閾値Qa以下である場合であっても、ある貯蔵室の個別負荷が閾値Paよりも大きい場合には、当該貯蔵室の温度が設定温度に低下するまでの間、圧縮機21が運転し続けることとなる。このようなときに、キャビネットパイプ23からバイパスパイプ27へ冷媒流路を切り替えると、凝縮熱量が減少してしまうために圧縮機21の運転時間が長引いて消費電力も増大しうる。本実施の形態1では、全体負荷が閾値Qa以下であっても、個別負荷が閾値Paよりも大きい場合には、キャビネットパイプ23に冷媒を流すようにしているので、凝縮熱量を減少させることがなく、圧縮機21の運転時間が長引くのを抑制することができる。
【0067】
なお、上記説明では、凝縮流路切替弁28による流路切り替えに合わせて、絞り装置における絞り量を可変するようにした。しかし、凝縮流路切替弁28によりキャビネットパイプ23からバイパスパイプ27へ冷媒流路が切り替えられた際に、バイパスパイプ27を通過する冷媒が必要な低圧圧力まで低下可能であれば、必ずしも上述のような絞り量を可変しなくともよい。例えば、図8に示す実施の形態1に係る冷凍サイクルの構成の変形例のように、冷媒流路がキャビネットパイプ23とバイパスパイプ27のいずれであっても、同じ絞り量の絞り装置124を用いるようにしてもよい。
【0068】
以上のように、本実施の形態1によれば、全体負荷が閾値Qa(第一閾値)以下であり、かつ、個別負荷が閾値Pa(第二閾値)以下である場合には、バイパスパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替えるようにし、その他の場合には、キャビネットパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替えるようにした。このため、冷蔵庫の負荷に合わせて凝縮側の放熱量を確保しつつ、キャビネットパイプから貯蔵室内への熱侵入を抑制して庫内負荷を軽減することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 キャビネット、2 ディバイダ、3 冷蔵室、4 製氷室、5 切替室、6 冷凍室、7 野菜室、8 操作パネル、9 外気温度センサー、10 制御装置、11 外箱、12 内箱、13 背面壁、14 風路、15 冷却器室、16 循環ファン、17 冷却器入口側温度センサー、18 冷却器出口側温度センサー、21 圧縮機、22 コンデンサ、23 キャビネットパイプ、24 第一キャピラリー、25 第二キャピラリー、26 冷却器、27 バイパスパイプ、28 凝縮流路切替弁、29 絞り流路切替弁、30 逆止弁、31 扉、32 吹出口、33 庫内温度センサー、34 ダンパー、35 扉開閉センサー、63 庫内温度センサー、100 冷蔵庫。
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネットの開口部周縁にキャビネットパイプが設けられた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷蔵庫は、内箱と外箱によって形成される充填空間に断熱材を充填発泡し、冷蔵庫と外部の断熱を図るようにしたキャビネットと、このキャビネットの前面開口部に設けられた断熱扉とを備えている。このような冷蔵庫では、キャビネットと断熱扉との間から冷気が漏れて、この付近の表面温度が冷蔵庫の外気温度より低下し、さらに露点温度以下になると結露が発生してしまう。このため、冷蔵庫のキャビネットの開口部周縁に高圧冷媒が流れるキャビネットパイプ(結露防止パイプ、防露パイプなどともいう)を設け、キャビネットパイプを流れる冷媒の凝縮熱によりキャビネットの開口部周縁を加熱することで、結露の発生を抑制していた。ところが、キャビネットパイプが必要以上に加熱されると、キャビネットパイプから冷蔵庫内に凝縮熱の一部が侵入し、冷蔵庫内の冷却負荷を増加させるという問題が生じる。
【0003】
そこで従来、キャビネットパイプを備えた冷蔵庫として、「バイパス管と、結露防止コンデンサの圧力を検知する圧力検知装置と、圧力検知装置の出力により冷媒流量を分配する冷媒流量分配装置と、を備えることにより、冷蔵庫本体開口部周縁に結露が生じない必要最小限の冷媒流量を結露防止コンデンサに流入し、残りの冷媒はバイパス管に流入するように冷媒流量を分配する」という冷蔵庫が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、この特許文献1には、圧力検知装置に代えて、結露防止コンデンサ(キャビネットパイプ)の温度を検知する温度検知装置を設けることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−285426号公報(第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の冷蔵庫では、圧力検知装置や温度検知装置により結露防止コンデンサ(キャビネットパイプ)の圧力や温度を検知し、キャビネットパイプによって必要以上の加熱を行わないとされている。
しかしながら、キャビネットパイプは、凝縮器としての機能も有しており、凝縮器における放熱量が少ないと冷却能力不足になる一方で、必要な冷却能力が少ない場合には凝縮器における放熱量も少なくてすむなどの特性もある。このため、冷蔵庫にて必要な冷却能力に応じた凝縮器としての機能をキャビネットパイプに発揮させつつも、キャビネットパイプに高温の冷媒が通ることによる冷却負荷の増加を抑制することのできる冷蔵庫が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、必要な冷却能力に応じた凝縮熱を維持しつつ、冷蔵庫内の冷却負荷の増加を抑制して消費電力量を低減させることのできる冷蔵庫を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る冷蔵庫は、内部が複数の貯蔵室に区画されたキャビネットと、圧縮機、第一凝縮器、前記キャビネットの前面開口縁に内装されたキャビネットパイプからなる第二凝縮器、絞り装置、及び冷却器を有する冷凍サイクルと、前記第一凝縮器と前記絞り装置との間に、前記キャビネットパイプと並列に接続されたバイパスパイプと、前記第一凝縮器からの冷媒の流路を前記キャビネットパイプ又は前記バイパスパイプに切り替える凝縮流路切替手段と、前記冷凍サイクル全体の冷却負荷である全体負荷を検出する全体負荷検出手段と、前記貯蔵室における冷却負荷である個別負荷を検出する個別負荷検出手段とを備え、前記凝縮流路切替手段は、前記全体負荷が第一閾値以下であり、かつ、前記個別負荷が第二閾値以下である場合には、前記バイパスパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替え、その他の場合には、前記キャビネットパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、全体負荷が第一閾値以下であり、かつ、個別負荷が第二閾値以下である場合には、バイパスパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替えるようにし、その他の場合には、キャビネットパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替えるようにした。このため、冷蔵庫の負荷に合わせて凝縮側の放熱量を確保しつつ、キャビネットパイプから貯蔵室内への熱侵入を抑制して庫内負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る冷蔵庫の構造を説明する図である。
【図2】実施の形態1に係る冷蔵庫の機能ブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成を説明する図である。
【図4】実施の形態1に係る冷蔵庫のキャビネットパイプの設置例を説明する図である。
【図5】実施の形態1に係る冷蔵庫の冷凍サイクルをイソブタンのP−H線図上に記載したものである。
【図6】実施の形態1に係る冷蔵庫の冷媒流路切り替え動作を説明するフローチャートである。
【図7】実施の形態1に係る冷蔵庫の冷却負荷と、圧縮機、凝縮流路切替弁、及び絞り流路切替弁の動作を説明するタイミングチャートである。
【図8】実施の形態1に係る冷凍サイクルの構成の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る冷蔵庫を、図面を参照して説明する。なお、この図面の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る冷蔵庫の構造を説明する図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は概略断面図、図1(c)は扉を除いた状態の正面図である。図2は、実施の形態1に係る冷蔵庫の機能ブロック図である。
図1に示すように、冷蔵庫100は、前面側が開口した箱状のキャビネット1を備えている。キャビネット1は、冷蔵庫本体の外郭を形成する外箱11と、本体の内壁を形成する内箱12とを有し、その間に例えばウレタンなどの断熱材が設けられている。キャビネット1の内部には、キャビネット1の内部空間を複数の貯蔵室に仕切るディバイダ(仕切り壁)2が設けられている。本実施の形態1では、貯蔵室として、冷蔵室3、製氷室4、切替室5、冷凍室6、野菜室7が設けられている。また、冷蔵庫100の背面上部には、この冷蔵庫100の運転を制御するマイコン等を備えた制御装置10が設けられている。
【0012】
冷蔵室3は、冷蔵庫100の最上部に設けられており、前面は断熱構造を有する両開き式の扉31により開閉自在に覆われる。製氷室4及び切替室5は、冷蔵室3の下側の左右に並んで設けられており、それぞれの前面は断熱構造を有する引出し式の扉41、扉51により開閉自在に覆われる。冷凍室6は、製氷室4及び切替室5の下側に設けられており、前面は断熱構造を有する引出し式の扉61により開閉自在に覆われる。野菜室7は、冷凍室6の下側、冷蔵庫100の最下部に設けられており、前面は断熱構造を有する引出し式の扉71により開閉自在に覆われる。各貯蔵室の扉には、その開閉状態を検出する扉開閉センサー35、45、55、65、75が設けられている(図2参照)。制御装置10は、各扉開閉センサーからの出力を受けて各扉の開閉状態を検出し、例えば扉が長時間開放されたままの場合には、後述する操作パネル8や音声出力装置により、その旨を使用者に報知することができる。
【0013】
各貯蔵室は、設定可能な温度帯(設定温度帯)によって区別されており、例えば、冷蔵室3は約0℃〜4℃、野菜室7は約3℃〜10℃、製氷室4は約−18℃、冷凍室6は約−16℃〜−22℃にそれぞれ設定可能となっている。また、切替室5は、チルド(約0℃)やソフト冷凍(約−7℃)などの温度帯に切り替えることが可能である。
このように、冷蔵室3及び野菜室7の設定温度帯は、製氷室4、切替室5及び冷凍室6より高い温度帯となるように設定されている。
なお、各貯蔵室の設定温度はこれに限るものではない。
【0014】
各貯蔵室の背面には、それぞれ、当該貯蔵室に冷気を吹き出すための吹出口32、42、52、62、72が開口している。この吹出口32、42、52、62、72は、風路14と連通している。また、各貯蔵室には、それぞれ、当該貯蔵室の温度を検出するための庫内温度センサー33、43、53、63、73が設けられている。各吹出口32、42、52、62、72の風路14側には、ダンパー34、44、54、64、74が設けられている(図2参照)。制御装置10は、各ダンパーの開度を調節することで各吹出口の開度を調節し、各貯蔵室への冷気の流量を調節する。
【0015】
冷蔵室3の扉31の表面には、各貯蔵室の温度や設定を調節する操作スイッチと、そのときの各貯蔵室の温度を表示する液晶などから構成される操作パネル8が設けられている。この操作パネル8には、冷蔵庫100の周囲の外気の温度を検出する外気温度センサー9が設けられている。制御装置10は、各貯蔵室に配置された庫内温度センサーの検出値が、操作パネル8により設定された設定温度となるように、冷凍サイクルの運転やダンパー開閉を含め各部の動作を制御する。
【0016】
各貯蔵室の背面側には、背面壁13が設けられている。背面壁13の裏面(背面)と、キャビネット1の内箱12の前面との間には、風路14と冷却器室15とが形成されている。風路14は、例えば、冷蔵室3、製氷室4、切替室5、冷凍室6、及び野菜室7の背面と対向する範囲に設けられている。風路14は、冷却器室15で生成された冷気を各貯蔵室に供給するための冷気の供給風路である。冷却器室15は、例えば冷凍室6の背面と対向する範囲に設けられている。
【0017】
[冷凍サイクルの構成]
図3は、実施の形態1に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成を説明する図である。以下、図1、図2、図3を参照して、冷蔵庫100に搭載された冷凍サイクルの構成を説明する。
【0018】
冷蔵庫100の冷凍サイクルは、圧縮機21と、第一凝縮器としてのコンデンサ22と、第二凝縮器としてのキャビネットパイプ23と、絞り装置としての第一キャピラリー24及び第二キャピラリー25と、冷却器26とが、配管にて接続されている。また、圧縮機21と絞り装置(第一キャピラリー24及び第二キャピラリー25)との間には、キャビネットパイプ23と並列に、バイパスパイプ27が接続されている。コンデンサ22とキャビネットパイプ23との分岐部には、冷媒の流路を切り替える凝縮流路切替手段として、凝縮流路切替弁28が設けられている。また、第一キャピラリー24と第二キャピラリー25との分岐部には、絞り流路切替弁29が設けられている。キャビネットパイプ23の出口側と絞り流路切替弁29との間には、キャビネットパイプ23への冷媒の逆流を防ぐ逆止弁30が設けられている。
【0019】
圧縮機21は、冷蔵庫100の背面下部に設けられた機械室内に配置されている。
【0020】
コンデンサ22は、冷蔵庫100のキャビネット1の底面、背面、側面、及び天面のいずれか一箇所以上の断熱壁に埋設されている。コンデンサ22は、要求される冷却能力に応じて、キャビネット1の複数箇所に設けてもよい。
【0021】
キャビネットパイプ23は、キャビネット1の前面部分における露付き防止用に設けられた凝縮器である。
凝縮流路切替弁28は、例えば三方弁であり、制御装置10に制御されて、キャビネットパイプ23とバイパスパイプ27のうち少なくともいずれか一方の流路を連通させる。なお、本実施の形態1では、キャビネットパイプ23とバイパスパイプ27の分岐部に例えば三方弁からなる凝縮流路切替弁28を設ける例を示したが、コンデンサ22からの冷媒の流路をキャビネットパイプ23又はバイパスパイプ27に切り替え可能な構成であれば、他の構成を採用することもできる。例えば、キャビネットパイプ23及びバイパスパイプ27の入口側に、それぞれ、制御装置10によって開閉制御される弁を設け、いずれか一方を開放し他方を閉塞することにより、冷媒の流路を切り替えるようにしてもよい。
【0022】
第一キャピラリー24及び第二キャピラリー25は、互いに流路径又は管の長さが異なる(すなわち、流路抵抗が異なる)キャピラリーチューブである。本実施の形態1では、流路抵抗は、第一キャピラリー24に対して第二キャピラリー25の方が小さい。絞り流路切替弁29は、制御装置10に制御されて、第一キャピラリー24又は第二キャピラリー25の流路を連通させる。本実施の形態1では、絞り装置として流路抵抗の異なる第一キャピラリー24及び第二キャピラリー25を設け、絞り流路切替弁29により冷媒流路を切り替えることで絞り量を切り替えるようにした(絞り量切替手段)。しかし、これらに代えて、絞り装置の流路断面積を多段階あるいは無段階に調節可能な弁を設けて絞り量を切り替えるようにしてもよい。
【0023】
冷却器26は、冷蔵庫100の背面側に設けられた冷却器室15内に設定されている。冷却器26の入口側(空気流れ上流側)には、冷却器26へ戻る空気の温度を検出する冷却器入口側温度センサー17が設けられ、出口側(空気流れ下流側)には、冷却器26から出る空気の温度を検出する冷却器出口側温度センサー18が設けられている(図2参照)。
【0024】
冷却器26の上方には、循環ファン16が設けられている。循環ファン16は、冷却器26周辺で冷却された冷気を、風路14を介して各貯蔵室へと送風する。
【0025】
[キャビネットパイプの設置例]
図4は、実施の形態1に係る冷蔵庫のキャビネットパイプの設置例を説明する図である。図4に示すように、キャビネットパイプ23は、キャビネット1の前面開口の周縁部及びディバイダ2の前面側の縁に、折り曲げて配置されている。このキャビネットパイプ23は、ブチルゴムなどの熱容量の大きい弾性部材を介して、キャビネット1やディバイダ2に設置されている。図4(a)に示すように、キャビネット1とディバイダ2のすべての前面側の縁にキャビネットパイプ23を配設してもよい。また、図4(b)に示すように、製氷室4、切替室5、及び冷凍室6に隣接するキャビネット1及びディバイダ2の前面側の縁(冷凍温度帯の冷気が漏れ出しうる領域)にのみ、キャビネットパイプ23を配設してもよい。キャビネットパイプ23の配置は、図示のものに限定されず、低温冷気が外部に漏れ出すことによる露付きを抑制可能な任意の場所に配置することができる。
【0026】
[冷凍サイクルの動作及び庫内空気流れ]
次に、実施の形態1に係る冷蔵庫100の冷凍サイクルの基本的な動作と、庫内の空気流れを説明する。
図5は、実施の形態1に係る冷蔵庫の冷凍サイクルをイソブタンのP−H線図上に記載したものであり、図中の符号は、図1〜図3と同じものを示している。図5において、横軸はエンタルピ、縦軸は圧力である。また、外気温を30℃と想定している。
以下、図1〜図3、図5を参照して説明する。
【0027】
基本的には、制御装置10は、各貯蔵室に設けられた庫内温度センサーの出力に基づいて、圧縮機21の運転制御を行う。すなわち、庫内温度センサー63により検出される冷凍室6内の温度が設定温度(例えば約−18℃)の上限温度を超えて上昇すると、制御装置10は圧縮機21を駆動する。これにより、冷媒が圧縮機21にて圧縮されて高温高圧となり、圧縮機21から吐出される。圧縮機21から吐出された高温高圧の冷媒は、コンデンサ22において凝縮される。
【0028】
そして、本実施の形態1の冷蔵庫100は、後述する条件に応じて凝縮流路切替弁28及び絞り流路切替弁29により冷媒の流路を切り替えて、冷却運転を行うものである。
【0029】
凝縮流路切替弁28によってキャビネットパイプ23が連通状態である場合、冷媒は、キャビネットパイプ23を通過する過程においてさらに凝縮される(図5のAの状態)。そして、キャビネットパイプ23における冷媒の凝縮熱により、キャビネットパイプ23が配設されたキャビネット1及びディバイダ2の前面側の縁が加熱される。これにより、各貯蔵室と扉との隙間から漏れる冷気によって発生する結露を抑制することができる。
凝縮流路切替弁28によりキャビネットパイプ23が連通状態である場合には、絞り流路切替弁29は、第一キャピラリー24を連通状態にしており、キャビネットパイプ23から流出した冷媒は膨張機構である第一キャピラリー24に流入して減圧される(図5のB参照)。
【0030】
一方、凝縮流路切替弁28によってバイパスパイプ27が連通状態である場合、冷媒は、バイパスパイプ27を通る。この場合、冷媒は、コンデンサ22でのみ凝縮されることとなる(図5のCの状態)。凝縮流路切替弁28によってバイパスパイプ27が連通状態である場合には、絞り流路切替弁29は、第二キャピラリー25を連通状態にしており、バイパスパイプ27から流出した冷媒は膨張機構である第二キャピラリー25に流入して減圧される(図5のD参照)。
【0031】
第一キャピラリー24又は第二キャピラリー25を通過した冷媒は、低圧となり、冷却器26にて蒸発する。この蒸発時の吸熱作用により冷却器26の周辺は冷却される。冷却器26にて蒸発した冷媒は、再び圧縮機21に吸入される。
【0032】
循環ファン16は、冷却器26の周辺で冷却された冷気を、各貯蔵室へと送風する。循環ファン16により送風された冷気は、風路14を通って各貯蔵室に設けられた吹出口より各貯蔵室へと供給される(図1参照)。
【0033】
このような基本構成において、制御装置10は、冷凍室6に設けられた庫内温度センサー63により冷凍室6内の温度を検出し、その検出温度が目標とする設定温度となるように、圧縮機21の能力(回転数)及び循環ファン16の回転数を制御する。このとき、冷却負荷が大きいほど回転数が大きくなるように、圧縮機21の回転数が制御される。そして、庫内温度センサー63により検出される冷凍室6内の温度が設定温度に達すると、圧縮機21の運転を停止し、また、冷凍室6内の温度が設定温度の上限温度を超えて上昇すると、圧縮機21の運転を開始する。また、制御装置10は、冷蔵室3、製氷室4、切替室5、及び野菜室7に設けられた庫内温度センサー33、43、53、73により各貯蔵室内の温度を検出し、その検出温度が目標とする設定温度となるように、各貯蔵室の吹出口近傍に設けられたダンパー(図示せず)の開閉動作を制御する。
【0034】
[冷媒流路の切り替え動作]
上述のようにキャビネットパイプ23に冷媒を流して加熱することで、キャビネット1及びディバイダ2と扉との隙間における結露を抑制することができるのであるが、一方で、キャビネットパイプ23の熱は、貯蔵室内に進入して庫内の冷却負荷を上昇させることに繋がりうる。貯蔵室に熱が侵入して庫内負荷が上昇すると、圧縮機21の運転時間が長くなって消費電力が大きくなる。このため、キャビネットパイプ23に起因する庫内負荷の上昇を抑制することを目的として、本実施の形態1では、凝縮流路切替弁28により冷媒流路を切り替える。
【0035】
次に、本実施の形態1に係る凝縮流路切替弁28による冷媒流路の切り替え動作とその作用を説明する。図6は、実施の形態1に係る冷蔵庫の冷媒流路切り替え動作を説明するフローチャートである。
【0036】
ここでは、初期状態として、凝縮流路切替弁28によりバイパスパイプ27が連通状態であるとともに、絞り流路切替弁29により第二キャピラリー25が連通状態であるものとして説明する。
【0037】
図6に示すように、圧縮機21の運転を開始すると(S1)、制御装置10は、全体負荷を検出する(S2)。ここで、全体負荷とは、概念的には、冷蔵庫100の冷凍サイクル全体の冷却負荷(必要とされる冷却能力)をいう。なお、全体負荷の具体例については後述する。全体負荷が閾値Qa(第一閾値)よりも大きい場合には(S2;No)、キャビネットパイプ23を連通状態にする(S3)。このようにすると、キャビネットパイプ23に冷媒が流れ、その周辺のキャビネット1及びディバイダ2が加熱されて結露の発生が抑制される。また、ステップS3でキャビネットパイプ23を連通状態にするのと同期して、絞り流路切替弁29は、冷媒の流路を第一キャピラリー24が連通状態となるように切り替える(S4)。
【0038】
そして、圧縮機21の運転中において、制御装置10は、所定タイミングで全体負荷を検出する(S5)。そして、全体負荷が閾値Qaよりも大きい場合には(S5;No)、キャビネットパイプ23を連通状態としたまま運転を継続する。このようにすることで、結露の抑制に加え、冷凍サイクルにおける必要凝縮熱量を確保し続けることができる。すなわち、冷蔵庫100に必要な冷却能力は、予め定められている冷蔵庫の内容積や断熱仕様に依存する固定分のほか、貯蔵室の扉の開閉状態や外気温度に依存する変動分がある。そして、必要な冷却能力に応じて、凝縮器(コンデンサ22及びキャビネットパイプ23)にて冷媒が放熱する必要がある。必要な冷却能力に対して凝縮器の放熱量が少ないと、冷却能力不足となり、冷蔵庫100内を目標温度まで低下させることができないか、あるいは長時間を要してしまうためである。本実施の形態1の場合、冷媒がキャビネットパイプ23を流れる場合の凝縮熱量に対し(図5のA、B参照)、冷媒がコンデンサ22のみを流れる場合の凝縮熱量の方が小さくなる(図5のC、D参照)。このため、必要な冷却能力(全体負荷)が大きい場合には、キャビネットパイプ23に冷媒を流すようにすることで、コンデンサ22に加えてキャビネットパイプ23において冷媒を凝縮させることができるので、必要な凝縮熱量を確保し続けることが可能となる。
【0039】
ステップS5において、冷蔵庫100の全体負荷が閾値Qa以下であれば(S5;Yes)、制御装置10は、個別負荷を検出する(S6)。ここで、個別負荷とは、概念的には、冷蔵庫100を構成する各貯蔵室の冷却負荷(各貯蔵室で必要とされる冷却能力)のことをいう。なお、個別負荷の具体例については後述する。そして、個別負荷が、閾値Pa(第二閾値)を超えている場合(冷却が不足している場合)には(S6;No)、キャビネットパイプ23を連通状態としたまま運転を継続する。このように、本実施の形態1では、全体負荷が閾値Qa以下となった場合でも、個別負荷が閾値Paを超えている場合には、キャビネットパイプ23に冷媒を流すようにしているので、前述の通り必要な凝縮熱量を確保し続けることができる。
【0040】
ステップS6において、個別負荷が閾値Pa以下である場合には(S6;Yes)、制御装置10は、凝縮流路切替弁28を制御して、バイパスパイプ27を連通状態とする(S7)。
【0041】
このように、全体負荷と個別負荷の双方が低下した場合には、必要とされる冷却能力が相対的に低下している状態であるため、キャビネットパイプ23における凝縮を停止しても必要な冷却能力の維持が可能となる。言い替えると、キャビネットパイプ23に冷媒を流すか否かにより凝縮熱量を変化させて、これによって冷却能力を変化させることができる。例えば、必要とされる冷却能力が低下した場合、圧縮機21の運転周波数を低下させることで冷媒流量を減少させることも可能であるが、圧縮機21の運転周波数が最低周波数であればそれ以上冷媒流量を低下させることができない。また、圧縮機21が一低速圧縮機であれば、圧縮機21の運転によって冷媒流量を減少させることができない。しかしながら、本実施の形態1によれば、圧縮機21によって冷媒流量を減少させることができない場合であっても、キャビネットパイプ23とバイパスパイプ27との冷媒流路切り替えによって凝縮熱量を変化させることで、冷却能力を可変することができる。
【0042】
また、キャビネットパイプ23への冷媒の流通を停止することで、キャビネットパイプ23によるキャビネット1やディバイダ2の加熱も停止される。このようにすることで、キャビネットパイプ23から貯蔵室への熱侵入を停止させることができ、キャビネットパイプ23が配設された貯蔵室の庫内負荷を軽減させることができる。このため、キャビネットパイプ23が配設された貯蔵室は速やかに冷却され、圧縮機21の運転時間を短縮することができる。
【0043】
例えば、冷凍室6に加えて冷蔵室3にも冷気が供給されている(冷蔵室3のダンパーが開)状態のときに、冷蔵室3へのキャビネットパイプ23からの熱侵入が停止すると、冷蔵室3の冷却負荷が減って冷蔵室3が設定温度に冷却されるまでの時間が短縮される。このため、冷蔵室3の吹出口32に設けられたダンパー(図示せず)が閉じられるまでの時間が短縮されることとなる。冷蔵室3のダンパーが閉じられると、それまで冷蔵室3に供給されていた冷気は冷凍室6に供給されることになるため、冷凍室6はより速やかに冷却されて設定温度まで低下し、圧縮機21の運転時間を短縮することができる。ここでは、冷蔵室3を例に説明したが、他の貯蔵室であっても同様のことがいえる。
【0044】
また、例えば、冷凍室6にのみ冷気が供給されている状態のときに、冷凍室6へのキャビネットパイプ23からの熱侵入が停止すると、冷凍室6の冷却負荷が減って冷凍室6が設定温度に冷却されるまでの時間が短縮されるため、圧縮機21の運転時間を短縮することができる。
【0045】
このように、圧縮機21の運転時間を短縮することで、冷蔵庫100の消費電力を軽減することができる。一般に、冷蔵庫における消費電力量の大部分が、圧縮機への入力であるため、圧縮機21の運転時間を短くすることで冷蔵庫の消費電力の軽減効果が大きい。
【0046】
また、ステップS6にてバイパスパイプ27を連通状態にするのと同期して、絞り流路切替弁29は、冷媒の流路を第二キャピラリー25が連通状態となるように切り替える(S8)。バイパスパイプ27を連通状態とした直後は、凝縮熱量が変化(低減)し、膨張機構の入口の冷媒状態は、それまでキャビネットパイプ23を通っていたときよりも低密度となる。この低密度の冷媒を必要な低圧圧力まで低下させるため、流路抵抗の小さい第二キャピラリー25に冷媒を通す。このようにすることで、速やかに冷媒を低圧圧力とすることができる。なお、冷媒の流路をキャビネットパイプ23からバイパスパイプ27へ切り替えた直後には、上述のように第二キャピラリー25に冷媒を通すことが必要であるが、十分時間が経過した後は第一キャピラリー24に流路を戻してもよい。
【0047】
その後は、圧縮機21の運転を継続し、庫内温度センサー63が設定温度を検出すると、圧縮機21の運転を停止する。なお、図6で示した処理の途中において、庫内温度センサー63が冷凍室6の設定温度を検出した場合には、その段階で、圧縮機21の運転を停止する。圧縮機21の運転停止中には、凝縮流路切替弁28は、バイパスパイプ27側へ流路を切り替えておくとともに、絞り流路切替弁29は、第二キャピラリー25へと流路を切り替えておくとよい。このようにすることで、圧縮機21の停止中において、冷媒がキャビネットパイプ23に溜まる状態(いわゆる冷媒の寝込み状態)を抑制することができる。なお、キャビネットパイプ23の出口側には、逆止弁30が設けられているため、キャビネットパイプ23へ冷媒が逆流することもない。圧縮機21の停止中にキャビネットパイプ23内に冷媒が溜まるのを抑制することで、圧縮機21の運転再開時の冷却不良を低減することができる。
【0048】
また、ステップS2において、全体負荷が閾値Qa以下である場合には(S2;Yes)、個別負荷を検出する(S9)。そして、個別負荷が閾値Paよりも大きい場合には(S9;No)、ステップS3に進み、個別負荷が閾値Pa以下であれば(S9;Yes)、バイパスパイプ27、第二キャピラリー25のままで運転を継続する。
【0049】
次に、図6で説明した冷蔵庫100の冷媒流路切り替え動作について、図7のタイミングチャートを参照してさらに説明する。図7は、実施の形態1に係る冷蔵庫の冷却負荷と、圧縮機、凝縮流路切替弁、及び絞り流路切替弁の動作を説明するタイミングチャートである。なお、図7は、冷蔵庫100の連続運転の一部を抜粋して例示したものである。
【0050】
図7(a)は、扉の開閉状態や外気温度等の要因によって冷蔵庫の冷却負荷(全体負荷)が変動する様子を例示している。
庫内温度センサー63により検出される冷凍室6の温度が設定温度の上限値を超えると、図7(b)に示すように、圧縮機21が運転を開始する(A1)。このとき、全体負荷が閾値Qaを超えているため、キャビネットパイプ23に冷媒流路が切り替えられるとともに(B1)、第一キャピラリー24に冷媒流路が切り替えられる(C1)。全体負荷が閾値Qaを超えていて必要な冷却能力が大きい場合には、キャビネットパイプ23に冷媒を流して凝縮熱量を確保するとともに、キャビネットパイプ23でその周囲を加熱して結露を抑制する。
【0051】
そして、図7(a)に示すように全体負荷が閾値Qa以下となり、かつ、個別負荷が所定値を超えているものがなくなると(個別負荷については図7に図示せず)、図7(c)に示すように、バイパスパイプ27へ冷媒流路が切り替えられるとともに(B2)、第二キャピラリー25へ冷媒流路が切り替えられる(C2)。このようにすることで、圧縮機21の運転中における期間X(図7(c)参照)の間は、キャビネットパイプ23による加熱が停止するので、キャビネットパイプ23に由来する冷蔵庫の庫内負荷を低減することができる。なお、キャビネットパイプ23への冷媒の供給を停止した場合でも、キャビネットパイプ23とキャビネット1やディバイダ2との間に介在するブチルゴムなどの弾性材の蓄熱作用により、ある程度の時間はキャビネット1やディバイダ2が保温される。このため、キャビネットパイプ23の加熱が停止した後も、ある程度の時間は、その周囲の温度を外気の露点温度以上に保つことができる。また、結露が発生しやすいのは、外気温度が高く、かつ、湿度が高い環境条件のときであるが、このような条件のときには、圧縮機21はほぼ連続運転を行っているので、上記の手法で流路を切り替えることで、キャビネット1やディバイダ2を露点温度以上に維持することが可能である。
【0052】
また、図7(b)では、(A3)にて圧縮機21が運転を開始しているが、凝縮流路切替弁28は冷媒流路を切り替えず、バイパスパイプ27が連通状態のままであるとともに(B2)、第二キャピラリー25が連通状態のままとなっている(C2)。これは、(A2)にて圧縮機21が運転を開始したときに、全体負荷が閾値Qa以下であって、かつ、個別負荷が閾値Pa以下となっている場合である。このようなケースにおいては、キャビネットパイプ23による加熱を行わないことで、冷蔵庫内の冷却負荷を増加させることがなく、圧縮機21の運転時間を短縮することができる。
【0053】
[全体負荷]
次に、全体負荷の検出例を説明する。
【0054】
(1−1)圧縮機の運転状態に基づく全体負荷の検出
前述のように、本実施の形態1の圧縮機21は、冷凍室6の庫内温度センサー63によって検出される温度に基づいて、運転/停止を制御されるとともに、運転中においては、冷凍室6の温度と設定温度との乖離状態において、その回転数が制御される。このため、圧縮機21の運転状態は、冷蔵庫100の冷凍サイクルの全体的な冷却負荷を示す指標の一つであるといえる。そこで、全体負荷として、圧縮機21の回転数f、又は圧縮機21への入力電力Wを用いることができる。圧縮機21の回転数fが大きい場合(入力電力Wが大きい場合)には、全体負荷が高い状態であり、圧縮機21の回転数が小さい場合(入力電力Wが小さい場合)には、全体負荷が低い状態である。制御装置10は、圧縮機21の運転を制御する際に取得する回転数f又は入力電力Wを取得し、その値と予めマイコンに記憶された閾値とを比較することにより、全体負荷が閾値Qa以下であるか否かを判定する。この場合、制御装置10が、本発明の全体負荷検出手段に相当する。
【0055】
(1−2)冷却器の出入り口温度差による全体負荷の検出
冷却器26へ戻る空気温度が高いということは、庫内負荷が大きい状態であることを示しており、この場合には、冷却器26の出口側と入口側で温度差ΔTeが生じる。このため、冷却器26の出口側と入口側の温度差ΔTeは、冷蔵庫100の冷凍サイクルの全体的な冷却負荷を示す指標の一つであるといえる。そこで、全体負荷として、冷却器26の出口側と入口側の温度差ΔTeを用いることができる。制御装置10は、冷却器26の冷却器入口側温度センサー17と冷却器出口側温度センサー18からの出力を取得し、これらの温度差ΔTeと、予めマイコンに記憶された閾値とを比較することにより、全体負荷が閾値Qa以下であるか否かを判定する。この場合、制御装置10、冷却器入口側温度センサー17、及び冷却器出口側温度センサー18が、本発明の全体負荷検出手段に相当する。
【0056】
[個別負荷]
次に、個別負荷の検出例を説明する。
【0057】
(2−1)冷蔵室の扉開閉回数Rr
冷蔵室3の扉を開放すると、外気が冷蔵室3に流入するとともに冷気が外部へと流出し、冷蔵室3の温度が上昇して冷却負荷が大きくなる。このため、冷蔵室3の扉開閉回数Rrは、冷蔵室3の冷却負荷を示す指標の一つであるといえる。そこで、冷蔵室3の個別負荷として、単位時間当たりの扉開閉回数Rrを用いることができる。制御装置10は、扉31の扉開閉センサーからの出力を受けて単位時間当たりの扉開閉回数Rrをカウントし、予めマイコンに記憶された所定の閾値と扉開閉回数Rrとを比較することにより、冷蔵室3の個別負荷が閾値Pa以下であるか否かを判断する。この場合、冷蔵室3に設けられた扉開閉センサー35及び制御装置10が、本発明の個別負荷検出手段に相当する。
【0058】
(2−2)冷凍室の扉開閉回数Rf
同様にして、冷凍室6の扉開閉回数Rfも、冷凍室6の冷却負荷を示す指標の一つであるといえる。そこで、冷蔵室3における扉開閉回数Rrと同様にして、冷凍室6の個別負荷として、単位時間当たりの扉開閉回数Rfを用いることができる。この場合、冷凍室6に設けられた扉開閉センサー65及び制御装置10が、本発明の個別負荷検出手段に相当する。
【0059】
(2−3)冷蔵室の扉開放時間τr
前述のように、冷蔵室3の扉を開放すると、冷蔵室3の温度が上昇して冷却負荷が大きくなる。このため、冷蔵室3の扉開放時間τr(単位時間当たりに扉が開放されていた時間の累積時間)は、冷蔵室3の冷却負荷を示す指標の一つであるといえる。そこで、冷蔵室3の個別負荷として、冷蔵室3の扉開放時間τrを用いることができる。制御装置10は、扉31の扉開閉センサーからの出力を受けて、扉31が開放されている時間をカウントし、累積する。そして、単位時間当たりの扉開放時間τrと、予めマイコンに記憶された所定の閾値とを比較することにより、冷蔵室3の個別負荷が閾値Pa以下であるか否かを判断する。この場合、冷蔵室3に設けられた扉開閉センサー35及び制御装置10が、本発明の個別負荷検出手段に相当する。
【0060】
(2−4)冷凍室の扉開放時間τf
同様にして、冷凍室6の扉開放時間τfも、冷凍室6の冷却負荷を示す指標の一つであるといえる。そこで、冷蔵室3における扉開放時間τrと同様にして、冷凍室6の個別負荷として、単位時間当たりの扉開放時間τfを用いることができる。この場合、冷凍室6に設けられた扉開閉センサー65及び制御装置10が、本発明の個別負荷検出手段に相当する。
【0061】
(2−5)冷蔵室温度Tr
冷蔵室3に設けられた庫内温度センサー33の検出温度が高温であるほど、冷蔵室3の庫内負荷が大きい状態であるといえる。そこで、冷蔵室3の個別負荷として、冷蔵室温度Trを用いることができる。制御装置10は、冷蔵室3の庫内温度センサー33からの出力を受けて、冷蔵室温度Trと、予めマイコンに記憶された所定の閾値とを比較することにより、冷蔵室3の個別負荷が閾値Pa以下であるか否かを判断する。この場合、冷蔵室3に設けられた庫内温度センサー33及び制御装置10が、本発明の個別負荷検出手段に相当する。
【0062】
(2−6)冷凍室の温度低下量
冷凍室6に、比較的温度が高くて大きな食材が投入されている場合には、冷凍室6の温度低下の速度は遅くなる傾向にある。このような場合には、冷凍室6における冷却負荷が大きい状態であるといえる。そこで、冷凍室6の個別負荷として、単位時間当たりの冷凍室6の温度低下量を用いることができる。制御装置10は、冷凍室6の庫内温度センサー63からの出力を受けて単位時間当たりの温度低下量を算出し、その温度低下量と、予めマイコンに記憶された所定の閾値とを比較することにより、冷凍室6の個別負荷が閾値Pa以下であるか否かを判断する。この場合、冷凍室6に設けられた庫内温度センサー63及び制御装置10が、本発明の個別負荷検出手段に相当する。
【0063】
以上説明した全体負荷及び個別負荷の検出例は、いずれも、キャビネットパイプ23とバイパスパイプ27との冷媒流路の切り替えのために追加部品を設けることなく実現可能なものであり、冷蔵庫100の部品点数を増加させることもない。
【0064】
なお、ここで例示した個別負荷を複数組み合わせて用いてもよく、判定対象としている個別負荷のうち、すべてが閾値Pa以下である場合にキャビネットパイプ23からバイパスパイプ27に流路を切り替えるようにしてもよい。また、上記説明では、冷蔵室3と冷凍室6の個別負荷を説明したが、同様にして他の貯蔵室(製氷室4、切替室5、野菜室7)の個別負荷を検出し、冷媒流路の切り替え条件として用いてもよい。
【0065】
また、全体負荷の閾値Qa及び個別負荷の閾値Paを決定するに際しては、第一凝縮器としてのコンデンサ22の放熱量を考慮する必要がある。すなわち、凝縮流路切替弁28によりバイパスパイプ27に冷媒流路を切り替えると、コンデンサ22でのみ凝縮が行われることとなるため、凝縮熱量はコンデンサ22の放熱量に依存することになる。したがって、バイパスパイプ27に冷媒流路を切り替えた場合に、コンデンサ22の凝縮熱量によって得られる冷却能力と、閾値Qaと閾値Paとでバランスをとる必要がある。
【0066】
次に、全体負荷と個別負荷に基づいて冷媒流路を切り替えることによる作用について説明する。
例えば、上述の(1−1)、(1−2)のようにして検出された全体負荷が閾値Qa以下である場合であっても、ある貯蔵室の個別負荷が閾値Paよりも大きい場合には、当該貯蔵室の温度が設定温度に低下するまでの間、圧縮機21が運転し続けることとなる。このようなときに、キャビネットパイプ23からバイパスパイプ27へ冷媒流路を切り替えると、凝縮熱量が減少してしまうために圧縮機21の運転時間が長引いて消費電力も増大しうる。本実施の形態1では、全体負荷が閾値Qa以下であっても、個別負荷が閾値Paよりも大きい場合には、キャビネットパイプ23に冷媒を流すようにしているので、凝縮熱量を減少させることがなく、圧縮機21の運転時間が長引くのを抑制することができる。
【0067】
なお、上記説明では、凝縮流路切替弁28による流路切り替えに合わせて、絞り装置における絞り量を可変するようにした。しかし、凝縮流路切替弁28によりキャビネットパイプ23からバイパスパイプ27へ冷媒流路が切り替えられた際に、バイパスパイプ27を通過する冷媒が必要な低圧圧力まで低下可能であれば、必ずしも上述のような絞り量を可変しなくともよい。例えば、図8に示す実施の形態1に係る冷凍サイクルの構成の変形例のように、冷媒流路がキャビネットパイプ23とバイパスパイプ27のいずれであっても、同じ絞り量の絞り装置124を用いるようにしてもよい。
【0068】
以上のように、本実施の形態1によれば、全体負荷が閾値Qa(第一閾値)以下であり、かつ、個別負荷が閾値Pa(第二閾値)以下である場合には、バイパスパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替えるようにし、その他の場合には、キャビネットパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替えるようにした。このため、冷蔵庫の負荷に合わせて凝縮側の放熱量を確保しつつ、キャビネットパイプから貯蔵室内への熱侵入を抑制して庫内負荷を軽減することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 キャビネット、2 ディバイダ、3 冷蔵室、4 製氷室、5 切替室、6 冷凍室、7 野菜室、8 操作パネル、9 外気温度センサー、10 制御装置、11 外箱、12 内箱、13 背面壁、14 風路、15 冷却器室、16 循環ファン、17 冷却器入口側温度センサー、18 冷却器出口側温度センサー、21 圧縮機、22 コンデンサ、23 キャビネットパイプ、24 第一キャピラリー、25 第二キャピラリー、26 冷却器、27 バイパスパイプ、28 凝縮流路切替弁、29 絞り流路切替弁、30 逆止弁、31 扉、32 吹出口、33 庫内温度センサー、34 ダンパー、35 扉開閉センサー、63 庫内温度センサー、100 冷蔵庫。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が複数の貯蔵室に区画されたキャビネットと、
圧縮機、第一凝縮器、前記キャビネットの前面開口縁に内装されたキャビネットパイプからなる第二凝縮器、絞り装置、及び冷却器を有する冷凍サイクルと、
前記第一凝縮器と前記絞り装置との間に、前記キャビネットパイプと並列に接続されたバイパスパイプと、
前記第一凝縮器からの冷媒の流路を前記キャビネットパイプ又は前記バイパスパイプに切り替える凝縮流路切替手段と、
前記冷凍サイクル全体の冷却負荷である全体負荷を検出する全体負荷検出手段と、
前記貯蔵室における冷却負荷である個別負荷を検出する個別負荷検出手段とを備え、
前記凝縮流路切替手段は、
前記全体負荷が第一閾値以下であり、かつ、前記個別負荷が第二閾値以下である場合には、前記バイパスパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替え、
その他の場合には、前記キャビネットパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替える
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記全体負荷は、前記圧縮機の回転数又は前記圧縮機の入力電力に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記全体負荷は、前記冷却器の出口側の空気と入口側の空気との温度差に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記個別負荷は、前記貯蔵室の扉の単位時間当たりの開閉回数に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記個別負荷は、前記貯蔵室の扉の単位時間当たりの累積開放時間に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記貯蔵室の一つは冷凍室であり、
前記個別負荷は、前記冷凍室の単位時間当たりの温度低下量に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記貯蔵室の一つは冷蔵室であり、
前記個別負荷は、前記冷蔵室の温度に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記絞り装置の絞り量を切り替える絞り量切替手段を備え、
前記絞り量切替手段は、
前記凝縮流路切替手段により冷媒の流路が前記キャビネットパイプから前記バイパスパイプに切り替えられた場合には、前記絞り量を低減する方向に切り替える
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記絞り装置として、第一キャピラリーチューブと、前記第一キャピラリーチューブと並列に配置され前記第一キャピラリーチューブよりも流路抵抗の小さい第二キャピラリーチューブとを備え、
前記絞り量切替手段は、前記凝縮流路切替手段により冷媒の流路が前記キャビネットパイプから前記バイパスパイプに切り替えられた場合には、前記第一キャピラリーチューブから前記第二キャピラリーチューブに冷媒の流路を切り替える
ことを特徴とする請求項8記載の冷蔵庫。
【請求項10】
前記絞り量切替手段は、前記絞り装置の流路断面積を多段階あるいは無段階に調節可能な弁を備えた
ことを特徴とする請求項8記載の冷蔵庫。
【請求項11】
前記圧縮機は、前記複数の貯蔵室のうちいずれか一つの貯蔵室内温度に基づいて、運転と停止とが制御される
ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項1】
内部が複数の貯蔵室に区画されたキャビネットと、
圧縮機、第一凝縮器、前記キャビネットの前面開口縁に内装されたキャビネットパイプからなる第二凝縮器、絞り装置、及び冷却器を有する冷凍サイクルと、
前記第一凝縮器と前記絞り装置との間に、前記キャビネットパイプと並列に接続されたバイパスパイプと、
前記第一凝縮器からの冷媒の流路を前記キャビネットパイプ又は前記バイパスパイプに切り替える凝縮流路切替手段と、
前記冷凍サイクル全体の冷却負荷である全体負荷を検出する全体負荷検出手段と、
前記貯蔵室における冷却負荷である個別負荷を検出する個別負荷検出手段とを備え、
前記凝縮流路切替手段は、
前記全体負荷が第一閾値以下であり、かつ、前記個別負荷が第二閾値以下である場合には、前記バイパスパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替え、
その他の場合には、前記キャビネットパイプに冷媒が流れるように冷媒の流路を切り替える
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記全体負荷は、前記圧縮機の回転数又は前記圧縮機の入力電力に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記全体負荷は、前記冷却器の出口側の空気と入口側の空気との温度差に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記個別負荷は、前記貯蔵室の扉の単位時間当たりの開閉回数に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記個別負荷は、前記貯蔵室の扉の単位時間当たりの累積開放時間に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記貯蔵室の一つは冷凍室であり、
前記個別負荷は、前記冷凍室の単位時間当たりの温度低下量に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記貯蔵室の一つは冷蔵室であり、
前記個別負荷は、前記冷蔵室の温度に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記絞り装置の絞り量を切り替える絞り量切替手段を備え、
前記絞り量切替手段は、
前記凝縮流路切替手段により冷媒の流路が前記キャビネットパイプから前記バイパスパイプに切り替えられた場合には、前記絞り量を低減する方向に切り替える
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記絞り装置として、第一キャピラリーチューブと、前記第一キャピラリーチューブと並列に配置され前記第一キャピラリーチューブよりも流路抵抗の小さい第二キャピラリーチューブとを備え、
前記絞り量切替手段は、前記凝縮流路切替手段により冷媒の流路が前記キャビネットパイプから前記バイパスパイプに切り替えられた場合には、前記第一キャピラリーチューブから前記第二キャピラリーチューブに冷媒の流路を切り替える
ことを特徴とする請求項8記載の冷蔵庫。
【請求項10】
前記絞り量切替手段は、前記絞り装置の流路断面積を多段階あるいは無段階に調節可能な弁を備えた
ことを特徴とする請求項8記載の冷蔵庫。
【請求項11】
前記圧縮機は、前記複数の貯蔵室のうちいずれか一つの貯蔵室内温度に基づいて、運転と停止とが制御される
ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図5】
【公開番号】特開2013−96614(P2013−96614A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238272(P2011−238272)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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