説明

冷間圧延機における金属帯の破断防止方法

【課題】冷間圧延機における金属帯(鋼帯等)の絞り破断を的確に防止することができる冷間圧延機における破断防止方法を提供する。
【解決手段】第1−第2スタンド間差張力ΔT1を監視し、第1−第2スタンド間差張力ΔT1の振れ幅δΔT1が所定範囲外となった場合に、第1スタンド10のバックアップロール12の交換または/および第1スタンド10のエンタリングガイドロール30の交換を行うことによって、第1−第2スタンド間差張力ΔT1の振れ幅δΔT1を所定範囲内とし、第1スタンド10における鋼板(鋼帯)1の蛇行を抑止して、鋼板(鋼帯)1の絞り破断の発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間圧延機における鋼帯等の金属帯の破断を防止する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1に連続式冷間圧延機(以下、単に冷間圧延機ともいう)の一例を示す。以下、金属帯として、鋼帯(鋼板ともいう)を用いた場合を例に説明する。
【0003】
通常、連続式冷間圧延機は5スタンド程度を備えているが、ここでは、第1スタンド10と第2スタンド20を示しており、第1スタンド10はワークロール11とバックアップロール12を備えた4段圧延機、第2スタンド20もワークロール21とバックアップロール22を備えた4段圧延機である。
【0004】
図1に示したような冷間圧延機においては、冷間圧延中に第1スタンド10の操作側と駆動側の圧下バランスが崩れると被圧延材である鋼板(鋼帯)1が蛇行し、第1スタンド10にて絞り破断(せり込み破断)が発生することがあり、破断の程度によっては長時間のダウンタイム発生となり、生産効率が低下する。
【0005】
ここで、第1スタンド10の操作側と駆動側の圧下バランスが崩れると、第1−第2スタンド間差張力が大きくなることが分かっている。なお、第1−第2スタンド間差張力とは、第1スタンド10と第2スタンド20の間において鋼板1の操作側幅端部の張力T1Wと、鋼板のもう一方の幅端部である駆動側幅端部の張力T1Dとの差ΔT(=T1W−T1D)をいう。
【0006】
そこで、冷間圧延機では、特許文献1、2に示すように、第1−第2スタンド間差張力ΔTが所定範囲外であると判定された場合に、その第1−第2スタンド間差張力ΔTが所定範囲内となるように圧下レベリングを調整して、鋼板1の蛇行を抑制し、第1スタンド10における当該鋼板1の絞り破断を防止するようにしている。
【0007】
また、図1に示すように、第1スタンド10の入側には、鋼板1の蛇行を防止するためにガイドロール(エンタリングガイドロールともいう)30が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−275811号公報
【特許文献2】特開2004−243376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、2に示すように、第1スタンドの圧下レベリングを調整して、第1−第2スタンド間差張力ΔTが所定範囲内となるようにしたとしても、鋼板(鋼帯)の絞り破断が発生することがあった。
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、冷間圧延機における金属帯(鋼帯等)の絞り破断を的確に防止することができる冷間圧延機における金属帯の破断防止方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0012】
[1]第1スタンドと第2スタンドを備えた金属帯の冷間圧延機において、第1−第2スタンド間差張力を監視し、第1−第2スタンド間差張力の振れ幅が所定範囲外となった場合に、第1スタンドのバックアップロールの交換または/および第1スタンドの入側のガイドロールの交換を行うことを特徴とする冷間圧延機における金属帯の破断防止方法。
【0013】
[2]第1スタンドと第2スタンドを備えた金属帯の冷間圧延機において、第1−第2スタンド間差張力を監視し、第1−第2スタンド間差張力の振れ幅が所定範囲外となった場合に、まず、第1スタンドのバックアップロールの交換を行うことを特徴とする前記[1]に記載の冷間圧延機における金属帯の破断防止方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、冷間圧延機の第1−第2スタンド間差張力の振れ幅を所定範囲内とし、第1スタンドにおける金属帯の蛇行を抑止して、金属帯の絞り破断の発生を的確に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】冷間圧延機(冷間タンデム圧延機)の一例を示す図である。
【図2】第1−第2スタンド間差張力の一例とその振れ幅を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、図1に示したような冷間圧延機(連続式冷間圧延機)について、第1スタンド10における鋼板(鋼帯)1の絞り破断の発生時の操業条件を調査したところ、鋼板1の絞り破断の発生時には、第1−第2スタンド間差張力ΔTの振れ幅δΔTが大きくなっていることが分かった。
【0017】
ちなみに、図2は、第1−第2スタンド間差張力ΔTの測定結果の一例を示すものであるが、ここで、第1−第2スタンド間差張力ΔTの振れ幅δΔTとは、隣り合う山ΔT1Tと谷ΔT1Bとの差の絶対値(=|ΔT1T−ΔT1B|)をいう。
【0018】
このことから、鋼板1の絞り破断の発生を防止するためには、第1−第2スタンド間差張力ΔTそのものよりもその振れ幅δΔTを小さくすることが重要であると考えた。
【0019】
そこで、本発明者らは、第1−第2スタンド間差張力ΔTの振れ幅δΔTが大きくなるメカニズムについて詳細な調査を行った結果、第1スタンド10のバックアップロール12の処理量が増大してくると、バックアップロール12におけるロール幅方向での偏摩耗が生じ、それによって第1スタンド10での操作側と駆動側の圧下バランスが崩れて第1−第2スタンド間差張力ΔTの振れ幅δΔTが大きくなり、第1スタンド10での鋼板1の絞り破断が発生していることを突き止めた。
【0020】
また、第1スタンド10の入側に鋼板1の蛇行を防止するために設置されているエンタリングガイドロール30についても、その使用期間が長くなると、エンタリングガイドロール30の鋼板1に対するグリップ力が低下し、第1スタンド10での操作側と駆動側の圧下バランスが崩れた際に、第1スタンド10での鋼板1の絞り破断が発生しやすいことが分かった。
【0021】
そこで、本発明者らは、上記のメカニズムで発生する鋼板1の絞り破断を防止するために、第1−第2スタンド間差張力ΔTを監視し、第1−第2スタンド間差張力ΔTの振れ幅δΔTが所定範囲外となった場合に、第1スタンド10のバックアップロール12の交換または/および第1スタンド10のエンタリングガイドロール30の交換を行うことによって、第1−第2スタンド間差張力ΔTの振れ幅δΔTを所定範囲内とし、第1スタンド10における鋼板1の蛇行を抑止して、鋼板1の絞り破断の発生を防止するようにした。
【0022】
ここで、第1−第2スタンド間差張力ΔTの振れ幅δΔTの所定範囲外とは、例えば、第1−第2スタンド間の全張力Tの2.0%超えの領域(δΔT/T×100>2.0)である。
【0023】
なお、通常、バックアップロール12の定期的な交換周期(例えば、1ヶ月)がエンタリングガイドロール30の定期的な交換周期(例えば、6ヶ月)よりも短いことや、バックアップロール12の交換作業がエンタリングガイドロール30の交換作業よりも容易であることから、第1−第2スタンド間差張力ΔTの振れ幅δΔTが所定範囲外となった場合には、まず、バックアップロール12の交換を行い、それでも第1−第2スタンド間差張力ΔTの振れ幅δΔTが所定範囲外の場合には、エンタリングガイドロール30の交換を行うようにするのが好ましい。
【0024】
もちろん、エンタリングガイドロール30の定期的な交換時期が近い等のことから、まず、エンタリングガイドロール30の交換を行い、それでも第1−第2スタンド間差張力ΔTの振れ幅δΔTが所定範囲外の場合には、バックアップロール12の交換を行うようにしてもよい。
【0025】
また、バックアップロール12の交換とエンタリングガイドロール30の交換を同時に行ってもよい。
【実施例1】
【0026】
冷間圧延機によって製品板厚0.1mm〜0.6mmの低炭素鋼板および極低炭素鋼板を冷間圧延するに際して、本発明を適用したところ、従来は数回/年程度発生していた第1スタンドにおける鋼板の絞り破断を皆無にすることができた。
【符号の説明】
【0027】
1 鋼板(鋼帯)
10 第1スタンド
11 第1スタンドのワークロール
12 第1スタンドのバックアップロール
20 第2スタンド
21 第2スタンドのワークロール
22 第2スタンドのバックアップロール
30 エンタリングガイドロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スタンドと第2スタンドを備えた金属帯の冷間圧延機において、第1−第2スタンド間差張力を監視し、第1−第2スタンド間差張力の振れ幅が所定範囲外となった場合に、第1スタンドのバックアップロールの交換または/および第1スタンドの入側のガイドロールの交換を行うことを特徴とする冷間圧延機における金属帯の破断防止方法。
【請求項2】
第1スタンドと第2スタンドを備えた金属帯の冷間圧延機において、第1−第2スタンド間差張力を監視し、第1−第2スタンド間差張力の振れ幅が所定範囲外となった場合に、まず、第1スタンドのバックアップロールの交換を行うことを特徴とする請求項1に記載の冷間圧延機における金属帯の破断防止方法。

【図1】
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【図2】
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