説明

冷陰極放電管用電極および冷陰極放電管

【課題】ガラス管と電極との封止工程が容易であって電極の位置決めを比較的容易に行うことができ、コスト的にも有利に製造すること。
【解決手段】冷陰極放電管1のガラス管11の端部に配置される冷陰極放電管用電極12aであって、ガラス管11の内径とほぼ同じ外径を有する封止部21と、封止部21よりも小さい外径を有し封止部21の一方の側に同心状に一体に設けられた突出電極部22と、封止部21の他方の側に突出して一体に設けられたリード線接続用の突起部23と、を有し、突出電極部22の端面に開口する空洞部31が設けられ、空洞部31によって突出電極部22が筒状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置のバックライト用光源などとして用いられる冷陰極放電管用電極および冷陰極放電管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、種々の形状の冷陰極放電管用電極が提案されている。例えば、特許文献1には、金属の棒材をプレス加工することによって形成した、有底円筒状のホロー電極と棒状の封止金属とが一体となった冷陰極放電管用電極が提案されている。
【0003】
また、特許文献2には、中空部が形成されたカップ状の電極部と棒状の封着線とが一体となった冷陰極放電管用電極を射出成形によって製造することが開示されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、カップ状電極部と導入線基部とが一体となったカップ状電極本体、導入線基部に溶接によって接続された導入線、および、導入線基部の周囲を取り巻くように取り付けられて封着部に溶着されるガラスビーズからなる冷陰極放電管用電極が提案されている。また、円柱状であって先端側にカップ形状が形成され、後端側がガラス管の端部の封着部に埋設される冷陰極放電管用電極も開示されている。
【特許文献1】特開2003−59445
【特許文献2】特開2004−63469
【特許文献3】特開2005−71972
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の冷陰極放電管用電極は、いずれも、電極の全体がガラス管の内径よりも細くなっており、ガラス管の端部においてガラス溜まりとなった封着部に電極の後端部が埋設されることによってガラス管が封止されるようになっている。
【0006】
したがって、電極を固定し且つ封止するためにガラス管の端部を細く変形させたりそこにガラス溜まりを設けたりしなければならず、封止工程の作業が面倒となって時間とコストを要していた。また、ガラス管の端部における電極の位置決めが容易ではなく、ガラス管に対する電極の位置および姿勢を精度よく行うことが容易ではないという問題もあった。
【0007】
また、ガラスビーズを設けて封着部に溶着する構造の電極では、部品点数が増加することからコストの面で不利である。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、ガラス管と電極との封止工程が容易であって電極の位置決めを比較的容易に行うことができ、コスト的にも有利に製造することのできる冷陰極放電管用電極および冷陰極放電管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電極は、冷陰極放電管のガラス管の端部に配置される冷陰極放電管用電極であって、前記ガラス管の内径とほぼ同じ外径を有する封止部と、前記封止部よりも小さい外径を有し前記封止部の一方の側に同心状に一体に設けられた突出電極部と、前記封止部の他方の側に突出して一体に設けられたリード線接続用の突起部と、を有し、前記突出電極部の端面に開口する空洞部が設けられ、前記空洞部によって前記突出電極部が筒状に形成される。
【0010】
好ましくは、前記空洞部は、前記封止部に至る深さに設けられる。また、前記突起部は、先端にいく程径小となるテーパ状に形成される。電極は、好ましくは、タングステンまたはモリブデン、若しくはこれらに添加物を添加した合金によって形成される。
【0011】
本発明に係る冷陰極放電管は、ガラス管と前記ガラス管の両端部に配置された電極とを有してなる冷陰極放電管であって、前記電極は、前記ガラス管の内径とほぼ同じ外径を有する封止部と、前記封止部よりも小さい外径を有し前記封止部の管内の側に同心状に一体に設けられた突出電極部と、前記封止部の管外の側に突出して一体に設けられたリード線接続用の突起部と、を有し、前記突出電極部の端面に開口する空洞部が設けられ、前記空洞部によって前記突出電極部が筒状に形成されており、前記ガラス管の端部に前記封止部が挿入され且つ前記ガラス管が前記封止部に融着される。
【0012】
好ましくは、前記突起部に、リード線が溶着により接続される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、ガラス管と電極との封止工程が容易であって電極の位置決めを比較的容易に行うことができ、コスト的にも有利に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明に係る冷陰極放電管1の断面正面図、図2は冷陰極放電管1の要部を拡大して示す断面図、図3は図2の冷陰極放電管1のA−A線断面矢視側面図、図4は図2の冷陰極放電管1の右側面図である。
【0015】
これらの図において、冷陰極放電管1は、ガラス管11、ガラス管11の両端に配置されて封止された電極12a,12b、および電極12a,12bにそれぞれ接続されたリード線13a,13bを有する。
【0016】
ガラス管11は、細長い円筒形状を有した直管形のものである。ガラス管11の両端部においても、径が小さくなることなく、ストレートの形状である。ガラス管11の寸法の例をあげると、外径1.5〜5mm程度、内径1〜4mm程度、長さ数十mm〜数百mm程度である。
【0017】
2つの電極12a,12bは互いに同じ構造のものであるので、一方の電極12aについてのみ説明する。電極12aは、タングステンまたはモリブデン、若しくはこれらにニッケルなどの添加物を少量添加した合金を材料として、外形が略2段の円柱状に形成されている。つまり、電極12aは、封止部21、突出電極部22、および突起部23が一体に形成されたものである。
【0018】
すなわち、封止部21は、ガラス管11の内径とほぼ同じ外径を有する円柱状に形成されている。突出電極部22は、外形が円柱状であって封止部21よりも小さい外径を有しており、封止部21の管内の側に同心状に設けられている。封止部21と突出電極部22との連結部分32はテーパの円錐面状に形成されている。
【0019】
突起部23は、封止部21の管外の側の端面21aの中心から軸方向に突出して設けられている。突起部23は、リード線接続用であり、先端にいく程径小となるテーパ状(円錐台状)に形成されている。
【0020】
そして、電極12aには、突出電極部22の端面22aに開口する円柱形状の空洞部31が、封止部21に至る深さにまで設けられている。つまり、空洞部31は、突出電極部22から封止部21の奥深くまで形成され、その底面部31aは端面21aに近づいており、それらの間に側端壁21bを形成している。なお、底面部31aは、その隅部がアール状になっており、これによって底面部31aの全体が皿状ないし半球面状になっている。空洞部31によって、突出電極部22が筒状に形成され、封止部21がカップ状に形成されている。また、突出電極部22の端面22aは、その外周縁および内周縁のいずれもアール状となっている。
【0021】
電極12aの寸法の例をあげると、封止部21の外径1〜4mm程度、突出電極部22の外径0.8〜3mm程度、全体の長さ3〜10mm程度、空洞部31の内径0.5〜2.5mm程度、深さ2〜8mm程度である。
【0022】
突起部23の先端には、リード線13aが溶着により接続されている。リード線13aは、ニッケルまたはニッケル合金などの金属材料によって形成され、その先端部を突起部23の先端部と突き合わせた状態で溶接33されている。
【0023】
電極12aの製造に当たっては、例えば、粉末冶金法(PM法)の1つであるホットランナ方式による金属粉末射出成形法を用いることが可能である。また、プレスによって製造することも可能である。次に、金属粉末射出成形法による電極12aの製造方法について簡単に説明する。
【0024】
まず、例えば、タングステン、モリブデン、またはニッケルなどの粉末と、ポリエチレンまたはポリスチレンなどの樹脂とを体積比で50パーセント程度ずつ混合したペレット状のものを材料として用い、これを高温に加熱して溶融状態とする。これを、流路を介して所定の金型の材料注入室に充填し、バルブピンを移動させて材料注入室の材料を加熱された流路を経由してキャビティの内部に流れ込ませる。その後、キャビティ内において材料が冷却するのを待って、移動側金型を下降させ、これによってキャビティを開き、且つ雄型をキャビティ内から抜き出し、成形品を雄型から抜き出す。これによってカップ状の成形品が得られる。この成形品を溶剤により処理し、熱可塑性バインダー樹脂を溶出させてポーラスな脱脂グリーン体とし、これを焼成することによって電極12aを得る。
【0025】
この製造工程において、連結部分32および突起部23がテーパ状に形成されているので、成形品の抜き出しが容易であり、金型が割り型でなくてもよいのでコスト的に有利である。
【0026】
なお、電極12aの熱膨張係数がガラス管11の熱膨張係数と同じかまたはほぼ等しくなるように材料が選定されている。
【0027】
冷陰極放電管1は、1つのガラス管11と、リード線13a,13bが接続された2つの電極12a,12bとを組み立てることにより製造される。ガラス管11の両端に電極12a,12bを挿入し、ガラス管11の両端部を加熱し且つ外周面から適当な圧力を加えて封止部21の外周面に融着させ、融着部15とする。ガラス管11の内部は、空気を抜いて高真空状態とし、また必要に応じてネオンガスなどの適当なガスを封入する。なお、ガラス管11の内部には必要に応じて少量の水銀が封入される。
【0028】
封止部21の外径がガラス管11の内径とほぼ同じであり、例えばガラス管11の内径より僅かに小さい外径を有するので、電極12aのガラス管11への挿入が容易であり、且つ適当位置まで挿入することによって径方向の位置決めが容易に行われる。
【0029】
ガラス管11は直管形であり、両端部に従来のようなガラス溜まりを設ける必要がないので、ガラス管11自体がコスト的に有利であり、また、ガラス管11の両端部11aを加熱するだけで電極12a,12bを封止することができるので、組み立て工程も簡単でコスト的に有利である。電極12a,12bの構造が簡単であり、一体成形することができるので、低コストで量産することができる。
【0030】
電極12a,12bは、空洞部31の存在によって、突出電極部22がリング状に突出しており、ガラス管11内における露出表面積を大きくとることができるので、放電し易い。また、単位面積当たりの圧力が低くなるので寿命の点で有利である。端面22aの内外周縁部および底面部31aがアール状になっているので、放電特性が初期から安定し、放電による劣化が抑えられて冷陰極放電管1の寿命が延びる。ガラス管11と電極12a,12bとの熱膨張率が若干異なっていた場合でも、熱膨張率の相違による歪みや振動による歪みを空洞部31の存在によって吸収し易い。したがって、例えば、製造された冷陰極放電管1の振動試験を簡略化しまたは省略することも可能である。
【0031】
突出電極部22がガラス管11の内径よりも小径となっており、ガラス管11との間で溶着するのは封止部21の外周のみであってその分だけ溶着面積が少くなり、溶着面積が大き過ぎることが防止されるので溶着性が改善される。また、突出電極部22の外周面とガラス管11との間に空間があるので空気の排気が容易である。
【0032】
突起部23の径が小さく、先端部がリード線13a,13bの線径とほぼ同じであるので、リード線13aの接続のための溶接が容易である。また、突起部23が設けられているので、リード線13aの溶接を行った際に、側端壁21bの温度が余り上昇することがない。つまり、封止部21の材料であるタングステンやモリブデンでは、高温に加熱された場合に再結晶化が起こって破断することがあるが、本実施形態の電極12aでは、突起部23の部分を加熱することで容易に溶接が行えるので、再結晶化が生じるまでに側端壁21bの温度が上昇することなく、寿命の点で有利である。
【0033】
上の実施形態において、ガラス管11を直管形としたが、U字管形でもよい。電極12a,12b、リード線13a,13b、ガラス管11、または冷陰極放電管1の全体または各部の構造、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る冷陰極放電管の断面正面図である。
【図2】冷陰極放電管の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】図2の冷陰極放電管のA−A線断面矢視側面図である。
【図4】図2の冷陰極放電管の右側面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 冷陰極放電管
11 ガラス管
12a,12b 電極(冷陰極放電管用電極)
13a,13b リード線
21 封止部
22 突出電極部
23 突起部
31 空洞部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷陰極放電管のガラス管の端部に配置される冷陰極放電管用電極であって、
前記ガラス管の内径とほぼ同じ外径を有する封止部と、
前記封止部よりも小さい外径を有し前記封止部の一方の側に同心状に一体に設けられた突出電極部と、
前記封止部の他方の側に突出して一体に設けられたリード線接続用の突起部と、を有し、
前記突出電極部の端面に開口する空洞部が設けられ、前記空洞部によって前記突出電極部が筒状に形成されてなる、
ことを特徴とする冷陰極放電管用電極。
【請求項2】
前記空洞部は、前記封止部に至る深さに設けられてなる、
請求項1記載の冷陰極放電管用電極。
【請求項3】
前記突起部は、先端にいく程径小となるテーパ状に形成されてなる、
請求項1または2記載の冷陰極放電管用電極。
【請求項4】
タングステンまたはモリブデン、若しくはこれらに添加物を添加した合金によって形成されてなる、
請求項1ないし3のいずれかに記載の冷陰極放電管用電極。
【請求項5】
ガラス管と前記ガラス管の両端部に配置された電極とを有してなる冷陰極放電管であって、
前記電極は、
前記ガラス管の内径とほぼ同じ外径を有する封止部と、
前記封止部よりも小さい外径を有し前記封止部の管内の側に同心状に一体に設けられた突出電極部と、
前記封止部の管外の側に突出して一体に設けられたリード線接続用の突起部と、を有し、
前記突出電極部の端面に開口する空洞部が設けられ、前記空洞部によって前記突出電極部が筒状に形成されており、
前記ガラス管の端部に前記封止部が挿入され且つ前記ガラス管が前記封止部に融着されてなる、
ことを特徴とする冷陰極放電管。
【請求項6】
前記突起部に、リード線が溶着により接続されてなる、
請求項5記載の冷陰極放電管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−80582(P2007−80582A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264185(P2005−264185)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(591109751)有限会社コーキ・エンジニアリング (9)
【Fターム(参考)】