説明

凍結保存歯組織より幹細胞を単離するための方法

本発明は、多能性幹細胞を組織構造体より抽出し、そして培養することを含む、歯組織より多能性幹細胞を単離するための方法に関する。本発明はまた、本発明方法によって単離された幹細胞、ならびに本発明方法によって作製された骨細胞および神経細胞に関する。本発明はまた、本発明方法によって保存されている細胞を含む幹細胞バンクの製造方法に関する。本発明によると、摘出した未成熟歯の根端側のすぐ付近にある乳頭組織の下に存在し得るパッド様軟組織の細胞を、組織構造体中に凍結保存し、この組織構造体を分解すると、解凍後に幹細胞のみを抽出することができる。これらの結果より、幹細胞/前駆細胞は供給組織を凍結保存した後であっても単離することができ、またこれらの幹細胞/前駆細胞は骨形成刺激に応答することを示す。さらに、凍結保存後の細胞の応答は、凍結保存しなかった細胞の応答と比べて強いものであることがわかった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯組織より多能性幹細胞を単離するための方法に関する。当該方法において当該幹細胞を組織構造体より抽出し、そして培養する。本発明はまた、本発明方法によって単離ならびに作製された、幹細胞ならびに骨細胞および神経細胞に関する。本発明はまた、幹細胞バンクの製造方法に関する。当該方法において幹細胞を本発明方法によって保存する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は、分化していない体細胞である。すなわち、幹細胞は例えば、皮膚細胞または肝臓細胞とは異なり、身体中の一機能に対して未だ特化していない。幹細胞は他の幹細胞の分裂によって形成されたり、および/または分化細胞を起源としていたりし得る。すなわち、幹細胞は非対称に分裂することが可能である。幹細胞は非常に長期に亘って、しばしば生物体の生涯に亘って分裂能を保持している。身体の発生過程における特定のシグナルによって、幹細胞は様々な種類の細胞へと分化し、身体を形成することができる。胚性幹細胞と成体幹細胞とは一般に区別される。
【0003】
胚性幹細胞(ES細胞)は、8細胞期まで発生した胚に由来し、全能性を有するものとされている。発生中の身体の全ての細胞型はこの胚性幹細胞より発生する。胞胚期由来の胚性幹細胞は多能性細胞として知られている。それは、主な組織種の全ての体細胞種が通常、これら胚性幹細胞より分化し得るためである(すなわち、内胚葉(消化管の壁細胞)、中胚葉(筋肉、骨、血液細胞)および外胚葉(皮膚細胞、神経組織))。しかし、倫理的理由および細胞分化に関する分子制御の問題から、ES細胞はこれまでに治療上有効なものとなっていない。
【0004】
一方、成体幹細胞(AS細胞)は胎芽期後に形成される。すなわち、AS細胞は、分化した組織中に蓄積され、分化した組織の特化した細胞を生じる未分化細胞である。ES細胞は別の組織へと割り振られる細胞種にも分化することができる。しかし、骨髄や臍帯などの器官中に見出すことができる成体幹細胞は胚性幹細胞のように制限なく分化することはもはやできない。成体幹細胞は胚性幹細胞と同様の分化能を有さないが、それでも外胚葉段階の分化能を上回る分化能を有する。したがって、成体幹細胞は多能性と言える。例えば、間葉系幹細胞はまた、神経細胞へと分化することがある。その他の場合、神経細胞は、外胚葉組織より発生する。このように、様々な種類の組織に蓄積した後、AS細胞はその親組織の細胞種に対応していない細胞種へと分化することができる。成体幹細胞は各個体、例えば、骨髄より得ることができる。しかし、骨髄の抽出は複雑かつ危険な外科手術である。対照的に、歯組織より幹細胞を得ることは、より簡単な代替法である(例えば、特許文献1には、歯小嚢由来のAS細胞について記載されている)。容易に入手することができる組織に由来するこのような幹細胞は、例えば、内在性細胞による組織置換の可能性を広げる。また、成体幹細胞が移植後に悪性化する傾向は、胚性幹細胞と比較して低い。したがって、革新的な治療方法の開発において、成体幹細胞の重要性は高まっている。
【0005】
凍結保存とは、液体窒素中または液体窒素上、すなわち、-130℃よりも低い温度にて生物材料(例えば、生きた細胞または組織)を凍結し保存することを意味すると理解される。液体窒素の温度は-196℃であるが、窒素は常圧下では、それよりも高い温度で物理的に気体状態となる。上記のような低温にて細胞を凍結することによって、細胞の生物学的に必須な機能は停止し、その結果当該生物材料がほとんど損傷することなく長期間保存することが可能となる。以下のような特有の凍結保存法が用いられる:すなわち、細胞を細胞膜保護培地(抗凍結培地)中に入れ、特有のコンピューター制御の温度プログラムを使用して凍結する。凍結保存はしばしば、in-vitroにて、ならびに精子または受精卵細胞を凍結および保存することによって不妊治療に用いられている。しかし、幹細胞もまた凍結保存によって保存することができる。
【0006】
全歯を凍結保存するための既知方法は、組織中の細胞死および劇的な細胞の損失を生じるために、解凍後の細胞の生存率が非常に低いといった不利点を有する。
【0007】
例えば特許文献2には、歯組織の凍結保存法が開示されており、当該歯組織より幹細胞を、解凍後に単離できることが記載されている。保存される歯の部分組織として歯槽骨膜(= 歯周靱帯)を厳密でない方法、すなわち制御されていない方法で、凍結および解凍する。1%〜20%ジメチルスルホキシド (DMSO)を含有する血清が、凍結保護培地として推奨される。組織を凍結保護培地中に入れ、液体窒素中で急速に凍結する。次に、凍結保存した組織を35〜39℃にて再度解凍する。しかし、この既知方法は組織中の細胞損失が高く、得ることができたわずかな細胞についてもまた、幹細胞コロニー形成率が非常に低い(非特許文献1)。
【0008】
非特許文献2では、歯の髄質(歯髄)由来の単離した幹細胞は、たとえ保存されてから2年後であったとしても、凍結保存によりその幹細胞特性を失うことはなく、骨細胞へと分化し得ることが見出されている。しかし、特許文献2(非特許文献1)に記載されている方法を使用しても、凍結保存した歯の髄質組織より幹細胞は全く単離することができなかった。
【特許文献1】国際公開第03/066840 号
【特許文献2】国際公開第2005/052140号
【非特許文献1】Seoら、J Dent Res. Oct; 84(10): 907-12, (2005)
【非特許文献2】Papaccioら、Journal of cellular physiology Vol:208(2): 319-25, (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、歯組織より幹細胞を単離するための方法であって、多能性成体幹細胞を高収率で確保する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、上記定義した種類の多能性幹細胞を単離するための本発明方法によって達成される。当該方法は、摘出した未成熟歯の根端側のすぐ付近にある乳頭組織の下に存在し得るパッド様軟組織の細胞を、組織構造体中に凍結保存し、当該構造体を分解し、解凍した後に幹細胞のみを抽出することを含む。本発明方法は、外胚葉性間葉幹細胞/前駆細胞を特に容易に単離することができる特定の歯組織(根端部のパッド)に由来する多能性外胚葉性間葉幹細胞/前駆細胞の単離を可能とする。驚くべきことに、このパッド様軟組織を凍結保存した後であっても、幹細胞および/または前駆細胞を結合組織構造体より単離可能であることを見出した。さらに、驚くべきことに、骨形成刺激に対する細胞の反応は、途中に凍結保存の過程を経なかった細胞よりも凍結保存後の細胞のほうが高い。したがって、凍結保存は単離した幹細胞の分化能を刺激するためのものとして、実質的に役立つ。単離された幹細胞の多分化能は本発明方法により、特に凍結保存により明白に刺激(すなわち最適化)される。幹細胞の供給源として選択した組織(例えば、親知らずを摘出する際に得ることができる組織)はまた、それらが保存されている場合、幹細胞を含む(自己の)供給組織を将来的に利用する可能性を広げる。本発明方法は、特定の細胞集団について単離方法が確立されている場合、細胞置換療法の一部として供給組織中の全細胞集団を入手する可能性を特に保持している。本方法は、必要に応じてその後の治療方法のために、長期保存することおよび非常に有効な組織を迅速に入手できることなどの利点を生じる。
【0011】
本発明方法の有利な実施形態において、組織構造体の細胞を凍結保存のために凍結培地中、制御下にて冷却し、その結果細胞内氷晶の形成がおよそ-7〜-12℃、好ましくは-10℃にて生じ始め、そして、氷晶が形成された後、当該細胞を最高でも-80℃までさらに温度を下げて冷却し、液体窒素中または液体窒素上に保存する。凍結を制御することにより、細胞を保護し、それによって、生存可能な幹細胞の収率を高める。本発明の特に有利な実施形態においては、氷晶の形成が20〜25分後、好ましくは25〜30分後、特に好ましくは27〜29分後に開始されるように、細胞を冷却する。細胞内氷晶形成の時点を選択することにより、本発明方法は、個々の細胞種および/または組織種に適合させることができ、さらに、収率に関して最適化することができる。
【0012】
驚くべきことに、本発明方法はまた、種晶を制御しながら使用して、氷晶形成を引き起こすことによりさらに最適化することができる。本実施形態において、凍結保護培地と共に凍結されるべき組織を-10〜-12℃まで冷却し、そして容器に外側より物体を接触させることによって種晶を使用し、凍結保護培地の急激な凍結を誘導することができる。この方法は以下の利点を有する:氷晶形成の時点を制御下で選択することができ、さらに氷晶形成の開始位置を、好ましくは凍結されるべき組織の付近に操作することができる。このようにして、凍結の過程において細胞が曝されるストレスを大幅に低減し、これによって生存している幹細胞の収率がさらに増加することは明らかである。
【0013】
氷晶が形成された後、続いて組織構造体の細胞を永続的に保存するために-90℃〜-160℃、好ましくは-100℃〜-150℃、特に-120℃〜-130℃の温度まで冷却し、そして凍結保存の後、細胞を35〜39℃に加熱して解凍することができる。
【0014】
細胞の生存率に関して、組織構造体の細胞が、複数の過程において凍結培地の希釈によって解凍される場合に、特に有利であることが見出された。凍結培地は例えば、50%、25%、12.5%、6.25%および0%ウシ胎仔血清(FCS)を含有する培地と徐々に置換するのが良い。幹細胞の生存率は、この段階的な解凍によってさらに高めることができる。
【0015】
本発明方法の特に有利な実施形態において、凍結培地は、10 mg/mL血清アルブミン、0.1 Mスクロースおよび1.5 M PrOHを含有する塩溶液(好ましくはPBS)を含む。凍結保護培地の組成は当然に、凍結されるそれぞれの組織に適合させて良く、そのために本発明方法はさらに最適化することができる。
【0016】
本発明方法によって単離される幹細胞の多分化能に関して、パッド様軟組織が骨性の歯槽底(bony alveolar fundus)の出現〜根形成の終了時までの発生段階にある歯茎に埋伏している歯および/またはレチニエルテン歯(retinierten Zahn)の原基より得ることができる場合、特に有利である。このような望ましい多能性幹細胞を単離するために、歯を外科的に摘出した後に、パッド様軟組織と乳頭組織との間の肉眼で見える境界、好ましくは発生中の根の突出部間の想像線の内側に沿って、パッド様軟組織を歯より分離しなければならない。このようにして選択した当該組織により、様々な細胞種(例えば、骨細胞または神経細胞)にその多分化能により分化し得る外胚葉性間葉幹細胞、すなわち前駆細胞を単離することができる。本発明方法により幹細胞を単離するための供給組織を正確に選択することは、多能性幹細胞を高収率で得るための重要な要因である。
【0017】
解凍後、組織構造体は、酵素処理、好ましくはコラゲナーゼ/ディスパーゼを用いて分解することができる。これにより、細胞は、組織構造体より抽出した後に単離することもできる。
【0018】
本発明方法によって単離された細胞は、組織構造体より単離した後に、骨形成および/または神経形成の刺激を与えることができる外胚葉性間葉幹細胞および/または前駆細胞である。
【0019】
本発明はまた、本発明方法によって単離された骨細胞および神経細胞に関する。本発明方法によって単離された幹細胞もまた、本発明の対象である。
【0020】
その多分化能により、本発明の幹細胞は細胞および/または組織置換療法における治療目的に、特に好適である。従って、本発明方法は、供給組織における全細胞集団を得るための選択肢を含む。これにより非常に有効な組織を、必要に応じてその後の治療目的のために、長期保存することおよび迅速に利用できることといった利点を生じる。このために、幹細胞バンクの製造方法を提供する。この方法では、幹細胞を本発明方法によって保存する。当該方法においては、複数の歯のパッド様軟組織を、凍結保存し、必要とされる目的に応じて特定の幹細胞を選択および単離することができるように別個に分類することができる。本発明はまた、この方法によって作製された幹細胞バンクに関する。
【0021】
本発明は図面および実施例に基づいて、以下に詳細に説明されるであろう。
【実施例】
【0022】
図1は、その根端側にパッド様軟組織を伴う摘出した親知らずを示す。これを、凍結培地 (凍結保護培地:培地、10%FCS および10%DMSOの混合物またはPBS、血清アルブミン、スクロースおよびPrOHの混合物)中に、凍結される歯組織部分として入れ、そして所定の凍結パラメーター(冷却速度)下、自動冷凍機 (IceCube)中にて制御された条件下で凍結する。凍結したサンプルは、長期保存のために、-196℃にて(液体窒素上にて)保存する。この組織を37℃にて解凍する。この解凍も非常に重要であり、急速に行うか、または凍結保護培地と通常の培地とを段階的に、ゆっくりと置換する(50%、25%、12.5%、6.25%および0%FCSを含有する凍結培地)ことによって行う。解凍後、この組織を新鮮な組織と同様に、コラゲナーゼ/ディスパーゼを用いて消化する。単離した細胞をDMEM + 10%FCS中37℃にて培養し、パラメーター(生命力、増殖能、表面マーカーの発現および分化能 (骨形成を含む)など)について調べる。
【0023】
生存能力のある歯組織を凍結保存することによる多能性幹細胞を単離するための本発明方法は、凍結される親知らずの組織である根端部のパッド様軟組織、当該組織用の凍結保護培地として好適な2種の溶液、適合した凍結工程、凍結および解凍工程を自動的に実行する適合された装置(IceCube)ならびに解凍後に組織の性質を実質的にチェックするのに用いることができる特性の選択を包含する。
【0024】
図 1のようにヒトより摘出した(つまり、外科的に取り出した)親知らずを、細胞培養実験室において、室温にて輸送培地 (DMEM+ペニシリン+ストレプトマイシン)を充填した容器(トゥースボックス)に入れる。根端部のパッド(パッド様組織)を、歯根間の想像線より下、パッド様軟組織と乳頭組織との間の顕微鏡で見ることができる境界に沿って歯より分離し、そしてPBS (滅菌)を用いて複数回洗浄して、次に外科用メスを用いて柔らかくする。この組織調製物の半分(N2)を凍結培地(DMEM、10%FCSおよび10%DMSOの混合物またはPBS、血清アルブミン、スクロースおよびPrOHの混合物)と混合し、コンピューター制御の凍結ユニットによる制御下で予め冷却し、そして凍結する。本実施形態において、氷晶は、極度に冷却する、すなわち液体窒素を冷却チャンバーに入れることによって、または凍結容器中にて種晶を制御しながら使用することによって、およそ−10℃の温度にて27-29分後に自発的に形成される。後者の場合、種晶は凍結保護培地を唐突に凍結させる。種晶は、凍結する組織を入れた凍結保護培地に、容器の表面と予め冷却した金属を接触させることにより導入する。これによって凍結保護培地が唐突に凍結する。氷晶形成の開始は、試料容器中の潜熱が放出されることによって示される。図2は、本発明方法により組織の凍結を制御している間の温度曲線(冷却速度)を示す。氷晶が形成された後、サンプルをさらに冷却し、温度が−90℃および/または−150℃に到達するように液体窒素上に保存する。保存後、組織を一段階の急速な解凍法かまたは段階的にゆっくりと行う方法(50%FCS、次いで25%、12.5%、6.25%および0%FCSを用いて初めの凍結培地を希釈する)のいずれかにより、37℃まで加熱する。当該組織をコラゲナーゼ/ディスパーゼを用いて2時間、37℃にて消化した後、単離した細胞を複数回洗浄し、そして10% FCS + DMEM (LGを含むT25ボトル)中に培養する。培地は3〜4日毎に置換した。残り半分の組織調製物(F, 上記)は、予め凍結操作を経ることなく直接処理する。
【0025】
次に、上記組織より単離した細胞を様々な基準に従って分析した:
1.コンフルエントに至るまでの細胞層形成の期間
2.7日後の細胞数
3.表面マーカーの解析
4.単離した幹細胞/前駆細胞の骨形成分化能。
【0026】
凍結保存した組織由来の細胞培養においては、1〜3週間後に最初のコロニーが観察される(図3)。プロトコール変異体(PKI:DMSOおよび急速解凍法;PKII:DMSOおよびゆっくりと解凍(希釈)する方法;PKIII:スクロースおよび急速解凍法;PKIV:スクロースおよびゆっくりと解凍(希釈)する方法)間で有意な違いはない。その増殖様式に関して言えば、凍結保存した組織由来の細胞(N2)は未処理の細胞 (F=新鮮)に匹敵し、凍結保存した組織由来の細胞のほうが、新鮮な細胞よりも増殖率が、多少高い。このことはまた、少なくとも凍結保存によって細胞は損傷を受けないことを示している(図4)。単離した細胞の表面マーカーの解析により、凍結保存した組織と未処理の組織との間で発現パターンにわずかな違いがあることを示す(図5)。
【0027】
図6は、骨形成分化刺激後の細胞の骨形成分化能についての棒グラフを示す。石灰化の程度は、カルシウムイオンの凝集を測定することによって調べた。これらの結果より、供給組織を凍結保存した後であっても、幹細胞/前駆細胞を単離することができ、これらの幹細胞/前駆細胞は骨形成刺激に応答することを示す。さらに、驚くべきことに凍結保存後の細胞の応答は、凍結保存していない細胞における応答よりも大きなものであることがわかる。プロトコール変異体IV (PK IV)において、単離した細胞が最も高い骨形成応答を示す。すなわち、ゆっくりと解凍する方法(凍結を防ぐために希釈することによって解凍)と組み合わせてスクロースを含有する凍結保存培地を使用することによって、幹細胞の高い分化能および/または幹細胞の高い収率を得ることができる。
【0028】
参照

【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、根端部の軟組織(根端部のパッド)と共に摘出した親知らずの斜視図を示す。
【図2】図2は、本発明による組織の凍結を制御している間の、温度変化の過程を示すモニターディスプレイを示す。a)自発的な氷晶形成およびb)刺激による氷晶形成。
【図3】図3は、本発明方法により凍結および解凍された線維芽細胞様細胞からなる細胞コロニーの顕微鏡写真を示す。
【図4a】図4aは、異なる様式で処理したサンプルの、増殖様式の比較を示す表を示す。PK I:DMSOおよび急速解凍法;PK II:DMSOおよびゆっくりと解凍(希釈)する方法;PK III:スクロースおよび急速解凍法;PK IV:スクロースおよびゆっくりと解凍(希釈)する方法;F = 新鮮な、凍結保存していない細胞;N2= 凍結保存した細胞。
【図4b】図4bは、異なる様式で処理したサンプルの、増殖様式の比較を示す棒グラフを示す。PK I:DMSOおよび急速解凍法;PK II:DMSOおよびゆっくりと解凍(希釈)する方法;PK III:スクロースおよび急速解凍法;PK IV:スクロースおよびゆっくりと解凍(希釈)する方法;F = 新鮮な、凍結保存していない細胞;N2= 凍結保存した細胞。
【図5】図5は、異なる方法で処理したサンプル(PK I〜PK IV)、ポジティブコントロール:ヒト骨髄幹細胞(hBMSC)のFACS解析の結果を示す。
【図6】図6は、骨形成刺激されてから21日後、および骨形成刺激されていない21日後の本発明の幹細胞/前駆細胞、ネガティブコントロール:線維芽細胞(EU2A)、ポジティブコントロール:骨髄由来のヒト幹細胞(hBMSC)の分化を示す棒グラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯組織より多能性幹細胞を単離するための方法であって、該方法は、該幹細胞を組織構造体より抽出し、次いで培養することを含み、摘出した未成熟歯の根端側のすぐ付近にある乳頭組織の下にあるパッド様軟組織の細胞を該組織構造体中に凍結保存し、そして該組織構造体を分解し、解凍後に該幹細胞のみを抽出することを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
細胞を凍結保存用の凍結培地中にて、細胞内氷晶がおよそ−7〜−12℃、好ましくは−10℃の温度にて形成し始めるように制御しながら冷却し、氷晶が形成された後、該細胞を最高でも−80℃の温度までさらに冷却し、そして液体窒素中または液体窒素上に保存することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
細胞を、氷晶形成が20〜25分後、好ましくは25〜30分後、特に27〜29分後に始まるように冷却することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
種晶を制御しながら使用することによって、氷晶形成を引き起こすことを特徴とする、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
氷晶が形成された後、細胞を、-90℃〜-160℃、好ましくは-100℃〜-150℃、特に-120℃〜-130℃の温度まで冷却することを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
凍結保存した後、細胞を、35〜39℃に加熱することによって解凍することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
細胞を、複数のスッテプにて凍結培地を希釈することによって解凍することを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
凍結培地を、50%、25%、12.5%、6.25%および0%ウシ胎仔血清(FCS)を含有する培地に徐々に置換することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
凍結培地が10 mg/mL血清アルブミン、0.1 Mスクロースおよび1.5 M PrOHを含有する塩溶液、好ましくはPBSを含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
パッド様軟組織を、骨性の歯槽底(bony alveolar fundus)の出現〜根形成の終了時までの発生段階にある歯茎に埋伏している歯および/またはレチニエルテン歯(retinierten Zahn)の原基より抽出することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
歯を外科的に摘出した後、パッド様軟組織をパッド様軟組織と乳頭組織との間の肉眼で見える境界に沿って該歯より分離することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
組織構造体を酵素処理、好ましくはコラゲナーゼ/ディスパーゼによって分解し、および/または細胞を組織構造体より抽出した後に単離することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
細胞が外胚葉性間葉幹細胞および/または前駆細胞であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
細胞を、組織構造体より単離した後に、骨形成および/または神経形成刺激を与えることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法によって単離された骨細胞。
【請求項16】
請求項14記載の方法によって単離された神経細胞。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか1項記載の方法によって単離された幹細胞。
【請求項18】
細胞および/または組織置換療法における治療目的のための、請求項17記載の幹細胞の使用。
【請求項19】
請求項2〜5のいずれか1項記載の方法によって保存された細胞を含む幹細胞バンクの製造方法であって、複数の歯のパッド様軟組織を凍結保存し、必要とされる目的に応じて特定の幹細胞を選択および単離することができるように別々に分類することを含む、上記方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法によって作製された幹細胞バンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−502147(P2009−502147A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523181(P2008−523181)
【出願日】平成18年7月17日(2006.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006995
【国際公開番号】WO2007/014639
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(508028265)
【Fターム(参考)】