凝集体サイズが制御されたヒュームドシリカ及びそれを製造するためのプロセス
本発明は、凝集体サイズを表面積に関連付ける特定の式を満たす凝集体サイズ及び表面積を有する凝集体を含むヒュームドシリカ、並びに液体媒質中に分散された際に特定の粘度、べき法則指数、及び/又は弾性率特徴を示す凝集体を含むヒュームドシリカ提供する。本発明は、シリカ前駆物質を可燃性ガス流と混合し、該流動を燃焼させ、燃焼ガス流及びヒュームドシリカ粒子を生成することによりそのようなヒュームドシリカを調製するプロセスも提供し、該プロセスでは、ドーパントが導入され、燃焼ガス流及びヒュームドシリカ粒子の時間/温度プロファイル又は履歴が、急冷後凝集体成長を可能にするように調整され、及び/又は追加的シリカ前駆物質が、燃焼ガス流に導入される。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ヒュームド金属酸化物、特にヒュームドシリカに関する多数の用途が存在している。それらの用途には、ゴム等のポリマー用の充填材、紙用等のコーティング(即ち、記録媒体)、化粧品、光ファイバー及び石英ガラス製品の製造、断熱材、及び半導体製造における使用を目的とする化学的−機械的研磨組成物等が含まれる。
【0002】
ヒュームドシリカは、一般に、四塩化ケイ素等のクロロシランの水素酸素炎中での気相加水分解により生成される。そのようなプロセスは、一般に発熱性プロセスと称されている。全反応は:
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
である。
【0003】
ヒュームドシリカを生成するための発熱性プロセスでは、オルガノシランも使用されている。オルガノシランの気相加水分解において炭素−支持断片が酸化を受けて、副生物として塩酸と共に二酸化炭素を形成する。
【0004】
このプロセスでは、サブミクロンサイズのシリカの溶融球体が形成される。これらの粒子は衝突し融合して、約0.1〜0.5μmの長さを有する三次元の分岐鎖状凝集体を形成する。冷却が非常に速く起こり、粒子の成長を制限し、ヒュームドシリカが非晶質であることを確実にする。これらの凝集体は、次に0.5〜44μm(約325 USメッシュ)の凝集体を形成する。ヒュームドシリカは高い純度を有し得、多くの場合、全不純物は100ppm(百万分の一)未満である。この高い純度は、ヒュームドシリカ分散物を多くの用途にて有利なものとする。
【0005】
当技術分野では、発熱性プロセスを介してヒュームドシリカを製造する多数の方法が開発されてきた。米国特許第二,990,249号には、ヒュームドシリカの発熱性製造(pyrogenic production)の方法が記載されている。この方法によれば、メタン又は水素、酸素、及び四塩化ケイ素のような揮発性ケイ素化合物等の燃料を含む気体原料を(ここで酸素は、化学量論比又は超化学量論比(hyperstoichiometric proportion)にて存在する)、高さ対直径の比が約2:1以下である短炎を支持するバーナー内に供給する。酸素中の燃料の燃焼により形成された水が四塩化ケイ素と反応して、二酸化ケイ素粒子を形成し、この粒子が合体し凝集してヒュームドシリカを形成する。バーナーからの流出物が冷却された後、ヒュームドシリカが収集される。
【0006】
米国特許第4,108,964号には、ケイ素含有構成成分としてオルガノシランを使用したヒュームドシリカの発熱性製造の方法が記載されている。この方法によれば、メチルトリクロロシランのようなオルガノシランを、該オルガノシランの沸点を超える温度で揮発させる。気化したオルガノシランを、水素又はメタン、及び15〜100%の酸素を含有する酸素含有ガス等の気体燃料と混合して原料を形成する。バーナーにより支持された炎に原料を様々な流速で供給して、ヒュームドシリカを生成する。個々の気体構成成分の体積比は、決定的な重要事項ではないと報告されている。オルガノシランと水−形成ガスとのモル比は、一般に1:0〜1:12の範囲内であると述べられている。
【0007】
従来のプロセスでは、特に比較的狭い凝集体のサイズ及び表面積の範囲内でヒュームドシリカが生成される。従来のプロセスでは、より広い範囲の凝集体のサイズを達成せず、これはそのようなプロセスで生成される凝集体のサイズ及び構造を炎温度が大部分決定するためである。詳細には、シリカ粒子が炎中で形成される際、粒子は初期、半液体の形態を有し、炎温度に応じて所定の程度迄、凝集体へ成長する。しかしながら、放射冷却又は強制冷却によって、凝集体の温度は、粒子がより大きい凝集体へ成長できない温度迄急速に低下し、それにより凝集体は比較的狭いサイズ範囲に制限される。所定の表面積において、可能なより広い範囲の凝集体サイズを有するヒュームドシリカを製造可能なプロセスは、特に、改良されたレオロジー特性(より高い粘度、及び液体媒体中でのより高い分散性等)を含む多数の利点を提供することができる、比較的大きい凝集体サイズを有するヒュームドシリカを製造する際に有用であろう。
【0008】
ヒュームドシリカ凝集体はまた、フラクタル状又は分岐した粒子であるため、固有の構造を有する。凝集体は分岐し、固体の凸形を有さないため、ヒュームド粒子の分野で周知のように、その見掛けの凝集体サイズに関連した体積を包含する。この包含された体積は構造係数(coefficient of structure)として公知の比、即ち、凝集体が包含する体積と、その固体シリカの実際の体積との比で説明することができる。従来のヒュームドシリカのプロセスでは、構造係数は表面積、凝集体サイズ及びフラクタル次元により設定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
凝集体サイズ、表面積及び構造係数等の物理的特徴の異なる組み合わせを有するヒュームドシリカが必要とされている。例えば、凝集体サイズと構造係数とを同時に増大させるプロセスは、凝集体サイズの増大に追従するレオロジー特性及び強化特性における向上を高めるであろう。更に、凝集体サイズとは独立して構造係数を変更することができるプロセスは、増大された分散性を有するヒュームドシリカの製造に有用であり得、現在商業的に入手可能な材料とは異なる性能トレードオフを提供し得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(光子相関分光法(PC、photo correlation spectroscopy)により測定される単位がnmの)凝集体サイズD及び(S. Brunauer, P. H. Emmet, and I. Teller, J. Am. Chemical Society, 60: 309 (1938)の方法(BET)により測定される単位がm2/gの)表面積SAを有し、式
D≧151+(5400/SA)+0.00054(SA−349)2
を満たすヒュームドシリカを提供する。
【0011】
本発明は、100〜300m2/gの表面積を有するヒュームドシリカも提供し、該ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、以下の条件の任意の1つ又は複数を満たす:(a)10s-1の煎断速度で0.25Pa−s以上の粘度、(b)0.1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって0.8以下のべき法則指数(power-law exponent index)、及び(c)0.1〜100rad/sの振動数範囲での16〜100Paの弾性率。
【0012】
本発明は、一次粒子の凝集体を含み、該一次粒子が、少なくとも2つの異なる平均一次粒径を有する一次粒子の集団を表す少なくとも二峰性の粒径分布を有し、最小平均一次粒径が、最大平均一次粒径の0.05〜0.4倍であるヒュームドシリカを更に更に提供する。
【0013】
本発明は、ヒュームドシリカ、特に本発明のヒュームドシリカを生成するためのプロセスを更に提供する。本発明のプロセスでは、シリカ前駆物質を含む供給材料流及び可燃性ガス流が提供される。一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流は、(1)供給材料流を可燃性ガス流と混合して、シリカ前駆物質を有する可燃性ガス流を形成し、その該シリカ前駆物質を有する可燃性ガス流を燃焼させて、ヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流を形成することにより、及び/又は(2)可燃性ガス流を燃焼させて燃焼ガス流を形成し、その後供給材料流を燃焼ガス流と混合して、シリカ前駆物質がそこに浮遊している燃焼ガス流を形成することにより反応器中で形成され、それは、その後第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を形成する。第1の凝集体サイズより大きい第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子は、燃焼ガス流中で、第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子間の接触を可能にさせ、且つ(1)第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を1つ又は複数のドーパントと接触させてその表面を改質するか、(2)第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子の温度−時間プロファイル又は履歴を制御して、急冷後の凝集体成長を可能にするか、(3)第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流に、追加的な供給材料を導入するか、又は(4)先述の項目(1)、(2)、及び(3)のいずれかの組合せを実施すること、により形成される。その後、第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子は、燃焼ガス流から回収される。
【0014】
本発明のプロセスは、大型凝集体ヒュームドシリカを提供し、ヒュームドシリカの構造係数Csを所望のように制御する。より大きな構造係数を有するより大型の凝集体ヒュームドシリカは、同じような表面積の市販シリカと比較して、鉱油中に分散した際に、粘度の増加、分散性の向上、及び弾性率の向上等の、特徴の向上を示す。より小さい構造係数を有する大型凝集体ヒュームドシリカも、特に粒子が好適な作用剤で表面処理される場合、分散性の向上並びに他の性能有益性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】例示的な従来のヒュームドシリカに関する質量平均凝集体サイズ(nm)対表面積(m2/g)のグラフと、標準値と上限に適合する曲線。黒丸、黒三角及び黒菱形記号は従来のヒュームドシリカを表す。黒三角と黒菱形は、各々エボニックデグサ(Evonik Degussa)とワッカー(Wacker)から入手可能なヒュームドシリカを指す。エラーバーはプロセス及び試験の変動性に関する95%信頼区間を表す。線(a)は、従来のヒュームドシリカに関する、式D>151+(5400/SA)+0.00054(SA−349)2により表される凝集体サイズの上限を表す。線(b)は、グラフ中の黒丸に適合する曲線を表し、式D=126+(7046/SA)+0.000235(SA−285)2で表すことができる。
【0016】
【図2】例示的な従来のヒュームドシリカと比較した、例示的な本発明のヒュームドシリカに関する質量平均凝集体サイズ(nm)対表面積(m2/g)のグラフ。黒丸、黒菱形及び黒三角記号は、図1に示した従来のヒュームドシリカを表す。白菱形、白四角形及び白三角記号は、本発明のプロセス、特に本明細書に記載した一種以上のドーパントの使用(白菱形)、クエンチ後の凝集体成長(白四角)、及び原料の下流導入(白三角)を含む実施形態により形成されたヒュームドシリカを表す。エラーバーは、プロセス及び試験の変動性に関する95%信頼区間を表す。線(c)及び(d)は、各々好ましい、及びより好ましい、本発明のヒュームドシリカに関する、所定の表面積における最小平均凝集体サイズを表す。線(e)は、本発明のヒュームドシリカに関する、所定の表面積における推定最大平均凝集体サイズを表す。
【0017】
【図3】例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸及び黒菱形記号)と比較した、例示的な本発明のヒュームドシリカ(白四角及び白三角記号)に関する構造係数(C)対質量平均凝集体サイズ(nm)のグラフ。記号は、図2に示したヒュームドシリカと同一の種類のヒュームドシリカを表す。エラーバーは、試験変動性に関する95%信頼区間を表す。Cs=58における水平点線は、示された凝集体サイズ範囲において従来のヒュームドシリカが達成可能な構造係数の推定上限を表す。
【0018】
【図4】例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸及び菱形記号)と比較した、例示的な本発明のヒュームドシリカ(白四角及び三角記号)に関する構造係数(C)対表面積(m2/g)のグラフ。記号は、図2に示したヒュームドシリカと同一の種類のヒュームドシリカを表す。エラーバーは、試験変動性に関する95%信頼区間を表す。Cs=58における水平点線は、示された凝集体サイズ範囲において従来のヒュームドシリカが達成可能な構造係数の推定上限を表す。
【0019】
【図5】例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸記号)と比較した、例示的な本発明のヒュームドシリカ(白四角及び三角記号)に関する、10s-1における鉱油中での粘度(Pa−s)対表面積(m2/g)のグラフである。記号は、図2に示したヒュームドシリカと同一の種類のヒュームドシリカを表す。エラーバーは、試験の変動性に関する95%信頼区間を表す。水平点線は、示された表面積範囲内における従来のヒュームドシリカの分散物の粘度限界、即ち0.25Pa−sを示す。
【0020】
【図6】例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸記号)と比較した、例示的な本発明のヒュームドシリカ(白四角記号)に関する鉱油中の弾性係数(Pa)対表面積(m2/g)のグラフ。記号は、図2に示したヒュームドシリカと同一の種類のヒュームドシリカを表す。水平点線は、従来のヒュームドシリカの鉱油中で弾性係数を構築する能力の推定限界、即ち16Pa迄を表す。
【0021】
【図7】温度−時間プロファイル制御を含む本発明のプロセスの実施形態における、断熱温度上昇に関連した、例示的な本発明の異なるヒュームドシリカに関する質量平均凝集体サイズ(nm)対表面積(m2/g)のグラフ。図示した点は、例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸記号)と、クエンチ後の凝集体成長を用いて本発明のプロセスに従って生成されたヒュームドシリカ(白四角記号)とに関する凝集体サイズ及び表面積を示す。破線曲線はプロセスデータに適合され、断熱温度上昇の程度として適用される所定の熱量の増大(水平チェックマーク及び線上の数により示される)を鑑みて、予測される最終的な凝集体サイズ及び表面積を表す。
【0022】
【図8】例44に従って製造された本発明の例示的な実施形態のヒュームドシリカのTEM像。
【0023】
【図9】例45に従って製造された本発明の例示的な実施形態のヒュームドシリカの第一の代表的なTEM像。
【0024】
【図10】例45に従って製造された本発明の例示的な実施形態のヒュームドシリカの第二の代表的なTEM像。
【0025】
【図11】例47に従って製造された本発明の例示的な実施形態のヒュームドシリカのTEM像。
【0026】
【図12】例48に従って製造された本発明のヒュームドシリカの例示的な実施形態のTEM像。
【0027】
【図13】例50に従って製造された本発明の例示的な実施形態のヒュームドシリカのTEM像。
【0028】
【図14】例52に従って製造された本発明の例示的な実施形態のヒュームドシリカのTEM像。
【0029】
【図15】例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸記号)と、クエンチ後の凝集体成長を用いる本発明のプロセスに従って製造されたヒュームドシリカ(白四角記号)とを使用して調製した分散物の降伏応力(Pa)対シリカ濃度(重量%)のグラフ。これら両方のヒュームドシリカは、例53及び54に従ってオクタメチルシクロテトラシロキサンで同様に処理された。
【0030】
【図16】例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸記号)と、クエンチ後の凝集体成長を用いる本発明のプロセスに従って製造されたヒュームドシリカ(白四角記号)とを使用して調製した分散物の降伏応力(Pa)対シリカ濃度(重量%)のグラフ。これら両方のヒュームドシリカは、例55及び56に従ってヘキサメチルジシラザンで同様に処理された。
【0031】
【図17】例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸記号)と、クエンチ後の凝集体成長を用いる本発明のプロセスに従って製造されたヒュームドシリカ(白四角記号)とを使用して調製した分散物の降伏応力(Pa)対シリカ濃度(重量%)のグラフ。これら両方のヒュームドシリカは、例57及び58に従ってオクチルトリメトキシシランで同様に処理された。
【0032】
【図18】例59及び61に記載した従来のヒュームドシリカ(白三角記号及び白丸記号)と、例60に記載したクエンチ後の凝集体成長を用いて本発明のプロセスに従って製造されたヒュームドシリカ(白四角記号)との正規化頻度分布対直径(nm)のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカを提供し、該凝集体は、式:
D≧151+(5400/SA)+0.00054(SA−349)2
を満たす凝集体サイズD及び表面積SAを有する。ヒュームドシリカを生成するための従来の商業的プロセスでは、先述の式を満たすヒュームドシリカを生成することができない。更に、ヒュームドシリカを生成する従来の商業的プロセスでは、凝集体サイズ、表面積、又はフラクタル次元とは無関係にCS値を制御することが可能ではないため、所望の構造係数Cs、並びに所望の凝集体サイズD及び所望の表面積SAを有するヒュームドシリカを生成することができない。
【0034】
従って、本発明のヒュームドシリカは、凝集体サイズD、表面積SA、及び係数構造Csの任意の1つ又は複数により特徴付けることができ、それら値の各々は、ヒュームドシリカの質量加重平均値である。
【0035】
本ヒュームドシリカは、120nm以上、例えば、140nm以上、150nm以上、160nm以上、又は180nm以上の凝集体サイズDを有することができる。その代わりに又はそれに加えて、本ヒュームドシリカは、300nm以下、例えば、280nm以下、280nm以下、260nm以下、250nm以下、又は240nm以下の凝集体サイズDを有することができる。従って、本ヒュームドシリカは、上記終点のうちの任意の2つにより限定される凝集体サイズDを有することができる。例えば、本ヒュームドシリカは、120〜300nm、140〜300nm、140〜260nm、又は150〜240nmの凝集体サイズDを有することができる。
【0036】
本ヒュームドシリカは、50m2/g以上、例えば、100m2/g以上、150m2/g以上、又は200m2/g以上の表面積SAを有することができる。その代わりに又はそれに加えて、本ヒュームドシリカは、550m2/g以下、例えば、500m2/g以下、450m2/g以下、400m2/g以下、350m2/g以下、又は300m2/g以下の表面積SAを有することができる。従って、本ヒュームドシリカは、上記終点のうちの任意の2つにより限定される表面積SAを有することができる。例えば、本ヒュームドシリカは、50〜550m2/g、100〜500m2/g、100〜450m2/g、150〜400m2/g、又は200〜300m2/gの表面積SAを有することができる。
【0037】
本ヒュームドシリカは、58以上、例えば、60以上、62以上、64以上、65以上、66以上、68以上、又は70以上の構造係数Csを有することができる。その代わりに又はそれに加えて、本ヒュームドシリカは、90以下、例えば、85以下、80以下、又は75以下の構造係数Csを有することができる。従って、本ヒュームドシリカは、上記終点のうちの任意の2つにより限定される構造係数Csを有することができる。例えば、ヒュームドシリカは、58〜90、58〜80、60〜85、60〜80、又は67〜70の構造係数Csを有することができる。
【0038】
更に、本ヒュームドシリカは、先述の凝集体サイズD、表面積SA、及び構造係数Cs値の組合せを有することができる。例えば、本ヒュームドシリカは、(a)凝集体サイズD≧120nm及び構造係数Cs>58、(b)式120≦D≦300を満たす凝集体サイズD、及び式50<SA<550を満たす表面積SA、及び式58≦Cs≦90を満たす構造係数Cs、又は(c)式120≦D≦300を満たす凝集体サイズD、式100≦SA≦400を満たす表面積SA、及び式58≦CS≦90を満たす構造係数Csを有することができる。
【0039】
図1は、従来のヒュームドシリカの典型的な粒径を示すグラフである。横軸はBET表面積SA(m2/g)を表し、縦軸はPCS凝集体サイズD(nm)を表す。円、ひし形、及び左向三角形の黒抜き記号は、従来の及び/又は市販のヒュームドシリカを表す。曲線(a)は、先述の式により表される従来の市販シリカの凝集体サイズの上限を表す。曲線(b)は、グラフ中の黒抜き円に対する曲線フィッティングを表す。本発明のプロセスは、曲線(a)により示されているような従来のヒュームドシリカ凝集体サイズの上限より大きな、従って式D≧151+(5400/SA)+0.00054(SA−349)2を満たす凝集体サイズDを有するヒュームドシリカの生成を可能にする。
【0040】
当技術分野で周知なように、ヒュームドシリカは、焼成シリカとしても知られており、最小スケールでは一次粒子で構成される。一次粒子は、粒子を構成する原子間の共有結合により形成されており、最も厳しい条件以外では安定している。その次のスケールでは、一次粒子は結合して、一般的に凝集体と呼ばれる二次粒子になる。凝集体粒子は、共有結合により共に結合されている一次粒子から形成される。ヒュームドシリカは、典型的には一次粒子の分岐鎖様構造を有する凝集体の形態で存在する。一次粒子及び凝集一次粒子(つまり、凝集体又は二次粒子)は両方とも、ある平均粒径を有するとして特徴付けることができ、平均粒径は、粒子、つまり一次粒子又は凝集体のいずれかを取り囲む最も小さな球の直径を指す。本明細書で使用される場合、「粒子」という用語は、別様に指定されていない限り、凝集体を指す。その次のスケールでは、凝集体は緩く結合して、アグロマレイトになる。典型的には、アグロマレイトは、力学的エネルギー入力により構成凝集体へと分離することができる。
【0041】
凝集体サイズは、凝集体を包含する最も小さな球の直径である。凝集体サイズD(nm)は、光子相関分光法(PCS)により決定されるヒュームドシリカの質量平均凝集体サイズである。透過電子顕微鏡(TEM)分析が数加重平均凝集体サイズを提供するのに対し、PCS測定は、質量加重平均凝集体サイズを提供する。
【0042】
特に、凝集体サイズD(nm)は、浮遊粒子の有効直径を決定するために、粒子のブラウン運動による散乱光の頻度−強度スペクトルを時間の関数として使用するPCS粒径分析器、特にBrookhaven社製90Plus/BI−MAS(マルチアングル粒径測定オプション)PCS粒径分析器を使用して決定される。使用される技術は、平均散乱レーザー光線強度の変動を相関させることに基づいており、2ナノメートル〜3ミクロンの範囲の平均粒径を決定可能である。試験は全て、製造業者の推薦に従って、2分間の収集時間にわたって90°の角度を使用して実行される。温度は、25℃に設定及び制御される。Duke Scientific社製の200nmポリマーラテックス球標準物質が、検量基準物質として使用される。
【0043】
PCS測定用のヒュームドシリカ試料を、以下のように調製及び評価し、PCS粒径分析器を使用して凝集体サイズを決定する:
(1)ヒュームドシリカのpH10.5水中(脱イオン水を使用し、0.5N NaOHでpHを調整する)1.2重量%分散物を、50Wで7分間連続的に超音波処理することにより準備する。超音波処理器は、電力変換装置及びMosonix社製タップ付チタンホーンプローブを備えたMisonix社製XL2020型超音波処理器、又は類似の超音波処理器であってもよい。
(2)該分散物を超音波処理したら、pHを測定し、0.5N NaOH溶液を使用することによりpHを10.5に再調整する。
(3)使い捨てキュベットに、24mLのろ過したpH10.5水を添加する。この手順には、使い捨て注射器に取り付けた0.20ミクロン注射器フィルターを使用すること。
(4)ステップ2で調整された0.075mLの分散物を、ステップ3で調製したpH10.5ろ過水を含有するキュベットに添加する。
(5)Brookhaven社製PCS装置にキュベットを配置し、6分間平衡化させ、測定された直径を記録させた。
【0044】
表面積SA(m2/g)は、一般的に、BET法と呼ばれる、S. Brunauer, P. H. Emmet, and I. Teller, J. Am. Chemical Society, 60: 309 (1938)の方法により決定される凝集体の平均表面積である。
【0045】
構造係数Csは、好適な液体(例えば、鉱油)中で種々の体積分率(例えば、0〜0.02の範囲)のヒュームドシリカ分散物の相対粘度を測定し、実験データをGuth−Goldの式(Guth et al, Phys. Rev., 53: 322 (1938))にフィッティングさせることにより計算することができる。「鉱油」は、アルカン(典型的には、15〜40個の炭素)の混合物を指し、ガソリンを生産するための石油蒸留における副産物である。鉱油は、優先的な様式でヒュームドシリカと相互作用しないため、ヒュームドシリカの粘度、べき法則指数、及び弾性率を測定するための液体媒質として特に好適である。構造係数を計算するための詳細な説明は以下の通りである:
(a)ヒュームドシリカの分散物(バッチサイズ=30g)を、(i)鉱油中で適切な質量のシリカ(0〜5重量%の範囲)を混合し、(ii)二重非対称遠心機型ミキサー(dual asymmetric centrifuge-type mixer)(例えば、Flacktek Inc.社により製造されているDAC150FVZ)で10分間混合し、(iii)レオメーター(TA Instruments社により製造されているAR2000EX)で、コーンプレート型(cone and plate)の形状を使用して(1度、40mm)、5000s-1で2時間剪断することにより調製する。レオロジー実験中の温度は、25℃に制御及び維持される。
(b)体積分率φを、下記の式により計算する:
【数1】
(c)分散物の粘度(η分散物)は、(a)に記述されている手順に従った後で取得される、10s-1の煎断速度で測定された値である。
【0046】
ヒュームドシリカ分散物の構造因子Cs、体積分率φ、粘度(η分散物)、及び鉱油の粘度(η鉱油)は、以下の式を満たす:
(η分散物/η鉱油)=1+2.5Csφ+14.1Cs2φ2
この式は、E. Guth and O. Gold in Phys. Rev., 53: 322 (1938)により記述されている。より大きな値のCsは、所与の表面積において、より効果的な1単位質量当たりの容積及び従ってより開放的な構造を示す。ヒュームドシリカの構造係数Csは、ヒュームドシリカが液体中に占める実際の物理的な容積に対する「見掛け容積」の比率を反映する。ヒュームドシリカ粒子は、分岐した開放的な構造を有しているため、球体等の単純な凸面形状である場合より、はるかに多い液体容積(固体の1単位質量当たり)を包含又は相互作用する。高剪断レオロジー試験では、この「見掛け容積」は、ヒュームドシリカ粒子が液体の粘度を増加させる度合いにより測定される。この容積は、典型的には、個々のヒュームドシリカ粒子の実際の物理的容積の4〜7倍である。
【0047】
図2は、従来のヒュームドシリカと比較した、本発明のヒュームドシリカの凝集体サイズを示すグラフである。黒抜きの円形、ひし形、及び三角形の記号は、図1に示されている従来の及び/又は市販のヒュームドシリカを表す。白抜きひし形記号は、本明細書に記述されているようなドーパント添加プロセスにより製作された本発明のヒュームドシリカを表す。白抜き正方形記号は、本明細書に記述される急冷後凝集体成長を使用する本発明のプロセスにより製作された本発明のヒュームドシリカを表す。白抜き三角形記号は、本明細書に記述される追加的供給材料の下流導入により製作された本発明のヒュームドシリカを表す。図1及び2のエラーバーは、存在する場合、プロセス及び試験変動性の95%信頼区間を表す。
【0048】
本発明のヒュームドシリカは、好ましくは、所与の表面積において、図2の曲線(c)により示されている凝集体サイズより大きな凝集体サイズDを有する。言い換えれば、本発明のヒュームドシリカは、好ましくは、以下の一組の式(1)を満たす:
D≧291−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
D≧222−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
D≧173−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
D≧115+0.09(SA)、ここで425<SA≦550。
【0049】
より好ましくは、本発明のヒュームドシリカは、所与の表面積において、図2の曲線(d)により示されている凝集体サイズより大きな凝集体サイズDを有する。言い換えれば、本発明のヒュームドシリカは、好ましくは、以下の一組の式(2)を満たす:
D≧306−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
D≧237−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
D≧188−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
D≧130+0.09(SA)、ここで425<SA≦550。
【0050】
また、本発明のヒュームドシリカは、所与の表面積において、以下の一組の式(3)により表される、上限より小さな凝集体サイズDを有することができる:
874−1.75(SA)≧D、ここで50≦SA≦200;
667−0.71(SA)≧D、ここで200<SA≦255;
518−0.12(SA)≧D、ここで255<SA≦425;及び
346+0.28(SA)≧D、ここで425<SA≦550。
【0051】
例えば、本発明のヒュームドシリカは、所与の表面積において、図2の曲線(e)により示されている凝集体サイズより小さな凝集体サイズDを有することができる。言い換えれば、本発明のヒュームドシリカは、以下の一組の式(4)を満たすことができる:
391−0.58(SA)≧D、ここで50≦SA≦200;
322−0.24(SA)≧D、ここで200<SA≦255;
273−0.04(SA)≧D、ここで255<SA≦425;及び
215+0.09(SA)≧D、ここで425<SA≦550。
【0052】
その代わりに又はそれに加えて、本発明のヒュームドシリカは、(a)式(1)又は(2)の組及び(b)式(3)又は(4)の組の組合せを満たすことができる。
【0053】
例えば、本発明のヒュームドシリカは、以下のように式(1)及び(3)の組を満たすことができる:
874−1.75(SA)≧D≧291−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
667−0.71(SA)≧D≧222−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
518−0.12(SA)≧D≧173−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
346+0.28(SA)≧D≧115+0.09(SA)、ここで425<SA≦550。
【0054】
本発明のヒュームドシリカは、以下のように式(2)及び(3)の組を満たすことができる:
874−1.75(SA)≧D≧306−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
667−0.71(SA)≧D≧237−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
518−0.12(SA)≧D≧188−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
346+0.28(SA)≧D≧130+0.09(SA)、ここで425<SA≦550。
【0055】
本発明のヒュームドシリカは、以下のように式(1)及び(4)の組を満たすことができる:
874−1.75(SA)≧D≧291−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
667−0.71(SA)≧D≧222−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
518−0.12(SA)≧D≧173−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
346+0.28(SA)≧D≧115+0.09(SA)、ここで425<SA≦550。
【0056】
本発明のヒュームドシリカは、以下のように式(2)及び(4)の組を満たすことができる:
874−1.75(SA)≧D≧306−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
667−0.71(SA)≧D≧237−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
518−0.12(SA)≧D≧188−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
346+0.28(SA)≧D≧130+0.09(SA)、ここで425<SA≦550。
【0057】
図2のグラフから明白なように、本発明のヒュームドシリカ(白抜き記号)は、同じ表面積の従来のヒュームドシリカより著しく大きな凝集体サイズを有する。
【0058】
図3及び図4は、一組の凝集体サイズ及び表面積の範囲内の本発明のヒュームドシリカ及び市販のヒュームドシリカの構造係数Csをそれぞれ示す。図2のように、図3及び図4の黒抜き円及び黒抜きひし形は、本発明のヒュームドシリカ以外のヒュームドシリカを表し、白抜き正方形及び三角形は、本発明のヒュームドシリカを表す。Cs=58にある水平な点線は、それぞれ図3及び図4に示されている凝集体サイズ範囲及び表面積範囲にある従来のヒュームドシリカで達成可能な構造係数の推定上限を表す。本発明は、従来のヒュームドシリカと比較して、所与の凝集体サイズ又は表面積についてより高い構造係数Csを有するヒュームドシリカを提供することができる。本発明は、同じ表面積の市販のヒュームドシリカより著しく大きな凝集体サイズを有するが、同じ表面積の市販のヒュームドシリカのCs値とほぼ等しいCs値を有するヒュームドシリカを提供することもできる。
【0059】
ヒュームドシリカの所与の凝集体サイズ又は表面積についての特定の構造係数Csは、本明細書に記述されている本発明のプロセスにより、特に1つ又は複数のドーパントの使用を伴う実施形態、急冷後凝集体成長を伴う実施形態、又は供給材料の下流導入に伴う実施形態(それらの全ては本明細書に記述されている)等の本発明のプロセスの適切な実施形態を選択することにより、制御することができる。
【0060】
所与の表面積において、従来のヒュームドシリカよりも凝集体サイズが増加したヒュームドシリカは、レオロジー応用(例えば、垂れ耐性(sag resistance)、増粘性、ずれ揺変等)及び補強応用(例えば、シリコンエラストマー補強、硬度、引張強さ、モジュラス等)の両方に多くの性能有益性を提供する。例えば、凝集体サイズが増加したヒュームドシリカは、1単位質量当たりのより大きな液体増粘性を提供し、より鋭く、向上されたずれ揺変を達成することができる。また、凝集体サイズが増加したヒュームドシリカは、同じ表面積を有するより小さな凝集体サイズのヒュームドシリカより速く分散し、それにより非常に多くの応用に好適な高表面積シリカを製作する。更に、大型凝集体ヒュームドシリカは、従来のヒュームドシリカより良好なエラストマー補強を提供することができる。最後に、より大きな凝集体サイズのヒュームドシリカは、幾つかの液体中では、物理的老化及びヒステリシスにより良好な抵抗性を示すことができる。
【0061】
それに加えて又はその代わりに、本発明のヒュームドシリカは、ヒュームドシリカの分散物の特徴に関して特徴付けることができる。この点で、本発明は、一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカを提供し、該ヒュームドシリカは、100〜300m2/gの表面積を有し、該ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、(a)10s-1の煎断速度で0.25Pa−s以上の粘度、(b)0.1s-1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって0.8以下のべき法則指数、及び(c)0.1rad/s〜100rad/sの振動数範囲で16〜100Paの弾性率のうちの少なくとも1つを示す。粘度、べき法則指数、及び弾性率を決定するための3重量%分散物は、以下の段落に記述されているように調製される。
【0062】
本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、10s-1の煎断速度で、0.25Pa−s以上、例えば、0.26Pa−s以上、0.27Pa−s以上、0.28Pa−s以上、0.29Pa−s以上、0.30Pa−s以上、0.31Pa−s以上、又は0.32Pa−s以上の粘度を示すことができる。その代わりに又はそれに加えて、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、10s-1の煎断速度で、0.50Pa−s以下、例えば、0.45Pa−s以下、0.40Pa−s以下、0.38Pa−s以下、0.36Pa−s以下、又は0.35Pa−s以下の粘度を示すことができる。従って、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、上記終点の任意の2つにより限定される範囲の、10s-1の煎断速度における粘度を示すことができる。例えば、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、10s-1の煎断速度で、0.25〜0.50Pa−s、0.26〜0.45Pa−s、0.26〜0.40Pa−s、0.27〜0.40Pa−s、又は0.28〜0.38Pa−sの粘度を示すことができる。
【0063】
本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、0.1s-1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって0.8以下、例えば、0.7以下、0.6以下、0.5以下、又は0.4以下のべき法則指数を示すことができる。その代わりに又はそれに加えて、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、0.1s-1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって0.1以上、例えば、0.15以上、0.2以上、0.25以上、又は0.3以上のべき法則指数を示すことができる。従って、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、上記終点の任意の2つにより限定される範囲の、10s-1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたる、べき法則指数を示すことができる。例えば、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、上記終点の任意の2つにより限定される範囲の、10s-1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって、0.1〜0.8、0.1〜0.7、0.2〜0.6、又は0.1〜0.5のべき法則指数を示すことができる。
【0064】
本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、0.1rad/s〜100rad/sの振動数範囲で、16Pa以上及び典型的には100Pa以下の弾性率を示すことができる。本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、0.1rad/s〜100rad/sの振動数範囲で、18Pa以上、20Pa以上、22Pa以上、24Pa以上、25Pa以上、26Pa以上、28Pa以上、30Pa以上、32Pa以上、34Pa以上、又は35Pa以上の弾性率を示すことができる。その代わりに又はそれに加えて、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、0.1rad/s〜100rad/sの振動数範囲で、90Pa以下、85Pa以下、80Pa以下、75Pa以下、70Pa以下、65Pa以下、又は60Pa以下の弾性率を示すことができる。従って、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、上記終点の任意の2つにより限定される範囲の弾性率を示すことができる。例えば、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、0.1rad/s〜100rad/sの振動数範囲で、20〜100Pa、20〜90Pa、20〜80Pa、25〜100Pa、25〜80Pa、又は30〜100Paの弾性率を示すことができる。
【0065】
図5は、本発明のヒュームドシリカ及び従来のヒュームドシリカの分散物間の粘度の比較を例示する。白抜き正方形は、温度−時間プロファイル制御を使用する本発明のプロセスにより生成された本発明のヒュームドシリカを表し、白抜き三角形は、供給材料の下流導入を使用する本発明のプロセスにより生成された本発明のヒュームドシリカを表す。黒抜き円は、従来のヒュームドシリカを表す。図5の点は全て、10s-1の煎断速度でコーンプレート型レオメーターを用いて粘度が測定されたシリカの鉱油中3重量%分散物を表す。図5の水平点線は、表示されている表面積範囲、つまり0.25Pa−sの従来のヒュームドシリカ分散物の粘度限界を例示する。従来のヒュームドシリカ(黒抜き円により表されている)と比較して、急冷後凝集体成長(白抜き正方形により表されている)を使用する本発明のプロセスにより生成された本発明のヒュームドシリカは、分散状態でより大きな凝集体サイズ及びより高い粘性を示し、それにより液体中でより大きな増粘性を達成する。対照的に、供給材料の下流導入を伴う本発明のプロセスにより生成された本発明のヒュームドシリカの分散物(白抜き三角形により表されている)は、例示されている表面積範囲にある従来のヒュームドシリカの予測値と一致する液体中の粘度を示す。従って、供給材料の下流導入を伴う本発明のプロセスは、その結果生じた分散物の粘度を著しくは増加させずに、より大きな凝集体サイズを有するヒュームドシリカを生成するのに非常に有用である。
【0066】
図6は、より大きな凝集体サイズを有する本発明のヒュームドシリカが、いかにして同じ表面積の従来のヒュームドシリカより大きな弾性率を液体(この場合、鉱油)中で提供することができるのか示す。水平点線は、鉱油中の弾性率を増加させる従来のヒュームドシリカの能力の推定限界を表しており、つまり最大16Paである。図5のように、白抜き正方形は、急冷後凝集体成長を使用する本発明のプロセスにより生成された本発明のヒュームドシリカを表し、黒抜き円は、従来のヒュームドシリカを表す。
【0067】
本ヒュームドシリカの3重量%分散物の粘度は、以下のように測定される。 ヒュームドシリカの分散物(バッチサイズ=30g)を、(i)鉱油中で適切な質量のシリカを混合し、(ii)二重非対称遠心機型ミキサー(例えば、DAC150FVZ、Flacktek社製)で10分間混合し、(iii)レオメーター(AR2000EX、TA Instruments社製)を用い、コーンプレート型の形状を使用して(1度、40mm)、5000s-1で2時間剪断することにより調製する。レオロジー実験中の温度は、25℃に制御及び維持される。この分散物の粘度(ηdispersion)は、剪断ステップ(iii)の後で10s-1の煎断速度で測定される値である。
【0068】
本ヒュームドシリカの3重量%分散物のべき法則指数は、以下のように測定する:ヒュームドシリカの分散物(バッチサイズ=30g)を、(i)鉱油中で適切な質量のシリカを混合し、(ii)二重非対称遠心機型ミキサー(例えば、DAC150FVZ、Flacktek社製)で10分間混合し、(iii)レオメーター(AR2000EX、TA Instruments社製)を用い、コーンプレート型の形状を使用して(1度、40mm)、5000s-1で2時間剪断することにより調製する。レオロジー実験中の温度は、25℃に制御及び維持される。べき法則指数は、5000s-1〜0.1s-1で剪断し、データをHerschel−Bulkleyモデルにフィッティングした後に得られる定常状態流動曲線から決定する。Herschel−Bulkleyモデルは、Macosko, C, Rheology: Principles, Measurements and Applications, VCH, New York, 1994に記述されており、固体のように挙動する物質を特徴付けるために使用されている。
【0069】
本ヒュームドシリカの3重量%分散物の弾性率は、以下のように測定される。ヒュームドシリカの分散物(バッチサイズ=30g)を、(i)鉱油中で適切な質量のシリカを混合し、(ii)二重非対称遠心機型ミキサー(例えば、DAC150FVZ、Flacktek社製)で10分間混合し、(iii)レオメーター(AR2000EX、TA Instruments社製)を用い、コーンプレート型の形状を使用して(1度、40mm)、5000s-1で2時間剪断することにより調製する。レオロジー実験中の温度は、25℃に制御及び維持される。弾性率は、動的振動剪断実験(dynamic oscillatory shear experiment)で決定される。典型的には、動的振動数掃引(dynamic frequency sweep)を、0.5%未満のひずみで0.1〜100rad/sで実行する(線形粘弾性の条件内、つまり、ストレス及びひずみが直線的に比例する)。弾性率は、10rad/sで得られる値である。
【0070】
本発明のヒュームドシリカは、典型的には組成物の形態であり、それは任意の好適な形態、例えば粉末又は分散物(水中等)であってもよく、任意の好適な数のヒュームドシリカ粒子、例えば1000個以上のヒュームドシリカ粒子、2000個以上、5000個以上、1×104個以上、1×105個以上、若しくは1×106個以上のヒュームドシリカ粒子、又は任意の好適な量のヒュームドシリカ粒子、例えば1g以上、100g以上、1kg以上、10kg以上、100kg以上、若しくは1000kg以上を有していてもよい。
【0071】
本明細書に記述されているヒュームドシリカは、本明細書に記述されているプロセスにより生成することができる。本発明は、そのようなヒュームドシリカを調製するプロセスを提供する。特に、本発明のプロセスは、以下の工程を含む:(a)シリカ前駆物質を含む供給材料流を準備する工程、(b)可燃性ガス流を準備する工程、(c)一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流を反応器中で形成する工程であって、該凝集体が第1の凝集体サイズであり、前記形成する工程が(c1)供給材料流を可燃性ガス流と混合して、シリカ前駆物質を有する可燃性ガス流を形成し、その後シリカ前駆物質を有する可燃性ガス流を燃焼させて、第1の粒径を有するヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流を形成することによるか、(c2)可燃性ガス流を燃焼させて燃焼ガス流を形成し、その後供給材料流を燃焼ガス流と混合して、シリカ前駆物質がそこに浮遊している燃焼ガス流を形成し、それがその後第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を形成することによるか、又は(c3)先述の項目(c1)及び(c2)の組合せを実施することによって行われる、工程、(d)燃焼ガス流中で、第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子間の接触を可能にし、(d1)第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を1つ又は複数のドーパントと接触させて、その表面を修飾するか、(d2)第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子の温度−時間プロファイル又は履歴を制御して、急冷後凝集体成長を可能にするか、(d3)第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流に追加的な供給材料を導入するか、又は(d4)先述の項目(d1)、(d2)、(d3)のいずれかの組合せを実施するかのいずれか行い、それにより第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流を形成し、第2の凝集体サイズが第1の凝集体サイズより大きいこと、及び(e)第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を燃焼ガス流から回収すること。
【0072】
シリカ前駆物質を含む供給材料流は、任意の好適な様式で形成することができる。シリカ前駆物質は、任意の好適なシリカ前駆物質又はシリカ前駆物質の組合せであってもよい。例えば、シリカ前駆物質は、本発明のプロセスの条件下でシリカに変換されるハロゲン化ケイ素であってもよい。好適なシリカ前駆物質には、これらに限定されないが、クロロシラン、アルキルクロロシラン、シロキサン、又は他の置換シランが含まれる。
【0073】
可燃性ガス流は、任意の好適な様式で形成することができる。可燃性ガスは、任意の好適な可燃性ガス又は可燃ガスの組合せであってもよい。可燃性ガスは、典型的には燃料及び酸化剤を含んでいる。燃料は、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、及びメタン(CH4)等の任意の好適な燃料であってもよい。燃料は、好ましくは水素であるか、又は軽質炭化水素等の高含量の水素含有成分を有する。好適な炭化水素には、これらに限定されないが、天然ガス、メタン、アセチレン、アルコール、灯油、及びそれらの混合物が含まれる。本明細書で使用される場合、「天然ガス」という用語は、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(CsH8)、ブタン(C4H10)、及び窒素の混合物を指す。幾つかの形態では、天然ガスは、比較的少量のヘリウムを更に含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、「灯油」という用語は、石油の分留中に得られる石油炭化水素の混合物を指す。酸化剤は、空気及び/又は酸素等の、任意の好適な酸化剤であってもよい。
【0074】
随意に、希釈剤を、シリカ前駆物質、燃料、及び/又は酸化剤に混合することができる。希釈剤は、典型的には、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の1つ又は複数の実質的に非酸化性又は不活性ガスを含む。
【0075】
可燃性ガス流は、典型的には反応器等の好適な装置中で燃焼される。反応器は任意の好適な構造であってよい。例えば、制御された急冷システムを随意に備えている任意の加熱、冷却、又は耐火炉を使用することができる。可燃性ガスの燃焼は、その結果として火炎及び火炎の下流に流れる燃焼ガス流の形成をもたらす。可燃性ガス流は、望ましくは、その結果として1000℃〜2200℃、好ましくは1400℃〜1900℃の断熱温度を有する火炎をもたらす。参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0156773A1号明細書では、一般的に、ヒュームドシリカを生成するプロセス及び装置が記述されている。
【0076】
シリカ前駆物質を含む供給材料流は、可燃性ガス流、燃焼ガス流、又は可燃性ガス流及び燃焼ガス流の両方と混合される。シリカ前駆物質は、可燃性ガス流及び/又は燃焼ガス流中の蒸気又は微細液滴(例えば、エアロゾル)のいずれかの形態であり、最終的には可燃性ガスの燃焼から生じる高温にさらされ、それによりシリカ前駆物質を、燃焼ガス流に浮遊しているヒュームドシリカ粒子に変換し、該ヒュームドシリカ粒子は、一次粒子の凝集体を含み、該凝集体は第1の粒径である。
【0077】
本発明のプロセスは、燃焼ガス流中で、第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子間の接触を可能にし、(1)ヒュームドシリカ粒子を1つ又は複数のドーパントと接触させて、その表面を修飾すること、(2)例えば、追加的な可燃性ガスを、ヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流に導入することにより、反応器内のヒュームドシリカ粒子の温度−時間プロファイル又は履歴を改変して、急冷後凝集体成長をもたらすこと、(3)追加的な供給材料を、ヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流に導入すること、又は(4)先述の項目(1)、(2)、及び(3)のいずれかの組合せのいずれかを提供する。このようにして、第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流が形成され、第2の凝集体サイズは第1の凝集体サイズより大きい。
【0078】
その結果生じるヒュームドシリカ粒子は、任意の好適な様式で燃焼ガス流から回収される。典型的には、第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子は、例えば空気又は他のガスで急冷することにより冷却される。
【0079】
その結果生じるヒュームドシリカ粒子は、望ましくは本明細書に記述されている本発明のヒュームドシリカの実施形態1つ又は複数を表す。言い換えれば、その結果生じるヒュームドシリカは、本明細書に記述されているヒュームドシリカの特徴の1つ又は複数を有する。例えば、本ヒュームドシリカは、式:D≧151+(5400/SA)+0.00054(SA−349)2を満たす凝集体サイズD(PCSにより測定され、単位はnm)及び表面積SA(BETにより測定され、単位はm2/g)を有する。その代わりに又はそれに加えて、本ヒュームドシリカは、100〜300m2/gの表面積を有し、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、(a)10s-1の煎断速度で0.25Pa−s以上の粘度、(b)0.1s-1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって0.8以下のべき法則指数、及び(c)0.1rad/s〜100rad/sの振動数範囲で16〜100Paの弾性率のうちの少なくとも1つを示す。
【0080】
第1の実施形態では、ヒュームドシリカの一次粒子及び/又は凝集体を、1つ又は複数のドーパントと接触させて、その表面を改質する。第2の実施形態では、本ヒュームドシリカ粒子の温度−時間プロファイル又は履歴は、本ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物が部分的に急冷されるが、その後本ヒュームドシリカ粒子が凝集体サイズを増加させ続けることができる温度にされるか又は維持されるように制御される。急冷後の温度は、火炎の下流の好適な地点に追加的な可燃性ガスを導入することによって等の、様々な方法で達成及び/又は維持することができる。第3の実施形態では、追加的供給材料は、火炎の下流の好適な地点に導入される。本発明は、先述の実施形態のいずれかの組合せ、例えば、(a)ドーパント及び急冷後凝集体成長の両方の使用、(b)ドーパント及び供給材料の下流導入の両方の使用、(c)急冷後凝集体成長及び供給材料の下流導入の使用、並びに(d)急冷後凝集体成長及び供給材料の下流導入と共にドーパントを使用することも企図する。
【0081】
第1の実施形態のプロセスでは、ドーパントは、火炎に又は火炎の下流に導入される。ドーパントは、任意の好適な化合物、典型的には、IA族元素、IIA族元素、IVB族元素、IIIA族元素、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの元素の化合物であってもよい。例えば、ドーパントは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マンガン、カルシウム、アルミニウム、ホウ素、又はチタン含有化合物,例えばナトリウム含有化合物又はチタン含有化合物を含んでいてもよく、から本質的なっていてもよく、又はからなっていてもよい。いかなる特定の理論に束縛されることは望まないが、ドーパントは、既存粒子の表面を流動化させ、それにより表面の局所的融解を引き起こし、凝集体が互いに融合することを可能にし、及び/又は凝集体間の融合及びより大きな凝集体の形成を別様に促進する。
【0082】
ドーパントは、主火炎(例えば、初期粒子生成火炎)に対して1つ又は複数の好適な位置で任意の好適な手段で導入することができる。従って、ドーパントは、任意の好適な地点で燃焼ガス流動中に浮遊している一次粒子及び凝集体を接触させることができる。例えば、ドーパントは、供給材料流、可燃性ガス流、供給材料及び可燃性ガス流の混合物、可燃性ガスの燃焼から生じる火炎、燃焼ガス流、及び/又は初期火炎の下流位置に導入(例えば、注入又はそうでなければ供給)することができ、その位置を調整して、その結果生じるヒュームドシリカ粒子の凝集体サイズに影響を与えることができる。反応器が典型的な直径dreactorを有する場合、ドーパントの導入は、典型的には、小さな(例えば、10dreactor未満の)火炎の場合、主火炎の下流1dreactor〜10dreactorであるが、その位置は、装置の規模、ドーパントの性質、及び火炎のサイズ等の種々の要因に応じて適切に調整される。流動反応器は、円筒状か否かに関わらず、水力直径(hydraulic diameter)等の特徴的な横寸法を有することができ、この寸法は、下流のドーパント導入位置を計る際にdreactorの代わりに用いることができる。ドーパントは、同軸性に、横方向に、又は接線方向で反応器へと導入することができる。可燃性ガス流又は燃焼ガス流に供給されるドーパントの量は、典型的には、ヒュームドシリカの重量に基づいて1ppm〜100,000ppmである。
【0083】
第2の実施形態では、従来のプロセスと比較して、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物の温度−時間プロファイル又は履歴を所望のように制御及び改変して、急冷後凝集体成長を可能にする。反応器中の粒子の温度−時間プロファイル又は履歴は、ヒュームドシリカ凝集体を互いに融合させるのに十分な高温に維持するように改変され、それにより従来のプロセスで生成されるより大きな凝集体を生成する。これは、従来のプロセスとは対照的であり、ヒュームドシリカ及び燃焼ガス混合物は火炎領域を出て、その後、当技術分野で周知である放射、対流、及びより低温ガスとの混合の組合せにより任意の温度に冷却することができる。
【0084】
具体的には、本発明のプロセスの第2の実施形態では、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物を、好ましくはヒュームドシリカの形成のおよそ100ミリ秒以内に、好ましくは1700℃より低い温度へとまず急冷する。その後、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物の温度は、温度上昇/維持ステップにおいて、より小さなシリカ凝集体が互いに融合してより大きな凝集体になることを可能にするのに十分に高い好適な温度に上昇又は維持される。ヒュームドシリカが純粋である(つまり、他の元素でドープされていない)場合、より小さなシリカ凝集体が互いに融合してより大きな凝集体になることを可能にするのに十分に高い温度であるこの温度、つまり急冷後凝集体成長を促進する温度は、1000℃より高く、例えば1350℃より高いが、1700℃より低く、最長2秒間維持することができる。ヒュームドシリカが他の元素でドープされている場合、急冷後凝集体成長を促進する温度は、ドーパント(複数可)の性質及び程度に応じて異なるだろう。この温度上昇/維持ステップの後、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物は、融合プロセスを停止させるために、望ましくは2秒以内に1000℃未満に冷却される。最後に、必要に応じて、当技術分野で一般に実施されているように、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物は更に冷却されて、燃焼ガス流からのヒュームドシリカ粒子の分離を可能にする。
【0085】
急冷後凝集体成長を促進する温度及び/又は温度持続時間は、所望であるより多くの表面積を焼結させて失わせないように調整される。追加的な熱を加えることにより、ヒュームドシリカの表面積がある程度焼結されて失われるが、物質があまりに長い間高温で保持される場合(持続期間は温度に依存する)、最終産物は表面積が過度に低減され、その凝集体サイズは、図1に示されているような従来のヒュームドシリカの集団の凝集体サイズ内に留まる。急冷後凝集体成長に最適な時間及び温度は、温度でのシリカ又はシリカ−ドーパント系の焼結の変動速度に依存する。いかなる特定の理論により束縛されることは望まないが、急冷後凝集体成長のための温度上昇/維持ステップで使用される温度は、粒子の衝突速度よりも急速に凝集させることなく粒子を粘稠状態に維持するためにかろうじて十分な程度であるべきだと考えられている。
【0086】
急冷後凝集体成長から生じる凝集体サイズの増加は、任意の好適な量であってもよい。例えば、凝集体サイズ増加は、約5%以上、約10%以上、約15%以上、又は約20%以上であってもよい。その代わりに又はそれに加えて、図1の曲線(b)を使用して決定されるのと同じ表面積の従来のヒュームドシリカの予測値に対する増加パーセントとしての凝集体サイズの増加は、約5%以上、約10%以上、約15%以上、又は約20%以上であってもよい。
【0087】
急冷後凝集体成長のための温度上昇又は維持は、(1)燃焼ガス/ヒュームドシリカ混合物流の温度を所望の期間維持するために、耐火断熱材を反応器に使用すること、(2)反応器、例えば反応器の壁面を能動的に加熱すること、(3)追加的可燃性ガスを導入すること、及び(4)冷却気体又は液体を導入することのうちの少なくとも1つにより達成することができる。
【0088】
追加的な可燃性ガスが、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物の温度を上昇又は維持するために使用される場合、追加的可燃性ガスは、任意の好適な地点又は複数の地点で任意の好適な様式で、燃焼ガス及びヒュームドシリカ流に供給することができる。追加的な可燃性ガスが点火され燃焼されると、燃焼ガス流中に浮遊しているヒュームドシリカの凝集体の温度が上昇し、それにより燃焼ガス流中で互いに接触する際に凝集体の融合が促進される。追加的可燃性ガスの導入位置及び温度は、その結果生じるヒュームドシリカ粒子の所望の凝集体サイズ及び最終表面積に応じて調整することができる。
【0089】
可燃性ガスの導入が、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物内で急冷後凝集体の制御を提供するために使用される主要な又は唯一の方法である場合、最も重要なプロセス変数は、(a)燃焼ガス及びヒュームドシリカの初期混合物が、追加的可燃性ガスの導入前に冷却される温度、(b)追加的可燃性ガスの導入により引き起こされる断熱温度上昇、(c)当技術分野で周知の様式で熱力学データから計算される初期バーナーの断熱温度、(d)使用される燃料のタイプ、及び(e)幾つかの状況では、可燃性ガス導入後の粒子の推定温度である。
【0090】
追加的可燃性ガスの導入が、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物内で急冷後凝集体成長を提供するために使用される主要な方法である場合、追加的可燃性ガスは、少なくとも100℃、例えば150℃〜300℃の断熱温度上昇をもたらすのに十分であり、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物に十分な熱を伝達させて、凝集体サイズの著しい増加を引き起こすことを保証する必要がある場合がある。最適な量の断熱温度上昇は、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物が初期に急冷される温度に依存する。初期の温度低下が比較的少なく、それにより比較的高い初期急冷後温度に結び付く場合、より少ない断熱温度上昇が必要とされる場合がある。急冷後凝集体成長に十分な温度を提供するために、断熱性耐火区画が、追加的可燃性ガス導入の代りに使用される場合、断熱温度上昇を適用することはできない。更に、耐火断熱材及び追加的可燃性ガス導入の組合せが、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物の温度を上昇又は維持するために使用される場合、急冷後凝集体成長を達成するためにより少ない熱しか必要とされないため、断熱温度上昇はそれほど重要ではない。
【0091】
追加的可燃性ガスは、燃焼ガス流中にある物質の全質量の1%〜100%の量で燃焼ガス流に供給することができる。追加的可燃性ガスは、望ましくは燃料及び酸化剤、並びに随意に希釈剤を含み、該燃料及び酸化剤は、追加的可燃性ガス中で任意の好適な比率であってもよく、例えば、0%〜300%の、好ましくは0%〜60%の、及びより好ましくは5%〜40%の、燃料に対する酸化剤の理論混合比であってもよい。好ましくは、追加的可燃性ガスは、水素を含有する。
【0092】
追加的可燃性ガスは、望ましくは、限界最小値を超える混合物の推定導入後温度の上昇がその結果としてもたらされるように、燃焼ガス流及びヒュームドシリカに供給される。ヒュームドシリカが純粋である(つまり、ドープされていない)場合、この最低温度は、少なくとも600℃、典型的にはおよそ1000℃、例えば1000℃〜1350℃である。推定導入後温度は、まず、当技術分野で周知の様式で、初期ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物の断熱温度を計算することにより算出される。その後、導入前の推定温度は、混合物が追加的可燃性ガス導入地点に移動すると共に生じる熱損失を推定することにより計算される。この熱損失は、反応器中の熱伝導プロセスを近似する適切な関数を、実験的炉温度測定値にフィッティングすることにより推定される。その後、燃料/空気混合物導入の際の考え得る最大の温度上昇又は断熱温度上昇を計算し、追加的可燃性ガス導入前の推定温度に加算して、最終的に推定導入後温度を得る。断熱温度上昇は、当技術分野で周知の様式で、導入された燃料−空気混合物の熱力学的特性、並びに燃焼ガス及びヒュームドシリカ流の熱力学的特性から計算することができる。
【0093】
追加的な可燃性ガスは、主火炎(例えば、初期粒子生成火炎)に対して1つ又は複数の好適な位置で任意の好適な手段で導入することができる。反応器が典型的な直径dreactorを有する場合、追加的可燃性ガス導入は、典型的には主火炎の下流1dreactor〜25dreactorであり、より好ましくは主火炎の下流2.5dreactor〜6dreactorである。流動反応器は、円筒状か否かに関わらず、水力直径等の特徴的な横寸法を有することができ、この寸法は、下流導入の位置を計る際にdreactorの代わりに用いることができる。追加的な可燃性ガスは、同軸性に、横方向に、又は接線方向で反応器へと導入することができる。
【0094】
第3の実施形態では、供給材料の総量の一部は、初期ヒュームドシリカ生成火炎の下流の好適な位置で反応器に供給される。シリカ前駆物質は、火炎から生成されるヒュームドシリカ粒子の表面と反応し、それらは互いに融合しより大きな凝集体になる。このプロセスは、適切な条件下で、最終ヒュームドシリカ凝集体の構造係数を低下させることができる。下流に導入された追加的供給材料の量は、総供給材料の10質量%〜75質量%であってもよく、好ましくは、質量に基づいて10%〜50%であってもよい。追加的可燃性ガスは、主火炎(例えば、初期粒子生成火炎)に対して、1つ又は複数の好適な位置で任意の好適な手段で導入することができる。反応器が典型的な直径dreactorを有する場合、追加的供給材料導入は、典型的には主火炎の下流1dreactor〜120dreactorであり、例えば主火炎の下流2dreactor〜24dreactorである。流動反応器は、円筒状か否かに関わらず、水力直径等の特徴的な横寸法を有することができ、この寸法は、下流導入の位置を計る際にdreactorの代わりに用いることができる。追加的供給材料は、例えば、水素含有燃料、酸化剤、及び希釈剤を含有する追加的可燃性ガスと共に導入することができる。追加的供給材料は、同軸性に、横方向に、又は接線方向で反応器へと導入することができる。
【0095】
凝集体サイズの増加に影響を及ぼすことができるプロセス変数には、下流で導入される供給材料の相対量、もしあれば追加的供給材料と共に導入される燃料の量及びタイプ、並びに導入位置が含まれる。いかなる特定の理論に束縛されることは望まないが、追加的供給材料は、既存のヒュームドシリカ粒子を部分的に被膜し、それにより緩く結合したヒュームドシリカ粒子が、より強い結合で互いに融合し、最終的に大きな凝集体を生成することが可能になる。
【0096】
凝集体サイズの増加を効果的に制御することができるプロセス変数は、下流に導入される供給材料の相対量である。供給材料のより大きな部分が初期粒子生成火炎の下流に供給されることにより、例えば、同じ表面積の従来のヒュームドシリカについて予測されるレベルを超える、凝集体サイズのより大きな増加がもたらされる。クロロシラン供給材料が使用される場合(例えば、四塩化ケイ素、トリクロロシラン、又はメチルトリクロロシラン)、凝集体サイズ増加を効果的に制御することができる別のプロセス変数は、クロロシランと共に導入される水素の相対的化学量論、つまり以下のように定義することができる導入理論H2比率(%)である:導入理論H2=(導入H2のモル数)/(0.5×導入Cl原子のモル数)。
【0097】
導入理論H2比率は、導入物質中の塩素原子を全て反応し尽くすのに必要な量に対する、導入供給材料中の塩素原子との反応に利用可能な導入水素の量を表す。導入理論H2比率が100%を超える場合、導入塩素の全てと反応してHClを形成するのに十分な水素が導入される。導入理論H2比率が100%未満である場合、初期シリカ及び燃焼ガス混合物中に存在する水蒸気は、塩素をHClに変換するための水素の一部を供給しなければならない。より低い値の導入理論H2比率は、より多くの凝集体サイズ成長を促進する。
【0098】
初期ヒュームドシリカの表面積は、開始表面積及び導入理論H2比率に応じて、初期粒子生成火炎の下流に追加的供給材料を導入した後で増加又は減少する場合がある。表面積変化は、下流で導入される供給材料の量に依存しない。小さな開始表面積は、通常、表面積増加をもたらす(負の表面積損失)。同様に、低い値の導入理論H2比率は、少ない表面積損失又は表面積増加の可能性を増加させる。
【0099】
図3及び図4では、白抜き三角形は、クロロシラン供給材料の下流導入を使用する本発明のプロセスにより製作されたヒュームドシリカの例を表す。本発明のプロセスは、同じ表面積を有する従来のヒュームドシリカより非常に大きな凝集体サイズを含むが、同じ表面積の市販のヒュームドシリカのCs値とほぼ等しいCs値を有するヒュームドシリカを提供することができる。言い換えれば、供給材料の下流導入を使用する本発明のプロセスは、表面積及びCs値とは無関係に凝集体サイズを増加させることができる。
【0100】
第3の実施形態のプロセスは、少なくとも2つの一次粒径(つまり、少なくとも二峰性の一次粒径分布で、多峰性の一次粒径分布を含む)を有する凝集体を含むヒュームドシリカを生成することができる。そのようなヒュームドシリカは、典型的には、より小さな一次粒子が、直接的に及び/又はより小さな粒子を介してより大きな一次粒子に結合されているより大きな一次粒子を含む。図9及び10は、そのような本発明のヒュームドシリカのTEM画像である。図9の円で囲まれた部分は、装飾ビーズと呼ばれるより小さな一次粒子が、より大きな一次粒子に結合されていることを示す。
【0101】
特に、本ヒュームドシリカは、最小平均一次粒径及び最大一次粒径を有する少なくとも2つの異なる平均一次粒径を有する粒子の集団を表す少なくとも二峰性の粒径分布を有することができる。最小平均一次粒径は、最大平均一次粒径の約0.05倍以上、約0.1倍以上、約0.15倍以上、又は約0.2倍以上であってもよい。その代わりに又はそれに加えて、最小平均一次粒径は、最大平均一次粒径の約0.5倍未満、約0.45倍以上、約0.4倍未満、又は約0.3倍未満であってもよい。従って、最大平均一次粒子に対する最小平均一次粒径は、上記終点のうちの任意の2つにより限定されていてもよい。例えば、最小平均一次粒径は、最大平均一次粒径の約0.5〜0.4倍、約0.05〜0.3倍、又は約0.1〜0.45倍であってもよい。
【0102】
より大きな一次粒子に関して、最大平均一次粒径により表される一次粒子集団に対する、最小平均一次粒径により表される一次粒子集団の数比率は、任意の好適な値であってもよい。より大きな一次粒子に関して、最大平均一次粒径により表される一次粒子集団に対する、最小平均一次粒径により表される一次粒子集団の数比率は、約1:1以上、約2:1以上、約3:1以上、5:1以上、約10:1以上、又は約20:1以上であってもよい。その代わりに又はそれに加えて、より大きな一次粒子に関して、最大平均一次粒径により表される一次粒子集団に対する、最小平均一次粒径により表される一次粒子集団の数比率は、約50:1未満、約40:1未満、約30:1未満、約20:1未満、又は10:1未満であってもよい。従って、より大きな一次粒子に関して、最大平均一次粒径により表される一次粒子集団に対する、最小平均一次粒径により表される一次粒子集団の数比率は、上記終点のうちの任意の2つにより限定されていてもよい。例えば、より大きな一次粒子に関して、最大平均一次粒径により表される一次粒子集団に対する、最小平均一次粒径により表される一次粒子集団の数比率は、約5:1〜約 40:1、10:1〜約50:1、又は約10:1〜約30:1であってもよい。
【0103】
そのようなヒュームドシリカは、より高い表面積及び分散性の向上を有することができ、少なくとも2つの一次粒径を有してない(つまり、少なくとも二峰性の一次粒径を有していない)凝集体を含むヒュームドシリカと比較して、種々の応用に非常に有用である。例えば、基板、特に半導体及び電子基板の研磨に有用な化学機械的研磨組成物は、そのようなヒュームドシリカを含むこと有益であり得る。従って、本発明は、水性媒質中に分散された本発明のヒュームドシリカを含む化学機械的研磨組成物を提供する。化学機械的研磨組成物は、当技術分野で公知なように、酸化剤、界面活性剤、ポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択される添加剤を更に含むことができる。
【0104】
一次粒子の凝集体を含み、該一次粒子が、少なくとも2つの異なる平均一次粒径を有する一次粒子の集団を表す少なくとも二峰性の粒径分布を有するヒュームドシリカは、例45及び52で実証されている本発明のプロセスを使用して調製することができる。図9、10、及び14は、例45及び52に従って調製されたヒュームドシリカのTEM画像を示し、その結果生じたヒュームドシリカが、一次粒子の凝集体を含み、該一次粒子が、少なくとも2つの異なる平均一次粒径を有する一次粒子の集団を表す少なくとも二峰性の粒径分布を有するヒュームドシリカだったことを明白に示している。対照的に、図8、11、及び13は、例44、47、48、及び50に従って調製されたヒュームドシリカのTEM画像を示し、それらヒュームドシリカは、一次粒子の凝集体を含み、該一次粒子が、少なくとも2つの異なる平均一次粒径を有する一次粒子の集団を表す少なくとも二峰性粒径分布を有するヒュームドシリカではなかった。一次粒子の凝集体を含み、該一次粒子が、少なくとも2つの異なる平均一次粒径を有する一次粒子の集団を表す少なくとも二峰性の粒径分布を有するヒュームドシリカは、先述の例及びそれらの結果の比較から明白であるように、比較的多くの割合の下流導入供給材料(例えば、20%超)、低い導入理論H2比率(例えば、100%未満)、及び/又は比較的低いヒュームドシリカ開始(つまり、急冷後凝集体成長の直前の)表面積(例えば、320m2/g未満)等の、適切なプロセス変数を選択することによって生成することができる。
【0105】
本発明のヒュームドシリカは、従来のヒュームドシリカが当技術分野で処理されるのと同じ様式で、任意の好適な処理剤(複数可)を用いて任意の好適な様式で処理することができる。
【0106】
例えば、ヒュームドシリカは、ヒュームドシリカを疎水性にするために、任意の好適な様式で処理又は機能化することができる。処理剤のタイプ及び処理のレベルは、最終産物の応用、疎水性の所望の度合い、及び他の特徴に応じて変わるだろう。好適な処理剤には、例えば、環式シラザン、有機ポリシロキサン、有機シロキサン、有機シラザン、及び有機シランが含まれ、それらは、例えばハロゲン有機ポリシロキサン、ハロゲン有機シロキサン、ハロゲン有機シラザン、及びハロゲン有機シラン等、随意にハロゲン化されていもよい。好適な処理剤には、参照によりその全体に本明細書に組み込まれる英国特許出願公開第2296915A号明細書に列挙及び記述されている処理剤も含まれる。好ましい処理剤には、ジメチルジクロロシラン、トリエトキシオクチルシラン、トリメトキシオクチルシラン(オクチルトリメトキシシラン(OTMS又はC8)としても知られている)、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、ポリジメチルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、及びそれらの組合せが含まれる。当業者に公知であるように、所望の処理剤によるヒュームドシリカの処理又は機能化には、従来の装置を使用するドライ又はウエット技術のいずれも使用することができる。
【0107】
本発明の又は本発明のプロセスから製作されるヒュームドシリカは、従来のヒュームドシリカが当技術分野で使用されるあらゆる応用に使用することができる。従って、本発明は、(a)必要に応じて任意の好適な様式で、例えば任意の好適な処理剤で処理することができる本発明の又は本発明のプロセスから製作されるヒュームドシリカ、及び(b)そのための担体又は他の成分を含む任意の好適な組成物を提供する。
【0108】
本発明の又は本発明のプロセスから製作されるヒュームドシリカは、最終産物の応用に応じて、乾燥又は分散、典型的には水溶液形態で使用することができる。例えば、ヒュームドシリカは、ゴム及びプラスチックの増量剤としての使用、担体材料としての使用、触媒的活性物質又は支持体としての使用、基部セラミック物質としての使用、電子産業での使用、化粧品産業での使用、シーラント、接着剤、塗料、及びコーティングの添加剤として使用、レオロジー制御が望ましい他の産業での使用、及び熱保護安定化用の使用を含む典型的な応用に有用であり得る。
【0109】
分散形態で使用される場合、本ヒュームドシリカは、紙及び厚紙等のインクジェット媒体の応用に、ガラス物品及び光ファイバーの生産に、並びに半導体及び電子産業における集積回路、硬質メモリディスク、及び他の基板の製造に使用されるもの等の化学機械的研磨の応用に使用することができる。例えば、研磨応用用の組成物を調製するために使用される場合、本ヒュームドシリカは、水にゆっくりと添加してコロイド分散を形成させ、その後従来技術を使用して、高剪断混合にかけることができる。分散物のpHは、典型的には、コロイド安定性を最大限にするために等電点から遠ざけて調整される。好適な酸化成分、界面活性剤、及び/又はポリマーを組成物に添加して、研磨速度及び選択性を最大限にしつつ、組成物を用いた研磨から生じる基板欠陥を最小限に抑えることができる。
【0110】
本明細書に記載されているように、本発明のプロセスは、互いに独立している凝集体サイズ及び表面積を有するヒュームドシリカ、並びに凝集体の表面積に依存しない凝集体サイズ分布を有するヒュームドシリカの調製を可能にする。その結果、本発明は、従来のヒュームドシリカが有していない、凝集体サイズ又は凝集体サイズ分布、及び表面積の固有の組合せを有するヒュームドシリカを提供する。更に、本発明は、様々な従来のヒュームドシリカの混合物を形成することでは一致させることができない、二峰性又は多峰性の凝集体サイズ分布を有するヒュームドシリカを提供する。そのような本発明のヒュームドシリカから調製される組成物は、従来のヒュームドシリカから調製される組成物の特性とは著しく異なる特性、例えばレオロジー性能を有することができる。
【実施例】
【0111】
以下の例は本発明を更に例示するが、無論、いかなる点でも本発明範囲を制限するとは解釈されるべきでない。
例1〜25
【0112】
例1〜25に、ヒュームドシリカに対するドーパントの効果を示す。
【0113】
様々なヒュームドシリカを研究室スケールで表1〜4に列挙した条件を用いて生成した。詳細には、例1〜25の各々において、液体シリカ前駆体、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)を噴霧器に供給した。前駆体、即ち原料を当技術分野にて周知の、従来のヒュームドシリカプロセスと同様のプロセスにて、ノズル及び酸素ガスを使用して微細な液滴に霧化した。霧化された原料を、一組のパイロットバーナーで包囲された中心バーナーに供給した。メタン及び酸素ガスをパイロットバーナーに供給した。パイロット燃料の燃焼は追加の熱を提供して、中心バーナー炎中での燃焼と粒子形成プロセスとを補助した。
【0114】
例1〜4では、プロセスにドーパントを全く加えず、それにより例1〜4は比較例として機能した。例5〜25では、ドーパントをキャリア燃料とブレンドした。ドーパントはチタンジイソプロポキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)(「TiDi」)又は酢酸ナトリウム(「NaAc」)であり、キャリア燃料はエタノール(EtOH)であった。ドーパント及びキャリアを霧化し、中心バーナー又は炎の特定の下流位置(例えば、例11〜15では、炎の15.0cm下流)内に導入した。最終的なドーパント濃度は、シリカの質量に対するドーパントの原子(Ti又はNa)の質量比であった。例では、ドーパントが主炎の下流に導入された場合、ドーパントキャリアはエタノールであり、エタノールの流速は一般に、一対の霧化ノズルを介して2〜4ml/分であった。ドーパント−霧化酸素は、ドーパント及びキャリアを霧化するのに十分な速度(例にて8〜10L/分)で供給された。全例において、L/分は標準ガス状態(T=273K、P=1.0135バール)を参照する。
【0115】
得られたヒュームドシリカの質量平均凝集体サイズ及び表面積を、表1〜4に示す。例5〜25の結果を、図2に白菱形点としてプロットする。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
表1〜4に示すように、ドーパントを使用して本発明のプロセスにより調製された例5〜25のヒュームドシリカは、ドーパントを使用せずに従来のプロセスにより調製された例1〜4のヒュームドシリカよりも大きい凝集体により特徴付けられた。特に、これらの例の結果を比較すると、ドーパントの存在は、所定の表面積にて増大された凝集体サイズを有するヒュームドシリカを生成することが示される。また、ドーパントの種類は、凝集体サイズにおける増大の程度を変更する。例において、Ti−ドーパントはNa−ドーパントよりも遙かに有効であった。プロセス変数を精密に調整し、ドーパントを適切に選択することにより所望の凝集体サイズを得ることができる。ドーパント導入の位置も、得られたヒュームドシリカの最終的な凝集体サイズに影響を与え得る。例えば、Na−ドーパントを使用した場合、導入地点を下流に移動することにより、得られたヒュームドシリカの凝集体サイズが低下した。
例26〜31
【0121】
例26〜29に、ヒュームドシリカ生成物の最終的な凝集体サイズに対する、クエンチ後の凝集体成長中のプロセス変数の効果を示す。
【0122】
これらの例において、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物の温度を適切なレベルに維持する主な方法は、追加の可燃性ガスの導入であった。これらの例では、ヒュームドシリカの温度を上昇させ又は維持して所望の凝集体成長を生じる方法を用いるに先だって、ヒュームドシリカを最初に約1700℃未満に冷却することの重要性を説明する。
【0123】
これらの例では、表5に示すプロセス条件を用いて、様々なヒュームドシリカを生成した。ヒュームドシリカの調製プロセスは、クロロシラン原料、水素及び空気の混合物を燃やす炎と、燃料/空気混合物である追加の可燃性ガスの下流導入とを含んでいた。反応器の直径は250mmであり、追加の可燃性ガスの導入は、表5に示すように、バーナーの主炎の下流の異なる地点で行われた。例26〜28では、追加の可燃性ガスは主バーナーを包囲する環状間隙、即ち輪(ring)内へ追加の可燃性ガスの推定混合物を同軸注入することにより導入され、燃焼ガスの流れは、主炎後にて約1バーナー直径(65mm)であった。例29〜31では、追加の可燃性ガスは、追加の可燃性ガスを横方向に、即ち反応器の軸に直交して注入することにより導入された。
【0124】
バーナー断熱温度は、主バーナーに供給された原料、水素及び空気の熱力学的データから、当技術分野にて公知の方法で計算された。燃料/空気混合物の導入前の推定温度は、バーナーの周囲の環(annulus)内に供給されたバーナーガス及び追加のクエンチガスの断熱混合温度から、温度の指数関数的減衰を仮定することにより計算し、次に該温度を反応器内部の温度測定値に適合させた。次に、適合された表現(expression)を導入地点で評価して、導入前の推定温度を得た。断熱温度上昇は、上記の通りである。
【0125】
得られたシリカに関する質量平均凝集体サイズ及び表面積を、表5に示す。凝集体サイズにおける増大は、図1の線(b)を用いて決定される、同一の表面積を有する従来のヒュームドシリカに関する予想値を超える増大の割合である。
【0126】
【表5】
【0127】
表5に提供された結果は、本発明のプロセスにおいて、燃焼ガスとヒュームドシリカとの初期混合物を1700℃未満に冷却させることの望ましさを示す。追加の可燃性ガス導入前の冷却が1700℃を下回らない例26及び27では、表面積に関して予想される凝集体サイズ(図1の所定の線(b))と比較された凝集体サイズの増大が、追加の可燃性ガス導入前の冷却が1700℃未満であった例28〜31よりも遙かに小さかった。
例32〜36
【0128】
例32〜34は、追加の可燃性ガスの導入が初期ヒュームドシリカ/ガス混合物の温度の上昇のための主要な方法であり、初期クエンチ温度が1200℃〜1350℃である場合の、得られたヒュームドシリカの凝集体サイズにおける断熱温度上昇の程度の効果を示す。
【0129】
表6に別様に示されるものを除き、例26〜31のヒュームドシリカの生成に使用したものと同一のプロセスを用いて様々なヒュームドシリカを生成した。得られたヒュームドシリカに関する質量平均凝集体サイズ及び表面積を、表6に示す。凝集体サイズにおける増大は、図1の線(b)を用いて決定される、同一の表面積を有する従来のヒュームドシリカに関する予想値を超える増大の割合である。
【0130】
【表6】
【0131】
例32及び33では、例34の断熱温度の150℃の上昇と比較して、断熱温度を100℃上昇させた。これらの結果に基づき、断熱温度を100℃を越えて上昇させて約15%を越える凝集体成長を達成することが望ましい。しかしながら、この実施形態における方法の異なる組み合わせ、例えば、より高い初期クエンチ温度、又は追加の可燃性ガスの導入と組み合わせた耐火物炉の使用により、この最低断熱温度の上昇はより小さくなり得る。換言すれば、これらの例では、100℃を越える断熱温度の上昇は、有意により大きい凝集体の生成に有用であるが、反応器の構造又は実施における相違がこの最小値を変更し得る。ヒュームドシリカの最終的な表面積は、バーナー断熱温度と断熱温度上昇の程度とを調整することにより変更され得る。
【0132】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、ヒュームドシリカの焼結速度に関する物理的議論と、操作経験とにより、この実施形態では、凝集体成長を達成するには幾分かの最低導入後温度が必要であると想定される。そうでない場合、当技術分野にて頻繁に実行される手順、例えばシリカの実際の温度を出発点の約50〜100℃から600℃迄上昇させるヒュームドシリカの乾燥又はか焼が、凝集体サイズ−表面積の関係の様々な変化を生じるであろう。これらの手順は従来のヒュームドシリカを特徴付ける比較的狭い範囲の凝集体サイズ及び表面積に影響を与えないため、600℃を越える幾分かの最低導入後温度が存在すると思われる。純粋な(即ち、非ドープ)ヒュームドシリカの場合において、この温度を定義するために例35と36の比較が試みられた。例35では、ヒュームドシリカの推定導入後温度は1350℃であり、凝集体サイズの増大は15%未満であった。例36では、ヒュームドシリカの推定温度は1370℃であり、凝集体サイズの増大は22%であった。しかしながら、例35では、断熱温度の上昇も比較的小さく、これは比較的小さい凝集体サイズの増大の理由であり得る。従って、これらの例の結果により最低注入後温度は少なくとも1000℃であり、1350℃付近又はそれ未満であると示唆される。これらの結果及び他の操作経験に基づき、非ドープヒュームドシリカの場合、プロセス変数を調整するために、推定導入後温度を約1350℃を越えて上昇させることが望ましいと思われる。
【0133】
加えて、有意な凝集体サイズ増大を達成するのに必要な最低導入後温度は、導入する燃料ブレンドの種類に応じて変動する。例えば、H2の代わりにCH4が使用される場合、又は希釈剤が使用される場合、温度は1350℃よりも相当高いものであり得る。更に、ドーパントがシリカの融点又は焼結温度を低下させる場合、有意な凝集体成長を生じる最低導入後温度も低下するであろう。
例37〜42
【0134】
例37〜42は、バーナー断熱温度と直接相関する出発表面積と、断熱温度上昇との、ヒュームドシリカの最終的な凝集体サイズに関する効果を示す。
【0135】
表7に別様に示されるものを除き、例26〜31のヒュームドシリカの生成に使用したものと同一のプロセスを用いて様々なヒュームドシリカを生成した。出発表面積は、バーナー断熱温度のみに依存するため、これらのプロセス変数は交換可能に考慮することができる。バーナー断熱温度と出発表面積との間の特定の関係は、特定のバーナー設計及びプロセスに用いられる冷却又はクエンチガスの種類に依存する。これらの例は、この実施形態の他の全例と同一のバーナー種類及びクエンチガス条件の使用を含んでいた。
【0136】
得られたシリカに関する質量平均凝集体サイズ、表面積、及び表面積損失、並びに凝集体サイズの増大を表7に示す。「表面積損失」という表現は、可燃性ガスの導入の結果としてシリカ表面積が低下する量(m2/gにて)を指す一方、「凝集体サイズの増大」という表現は、図1の線(b)を用いて決定される、同一の表面積を有する従来のヒュームドシリカに関する予想値を超える増大である。
【0137】
【表7】
【0138】
例37〜42の結果は、プロセス条件が、燃焼ガスとヒュームドシリカの初期混合物が1700℃未満に冷却され、次いで例えば断熱温度を100℃を越えて上昇させることによって温度が閾値温度、例えば約1350℃を越えて上昇され又維持されるものである場合に、凝集体成長の最終的な程度が、断熱温度の上昇と、その温度が上昇される前のシリカの初期表面積とに大きく依存することを示す。追加の熱は初期表面積の損失又は低下の原因となるが、凝集体を成長させることにより、その最終的な表面積におけるサイズが従来の凝集体と比較して大きい凝集体をもたらす。例は、表面積損失が出発表面積及び断熱温度上昇に依存し、また、凝集体サイズの増大が断熱温度上昇に依存することを示す。
【0139】
最終的な凝集体サイズ及び表面積に対するこれら二つのプロセス変数の結果を、図7にも示す。図示した点は、例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸)と、クエンチ後の凝集体成長を用いる本発明のプロセスに従って生成されたヒュームドシリカ(白四角)とに関する凝集体サイズ及び表面積を示す。破線曲線は、プロセスデータ(表7を含む)からの適合であり、断熱温度上昇の程度として適用された熱の量(水平チェックマーク及び線の数字で示される)と出発表面積とを鑑みた、予測される最終的な凝集体サイズ及び表面積を表す。プロセスの出発点において、初期シリカは、従来のヒュームドシリカ(黒丸)の表面積と凝集体サイズとの範囲内で、出発表面積と称される表面積と、該表面積に対応する凝集体サイズとを有する。断熱温度が上昇するにつれてヒュームドシリカの表面積が低下し、凝集体サイズは、断熱温度上昇の程度に従って、この出発点から破線曲線に平行な曲線に沿って増大する。例えば、ヒュームドシリカの出発表面積が400m2/gの場合、最終的な生成物の図7における位置は、用いられる断熱温度上昇の程度に従って、最も左の曲線迄移動するであろう。これらの全データは、追加の可燃性ガスに、H2と空気との55%/45%体積ブレンドを使用することから得られる。
【0140】
この実施形態に重要な他のプロセス変数として、燃料ブレンドと追加の可燃性ガスが導入される位置とが挙げられる。一般に、水素と空気又は酸素とのブレンドが好ましい。空気の代わりにN2を使用し、及び/又はH2の代わりに炭化水素燃料を使用することにより、比較的効果の低いプロセス(加えられた熱の量に関する比較的低い凝集体成長)が提供され得る。導入の有効な位置範囲は、シリカと燃焼ガスとの初期混合物の冷却速度に依存する。所定の冷却速度において、主炎の下流の導入位置は、シリカが1700℃未満に冷却されるような時間の範囲内に保たれるが、推定される導入後温度は尚約1350℃を越えるであろう。冷却速度は、反応器の設計と初期の炎の冷却に使用される技術とに高く特定される。従って、追加の可燃性ガス導入の適切な位置の範囲は、反応器に応じて異なり得る。例に使用される反応器システムにおいて、有効な範囲は1d反応器〜少なくとも10d反応器である。追加の可燃性ガス導入位置が有効範囲内である場合、他の条件が同一で、追加の可燃性ガス導入の位置を更に下流に移動することによって凝集体成長が僅かに改善するであろう。これらの例に使用された反応器の構造以外の反応器の構造、例えばより長い耐火位置を有する反応器では、この効果はより顕著であり得る。
例43〜52
【0141】
初期のヒュームド−シリカ生成炎の下流にて原料を導入することによる大きい凝集体のヒュームドシリカの生成を、例43〜52に示す。
【0142】
表8に別様に示されるものを除き、例26〜31のヒュームドシリカの生成に使用したものと同一のプロセスを用いて様々なヒュームドシリカを生成した。例において、シリカは最初、クロロシラン原料、水素及び空気を燃焼させる予混合炎を用いて生成された。それにより反応器へ流れるヒュームドシリカ粒子と燃焼ガスとの流れが形成された。追加の原料、水素及び空気の流れを、最初のシリカ−生成炎の下流の特定地点にて導入した。追加の原料の導入により原料と水素とが反応した。
【0143】
得られたシリカに関する質量平均凝集体サイズ、表面積、表面積損失、及び凝集体サイズの増大を表8に示す。「表面積損失」という表現は、可燃性ガスの導入の結果としてシリカ表面積が低下する量(m2/gにて)を指す一方、「凝集体サイズの増大」という表現は、図1の線(b)を用いて決定される、同一の表面積を有する従来のヒュームドシリカに関する予想値を超える増大である。
【0144】
【表8】
【0145】
図8〜14は、各々、例44、45(第一サンプル)、45(第二サンプル)、47、48、50及び52に従って生成されたヒュームドシリカのTEM像である。図9、10及び14から明らかなように、例45及び52から得られたヒュームドシリカは、一次粒子の凝集体を含み、ここで一次粒子は、少なくとも二つの異なる平均一次粒子サイズを有する一次粒子の集団を表す、少なくとも一つの二峰性粒子サイズ分布を有する。対照的に、図8、11、12及び13は、少なくとも一つの二峰性粒子サイズ分布を有さなかった一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカを示す。これらの結果は特定の構造を有する本発明のヒュームドシリカを提供する際のプロセス変数の重要性を示す。
【0146】
例43〜52の結果は、凝集体サイズの増大の程度に対する、下流で導入された原料の割合と、導入された理論H2比との効果を示す。相対的に少ない原料導入(例43、44、47及び48)の例を、相対的に多い原料導入(例45、46、49、50、51及び52)の例と比較することにより、この範囲内で導入される相対的な原料の量の増加が、凝集体成長をどのように増大させるかが示される。同様に、低い及び高い導入された理論H2比の例を比較することにより、この低い比の値が、他の条件が同一で、高い値と比較してどのように凝集体成長をより促進するかが示される。同様の比較により、表面積損失(又は増大)に対する出発表面積と導入理論H2比との影響が示される。
【0147】
クエンチ後凝集体成長手法とは対照的に、原料の下流導入は、凝集体サイズが予想よりも大きいが、その構造係数は従来のヒュームドシリカよりも大きくないシリカを生成し得る。図3及び図4において、白三角点は例46に対応する。ヒュームドシリカは非常に増大された凝集体サイズを有するが、その構造係数は従来のヒュームドシリカと類似している。対照的に、クエンチ後の凝集体成長プロセスのより大きい凝集体は、より大きい構造係数を有する。
【0148】
上述したプロセス変数に加えて、原料が導入される下流地点の温度も、成長プロセスに影響を与えると思われる。下流の原料導入の位置は、3.3〜8d反応器である場合、凝集体成長及び表面積変化に幾分かの影響を与える。
【0149】
原料と共に導入される酸素の相対的な量は、例51及び52の結果から示唆されるように、導入された理論H2が<100%の場合、凝集体の成長量により強い影響を有し得る。導入された空気の相対的な量は「導入された理論的酸素」と称されてもよい。この比は、導入材料と共に供給される酸素の量を、原料中の全Si原子が反応してSiO2、全炭素原子がCO2、残りの全水素原子(HClの形成のために消費されない)がH2Oとなるのに化学量論的に必要な量で割ったもので表される。比が100%未満に低下された例52では、導入理論H2も<100%であり、図2の凝集体の中で最も大きい凝集体が生成される。
例53〜58
【0150】
例53〜58に、大きい凝集体のヒュームドシリカの処理を示し、処理した大きい凝集体のヒュームドシリカの特性を、同様に処理した従来のヒュームドシリカの特性と比較する。
【0151】
様々なヒュームドシリカを、従来の方法と、本明細書に記載した本発明のプロセス、詳細には例26〜31に記載したクエンチ後凝集体成長法に従って生成した。従来のヒュームドシリカと、本発明の(即ち、クエンチ後の凝集体成長)ヒュームドシリカとを、異なる処理剤:オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、及びオクチルトリメトキシシラン(C8)で処理した。処理はシリカ上へのシラン及びシロキサンの気相反応のための「工業標準手順」に従って実行された。使用した各処理、即ちD4、HMDZ及びC8に関して、表面修飾のレベルは一定に維持された。換言すれば、同一の処理剤で覆われたシラノール基の割合は、同一の処理剤で処理された従来のヒュームドシリカと本発明のヒュームドシリカとを比較した際に同一であった。この方法では、処理した従来のヒュームドシリカと本発明のヒュームドシリカと間で測定される性能における任意の差異は、異なる処理レベルによって生じる疎水性における差異ではなく、従来のヒュームドシリカと本発明のヒュームドシリカとの間の構造における差異に起因するものであり得る。しかしながら、異なる処理剤で覆われるシラノール基の割合は必ずしも同一ではなく、従って異なる処理剤で処理された従来のヒュームドシリカと本発明のヒュームドシリカとの間の比較は不可能である(例えば、D4で処理した従来のヒュームドシリカ又は本発明のヒュームドシリカは、HMDZで処理した従来のヒュームドシリカ又は本発明のヒュームドシリカと比較できない)。
【0152】
D4、HMDZ及びC8で処理した従来のヒュームドシリカと本発明のヒュームドシリカとの特性を、表9に列挙する。
【0153】
【表9】
【0154】
処理した従来のヒュームドシリカと本発明のヒュームドシリカとのレオロジー性能を評価するためのモデルとして、典型的なエポキシ樹脂組成物を使用した。エポキシ樹脂組成物は、レオロジー制御のために疎水化されたヒュームドシリカの使用を必要とする、複合材料、接着剤及びコーティング等の用途にて良好なモデル流体である。評価は、最初に、処理した従来のヒュームドシリカ又は本発明のヒュームドシリカのいずれかを含有する、高く濃縮された分散物(マスターバッチ)を調製した後、このマスターバッチを希釈して試験サンプルを提供することにより行われた。詳細には、適量のエポキシ樹脂(HEXION(商標)Epon 828)及び処理した従来のヒュームドシリカ又は本発明のヒュームドシリカを測定し、二つの構成成分を二重非対称型ミキサー(dual asymmetric-type mixer)(DAC 150 FVZ、Flacktek)内で混合することにより15重量%のマスターバッチを調製した。この手順は2ステップにて行った:(1)ウェット・イン(wet-in)(典型的には1.5分@2000rpm)、及び(2)粉砕(典型的には5分@3500rpm)。分散レベルが十分であることを確認するために、得られた分散物を評価してヘグマングラインド(Hegman grind)5の達成を常に確実にした。マスターバッチを調製した後、十分な量のマスターバッチとエポキシ樹脂とを別個のカップに加えることにより一連の濃度(2.44、4、7及び10重量%の処理した従来のヒュームドシリカ又は本発明のヒュームドシリカ)を調製した。希釈分散物の最終的な混合を二重非対称型ミキサー(DAC 150 FVZ、Flacktek)内にて2000rpmで1.5分間行った。濃度は全サンプルに関して0.001重量%以内で調製した。
【0155】
処理した従来のヒュームドシリカ及び本発明のヒュームドシリカのエポキシ樹脂中の増粘力を、様々なエポキシ樹脂サンプルの降伏応力を測定することにより評価した。降伏応力は、流体を流動させるのに必要な最小応力を表す。換言すれば、降伏応力未満で流体は変形を殆ど又は全く示さず、固体の挙動と類似する。降伏応力を越えると、流体は変形され得るため流動する。降伏応力は、文献(Macosko, C, Rheology: Principles, Measurements and Applications, VCH, New York, 1994)にて入手可能な任意の粘塑性モデルを使用して、レオロジー実験から抽出することができる。これらの例における各エポキシ樹脂サンプルに関する降伏応力は、応力制御ステップフロー(stepped flow)実験にて得られたデータをHerschel−Bulkleyモデルに適合することにより決定された。
【0156】
図15、16及び17は、表9に列挙した処理した従来のヒュームドシリカ及び本発明のヒュームドシリカを使用して調製したエポキシ樹脂サンプルの降伏応力を、エポキシ樹脂サンプル中の処理した従来のヒュームドシリカ及び本発明のヒュームドシリカの濃度の関数として示す。例53及び54は図15に示され、例55及び56は図16に示され、例57及び58は図17に示されている。図15〜17の各々にて、描かれた曲線は、べき法則モデル:
YS=m(C)n
(式中、m及びnは、調整可能なパラメータ、YS=測定された降伏応力(Pa)、及びC=シリカ粒子の濃度(重量%)である)
に対する実験データの最良の適合を表す。
【0157】
図15〜17に示す降伏応力データから明らかなように、降伏応力は、分散物中の処理した従来のヒュームドシリカ又は本発明のヒュームドシリカの濃度が増加するにつれて増大した。この挙動は液体系中の固体粒子の分散物に典型的であり、流体(ここではエポキシ樹脂)の体積が固体粒子(ここでは処理した従来のヒュームドシリカ又は本発明のヒュームドシリカ)で益々満たされるにつれて、流体が変形に対してより耐性となることを示す。図15〜17に示す降伏応力はまた、本発明のヒュームドシリカが、全濃度に関して、従来のヒュームドシリカよりも高い降伏応力を有することを示した。更に、従来のヒュームドシリカと比較して増大された本発明のヒュームドシリカの降伏応力は、サンプル中のヒュームドシリカの濃度が増大するにつれて更により顕著となり、このことは本発明のヒュームドシリカの増粘能力が、従来のヒュームドシリカの増粘能力よりも高いことを示した。処理剤の表面被覆率が各処理にて同一に維持されたため、対応する例53、55及び57のヒュームドシリカと比較して増大された例54、56及び58のヒュームドシリカの増粘能力は、本明細書に記載した本発明のプロセスによる凝集体サイズの増大が原因となっている。
例59〜61
【0158】
同様の凝集体サイズ又は同様の表面積のいずれかを有する、従来のヒュームドシリカ及び本発明のヒュームドシリカの様々なサンプルの凝集体サイズ分布(ASD)を測定し、例59〜61にて比較した。
【0159】
試験したサンプルは、二種の商業的に入手可能な従来のヒュームドシリカと、本明細書に記載した本発明、詳細には例26〜31に記載したクエンチ後凝集体成長法に従って生成されたヒュームドシリカであった。第一の従来のヒュームドシリカ(例59)と、本発明のヒュームドシリカ(例60)とは同様の質量平均凝集体サイズを有する一方、第二の従来のヒュームドシリカ(例61)と本発明のヒュームドシリカとは同様の表面積を有した。
【0160】
従来のヒュームドシリカと、本発明(即ち、クエンチ後の凝集体成長)のヒュームドシリカとの各々の凝集体サイズ分布を、粒子サイズを分離する原理として差異沈降法を使用するCPSディスク遠心分離器内モデルDC24000(CPSインストルメンツ社(CPS Instruments, Inc.)を使用して測定した。この方法では、粒子は流体中で、球体に関して:
ζ=6πηR
(式中、ζ=摩擦係数、η=球体が浮遊する液体の粘度、及びR=球体の半径である)として表現できるストークス則(Stokes’ Law)に従って、重力場内で沈殿する(Rubinstein M., and Colby R.H., Polymer Physics, Oxford University Press, New York, 2003)。沈降速度は粒子の直径の二乗で増加するため、異なるサイズの粒子は異なる速度で沈殿する。この差異により、凝集体の集団が、約5%の分解能にて分離される(CPSインストルメンツ社から提供された技術情報による)。
【0161】
ASD測定を行うために、ヒュームドシリカのサンプルを分散し、pH調整脱イオン水中で安定させて、ヒュームドシリカ凝集体が塊になることを防止し、それにより誤測定を防止した。
【0162】
詳細には、pH10.5の水(即ち、0.5N NaOHでpH10.5に調整された脱イオン水)中の各ヒュームドシリカの1.2重量%分散物を、50Wで7分間連続的に超音波処理することにより調製した。超音波処理器は電力変換器とMosonixタップ付きチタンホーンプローブとを有するMisonix Model XL2020超音波処理器であったが、分散物の調製には任意の同様の超音波処理器を使用することができる。分散物を超音波処理した後、分散物のpHを測定し、0.5N NaOH溶液を用いてpH10.5に再調整した。
【0163】
凝集体サイズ分布に関して評価した従来のヒュームドシリカ及び本発明のヒュームドシリカの特性を、表10に列挙する。
【0164】
【表10】
【0165】
得られた分散物をCPSディスク遠心分離器内に供給し、各サンプルに関して凝集体の分布を得た。結果を図18のグラフにプロットする。
【0166】
図18から明らかなように、220±5nmの質量平均凝集体サイズと、90m2/gの表面積(例59)とを有する従来のヒュームドシリカは、単峰性(mono-modal)の凝集体サイズ分布を有した。対照的に、クエンチ後凝集体成長方法を用いて生成された本発明のヒュームドシリカは、同様の質量平均凝集体サイズ229±5nmを有したが、有意に異なる表面積200m2/g(例60)を有し、図18から明らかなように二峰性の凝集体サイズを示した。同様の表面積200m2/gを有する従来のヒュームドシリカは、有意に異なる質量平均凝集体サイズ170±5nmを有し(例61)、図18から明らかなように単峰性の凝集体サイズ分布を示した。
【0167】
例59〜61の従来のヒュームドシリカの質量平均凝集体サイズと表面積との間の関係は、従来のヒュームドシリカに典型的なものであった。例59及び61の従来のヒュームドシリカの物理的ブレンドは、例60の本発明のヒュームドシリカにより示される二峰性凝集体サイズを生じないであろう。また二種の従来のヒュームドシリカの任意の物理的ブレンド(即ち、任意の比におけるブレンド)は、レオロジー性能の見地から本発明の単一のヒュームドシリカとは常に異なることが予想され、例えば、本発明の単一のヒュームドシリカよりも統計的に有意に低い粘度を有するであろう。この差異の理由は、本発明のヒュームドシリカ凝集体が、二種の従来のヒュームドシリカの任意の物理的ブレンドからなるヒュームドシリカ凝集体よりも一様に大きい表面積を有する事実に関連していると思われ、ここでいくつかのヒュームドシリカ凝集体(ブレンドの二つの構成成分のうちの一方の)は本発明のヒュームドシリカ凝集体と同様の表面積を有し、その他のヒュームドシリカ凝集体(ブレンドの二つの構成成分のうちの他方の)は本発明のヒュームドシリカ凝集体よりも有意に小さい表面積を有する。
【0168】
出版物、特許出願及び特許を含む、本明細書に引用した全ての参考文献は、各参考文献が個別かつ明確に参照により組み入れられることを示されると同一の程度において参照により本明細書に組み入れられ、それらの全体が本明細書に示される。
【0169】
本発明を記載する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」、「an」及び「the」並びに同様の指示物の使用は、本明細書にて別に示されず、又は文脈により明白に否定されない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、別に示されない限り、制限のない用語(即ち、「含むが、〜に限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書にて値の範囲の記述は、本明細書にて別に示されない限り、単にその範囲内に入る別個の各値に個々に言及する簡略な方法としての役割を果たすよう意図され、別個の各値は、それらが本明細書に個別に引用されるが如く、明細書中に組み込まれる。本明細書に記載した全方法は、本明細書にて別に示されない限り、又は文脈により別に明白に否定されない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書に提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言葉(例えば、「〜等、〜のような」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図し、別に宣言されない限り、本発明の範囲に関する限定を主張するものではない。明細書中のいかなる言葉も、任意の非特許請求要素を本発明の実行に必須であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0170】
本発明を実行するための本発明者等に公知の最良のモードを含む、本発明の好ましい実施形態を本明細書に記載する。それらの好ましい実施形態の変形は、前述した記載を読むことにより当業者に明らかとなり得る。本発明者等は、当業者がそれらの変形を適宜使用することを予想し、また本発明者等は、本発明が本明細書に詳細に記載されたものとは別様に実行されることを意図する。従って、本発明は、適用される法律により許可される、本明細書に付属する特許請求の範囲に引用された主題の全ての変更物及び等価物を含む。更に、全ての可能な変形を含む上述した要素の任意の組み合わせは、本明細書に別に示されない限り、又は文脈により別に明白に否定されない限り、本発明に包含される。
【背景技術】
【0001】
ヒュームド金属酸化物、特にヒュームドシリカに関する多数の用途が存在している。それらの用途には、ゴム等のポリマー用の充填材、紙用等のコーティング(即ち、記録媒体)、化粧品、光ファイバー及び石英ガラス製品の製造、断熱材、及び半導体製造における使用を目的とする化学的−機械的研磨組成物等が含まれる。
【0002】
ヒュームドシリカは、一般に、四塩化ケイ素等のクロロシランの水素酸素炎中での気相加水分解により生成される。そのようなプロセスは、一般に発熱性プロセスと称されている。全反応は:
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
である。
【0003】
ヒュームドシリカを生成するための発熱性プロセスでは、オルガノシランも使用されている。オルガノシランの気相加水分解において炭素−支持断片が酸化を受けて、副生物として塩酸と共に二酸化炭素を形成する。
【0004】
このプロセスでは、サブミクロンサイズのシリカの溶融球体が形成される。これらの粒子は衝突し融合して、約0.1〜0.5μmの長さを有する三次元の分岐鎖状凝集体を形成する。冷却が非常に速く起こり、粒子の成長を制限し、ヒュームドシリカが非晶質であることを確実にする。これらの凝集体は、次に0.5〜44μm(約325 USメッシュ)の凝集体を形成する。ヒュームドシリカは高い純度を有し得、多くの場合、全不純物は100ppm(百万分の一)未満である。この高い純度は、ヒュームドシリカ分散物を多くの用途にて有利なものとする。
【0005】
当技術分野では、発熱性プロセスを介してヒュームドシリカを製造する多数の方法が開発されてきた。米国特許第二,990,249号には、ヒュームドシリカの発熱性製造(pyrogenic production)の方法が記載されている。この方法によれば、メタン又は水素、酸素、及び四塩化ケイ素のような揮発性ケイ素化合物等の燃料を含む気体原料を(ここで酸素は、化学量論比又は超化学量論比(hyperstoichiometric proportion)にて存在する)、高さ対直径の比が約2:1以下である短炎を支持するバーナー内に供給する。酸素中の燃料の燃焼により形成された水が四塩化ケイ素と反応して、二酸化ケイ素粒子を形成し、この粒子が合体し凝集してヒュームドシリカを形成する。バーナーからの流出物が冷却された後、ヒュームドシリカが収集される。
【0006】
米国特許第4,108,964号には、ケイ素含有構成成分としてオルガノシランを使用したヒュームドシリカの発熱性製造の方法が記載されている。この方法によれば、メチルトリクロロシランのようなオルガノシランを、該オルガノシランの沸点を超える温度で揮発させる。気化したオルガノシランを、水素又はメタン、及び15〜100%の酸素を含有する酸素含有ガス等の気体燃料と混合して原料を形成する。バーナーにより支持された炎に原料を様々な流速で供給して、ヒュームドシリカを生成する。個々の気体構成成分の体積比は、決定的な重要事項ではないと報告されている。オルガノシランと水−形成ガスとのモル比は、一般に1:0〜1:12の範囲内であると述べられている。
【0007】
従来のプロセスでは、特に比較的狭い凝集体のサイズ及び表面積の範囲内でヒュームドシリカが生成される。従来のプロセスでは、より広い範囲の凝集体のサイズを達成せず、これはそのようなプロセスで生成される凝集体のサイズ及び構造を炎温度が大部分決定するためである。詳細には、シリカ粒子が炎中で形成される際、粒子は初期、半液体の形態を有し、炎温度に応じて所定の程度迄、凝集体へ成長する。しかしながら、放射冷却又は強制冷却によって、凝集体の温度は、粒子がより大きい凝集体へ成長できない温度迄急速に低下し、それにより凝集体は比較的狭いサイズ範囲に制限される。所定の表面積において、可能なより広い範囲の凝集体サイズを有するヒュームドシリカを製造可能なプロセスは、特に、改良されたレオロジー特性(より高い粘度、及び液体媒体中でのより高い分散性等)を含む多数の利点を提供することができる、比較的大きい凝集体サイズを有するヒュームドシリカを製造する際に有用であろう。
【0008】
ヒュームドシリカ凝集体はまた、フラクタル状又は分岐した粒子であるため、固有の構造を有する。凝集体は分岐し、固体の凸形を有さないため、ヒュームド粒子の分野で周知のように、その見掛けの凝集体サイズに関連した体積を包含する。この包含された体積は構造係数(coefficient of structure)として公知の比、即ち、凝集体が包含する体積と、その固体シリカの実際の体積との比で説明することができる。従来のヒュームドシリカのプロセスでは、構造係数は表面積、凝集体サイズ及びフラクタル次元により設定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
凝集体サイズ、表面積及び構造係数等の物理的特徴の異なる組み合わせを有するヒュームドシリカが必要とされている。例えば、凝集体サイズと構造係数とを同時に増大させるプロセスは、凝集体サイズの増大に追従するレオロジー特性及び強化特性における向上を高めるであろう。更に、凝集体サイズとは独立して構造係数を変更することができるプロセスは、増大された分散性を有するヒュームドシリカの製造に有用であり得、現在商業的に入手可能な材料とは異なる性能トレードオフを提供し得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(光子相関分光法(PC、photo correlation spectroscopy)により測定される単位がnmの)凝集体サイズD及び(S. Brunauer, P. H. Emmet, and I. Teller, J. Am. Chemical Society, 60: 309 (1938)の方法(BET)により測定される単位がm2/gの)表面積SAを有し、式
D≧151+(5400/SA)+0.00054(SA−349)2
を満たすヒュームドシリカを提供する。
【0011】
本発明は、100〜300m2/gの表面積を有するヒュームドシリカも提供し、該ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、以下の条件の任意の1つ又は複数を満たす:(a)10s-1の煎断速度で0.25Pa−s以上の粘度、(b)0.1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって0.8以下のべき法則指数(power-law exponent index)、及び(c)0.1〜100rad/sの振動数範囲での16〜100Paの弾性率。
【0012】
本発明は、一次粒子の凝集体を含み、該一次粒子が、少なくとも2つの異なる平均一次粒径を有する一次粒子の集団を表す少なくとも二峰性の粒径分布を有し、最小平均一次粒径が、最大平均一次粒径の0.05〜0.4倍であるヒュームドシリカを更に更に提供する。
【0013】
本発明は、ヒュームドシリカ、特に本発明のヒュームドシリカを生成するためのプロセスを更に提供する。本発明のプロセスでは、シリカ前駆物質を含む供給材料流及び可燃性ガス流が提供される。一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流は、(1)供給材料流を可燃性ガス流と混合して、シリカ前駆物質を有する可燃性ガス流を形成し、その該シリカ前駆物質を有する可燃性ガス流を燃焼させて、ヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流を形成することにより、及び/又は(2)可燃性ガス流を燃焼させて燃焼ガス流を形成し、その後供給材料流を燃焼ガス流と混合して、シリカ前駆物質がそこに浮遊している燃焼ガス流を形成することにより反応器中で形成され、それは、その後第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を形成する。第1の凝集体サイズより大きい第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子は、燃焼ガス流中で、第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子間の接触を可能にさせ、且つ(1)第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を1つ又は複数のドーパントと接触させてその表面を改質するか、(2)第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子の温度−時間プロファイル又は履歴を制御して、急冷後の凝集体成長を可能にするか、(3)第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流に、追加的な供給材料を導入するか、又は(4)先述の項目(1)、(2)、及び(3)のいずれかの組合せを実施すること、により形成される。その後、第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子は、燃焼ガス流から回収される。
【0014】
本発明のプロセスは、大型凝集体ヒュームドシリカを提供し、ヒュームドシリカの構造係数Csを所望のように制御する。より大きな構造係数を有するより大型の凝集体ヒュームドシリカは、同じような表面積の市販シリカと比較して、鉱油中に分散した際に、粘度の増加、分散性の向上、及び弾性率の向上等の、特徴の向上を示す。より小さい構造係数を有する大型凝集体ヒュームドシリカも、特に粒子が好適な作用剤で表面処理される場合、分散性の向上並びに他の性能有益性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】例示的な従来のヒュームドシリカに関する質量平均凝集体サイズ(nm)対表面積(m2/g)のグラフと、標準値と上限に適合する曲線。黒丸、黒三角及び黒菱形記号は従来のヒュームドシリカを表す。黒三角と黒菱形は、各々エボニックデグサ(Evonik Degussa)とワッカー(Wacker)から入手可能なヒュームドシリカを指す。エラーバーはプロセス及び試験の変動性に関する95%信頼区間を表す。線(a)は、従来のヒュームドシリカに関する、式D>151+(5400/SA)+0.00054(SA−349)2により表される凝集体サイズの上限を表す。線(b)は、グラフ中の黒丸に適合する曲線を表し、式D=126+(7046/SA)+0.000235(SA−285)2で表すことができる。
【0016】
【図2】例示的な従来のヒュームドシリカと比較した、例示的な本発明のヒュームドシリカに関する質量平均凝集体サイズ(nm)対表面積(m2/g)のグラフ。黒丸、黒菱形及び黒三角記号は、図1に示した従来のヒュームドシリカを表す。白菱形、白四角形及び白三角記号は、本発明のプロセス、特に本明細書に記載した一種以上のドーパントの使用(白菱形)、クエンチ後の凝集体成長(白四角)、及び原料の下流導入(白三角)を含む実施形態により形成されたヒュームドシリカを表す。エラーバーは、プロセス及び試験の変動性に関する95%信頼区間を表す。線(c)及び(d)は、各々好ましい、及びより好ましい、本発明のヒュームドシリカに関する、所定の表面積における最小平均凝集体サイズを表す。線(e)は、本発明のヒュームドシリカに関する、所定の表面積における推定最大平均凝集体サイズを表す。
【0017】
【図3】例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸及び黒菱形記号)と比較した、例示的な本発明のヒュームドシリカ(白四角及び白三角記号)に関する構造係数(C)対質量平均凝集体サイズ(nm)のグラフ。記号は、図2に示したヒュームドシリカと同一の種類のヒュームドシリカを表す。エラーバーは、試験変動性に関する95%信頼区間を表す。Cs=58における水平点線は、示された凝集体サイズ範囲において従来のヒュームドシリカが達成可能な構造係数の推定上限を表す。
【0018】
【図4】例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸及び菱形記号)と比較した、例示的な本発明のヒュームドシリカ(白四角及び三角記号)に関する構造係数(C)対表面積(m2/g)のグラフ。記号は、図2に示したヒュームドシリカと同一の種類のヒュームドシリカを表す。エラーバーは、試験変動性に関する95%信頼区間を表す。Cs=58における水平点線は、示された凝集体サイズ範囲において従来のヒュームドシリカが達成可能な構造係数の推定上限を表す。
【0019】
【図5】例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸記号)と比較した、例示的な本発明のヒュームドシリカ(白四角及び三角記号)に関する、10s-1における鉱油中での粘度(Pa−s)対表面積(m2/g)のグラフである。記号は、図2に示したヒュームドシリカと同一の種類のヒュームドシリカを表す。エラーバーは、試験の変動性に関する95%信頼区間を表す。水平点線は、示された表面積範囲内における従来のヒュームドシリカの分散物の粘度限界、即ち0.25Pa−sを示す。
【0020】
【図6】例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸記号)と比較した、例示的な本発明のヒュームドシリカ(白四角記号)に関する鉱油中の弾性係数(Pa)対表面積(m2/g)のグラフ。記号は、図2に示したヒュームドシリカと同一の種類のヒュームドシリカを表す。水平点線は、従来のヒュームドシリカの鉱油中で弾性係数を構築する能力の推定限界、即ち16Pa迄を表す。
【0021】
【図7】温度−時間プロファイル制御を含む本発明のプロセスの実施形態における、断熱温度上昇に関連した、例示的な本発明の異なるヒュームドシリカに関する質量平均凝集体サイズ(nm)対表面積(m2/g)のグラフ。図示した点は、例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸記号)と、クエンチ後の凝集体成長を用いて本発明のプロセスに従って生成されたヒュームドシリカ(白四角記号)とに関する凝集体サイズ及び表面積を示す。破線曲線はプロセスデータに適合され、断熱温度上昇の程度として適用される所定の熱量の増大(水平チェックマーク及び線上の数により示される)を鑑みて、予測される最終的な凝集体サイズ及び表面積を表す。
【0022】
【図8】例44に従って製造された本発明の例示的な実施形態のヒュームドシリカのTEM像。
【0023】
【図9】例45に従って製造された本発明の例示的な実施形態のヒュームドシリカの第一の代表的なTEM像。
【0024】
【図10】例45に従って製造された本発明の例示的な実施形態のヒュームドシリカの第二の代表的なTEM像。
【0025】
【図11】例47に従って製造された本発明の例示的な実施形態のヒュームドシリカのTEM像。
【0026】
【図12】例48に従って製造された本発明のヒュームドシリカの例示的な実施形態のTEM像。
【0027】
【図13】例50に従って製造された本発明の例示的な実施形態のヒュームドシリカのTEM像。
【0028】
【図14】例52に従って製造された本発明の例示的な実施形態のヒュームドシリカのTEM像。
【0029】
【図15】例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸記号)と、クエンチ後の凝集体成長を用いる本発明のプロセスに従って製造されたヒュームドシリカ(白四角記号)とを使用して調製した分散物の降伏応力(Pa)対シリカ濃度(重量%)のグラフ。これら両方のヒュームドシリカは、例53及び54に従ってオクタメチルシクロテトラシロキサンで同様に処理された。
【0030】
【図16】例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸記号)と、クエンチ後の凝集体成長を用いる本発明のプロセスに従って製造されたヒュームドシリカ(白四角記号)とを使用して調製した分散物の降伏応力(Pa)対シリカ濃度(重量%)のグラフ。これら両方のヒュームドシリカは、例55及び56に従ってヘキサメチルジシラザンで同様に処理された。
【0031】
【図17】例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸記号)と、クエンチ後の凝集体成長を用いる本発明のプロセスに従って製造されたヒュームドシリカ(白四角記号)とを使用して調製した分散物の降伏応力(Pa)対シリカ濃度(重量%)のグラフ。これら両方のヒュームドシリカは、例57及び58に従ってオクチルトリメトキシシランで同様に処理された。
【0032】
【図18】例59及び61に記載した従来のヒュームドシリカ(白三角記号及び白丸記号)と、例60に記載したクエンチ後の凝集体成長を用いて本発明のプロセスに従って製造されたヒュームドシリカ(白四角記号)との正規化頻度分布対直径(nm)のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカを提供し、該凝集体は、式:
D≧151+(5400/SA)+0.00054(SA−349)2
を満たす凝集体サイズD及び表面積SAを有する。ヒュームドシリカを生成するための従来の商業的プロセスでは、先述の式を満たすヒュームドシリカを生成することができない。更に、ヒュームドシリカを生成する従来の商業的プロセスでは、凝集体サイズ、表面積、又はフラクタル次元とは無関係にCS値を制御することが可能ではないため、所望の構造係数Cs、並びに所望の凝集体サイズD及び所望の表面積SAを有するヒュームドシリカを生成することができない。
【0034】
従って、本発明のヒュームドシリカは、凝集体サイズD、表面積SA、及び係数構造Csの任意の1つ又は複数により特徴付けることができ、それら値の各々は、ヒュームドシリカの質量加重平均値である。
【0035】
本ヒュームドシリカは、120nm以上、例えば、140nm以上、150nm以上、160nm以上、又は180nm以上の凝集体サイズDを有することができる。その代わりに又はそれに加えて、本ヒュームドシリカは、300nm以下、例えば、280nm以下、280nm以下、260nm以下、250nm以下、又は240nm以下の凝集体サイズDを有することができる。従って、本ヒュームドシリカは、上記終点のうちの任意の2つにより限定される凝集体サイズDを有することができる。例えば、本ヒュームドシリカは、120〜300nm、140〜300nm、140〜260nm、又は150〜240nmの凝集体サイズDを有することができる。
【0036】
本ヒュームドシリカは、50m2/g以上、例えば、100m2/g以上、150m2/g以上、又は200m2/g以上の表面積SAを有することができる。その代わりに又はそれに加えて、本ヒュームドシリカは、550m2/g以下、例えば、500m2/g以下、450m2/g以下、400m2/g以下、350m2/g以下、又は300m2/g以下の表面積SAを有することができる。従って、本ヒュームドシリカは、上記終点のうちの任意の2つにより限定される表面積SAを有することができる。例えば、本ヒュームドシリカは、50〜550m2/g、100〜500m2/g、100〜450m2/g、150〜400m2/g、又は200〜300m2/gの表面積SAを有することができる。
【0037】
本ヒュームドシリカは、58以上、例えば、60以上、62以上、64以上、65以上、66以上、68以上、又は70以上の構造係数Csを有することができる。その代わりに又はそれに加えて、本ヒュームドシリカは、90以下、例えば、85以下、80以下、又は75以下の構造係数Csを有することができる。従って、本ヒュームドシリカは、上記終点のうちの任意の2つにより限定される構造係数Csを有することができる。例えば、ヒュームドシリカは、58〜90、58〜80、60〜85、60〜80、又は67〜70の構造係数Csを有することができる。
【0038】
更に、本ヒュームドシリカは、先述の凝集体サイズD、表面積SA、及び構造係数Cs値の組合せを有することができる。例えば、本ヒュームドシリカは、(a)凝集体サイズD≧120nm及び構造係数Cs>58、(b)式120≦D≦300を満たす凝集体サイズD、及び式50<SA<550を満たす表面積SA、及び式58≦Cs≦90を満たす構造係数Cs、又は(c)式120≦D≦300を満たす凝集体サイズD、式100≦SA≦400を満たす表面積SA、及び式58≦CS≦90を満たす構造係数Csを有することができる。
【0039】
図1は、従来のヒュームドシリカの典型的な粒径を示すグラフである。横軸はBET表面積SA(m2/g)を表し、縦軸はPCS凝集体サイズD(nm)を表す。円、ひし形、及び左向三角形の黒抜き記号は、従来の及び/又は市販のヒュームドシリカを表す。曲線(a)は、先述の式により表される従来の市販シリカの凝集体サイズの上限を表す。曲線(b)は、グラフ中の黒抜き円に対する曲線フィッティングを表す。本発明のプロセスは、曲線(a)により示されているような従来のヒュームドシリカ凝集体サイズの上限より大きな、従って式D≧151+(5400/SA)+0.00054(SA−349)2を満たす凝集体サイズDを有するヒュームドシリカの生成を可能にする。
【0040】
当技術分野で周知なように、ヒュームドシリカは、焼成シリカとしても知られており、最小スケールでは一次粒子で構成される。一次粒子は、粒子を構成する原子間の共有結合により形成されており、最も厳しい条件以外では安定している。その次のスケールでは、一次粒子は結合して、一般的に凝集体と呼ばれる二次粒子になる。凝集体粒子は、共有結合により共に結合されている一次粒子から形成される。ヒュームドシリカは、典型的には一次粒子の分岐鎖様構造を有する凝集体の形態で存在する。一次粒子及び凝集一次粒子(つまり、凝集体又は二次粒子)は両方とも、ある平均粒径を有するとして特徴付けることができ、平均粒径は、粒子、つまり一次粒子又は凝集体のいずれかを取り囲む最も小さな球の直径を指す。本明細書で使用される場合、「粒子」という用語は、別様に指定されていない限り、凝集体を指す。その次のスケールでは、凝集体は緩く結合して、アグロマレイトになる。典型的には、アグロマレイトは、力学的エネルギー入力により構成凝集体へと分離することができる。
【0041】
凝集体サイズは、凝集体を包含する最も小さな球の直径である。凝集体サイズD(nm)は、光子相関分光法(PCS)により決定されるヒュームドシリカの質量平均凝集体サイズである。透過電子顕微鏡(TEM)分析が数加重平均凝集体サイズを提供するのに対し、PCS測定は、質量加重平均凝集体サイズを提供する。
【0042】
特に、凝集体サイズD(nm)は、浮遊粒子の有効直径を決定するために、粒子のブラウン運動による散乱光の頻度−強度スペクトルを時間の関数として使用するPCS粒径分析器、特にBrookhaven社製90Plus/BI−MAS(マルチアングル粒径測定オプション)PCS粒径分析器を使用して決定される。使用される技術は、平均散乱レーザー光線強度の変動を相関させることに基づいており、2ナノメートル〜3ミクロンの範囲の平均粒径を決定可能である。試験は全て、製造業者の推薦に従って、2分間の収集時間にわたって90°の角度を使用して実行される。温度は、25℃に設定及び制御される。Duke Scientific社製の200nmポリマーラテックス球標準物質が、検量基準物質として使用される。
【0043】
PCS測定用のヒュームドシリカ試料を、以下のように調製及び評価し、PCS粒径分析器を使用して凝集体サイズを決定する:
(1)ヒュームドシリカのpH10.5水中(脱イオン水を使用し、0.5N NaOHでpHを調整する)1.2重量%分散物を、50Wで7分間連続的に超音波処理することにより準備する。超音波処理器は、電力変換装置及びMosonix社製タップ付チタンホーンプローブを備えたMisonix社製XL2020型超音波処理器、又は類似の超音波処理器であってもよい。
(2)該分散物を超音波処理したら、pHを測定し、0.5N NaOH溶液を使用することによりpHを10.5に再調整する。
(3)使い捨てキュベットに、24mLのろ過したpH10.5水を添加する。この手順には、使い捨て注射器に取り付けた0.20ミクロン注射器フィルターを使用すること。
(4)ステップ2で調整された0.075mLの分散物を、ステップ3で調製したpH10.5ろ過水を含有するキュベットに添加する。
(5)Brookhaven社製PCS装置にキュベットを配置し、6分間平衡化させ、測定された直径を記録させた。
【0044】
表面積SA(m2/g)は、一般的に、BET法と呼ばれる、S. Brunauer, P. H. Emmet, and I. Teller, J. Am. Chemical Society, 60: 309 (1938)の方法により決定される凝集体の平均表面積である。
【0045】
構造係数Csは、好適な液体(例えば、鉱油)中で種々の体積分率(例えば、0〜0.02の範囲)のヒュームドシリカ分散物の相対粘度を測定し、実験データをGuth−Goldの式(Guth et al, Phys. Rev., 53: 322 (1938))にフィッティングさせることにより計算することができる。「鉱油」は、アルカン(典型的には、15〜40個の炭素)の混合物を指し、ガソリンを生産するための石油蒸留における副産物である。鉱油は、優先的な様式でヒュームドシリカと相互作用しないため、ヒュームドシリカの粘度、べき法則指数、及び弾性率を測定するための液体媒質として特に好適である。構造係数を計算するための詳細な説明は以下の通りである:
(a)ヒュームドシリカの分散物(バッチサイズ=30g)を、(i)鉱油中で適切な質量のシリカ(0〜5重量%の範囲)を混合し、(ii)二重非対称遠心機型ミキサー(dual asymmetric centrifuge-type mixer)(例えば、Flacktek Inc.社により製造されているDAC150FVZ)で10分間混合し、(iii)レオメーター(TA Instruments社により製造されているAR2000EX)で、コーンプレート型(cone and plate)の形状を使用して(1度、40mm)、5000s-1で2時間剪断することにより調製する。レオロジー実験中の温度は、25℃に制御及び維持される。
(b)体積分率φを、下記の式により計算する:
【数1】
(c)分散物の粘度(η分散物)は、(a)に記述されている手順に従った後で取得される、10s-1の煎断速度で測定された値である。
【0046】
ヒュームドシリカ分散物の構造因子Cs、体積分率φ、粘度(η分散物)、及び鉱油の粘度(η鉱油)は、以下の式を満たす:
(η分散物/η鉱油)=1+2.5Csφ+14.1Cs2φ2
この式は、E. Guth and O. Gold in Phys. Rev., 53: 322 (1938)により記述されている。より大きな値のCsは、所与の表面積において、より効果的な1単位質量当たりの容積及び従ってより開放的な構造を示す。ヒュームドシリカの構造係数Csは、ヒュームドシリカが液体中に占める実際の物理的な容積に対する「見掛け容積」の比率を反映する。ヒュームドシリカ粒子は、分岐した開放的な構造を有しているため、球体等の単純な凸面形状である場合より、はるかに多い液体容積(固体の1単位質量当たり)を包含又は相互作用する。高剪断レオロジー試験では、この「見掛け容積」は、ヒュームドシリカ粒子が液体の粘度を増加させる度合いにより測定される。この容積は、典型的には、個々のヒュームドシリカ粒子の実際の物理的容積の4〜7倍である。
【0047】
図2は、従来のヒュームドシリカと比較した、本発明のヒュームドシリカの凝集体サイズを示すグラフである。黒抜きの円形、ひし形、及び三角形の記号は、図1に示されている従来の及び/又は市販のヒュームドシリカを表す。白抜きひし形記号は、本明細書に記述されているようなドーパント添加プロセスにより製作された本発明のヒュームドシリカを表す。白抜き正方形記号は、本明細書に記述される急冷後凝集体成長を使用する本発明のプロセスにより製作された本発明のヒュームドシリカを表す。白抜き三角形記号は、本明細書に記述される追加的供給材料の下流導入により製作された本発明のヒュームドシリカを表す。図1及び2のエラーバーは、存在する場合、プロセス及び試験変動性の95%信頼区間を表す。
【0048】
本発明のヒュームドシリカは、好ましくは、所与の表面積において、図2の曲線(c)により示されている凝集体サイズより大きな凝集体サイズDを有する。言い換えれば、本発明のヒュームドシリカは、好ましくは、以下の一組の式(1)を満たす:
D≧291−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
D≧222−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
D≧173−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
D≧115+0.09(SA)、ここで425<SA≦550。
【0049】
より好ましくは、本発明のヒュームドシリカは、所与の表面積において、図2の曲線(d)により示されている凝集体サイズより大きな凝集体サイズDを有する。言い換えれば、本発明のヒュームドシリカは、好ましくは、以下の一組の式(2)を満たす:
D≧306−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
D≧237−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
D≧188−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
D≧130+0.09(SA)、ここで425<SA≦550。
【0050】
また、本発明のヒュームドシリカは、所与の表面積において、以下の一組の式(3)により表される、上限より小さな凝集体サイズDを有することができる:
874−1.75(SA)≧D、ここで50≦SA≦200;
667−0.71(SA)≧D、ここで200<SA≦255;
518−0.12(SA)≧D、ここで255<SA≦425;及び
346+0.28(SA)≧D、ここで425<SA≦550。
【0051】
例えば、本発明のヒュームドシリカは、所与の表面積において、図2の曲線(e)により示されている凝集体サイズより小さな凝集体サイズDを有することができる。言い換えれば、本発明のヒュームドシリカは、以下の一組の式(4)を満たすことができる:
391−0.58(SA)≧D、ここで50≦SA≦200;
322−0.24(SA)≧D、ここで200<SA≦255;
273−0.04(SA)≧D、ここで255<SA≦425;及び
215+0.09(SA)≧D、ここで425<SA≦550。
【0052】
その代わりに又はそれに加えて、本発明のヒュームドシリカは、(a)式(1)又は(2)の組及び(b)式(3)又は(4)の組の組合せを満たすことができる。
【0053】
例えば、本発明のヒュームドシリカは、以下のように式(1)及び(3)の組を満たすことができる:
874−1.75(SA)≧D≧291−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
667−0.71(SA)≧D≧222−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
518−0.12(SA)≧D≧173−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
346+0.28(SA)≧D≧115+0.09(SA)、ここで425<SA≦550。
【0054】
本発明のヒュームドシリカは、以下のように式(2)及び(3)の組を満たすことができる:
874−1.75(SA)≧D≧306−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
667−0.71(SA)≧D≧237−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
518−0.12(SA)≧D≧188−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
346+0.28(SA)≧D≧130+0.09(SA)、ここで425<SA≦550。
【0055】
本発明のヒュームドシリカは、以下のように式(1)及び(4)の組を満たすことができる:
874−1.75(SA)≧D≧291−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
667−0.71(SA)≧D≧222−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
518−0.12(SA)≧D≧173−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
346+0.28(SA)≧D≧115+0.09(SA)、ここで425<SA≦550。
【0056】
本発明のヒュームドシリカは、以下のように式(2)及び(4)の組を満たすことができる:
874−1.75(SA)≧D≧306−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
667−0.71(SA)≧D≧237−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
518−0.12(SA)≧D≧188−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
346+0.28(SA)≧D≧130+0.09(SA)、ここで425<SA≦550。
【0057】
図2のグラフから明白なように、本発明のヒュームドシリカ(白抜き記号)は、同じ表面積の従来のヒュームドシリカより著しく大きな凝集体サイズを有する。
【0058】
図3及び図4は、一組の凝集体サイズ及び表面積の範囲内の本発明のヒュームドシリカ及び市販のヒュームドシリカの構造係数Csをそれぞれ示す。図2のように、図3及び図4の黒抜き円及び黒抜きひし形は、本発明のヒュームドシリカ以外のヒュームドシリカを表し、白抜き正方形及び三角形は、本発明のヒュームドシリカを表す。Cs=58にある水平な点線は、それぞれ図3及び図4に示されている凝集体サイズ範囲及び表面積範囲にある従来のヒュームドシリカで達成可能な構造係数の推定上限を表す。本発明は、従来のヒュームドシリカと比較して、所与の凝集体サイズ又は表面積についてより高い構造係数Csを有するヒュームドシリカを提供することができる。本発明は、同じ表面積の市販のヒュームドシリカより著しく大きな凝集体サイズを有するが、同じ表面積の市販のヒュームドシリカのCs値とほぼ等しいCs値を有するヒュームドシリカを提供することもできる。
【0059】
ヒュームドシリカの所与の凝集体サイズ又は表面積についての特定の構造係数Csは、本明細書に記述されている本発明のプロセスにより、特に1つ又は複数のドーパントの使用を伴う実施形態、急冷後凝集体成長を伴う実施形態、又は供給材料の下流導入に伴う実施形態(それらの全ては本明細書に記述されている)等の本発明のプロセスの適切な実施形態を選択することにより、制御することができる。
【0060】
所与の表面積において、従来のヒュームドシリカよりも凝集体サイズが増加したヒュームドシリカは、レオロジー応用(例えば、垂れ耐性(sag resistance)、増粘性、ずれ揺変等)及び補強応用(例えば、シリコンエラストマー補強、硬度、引張強さ、モジュラス等)の両方に多くの性能有益性を提供する。例えば、凝集体サイズが増加したヒュームドシリカは、1単位質量当たりのより大きな液体増粘性を提供し、より鋭く、向上されたずれ揺変を達成することができる。また、凝集体サイズが増加したヒュームドシリカは、同じ表面積を有するより小さな凝集体サイズのヒュームドシリカより速く分散し、それにより非常に多くの応用に好適な高表面積シリカを製作する。更に、大型凝集体ヒュームドシリカは、従来のヒュームドシリカより良好なエラストマー補強を提供することができる。最後に、より大きな凝集体サイズのヒュームドシリカは、幾つかの液体中では、物理的老化及びヒステリシスにより良好な抵抗性を示すことができる。
【0061】
それに加えて又はその代わりに、本発明のヒュームドシリカは、ヒュームドシリカの分散物の特徴に関して特徴付けることができる。この点で、本発明は、一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカを提供し、該ヒュームドシリカは、100〜300m2/gの表面積を有し、該ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、(a)10s-1の煎断速度で0.25Pa−s以上の粘度、(b)0.1s-1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって0.8以下のべき法則指数、及び(c)0.1rad/s〜100rad/sの振動数範囲で16〜100Paの弾性率のうちの少なくとも1つを示す。粘度、べき法則指数、及び弾性率を決定するための3重量%分散物は、以下の段落に記述されているように調製される。
【0062】
本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、10s-1の煎断速度で、0.25Pa−s以上、例えば、0.26Pa−s以上、0.27Pa−s以上、0.28Pa−s以上、0.29Pa−s以上、0.30Pa−s以上、0.31Pa−s以上、又は0.32Pa−s以上の粘度を示すことができる。その代わりに又はそれに加えて、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、10s-1の煎断速度で、0.50Pa−s以下、例えば、0.45Pa−s以下、0.40Pa−s以下、0.38Pa−s以下、0.36Pa−s以下、又は0.35Pa−s以下の粘度を示すことができる。従って、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、上記終点の任意の2つにより限定される範囲の、10s-1の煎断速度における粘度を示すことができる。例えば、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、10s-1の煎断速度で、0.25〜0.50Pa−s、0.26〜0.45Pa−s、0.26〜0.40Pa−s、0.27〜0.40Pa−s、又は0.28〜0.38Pa−sの粘度を示すことができる。
【0063】
本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、0.1s-1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって0.8以下、例えば、0.7以下、0.6以下、0.5以下、又は0.4以下のべき法則指数を示すことができる。その代わりに又はそれに加えて、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、0.1s-1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって0.1以上、例えば、0.15以上、0.2以上、0.25以上、又は0.3以上のべき法則指数を示すことができる。従って、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、上記終点の任意の2つにより限定される範囲の、10s-1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたる、べき法則指数を示すことができる。例えば、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、上記終点の任意の2つにより限定される範囲の、10s-1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって、0.1〜0.8、0.1〜0.7、0.2〜0.6、又は0.1〜0.5のべき法則指数を示すことができる。
【0064】
本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、0.1rad/s〜100rad/sの振動数範囲で、16Pa以上及び典型的には100Pa以下の弾性率を示すことができる。本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、0.1rad/s〜100rad/sの振動数範囲で、18Pa以上、20Pa以上、22Pa以上、24Pa以上、25Pa以上、26Pa以上、28Pa以上、30Pa以上、32Pa以上、34Pa以上、又は35Pa以上の弾性率を示すことができる。その代わりに又はそれに加えて、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、0.1rad/s〜100rad/sの振動数範囲で、90Pa以下、85Pa以下、80Pa以下、75Pa以下、70Pa以下、65Pa以下、又は60Pa以下の弾性率を示すことができる。従って、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、上記終点の任意の2つにより限定される範囲の弾性率を示すことができる。例えば、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、0.1rad/s〜100rad/sの振動数範囲で、20〜100Pa、20〜90Pa、20〜80Pa、25〜100Pa、25〜80Pa、又は30〜100Paの弾性率を示すことができる。
【0065】
図5は、本発明のヒュームドシリカ及び従来のヒュームドシリカの分散物間の粘度の比較を例示する。白抜き正方形は、温度−時間プロファイル制御を使用する本発明のプロセスにより生成された本発明のヒュームドシリカを表し、白抜き三角形は、供給材料の下流導入を使用する本発明のプロセスにより生成された本発明のヒュームドシリカを表す。黒抜き円は、従来のヒュームドシリカを表す。図5の点は全て、10s-1の煎断速度でコーンプレート型レオメーターを用いて粘度が測定されたシリカの鉱油中3重量%分散物を表す。図5の水平点線は、表示されている表面積範囲、つまり0.25Pa−sの従来のヒュームドシリカ分散物の粘度限界を例示する。従来のヒュームドシリカ(黒抜き円により表されている)と比較して、急冷後凝集体成長(白抜き正方形により表されている)を使用する本発明のプロセスにより生成された本発明のヒュームドシリカは、分散状態でより大きな凝集体サイズ及びより高い粘性を示し、それにより液体中でより大きな増粘性を達成する。対照的に、供給材料の下流導入を伴う本発明のプロセスにより生成された本発明のヒュームドシリカの分散物(白抜き三角形により表されている)は、例示されている表面積範囲にある従来のヒュームドシリカの予測値と一致する液体中の粘度を示す。従って、供給材料の下流導入を伴う本発明のプロセスは、その結果生じた分散物の粘度を著しくは増加させずに、より大きな凝集体サイズを有するヒュームドシリカを生成するのに非常に有用である。
【0066】
図6は、より大きな凝集体サイズを有する本発明のヒュームドシリカが、いかにして同じ表面積の従来のヒュームドシリカより大きな弾性率を液体(この場合、鉱油)中で提供することができるのか示す。水平点線は、鉱油中の弾性率を増加させる従来のヒュームドシリカの能力の推定限界を表しており、つまり最大16Paである。図5のように、白抜き正方形は、急冷後凝集体成長を使用する本発明のプロセスにより生成された本発明のヒュームドシリカを表し、黒抜き円は、従来のヒュームドシリカを表す。
【0067】
本ヒュームドシリカの3重量%分散物の粘度は、以下のように測定される。 ヒュームドシリカの分散物(バッチサイズ=30g)を、(i)鉱油中で適切な質量のシリカを混合し、(ii)二重非対称遠心機型ミキサー(例えば、DAC150FVZ、Flacktek社製)で10分間混合し、(iii)レオメーター(AR2000EX、TA Instruments社製)を用い、コーンプレート型の形状を使用して(1度、40mm)、5000s-1で2時間剪断することにより調製する。レオロジー実験中の温度は、25℃に制御及び維持される。この分散物の粘度(ηdispersion)は、剪断ステップ(iii)の後で10s-1の煎断速度で測定される値である。
【0068】
本ヒュームドシリカの3重量%分散物のべき法則指数は、以下のように測定する:ヒュームドシリカの分散物(バッチサイズ=30g)を、(i)鉱油中で適切な質量のシリカを混合し、(ii)二重非対称遠心機型ミキサー(例えば、DAC150FVZ、Flacktek社製)で10分間混合し、(iii)レオメーター(AR2000EX、TA Instruments社製)を用い、コーンプレート型の形状を使用して(1度、40mm)、5000s-1で2時間剪断することにより調製する。レオロジー実験中の温度は、25℃に制御及び維持される。べき法則指数は、5000s-1〜0.1s-1で剪断し、データをHerschel−Bulkleyモデルにフィッティングした後に得られる定常状態流動曲線から決定する。Herschel−Bulkleyモデルは、Macosko, C, Rheology: Principles, Measurements and Applications, VCH, New York, 1994に記述されており、固体のように挙動する物質を特徴付けるために使用されている。
【0069】
本ヒュームドシリカの3重量%分散物の弾性率は、以下のように測定される。ヒュームドシリカの分散物(バッチサイズ=30g)を、(i)鉱油中で適切な質量のシリカを混合し、(ii)二重非対称遠心機型ミキサー(例えば、DAC150FVZ、Flacktek社製)で10分間混合し、(iii)レオメーター(AR2000EX、TA Instruments社製)を用い、コーンプレート型の形状を使用して(1度、40mm)、5000s-1で2時間剪断することにより調製する。レオロジー実験中の温度は、25℃に制御及び維持される。弾性率は、動的振動剪断実験(dynamic oscillatory shear experiment)で決定される。典型的には、動的振動数掃引(dynamic frequency sweep)を、0.5%未満のひずみで0.1〜100rad/sで実行する(線形粘弾性の条件内、つまり、ストレス及びひずみが直線的に比例する)。弾性率は、10rad/sで得られる値である。
【0070】
本発明のヒュームドシリカは、典型的には組成物の形態であり、それは任意の好適な形態、例えば粉末又は分散物(水中等)であってもよく、任意の好適な数のヒュームドシリカ粒子、例えば1000個以上のヒュームドシリカ粒子、2000個以上、5000個以上、1×104個以上、1×105個以上、若しくは1×106個以上のヒュームドシリカ粒子、又は任意の好適な量のヒュームドシリカ粒子、例えば1g以上、100g以上、1kg以上、10kg以上、100kg以上、若しくは1000kg以上を有していてもよい。
【0071】
本明細書に記述されているヒュームドシリカは、本明細書に記述されているプロセスにより生成することができる。本発明は、そのようなヒュームドシリカを調製するプロセスを提供する。特に、本発明のプロセスは、以下の工程を含む:(a)シリカ前駆物質を含む供給材料流を準備する工程、(b)可燃性ガス流を準備する工程、(c)一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流を反応器中で形成する工程であって、該凝集体が第1の凝集体サイズであり、前記形成する工程が(c1)供給材料流を可燃性ガス流と混合して、シリカ前駆物質を有する可燃性ガス流を形成し、その後シリカ前駆物質を有する可燃性ガス流を燃焼させて、第1の粒径を有するヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流を形成することによるか、(c2)可燃性ガス流を燃焼させて燃焼ガス流を形成し、その後供給材料流を燃焼ガス流と混合して、シリカ前駆物質がそこに浮遊している燃焼ガス流を形成し、それがその後第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を形成することによるか、又は(c3)先述の項目(c1)及び(c2)の組合せを実施することによって行われる、工程、(d)燃焼ガス流中で、第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子間の接触を可能にし、(d1)第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を1つ又は複数のドーパントと接触させて、その表面を修飾するか、(d2)第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子の温度−時間プロファイル又は履歴を制御して、急冷後凝集体成長を可能にするか、(d3)第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流に追加的な供給材料を導入するか、又は(d4)先述の項目(d1)、(d2)、(d3)のいずれかの組合せを実施するかのいずれか行い、それにより第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流を形成し、第2の凝集体サイズが第1の凝集体サイズより大きいこと、及び(e)第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を燃焼ガス流から回収すること。
【0072】
シリカ前駆物質を含む供給材料流は、任意の好適な様式で形成することができる。シリカ前駆物質は、任意の好適なシリカ前駆物質又はシリカ前駆物質の組合せであってもよい。例えば、シリカ前駆物質は、本発明のプロセスの条件下でシリカに変換されるハロゲン化ケイ素であってもよい。好適なシリカ前駆物質には、これらに限定されないが、クロロシラン、アルキルクロロシラン、シロキサン、又は他の置換シランが含まれる。
【0073】
可燃性ガス流は、任意の好適な様式で形成することができる。可燃性ガスは、任意の好適な可燃性ガス又は可燃ガスの組合せであってもよい。可燃性ガスは、典型的には燃料及び酸化剤を含んでいる。燃料は、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、及びメタン(CH4)等の任意の好適な燃料であってもよい。燃料は、好ましくは水素であるか、又は軽質炭化水素等の高含量の水素含有成分を有する。好適な炭化水素には、これらに限定されないが、天然ガス、メタン、アセチレン、アルコール、灯油、及びそれらの混合物が含まれる。本明細書で使用される場合、「天然ガス」という用語は、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(CsH8)、ブタン(C4H10)、及び窒素の混合物を指す。幾つかの形態では、天然ガスは、比較的少量のヘリウムを更に含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、「灯油」という用語は、石油の分留中に得られる石油炭化水素の混合物を指す。酸化剤は、空気及び/又は酸素等の、任意の好適な酸化剤であってもよい。
【0074】
随意に、希釈剤を、シリカ前駆物質、燃料、及び/又は酸化剤に混合することができる。希釈剤は、典型的には、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の1つ又は複数の実質的に非酸化性又は不活性ガスを含む。
【0075】
可燃性ガス流は、典型的には反応器等の好適な装置中で燃焼される。反応器は任意の好適な構造であってよい。例えば、制御された急冷システムを随意に備えている任意の加熱、冷却、又は耐火炉を使用することができる。可燃性ガスの燃焼は、その結果として火炎及び火炎の下流に流れる燃焼ガス流の形成をもたらす。可燃性ガス流は、望ましくは、その結果として1000℃〜2200℃、好ましくは1400℃〜1900℃の断熱温度を有する火炎をもたらす。参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0156773A1号明細書では、一般的に、ヒュームドシリカを生成するプロセス及び装置が記述されている。
【0076】
シリカ前駆物質を含む供給材料流は、可燃性ガス流、燃焼ガス流、又は可燃性ガス流及び燃焼ガス流の両方と混合される。シリカ前駆物質は、可燃性ガス流及び/又は燃焼ガス流中の蒸気又は微細液滴(例えば、エアロゾル)のいずれかの形態であり、最終的には可燃性ガスの燃焼から生じる高温にさらされ、それによりシリカ前駆物質を、燃焼ガス流に浮遊しているヒュームドシリカ粒子に変換し、該ヒュームドシリカ粒子は、一次粒子の凝集体を含み、該凝集体は第1の粒径である。
【0077】
本発明のプロセスは、燃焼ガス流中で、第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子間の接触を可能にし、(1)ヒュームドシリカ粒子を1つ又は複数のドーパントと接触させて、その表面を修飾すること、(2)例えば、追加的な可燃性ガスを、ヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流に導入することにより、反応器内のヒュームドシリカ粒子の温度−時間プロファイル又は履歴を改変して、急冷後凝集体成長をもたらすこと、(3)追加的な供給材料を、ヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流に導入すること、又は(4)先述の項目(1)、(2)、及び(3)のいずれかの組合せのいずれかを提供する。このようにして、第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子がそこに浮遊している燃焼ガス流が形成され、第2の凝集体サイズは第1の凝集体サイズより大きい。
【0078】
その結果生じるヒュームドシリカ粒子は、任意の好適な様式で燃焼ガス流から回収される。典型的には、第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子は、例えば空気又は他のガスで急冷することにより冷却される。
【0079】
その結果生じるヒュームドシリカ粒子は、望ましくは本明細書に記述されている本発明のヒュームドシリカの実施形態1つ又は複数を表す。言い換えれば、その結果生じるヒュームドシリカは、本明細書に記述されているヒュームドシリカの特徴の1つ又は複数を有する。例えば、本ヒュームドシリカは、式:D≧151+(5400/SA)+0.00054(SA−349)2を満たす凝集体サイズD(PCSにより測定され、単位はnm)及び表面積SA(BETにより測定され、単位はm2/g)を有する。その代わりに又はそれに加えて、本ヒュームドシリカは、100〜300m2/gの表面積を有し、本ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物は、(a)10s-1の煎断速度で0.25Pa−s以上の粘度、(b)0.1s-1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって0.8以下のべき法則指数、及び(c)0.1rad/s〜100rad/sの振動数範囲で16〜100Paの弾性率のうちの少なくとも1つを示す。
【0080】
第1の実施形態では、ヒュームドシリカの一次粒子及び/又は凝集体を、1つ又は複数のドーパントと接触させて、その表面を改質する。第2の実施形態では、本ヒュームドシリカ粒子の温度−時間プロファイル又は履歴は、本ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物が部分的に急冷されるが、その後本ヒュームドシリカ粒子が凝集体サイズを増加させ続けることができる温度にされるか又は維持されるように制御される。急冷後の温度は、火炎の下流の好適な地点に追加的な可燃性ガスを導入することによって等の、様々な方法で達成及び/又は維持することができる。第3の実施形態では、追加的供給材料は、火炎の下流の好適な地点に導入される。本発明は、先述の実施形態のいずれかの組合せ、例えば、(a)ドーパント及び急冷後凝集体成長の両方の使用、(b)ドーパント及び供給材料の下流導入の両方の使用、(c)急冷後凝集体成長及び供給材料の下流導入の使用、並びに(d)急冷後凝集体成長及び供給材料の下流導入と共にドーパントを使用することも企図する。
【0081】
第1の実施形態のプロセスでは、ドーパントは、火炎に又は火炎の下流に導入される。ドーパントは、任意の好適な化合物、典型的には、IA族元素、IIA族元素、IVB族元素、IIIA族元素、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの元素の化合物であってもよい。例えば、ドーパントは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マンガン、カルシウム、アルミニウム、ホウ素、又はチタン含有化合物,例えばナトリウム含有化合物又はチタン含有化合物を含んでいてもよく、から本質的なっていてもよく、又はからなっていてもよい。いかなる特定の理論に束縛されることは望まないが、ドーパントは、既存粒子の表面を流動化させ、それにより表面の局所的融解を引き起こし、凝集体が互いに融合することを可能にし、及び/又は凝集体間の融合及びより大きな凝集体の形成を別様に促進する。
【0082】
ドーパントは、主火炎(例えば、初期粒子生成火炎)に対して1つ又は複数の好適な位置で任意の好適な手段で導入することができる。従って、ドーパントは、任意の好適な地点で燃焼ガス流動中に浮遊している一次粒子及び凝集体を接触させることができる。例えば、ドーパントは、供給材料流、可燃性ガス流、供給材料及び可燃性ガス流の混合物、可燃性ガスの燃焼から生じる火炎、燃焼ガス流、及び/又は初期火炎の下流位置に導入(例えば、注入又はそうでなければ供給)することができ、その位置を調整して、その結果生じるヒュームドシリカ粒子の凝集体サイズに影響を与えることができる。反応器が典型的な直径dreactorを有する場合、ドーパントの導入は、典型的には、小さな(例えば、10dreactor未満の)火炎の場合、主火炎の下流1dreactor〜10dreactorであるが、その位置は、装置の規模、ドーパントの性質、及び火炎のサイズ等の種々の要因に応じて適切に調整される。流動反応器は、円筒状か否かに関わらず、水力直径(hydraulic diameter)等の特徴的な横寸法を有することができ、この寸法は、下流のドーパント導入位置を計る際にdreactorの代わりに用いることができる。ドーパントは、同軸性に、横方向に、又は接線方向で反応器へと導入することができる。可燃性ガス流又は燃焼ガス流に供給されるドーパントの量は、典型的には、ヒュームドシリカの重量に基づいて1ppm〜100,000ppmである。
【0083】
第2の実施形態では、従来のプロセスと比較して、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物の温度−時間プロファイル又は履歴を所望のように制御及び改変して、急冷後凝集体成長を可能にする。反応器中の粒子の温度−時間プロファイル又は履歴は、ヒュームドシリカ凝集体を互いに融合させるのに十分な高温に維持するように改変され、それにより従来のプロセスで生成されるより大きな凝集体を生成する。これは、従来のプロセスとは対照的であり、ヒュームドシリカ及び燃焼ガス混合物は火炎領域を出て、その後、当技術分野で周知である放射、対流、及びより低温ガスとの混合の組合せにより任意の温度に冷却することができる。
【0084】
具体的には、本発明のプロセスの第2の実施形態では、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物を、好ましくはヒュームドシリカの形成のおよそ100ミリ秒以内に、好ましくは1700℃より低い温度へとまず急冷する。その後、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物の温度は、温度上昇/維持ステップにおいて、より小さなシリカ凝集体が互いに融合してより大きな凝集体になることを可能にするのに十分に高い好適な温度に上昇又は維持される。ヒュームドシリカが純粋である(つまり、他の元素でドープされていない)場合、より小さなシリカ凝集体が互いに融合してより大きな凝集体になることを可能にするのに十分に高い温度であるこの温度、つまり急冷後凝集体成長を促進する温度は、1000℃より高く、例えば1350℃より高いが、1700℃より低く、最長2秒間維持することができる。ヒュームドシリカが他の元素でドープされている場合、急冷後凝集体成長を促進する温度は、ドーパント(複数可)の性質及び程度に応じて異なるだろう。この温度上昇/維持ステップの後、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物は、融合プロセスを停止させるために、望ましくは2秒以内に1000℃未満に冷却される。最後に、必要に応じて、当技術分野で一般に実施されているように、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物は更に冷却されて、燃焼ガス流からのヒュームドシリカ粒子の分離を可能にする。
【0085】
急冷後凝集体成長を促進する温度及び/又は温度持続時間は、所望であるより多くの表面積を焼結させて失わせないように調整される。追加的な熱を加えることにより、ヒュームドシリカの表面積がある程度焼結されて失われるが、物質があまりに長い間高温で保持される場合(持続期間は温度に依存する)、最終産物は表面積が過度に低減され、その凝集体サイズは、図1に示されているような従来のヒュームドシリカの集団の凝集体サイズ内に留まる。急冷後凝集体成長に最適な時間及び温度は、温度でのシリカ又はシリカ−ドーパント系の焼結の変動速度に依存する。いかなる特定の理論により束縛されることは望まないが、急冷後凝集体成長のための温度上昇/維持ステップで使用される温度は、粒子の衝突速度よりも急速に凝集させることなく粒子を粘稠状態に維持するためにかろうじて十分な程度であるべきだと考えられている。
【0086】
急冷後凝集体成長から生じる凝集体サイズの増加は、任意の好適な量であってもよい。例えば、凝集体サイズ増加は、約5%以上、約10%以上、約15%以上、又は約20%以上であってもよい。その代わりに又はそれに加えて、図1の曲線(b)を使用して決定されるのと同じ表面積の従来のヒュームドシリカの予測値に対する増加パーセントとしての凝集体サイズの増加は、約5%以上、約10%以上、約15%以上、又は約20%以上であってもよい。
【0087】
急冷後凝集体成長のための温度上昇又は維持は、(1)燃焼ガス/ヒュームドシリカ混合物流の温度を所望の期間維持するために、耐火断熱材を反応器に使用すること、(2)反応器、例えば反応器の壁面を能動的に加熱すること、(3)追加的可燃性ガスを導入すること、及び(4)冷却気体又は液体を導入することのうちの少なくとも1つにより達成することができる。
【0088】
追加的な可燃性ガスが、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物の温度を上昇又は維持するために使用される場合、追加的可燃性ガスは、任意の好適な地点又は複数の地点で任意の好適な様式で、燃焼ガス及びヒュームドシリカ流に供給することができる。追加的な可燃性ガスが点火され燃焼されると、燃焼ガス流中に浮遊しているヒュームドシリカの凝集体の温度が上昇し、それにより燃焼ガス流中で互いに接触する際に凝集体の融合が促進される。追加的可燃性ガスの導入位置及び温度は、その結果生じるヒュームドシリカ粒子の所望の凝集体サイズ及び最終表面積に応じて調整することができる。
【0089】
可燃性ガスの導入が、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物内で急冷後凝集体の制御を提供するために使用される主要な又は唯一の方法である場合、最も重要なプロセス変数は、(a)燃焼ガス及びヒュームドシリカの初期混合物が、追加的可燃性ガスの導入前に冷却される温度、(b)追加的可燃性ガスの導入により引き起こされる断熱温度上昇、(c)当技術分野で周知の様式で熱力学データから計算される初期バーナーの断熱温度、(d)使用される燃料のタイプ、及び(e)幾つかの状況では、可燃性ガス導入後の粒子の推定温度である。
【0090】
追加的可燃性ガスの導入が、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物内で急冷後凝集体成長を提供するために使用される主要な方法である場合、追加的可燃性ガスは、少なくとも100℃、例えば150℃〜300℃の断熱温度上昇をもたらすのに十分であり、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物に十分な熱を伝達させて、凝集体サイズの著しい増加を引き起こすことを保証する必要がある場合がある。最適な量の断熱温度上昇は、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物が初期に急冷される温度に依存する。初期の温度低下が比較的少なく、それにより比較的高い初期急冷後温度に結び付く場合、より少ない断熱温度上昇が必要とされる場合がある。急冷後凝集体成長に十分な温度を提供するために、断熱性耐火区画が、追加的可燃性ガス導入の代りに使用される場合、断熱温度上昇を適用することはできない。更に、耐火断熱材及び追加的可燃性ガス導入の組合せが、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物の温度を上昇又は維持するために使用される場合、急冷後凝集体成長を達成するためにより少ない熱しか必要とされないため、断熱温度上昇はそれほど重要ではない。
【0091】
追加的可燃性ガスは、燃焼ガス流中にある物質の全質量の1%〜100%の量で燃焼ガス流に供給することができる。追加的可燃性ガスは、望ましくは燃料及び酸化剤、並びに随意に希釈剤を含み、該燃料及び酸化剤は、追加的可燃性ガス中で任意の好適な比率であってもよく、例えば、0%〜300%の、好ましくは0%〜60%の、及びより好ましくは5%〜40%の、燃料に対する酸化剤の理論混合比であってもよい。好ましくは、追加的可燃性ガスは、水素を含有する。
【0092】
追加的可燃性ガスは、望ましくは、限界最小値を超える混合物の推定導入後温度の上昇がその結果としてもたらされるように、燃焼ガス流及びヒュームドシリカに供給される。ヒュームドシリカが純粋である(つまり、ドープされていない)場合、この最低温度は、少なくとも600℃、典型的にはおよそ1000℃、例えば1000℃〜1350℃である。推定導入後温度は、まず、当技術分野で周知の様式で、初期ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物の断熱温度を計算することにより算出される。その後、導入前の推定温度は、混合物が追加的可燃性ガス導入地点に移動すると共に生じる熱損失を推定することにより計算される。この熱損失は、反応器中の熱伝導プロセスを近似する適切な関数を、実験的炉温度測定値にフィッティングすることにより推定される。その後、燃料/空気混合物導入の際の考え得る最大の温度上昇又は断熱温度上昇を計算し、追加的可燃性ガス導入前の推定温度に加算して、最終的に推定導入後温度を得る。断熱温度上昇は、当技術分野で周知の様式で、導入された燃料−空気混合物の熱力学的特性、並びに燃焼ガス及びヒュームドシリカ流の熱力学的特性から計算することができる。
【0093】
追加的な可燃性ガスは、主火炎(例えば、初期粒子生成火炎)に対して1つ又は複数の好適な位置で任意の好適な手段で導入することができる。反応器が典型的な直径dreactorを有する場合、追加的可燃性ガス導入は、典型的には主火炎の下流1dreactor〜25dreactorであり、より好ましくは主火炎の下流2.5dreactor〜6dreactorである。流動反応器は、円筒状か否かに関わらず、水力直径等の特徴的な横寸法を有することができ、この寸法は、下流導入の位置を計る際にdreactorの代わりに用いることができる。追加的な可燃性ガスは、同軸性に、横方向に、又は接線方向で反応器へと導入することができる。
【0094】
第3の実施形態では、供給材料の総量の一部は、初期ヒュームドシリカ生成火炎の下流の好適な位置で反応器に供給される。シリカ前駆物質は、火炎から生成されるヒュームドシリカ粒子の表面と反応し、それらは互いに融合しより大きな凝集体になる。このプロセスは、適切な条件下で、最終ヒュームドシリカ凝集体の構造係数を低下させることができる。下流に導入された追加的供給材料の量は、総供給材料の10質量%〜75質量%であってもよく、好ましくは、質量に基づいて10%〜50%であってもよい。追加的可燃性ガスは、主火炎(例えば、初期粒子生成火炎)に対して、1つ又は複数の好適な位置で任意の好適な手段で導入することができる。反応器が典型的な直径dreactorを有する場合、追加的供給材料導入は、典型的には主火炎の下流1dreactor〜120dreactorであり、例えば主火炎の下流2dreactor〜24dreactorである。流動反応器は、円筒状か否かに関わらず、水力直径等の特徴的な横寸法を有することができ、この寸法は、下流導入の位置を計る際にdreactorの代わりに用いることができる。追加的供給材料は、例えば、水素含有燃料、酸化剤、及び希釈剤を含有する追加的可燃性ガスと共に導入することができる。追加的供給材料は、同軸性に、横方向に、又は接線方向で反応器へと導入することができる。
【0095】
凝集体サイズの増加に影響を及ぼすことができるプロセス変数には、下流で導入される供給材料の相対量、もしあれば追加的供給材料と共に導入される燃料の量及びタイプ、並びに導入位置が含まれる。いかなる特定の理論に束縛されることは望まないが、追加的供給材料は、既存のヒュームドシリカ粒子を部分的に被膜し、それにより緩く結合したヒュームドシリカ粒子が、より強い結合で互いに融合し、最終的に大きな凝集体を生成することが可能になる。
【0096】
凝集体サイズの増加を効果的に制御することができるプロセス変数は、下流に導入される供給材料の相対量である。供給材料のより大きな部分が初期粒子生成火炎の下流に供給されることにより、例えば、同じ表面積の従来のヒュームドシリカについて予測されるレベルを超える、凝集体サイズのより大きな増加がもたらされる。クロロシラン供給材料が使用される場合(例えば、四塩化ケイ素、トリクロロシラン、又はメチルトリクロロシラン)、凝集体サイズ増加を効果的に制御することができる別のプロセス変数は、クロロシランと共に導入される水素の相対的化学量論、つまり以下のように定義することができる導入理論H2比率(%)である:導入理論H2=(導入H2のモル数)/(0.5×導入Cl原子のモル数)。
【0097】
導入理論H2比率は、導入物質中の塩素原子を全て反応し尽くすのに必要な量に対する、導入供給材料中の塩素原子との反応に利用可能な導入水素の量を表す。導入理論H2比率が100%を超える場合、導入塩素の全てと反応してHClを形成するのに十分な水素が導入される。導入理論H2比率が100%未満である場合、初期シリカ及び燃焼ガス混合物中に存在する水蒸気は、塩素をHClに変換するための水素の一部を供給しなければならない。より低い値の導入理論H2比率は、より多くの凝集体サイズ成長を促進する。
【0098】
初期ヒュームドシリカの表面積は、開始表面積及び導入理論H2比率に応じて、初期粒子生成火炎の下流に追加的供給材料を導入した後で増加又は減少する場合がある。表面積変化は、下流で導入される供給材料の量に依存しない。小さな開始表面積は、通常、表面積増加をもたらす(負の表面積損失)。同様に、低い値の導入理論H2比率は、少ない表面積損失又は表面積増加の可能性を増加させる。
【0099】
図3及び図4では、白抜き三角形は、クロロシラン供給材料の下流導入を使用する本発明のプロセスにより製作されたヒュームドシリカの例を表す。本発明のプロセスは、同じ表面積を有する従来のヒュームドシリカより非常に大きな凝集体サイズを含むが、同じ表面積の市販のヒュームドシリカのCs値とほぼ等しいCs値を有するヒュームドシリカを提供することができる。言い換えれば、供給材料の下流導入を使用する本発明のプロセスは、表面積及びCs値とは無関係に凝集体サイズを増加させることができる。
【0100】
第3の実施形態のプロセスは、少なくとも2つの一次粒径(つまり、少なくとも二峰性の一次粒径分布で、多峰性の一次粒径分布を含む)を有する凝集体を含むヒュームドシリカを生成することができる。そのようなヒュームドシリカは、典型的には、より小さな一次粒子が、直接的に及び/又はより小さな粒子を介してより大きな一次粒子に結合されているより大きな一次粒子を含む。図9及び10は、そのような本発明のヒュームドシリカのTEM画像である。図9の円で囲まれた部分は、装飾ビーズと呼ばれるより小さな一次粒子が、より大きな一次粒子に結合されていることを示す。
【0101】
特に、本ヒュームドシリカは、最小平均一次粒径及び最大一次粒径を有する少なくとも2つの異なる平均一次粒径を有する粒子の集団を表す少なくとも二峰性の粒径分布を有することができる。最小平均一次粒径は、最大平均一次粒径の約0.05倍以上、約0.1倍以上、約0.15倍以上、又は約0.2倍以上であってもよい。その代わりに又はそれに加えて、最小平均一次粒径は、最大平均一次粒径の約0.5倍未満、約0.45倍以上、約0.4倍未満、又は約0.3倍未満であってもよい。従って、最大平均一次粒子に対する最小平均一次粒径は、上記終点のうちの任意の2つにより限定されていてもよい。例えば、最小平均一次粒径は、最大平均一次粒径の約0.5〜0.4倍、約0.05〜0.3倍、又は約0.1〜0.45倍であってもよい。
【0102】
より大きな一次粒子に関して、最大平均一次粒径により表される一次粒子集団に対する、最小平均一次粒径により表される一次粒子集団の数比率は、任意の好適な値であってもよい。より大きな一次粒子に関して、最大平均一次粒径により表される一次粒子集団に対する、最小平均一次粒径により表される一次粒子集団の数比率は、約1:1以上、約2:1以上、約3:1以上、5:1以上、約10:1以上、又は約20:1以上であってもよい。その代わりに又はそれに加えて、より大きな一次粒子に関して、最大平均一次粒径により表される一次粒子集団に対する、最小平均一次粒径により表される一次粒子集団の数比率は、約50:1未満、約40:1未満、約30:1未満、約20:1未満、又は10:1未満であってもよい。従って、より大きな一次粒子に関して、最大平均一次粒径により表される一次粒子集団に対する、最小平均一次粒径により表される一次粒子集団の数比率は、上記終点のうちの任意の2つにより限定されていてもよい。例えば、より大きな一次粒子に関して、最大平均一次粒径により表される一次粒子集団に対する、最小平均一次粒径により表される一次粒子集団の数比率は、約5:1〜約 40:1、10:1〜約50:1、又は約10:1〜約30:1であってもよい。
【0103】
そのようなヒュームドシリカは、より高い表面積及び分散性の向上を有することができ、少なくとも2つの一次粒径を有してない(つまり、少なくとも二峰性の一次粒径を有していない)凝集体を含むヒュームドシリカと比較して、種々の応用に非常に有用である。例えば、基板、特に半導体及び電子基板の研磨に有用な化学機械的研磨組成物は、そのようなヒュームドシリカを含むこと有益であり得る。従って、本発明は、水性媒質中に分散された本発明のヒュームドシリカを含む化学機械的研磨組成物を提供する。化学機械的研磨組成物は、当技術分野で公知なように、酸化剤、界面活性剤、ポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択される添加剤を更に含むことができる。
【0104】
一次粒子の凝集体を含み、該一次粒子が、少なくとも2つの異なる平均一次粒径を有する一次粒子の集団を表す少なくとも二峰性の粒径分布を有するヒュームドシリカは、例45及び52で実証されている本発明のプロセスを使用して調製することができる。図9、10、及び14は、例45及び52に従って調製されたヒュームドシリカのTEM画像を示し、その結果生じたヒュームドシリカが、一次粒子の凝集体を含み、該一次粒子が、少なくとも2つの異なる平均一次粒径を有する一次粒子の集団を表す少なくとも二峰性の粒径分布を有するヒュームドシリカだったことを明白に示している。対照的に、図8、11、及び13は、例44、47、48、及び50に従って調製されたヒュームドシリカのTEM画像を示し、それらヒュームドシリカは、一次粒子の凝集体を含み、該一次粒子が、少なくとも2つの異なる平均一次粒径を有する一次粒子の集団を表す少なくとも二峰性粒径分布を有するヒュームドシリカではなかった。一次粒子の凝集体を含み、該一次粒子が、少なくとも2つの異なる平均一次粒径を有する一次粒子の集団を表す少なくとも二峰性の粒径分布を有するヒュームドシリカは、先述の例及びそれらの結果の比較から明白であるように、比較的多くの割合の下流導入供給材料(例えば、20%超)、低い導入理論H2比率(例えば、100%未満)、及び/又は比較的低いヒュームドシリカ開始(つまり、急冷後凝集体成長の直前の)表面積(例えば、320m2/g未満)等の、適切なプロセス変数を選択することによって生成することができる。
【0105】
本発明のヒュームドシリカは、従来のヒュームドシリカが当技術分野で処理されるのと同じ様式で、任意の好適な処理剤(複数可)を用いて任意の好適な様式で処理することができる。
【0106】
例えば、ヒュームドシリカは、ヒュームドシリカを疎水性にするために、任意の好適な様式で処理又は機能化することができる。処理剤のタイプ及び処理のレベルは、最終産物の応用、疎水性の所望の度合い、及び他の特徴に応じて変わるだろう。好適な処理剤には、例えば、環式シラザン、有機ポリシロキサン、有機シロキサン、有機シラザン、及び有機シランが含まれ、それらは、例えばハロゲン有機ポリシロキサン、ハロゲン有機シロキサン、ハロゲン有機シラザン、及びハロゲン有機シラン等、随意にハロゲン化されていもよい。好適な処理剤には、参照によりその全体に本明細書に組み込まれる英国特許出願公開第2296915A号明細書に列挙及び記述されている処理剤も含まれる。好ましい処理剤には、ジメチルジクロロシラン、トリエトキシオクチルシラン、トリメトキシオクチルシラン(オクチルトリメトキシシラン(OTMS又はC8)としても知られている)、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、ポリジメチルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、及びそれらの組合せが含まれる。当業者に公知であるように、所望の処理剤によるヒュームドシリカの処理又は機能化には、従来の装置を使用するドライ又はウエット技術のいずれも使用することができる。
【0107】
本発明の又は本発明のプロセスから製作されるヒュームドシリカは、従来のヒュームドシリカが当技術分野で使用されるあらゆる応用に使用することができる。従って、本発明は、(a)必要に応じて任意の好適な様式で、例えば任意の好適な処理剤で処理することができる本発明の又は本発明のプロセスから製作されるヒュームドシリカ、及び(b)そのための担体又は他の成分を含む任意の好適な組成物を提供する。
【0108】
本発明の又は本発明のプロセスから製作されるヒュームドシリカは、最終産物の応用に応じて、乾燥又は分散、典型的には水溶液形態で使用することができる。例えば、ヒュームドシリカは、ゴム及びプラスチックの増量剤としての使用、担体材料としての使用、触媒的活性物質又は支持体としての使用、基部セラミック物質としての使用、電子産業での使用、化粧品産業での使用、シーラント、接着剤、塗料、及びコーティングの添加剤として使用、レオロジー制御が望ましい他の産業での使用、及び熱保護安定化用の使用を含む典型的な応用に有用であり得る。
【0109】
分散形態で使用される場合、本ヒュームドシリカは、紙及び厚紙等のインクジェット媒体の応用に、ガラス物品及び光ファイバーの生産に、並びに半導体及び電子産業における集積回路、硬質メモリディスク、及び他の基板の製造に使用されるもの等の化学機械的研磨の応用に使用することができる。例えば、研磨応用用の組成物を調製するために使用される場合、本ヒュームドシリカは、水にゆっくりと添加してコロイド分散を形成させ、その後従来技術を使用して、高剪断混合にかけることができる。分散物のpHは、典型的には、コロイド安定性を最大限にするために等電点から遠ざけて調整される。好適な酸化成分、界面活性剤、及び/又はポリマーを組成物に添加して、研磨速度及び選択性を最大限にしつつ、組成物を用いた研磨から生じる基板欠陥を最小限に抑えることができる。
【0110】
本明細書に記載されているように、本発明のプロセスは、互いに独立している凝集体サイズ及び表面積を有するヒュームドシリカ、並びに凝集体の表面積に依存しない凝集体サイズ分布を有するヒュームドシリカの調製を可能にする。その結果、本発明は、従来のヒュームドシリカが有していない、凝集体サイズ又は凝集体サイズ分布、及び表面積の固有の組合せを有するヒュームドシリカを提供する。更に、本発明は、様々な従来のヒュームドシリカの混合物を形成することでは一致させることができない、二峰性又は多峰性の凝集体サイズ分布を有するヒュームドシリカを提供する。そのような本発明のヒュームドシリカから調製される組成物は、従来のヒュームドシリカから調製される組成物の特性とは著しく異なる特性、例えばレオロジー性能を有することができる。
【実施例】
【0111】
以下の例は本発明を更に例示するが、無論、いかなる点でも本発明範囲を制限するとは解釈されるべきでない。
例1〜25
【0112】
例1〜25に、ヒュームドシリカに対するドーパントの効果を示す。
【0113】
様々なヒュームドシリカを研究室スケールで表1〜4に列挙した条件を用いて生成した。詳細には、例1〜25の各々において、液体シリカ前駆体、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)を噴霧器に供給した。前駆体、即ち原料を当技術分野にて周知の、従来のヒュームドシリカプロセスと同様のプロセスにて、ノズル及び酸素ガスを使用して微細な液滴に霧化した。霧化された原料を、一組のパイロットバーナーで包囲された中心バーナーに供給した。メタン及び酸素ガスをパイロットバーナーに供給した。パイロット燃料の燃焼は追加の熱を提供して、中心バーナー炎中での燃焼と粒子形成プロセスとを補助した。
【0114】
例1〜4では、プロセスにドーパントを全く加えず、それにより例1〜4は比較例として機能した。例5〜25では、ドーパントをキャリア燃料とブレンドした。ドーパントはチタンジイソプロポキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)(「TiDi」)又は酢酸ナトリウム(「NaAc」)であり、キャリア燃料はエタノール(EtOH)であった。ドーパント及びキャリアを霧化し、中心バーナー又は炎の特定の下流位置(例えば、例11〜15では、炎の15.0cm下流)内に導入した。最終的なドーパント濃度は、シリカの質量に対するドーパントの原子(Ti又はNa)の質量比であった。例では、ドーパントが主炎の下流に導入された場合、ドーパントキャリアはエタノールであり、エタノールの流速は一般に、一対の霧化ノズルを介して2〜4ml/分であった。ドーパント−霧化酸素は、ドーパント及びキャリアを霧化するのに十分な速度(例にて8〜10L/分)で供給された。全例において、L/分は標準ガス状態(T=273K、P=1.0135バール)を参照する。
【0115】
得られたヒュームドシリカの質量平均凝集体サイズ及び表面積を、表1〜4に示す。例5〜25の結果を、図2に白菱形点としてプロットする。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
表1〜4に示すように、ドーパントを使用して本発明のプロセスにより調製された例5〜25のヒュームドシリカは、ドーパントを使用せずに従来のプロセスにより調製された例1〜4のヒュームドシリカよりも大きい凝集体により特徴付けられた。特に、これらの例の結果を比較すると、ドーパントの存在は、所定の表面積にて増大された凝集体サイズを有するヒュームドシリカを生成することが示される。また、ドーパントの種類は、凝集体サイズにおける増大の程度を変更する。例において、Ti−ドーパントはNa−ドーパントよりも遙かに有効であった。プロセス変数を精密に調整し、ドーパントを適切に選択することにより所望の凝集体サイズを得ることができる。ドーパント導入の位置も、得られたヒュームドシリカの最終的な凝集体サイズに影響を与え得る。例えば、Na−ドーパントを使用した場合、導入地点を下流に移動することにより、得られたヒュームドシリカの凝集体サイズが低下した。
例26〜31
【0121】
例26〜29に、ヒュームドシリカ生成物の最終的な凝集体サイズに対する、クエンチ後の凝集体成長中のプロセス変数の効果を示す。
【0122】
これらの例において、ヒュームドシリカ/燃焼ガス混合物の温度を適切なレベルに維持する主な方法は、追加の可燃性ガスの導入であった。これらの例では、ヒュームドシリカの温度を上昇させ又は維持して所望の凝集体成長を生じる方法を用いるに先だって、ヒュームドシリカを最初に約1700℃未満に冷却することの重要性を説明する。
【0123】
これらの例では、表5に示すプロセス条件を用いて、様々なヒュームドシリカを生成した。ヒュームドシリカの調製プロセスは、クロロシラン原料、水素及び空気の混合物を燃やす炎と、燃料/空気混合物である追加の可燃性ガスの下流導入とを含んでいた。反応器の直径は250mmであり、追加の可燃性ガスの導入は、表5に示すように、バーナーの主炎の下流の異なる地点で行われた。例26〜28では、追加の可燃性ガスは主バーナーを包囲する環状間隙、即ち輪(ring)内へ追加の可燃性ガスの推定混合物を同軸注入することにより導入され、燃焼ガスの流れは、主炎後にて約1バーナー直径(65mm)であった。例29〜31では、追加の可燃性ガスは、追加の可燃性ガスを横方向に、即ち反応器の軸に直交して注入することにより導入された。
【0124】
バーナー断熱温度は、主バーナーに供給された原料、水素及び空気の熱力学的データから、当技術分野にて公知の方法で計算された。燃料/空気混合物の導入前の推定温度は、バーナーの周囲の環(annulus)内に供給されたバーナーガス及び追加のクエンチガスの断熱混合温度から、温度の指数関数的減衰を仮定することにより計算し、次に該温度を反応器内部の温度測定値に適合させた。次に、適合された表現(expression)を導入地点で評価して、導入前の推定温度を得た。断熱温度上昇は、上記の通りである。
【0125】
得られたシリカに関する質量平均凝集体サイズ及び表面積を、表5に示す。凝集体サイズにおける増大は、図1の線(b)を用いて決定される、同一の表面積を有する従来のヒュームドシリカに関する予想値を超える増大の割合である。
【0126】
【表5】
【0127】
表5に提供された結果は、本発明のプロセスにおいて、燃焼ガスとヒュームドシリカとの初期混合物を1700℃未満に冷却させることの望ましさを示す。追加の可燃性ガス導入前の冷却が1700℃を下回らない例26及び27では、表面積に関して予想される凝集体サイズ(図1の所定の線(b))と比較された凝集体サイズの増大が、追加の可燃性ガス導入前の冷却が1700℃未満であった例28〜31よりも遙かに小さかった。
例32〜36
【0128】
例32〜34は、追加の可燃性ガスの導入が初期ヒュームドシリカ/ガス混合物の温度の上昇のための主要な方法であり、初期クエンチ温度が1200℃〜1350℃である場合の、得られたヒュームドシリカの凝集体サイズにおける断熱温度上昇の程度の効果を示す。
【0129】
表6に別様に示されるものを除き、例26〜31のヒュームドシリカの生成に使用したものと同一のプロセスを用いて様々なヒュームドシリカを生成した。得られたヒュームドシリカに関する質量平均凝集体サイズ及び表面積を、表6に示す。凝集体サイズにおける増大は、図1の線(b)を用いて決定される、同一の表面積を有する従来のヒュームドシリカに関する予想値を超える増大の割合である。
【0130】
【表6】
【0131】
例32及び33では、例34の断熱温度の150℃の上昇と比較して、断熱温度を100℃上昇させた。これらの結果に基づき、断熱温度を100℃を越えて上昇させて約15%を越える凝集体成長を達成することが望ましい。しかしながら、この実施形態における方法の異なる組み合わせ、例えば、より高い初期クエンチ温度、又は追加の可燃性ガスの導入と組み合わせた耐火物炉の使用により、この最低断熱温度の上昇はより小さくなり得る。換言すれば、これらの例では、100℃を越える断熱温度の上昇は、有意により大きい凝集体の生成に有用であるが、反応器の構造又は実施における相違がこの最小値を変更し得る。ヒュームドシリカの最終的な表面積は、バーナー断熱温度と断熱温度上昇の程度とを調整することにより変更され得る。
【0132】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、ヒュームドシリカの焼結速度に関する物理的議論と、操作経験とにより、この実施形態では、凝集体成長を達成するには幾分かの最低導入後温度が必要であると想定される。そうでない場合、当技術分野にて頻繁に実行される手順、例えばシリカの実際の温度を出発点の約50〜100℃から600℃迄上昇させるヒュームドシリカの乾燥又はか焼が、凝集体サイズ−表面積の関係の様々な変化を生じるであろう。これらの手順は従来のヒュームドシリカを特徴付ける比較的狭い範囲の凝集体サイズ及び表面積に影響を与えないため、600℃を越える幾分かの最低導入後温度が存在すると思われる。純粋な(即ち、非ドープ)ヒュームドシリカの場合において、この温度を定義するために例35と36の比較が試みられた。例35では、ヒュームドシリカの推定導入後温度は1350℃であり、凝集体サイズの増大は15%未満であった。例36では、ヒュームドシリカの推定温度は1370℃であり、凝集体サイズの増大は22%であった。しかしながら、例35では、断熱温度の上昇も比較的小さく、これは比較的小さい凝集体サイズの増大の理由であり得る。従って、これらの例の結果により最低注入後温度は少なくとも1000℃であり、1350℃付近又はそれ未満であると示唆される。これらの結果及び他の操作経験に基づき、非ドープヒュームドシリカの場合、プロセス変数を調整するために、推定導入後温度を約1350℃を越えて上昇させることが望ましいと思われる。
【0133】
加えて、有意な凝集体サイズ増大を達成するのに必要な最低導入後温度は、導入する燃料ブレンドの種類に応じて変動する。例えば、H2の代わりにCH4が使用される場合、又は希釈剤が使用される場合、温度は1350℃よりも相当高いものであり得る。更に、ドーパントがシリカの融点又は焼結温度を低下させる場合、有意な凝集体成長を生じる最低導入後温度も低下するであろう。
例37〜42
【0134】
例37〜42は、バーナー断熱温度と直接相関する出発表面積と、断熱温度上昇との、ヒュームドシリカの最終的な凝集体サイズに関する効果を示す。
【0135】
表7に別様に示されるものを除き、例26〜31のヒュームドシリカの生成に使用したものと同一のプロセスを用いて様々なヒュームドシリカを生成した。出発表面積は、バーナー断熱温度のみに依存するため、これらのプロセス変数は交換可能に考慮することができる。バーナー断熱温度と出発表面積との間の特定の関係は、特定のバーナー設計及びプロセスに用いられる冷却又はクエンチガスの種類に依存する。これらの例は、この実施形態の他の全例と同一のバーナー種類及びクエンチガス条件の使用を含んでいた。
【0136】
得られたシリカに関する質量平均凝集体サイズ、表面積、及び表面積損失、並びに凝集体サイズの増大を表7に示す。「表面積損失」という表現は、可燃性ガスの導入の結果としてシリカ表面積が低下する量(m2/gにて)を指す一方、「凝集体サイズの増大」という表現は、図1の線(b)を用いて決定される、同一の表面積を有する従来のヒュームドシリカに関する予想値を超える増大である。
【0137】
【表7】
【0138】
例37〜42の結果は、プロセス条件が、燃焼ガスとヒュームドシリカの初期混合物が1700℃未満に冷却され、次いで例えば断熱温度を100℃を越えて上昇させることによって温度が閾値温度、例えば約1350℃を越えて上昇され又維持されるものである場合に、凝集体成長の最終的な程度が、断熱温度の上昇と、その温度が上昇される前のシリカの初期表面積とに大きく依存することを示す。追加の熱は初期表面積の損失又は低下の原因となるが、凝集体を成長させることにより、その最終的な表面積におけるサイズが従来の凝集体と比較して大きい凝集体をもたらす。例は、表面積損失が出発表面積及び断熱温度上昇に依存し、また、凝集体サイズの増大が断熱温度上昇に依存することを示す。
【0139】
最終的な凝集体サイズ及び表面積に対するこれら二つのプロセス変数の結果を、図7にも示す。図示した点は、例示的な従来のヒュームドシリカ(黒丸)と、クエンチ後の凝集体成長を用いる本発明のプロセスに従って生成されたヒュームドシリカ(白四角)とに関する凝集体サイズ及び表面積を示す。破線曲線は、プロセスデータ(表7を含む)からの適合であり、断熱温度上昇の程度として適用された熱の量(水平チェックマーク及び線の数字で示される)と出発表面積とを鑑みた、予測される最終的な凝集体サイズ及び表面積を表す。プロセスの出発点において、初期シリカは、従来のヒュームドシリカ(黒丸)の表面積と凝集体サイズとの範囲内で、出発表面積と称される表面積と、該表面積に対応する凝集体サイズとを有する。断熱温度が上昇するにつれてヒュームドシリカの表面積が低下し、凝集体サイズは、断熱温度上昇の程度に従って、この出発点から破線曲線に平行な曲線に沿って増大する。例えば、ヒュームドシリカの出発表面積が400m2/gの場合、最終的な生成物の図7における位置は、用いられる断熱温度上昇の程度に従って、最も左の曲線迄移動するであろう。これらの全データは、追加の可燃性ガスに、H2と空気との55%/45%体積ブレンドを使用することから得られる。
【0140】
この実施形態に重要な他のプロセス変数として、燃料ブレンドと追加の可燃性ガスが導入される位置とが挙げられる。一般に、水素と空気又は酸素とのブレンドが好ましい。空気の代わりにN2を使用し、及び/又はH2の代わりに炭化水素燃料を使用することにより、比較的効果の低いプロセス(加えられた熱の量に関する比較的低い凝集体成長)が提供され得る。導入の有効な位置範囲は、シリカと燃焼ガスとの初期混合物の冷却速度に依存する。所定の冷却速度において、主炎の下流の導入位置は、シリカが1700℃未満に冷却されるような時間の範囲内に保たれるが、推定される導入後温度は尚約1350℃を越えるであろう。冷却速度は、反応器の設計と初期の炎の冷却に使用される技術とに高く特定される。従って、追加の可燃性ガス導入の適切な位置の範囲は、反応器に応じて異なり得る。例に使用される反応器システムにおいて、有効な範囲は1d反応器〜少なくとも10d反応器である。追加の可燃性ガス導入位置が有効範囲内である場合、他の条件が同一で、追加の可燃性ガス導入の位置を更に下流に移動することによって凝集体成長が僅かに改善するであろう。これらの例に使用された反応器の構造以外の反応器の構造、例えばより長い耐火位置を有する反応器では、この効果はより顕著であり得る。
例43〜52
【0141】
初期のヒュームド−シリカ生成炎の下流にて原料を導入することによる大きい凝集体のヒュームドシリカの生成を、例43〜52に示す。
【0142】
表8に別様に示されるものを除き、例26〜31のヒュームドシリカの生成に使用したものと同一のプロセスを用いて様々なヒュームドシリカを生成した。例において、シリカは最初、クロロシラン原料、水素及び空気を燃焼させる予混合炎を用いて生成された。それにより反応器へ流れるヒュームドシリカ粒子と燃焼ガスとの流れが形成された。追加の原料、水素及び空気の流れを、最初のシリカ−生成炎の下流の特定地点にて導入した。追加の原料の導入により原料と水素とが反応した。
【0143】
得られたシリカに関する質量平均凝集体サイズ、表面積、表面積損失、及び凝集体サイズの増大を表8に示す。「表面積損失」という表現は、可燃性ガスの導入の結果としてシリカ表面積が低下する量(m2/gにて)を指す一方、「凝集体サイズの増大」という表現は、図1の線(b)を用いて決定される、同一の表面積を有する従来のヒュームドシリカに関する予想値を超える増大である。
【0144】
【表8】
【0145】
図8〜14は、各々、例44、45(第一サンプル)、45(第二サンプル)、47、48、50及び52に従って生成されたヒュームドシリカのTEM像である。図9、10及び14から明らかなように、例45及び52から得られたヒュームドシリカは、一次粒子の凝集体を含み、ここで一次粒子は、少なくとも二つの異なる平均一次粒子サイズを有する一次粒子の集団を表す、少なくとも一つの二峰性粒子サイズ分布を有する。対照的に、図8、11、12及び13は、少なくとも一つの二峰性粒子サイズ分布を有さなかった一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカを示す。これらの結果は特定の構造を有する本発明のヒュームドシリカを提供する際のプロセス変数の重要性を示す。
【0146】
例43〜52の結果は、凝集体サイズの増大の程度に対する、下流で導入された原料の割合と、導入された理論H2比との効果を示す。相対的に少ない原料導入(例43、44、47及び48)の例を、相対的に多い原料導入(例45、46、49、50、51及び52)の例と比較することにより、この範囲内で導入される相対的な原料の量の増加が、凝集体成長をどのように増大させるかが示される。同様に、低い及び高い導入された理論H2比の例を比較することにより、この低い比の値が、他の条件が同一で、高い値と比較してどのように凝集体成長をより促進するかが示される。同様の比較により、表面積損失(又は増大)に対する出発表面積と導入理論H2比との影響が示される。
【0147】
クエンチ後凝集体成長手法とは対照的に、原料の下流導入は、凝集体サイズが予想よりも大きいが、その構造係数は従来のヒュームドシリカよりも大きくないシリカを生成し得る。図3及び図4において、白三角点は例46に対応する。ヒュームドシリカは非常に増大された凝集体サイズを有するが、その構造係数は従来のヒュームドシリカと類似している。対照的に、クエンチ後の凝集体成長プロセスのより大きい凝集体は、より大きい構造係数を有する。
【0148】
上述したプロセス変数に加えて、原料が導入される下流地点の温度も、成長プロセスに影響を与えると思われる。下流の原料導入の位置は、3.3〜8d反応器である場合、凝集体成長及び表面積変化に幾分かの影響を与える。
【0149】
原料と共に導入される酸素の相対的な量は、例51及び52の結果から示唆されるように、導入された理論H2が<100%の場合、凝集体の成長量により強い影響を有し得る。導入された空気の相対的な量は「導入された理論的酸素」と称されてもよい。この比は、導入材料と共に供給される酸素の量を、原料中の全Si原子が反応してSiO2、全炭素原子がCO2、残りの全水素原子(HClの形成のために消費されない)がH2Oとなるのに化学量論的に必要な量で割ったもので表される。比が100%未満に低下された例52では、導入理論H2も<100%であり、図2の凝集体の中で最も大きい凝集体が生成される。
例53〜58
【0150】
例53〜58に、大きい凝集体のヒュームドシリカの処理を示し、処理した大きい凝集体のヒュームドシリカの特性を、同様に処理した従来のヒュームドシリカの特性と比較する。
【0151】
様々なヒュームドシリカを、従来の方法と、本明細書に記載した本発明のプロセス、詳細には例26〜31に記載したクエンチ後凝集体成長法に従って生成した。従来のヒュームドシリカと、本発明の(即ち、クエンチ後の凝集体成長)ヒュームドシリカとを、異なる処理剤:オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、及びオクチルトリメトキシシラン(C8)で処理した。処理はシリカ上へのシラン及びシロキサンの気相反応のための「工業標準手順」に従って実行された。使用した各処理、即ちD4、HMDZ及びC8に関して、表面修飾のレベルは一定に維持された。換言すれば、同一の処理剤で覆われたシラノール基の割合は、同一の処理剤で処理された従来のヒュームドシリカと本発明のヒュームドシリカとを比較した際に同一であった。この方法では、処理した従来のヒュームドシリカと本発明のヒュームドシリカと間で測定される性能における任意の差異は、異なる処理レベルによって生じる疎水性における差異ではなく、従来のヒュームドシリカと本発明のヒュームドシリカとの間の構造における差異に起因するものであり得る。しかしながら、異なる処理剤で覆われるシラノール基の割合は必ずしも同一ではなく、従って異なる処理剤で処理された従来のヒュームドシリカと本発明のヒュームドシリカとの間の比較は不可能である(例えば、D4で処理した従来のヒュームドシリカ又は本発明のヒュームドシリカは、HMDZで処理した従来のヒュームドシリカ又は本発明のヒュームドシリカと比較できない)。
【0152】
D4、HMDZ及びC8で処理した従来のヒュームドシリカと本発明のヒュームドシリカとの特性を、表9に列挙する。
【0153】
【表9】
【0154】
処理した従来のヒュームドシリカと本発明のヒュームドシリカとのレオロジー性能を評価するためのモデルとして、典型的なエポキシ樹脂組成物を使用した。エポキシ樹脂組成物は、レオロジー制御のために疎水化されたヒュームドシリカの使用を必要とする、複合材料、接着剤及びコーティング等の用途にて良好なモデル流体である。評価は、最初に、処理した従来のヒュームドシリカ又は本発明のヒュームドシリカのいずれかを含有する、高く濃縮された分散物(マスターバッチ)を調製した後、このマスターバッチを希釈して試験サンプルを提供することにより行われた。詳細には、適量のエポキシ樹脂(HEXION(商標)Epon 828)及び処理した従来のヒュームドシリカ又は本発明のヒュームドシリカを測定し、二つの構成成分を二重非対称型ミキサー(dual asymmetric-type mixer)(DAC 150 FVZ、Flacktek)内で混合することにより15重量%のマスターバッチを調製した。この手順は2ステップにて行った:(1)ウェット・イン(wet-in)(典型的には1.5分@2000rpm)、及び(2)粉砕(典型的には5分@3500rpm)。分散レベルが十分であることを確認するために、得られた分散物を評価してヘグマングラインド(Hegman grind)5の達成を常に確実にした。マスターバッチを調製した後、十分な量のマスターバッチとエポキシ樹脂とを別個のカップに加えることにより一連の濃度(2.44、4、7及び10重量%の処理した従来のヒュームドシリカ又は本発明のヒュームドシリカ)を調製した。希釈分散物の最終的な混合を二重非対称型ミキサー(DAC 150 FVZ、Flacktek)内にて2000rpmで1.5分間行った。濃度は全サンプルに関して0.001重量%以内で調製した。
【0155】
処理した従来のヒュームドシリカ及び本発明のヒュームドシリカのエポキシ樹脂中の増粘力を、様々なエポキシ樹脂サンプルの降伏応力を測定することにより評価した。降伏応力は、流体を流動させるのに必要な最小応力を表す。換言すれば、降伏応力未満で流体は変形を殆ど又は全く示さず、固体の挙動と類似する。降伏応力を越えると、流体は変形され得るため流動する。降伏応力は、文献(Macosko, C, Rheology: Principles, Measurements and Applications, VCH, New York, 1994)にて入手可能な任意の粘塑性モデルを使用して、レオロジー実験から抽出することができる。これらの例における各エポキシ樹脂サンプルに関する降伏応力は、応力制御ステップフロー(stepped flow)実験にて得られたデータをHerschel−Bulkleyモデルに適合することにより決定された。
【0156】
図15、16及び17は、表9に列挙した処理した従来のヒュームドシリカ及び本発明のヒュームドシリカを使用して調製したエポキシ樹脂サンプルの降伏応力を、エポキシ樹脂サンプル中の処理した従来のヒュームドシリカ及び本発明のヒュームドシリカの濃度の関数として示す。例53及び54は図15に示され、例55及び56は図16に示され、例57及び58は図17に示されている。図15〜17の各々にて、描かれた曲線は、べき法則モデル:
YS=m(C)n
(式中、m及びnは、調整可能なパラメータ、YS=測定された降伏応力(Pa)、及びC=シリカ粒子の濃度(重量%)である)
に対する実験データの最良の適合を表す。
【0157】
図15〜17に示す降伏応力データから明らかなように、降伏応力は、分散物中の処理した従来のヒュームドシリカ又は本発明のヒュームドシリカの濃度が増加するにつれて増大した。この挙動は液体系中の固体粒子の分散物に典型的であり、流体(ここではエポキシ樹脂)の体積が固体粒子(ここでは処理した従来のヒュームドシリカ又は本発明のヒュームドシリカ)で益々満たされるにつれて、流体が変形に対してより耐性となることを示す。図15〜17に示す降伏応力はまた、本発明のヒュームドシリカが、全濃度に関して、従来のヒュームドシリカよりも高い降伏応力を有することを示した。更に、従来のヒュームドシリカと比較して増大された本発明のヒュームドシリカの降伏応力は、サンプル中のヒュームドシリカの濃度が増大するにつれて更により顕著となり、このことは本発明のヒュームドシリカの増粘能力が、従来のヒュームドシリカの増粘能力よりも高いことを示した。処理剤の表面被覆率が各処理にて同一に維持されたため、対応する例53、55及び57のヒュームドシリカと比較して増大された例54、56及び58のヒュームドシリカの増粘能力は、本明細書に記載した本発明のプロセスによる凝集体サイズの増大が原因となっている。
例59〜61
【0158】
同様の凝集体サイズ又は同様の表面積のいずれかを有する、従来のヒュームドシリカ及び本発明のヒュームドシリカの様々なサンプルの凝集体サイズ分布(ASD)を測定し、例59〜61にて比較した。
【0159】
試験したサンプルは、二種の商業的に入手可能な従来のヒュームドシリカと、本明細書に記載した本発明、詳細には例26〜31に記載したクエンチ後凝集体成長法に従って生成されたヒュームドシリカであった。第一の従来のヒュームドシリカ(例59)と、本発明のヒュームドシリカ(例60)とは同様の質量平均凝集体サイズを有する一方、第二の従来のヒュームドシリカ(例61)と本発明のヒュームドシリカとは同様の表面積を有した。
【0160】
従来のヒュームドシリカと、本発明(即ち、クエンチ後の凝集体成長)のヒュームドシリカとの各々の凝集体サイズ分布を、粒子サイズを分離する原理として差異沈降法を使用するCPSディスク遠心分離器内モデルDC24000(CPSインストルメンツ社(CPS Instruments, Inc.)を使用して測定した。この方法では、粒子は流体中で、球体に関して:
ζ=6πηR
(式中、ζ=摩擦係数、η=球体が浮遊する液体の粘度、及びR=球体の半径である)として表現できるストークス則(Stokes’ Law)に従って、重力場内で沈殿する(Rubinstein M., and Colby R.H., Polymer Physics, Oxford University Press, New York, 2003)。沈降速度は粒子の直径の二乗で増加するため、異なるサイズの粒子は異なる速度で沈殿する。この差異により、凝集体の集団が、約5%の分解能にて分離される(CPSインストルメンツ社から提供された技術情報による)。
【0161】
ASD測定を行うために、ヒュームドシリカのサンプルを分散し、pH調整脱イオン水中で安定させて、ヒュームドシリカ凝集体が塊になることを防止し、それにより誤測定を防止した。
【0162】
詳細には、pH10.5の水(即ち、0.5N NaOHでpH10.5に調整された脱イオン水)中の各ヒュームドシリカの1.2重量%分散物を、50Wで7分間連続的に超音波処理することにより調製した。超音波処理器は電力変換器とMosonixタップ付きチタンホーンプローブとを有するMisonix Model XL2020超音波処理器であったが、分散物の調製には任意の同様の超音波処理器を使用することができる。分散物を超音波処理した後、分散物のpHを測定し、0.5N NaOH溶液を用いてpH10.5に再調整した。
【0163】
凝集体サイズ分布に関して評価した従来のヒュームドシリカ及び本発明のヒュームドシリカの特性を、表10に列挙する。
【0164】
【表10】
【0165】
得られた分散物をCPSディスク遠心分離器内に供給し、各サンプルに関して凝集体の分布を得た。結果を図18のグラフにプロットする。
【0166】
図18から明らかなように、220±5nmの質量平均凝集体サイズと、90m2/gの表面積(例59)とを有する従来のヒュームドシリカは、単峰性(mono-modal)の凝集体サイズ分布を有した。対照的に、クエンチ後凝集体成長方法を用いて生成された本発明のヒュームドシリカは、同様の質量平均凝集体サイズ229±5nmを有したが、有意に異なる表面積200m2/g(例60)を有し、図18から明らかなように二峰性の凝集体サイズを示した。同様の表面積200m2/gを有する従来のヒュームドシリカは、有意に異なる質量平均凝集体サイズ170±5nmを有し(例61)、図18から明らかなように単峰性の凝集体サイズ分布を示した。
【0167】
例59〜61の従来のヒュームドシリカの質量平均凝集体サイズと表面積との間の関係は、従来のヒュームドシリカに典型的なものであった。例59及び61の従来のヒュームドシリカの物理的ブレンドは、例60の本発明のヒュームドシリカにより示される二峰性凝集体サイズを生じないであろう。また二種の従来のヒュームドシリカの任意の物理的ブレンド(即ち、任意の比におけるブレンド)は、レオロジー性能の見地から本発明の単一のヒュームドシリカとは常に異なることが予想され、例えば、本発明の単一のヒュームドシリカよりも統計的に有意に低い粘度を有するであろう。この差異の理由は、本発明のヒュームドシリカ凝集体が、二種の従来のヒュームドシリカの任意の物理的ブレンドからなるヒュームドシリカ凝集体よりも一様に大きい表面積を有する事実に関連していると思われ、ここでいくつかのヒュームドシリカ凝集体(ブレンドの二つの構成成分のうちの一方の)は本発明のヒュームドシリカ凝集体と同様の表面積を有し、その他のヒュームドシリカ凝集体(ブレンドの二つの構成成分のうちの他方の)は本発明のヒュームドシリカ凝集体よりも有意に小さい表面積を有する。
【0168】
出版物、特許出願及び特許を含む、本明細書に引用した全ての参考文献は、各参考文献が個別かつ明確に参照により組み入れられることを示されると同一の程度において参照により本明細書に組み入れられ、それらの全体が本明細書に示される。
【0169】
本発明を記載する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」、「an」及び「the」並びに同様の指示物の使用は、本明細書にて別に示されず、又は文脈により明白に否定されない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、別に示されない限り、制限のない用語(即ち、「含むが、〜に限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書にて値の範囲の記述は、本明細書にて別に示されない限り、単にその範囲内に入る別個の各値に個々に言及する簡略な方法としての役割を果たすよう意図され、別個の各値は、それらが本明細書に個別に引用されるが如く、明細書中に組み込まれる。本明細書に記載した全方法は、本明細書にて別に示されない限り、又は文脈により別に明白に否定されない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書に提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言葉(例えば、「〜等、〜のような」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図し、別に宣言されない限り、本発明の範囲に関する限定を主張するものではない。明細書中のいかなる言葉も、任意の非特許請求要素を本発明の実行に必須であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0170】
本発明を実行するための本発明者等に公知の最良のモードを含む、本発明の好ましい実施形態を本明細書に記載する。それらの好ましい実施形態の変形は、前述した記載を読むことにより当業者に明らかとなり得る。本発明者等は、当業者がそれらの変形を適宜使用することを予想し、また本発明者等は、本発明が本明細書に詳細に記載されたものとは別様に実行されることを意図する。従って、本発明は、適用される法律により許可される、本明細書に付属する特許請求の範囲に引用された主題の全ての変更物及び等価物を含む。更に、全ての可能な変形を含む上述した要素の任意の組み合わせは、本明細書に別に示されない限り、又は文脈により別に明白に否定されない限り、本発明に包含される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカであって、前記ヒュームドシリカが、PCSにより測定される単位がnmの凝集体サイズD、及びBETにより測定される単位がm2/gの表面積SAを有し、下記式:
D≧151+(5400/SA)+0.00054(SA−349)2
を満たす、ヒュームドシリカ。
【請求項2】
前記ヒュームドシリカが下記式:
874−1.75(SA)≧D≧291−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
667−0.71(SA)≧D≧222−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
518−0.12(SA)≧D≧173−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
346+0.28(SA)≧D≧115+0.09(SA)、ここで425<SA≦550、
を満たす、請求項1に記載のヒュームドシリカ。
【請求項3】
前記ヒュームドシリカが下記式:
874−1.75(SA)≧D≧306−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
667−0.71(SA)≧D≧237−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
518−0.12(SA)≧D≧188−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
346+0.28(SA)≧D≧130+0.09(SA)、ここで425<SA≦550、
を満たす、請求項2に記載のヒュームドシリカ。
【請求項4】
前記ヒュームドシリカが下記式:
391−0.58(SA)≧D≧306−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
322−0.24(SA)≧D≧237−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
273−0.04(SA)≧D≧188−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
215+0.09(SA)≧D≧130+0.09(SA)、ここで425<SA≦550、
を満たす、請求項2に記載のヒュームドシリカ。
【請求項5】
一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカであって、構造係数Cs>58及び凝集体サイズD>120nmを有するヒュームドシリカ。
【請求項6】
式58<Cs<90を満たす構造係数Cs、式120<D<300を満たす凝集体サイズD、及び式50<SA<550を満たす表面積SAを有する、請求項5に記載のヒュームドシリカ。
【請求項7】
式58<CS<90を満たす構造係数Cs、式120<D<300を満たす凝集体サイズD、及び式100<SA<400を満たす表面積SAを有する、請求項5に記載のヒュームドシリカ。
【請求項8】
一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカであって、前記ヒュームドシリカが、100〜300m2/gの表面積を有し、前記ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物が、以下の条件(a)〜(c):
(a)10s-1の煎断速度で0.25Pa−s以上の粘度、
(b)0.1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって0.8以下である、べき法則指数、及び
(c)0.1〜100rad/sの振動数範囲で16〜100Paの弾性率、
のいずれか1つ又は複数を満たす、ヒュームドシリカ。
【請求項9】
前記ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物が、10s-1の煎断速度で0.25Pa−s以上の粘度を有する、請求項8に記載のヒュームドシリカ。
【請求項10】
前記ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物が、10s-1の煎断速度で0.25〜0.38Pa−sの粘度を有する、請求項9に記載のヒュームドシリカ。
【請求項11】
前記ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物が、0.1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって0.8以下のべき法則指数を有する、請求項8に記載のヒュームドシリカ。
【請求項12】
前記ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物が、0.1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって0.1〜0.8のべき法則指数を有する、請求項11に記載のヒュームドシリカ。
【請求項13】
前記ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物が、0.1〜100rad/sの振動数範囲で16〜100Paの弾性率を有する、請求項8に記載のヒュームドシリカ。
【請求項14】
前記ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物が、0.1〜100rad/sの振動数範囲で30〜100Paの弾性率を有する、請求項13に記載のヒュームドシリカ。
【請求項15】
一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカであって、前記一次粒子が、少なくとも2つの異なる平均一次粒径を有する一次粒子の集団を表す少なくとも二峰性の粒径分布を有し、最小平均一次粒径が、最大平均一次粒径の0.05〜0.4倍であるヒュームドシリカ。
【請求項16】
前記最小平均一次粒径が、前記最大平均一次粒径の0.05〜0.3倍である、請求項15に記載のヒュームドシリカ。
【請求項17】
水性媒質中に分散された請求項15に記載のヒュームドシリカを含む化学機械的研磨組成物。
【請求項18】
前記組成物が、酸化剤、界面活性剤、ポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択される添加剤を更に含む、請求項17に記載の化学機械的研磨組成物。
【請求項19】
ヒュームドシリカを生成するためのプロセスであって、
(a)シリカ前駆物質を含む供給材料流を準備する工程;
(b)可燃性ガス流を準備する工程;
(c)第1の凝集体サイズを有する一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカ粒子が浮遊している燃焼ガス流を反応器中で形成する工程であって、前記形成する工程が(c1)前記供給材料流を前記可燃性ガス流と混合して、前記シリカ前駆物質を有する可燃性ガス流を形成し、次いで、前記シリカ前駆物質を有する前記可燃性ガス流を燃焼させて、ヒュームドシリカ粒子が浮遊している前記燃焼ガス流を形成することによるか、(c2)前記可燃性ガス流を燃焼させて燃焼ガス流を形成し、次いで、前記供給材料流を前記燃焼ガス流と混合して、前記シリカ前駆物質が浮遊している燃焼ガス流を形成して、次いで、ヒュームドシリカ粒子を形成することによるか、又は(c3)先述の項目(c1)及び(c2)の組合せを実施することにより行われる、工程;
(d)前記燃焼ガス流中で、前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子間の接触を可能にし、且つ(d1)前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を1つ又は複数のドーパントと接触させてその表面を改質するか、(d2)前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子の温度−時間プロファイルを制御して、急冷後凝集体成長を可能にするか、(d3)前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子が浮遊している前記燃焼ガス流に、追加的な供給材料を導入するか、又は(d4)先述の項目(d1)、(d2)、及び(d3)のいずれかの組合せを実施することによって、それにより前記第1の凝集体サイズより大きな第2の凝集体サイズを備えるヒュームドシリカ粒子が浮遊している燃焼ガス流を形成する工程;並びに
(e)前記第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を前記燃焼ガス流から回収する工程であって、前記回収されたヒュームドシリカが、PCSにより測定される単位がnmの凝集体サイズD、及びBETにより測定される単位がm2/gの表面積SAを有し、下記式:
D≧151+(5400/SA)+0.00054(SA−349)2
を満たす、工程、
を含む、プロセス。
【請求項20】
前記可燃性ガス流を燃焼することが、1000℃〜2200℃の断熱火炎温度を有する火炎をもたらす、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子間の融合が促進されて、前記第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子がもたらされるように、前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を、1つ又は複数のドーパントと接触させる、請求項19に記載のプロセス。
【請求項22】
前記1つ又は複数のドーパントが、前記可燃性ガスの燃焼から生じる火炎に供給される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記1つ又は複数のドーパントが、前記燃焼ガス流に供給される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
前記1つ又は複数のドーパントが、前記可燃性ガスの燃焼から生じる火炎の下流の、前記反応器の特徴的直径の1〜10倍の距離で前記燃焼ガス流に供給される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記ドーパントが、IA族元素、IIA族元素、IVB族元素、及びIIIA族元素からなる群から選択される少なくとも1つの元素の化合物を含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項26】
前記ドーパントが、前記ヒュームドシリカの重量に基づいて1ppm〜100,000ppmの量で、前記可燃性ガス流又は前記燃焼ガス流に供給される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項27】
前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子の温度−時間プロファイルが、急冷後凝集体成長を可能にするように制御される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項28】
前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子が浮遊している燃焼ガス流が1700℃未満に冷却され、その後、前記反応器中に耐火断熱材を用いること、反応器の能動的に加熱すること、追加的可燃性ガスを導入すること、及び冷却気体又は液体を導入することのうちの少なくとも1つを使用して、前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子が浮遊している燃焼ガス流の温度を、凝集体が互いに融合して前記第2の凝集体サイズを有する前記ヒュームドシリカ粒子を形成するのに十分な程度に高い温度に維持する、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
追加的可燃性ガスを前記燃焼ガス流に導入することを含む、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
前記追加的可燃性ガスの導入が、前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子が浮遊している燃焼ガス流の断熱温度を少なくとも100℃上昇させ、その上昇した断熱温度が最長2秒間維持される、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
前記追加的可燃性ガスが、前記可燃性ガスの燃焼から生じる火炎の下流の、前記反応器の特徴的横寸法の1〜10倍の距離で前記燃焼ガス流に供給される、請求項29に記載のプロセス。
【請求項32】
前記追加的可燃性ガスが、前記燃焼ガス流中にある物質の全質量の1%〜100%の量で前記燃焼ガス流に供給される、請求項29に記載のプロセス。
【請求項33】
前記追加的可燃性ガスが、燃料、酸化剤、及び希釈剤を含み、燃料に対する酸化剤の理論混合比が0%〜300%である、請求項29に記載のプロセス。
【請求項34】
前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子が浮遊している燃焼ガス流の温度が、およそ1000℃以上で最長2秒間維持され、凝集体が互いに融合して前記第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を形成する、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
前記追加的供給材料が、前記ヒュームドシリカ粒子が浮遊している燃焼ガス流に導入される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項36】
導入される追加的供給材料が、質量に基づいて全供給材料の10〜50%である、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記追加的供給材料が、前記可燃性ガスと共に導入される、請求項35に記載のプロセス。
【請求項38】
前記追加的供給材料が、前記可燃性ガスの燃焼から生じる火炎の下流の、前記反応器の特徴的横寸法の1〜10倍の距離で前記燃焼ガス流に供給される、請求項35に記載のプロセス。
【請求項39】
請求項19〜38のいずれか一項に記載のプロセスにより調製されるヒュームドシリカ。
【請求項40】
(a)請求項1〜16のいずれか一項に記載のヒュームドシリカ及び/又は請求項19〜38のいずれか一項に記載のプロセスにより調製されるヒュームドシリカ、並びに(b)それらの担体、を含む組成物。
【請求項41】
処理剤で処理された、請求項1〜16のいずれか一項に記載のヒュームドシリカ及び/又は請求項19〜38のいずれか一項に記載のプロセスにより調製されたヒュームドシリカ。
【請求項42】
処理剤で処理されて疎水性にされた、請求項41に記載のヒュームドシリカ。
【請求項43】
前記処理剤が、随意にハロゲン化されてもよい環式シラザン、有機ポリシロキサン、有機シロキサン、有機シラザン、有機シラン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項41に記載のヒュームドシリカ。
【請求項44】
前記処理剤が、ジメチルジクロロシラン、トリエトキシオクチルシラン、トリメトキシオクチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ポリジメチルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項41に記載のヒュームドシリカ。
【請求項45】
(a)請求項41に記載の処理されたヒュームドシリカ及び(b)そのための担体を含む組成物。
【請求項46】
(a)請求項42に記載の処理されたヒュームドシリカ及び(b)そのための担体を含む組成物。
【請求項47】
(a)請求項43に記載の処理されたヒュームドシリカ及び(b)そのための担体を含む組成物。
【請求項48】
(a)請求項44に記載の処理されたヒュームドシリカ及び(b)そのための担体を含む組成物。
【請求項1】
一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカであって、前記ヒュームドシリカが、PCSにより測定される単位がnmの凝集体サイズD、及びBETにより測定される単位がm2/gの表面積SAを有し、下記式:
D≧151+(5400/SA)+0.00054(SA−349)2
を満たす、ヒュームドシリカ。
【請求項2】
前記ヒュームドシリカが下記式:
874−1.75(SA)≧D≧291−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
667−0.71(SA)≧D≧222−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
518−0.12(SA)≧D≧173−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
346+0.28(SA)≧D≧115+0.09(SA)、ここで425<SA≦550、
を満たす、請求項1に記載のヒュームドシリカ。
【請求項3】
前記ヒュームドシリカが下記式:
874−1.75(SA)≧D≧306−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
667−0.71(SA)≧D≧237−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
518−0.12(SA)≧D≧188−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
346+0.28(SA)≧D≧130+0.09(SA)、ここで425<SA≦550、
を満たす、請求項2に記載のヒュームドシリカ。
【請求項4】
前記ヒュームドシリカが下記式:
391−0.58(SA)≧D≧306−0.58(SA)、ここで50≦SA≦200;
322−0.24(SA)≧D≧237−0.24(SA)、ここで200<SA≦255;
273−0.04(SA)≧D≧188−0.04(SA)、ここで255<SA≦425;及び
215+0.09(SA)≧D≧130+0.09(SA)、ここで425<SA≦550、
を満たす、請求項2に記載のヒュームドシリカ。
【請求項5】
一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカであって、構造係数Cs>58及び凝集体サイズD>120nmを有するヒュームドシリカ。
【請求項6】
式58<Cs<90を満たす構造係数Cs、式120<D<300を満たす凝集体サイズD、及び式50<SA<550を満たす表面積SAを有する、請求項5に記載のヒュームドシリカ。
【請求項7】
式58<CS<90を満たす構造係数Cs、式120<D<300を満たす凝集体サイズD、及び式100<SA<400を満たす表面積SAを有する、請求項5に記載のヒュームドシリカ。
【請求項8】
一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカであって、前記ヒュームドシリカが、100〜300m2/gの表面積を有し、前記ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物が、以下の条件(a)〜(c):
(a)10s-1の煎断速度で0.25Pa−s以上の粘度、
(b)0.1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって0.8以下である、べき法則指数、及び
(c)0.1〜100rad/sの振動数範囲で16〜100Paの弾性率、
のいずれか1つ又は複数を満たす、ヒュームドシリカ。
【請求項9】
前記ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物が、10s-1の煎断速度で0.25Pa−s以上の粘度を有する、請求項8に記載のヒュームドシリカ。
【請求項10】
前記ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物が、10s-1の煎断速度で0.25〜0.38Pa−sの粘度を有する、請求項9に記載のヒュームドシリカ。
【請求項11】
前記ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物が、0.1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって0.8以下のべき法則指数を有する、請求項8に記載のヒュームドシリカ。
【請求項12】
前記ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物が、0.1〜5000s-1の煎断速度範囲にわたって0.1〜0.8のべき法則指数を有する、請求項11に記載のヒュームドシリカ。
【請求項13】
前記ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物が、0.1〜100rad/sの振動数範囲で16〜100Paの弾性率を有する、請求項8に記載のヒュームドシリカ。
【請求項14】
前記ヒュームドシリカの鉱油中3重量%分散物が、0.1〜100rad/sの振動数範囲で30〜100Paの弾性率を有する、請求項13に記載のヒュームドシリカ。
【請求項15】
一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカであって、前記一次粒子が、少なくとも2つの異なる平均一次粒径を有する一次粒子の集団を表す少なくとも二峰性の粒径分布を有し、最小平均一次粒径が、最大平均一次粒径の0.05〜0.4倍であるヒュームドシリカ。
【請求項16】
前記最小平均一次粒径が、前記最大平均一次粒径の0.05〜0.3倍である、請求項15に記載のヒュームドシリカ。
【請求項17】
水性媒質中に分散された請求項15に記載のヒュームドシリカを含む化学機械的研磨組成物。
【請求項18】
前記組成物が、酸化剤、界面活性剤、ポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択される添加剤を更に含む、請求項17に記載の化学機械的研磨組成物。
【請求項19】
ヒュームドシリカを生成するためのプロセスであって、
(a)シリカ前駆物質を含む供給材料流を準備する工程;
(b)可燃性ガス流を準備する工程;
(c)第1の凝集体サイズを有する一次粒子の凝集体を含むヒュームドシリカ粒子が浮遊している燃焼ガス流を反応器中で形成する工程であって、前記形成する工程が(c1)前記供給材料流を前記可燃性ガス流と混合して、前記シリカ前駆物質を有する可燃性ガス流を形成し、次いで、前記シリカ前駆物質を有する前記可燃性ガス流を燃焼させて、ヒュームドシリカ粒子が浮遊している前記燃焼ガス流を形成することによるか、(c2)前記可燃性ガス流を燃焼させて燃焼ガス流を形成し、次いで、前記供給材料流を前記燃焼ガス流と混合して、前記シリカ前駆物質が浮遊している燃焼ガス流を形成して、次いで、ヒュームドシリカ粒子を形成することによるか、又は(c3)先述の項目(c1)及び(c2)の組合せを実施することにより行われる、工程;
(d)前記燃焼ガス流中で、前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子間の接触を可能にし、且つ(d1)前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を1つ又は複数のドーパントと接触させてその表面を改質するか、(d2)前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子の温度−時間プロファイルを制御して、急冷後凝集体成長を可能にするか、(d3)前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子が浮遊している前記燃焼ガス流に、追加的な供給材料を導入するか、又は(d4)先述の項目(d1)、(d2)、及び(d3)のいずれかの組合せを実施することによって、それにより前記第1の凝集体サイズより大きな第2の凝集体サイズを備えるヒュームドシリカ粒子が浮遊している燃焼ガス流を形成する工程;並びに
(e)前記第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を前記燃焼ガス流から回収する工程であって、前記回収されたヒュームドシリカが、PCSにより測定される単位がnmの凝集体サイズD、及びBETにより測定される単位がm2/gの表面積SAを有し、下記式:
D≧151+(5400/SA)+0.00054(SA−349)2
を満たす、工程、
を含む、プロセス。
【請求項20】
前記可燃性ガス流を燃焼することが、1000℃〜2200℃の断熱火炎温度を有する火炎をもたらす、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子間の融合が促進されて、前記第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子がもたらされるように、前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を、1つ又は複数のドーパントと接触させる、請求項19に記載のプロセス。
【請求項22】
前記1つ又は複数のドーパントが、前記可燃性ガスの燃焼から生じる火炎に供給される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記1つ又は複数のドーパントが、前記燃焼ガス流に供給される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
前記1つ又は複数のドーパントが、前記可燃性ガスの燃焼から生じる火炎の下流の、前記反応器の特徴的直径の1〜10倍の距離で前記燃焼ガス流に供給される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記ドーパントが、IA族元素、IIA族元素、IVB族元素、及びIIIA族元素からなる群から選択される少なくとも1つの元素の化合物を含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項26】
前記ドーパントが、前記ヒュームドシリカの重量に基づいて1ppm〜100,000ppmの量で、前記可燃性ガス流又は前記燃焼ガス流に供給される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項27】
前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子の温度−時間プロファイルが、急冷後凝集体成長を可能にするように制御される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項28】
前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子が浮遊している燃焼ガス流が1700℃未満に冷却され、その後、前記反応器中に耐火断熱材を用いること、反応器の能動的に加熱すること、追加的可燃性ガスを導入すること、及び冷却気体又は液体を導入することのうちの少なくとも1つを使用して、前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子が浮遊している燃焼ガス流の温度を、凝集体が互いに融合して前記第2の凝集体サイズを有する前記ヒュームドシリカ粒子を形成するのに十分な程度に高い温度に維持する、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
追加的可燃性ガスを前記燃焼ガス流に導入することを含む、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
前記追加的可燃性ガスの導入が、前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子が浮遊している燃焼ガス流の断熱温度を少なくとも100℃上昇させ、その上昇した断熱温度が最長2秒間維持される、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
前記追加的可燃性ガスが、前記可燃性ガスの燃焼から生じる火炎の下流の、前記反応器の特徴的横寸法の1〜10倍の距離で前記燃焼ガス流に供給される、請求項29に記載のプロセス。
【請求項32】
前記追加的可燃性ガスが、前記燃焼ガス流中にある物質の全質量の1%〜100%の量で前記燃焼ガス流に供給される、請求項29に記載のプロセス。
【請求項33】
前記追加的可燃性ガスが、燃料、酸化剤、及び希釈剤を含み、燃料に対する酸化剤の理論混合比が0%〜300%である、請求項29に記載のプロセス。
【請求項34】
前記第1の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子が浮遊している燃焼ガス流の温度が、およそ1000℃以上で最長2秒間維持され、凝集体が互いに融合して前記第2の凝集体サイズを有するヒュームドシリカ粒子を形成する、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
前記追加的供給材料が、前記ヒュームドシリカ粒子が浮遊している燃焼ガス流に導入される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項36】
導入される追加的供給材料が、質量に基づいて全供給材料の10〜50%である、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記追加的供給材料が、前記可燃性ガスと共に導入される、請求項35に記載のプロセス。
【請求項38】
前記追加的供給材料が、前記可燃性ガスの燃焼から生じる火炎の下流の、前記反応器の特徴的横寸法の1〜10倍の距離で前記燃焼ガス流に供給される、請求項35に記載のプロセス。
【請求項39】
請求項19〜38のいずれか一項に記載のプロセスにより調製されるヒュームドシリカ。
【請求項40】
(a)請求項1〜16のいずれか一項に記載のヒュームドシリカ及び/又は請求項19〜38のいずれか一項に記載のプロセスにより調製されるヒュームドシリカ、並びに(b)それらの担体、を含む組成物。
【請求項41】
処理剤で処理された、請求項1〜16のいずれか一項に記載のヒュームドシリカ及び/又は請求項19〜38のいずれか一項に記載のプロセスにより調製されたヒュームドシリカ。
【請求項42】
処理剤で処理されて疎水性にされた、請求項41に記載のヒュームドシリカ。
【請求項43】
前記処理剤が、随意にハロゲン化されてもよい環式シラザン、有機ポリシロキサン、有機シロキサン、有機シラザン、有機シラン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項41に記載のヒュームドシリカ。
【請求項44】
前記処理剤が、ジメチルジクロロシラン、トリエトキシオクチルシラン、トリメトキシオクチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ポリジメチルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項41に記載のヒュームドシリカ。
【請求項45】
(a)請求項41に記載の処理されたヒュームドシリカ及び(b)そのための担体を含む組成物。
【請求項46】
(a)請求項42に記載の処理されたヒュームドシリカ及び(b)そのための担体を含む組成物。
【請求項47】
(a)請求項43に記載の処理されたヒュームドシリカ及び(b)そのための担体を含む組成物。
【請求項48】
(a)請求項44に記載の処理されたヒュームドシリカ及び(b)そのための担体を含む組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2012−501946(P2012−501946A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526235(P2011−526235)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/056064
【国際公開番号】WO2010/028261
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/056064
【国際公開番号】WO2010/028261
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】
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