説明

処理面型ICタグ付設マット

【目的】ICタグの付設コストの低減を可能とし、かつ耐久性を持たせてICタグを取り付け可能とした処理面型ICタグ付設マットを提供することを目的とする。
【構成】ゴムラバー1の裏面4のタグ取り付け箇所に対して接着前処理としての処理面5の形成が行われる。接着前処理は、表面研磨、プライマー処理等により行われる。接着剤を処理面5に塗布し接着剤層10を形成した後、扁平ICタグの一面11を外方に向けてその裏側面を接着剤層10に貼着して、扁平ICタグ6の付設が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品管理用データキャリアとしてICタグを取り付けた、レンタル用に好適なマットに関し、特にマット基材に形成した接着処理面にICタグを付設した処理面型ICタグ付設マットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンタル用マット等には、品質管理や在庫管理における商品管理を行うために、特許文献1及び2に示されるように、データキャリアをマット内に設けている。この種のデータキャリアにはランドリー用ICタグが使用されている。
【0003】
レンタル用マットの場合、ユーザでの使用後に回収され、回収マットを洗濯して再利用されるため、マット洗濯が繰り返し行われる。このため、ランドリー用ICタグには洗浄耐久性が求められる。そこで、特許文献1及び2に示されるようなハードパッケージ構造のICタグが使用され、しかもマット内部に収設されて強固に保護している。
【特許文献1】特開平6−327542号公報
【特許文献2】特開2000−279312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のマットにおいては、マットに露出する状態でICタグを付着させると、そのハードパッケージにより床面を傷つけたり、歩行者の加重や荷物の通過による衝突によりタグが剥がれ落ちるおそれがある。このため、ICタグが露出しないようにマット内部にICタグを埋め込んで収設していた。
【0005】
従来のタグ埋め込み型マットの場合、特許文献1及び2に示されるようにマット基材にICタグを埋め込み、それを閉塞するように未加硫ゴムを被着し、その未加硫ゴムを加硫して封着していた。しかしながら、このような加硫接着方法によるICタグの埋め込みマットにおいては、IC保護用補強部材(ケブラー繊維等)の部品点数が増えたり(特許文献1参照)、加硫処理工程にエネルギー費用や作業コスト等の製造コストアップを招くといった問題が生じていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、ICタグの付設コストの低減を可能とし、かつ耐久性を持たせてICタグを取り付け可能とした処理面型ICタグ付設マットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、従来のICタグ封入パッケージ構造の硬質ハードパッケージに換えて、パッケージ全体あるいは外被部の一部に柔軟性のあるフレキシブルパッケージを使用することにより、マット内へのタグ埋設のための上記加硫処理を不要ににできる点に着目し、またタグ埋め込み方式からタグ直付け方式への転換に伴う、マット基材面へのタグ接着状態の強化の必要性に鑑みてなされたものであり、本発明の第1の形態は、マット基材の基材面の所定箇所にICタグを取り付けたマットにおいて、前記ICタグは両面又は片面が柔軟性素材からなる柔軟面である扁平ICタグからなり、前記基材面の前記所定箇所を粗面処理及び/又はプライマー処理して処理面とし、前記扁平ICタグの前記柔軟面を外方に向けてその裏側面を前記処理面に接着した処理面型ICタグ付設マットである。
【0008】
本発明の第2の形態は、前記第1の形態において、前記基材面の前記所定箇所が浅い凹部からなり、前記凹部の底面を前記処理面にし、前記扁平ICタグを前記凹部に収容して前記処理面に接着した処理面型ICタグ付設マットである。
【0009】
本発明の第3の形態は、前記第2の形態において、前記凹部の深さを前記扁平ICタグの厚さの1/2以上とした処理面型ICタグ付設マットである。
【0010】
本発明の第4の形態は、第1、第2又は第3の形態において、前記扁平ICタグは外周部に上方に向かって先細りのテーパ面を形成した断面略台形状を有し、前記扁平ICタグの底面を前記処理面に接着した処理面型ICタグ付設マットである。
【0011】
本発明の第5の形態は、第4の形態において、前記扁平ICタグの一部が突出した状態で前記扁平ICタグを前記凹部に収容し、その突出部分の外周部に前記テーパ面を形成した処理面型ICタグ付設マットである。
【0012】
本発明の第6の形態は、第1〜第5のいずれかの形態において、前記マット基材が合成ゴム又は合成樹脂からなる処理面型ICタグ付設マットである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の形態によれば、両面又は片面が柔軟性素材からなる柔軟面である扁平ICタグからなるICタグを用い、マット基材の基材面の所定箇所を粗面処理及び/又はプライマー処理して処理面とし、前記扁平ICタグの前記柔軟面を外方に向けてその裏側面を前記処理面に接着したので、ICタグをマット内に埋設することなく前記柔軟面をマット外方に向けて露出させた状態で付設することができる。従って、ICタグの付設に必要な作業は、粗面処理及び/又はプライマー処理により、前記基材面に施す接着前処理作業と、前記基材面への簡易なタグ貼着作業だけとなるので、従来の加硫工程における加熱に要するエネルギー費用を全く必要とせず、ICタグの付設コストを大幅に低減でき、しかも前記扁平ICタグの柔軟性素材により、反復洗浄に耐え、更に洗浄中あるいは使用時における歩行者の加重や荷物の通過の外力や衝撃力を吸収して、タグの剥がれが防止できる耐久性を有し、低コスト化を実現した処理面型ICタグ付設マットを提供することができる。
【0014】
前記粗面処理には主に表面研磨による物理的前処理を用い、表面研磨の場合には、ベルト式サンダー、小型のルーターやカップブラシ等を使用して基材面に微細凹凸を形成する。化学的前処理である前記プライマー処理の場合には、ゴム可溶性の下塗り剤をタグ取り付け箇所に塗布して接着剤と融合しやすくさせる。なお、前記基材面に施す接着前処理作業としては、表面研磨した後、前記プライマー処理を施すといった物理的前処理と化学的前処理を併用することができる。
【0015】
本発明に係る扁平ICタグは、少なくとも片面が柔軟性素材からなる柔軟面を形成したタグパッケージ構造を具備すればよい。タグパッケージ構造形態として、例えば、ICタグの電子部品及びアンテナ部材を弾性合成樹脂により内包して、全体に柔軟性を帯びさせたフルソフトパッケージを用いることができる。あるいは、硬質のハード部材と柔軟性のあるソフト部材を合体構成してもよい。合体構成の場合には、電子部品及びアンテナ部材をハード部材又はソフト部材のいずれかに内包させればよく、例えば、電子部品及びアンテナ部材を弾性合成樹脂でソフトモールドし、そのパッケージ面のひとつに硬質合成樹脂により外被形成した2重パッケージを用いることができる。
【0016】
本発明に係るマット基材には、マット弾性を具備させる合成ゴム又は合成樹脂を使用することができる。タグ接着用接着剤には、アクリル樹脂系接着剤(アクリル樹脂及び誘導体を主成分とした接着剤)、アクリル樹脂エマルジョン接着剤(アクリル樹脂エマルジョンを主成分とした接着剤)、ウレタン樹脂系接着剤(ウレタン基(−NHCOO−)を持つ接着剤)、エポキシ樹脂系接着剤(エポキシ樹脂を主成分とした接着剤)等の樹脂系接着剤や、シアノアクリレート系接着剤(2−シアノアクリル酸エステルモノマーを主成分とした接着剤)、スチレン−ブタジエンゴム溶液系接着剤(スチレンとブタジエンゴムとの共重合体を主成分とした接着剤)、変性シリコーン系接着剤(メチルジメトキシシリル基を末端に持つポリプロピレンオキシド(変性シリコーン)を主成分とした接着剤)等を使用することができる。処理面への接着剤塗布には、はけ、へら、ローラーなどの器具による簡易手作業の他に、ノズルスプレー、ロールコーターなどを使用してもよい。
【0017】
本発明の第2の形態によれば、前記基材面の前記所定箇所が浅い凹部からなり、前記凹部の底面を前記処理面にし、前記扁平ICタグを前記凹部に収容して前記処理面に接着したので、前記扁平ICタグを前記凹部に収設して、外部からの衝撃等の影響を低減でき、より耐久性に富んだ処理面型ICタグ付設マットを得ることができる。前記扁平ICタグの前記凹部への収設は、外部からの衝撃を避けるために、前記柔軟面が前記基材面より多く突出させないのが好ましく、また、前記基材面より内部に深く入り込めてしまうと塵埃が溜まるので前記柔軟面と前記基材面を面一にするのが好ましい。
【0018】
本発明の第3の形態によれば、前記凹部の深さを前記扁平ICタグの厚さの1/2以上となるように、前記扁平ICタグを前記凹部に収設したので、洗浄工程においての外力はICタグを剥離に導くことはない。更に前記扁平ICタグの突出部分が歩行者の荷重や荷物の通過の外力ならびに衝撃力を吸収して、タグにピール力(即ち、剥離方向への力)を与えず、剥離防止効果を高めた処理面型ICタグ付設マットを実現することができる。しかも、かかる前記扁平ICタグの上面の突出量の設定により、前記扁平ICタグの一部を突出させても剥離防止効果を維持できるので、浅い前記凹部を使用でき、前記凹部の加工作業が極めて簡易に済み、加工時間・コストの低減を実現できる。従来のハードパッケージタグ埋設方式においては、厚さ2mm程度のパッケージを埋め込むために、2mm以上の凹部を形成する必要があり、その削り取り作業に手間がかかっているが、本発明においては浅い前記凹部でよいので、サンダー等の研削作業を僅かに行うだけで、短時間での凹部加工作業で済み、タグ付設における作業負担及び作業コストの低減を図ることができる。
【0019】
本発明の第4の形態によれば、前記扁平ICタグは外周部に上方に向かって先細りのテーパ面を形成した断面略台形状を有し、前記扁平ICタグの底面を前記処理面に接着したので、前記扁平ICタグの上部に加わる外力、例えば、洗浄工程においての外力や、歩行者の荷重や荷物の通過の外力ならびに衝撃力を前記テーパ面の形成により緩和でき、剥離防止効果の大きい処理面型ICタグ付設マットを実現することができる。
【0020】
本発明の第5の形態によれば、前記扁平ICタグの一部が突出した状態で前記扁平ICタグを前記凹部に収容し、その突出部分の外周部に前記テーパ面を形成したので、前記扁平ICタグの一部が前記基材面より突出させても、前記扁平ICタグの突出部分に加わる、歩行者の脚部(つま先等)や荷物等との接触による衝撃力を前記テーパ面の形成により緩和でき、剥離防止効果の大きい処理面型ICタグ付設マットを実現することができる。しかも、前記扁平ICタグの一部を突出させても剥離防止効果が維持されるので、浅い前記凹部に収容することができ、上述のように、前記凹部加工作業が極めて簡易に済み、加工時間・コストの低減を実現できる。
【0021】
本発明の第6の形態によれば、前記マット基材が合成ゴム又は合成樹脂からなるので、前記接着前処理作業を簡単に行え、かつ簡易な貼着作業だけで、ICタグをマット内に埋設することなく付設することができ、ICタグの付設コストを大幅に低減することができる。合成ゴムには、NBR(ニトリルブタジエンラバー)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)を使用でき、また、より弾性のあるスポンジ形態のNBR発泡材を使用してもよい。合成樹脂としてはウレタン樹脂等を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る処理面型ICタグ付設マットの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る処理面型ICタグ付設マットの縦断面部分図である。このマットはマット基材のゴムラバー1と、ゴムラバー1の表面に接合された基布2と、基布2に植設された多数のパイル3からなる。基布2及び多数のパイル3はマット原反と呼ばれ、これには芝状シート、スポンジシート、不織布シート、布状シート等が使用される。ゴムラバー1には、NBR、NBR発泡材、EPDM等の合成ゴムあるいは合成樹脂を使用することができる。
【0023】
ゴムラバー1の裏面4には、商品管理用の非接触式データキャリアとして扁平ICタグ6が付設されている。扁平ICタグ6は、直径約10mm、厚さ0.5mm〜1.5mmの薄板状に柔軟性樹脂によりモールドされた円板状ICタグである。扁平ICタグ6のモールド9はエラストマー又は熱硬化ゴム材からなり、タグ全体が自由に撓むフレキシブルタグ構造となっている。モールド9内部に、電子部品モジュール7及びアンテナ部材8が被覆されて保護収容されている。
【0024】
扁平ICタグ6の付設は、以下の手順で、ラバー基材面裏面4のタグ取り付け箇所に接着用処理面5を形成して行われる。まず、ゴムラバー1の裏面4のタグ取り付け箇所に対して接着前処理としての処理面5の形成が行われる。接着前処理には、表面研磨による物理的前処理、プライマー処理等の化学的前処理があり、これらを併用することもできる。表面研磨の場合には、ベルト式サンダー、小型のルーターやカップブラシ等を使用してラバー面に微細凹凸を形成する。プライマー処理の場合には、ゴム可溶性の下塗り剤をタグ取り付け箇所に塗布して接着剤と融合しやすくさせる。
【0025】
裏面4のタグ取り付け箇所に処理面5を形成した後、接着剤を処理面5に塗布し接着剤層10を形成した後、扁平ICタグの一面11を外方に向けてその裏側面を接着剤層10に貼着して、扁平ICタグ6の付設が行われる。
【0026】
本実施形態では、両面が柔軟性素材からなる柔軟面である扁平ICタグ6を用い、接着前処理したゴムラバー1裏面4の処理面6に、扁平ICタグ6の裏側面を柔軟性のある面を外方に向けて貼着している。従って、ICタグをマット内に埋設することなく扁平ICタグ6の柔軟性外面をマット外方に向けて露出させた状態で付設することができる。また、ICタグの付設に必要な作業は上記接着前処理とタグ貼着の簡易作業だけとなるので、従来のタグ埋設用加硫工程における加熱に要するエネルギー費用を全く必要とせず、ICタグの付設コストを大幅に低減でき、しかも扁平ICタグ6の柔軟性により、反復洗浄に耐え、更に歩行者の加重や荷物の衝突の外力を吸収して、タグの剥がれが防止できる耐久性を有し、低コスト化を実現することができる。具体的な実施効果でいえば、従来のタグ埋設用加硫方式のタグ付設の場合、1時間当たりタグ16枚の処理能力にすぎなかったが、本実施形態では、1時間当たりのタグ処理能力を5倍程度に向上させることが可能になる。
【0027】
図2は、パッケージ外周部に上方に向かって先細りのテーパ面を形成した断面略台形状のパッケージ構造を有した扁平ICタグ20を使用した実施形態を示す。図2の(2A)に示すように、扁平ICタグ20のモールド部分25の上部外周にはテーパ面21が形成されている。柔軟性樹脂製モールド部分25内には、電子部品モジュール22及びアンテナ部材23が被覆されて保護収容されている。(2B)は、扁平ICタグ20を図1の実施形態と同様に、ゴムラバー28の裏面側に接着前処理した処理面24に、扁平ICタグ20の上面26を外方に向けて接着剤層27により貼着した貼着状態を示す。本実施形態によれば、外側に突出するように扁平ICタグ20の底面を処理面24に接着したので、扁平ICタグ20の上部に加わる外力、例えば、洗浄作業中や歩行者の荷重や荷物の通過の外力ならびに衝撃力を緩和でき、剥離防止効果の大きい処理面型ICタグ付設マットを実現することができる。
【0028】
図3は、ICタグをマットに埋設して付設した実施形態のマット縦断面部分図である。図3の(3A)は図1の実施形態の薄型円板状の扁平ICタグ6を埋設した場合であり、図1と同一部材については同じ符号を付している。マット基材のゴムラバー32の裏面33側に、扁平ICタグ6の取り付け箇所に浅い凹部30を形成している。凹部30の形成は前記表面研磨に用いたサンダー等による削り取り作業によって行う。凹部30の底面には、前記接着前処理が施された処理面31が形成され、処理面31に塗布した接着剤層10に扁平ICタグ6を貼着する。扁平ICタグ6は裏面33と面一に凹部30に収容されて貼着されている。
【0029】
図3の(3B)は図2の実施形態のテーパ付き断面略台形状の扁平ICタグ20を埋設した場合であり、図2と同一部材については同じ符号を付している。この場合も(3B)と同様に、ゴムラバー42の裏面43側に形成された浅い凹部40の底面に前記接着前処理による処理面41が形成され、処理面41に塗布した接着剤層27に扁平ICタグ20を貼着する。扁平ICタグ20は裏面43と面一に凹部40に収容されて貼着されている。
【0030】
図3の(3A)及び(3B)の実施形態においては、扁平ICタグを凹部30、40に収設して貼着しているので、外部からの衝撃等の影響を低減でき、より耐久性に富んだ処理面型ICタグ付設マットを実現することができる。また、基材面より内部に深く入り込めてしまうと塵埃が溜まる不具合を生ずるが、(3A)の実施形態においては、扁平ICタグの凹部への収設は、タグの柔軟面とラバー基材面を面一にして行っているので、塵埃の堆積が生じず、しかも凹部埋設により外部からの衝撃を避けて、耐久性を維持することができる。
【0031】
また、扁平ICタグ6、20は薄型形状であるので、浅い凹部30、40で貼着することができる。従って、凹部の加工作業が極めて簡易に済み、加工時間・コストの低減を実現できる。従来のハードパッケージタグ埋設方式においては、厚さ2mm程度のパッケージを埋め込むために、2mm以上の凹部を形成する必要があり、その削り取り作業に手間がかかってしまう。また、ハードパッケージタグを保護する補強部材、更にそれを閉塞するゴム部材を封着する加工が必要とされた。図3の場合には、浅い凹部でよいので、サンダー等の研削作業を僅かに行うだけで、短時間での凹部加工作業で済み、更に扁平ICタグは表面貼着が出来、タグ付設における作業負担及び作業コストの低減を図ることができる。
【0032】
浅い凹部30、40に扁平ICタグ6、20を埋設する実施形態について、マットラバー材との関係での具体的耐久性でいえば、従来のタグ埋設用加硫方式のタグ付設の場合、NBRの場合には洗浄を50回程度繰り返すとタグの剥離が起こり、NBR発泡材の場合には2回程度で、EPDMでは直ぐに脱落してしまい使用できなかったが、本実施形態の凹部収設方式によれば、NBR及びNBR発泡材については、洗浄を100回以上繰り返してもタグの剥離が全く起こらず、EPDMでも50回程度まで使用できることになった。
【0033】
図3の(3A)と(3B)を比較した場合、後者の場合は外力保護の点で異なる。(3A)の場合、円板扁平状の扁平ICタグ6を収設したとき、扁平ICタグ6に柔軟性があるため、凹部30と僅かの隙間に外部の部材が食い込んで剥離するおそれがある。一方、面一にする場合であっても、(3B)に示すように、テーパ面21で面取りした略円板状のパッケージ構造の扁平ICタグ20を用いると、外力保護を高めることができる。つまり、扁平ICタグ30の上面32を外方に向けて、裏面43と面一に位置して凹部40に面一に収設しているので、凹部40内面とテーパ面21との間に空間が広がっているが、扁平ICタグ20に柔軟性があるため、該空間に外部の部材(床面の凹凸等)が食い込んでも、テーパ面21により剥離力として作用せず、扁平ICタグ20の貼着状態を安定に維持することができる。なお、外力保護をより高めるには、(3B)の庇44による包み込み構造としてもよい。庇44は、凹部40形成の際に、鋭角のエッジのあるサンダーを用いて凹部40の内周部を削り取ることによって、底面側に広がった庇形状に加工して簡単に形成される。かかる庇形状凹部に扁平ICタグ20の周囲を包み込むようにしてタグ収納することにより、テーパ面21に庇44が被さって、外力剥離をより強固に防止することができる。
【0034】
本発明においては、タグ収容凹部をより浅くすれば、それだけ凹部形成作業の負担をより削減できる。図4の(4A)は、扁平ICタグ6の上面11を、浅い凹部34(図3の凹部30より深さが浅い)から上方に突出させた実施形態を示す。図4において、図1及び図3の(3A)と同一部材には同じ符号を付している。この場合、扁平ICタグ6の突出部分が歩行者の荷重や荷物の通過の外力ならびに衝撃力が、タグにピール力(即ち、剥離方向への力)を与えない為に、ラバー裏面33からの突出高さが扁平ICタグ6の厚みTの1/2以下になるように、つまり、接着剤層10の厚さは極薄であり、その厚さを無視すれば凹部34の深さDを厚みTの1/2以上とするのが好ましい。
【0035】
図5は、弾性扁平物体50の貼着状態におけるピール力を説明する説明図である。厚さTの扁平物体50は床面52に接着剤53により接着されているとし、また床面52より扁平物体50の中心までの高さをH(〜T/2)とする。図5の(5A)に示すように、扁平物体50の端部に、高さHより高い位置に外力Fが加わったときには、扁平物体50は床面に接着されており、上部側が弾性変形51する。このため、変形面には外力Fの垂直分力Fn、平行分力Fpが作用しても、扁平物体50には引き剥がし力として作用せず床面52からの剥離は生じない。(5B)に示すように、外力Fが扁平物体50の中心まで下がっても、接着面に沿ったせん断力が抗力として作用するため、扁平物体50の端部が弾性変形51するだけで剥離は生じない。しかし、外力Fが扁平物体50の中心より下方に加わると、扁平物体50の端部下部に偏った弾性変形51が生ずる。このときは、外力Fの垂直分力Fnが鉛直分力Fn1と水平分力Fn2に分岐して、鉛直分力Fn1が剥離力として扁平物体50に作用する。従って、図4の実施形態では、かかる剥離に対するピール力が生じないように、扁平ICタグ6のラバー裏面28からの突出高さを扁平ICタグ6の厚みTの1/2以下にして、洗浄過程中あるいは、歩行者の荷重や荷物の通過の外力ならびに衝撃力から、タグにピール力を与えない、すなわち剥離しないようにしている。
【0036】
外部からの衝撃を避けるためには、図3のように、扁平ICタグ6の上面がラバー裏面33と面一になるように、扁平ICタグ6を凹部に収設するのが好ましいが、図4の(4A)の実施形態では、上記ピール力の観点から求めた、扁平ICタグ6の上面の突出量の適切な設定により、扁平ICタグ6の一部を突出させても剥離防止効果を維持できるので、浅い凹部34を使用することが可能となり、しかも、凹部34の加工作業が極めて簡易に済み、加工時間・コストの低減を実現できる利点を得ることができる。なお、(4B)に示すように、ラバー裏面33より突出させた部分にテーパ面35を形成してもよい。即ち、図3の(3B)と同様に、テーパ面35により、突出部分に加わる外力の影響を緩和して耐久性をより向上させることができる。
【0037】
本発明に係る扁平ICタグは、少なくとも片面が柔軟性素材からなる柔軟面を形成したタグパッケージ構造を具備すればよい。図6はタグパッケージ構造形態として、電子部品モジュール61及びアンテナ部材62を柔軟性樹脂モールド64でソフトモールドパッケージし、そのパッケージ面のひとつを覆う硬質合成樹脂モールド63により外被形成した2重パッケージを用いた扁平ICタグ60の実施形態を示す。図6において図1と同一部材には同じ符号を付している。2重パッケージは柔軟性樹脂モールド64及び硬質合成樹脂モールド63を別々に形成してそれらを接合ないし接着結合させて形成される。図6の場合、硬質合成樹脂モールド63は、図6のように外周部にテーパ面21を形成した断面略台形の円錐台形状を有し、その中心部に収納部を備える。円形状柔軟性樹脂モールド64はその収納部に接着、収設されている。この場合、扁平ICタグ60の付設は、ゴムラバー1の裏面4の接着前処理が施された処理面5に接着剤層10を介して硬質合成樹脂モールド63の下面を貼着して行われる。本実施形態によれば、扁平ICタグ60の外部に突出した面が柔軟性のある樹脂モールド面65であり、かつその周囲を硬質合成樹脂モールド63によりカバーするソフト・ハードのパッケージ構造であるので、外部との接触に対し、また洗浄等の影響を受けても耐久性に富んだ柔軟性を具備した両面接着型ICタグ付設マットを実現することができる。
【0038】
本発明は、上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、洗浄等の影響を受けても耐久性に富む柔軟性を具備した処理面型ICタグ付設マットを実現することができ、特に、反復して洗浄が繰り返し行われるレンタル用マットに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る処理面型ICタグ付設マットの縦断面部分図である。
【図2】断面略台形状のパッケージ構造を有した扁平ICタグ20及び扁平ICタグ20を使用した実施形態を示すマット縦断面部分図である。
【図3】ICタグをマットに埋設して付設した実施形態を示すマット縦断面部分図である。
【図4】扁平ICタグ6の上面を凹部34から上方に突出させた実施形態を示すマット縦断面部分図である。
【図5】図4の実施形態におけるピール力を説明するための図である。
【図6】本発明に用いる、更に別のパッケージ構造の扁平ICタグを使用した実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ゴムラバー
2 基布
3 パイル
4 裏面
5 処理面
6 扁平ICタグ
7 電子部品モジュール
8 アンテナ部材
9 モールド
10 接着剤層
11 扁平ICタグの一面
12 シート
20 扁平ICタグ
21 テーパ面
22 電子部品モジュール
23 アンテナ部材
24 処理面
25 モールド部分
26 上面
27 接着剤層
28 ゴムラバー
30 凹部
31 処理面
32 ゴムラバー
33 裏面
34 浅い凹部
40 凹部
41 処理面
42 ゴムラバー
43 裏面
44 庇
50 扁平物体
51 弾性変形
52 床面
53 接着剤
60 扁平ICタグ
61 電子部品モジュール
62 アンテナ部材
63 硬質合成樹脂モールド
64 柔軟性樹脂モールド
W1 長さ
W2 幅
F 外力
Fn 垂直分力
Fp 平行分力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マット基材の基材面の所定箇所にICタグを取り付けたマットにおいて、前記ICタグは両面又は片面が柔軟性素材からなる柔軟面である扁平ICタグからなり、前記基材面の前記所定箇所を粗面処理及び/又はプライマー処理して処理面とし、前記扁平ICタグの前記柔軟面を外方に向けてその裏側面を前記処理面に接着したことを特徴とする処理面型ICタグ付設マット。
【請求項2】
前記基材面の前記所定箇所が浅い凹部からなり、前記凹部の底面を前記処理面にし、前記扁平ICタグを前記凹部に収容して前記処理面に接着した請求項1に記載の処理面型ICタグ付設マット。
【請求項3】
前記凹部の深さを前記扁平ICタグの厚さの1/2以上とした請求項2に記載の処理面型ICタグ付設マット。
【請求項4】
前記扁平ICタグは外周部に上方に向かって先細りのテーパ面を形成した断面略台形状を有し、前記扁平ICタグの底面を前記処理面に接着した請求項1、2又は3に記載の処理面型ICタグ付設マット。
【請求項5】
前記扁平ICタグの一部が突出した状態で前記扁平ICタグを前記凹部に収容し、その突出部分の外周部に前記テーパ面を形成した請求項4に記載の処理面型ICタグ付設マット。
【請求項6】
前記マット基材が合成ゴム又は合成樹脂からなる請求項1〜5のいずれかに記載の処理面型ICタグ付設マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−93426(P2009−93426A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263552(P2007−263552)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000133445)株式会社ダスキン (119)
【Fターム(参考)】