説明

凹凸パターン形成シートおよびその製造方法、光拡散体、光拡散体製造用スタンパならびに光拡散体の製造方法

【課題】複数の発光ダイオード光源が二次元的に分散配置された面光源装置に使用された場合でも、防眩性および照度の両方を十分に高くできる、等方性光拡散性に優れた光拡散体として使用できる、凹凸パターン形成シートを提供する。
【解決手段】少なくとも1種類の透光性樹脂からなるシートの表面に、一方向に沿った第一の凹凸パターンと、第一の凹凸パターンに略直交する方向に沿った第二の凹凸パターンとが形成された凹凸パターン形成シートであって、
第一および第二の凹凸パターンの平均ピッチがそれぞれ1μmを超え50μm以下、第一および第二の凹凸パターンの平均深さが前記平均ピッチを100%とした際の10%以上であることを特徴とする凹凸パターン形成シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置などに使用される光拡散体に備えられる凹凸パターン形成シートおよびその製造方法に関する。また、凹凸パターン形成シートが使用された光拡散体に関する。また、凹凸パターンが表面に形成された光拡散体を製造するための型として用いられる光拡散体製造用スタンパに関する。さらに、光拡散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりに伴い、照明装置においては、省電力且つ長寿命であることから、光源として発光ダイオード光源を用いたものが急速に普及しつつある。ところで、発光ダイオード光源から発せられる光は、直進性が高く、殆ど拡散しないため、発光ダイオード光源を用いた照明装置は光拡散体を備える。例えば、特許文献1には、複数個の発光ダイオード光源を直線的に配列させた光源ユニットと、該光源ユニットからの光を拡散させて光源イメージを低減し、防眩性を得るための光拡散体とを備えたものが開示されている。光拡散体としては、例えば、従来の直管形蛍光灯を用いた照明装置に取り付けられているような、バインダ中に粒子が含まれる光拡散層を有するもの(特許文献2参照)が使用されている。しかし、特許文献2に記載の光拡散層を有する光拡散体を、前記発光ダイオード光源を用いた光源ユニットに適用した場合には、光源イメージは十分に消え、防眩性は確保できるものの、粒子による光散乱のため光の透過性が阻害され、照明装置の照度が低くなることがあった。
【0003】
この問題に対し、特許文献3には、複数の発光ダイオード光源が二次元的に分散配置された面光源装置において、片面に凹凸形状を有する2つのシートを、各シートの凸部先端が同一の方向を向くように配置した光拡散体を用いることが記載されている。
1枚のシートを光拡散体として用いた例として、特許文献4および特許文献5では、防眩性と照度を確保することを目的として、少なくとも片面に、干渉露光法により作製された凹凸形状を有するシートを光拡散体として用いることが記載されている。また、特許文献6では、半球状のマイクロレンズが配列した表面凹凸形状が、金型による転写法により樹脂フィルム表面に設けられた拡散シートが記載されている。
また、特許文献7には、加熱収縮性樹脂フィルムの片面または両面に、表面が平滑な樹脂製の硬質層を形成した後、加熱収縮させることにより硬質層の表面に凹凸パターンが形成された凹凸パターン形成シートを光拡散体として用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−121461号公報
【特許文献2】特開平10−269825号公報
【特許文献3】国際公開第2010/110319号明細書
【特許文献4】特開2001−100621号公報
【特許文献5】特開2010−129507号公報
【特許文献6】特開2007−179036号公報
【特許文献7】特開2008−302591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3の方法によれば、光源イメージを低減し、防眩性を得ることはできるが、シートを2枚使用するために照度が大きく低下してしまう。
1枚のシートを光拡散体として使用する、特許文献4および5においても、凹凸構造により防眩性を高めて、目視で判別できないレベルまで十分に光源イメージを無くした場合には、照度が大きく低下してしまう。さらに、干渉露光法を使用して凹凸パターンを形成するために、大きいサイズの拡散シートを得ることが非常に困難で、発光ダイオード光源を使用した一般的なサイズの光源装置には使用できない。特許文献6のような半球レンズ上の凹凸構造では、光の拡散性が不十分なため、光源イメージを無くして十分な防眩性を得るために、シート内部に拡散材料を含有させている。その結果、照度低下が大きくなってしまう。
特許文献7の方法では、簡便な方法により凹凸パターン形成シートを作製可能であり、十分に大きなサイズのシートを製造可能である。ランダム性の高い凹凸構造が形成されるため、光拡散性が高く、防眩性と高照度を両立することが可能である。しかし、一軸方向加熱収縮性シートを使用するため、一方向に沿った凹凸構造が形成された異方性の高い拡散シートであり、等方拡散性に乏しいため、複数の発光ダイオード光源が二次元的に分散配置された面光源装置に使用した場合には、十分な防眩性が得られないという問題があった。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、複数の発光ダイオード光源が二次元的に分散配置された面光源装置に使用された場合でも、防眩性および照度の両方を十分に高くできる、特に等方性光拡散性に優れた光拡散体として使用できる、凹凸パターン形成シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、以下の第1〜第6の発明、即ち、[1]〜[6]の発明の構成を採用する。
[1] 少なくとも1種類の透光性樹脂からなるシートの表面に、一方向に沿った第一の凹凸パターンと、第一の凹凸パターンに略直交する方向に沿った第二の凹凸パターンとが形成された凹凸パターン形成シートであって、
第一および第二の凹凸パターンの平均ピッチがそれぞれ1μmを超え50μm以下、第一および第二の凹凸パターンの平均深さが前記平均ピッチを100%とした際の10%以上であることを特徴とする凹凸パターン形成シート。
[2] 樹脂製の透光性基材と、該基材の片面に設けられた樹脂性の透明な硬質層とを備え、該硬質層の表面に、一方向に沿った第一の凹凸パターンと、第一の凹凸パターンに略直交する方向に沿った第二の凹凸パターンとが形成された凹凸パターン形成シートであって、
樹脂製の基材が一軸方向加熱収縮性フィルムであり、
硬質層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg2と、基材を構成する樹脂のガラス転移温
度Tg1との差(Tg2−Tg1)が10℃以上であり、
硬質層を構成する樹脂が、活性エネルギー線により硬化された後の、活性エネルギー線硬化性樹脂であることを特徴とする、[1]に記載の凹凸パターン形成シート。
[3] 樹脂製の透光性基材の片面に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工し、一方向に沿った第一の凹凸パターンのみが表面に形成された転写成形用スタンパを、該凹凸パターンの方向と、基材の熱収縮の方向とを一致させた状態にて該塗工膜に密着させ、透光性基材側から活性エネルギー線を照射することにより活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させた後、該硬化膜を転写成形用スタンパから剥離することにより、第一の凹凸パターンが転写成形された硬質層が設けられた積層シートを製造する工程と、
前記積層シートを加熱して、基材の熱収縮の方向に収縮させることで、硬質層を折り畳むように変形させて第二の凹凸パターンを形成する工程とを有する、[2]に記載の凹凸パターン形成シートの製造方法。
[4] [1]または[2]に記載の凹凸パターン形成シートを備えた光拡散体。
[5] [1]または[2]に記載の凹凸パターン形成シートと同等の平均ピッチおよび平均深さの凹凸パターンが表面に形成された、光拡散体製造用スタンパ。
[6] [5]に記載の光拡散体製造用スタンパの凹凸パターンを、少なくとも1種類の透光性樹脂からなるシートの表面に転写させる転写工程を有することを特徴とする、[4]に記載の光拡散体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の凹凸パターン形成シートは、光拡散体として利用でき、簡便に製造できるものである。
本発明の凹凸パターン形成シートの製造方法によれば、光拡散体として利用される凹凸パターン形成シートを簡便に製造できる。
本発明の光拡散体は、光拡散性に優れ、照明装置に用いた場合、高い防眩性と照度を得ることができる。
本発明の光拡散体製造用スタンパおよび光拡散体の製造方法によれば、凹凸パターン形成シートと同等の平均ピッチおよび平均深さの凹凸パターンが形成された光拡散体を簡便にかつ大量に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の凹凸パターン形成シート上面を撮影した光学顕微鏡画像である。
【図2】本発明の凹凸パターン形成シートの模式図である。
【図3】本発明の凹凸パターン形成シートを、第二の凹凸パターンに平行な方向(Y方向)に切断した際の断面図である。
【図4】本発明の凹凸パターン形成シートの製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明の光拡散体の製造方法の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の各実施例にて用いられる面光源装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(凹凸パターン形成シート)
本発明の凹凸パターン形成シートの一実施形態について説明する。
図1および図2に、本実施形態の凹凸パターン形成シートを示す。図1は凹凸パターン上面を撮影した光学顕微鏡画像であり、図2はその凹凸パターンを模式的に示したものである。本実施形態の凹凸パターン形成シート10は、基材11と、基材11の片面に設けられた硬質層12とを備え、硬質層12の表面に、略一方向に沿った第一の凹凸パターン13aと、第一の凹凸パターンに略直交する方向に沿った第二の凹凸パターン14aとを有するものである。
【0011】
凹凸パターン形成シート10の2つの凹凸パターン13aおよび14aは、それぞれ略一方向に沿った波状の凹凸が互いに略直交しているものであり、それら波状の凹凸が蛇行しているものである。
図2に示すように、第一の凹凸パターン13aは、一方向(以下、「X方向」とする)に沿って蛇行している波状のパターンであり、その方向に対して直交する方向(以下、「Y方向」とする)に沿って凹凸(凹部13c、凸部13b)が繰り返し形成された波形状のパターンである。
第二の凹凸パターン14aは、Y方向に沿って蛇行している波状のパターンであり、X方向に沿って凹凸(凹部14c、凸部14b)が繰り返し形成された波形状のパターンである。
本実施形態では、凹凸パターン13a、14aの稜線が蛇行して、隣り合った凸部13b、14b同士のピッチが凹凸パターン13a、14aの方向に沿ってばらついている。また、第一の凹凸パターン13aおよび第二の凹凸パターン14aの凸部(13b、14b)の先端は共に丸みを帯びている。
【0012】
凹凸パターン13a、14aの平均ピッチAおよび平均深さBを求めるためには、凹凸パターン13a、14aの上面および断面の光学顕微鏡による観察、または、凹凸パターン13a、14aの共焦点レーザー顕微鏡による三次元測定を行う。
顕微鏡観察によって得られた、断面の凹凸プロファイルから、平均ピッチAおよび平均深さBを求める方法の一例を以下に述べる。図3は、第一の凹凸パターン13aをY方向に沿って切断した断面プロファイルである。隣り合う凹部(13c)同士の、Y方向での位置(Y座標)の差、すなわち、ピッチA1、A2、A3・・・、の平均値が、平均ピッチAとして求められる。少なくとも10個以上のピッチから平均ピッチAが求められる。
平均深さBは、断面プロファイル図3において、Y方向と平行な基準線L1から各凸部(13b)までの長さB1,B2,B3・・・の平均値(BAV)と、基準線L1から各凹部(13c)までの長さb1,b2,b3・・・の平均値(bAV)との差(bAV−BAV)として求めることができる。それぞれ少なくとも10個以上の凸部および凹部から平均深さBが求められる。
第二の凹凸パターン14aについても、前記と全く同様にして平均ピッチAおよび平均深さBを求めることができる。
【0013】
第一の凹凸パターン13aおよび第二の凹凸パターン14aの平均ピッチAは1μmを超え40μm以下、好ましくは1μmを超え30μm以下である。平均ピッチAが1μm未満であると、光が透過してしまい、40μmを超えると、光拡散性が低くなる。
凹凸パターン13a、14a平均深さBは平均ピッチAを100%とした際の10%以上(すなわち、アスペクト比0.1以上)であり、30%以上(すなわち、アスペクト比0.3以上)であることが好ましい。平均深さBが平均ピッチAを100%とした際の10%未満であると、光拡散性の高い光拡散体を得ることが困難になる。
また、平均深さBは、凹凸パターン13a、14aを容易に形成できる点から、好ましくは平均ピッチAを100%とした際の300%以下(すなわち、アスペクト比3.0以下)であり、より好ましくは200%以下(すなわち、アスペクト比2.0以下)である。
光拡散性の高い光拡散体が得られるようになる点では、凹凸パターン13a、14aがある程度蛇行して、隣り合った凸部同士のピッチが凹凸パターン13a、14aそれぞれの方向に沿ってばらついていることが好ましい。
【0014】
硬質層12を構成する樹脂(以下、第二の樹脂という。)のガラス転移温度Tg2と、基材11を構成する樹脂(以下、第一の樹脂という。)のガラス転移温度Tg1との差(Tg2−Tg1)は10℃以上であり、20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。(Tg2−Tg1)の差が10℃以上であることにより、Tg2とTg1の間の温度で容易に加工できる。Tg2とTg1の間の温度を加工温度とすると、基材11のヤング率が硬質層12のヤング率より高くなる条件で加工でき、その結果、硬質層12に第二の凹凸パターン14aを容易に形成できる。
また、Tg2が400℃を超えるような樹脂を使用することは経済性の面から必要に乏しく、Tg1が−150℃より低い樹脂は存在しないことから、(Tg2−Tg1)は550℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。
凹凸パターン形成シート10を製造する際の加工温度における基材11と硬質層12とのヤング率の差は、第二の凹凸パターン14aを容易に形成できることから、0.01〜300GPaであることが好ましく、0.1〜10GPaであることがより好ましい。
ここでいう加工温度は、例えば、後述する凹凸パターン形成シートの製造方法における熱収縮時の加熱温度のことである。また、ヤング率は、JIS K 7113−1995に準拠して測定した値である。
【0015】
第一の樹脂のガラス転移温度Tg1は−150〜300℃であることが好ましく、−120〜200℃であることがより好ましい。ガラス転移温度Tg1が−150℃より低い樹脂は存在せず、第一の樹脂のガラス転移温度Tg1が300℃以下であれば、凹凸パターン形成シート10を製造する際の加工温度(Tg2とTg1の間の温度)に容易に加熱することができるためである。
【0016】
凹凸パターン形成シート10を製造する際の加工温度における第一の樹脂のヤング率は0.01〜100MPaであることが好ましく、0.1〜10MPaであることがより好ましい。第一の樹脂のヤング率が0.01MPa以上であれば、基材11として使用可能な硬さであり、100MPa以下であれば、硬質層12が変形する際に同時に追従して変形可能な軟らかさである。
【0017】
第一の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィンなどの樹脂が挙げられる。
なお、本実施形態における凹凸パターン形成シートを、光拡散体として好適に用いるために、基材11は透光性基材が用いられ、基材11を構成する第一の樹脂としても透明性の高い樹脂が使用される。
【0018】
本実施形態における第二の樹脂としては、活性エネルギー線硬化性樹脂が用いられる。後述する凹凸パターン形成シートの製造方法においては、第一の樹脂からなる基材上に、第二の樹脂である、活性エネルギー線硬化性樹脂の未硬化の組成物が塗工され、第一の凹凸パターン13aが表面に形成された転写成形用スタンパを該塗工膜に密着させたのち、基材側から活性エネルギー線を照射させて硬化させ、該硬化膜をスタンパから剥離することにより、第一の凹凸パターンが、硬質層である第二の樹脂表面に転写成形される。
第二の樹脂としては、エポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリレート、ポリエン/アクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエン、ポリスチリルメチルメタクリレート等のプレポリマー、脂肪族アクリレート、脂環式アクリレート、芳香族アクリレート、水酸基含有アクリレート、アリル基含有アクリレート、グリシジル基含有アクリレート、カルボキシ基含有アクリレート、ハロゲン含有アクリレート等から選ばれる1種類以上の成分を含有する、未硬化の活性エネルギー線硬化性組成物を、活性エネルギー線照射により硬化させて得られる樹脂が挙げられる。
なお、本実施形態における凹凸パターン形成シートを、光拡散体として好適に用いるために、硬質層12を構成する第二の樹脂としても透明性の高い樹脂が使用される。
【0019】
硬化後の第二の樹脂のガラス転移温度Tg2は40〜400℃であることが好ましく、80〜250℃であることがより好ましい。第二の樹脂のガラス転移温度Tg2が40℃以上であれば、凹凸パターン形成シート10を製造する際の加工温度を室温またはそれ以上にすることができて有用であり、ガラス転移温度Tg2が400℃を超えるような樹脂を第二の樹脂として使用することは経済性の面から必要性に乏しいためである。
【0020】
凹凸パターン形成シート10を製造する際の加工温度における第二の樹脂のヤング率は0.01〜300GPaであることが好ましく、0.1〜10GPaであることがより好ましい。第2の樹脂のヤング率が0.01GPa以上であれば、第一の樹脂の加工温度におけるヤング率より充分な硬さが得られ、第二の凹凸パターン14aが形成された後、凹凸パターンを維持するのに充分な硬さであり、ヤング率が300GPaを超えるような樹脂を第二の樹脂として使用することは経済性の面から必要性に乏しいためである。
【0021】
基材11の厚みは0.3〜500μmであることが好ましい。基材11の厚みが0.3μm以上であれば、凹凸パターン形成シート10が破れにくくなり、500μm以下であれば、凹凸パターン形成シート10を容易に薄型化できる。
また、基材11を支持するために、厚さ5〜500μmの樹脂製の支持体を設けてもよい。また、光拡散体として用いる場合には、光拡散性をより高くするために、微細気泡を含有させたフィルムを基材11に貼付してもよい。
【0022】
凹凸パターン形成シート10を光拡散体として使用する場合には、基材11には、より光拡散効果を高める目的で、光透過率等の光学特性を大きく損なわない範囲内で、無機化合物からなる光拡散剤、有機化合物からなる有機光拡散剤を含有させることができる。
無機光拡散剤としては、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ガラス、マイカ等が挙げられる。
有機光拡散剤としては、スチレン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子等が挙げられる。これらの光拡散剤はそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
光拡散剤の含有量は、光透過性を損ないにくいことから、第1の樹脂100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。
【0023】
また、凹凸パターン形成シート10を光拡散体として使用する場合には、基材11には、より拡散効果を高める目的で、光透過率等の光学特性を大きく損なわない範囲内で、微細気泡を含有させることができる。微細気泡は、光の吸収が少なく光透過率を低下させにくい。
微細気泡の形成方法としては、基材11に発泡剤を混入する方法(例えば、特開平5−212811号公報、特開平6−107842号公報に開示された方法)や、アクリル系発泡樹脂を発泡処理させて微細気泡を含有する方法(例えば、特開2004−2812号公報に開示された方法)などを適用できる。さらに微細気泡は、より均一な面照射が可能となる点では、特定の位置に不均一に発泡させる方法(例えば、特開2006−124499号公報に開示された方法)が好ましい。
なお、前記光拡散剤と微細発泡を併用することもできる。
【0024】
硬質層12の厚みは、0.5μmを超え20μm以下であることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。硬質層の厚みが0.05μmを超え20μm以下であれば、後述のように凹凸パターン形成シートを容易に製造できる。
また、基材11と硬質層12との間には、密着性の向上やより微細な構造を形成することを目的として、プライマー層を形成してもよい。
【0025】
硬質層12を構成する第2の樹脂のガラス転移温度Tg2と、基材11を構成する第1の樹脂のガラス転移温度Tg1との差(Tg2−Tg1)が10℃以上である本発明の凹凸パターン形成シート10は、後述する凹凸パターン形成シートの製造方法により得られるため、簡便に製造できる。
また、本発明者が調べた結果、基材11および硬質層12が共に透明である場合には、凹凸パターン13a、14aの平均ピッチAが1μmを超え40μm以下、凹凸パターンの平均深さBが前記平均ピッチAを100%とした際の10%以上である本発明の凹凸パターン形成シート10は、それぞれの凹凸パターンの方向に充分な光拡散性を有するため、光拡散体として利用できることが判明した。さらに、凹凸パターン13a、14aそれぞれの平均ピッチ、平均深さを適宜調整して作製することにより、それぞれの方向での拡散角度を適宜変えることが可能で、光拡散体としての異方性を適宜コントロールすることが可能である。もちろん、光拡散性の高い、等方性光拡散体としても利用可能である。
【0026】
なお、本発明の凹凸パターン形成シートは、上述した実施形態に限定されない。例えば、本発明の凹凸パターン形成シートの凹凸パターンの凸部の先端が尖っていても構わない。しかし、凹凸パターンの凸部の形状は光拡散性がより高くなる点から、先端が丸みを帯びていることが好ましい。
【0027】
(凹凸パターン形成シートの製造方法)
本発明の凹凸パターン形成シートの製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の凹凸パターン形成シートの製造方法は、樹脂製の透光性基材である加熱収縮性フィルム11aの片面に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物12aを塗工し、一方向に沿った第一の凹凸パターン13aのみが表面に形成された転写成形用スタンパ20を、該凹凸パターン13aの方向と、基材11aの熱収縮の方向とを一致させた状態にて該塗工膜12aに密着させ、透光性基材11a側から活性エネルギー線を照射することにより活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させた後、該硬化膜12bを転写成形用スタンパ20から剥離することにより、第一の凹凸パターン13aが転写成形された硬質層12bが設けられた積層シート10aを製造する、図4(a)に示すような工程(以下、第一の工程という。)と、前記積層シート10aを加熱して、基材11aの熱収縮の方向に収縮させることで、硬質層12bを折り畳むように変形させて第二の凹凸パターン14aを形成する、図4(b)に示すような工程(以下、第二の工程という。)とを有する方法である。
【0028】
[第一の工程]
第一の工程にて、加熱収縮性フィルム11aの片面に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物12aを塗工する方法としては、ダイコーター、ロールコーター、バーコーターなどのコーターによる塗工が挙げられる。
加熱収縮性フィルム11aとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム、ポリスチレン系シュリンクフィルム、ポリオレフィン系シュリンクフィルム、ポリ塩化ビニル系シュリンクフィルムなどを用いることができる。
シュリンクフィルムの中でも、30〜70%収縮するものが好ましい。30〜70%収縮するシュリンクフィルムを用いれば、変形率を30%以上にでき、第二の凹凸パターン14aの平均ピッチAが1μmを超え50μm以下、凹凸パターン14aの平均深さBが最頻ピッチAを100%とした際の10%以上の凹凸パターン形成シート10を容易に製造できる。さらには、凹凸パターン14aの平均深さBが最頻ピッチAを100%とした際の100%以上の凹凸パターン形成シート10も容易に製造できる。
ここで、変形率とは、(変形前の長さ−変形後の長さ)/(変形前の長さ)×100(%)のことである。あるいは、(変形した長さ)/(変形前の長さ)×100(%)のことである。
【0029】
未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物12aとしては、エポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリレート、ポリエン/アクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエン、ポリスチリルメチルメタクリレート等のプレポリマー、脂肪族アクリレート、脂環式アクリレート、芳香族アクリレート、水酸基含有アクリレート、アリル基含有アクリレート、グリシジル基含有アクリレート、カルボキシ基含有アクリレート、ハロゲン含有アクリレート等のモノマーの中から選ばれる1種類以上の成分を含有するものが挙げられる。未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂12aは適宜溶媒等で希釈して用いても良い。また、硬化後のスタンパからの離型性を向上させるため、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等を添加してもよい。
未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物12aを紫外線により硬化する場合には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類等の光重合開始剤を添加することが好ましい。
【0030】
第一の工程では、前記の方法にて加熱収縮性フィルム11aの片面に設けられた未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物12aの塗工膜に対し、一方向に沿った第一の凹凸パターン13aのみが表面に形成された転写成形用スタンパ20を密着させ、透光性基材11a側から活性エネルギー線を照射することにより活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させた後、該硬化膜12bを転写成形用スタンパ20から剥離することにより、第一の凹凸パターン13aが硬質層12bに転写成形される。
第一の凹凸パターン13aのみが表面に形成された転写成形用スタンパ20は、例えば、特開2008−302591号公報や、特開2008−304701号公報に記載されている方法に従い、下記のようにして作製することができる。
まず、加熱収縮性フィルムからなる透明樹脂製の基材の片面に硬質層を設けて積層フィルムを形成し、前記積層フィルムを加熱して前記基材を収縮させることにより、前記硬質層を折り畳むように変形させて、第一の凹凸パターン13aが形成された凹凸パターン形成シートを得る。次に、得られた凹凸パターン形成シートを、工程シート原版として用い、凹凸パターン13aが形成された面に、ニッケル等の金属めっきを行って、めっき層を積層する。最後に、積層されためっき層を工程シート原版から剥離することにより、第一の凹凸パターン13aが表面に転写された、転写成形用スタンパ20を得る。
また、前記方法で得られた金属製スタンパから、金属めっき工程および剥離工程を一回、あるいは複数回繰り返すことにより、その凹凸パターン13aが転写された金属製スタンパを作製することができ、それを転写成形用スタンパ20とすることもできる。あるいは、工程シート原版から凹凸パターン13aを直接樹脂シートに転写することにより転写成形用スタンパ20を作製する方法や、前記方法で得られた金属製スタンパから、凹凸パターン13aを樹脂シートに転写することにより転写成形用スタンパ20を作製する方法を用いることができる。ここで、転写成形用スタンパ20は、凹凸パターン13aを転写成形することができる限りにおいて、金属製であっても、樹脂製であっても良い。
なお、転写成形時にスタンパからの樹脂の剥離性を向上させるため、必要に応じて適宜、転写成形用スタンパ20の表面に、フッ素系離型剤やシリコーン系離型剤などによる離型処理を施しても良い。
【0031】
本実施形態の第一の工程では、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物12aの塗工膜に対し、一方向に沿った第一の凹凸パターン13aのみが表面に形成された転写成形用スタンパ20を密着させる際に、第一の凹凸パターン13aの方向と、基材11aの熱収縮の方向とを一致させることが必要である。ここでこの2つの方向を一致させることにより、第一の工程で得られた積層シート10aを、後述する第二の工程にて加熱収縮させる際に、第一の凹凸パターン13aに略直交した第二の凹凸パターン14aを形成させることが可能となる。
【0032】
本実施形態では、硬質層12bの厚さを、0.5μmを超え20μm以下、好ましくは1〜10μmとする。硬質層12bの厚さを前記範囲にすることにより、第二の凹凸パターン14aの平均ピッチAを、確実に1μmを超え50μm以下にできる。しかし、硬質層12bの厚さが0.5μm以下であると平均ピッチAが1μm以下になることがあり20μmを超えると、後述する第二の工程にて積層シート10aを加熱収縮させても、硬質層が厚すぎて基材11aの熱収縮を阻害し、第二の凹凸パターン14aが形成されない場合がある。
また、本実施形態では、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物12aが活性エネルギー線照射により硬化させて得られる硬質層12bを、加熱収縮性フィルムを構成する樹脂(第一の樹脂)よりガラス転移温度が10℃以上高い樹脂(第二の樹脂)で構成する。第一の樹脂のガラス転移温度と第2の樹脂のガラス転移温度が前記関係にあることにより、第二凹凸パターン14aの平均ピッチAを、確実に1μmを超え50μm以下にできる。
硬質層12bの厚さは連続的に変化していても構わない。硬質層12bの厚さが連続的に変化している場合には、加熱収縮後に形成される第二の凹凸パターン14aのピッチおよび深さが連続的に変化するようになる。
【0033】
この製造方法では、より容易に第二の凹凸パターン14aを形成できることから、硬質層12bのヤング率を0.01〜300GPaにすることが好ましく、0.1〜10GPaにすることがより好ましい。
【0034】
[第2の工程]
第2の工程にて、加熱収縮性フィルム11aを熱収縮させることにより、硬質層12bに、収縮方向に対して垂直方向に波状の第二の凹凸パターン14aを形成させて、硬質層12を得る。
加熱収縮性フィルム11aを加熱収縮させる際の加熱方法としては、熱風、蒸気または熱水中に通す方法や、赤外線を照射する方法等が挙げられる。
加熱収縮性フィルム11aを熱収縮させる際の加熱温度は、使用する加熱収縮性フィルムの種類および目的とする第二の凹凸パターン14aのピッチならびに深さに応じて適宜選択することが好ましい。
【0035】
この製造方法では、硬質層12bの厚さが薄いほど、硬質層12bのヤング率が低いほど、第二の凹凸パターン14aの平均ピッチAが小さくなり、基材の変形率が高いほど、平均深さBが深くなる。したがって、第二の凹凸パターン14aを所定の平均ピッチA、平均深さBにするためには、前記条件を適宜選択する必要がある。
【0036】
以上説明した凹凸パターン形成シートの製造方法では、硬質層12bを構成する第二の樹脂が加熱収縮性フィルム11aを構成する第一の樹脂よりガラス転移温度が10℃以上高いため、第一の樹脂のガラス転移温度と第二の樹脂のガラス転移温度の間の温度では、硬質層12bのヤング率が加熱収縮性フィルム11aより高くなる。その上、硬質層12bの厚さを0.5μmを超え20μm以下としているため、第一の樹脂のガラス転移温度と第二の樹脂のガラス転移温度の間の温度で加工した際には、硬質層12bは厚みを増すよりも、折り畳まれるようになる。さらに、硬質層12bは加熱収縮性フィルム11aに積層されているため、加熱収縮性フィルム11aの収縮による応力が全体に均一にかかる。したがって本製造方法によれば、硬質層12bを折り畳むように変形させることにより、第一の工程にてすでに硬質層12bの表面に転写成形されている第一の凹凸パターン13aに加え、それと略直交する方向に第二の凹凸パターン14aを簡便に形成することができる。本製造方法によれば、二つの互いに直交した凹凸パターンを有するため、それぞれの方向に高い光拡散性を示し、異方性または等方性光拡散体としての性能に優れた凹凸パターン形成シート10を簡便に、かつ、大面積で製造できる。
しかも、この製造方法によれば、容易に、第一の凹凸パターン13aおよび第二の凹凸パターン14aの平均ピッチAを、1μmを超え50μm以下、平均深さBを、平均ピッチAを100%とした際の10%以上にできる。
【0037】
(光拡散体)
本発明の光拡散体は、上述した凹凸パターン形成シート10を備えたものである。
本発明の光拡散体においては、凹凸パターン形成シート10の片面または両面に他の層を備えてもよい。例えば、凹凸パターン形成シート10の、凹凸パターン13a、14aが形成されている側の面に、その面の汚れを防止するために、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂を主成分として含有する厚さ1〜5nm程度の防汚層を備えてもよい。
また、光拡散体の基材11側の面には、透明樹脂製あるいはガラス製の支持体が備えられていてもよい。
さらに、基材11側の面に粘着剤層が形成されていてもよく、機能性を適宜持たせるために色素を含んでもよい。
【0038】
上述した凹凸パターンが表面に形成された凹凸パターン形成シート10を備えた本発明の光拡散体は、等方性光拡散体あるいは異方性光拡散体として使用可能であり、充分な光拡散性を有する。特に、表面に形成された、互いに直交した二つの凹凸パターンによって光を等方的に拡散させることが可能であり、光源イメージが無くなる程度の十分な防眩性が得られた場合でも、照度の低下を抑制することができる。よって、本発明の光拡散体を照明装置に用いた場合、高い防眩性と照度を両立させることができる。
【0039】
(光拡散体製造用スタンパおよび光拡散体の製造方法)
本発明の光拡散体製造用スタンパ30は、上述した凹凸パターン形成シート10の表面に形成された二つの凹凸パターン13a、14aと同等の凹凸パターンが表面に形成された、転写成形用スタンパである。このスタンパを型として用い、以下に示すような方法で他の素材に転写させることにより、凹凸パターン形成シート10の凹凸パターン13a、14aと同等の平均ピッチおよび平均深さの凹凸パターンが表面に形成された、光拡散体として使用可能な凹凸パターン形成シートを大面積で大量に製造することができる。
本発明の光拡散体製造用スタンパ30は、下記のようにして作製することができる。本発明の凹凸パターン形成シート10を、工程シート原版として用い、凹凸パターン13a、14aが形成された面に、ニッケル等の金属めっきを行って、めっき層を積層する。最後に、積層されためっき層を工程シート原版から剥離することにより凹凸パターン13a、14aが表面に転写された、転写成形用スタンパを得る。
また、前記方法で得られた金属製スタンパから、金属めっき工程および剥離工程を一回あるいは複数回繰り返すことにより、その凹凸パターン13a、14aが転写された金属製スタンパを作製することができ、それを転写成形用スタンパとすることもできる。あるいは、工程シート原版から凹凸パターン13a、14aを直接樹脂シートに転写することにより転写成形用スタンパを作製する方法や、前記方法で得られた金属製スタンパから、凹凸パターン13a、14aを樹脂シートに転写することにより転写成形用スタンパを作製する方法を用いることができる。
【0040】
ここで、転写成形用スタンパ、すなわち光拡散体製造用スタンパ30は、凹凸パターン13a、14aを転写成形することができる限りにおいて、金属製であっても、樹脂製であっても良い。特に、転写成形による光拡散体の製造におけるスタンパの耐久性の観点から、厚さ0.1〜1.0mmの金属製スタンパが好ましい。スタンパの厚さが0.1mm以上であれば十分な強度を有し、1.0mm以下であれば、十分な可撓性を確保できる。
なお、転写成形時にスタンパからの樹脂の剥離性を向上させるため、必要に応じて適宜、転写成形用スタンパ20の表面に、フッ素系離型剤やシリコーン系離型剤などによる離型処理を施しても良い。
【0041】
光拡散体製造用スタンパ30を用いて光拡散体を製造する具体的な方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記(a)〜(d)の方法が挙げられる。
(a)透光性基材の片面に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工する工程と、該塗工膜に、スタンパの凹凸パターンが形成された面を密着させた後、基材側から活性エネルギー線を照射して前記硬化性樹脂を硬化させ、硬化した塗膜をスタンパから剥離する工程とを有する方法。ここで、活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等を指す。
(b)スタンパの凹凸パターンが形成された面に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗工する工程と、加熱して前記液状熱硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜をスタンパから剥離する工程とを有する方法。
(c)スタンパの凹凸パターンが形成された面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、該シート状の熱可塑性樹脂を工程シート原版に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂をスタンパから剥離する工程とを有する方法。
(d)スタンパを射出成形用金型に組み込み、射出成形法によりスタンパの凹凸パターンが表面に転写された成形品を製造する方法。
【0042】
(a)の具体的方法の一例について説明する。図5に示すように、まず、連続フィルム状の基材フィルム41を搬送しながら、その片面に、ノズル42から未硬化の液状活性エネルギー線硬化性樹脂を吐出し、コーター43により塗工して、未硬化の硬化性樹脂層44を形成する。次いで、その未硬化の硬化性樹脂層44に対し、ロール45に固定されたスタンパを押圧して、未硬化の硬化性樹脂をスタンパ20の凹凸パターン内部に充填する。その直後、活性エネルギー線照射装置46により活性エネルギー線を照射して、硬化性樹脂を架橋・硬化させる。そして、スタンパから、硬化後の活性エネルギー線硬化性樹脂を剥離させることにより、連続シート状の凹凸パターン転写シート50を製造することができる。
【0043】
(a)の方法において、未硬化の液状活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工する方法、および、使用する未硬化の液状活性エネルギー線硬化性樹脂としては、前述の、本実施形態の凹凸パターン形成シートの製造方法における第一の工程と同様のものを使用できる。未硬化の液状活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工した後には、樹脂、ガラス等からなる基材を貼り合わせてから活性エネルギー線を照射してもよい。
【0044】
硬化後の活性エネルギー線硬化性樹脂のシートの厚み(基材の厚みを含む)は1〜300μmとすることが好ましい。シートの厚みが1μm以上であれば、充分な強度を確保でき、300μm以下であれば、充分な可撓性を確保できる。
【0045】
上記図5に示す方法では、基材フィルムが連続シート状であったが、枚葉のシートであってもよい。枚葉のシートを用いる場合、スタンパを平板状の型として使用するスタンプ法、スタンパをロールに巻きつけて円筒状の型として使用するロールインプリント法等を適用できる。
【0046】
(b)の方法において、液状熱硬化性樹脂としては、例えば、未硬化のメラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0047】
(c)の方法において、熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。
シート状の熱可塑性樹脂をスタンパに押圧する際の圧力は1〜100MPaであることが好ましい。押圧時の圧力が1MPa以上であれば、凹凸パターンを高い精度で転写させることができ、100MPa以下であれば、過剰な加圧を防ぐことができる。
加熱後の冷却温度としては、凹凸パターンを高い精度で転写させることができることか
ら、熱可塑性樹脂のガラス転移温度未満であることが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は勿論これらに限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
[転写成形用スタンパの作製]
ポリメタクリル酸メチル(藤倉化成社製LH−101−10、質量平均分子量560000、重合分散度(Mw/Mn)3.4、ガラス転移温度100℃)のトルエン溶液を、グラビアコーティングにより、1軸方向(幅方向)に主に加熱収縮する厚さ50μmの矩形状枚葉のポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルム(三菱樹脂社製ヒシペットLX−61S、ガラス転移温度70℃)の片面上に、乾燥後の塗工厚さが2μmになるように塗工した。これにより、ポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルムの両面に表面平滑層が形成された積層シートを得た。
次いで、上記積層シートを100℃で1分間加熱することにより、加熱前の長さの40%に熱収縮させ(すなわち、収縮率60%で収縮させ)、硬質層が、収縮方向に対して直交方向に沿って周期性を有する波状の凹凸パターンを有する凹凸パターン形成シート原版
を得た。この凹凸パターンを「第一の凹凸パターン」とする。
次いで、得られた凹凸パターン形成シート原版の凹凸パターンが形成された面に、ニッ
ケルめっきを施し、そのニッケルめっきを剥離することにより、厚さ300μmのニッケ
ルめっきスタンパを得た。このスタンパが、「第一の凹凸パターンが形成された転写成形用スタンパ」である。
【0050】
[第一および第二の凹凸パターンが形成された、凹凸パターン形成シートの作製]
紫外線硬化性樹脂組成物(東洋合成工業社製、PAK−01)を、バーコーターにより、1軸方向に主に加熱収縮する厚さ50μmの矩形状枚葉のポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルム(三菱樹脂社製ヒシペットLX−61S、ガラス転移温度70℃)の片面上に、塗工厚さが6μmになるように塗工した。
この塗工膜上に、前記「第一の凹凸パターンが形成された転写成形用スタンパ」の、凹凸パターンが形成された面を、第一の凹凸パターンの方向と、シュリンクフィルムの加熱収縮の方向が一致するように押圧して密着させ、スタンパの凹凸パターンに未硬化の紫外線硬化性樹脂組成物を充填させる。
次いで、ポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルムの上から紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させ、それにより得た硬化物をスタンパから剥離させた。これにより、加熱収縮性フィルム上に第一の凹凸パターンが形成された硬質層を有する積層シートが得られた。
【0051】
次に、上記積層シートを100℃で1分間加熱することにより、加熱前の長さの50%に熱収縮させ(すなわち、収縮率50%で収縮させ)、硬質層が、収縮方向に対して直交方向に沿って周期性を有する波状の凹凸パターンを有する凹凸パターン形成シートを得た。この凹凸パターンが「第二の凹凸パターン」であり、これにより、互いに略直交する方向に形成された第一および第二の凹凸パターンを有する凹凸パターン形成シートが作製された。
【0052】
(実施例2)
[光拡散体製造用スタンパの作製]
実施例1にて作製された、第一および第二の凹凸パターンを有する凹凸パターン形成シートの凹凸パターンが形成された面に、ニッケルめっきを施し、そのニッケルめっきを剥離することにより、厚さ300μmのニッケルめっきスタンパを得た。このスタンパが、本発明の光拡散体製造に使用される、「光拡散体製造用スタンパ」である。
【0053】
[光拡散体シートの作製]
紫外線硬化性樹脂組成物(東洋合成工業社製、PAK−01)を、バーコーターにより、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製、コスモシャインA4300)の片面上に、塗工厚さが30μmになるように塗工した。
この塗工膜上に、前記「光拡散体製造用スタンパ」の、凹凸パターンが形成された面を押圧して密着させ、スタンパの凹凸パターンに未硬化の紫外線硬化性樹脂組成物を充填させる。
次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルムの上から紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させ、それにより得た硬化物をスタンパから剥離させた。これにより、第一および第二の凹凸パターンが形成された転写シートが得られた。この、第一および第二の凹凸パターンが形成された転写シートを、光拡散体シートとして使用できる。
【0054】
(実施例3)
転写成形用スタンパの作製工程において、ポリメタクリル酸メチルのトルエン溶液の乾燥後の塗工厚さを0.5μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、第一および第二の凹凸パターンを有する凹凸パターン形成シートを作製した。
【0055】
(実施例4)
実施例1にて作製された、第一および第二の凹凸パターンを有する凹凸パターン形成シートの代わりに、実施例3にて作製された、第一および第二の凹凸パターンを有する凹凸パターン形成シートを用いること以外は、実施例2と同様にして、光拡散体製造用スタンパを作製した。
そのスタンパを用いて、実施例2と同様にして、第一および第二の凹凸パターンが形成された転写シートを得た。
【0056】
実施例1〜4にて得た、凹凸パターン形成シートにおける、第一および第二の凹凸パターンの平均ピッチと平均深さを、以下の方法により測定した。
すなわち、凹凸パターン形成シートの、凹凸パターンが形成された面の画像を、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK−8500)を用いて作成した。第一の凹凸パターンの方向(X方向)、およびそれに直交する第二の凹凸パターンの方向(Y方向)それぞれにおいて、その画像の10箇所にてピッチ及び深さを測定し、その平均値を求めた。求めた結果を表1に示す。
【0057】
実施例1〜4で得た凹凸パターン形成シートの光拡散性能を、散乱・光源配光特性測定装置(ジェネシア社製、GENESIA Gonio Far Field Profiler)を用いて評価した。
具体的には、凹凸パターン形成シートの、凹凸パターンが形成されていない面から、凹凸パターンが形成されている側の面に光が通るように、直径2mmの光源からの光を、シートに対して垂直な角度から入射させた。その際の、出射光強度の角度分布を測定し、その半値幅を拡散角度とした。また、拡散角度は、凹凸パターン形成シートの、第一の凹凸パターンの方向(X方向)、それに直交する第二の凹凸パターンの方向(Y方向)、および、それら二つの方向と45°の角度をなす方向(45°方向)について測定した。測定結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例1〜4で得られた凹凸パターン形成シートは、第一の凹凸パターンの方向(X方向)、それに直交する第二の凹凸パターンの方向(Y方向)、および、それら二つの方向と45°の角度をなす方向(45°方向)それぞれの方向における拡散角度がほぼ同等程度となっていた。つまり、互いに直交した第一および第二の凹凸パターンを有することにより、等方性光拡散シートとして高い光拡散性を有していた。
【0060】
実施例1〜4で得られた凹凸パターン形成シート、比較例1としてポリカーボネート製光拡散板(帝人化成社製、パンライトPC−9391)、および比較例2として光拡散シート(ツジデン社製、D141)を、光拡散体として照明装置に用いた場合の防眩性および照度を、下記の方法にて評価した。結果を表2に示す。
図6のように、直交するx方向、y方向に沿って13mm間隔で、6列×6列の計36個の発光ダイオード光源が2次元的に配列して、白色拡散反射シートが貼り付けられた基板上に取り付けられた面光源装置に、発光ダイオード光源から高さ20mmの位置に光拡散体を設置し、照明装置とした。
・照度の測定方法
照明装置の中央部から、光源面に対して垂直な方向に距離1m離れた地点において、照度測定装置(日置電機製、ルクスハイテスタ3423)を用いて照度を測定した。
・防眩性の評価
照明装置を目視し、防眩性を下記の基準で評価した。ここで言う防眩性とは、発光ダイオードの光源イメージを見えなくさせて眩しさを低減させる能力のことである。
3点:光源イメージが全く見えない。
2点:光源イメージがぼんやりと見える。
1点:光源イメージがはっきり見える。
【0061】
【表2】

【0062】
実施例1〜4で得られた凹凸パターン形成シートを光拡散体として用いた照明装置は、いずれも高い照度と防眩性を両立できていた。等方性光拡散シートとして高い光拡散性を有しているため、防眩性が高く、凹凸パターンによる光拡散を利用しているために照度の低下が少ない。一方、比較例1の光拡散板を用いた場合には、防眩性は得られるものの、照度低下が大きかった。また、比較例2の光拡散シートを用いた場合には、照度低下は少なかったものの、光源イメージがはっきり見え、防眩性に劣っていた。
以上のように、本発明の凹凸パターン形成シートは、等方性拡散シートとしての高い光拡散性を示し、照度低下を抑えた状態で光を等方的に十分に拡散し、光源イメージを消して十分な防眩性を得ることができた。一方、各比較例のように、粒子などの拡散子による内部拡散を利用した光拡散体では、照度と防眩性の両立が達成できなかった。
【符号の説明】
【0063】
10a 積層シート
11 基材
11a 加熱収縮性フィルム
12 硬質層
12a 活性エネルギー線硬化樹脂塗工層
12b 硬質層
13a 第一の凹凸パターン
13b 第一の凹凸パターンの凸部
13c 第一の凹凸パターンの凹部
14a 第二の凹凸パターン
14b 第二の凹凸パターンの凸部
14c 第二の凹凸パターンの凹部
20 転写成形用スタンパ
41 基材フィルム
42 ノズル
43 コーター
44 未硬化の硬化性樹脂層
45 ロール
46 活性エネルギー線照射装置
50 凹凸パターン転写シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の透光性樹脂からなるシートの表面に、一方向に沿った第一の凹凸パターンと、第一の凹凸パターンに略直交する方向に沿った第二の凹凸パターンとが形成された凹凸パターン形成シートであって、
第一および第二の凹凸パターンの平均ピッチがそれぞれ1μmを超え50μm以下、第一および第二の凹凸パターンの平均深さが前記平均ピッチを100%とした際の10%以上であることを特徴とする凹凸パターン形成シート。
【請求項2】
樹脂製の透光性基材と、該基材の片面に設けられた樹脂性の透明な硬質層とを備え、該硬質層の表面に、一方向に沿った第一の凹凸パターンと、第一の凹凸パターンに略直交する方向に沿った第二の凹凸パターンとが形成された凹凸パターン形成シートであって、
樹脂製の基材が一軸方向加熱収縮性フィルムであり、
硬質層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg2と、基材を構成する樹脂のガラス転移温
度Tg1との差(Tg2−Tg1)が10℃以上であり、
硬質層を構成する樹脂が、活性エネルギー線により硬化された後の、活性エネルギー線硬化性樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の凹凸パターン形成シート。
【請求項3】
樹脂製の透光性基材の片面に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工し、一方向に沿った第一の凹凸パターンのみが表面に形成された転写成形用スタンパを、該凹凸パターンの方向と、基材の熱収縮の方向とを一致させた状態にて該塗工膜に密着させ、透光性基材側から活性エネルギー線を照射することにより活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させた後、該硬化膜を転写成形用スタンパから剥離することにより、第一の凹凸パターンが転写成形された硬質層が設けられた積層シートを製造する工程と、
前記積層シートを加熱して、基材の熱収縮の方向に収縮させることで、硬質層を折り畳むように変形させて第二の凹凸パターンを形成する工程とを有する、請求項2に記載の凹凸パターン形成シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の凹凸パターン形成シートを備えた光拡散体。
【請求項5】
請求項1または2に記載の凹凸パターン形成シートと同等の平均ピッチおよび平均深さの凹凸パターンが表面に形成された、光拡散体製造用スタンパ。
【請求項6】
請求項5に記載の光拡散体製造用スタンパの凹凸パターンを、少なくとも1種類の透光性樹脂からなるシートの表面に転写させる転写工程を有することを特徴とする、請求項4に記載の光拡散体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−252149(P2012−252149A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124502(P2011−124502)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000122298)王子ホールディングス株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】