説明

凹凸形状模様の付与方法、付与装置、付与用紙及び印刷物

【課題】 コンピュータ操作により、記番号や製造番号、個人の顔画像などの可変情報を凹凸形状模様付与段階で凹凸形状模様として付与することを可能にしたものであり、形状記憶樹脂を用いた可変制御可能な凹凸形状模様の付与方法、付与装置、付与用紙及び印刷物を提供する。
【解決手段】 平板又はロール表面に形状記憶樹脂を積層した形状記憶樹脂積層板又はロールに多数個のドットマトリックス状に配列した触針棒を加圧制御することにより、可変制御可能な識別情報に対応した凹凸形状模様を付与する装置であって、3次元形状計測手段1と、データベース記録手段2と、データベース読込手段3と、画像演算処理手段4と、A/D変換手段5と、駆動制御手段6と、凹凸形状模様付与手段7と、加熱冷却手段8と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸形状模様の付与方法、付与装置、付与用紙及び印刷物に関するものである。特に、銀行券、有価証券、パスポートなどの製品に対して、その製品が本物であることを証明する媒体に、可変情報を凹凸形状模様を付与する段階で付与し、必要量の凹凸形状模様付与用紙を効率よく製造するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行券、有価証券、パスポートなどの製品の偽造、変造に対して、従来から、これらの製品の用紙にすき入れを施す技術が提案されている。すき入れ網作製法は、あらかじめめ電鋳又は針金によってすき入れの型を作製し、金網状にハンダづけする方法、あるいは金網状に、液体感光性樹脂で模様を形成し、該樹脂を紫外線で硬化させ、すき入れ網とする方法などがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、すき入れには、白すき入れと称して、抄紙機の円網又はワイヤーパート上で、凸型の模様を施したダンディロールによる方法と湿紙を型押しして湿紙上に厚みの薄い型をつけ、乾燥紙に透過光で認められる白いすかしを与える方法と黒すき入れと称して、抄紙機の円網又はワイヤーパート上で、凸型の模様を施した抄紙工程設備により、プレスパートにおいて、通過する湿紙のほかの部分より多くの繊維を集めた厚い型をつけ、乾燥紙に透過光で認められる暗い模様を与える方法とがある。
【0004】
また、もう一つのすき入れ法としてのエンボス法は、抄紙機のプレスパート後のドライヤー入り口部に上下にロールを設け、いずれか一方に、彫刻された金属製ロールや模様付けしたゴムロールを使用し、抄紙中に、湿紙が上下ロール間を通過するときに、ロールの模様を転写する。ロール外周にフレキソ版や耐水性の絵柄を取り付け、エンボス模様を得る方法も提供されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この方法においても、小ロットのエンボス模様紙の生産となり、可変情報のすき入れ紙を得ることが出来ず、また、エンボス模様を変更する場合には、必ず抄紙機を停止し、生産を中止しなければならなかった。
【0005】
さらに、紙に着色あるいは半透明模様を印刷し、その上に印刷模様とは異なる色相の不透明性塗料を塗工する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、抄紙工程上で、透かし模様をつける方法は、抄紙機に凸型もしくは凹型の型付きロールなどを設置しなければならず、デザインの違う透かしを入れようとすると、その模様のロールなどを作製しなければならない。このため、整備に相当な費用と時間を必要とし、さらに必要量が少ない場合、抄紙工程上、経済性に劣る。
【0007】
また、印刷方法で透かし入り紙を得る方法は、様々な模様の印刷原版を作製しなければならず、抄紙機ほどではないが、整備に時間がかかるという問題があった。
【0008】
これら従来の透き入れの方法に対して、打刻することによって基材の表面に凹凸形状を形成させる各種の技術が知られている(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6及び特許文献7参照)。これらの技術は、基材の表面に、文字や記号を打刻により付与するものである。
【0009】
特許文献4においては、非塗工紙上に所望の画像を印刷完了後に非塗工面を再湿潤させて凹凸複合押型で透かし模様を施しており、特許文献5においては、被加工物面へ、ドットインパクト装置と超音波発生装置とにより、凹凸模様を形成するものであり、特許文献6においては、1列又は複数列に並べた複数のピンを、この複数のピンを複数の駆動源で移動させ、打刻する文字や記号に相当する起動源を呼び出すことで電子的走査により打刻するものであり、特許文献7においては一時的に軟化させることにより基材に上から針により打刻して可変情報を付与し、打刻して軟化した基材を硬化させて透かしを形成するものである。
【0010】
これらに対して、近年、形状記憶樹脂と呼ばれるものが開発され、色々な分野の技術に応用されている。形状記憶樹脂は所定の厚みの層を形成した後に加熱し急冷すると、被加熱部分が熱膨張を起こして隆起し凸状に形成され、また、この部分を再加熱後に徐冷すると、収縮して凸状がなくなり、元の状態に戻る性質を有している。この性質を利用して、種々の技術を用いて形状記憶樹脂の表面に凹凸形状模様を形成させる手法の開発が行われている。
【0011】
この形状記憶樹脂を用いたものとして、紙等の印刷媒体に対して所望の印刷パターンを印刷する印刷方法及び印刷装置が提案されている(例えば、特許文献8参照)。これは、表面に形状記憶樹脂層を備えた中間記録媒体を用いた印刷方法であって、形状記憶樹脂層にエネルギービームを集光照射することで、表面に予め定められた印刷パターンに対応した凹凸を形成させ、凹凸が形成された中間記録媒体表面にインクを塗布するとともに、このインクが塗布された中間記憶媒体表面を印刷媒体の表面に当接させて印刷パターンを転写し、中間記録媒体表面の凹凸を消失させるために形状記憶樹脂層を選択的に加熱した後に徐冷するものである。
【0012】
【特許文献1】特開昭50−157611号公報
【特許文献2】特許公報第2938023号公報
【特許文献3】特公昭53−6243号公報
【特許文献4】特開昭57−191095号公報
【特許文献5】特開平1−320195号公報
【特許文献6】特開平4−265764号公報
【特許文献7】特開2003−276372号公報
【特許文献8】特開平7−256852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、従来のものにおいては、銀行券、有価証券、パスポートなどの製品に透き入れを施して偽造防止策とするには、銀行券の記番号や有価証券番号、または、製造番号、パスポートなどの個人識別情報は、プリンタによる墨インキ、または、墨リボンによる印字が一般的である。また、打刻による方法においても、技術的には、基材を軟化させた後に硬化させて透かしを付与したり、印刷後に基材を再湿潤させて凹凸型で透かし模様を施すといった、単純な構成の透かしの付与方法であり、基材に上から針により打刻して可変情報を付与するものであるので、単純なパターンに限定されており、滑らかさに欠けるという問題があった。また、これらの偽造防止策は、製品の付属媒体への対策であり、固有の番号や個人識別情報には対策がとられていなかった。
【0014】
そこで、本発明は、銀行券、有価証券、パスポートなどに偽造が容易にできないように、コンピュータ操作により、記番号や製造番号、個人の顔画像などの可変情報に対応させた凹凸形状模様を凹凸形状模様の付与段階で付与することを可能にするために、形状記憶樹脂を用いることで、基材に直接押し付けて付与するということでなく、形状記憶樹脂に触針棒で型付けすることで、滑らかな凹凸形状を付与することが可能となり、また、形状記憶樹脂を用いることで、付与した凹凸形状模様を加熱、冷却して消失させ元の状態に戻すので、新たな設備を必要とせず、可変情報を連続して付与することが可能な形状記憶樹脂を用いた新たな可変制御可能な凹凸形状模様の付与方法及び付与装置、並びに抄紙方法、凹凸形状模様の付与用紙及び印刷物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記問題を解決するために、本発明の凹凸形状模様の付与方法は、平板又はロール表面に形状記憶樹脂を積層した形状記憶樹脂積層板又はロールに多数個のドットマトリックス状に配列した触針棒を加圧制御することにより、可変制御可能な識別情報に対応した凹凸形状模様を付与する方法であって、
製品固有の識別情報を、3次元形状計測部で3次元情報に生成する工程と、
前記3次元情報を、データベース記録部にデジタルデータからなる画像データとして登録する工程と、
前記データベース記録部から前記デジタルデータからなる3次元情報を、データベース読込部に取り出す工程と、
前記取り出した3次元情報を、媒体製品の凹凸形状模様からなる識別情報に適した3次元情報に変換するために、画像演算処理部で画像演算処理を施す工程と、
前記画像演算処理部で変換された3次元情報をA/D変換部で電気信号に変換する工程と、
前記電気信号により、前記3次元情報に対応して、形状記憶樹脂積層板又はロールの凹凸形状模様付与部に凹凸形状模様を付与する段階で、各ドットを構成する多数個のドットマトリックス状に配列した触針棒を駆動制御部で加熱及び加圧して制御し、前記触針棒に接触する形状記憶樹脂積層板又はロールの表面に、凹凸形状模様の形態を可変制御する工程と、
前記形状記憶樹脂表面の凹凸形状模様を消失させるために、加熱冷却部で前記形状記憶樹脂表面を加熱して冷却する工程と、を備えていることを特徴としている。
【0016】
本発明の凹凸形状模様の付与方法における凹凸形状模様は、可変情報である。
【0017】
本発明の凹凸形状模様の付与方法で、凹凸形状模様を付与された形状記憶樹脂積層板又はロールを用いて、湿紙上に凹凸形状模様を付与することを特徴とする抄紙方法で、湿紙媒体上に凹凸形状模様を付与してなることを特徴とする凹凸形状模様の付与用紙である。
【0018】
凹凸形状模様の付与用紙に、印刷インキで画像情報を印刷することを特徴とする印刷物である。
【0019】
本発明の凹凸形状模様の付与装置は、平板又はロール表面に形状記憶樹脂を積層した形状記憶樹脂積層板又はロールに多数個のドットマトリックス状に配列した触針棒を加圧制御することにより、可変制御可能な識別情報に対応した凹凸形状模様を付与する装置であって、
製品固有の識別情報を、3次元情報に生成する3次元形状計測手段と、
前記3次元情報を、デジタルデータからなる画像データとして登録するデータベース記録手段と、
前記デジタルデータからなる3次元情報を、前記登録したデータベース記録手段から取り出すデータベース読込手段と、
前記取り出した3次元情報を、媒体製品の凹凸形状模様からなる識別情報に適した3次元情報に変換するために、画像演算処理を施す画像演算処理手段と、
前記画像演算処理部で変換された3次元情報をA/D変換部で電気信号に変換するA/D変換手段と、
前記電気信号により、前記3次元情報に対応して、形状記憶樹脂積層板又はロールの凹凸形状模様付与部に凹凸形状模様を付与する段階で、各ドットを構成する多数個のドットマトリックス状に配列した触針棒を加熱及び加圧して制御し前記触針棒に接触する平板又はロール表面に積層した形状記憶樹脂積層板又はロールの凹凸形状模様付与部に、凹凸形状模様の形態を可変制御する駆動制御手段と、
前記形状記憶樹脂表面の凹凸形状模様を加熱冷却部で消失させ元の表面に復元させる加熱冷却手段と、を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上の構成としたことにより、各ドットを構成する多数個のドットマトリックス状に配列した触針棒により、可変制御可能な凹凸形状模様を付与することを可能としている。また、形状記憶樹脂を用いることで、1枚ごとに異なる可変情報を付与することが可能となることから、デザインの違う凹凸形状模様を付与しようとする場合において、瞬時にデータベースから3次元情報をパーツとして引き出して、凹凸形状模様の付与装置の形状記憶樹脂積層ロールの凹凸形状模様付与部で、凹凸形状模様を形成する段階で凹凸形状模様を、触針棒を所望の凹凸形状模様の形態に加熱、加圧制御することができるので、新たな設備を必要とせず、さらに、製品の必要量が少ない場合においても、抄紙工程上、多品種少量生産が可能となるため経済性に優れている。
【0021】
また、製品の基材それぞれに、個々の識別情報が凹凸形状模様で、又は凹凸形状模様と模様印刷との両方で付与されることは、よりセキュリティを確保することを可能とし、偽造、改ざん等をさらに困難にさせることになる。また、このような可変制御可能な凹凸形状模様と該凹凸形状模様を施した用紙に同一模様、又は関連性のある模様印刷を施すことによる融合自体がセキュリティ性を有するため、周辺媒体や製品本体に偽造防止策を施す必要がなく、デザイン制約が軽減されるなどの種々の効果を奏することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は上記のように構成されているため、平板又はロール表面に形状記憶樹脂を積層した形状記憶樹脂積層板又はロールに可変制御可能な凹凸形状模様を付与する方法として、平板又はロールに積層した形状記憶樹脂表面に多数個のドットマトリックス状に配列した触針棒により凹凸を形成することで、形状記憶樹脂表面に、可変制御されたパターンに対応した凹凸を形成するものであり、形状記憶樹脂の表面形状の凹凸変化を利用し、この凹凸変化による凹凸形状模様付与部により、従来の凹凸形成の技法を代替し、模様を持った凹凸形状を付与するものである。
【0023】
可変制御可能(オンデマンド)による凹凸形状模様の付与とは、個々の可変情報に応じて、連続的に1枚1枚内容を差し替えて、一つの媒体に、製品個々の情報が、凹凸形状模様で付与されることを言う。もちろん、同じ凹凸形状模様を複数印刷することも可能であり、その場合は、形状記憶樹脂積層板又はロールの表面に形成された凹凸形状模様を可変制御することなく、普通に連続して印刷すれば良い。また、本実施例においては、銀行券、有価証券、パスポートなどの製品個々の情報において、可変情報に該当する部分をパーツと呼ぶ。これらパーツを凹凸形状模様で付与する位置はコンピュータ操作により、顧客あるいは製造担当者などが自由にレイアウトすることが可能である。
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態について述べるが、本実施の形態に限定されるものではない。
また、本実施例において、模様とは、一般的に言われている、装飾として施す絵や形、また、物の表面の図柄、記号、文字、文様等をいう。
図1は、本発明による可変制御可能な凹凸形状模様の付与装置の実施例を示す図であり、ロールを用いた一実施例である。図2は、本実施例における凹凸形状模様の付与方法のフローチャートを示す図である。
【0025】
図1に示すように、
(1)製品固有の識別情報を、3次元情報に生成する3次元形状計測部1と、
(2)前記3次元情報をデータベースに登録するデータベース記録部2と、
(3)前記データベースから識別情報として3次元情報を取り出すデータベース読込部3と、
(4)前記3次元情報を媒体製品の凹凸形状模様からなる品質に適した3次元情報に変換する画像演算処理部4と、
(5)前記画像演算処理部から取り出した3次元情報を電気信号に変換するA/D変換部5と、
(6)前記電気信号によって、凹凸形状模様の付与段階で、各ドットを構成する多数個のドットマトリックス状に配列した触針棒を加熱及び加圧して制御する駆動制御部6と、
(7)前記触針棒に接触するロール表面に積層した形状記憶樹脂積層ロールに、凹凸形状模様の形態を可変制御する凹凸形状模様付与部7と、
(8)前記形状記憶樹脂表面の凹凸形状模様を消失させる加熱冷却部8と、により構成される可変制御可能な凹凸形状模様の付与装置を用いることにより、可変制御可能な凹凸形状模様を実現するものである。
【0026】
本発明による可変制御可能な凹凸形状模様の付与を、平板表面に形状記憶樹脂を積層した形状記憶樹脂積層板を用いて行う場合の凹凸形状模様の付与装置の凹凸形状模様付与部7、駆動制御部6、加熱冷却部8の取り得る構成の一例を示すと、円盤形状の平板に形状記憶樹脂を積層して形状樹脂積層部を形成し、凹凸形状模様付与部7とし、回転可能な形状とし、この円盤の下部に駆動制御部6、加熱冷却部8を敷設した構成とすることで、可変制御可能な凹凸形状模様を付与することができる。もちろん、これに限定されるものではなく、その他の形状のものでも、凹凸形状模様の付与装置の凹凸形状模様付与部7、駆動制御部6、加熱冷却部8が連動して一連の動作を行うことで凹凸形状模様の付与ができる構成のものであれば特にこだわらない。
【0027】
本実施例の可変制御可能な凹凸形状模様の付与装置により凹凸形状模様を付与された形状記憶樹脂積層板又はロールを用いて、湿紙上に凹凸形状模様を付与する抄紙方法により湿紙媒体上に凹凸形状模様を付与された用紙を、銀行券、有価証券、切手、はがき、印紙、パスポート、貴重印刷物及び重要書類等の製品に用いることにより、偽造、改ざん等を難しくし、さらに、可変制御により凹凸形状模様を付与した可変情報と同一の情報、又は関連性のある模様情報を印刷で付与することにより、偽造、改ざん等に対してより一層の効果が生じる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は、既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び変更を加え得ることが可能である。以下、本発明を実施例により図面を参照して更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものでない。
【0029】
(実施例1) 本実施例を図1のロール表面に形状記憶樹脂を積層した形状記憶樹脂積層ロールを用いた凹凸形状模様の付与装置を用いて説明する。凹凸形状模様付与部7を構成する凹凸形状模様を付与するロールに積層した材質は形状記憶樹脂であり、成形形状と変形形状とを温度制御で使い分けることのできる形状記憶ポリマーで構成されるものであれば特に限定されるものではない。温度制御できるものとして、良く知られているものとして、ポリウレタン系形状記憶ポリマー組成物(例えば、三菱重工業株式会社製「ダイアリン・MM4510(商品名)」等)があるが、その他のものでも応用可能である。温度制御は加熱冷却部8で制御される。
【0030】
本実施例において、まず、形状記憶樹脂シートを作製する。形状記憶ポリマーとして、二液硬化タイプの形状記憶樹脂(例えば、三菱重工業株式会社製「MP5510(商品名)」等)を調整し、その特性についてテーブルテストを行った。もちろん、その他のものでも応用可能である。
【0031】
前準備として、原料A液(resin)とB液(hardner)を70℃、圧力10Torr以下で20分以上真空脱泡した後、気泡のないことを確認し、さらに、両液を真空槽内(圧力50Torr以下)にて60rpmにて30秒間混合攪拌し、目視にて均一に攪拌されたことを確認する。
【0032】
本混合液を速やかに平らなパレット等の型内に流し込み、恒温槽内にて、80℃で4時間加熱硬化させ、型から取り外し、離形とした。離形した形状記憶ポリマー成形体(例えば、「MP5510(商品名)」)のガラス転移点Tg=55℃(ポリマーが硬い状態から柔らかいゴムの状態に変わる温度)以上、溶融温度未満又は分解温度未満の温度、例えば、約80℃の熱で均等に加熱するとフラットな表面を記憶させることができた。
【0033】
一般に、形状記憶樹脂は、ガラス転移温度Tgを含む温度領域であるガラス転移領域を境にして弾性率が著しく変化する。また、ガラス転移温度Tg以下で外力を受けると変形して永久歪みを残すが、永久歪みはガラス転移温度Tg以上に加熱されると消失する。すなわち、ガラス転移温度Tg以上に加熱すると形状記憶樹脂は原形に復元する。
【0034】
本実施例においては、形状記憶樹脂シートを作製し、該シートを表面が平坦になるようにロールに巻き付け又は平板に密着させて用いるが、形成方法としてはこれに限らず浸漬法、回転塗布法等を用いてロール又は平板に形状記憶樹脂を塗布しても良い。
【0035】
図3は、本実施例に関わる湿った状態の媒体に、可変情報に従って凹凸形状模様を形成させる凹凸形状模様の付与装置の駆動制御部6において、多数個のドットマトリックス状に配列した触針棒の一部を示した電子回路概略図である。
【0036】
この駆動制御部6を構成する触針棒の特性について、さらにテーブルテストを行った。触針棒(イ)は、リニアエンコーダ(ロ)、形状記憶合金(ハ)、スプリング(ニ)、空冷ファン(ホ)、加熱・冷却素子(ヘ)から構成される。
【0037】
本実施例において、形状記憶合金(ハ)は、バイオメタル(トキ・コーポレーション株式会社の登録商標)を用いており(製品形態としての「バイオメタル・へリックス・BMF100(商品名)」等)、リニア・アクチュエータ(直線運動型駆動装置)として利用した。これは、最大限に伸張させた後に電圧(熱)を加えると収縮する特性をもっており、単独で、80gf以上の力を保持することが可能である。また、線材径が0.1mmとマイクロメートルオーダーのため、本実施例による触針棒を多数個のドットマトリックス状に配列して密集して配置することが可能となる。
【0038】
触針棒(イ)の上下位置の制御は、形状記憶合金(ハ)の電圧(熱)を加えると収縮する特性を利用し、形状記憶合金に流す電圧の時間をコンピュータで制御することで、形状記憶合金を取り付けた触針棒の上下位置を制御した。また、触針棒の上下位置の状態は、リニアエンコーダ(ロ)によってコンピュータへフィードバックさせるか、あるいは、特願2004-378003で開示されている方式により、電気抵抗変化を利用した変位センサーとして利用することにより、コンピュータにフィードバックさせることも可能である。
【0039】
駆動制御部6を構成する触針棒内部は、触針棒(イ)の上下移動の動作だけでなく、コンピュータから指示された通電時間に応じた空冷ファン(ホ)流量により触針棒内部の温度を調整する特性をもっている。
また、スプリング(ニ)によって、形状記憶合金(ハ)が伸張し、円錐型の触振棒(イ)が、ノズル上部に移動した時、本体電極が通電する機能をもっている。
本体が通電することにより、形状記憶合金(ハ)は、加熱収縮すると同時に、円錐型の触針棒(イ)は、ノズルから冷却された空気が逃げる。
以上の特性により、形状記憶合金(ハ)の加熱と空冷ファン(ホ)の流量制御により、放熱を調整し、触針棒(イ)の上下移動の微調整が可能となる。
【0040】
初期の段階では、形状記憶樹脂シート表面は、触針棒(イ)内部のスプリング加圧により、一定の圧力が均等に加わる。次に、コンピュータから指示された情報により、形状記憶合金(ハ)の加熱と空冷ファン(ホ)の流量制御により、触針棒(イ)の一部が形状記憶樹脂シート表面から離れる。さらに、これと同期して、触針棒(イ)の先端(へ)の加熱、冷却素子の制御あるいは、空冷ファン(ホ)による空冷作用により、ガラス転移点Tg=55℃以下まで冷却された形状記憶樹脂シート表面は、凹凸形状模様となって固着される。
【0041】
図4(a)は、本実施例の凹凸形状模様の付与装置を用いた、ロール表面に積層した形状記憶樹脂表面に可変情報を付与する状態の一例を示した模式図であり、一例として数字を可変制御させる場合を説明する。平面形状の記憶樹脂プレート11、駆動制御部6を構成する数字表記プレート12、触振棒領域13より構成される。触振棒領域13は、前記のように、一定時間間隔で上下移動し、数字表記プレート12に示した「0」から「9」までの数字を表記するプレートと連動して上下移動することによって記憶樹脂プレート11に凹凸形状模様を形成する。本実施例では、一例として数字が付与される。
【0042】
図4(b)は、本発明の一実施例に係る凹凸形状模様の付与装置の凹凸形状模様付与部7の概略拡大図を示すものである。図4(a)で詳述したように、駆動制御部6の触振棒領域13は、付与する可変情報に従って、数字表記プレート12と連動して上下移動し、ロール表面に積層した形状記憶樹脂表面に可変情報を付与するように加圧及び加熱して制御し、ロールに凹凸形状模様を形成する。ロールの回転によってロールに形成された凹凸形状模様部分が湿紙上にきた時に、加圧部9のロールに加圧されて湿紙上に凹凸形状模様が付与され、さらにロールの回転により、ロールに形成された凹凸形状模様部分が加熱冷却部8にきた時に、付与されていた凹凸形状模様部分は約80℃の熱で均等に加熱されて消失し元のフラットな表面となり、次の可変情報を付与するために、同様の操作を繰り返す。もし、一枚一枚に可変情報を付与しないで、同じ凹凸形状模様を付与する場合は、加熱冷却部8で形状記憶樹脂のガラス転移点(本実施例ではTg=55℃以下)の熱を加えなければ、凹凸形状模様を消失することなく、同様の工程を繰り返し行える。
【0043】
本実施例で制御するコンピュータは、電源電圧が直流5VのZ80CPUを使用したが、もちろん、その他のものでも利用可能である。
【0044】
Z80CPUは、アメリカのザイログ社によって開発されたCPUで、汎用の8ビットマイコンとしては圧倒的なシェアを誇っている。一般に80(はちまる)系と呼ばれているコンピュータ言語・(機械語)で、すべての命令は、5Vで、ON、通常これを「1」で表し、0Vで、OFF、通常これを「0」で表す。そして、これらの命令は、最低八つの「1」と「0」の組合せ、すなわち8ビット(1バイト)で構成されている。
【0045】
さらに、前記8つの0と1を上位の4ビットと下位の4ビットにわけ、例えば図5(a)に示す「0010 0101」は、「25(ニゴ)」と表す。また、例えば「1011 0001」は、前記と同じ要領で「11 1」とし、さらに、10をA、11をB、12をC、13をD、14をE、15をFとし、「11 1」を「B1」と表す。
【0046】
コンピュータ内部では、2進数で処理されるが、人間が取り扱う場合は、16進数で取り扱うのが一般的で、16進数・Hexa-decimalの頭文字をとって「25H」とか、「B1H」と表現する。
【0047】
ここで、図4(a)の数字表記プレート12に形成される「0」から「9」までの数字表記方法は、図5(b)に示したように、一般のデジタル制御機器等で広く利用されている7セグメントLEDを応用している。
【0048】
LEDの一つ一つにa〜g、Dp(ドットポイント)の記号が付けられており、a〜gの一つ一つをセグメントと呼ばれている。なお、本実施例では、DpをBp(ベースポイント)とした。
【0049】
図5(c)は、数字「2」を表示したものである。コンピュータからのデジタル信号(16進データ)は、触針棒a〜g及びBpの計8本を、A7〜A0及びBpの計8種のコンピュータ出力ポートのビットのON、OFFにより制御する場合において、例えば、本実施例の数字の「2」は、コンピュータの出力ポートの5、2及び0ビットをONにすることにより、数字表記される。これは、16進数では、「25H」に相当する。
【0050】
図6は、この原理に従い、触針棒a〜g及びBpを用いた「0」から「9」までの数字表記を、8ビット16進数で表記する方法を説明した図である。
【0051】
数字を表記するプレートと連動している触針棒a〜g及びBpの中で、下方へ移動するセグメントを1、移動しないセグメントを0とし、得られた2進数を16進数で表現すれば、それが入力データとなる。
【0052】
たとえば、図6で、数字「4」を表記する場合は、a、d、e、Bpの4本の触針棒を下方へ移動する必要があることから、これらをセグメント1とし、他の触針棒b、c、gは、セグメント0となり、この場合は、入力データは99Hとなる。
【0053】
図3の電子回路図をもとに、図7では、一定時間間隔で幾つかの触針棒が上下移動し、形状記憶樹脂層表面に、「1」→「2」→「3」→「4」と凹凸形状が可変制御するための電子回路図の一例を示した。
【0054】
M54522Pは、トランジスタアレイで、一つのパッケージに、8個のトランジスタが入っている。最大定格(コレクタ・エミッタ間電圧)=40V、コレクタ電流=400mAで、誘導負荷をOFFにした時に発生する逆電圧を吸収するダイオードが内蔵されている。
【0055】
触針棒(イ)の上下位置の制御は、電圧(熱)を加えると、収縮する特性があるので、触針棒に装着した形状記憶合金に、200mA程度の電流を流す必要があることから、M54522P内の8個のトランジスタを介して、コンピュータ(マイコン)の出力ポートに接続できるようにした。トランジスタの入力をH(1)レベルにすると、Vcc→形状記憶合金のCOM→形状記憶合金→抵抗→トランジスタの順に電流が流れ、該当する形状記憶合金が作動し、各触針棒が作動する。
【0056】
以上のハードウェア構成により、一定時間間隔で触針棒が上下移動し、形状記憶樹脂層が、「1」→「2」→「3」→「4」と凹凸形状模様を可変制御するプログラムを作成し、動作テストを試みた。
【0057】
プログラムは、Z80CPUの8ビットマイコンの他に、本装置を起動するスイッチなどの役目を果たす入力装置や触針棒などを制御するためのデータを出力する装置など外部とのデータのやりとりをするために必要なLSI(Large Scale Integrated Circuit)として、汎用入出力LSIとして、Vを使用した。
【0058】
図8は、プログラムフローチャートを、図9は、プログラムリストを示している。図8の各フローに従い、メモリに格納された「1」→「2」→「3」→「4」の数字データを一定時間間隔で、触針棒に装着した形状記憶合金に、200mA程度の電流を流し、触針棒を下部に移動させ、形状記憶樹脂表面に「1」→「2」→「3」→「4」と順次、凹凸形状模様を変化させるプログラムを説明する。
【0059】
入出力のセット
Z-80マイコンシステムの場合、データを一時的にCPU内部に記憶する場所として、A、B、C、D、E、H、Lの各レジスタが用意されており、各部へのデータの出力は、必ずAレジスタを経由して行われる。そこで、まず、出力したいデータ80HをAレジスタに転送する。
【0060】
汎用入出力LSI Cには、Aポート、Bポート、Cポート、計3つのポートと各ポートの入出力を決める16進数2桁のデータ、CW(コントロールワード)レジスタが用意されている。
【0061】
実施例では、Aレジスタ90HをCWレジスタに転送したことにより、Aポートを入力、Bポート、Cポートを出力として設定される。
【0062】
(2)SPのセット
本実施例において、例えば数字「2」の場合、Cポートの5、2及び0ビットは、ONに設定され、触針棒に装着した形状記憶合金に、200mA程度の電流が流れ、数字表記プレート12は、形状記憶樹脂表面から離れ、当初かかっていた圧が逃げる。一方、OFFに設定したビットは、触針棒(イ)の先端が形状記憶樹脂のガラス転移点以上(本実施例では約65℃)に加熱されながら、形状記憶樹脂表面に圧が加わる。
【0063】
この加圧、減圧の時間を制御するため、本実施例では、一定時間間隔のタイマーを作動させるプログラムを追加している。これを実現するために、SP(スタックポインタ)をセットしている。
【0064】
SPは、4けたのカウンタで、Z80CPUの内部に次の処理命令を呼び出すメモリのアドレスを示すPC(プログラムカウンタ)の値を一時記憶するために、メモリのアドレスをセットする。本実施例では、RAMアドレスの最終番地+1にセットする場合、RAM領域が、8000H〜87FFHであるため、87FFH+1=8800HをSPの値とした。
【0065】
(3)表示データの先頭番地指定
メモリ上のデータを順次出力する命令(OUTI)として、HLレジスタで指定した番地以降のデータをBレジスタで指定したバイト数だけ、Cレジスタで指定したポートへ出力する。
【0066】
次に、00E0H番地からの1、2、3、4の表示データを順次出力するために、あらかじめHLレジスタにデータのスタート番地である00E0Hを、Bレジスタに出力データ数の04Hを、Cレジスタにデータの出力ポートであるCポートのアドレスの02Hをセットする。
【0067】
メモリ上のデータを順次出力する命令(OUTI)は、図9に示したZ80CPUの命令、JP NZ命令と組み合わせた。
【0068】
図10は、以上説明したフローのプログラムリストを示す。
以上のフローにより、一定時間間隔で触針棒が上下移動し、形状記憶樹脂層が、「1」→「2」→「3」→「4」と凹凸形状模様を可変制御することが確認できた。
【0069】
(実施例2) 本実施例は、湿った状態の媒体に、あらかじめメモリに登録した可変情報に従って凹凸形状模様を形成する方法を説明するものである。図1の凹凸形状模様の付与装置の駆動制御部6において、実施例1で説明した触針棒を多数個のドットマトリックス状に配列することによって、あらゆる3次元情報に対して、可変制御可能な凹凸形状模様を制御することを可能とすることができる。本実施例においても、実施例1で説明したように、ロール表面に形状記憶樹脂を積層した形状記憶樹脂積層ロールを用いても、または、平板表面に形状記憶樹脂を積層した形状記憶樹脂積層板を用いても行うことができる。
【0070】
本実施例2においては、和文書体「壱」を実施例として、可変制御可能な凹凸形状パターンを作製する方法について詳述する。
【0071】
まず、製品固有の識別情報を画像又はテキストデータとしてデータベースに登録してあるデータベース記録部から、図11に示した和文書体「壱」を読み込む。
【0072】
図12は、読み込んだ和文書体「壱」の画像の一部を256階調にぼかし処理する説明図であり、3階調までぼかし処理した場合について説明する図である。この場合のぼかし段階によりZ軸上に凹凸形状を可変制御する形状記憶樹脂に流す電圧の時間が、触振棒の上下動作をコントロールすることになる。ここでは、階調数が低い(図12では段階数1)ほど、流す電圧の時間が短かく、触針棒の突起は、高く制御され形状記憶樹脂表面に圧が加わる。その結果、抄造時において、繊維層が多く蓄積され、黒すかしの状態となる。段階数が高い場合(図12では段階数3)は、触振棒が、形状記憶樹脂表面から離れ、結果的に繊維層が少なくなり、白すかしとなる。
【0073】
ここで言う、黒すかし、白すかしとは、一般に印刷事典に記載されている、「紙を透かして見たとき、紙層の厚薄によって現れる模様の部分が他より薄いものを白すき入れ、模様の部分が他より厚いものを黒すき入れという。」という状態をいう。
【0074】
図13(a)は、図11の「壱」の白黒2値画像に対し輪郭抽出処理を施し、輪郭内部をぼかし処理して256階調にしたものである。この場合、図13(b)に示したように、該領域外の画像の濃度は、8ビット16進表記でFFである。
【0075】
本実施例において、画像をぼかすとは画像に陰影を付けたり、選択範囲を滑らかにすることであり、このことは公知文献(デザイン エッセンシャル:1993/05/01)に記載されており、実際の処理方法としては、画像に対してぼかす範囲のピクセル数を指定してぼかし(ガウス)フィルタを用いて行うことであり、それらの行為は既存のソフト(例:アドビシステムズ社のフォトショップ)を実行することで可能である。
【0076】
図14は、読み込んだ和文書体「壱」の画像外部を256階調にぼかし処理する説明図であり、図14(a)に示すように、該領域外の白領域をグリッドの中心から外に向かって円形にぼかし処理を施し256階調にする。図14(b)から全領域に256階調データが付与されていることがわかる。画像濃度は、最も明るい部分は、8ビット16進表記でFF、最も暗い部分は、8ビット16進表記で00となる。
【0077】
読み込んだ文書体「壱」の画線太さを調整するには、図14(b)に示したように、256階調データを任意に変更するか、市販の画像処理ソフトウェアを用いて、図14(a)の画像に直接修正を加えれば、最適な256階調濃度が得られる。
【0078】
前記図14(a)のぼかし処理では、互いに交差する部分においては、不均一な濃度分布になってしまう。そこで、例えば図15に示すように、鋭角状にぼかし処理をすることにより、すき入れ時に発生しやすい繊維のたまりによるすき入れ品質不良を防ぐことができる。
【0079】
図16は、A/D変換前の最終凹凸形状画像を示す。図16で得られた256階調濃度(8ビット16進表記で00からFFまで)のドットマトリックスデータをA/D変換部で電気信号に変換し、さらに、前記図1の凹凸形状模様の付与装置の駆動制御部6を経由して、触針棒を上下にコントロールする。256階調濃度のドットマトリックスデータは、形状記憶樹脂に流す電圧時間に変換され、各触針棒を上下にコントロールするため、256階調濃度零(画像濃度の濃い部分)では、形状記憶樹脂層に流す電圧時間が短かいため、触針棒は形状記憶樹脂表面に圧が加わり、形状記憶樹脂層内に触針棒が深く入り込み、凹状を形成する。その結果、抄造時には、紙の凹凸形状模様の形成時において、繊維のたまりが多く、黒すき入れとなる。一方、256階調濃度FF(画像濃度の淡い部分)では、触針棒は下方に位置するため、形状記憶樹脂層内に触針棒が浅く入り込み、前者より浅めの凹状を形成する。抄造時には、紙の凹凸形状模様の形成時において、繊維のたまりが少なく、白すき入れとなる。
【0080】
図17は、図1の凹凸形状模様の付与装置を用いて、前述した実施例に基づいて、銀行券の記番号14を可変制御により凹凸形状模様を付与した説明図であり、図18は、有価証券番号又は製造番号15を可変制御により凹凸形状付与した説明図であり、銀行券、有価証券又はパスポート等の媒体に銀行券の記番号や有価証券番号又は製造番号、パスポート等の個人識別情報を前記可変制御による凹凸形状模様の付与を凹凸形状模様付与部で付与することを可能としたものである。これまで銀行券や有価証券、パスポート等に施していたすき入れの偽造防止策を、製品固有の番号や個人識別情報にまで施すことにより、さらに偽造を困難にし、有効な改ざん防止策としている。
【0081】
図19は、一つの媒体に製品個々の情報が、凹凸形状模様と印刷の両方によって付与される可変情報による凹凸形状模様印刷装置の実施例の概略図である。前記固有識別情報の付与手段が、可変情報に従って、凹凸形状模様付与部上に各ドットを各々構成する多数個のドットマトリックス状に配列した触針棒を形状記憶樹脂に流す電流時間を制御することにより、前記画像の濃淡によりZ軸上に凹凸形状模様を可変制御させた凹凸形状模様印刷媒体であり、記番号や製造番号、個人の顔画像等の可変情報を可変制御可能な凹凸形状模様付与により、凹凸形状模様付与部で凹凸形状模様の付与16を施し、さらに上記凹凸形状模様付与部と連結あるいは分離した可変制御可能な印刷機上で上記可変情報を付与17することによって、一つの媒体に製品個々の情報が、凹凸形状模様と印刷の両方によって付与される。
【0082】
図20は、パスポートの個人識別情報が可変情報凹凸形状模様印刷により付与された説明図であり、個人識別用の顔画像18、個人識別用の登録番号19がオンデマンド印刷機によって印刷され、さらに、個人識別用の登録番号20、個人識別用の顔画像21が可変制御凹凸形状模様によって付与される。
【0083】
以上詳述したように、本実施例の凹凸形状模様付与媒体は、銀行券の記番号や有価証券の有価証券番号又は製造番号等の固有番号又はパスポート等の個人識別情報を読み込む装置と、この読み込んだ固有データを可変制御可能な凹凸形状模様画像に変換する手段と、この可変制御可能な凹凸形状模様画像を凹凸形状模様付与部で凹凸形状模様を形成する装置により、可変情報凹凸形状模様が付与されるものである。
【0084】
さらに、前記可変情報の凹凸形状模様が付与された媒体は、上記凹凸形状模様付与部と連結あるいは分離した可変制御可能な印刷機で、データベースから画像や文字をパーツとして引き出し、印字される、可変情報印刷を特徴とするものである。
【0085】
なお、可変情報による凹凸形状模様の付与及び可変情報による印刷は、データベースから画像や文字をパーツとして引き出し、凹凸形状模様付与段階で凹凸形状模様を形成し、上記凹凸形状模様付与部と連結あるいは分離した印刷機上で上記製品内に可変情報を印刷するのを最も得意とするものであるから、凹凸形状模様付与による銀行券の記番号及び印刷による銀行券の記番号とを一つの媒体に入れることが可能である。また、本実施例の凹凸形状模様を付与した印刷媒体は、可変情報凹凸形状模様や可変情報による印刷機にて、凹凸形状模様の付与や印字をするほかに、可変制御システムとも連結することにより、一層の偽造防止策となる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施例1として、可変制御可能な凹凸形状模様の付与装置のブロック図を示す。
【図2】本実施例の可変制御可能な凹凸形状模様の付与方法のフローチャートを示す。
【図3】本実施例の可変制御可能な凹凸形状模様の付与装置の触針棒の一部を示した概略図を示す。
【図4】本実施例の凹凸形状模様の付与装置を用いた、形状記憶樹脂へ可変状態を付与する状態の一例を示した模式図である。
【図5】実施例として数字「2」の16進データを示した図である。
【図6】実施例として数字「0」から「9」までの表記を、8ビット16進数で表記する方法を説明する図である。
【図7】回路構成図を示す。
【図8】プログラムのフローチャートを示す。
【図9】OUTI命令を説明した図を示す。
【図10】プログラムリストを示す。
【図11】実施例2を説明する、和文書体「壱」を示す図である。
【図12】読み込んだ和文書体「壱」の画像の一部を256階調にぼかし処理する説明図である。
【図13】和文書体「壱」の画像外部を256階調にぼかし処理することを説明する図である。
【図14】和文書体「壱」の画像全領域に対して、修正を加えることが可能であることを説明した図である。
【図15】画線内部の交差領域に対して、先鋭状のぼかし処理を説明するために交点を形成する前の一画像を示した図である。
【図16】画線どうしが交点を形成した箇所の先鋭状のぼかし処理の状態を説明した図である。
【図17】銀行券の記番号を可変制御可能な凹凸形状模様を付与した説明図を示す。
【図18】有価証券番号又は製造番号を可変制御可能な凹凸形状模様を付与した説明図を示す。
【図19】本実施例の可変制御可能な凹凸形状模様印刷装置の概略図を示す。
【図20】パスポートの個人識別情報を可変制御可能な凹凸形状模様を印刷した説明図である。
【符号の説明】
【0087】
1 3次元形状計測部
2 データベース記録部
3 データベース読込部
4 画像演算処理部
5 A/D変換部
6 駆動制御部
7 凹凸形状模様付与部
8 加熱冷却部
9 加圧部
10 湿紙
11 形状記憶樹脂プレート
12 数字表記プレート
13 触針棒領域
14 有価証券番号又は製造番号を可変制御可能な凹凸形状模様により付与したもの
15 記番号や製造番号、個人の顔画像等の可変情報を可変制御可能な凹凸形状模様により、抄造段階で施したもの
16 可変制御可能な凹凸形状模様の付与部で可変情報を付与したもの
17 可変制御可能な印刷機上で可変情報を付与したもの
18 個人識別用の顔画像
19 個人識別用の登録番号
20 個人識別用の登録番号
21 個人識別用の顔画像
イ 触針棒
ロ リニアエンコーダ
ハ 形状記憶合金
ニ スプリング
ホ 空冷ファン
ヘ 加熱、冷却素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板又はロール表面に形状記憶樹脂を積層した形状記憶樹脂積層板又はロールに多数個のドットマトリックス状に配列した触針棒を加圧制御することにより、可変制御可能な識別情報に対応した凹凸形状模様を付与する方法であって、
製品固有の識別情報を、3次元形状計測部で3次元情報に生成する工程と、
前記3次元情報を、データベース記録部にデジタルデータから成る画像データとして登録する工程と、
前記データベース記録部から前記デジタルデータからなる3次元情報を、データベース読込部に取り出す工程と、
前記取り出した3次元情報を、媒体製品の凹凸形状模様から成る識別情報に適した3次元情報に変換するために、画像演算処理部で画像演算処理を施す工程と、
前記画像演算処理部で変換された3次元情報をA/D変換部で電気信号に変換する工程と、
前記電気信号により、前記3次元情報に対応して、形状記憶樹脂積層板又はロールの凹凸形状模様付与部に凹凸形状模様を付与する段階で、各ドットを構成する多数個のドットマトリックス状に配列した触針棒を駆動制御部で加熱及び加圧して制御し、前記触針棒に接触する形状記憶樹脂積層板又はロールの表面に、凹凸形状模様の形態を可変制御する工程と、
前記形状記憶樹脂表面の凹凸形状模様を消失させるために、加熱冷却部で前記形状記憶樹脂表面を加熱して冷却する工程と、を備えていることを特徴とする凹凸形状の付与方法。
【請求項2】
請求項1に記載の凹凸形状模様が、可変情報であることを特徴とする凹凸形状模様の付与方法。
【請求項3】
請求項1に記載の凹凸形状の付与方法で、湿紙媒体上に凹凸形状模様を付与してなることを特徴とする凹凸形状模様の付与用紙。
【請求項4】
請求項3に記載の凹凸形状模様の付与用紙に、印刷インキで画像情報を印刷することを特徴とする印刷物。
【請求項5】
平板又はロール表面に形状記憶樹脂を積層した形状記憶樹脂積層板又はロールに多数個のドットマトリックス状に配列した触針棒を加圧制御することにより、可変制御可能な識別情報に対応した凹凸形状模様を付与する装置であって、
製品固有の識別情報を、3次元情報に生成する3次元形状計測手段と、
前記3次元情報を、デジタルデータからなる画像データとして登録するデータベース記録手段と、
前記デジタルデータからなる3次元情報を、前記登録したデータベース記録手段から取り出すデータベース読込手段と、
前記取り出した3次元情報を、媒体製品の凹凸形状模様からなる識別情報に適した3次元情報に変換するために、画像演算処理を施す画像演算処理手段と、
前記画像演算処理部で変換された3次元情報をA/D変換部で電気信号に変換するA/D変換手段と、
前記電気信号により、前記3次元情報に対応して、形状記憶樹脂積層板又はロールの凹凸形状模様付与部に凹凸形状模様を付与する段階で、各ドットを構成する多数個のドットマトリックス状に配列した触針棒を加熱及び加圧して制御し前記触針棒に接触する平板又はロール表面に積層した形状記憶樹脂積層板又はロールの凹凸形状模様付与部に、凹凸形状模様の形態を可変制御する駆動制御手段と、
前記形状記憶樹脂表面の凹凸形状模様を加熱冷却部で消失させ元の表面に復元させる過熱冷却手段と、を備えていることを特徴とする凹凸形状模様の付与装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−54989(P2007−54989A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240598(P2005−240598)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】