説明

凹凸追従性積層部材

【課題】携帯電話やタッチパネルなどのモバイル製品における部材固定用などとして好適な、段差への貼合適性及び耐水性に優れ、狭額縁仕様の携帯情報端末に防水用両面テープなどとして用いられる凹凸追従性積層部材を提供する。
【解決手段】応力緩和性樹脂層(A)と、その両面に設けられた応力緩和性樹脂層(B)とを有する積層部材であって、上記積層部材が、100%以上の伸度を有し、100%伸度応力が2MPa以下で、かつ300%伸度応力と100%伸度応力との差が0.1MPa以上であり、防水用として用いられることを特徴とする凹凸追従性積層部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸追従性積層部材に関し、さらに詳しくは、応力緩和性樹脂層(A)の両面に、応力緩和性樹脂層(B)を設けた、伸度に優れる積層部材であって、例えば携帯電話やタッチパネルなどのモバイル製品における部材固定用などとして好適な、段差への貼合適性及び耐水性に優れ、ベゼル幅の狭い狭額縁仕様の携帯情報端末に防水用両面テープなどとして用いられる凹凸追従性積層部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やタッチパネルなどのモバイル製品は、環境を選ばずに使用される機器であり、最近では様々な場面にモバイル製品を適用する傾向にある。特に、海岸や浴室などの水場での使用が増えており、それに伴う故障も増加している。
この対策として、例えば特許文献1に、発泡体基材と粘着剤層とを有する両面粘着テープであって、前記発泡体基材の25%圧縮強度が40〜160kPa、引張強度が300〜1500N/cm2であることを特徴とする防水用両面粘着テープが開示されており、そしてこの技術においては、発泡体で凹凸追従性を発現し、発泡体を独立気泡化することで耐水性を付与している。しかしながら、発泡形状の大きさには限界があり、さらに細かな制御も困難である。一方、近年の携帯電話ではデザイン性の問題からベゼル幅の狭い狭額縁仕様のものが増えてきており、これらに用いられる両面テープは2mm幅以下の狭額縁状形態で使用することが想定されるが、前記防水用両面粘着テープは、発泡体構造の観点から額縁の幅を狭くすることが難しく、上記狭額縁仕様の携帯電話に適用しにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−108314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下になされたもので、携帯電話やタッチパネルなどのモバイル製品における部材固定用などとして好適な、段差への貼合適性及び耐水性に優れ、狭額縁仕様の携帯情報端末に防水用両面テープなどとして用いられる凹凸追従性積層部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、応力緩和性樹脂層(A)の両面に、応力緩和性樹脂層(B)を設けた、伸度に優れた積層部材により、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基いて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)応力緩和性樹脂層(A)と、その両面に設けられた応力緩和性樹脂層(B)とを有する積層部材であって、上記積層部材が、100%以上の伸度を有し、100%伸度応力が2MPa以下で、かつ300%伸度応力と100%伸度応力との差が0.1MPa以上であり、防水用として用いられることを特徴とする凹凸追従性積層部材、
(2)応力緩和性樹脂層(A)の膜厚が1〜200μmであり、応力緩和性樹脂層(B)の膜厚が2〜80μmである、上記(1)項に記載の凹凸追従性積層部材、
(3)両面に剥離シートが貼着されてなる額縁状形態を有する、上記(1)又は(2)項に記載の凹凸追従性積層部材、
(4)0.1〜2mmの幅で防水用として用いられる、上記(1)〜(3)項のいずれかに記載の凹凸追従性積層部材、及び
(5)応力緩和性樹脂層(A)及び/又は応力緩和性樹脂層(B)が黒色である、上記(1)〜(4)項のいずれかに記載の凹凸追従性積層部材、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、応力緩和性樹脂層(A)の両面に、応力緩和性樹脂層(B)を設けた、伸度に優れる積層部材であって、例えば携帯電話やタッチパネルなどのモバイル製品における部材固定用などとして好適な、段差への貼合適性及び耐水性に優れ、狭額縁仕様の携帯情報端末に防水用両面テープなどとして用いられる凹凸追従性積層部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】積層部材の耐水性評価試験に用いる測定用サンプルの平面図である。
【図2】上記図1におけるA−A線断面図である。
【図3】上記図1におけるB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の凹凸追従性積層部材(以下、単に「積層部材」と称することがある。)は、応力緩和性樹脂層(A)と、その両面に設けられた応力緩和性樹脂層(B)とを有する積層部材であって、上記積層部材が、100%以上の伸度を有し、100%伸度応力が2MPa以下で、かつ300%伸度応力と100%伸度応力との差が0.1MPa以上であり、防水用として用いられることを特徴とする。
【0009】
[凹凸追従性積層部材の性状]
本発明の積層部材においては、積層部材が、100%以上の伸度を有し、100%伸度応力が2MPa以下であり、300%伸度応力と100%伸度応力との差が0.1MPa以上である。
当該積層部材が100%以上の伸度を有し、100%伸度応力が2MPa以下であることで、優れた凹凸追従性や耐水性が得られる。また、当該積層部材の300%伸度応力と100%伸度応力の差が0.1MPa以上であることで、優れた加工適性や狭額縁状加工性が得られる。これは、例えば抜き刃を使用して当該積層部材を切断して抜き加工する場合、抜き刃を押し付けることによる応力が当該積層部材に有効に伝わり切断されるからと考えられる。一方、当該積層部材が100%以上の伸度を有さず、又は、100%以上の伸度を有しても、100%伸度応力が2MPaを超える場合、十分な凹凸追従性や耐水性が得られない。また、当該積層部材の300%伸度応力と100%伸度応力の差が0.1MPa未満である場合、十分な加工適性や狭額縁状加工性が得られない。
当該積層部材は、300%以上の伸度を有することが好ましく、100%伸度応力が1MPa以下であることが好ましい。さらに、当該積層部材は、300%伸度応力が4MPa以下であることが好ましい。これらの条件を満たすことにより、本発明の凹凸追従性積層部材は、良好な加工適性や狭額縁状加工性を有し、段差への凹凸追従性や耐水性にも優れている。
【0010】
本発明の凹凸追従性積層部材は、耐水性に優れ、防水用として用いられる。本発明においては、該耐水性は下記の方法によって評価する。
<積層部材の耐水性の評価方法>
JIS C 0920(2003)14.2.7 深さ0.15〜1mの一時的潜水状態での第2特性数字7に対する試験」に準じて、評価した。図1は、測定用サンプルの平面図、図2は、上記平面図におけるA−A線断面図、図3は、上記平面図におけるB−B線断面図である。試験に際し、縦70mm、横50mm、厚さ2mmの2枚の透明アクリル板1a及び1bを、縦60mm、横40mm、幅1mmの額縁状積層部材2にて貼り合わせた測定用サンプルを作製した。測定用サンプルの一方のアクリル板1aには高さ10μm、幅5mmの十字状の黒色印刷3を行った段差があり、もう一方には段差のない平滑なアクリル板1bを使用した(図1〜図3参照)。測定用サンプルを作製し24時間後に、測定用サンプルを水深1mに沈めて、30分間静置した後、目視にて試験片内部への水の浸入の有無を確認し、試験片内部に水の浸入がないもの及び試験片内部にくもりが発生しないものを合格とする。
【0011】
[応力緩和性樹脂層(A)]
本発明の凹凸追従性積層部材における応力緩和性樹脂層(A)(以下、単に「樹脂層(A)」と称することがある。)の製膜方法としては、当該樹脂層(A)の両面に、後述の応力緩和性樹脂層(B)を設けてなる本発明の積層部材が、前述した性状を有するものであれば、特に制限はなく、いかなる方法を用いてもよいが、例えばガラス転移温度が低い樹脂や、融点と分解温度が近い樹脂でも、エキストルージョン法(溶融押出法)などに比べて製膜が容易であって、厚みの均一性や表面性の良好な膜が得られるキャスティング法(溶液流延法)による製膜法、あるいは活性エネルギー線の照射量や、活性エネルギー線硬化型化合物の選択により、硬軟硬化樹脂の選択が可能な活性エネルギー線照射法による製膜法などを、好ましく用いることができる。
【0012】
<キャスティング法(溶液流延法)>
具体的には、使用する樹脂を、適当な有機溶剤、例えば酢酸エチル、メチルエチルケトン、又はトルエンなどに溶解し、さらに必要に応じて可塑剤などの添加剤を加えて、水アメ状のドープ(塗工液)を調製する。このドープはゴミや気泡を完全に除去したのち、支持体として、例えば工程シートを用い、その片面上に流延して、当該樹脂層を形成する。なお、工程シートとしては一般に使用されるものであれば、特に制限はなく、使用することができる。例えば、樹脂層と接する面側にシリコーン系あるいはフッ素系の剥離層が設けられたポリオレフィン系フィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムなどが好ましく挙げられる。
このキャスティング法で作製される樹脂層(A)としては、特に制限されず、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーンゴムなどを挙げることができるが、十分な透明性及び機械的強度が得られる点から、ポリエステル樹脂が好ましく、その中でもポリエステルウレタン樹脂が好ましい。なお、これらの樹脂は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
<活性エネルギー線照射法>
活性エネルギー線照射法に用いられる活性エネルギー線硬化型化合物としては、例えば活性エネルギー線硬化型オリゴマーや、該オリゴマーと活性エネルギー線硬化型モノマーとの混合物、あるいは側鎖に重合性二重結合を有する活性エネルギー線硬化型官能基が導入されてなる重合体や、この重合体と活性エネルギー線硬化型モノマーとの混合物などを用いることができる。
なお、本発明において、活性エネルギー線とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線や電子線などを指す。
【0014】
≪活性エネルギー線照射による硬化樹脂層(A)の作製≫
前述した活性エネルギー線硬化型化合物、活性エネルギー線として紫外線を使用する場合には、必要に応じて用いられる光重合開始剤、さらに必要に応じて粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、レベリング剤、溶媒などを含む塗工液を調製し、この塗工液を、前述のキャスティング法で説明した工程シートの片面上に、乾燥厚さが、所定の厚さになるように、公知の塗工方式で塗工し、得られた塗工膜に、所望の性能を有する応力緩和性樹脂層(A)が得られるような光量で紫外線照射処理を施す。
【0015】
このようなキャスティング法や活性エネルギー線照射法によって得られた応力緩和性樹脂層(A)の厚さは1〜200μmであることが好ましい。当該樹脂層(A)の厚さが1μm未満では、積層部材の加工適性や狭額縁状加工性が不十分となることがあり、一方200μmを超えると凹凸追従性が不十分となることがある。また、厚くなりすぎると樹脂層(A)中に溶剤が残留しやすく、視認性に影響を及ぼすことがある。当該樹脂層(A)のさらに好ましい厚さは、2〜150μmである。
また、応力緩和性樹脂層(A)は、発泡体でないことが好ましい。すなわち、孔径1mm以上の気孔を有しないことが好ましく、孔径0.5mm以上の気孔を有しないことがさらに好ましい。応力緩和性樹脂層(A)に孔径1mm以上の気孔を有する場合、耐水性が不十分となることがある。
本発明の積層部材においては、温度23℃で測定した貯蔵弾性率において、当該樹脂層(A)の方が、後述の応力緩和性樹脂層(B)(以下、単に樹脂層(B)と称することがある。)よりも大きいことが好ましい。これにより、本発明の積層部材を切断する際の樹脂層(B)の染み出しを防止することができるなど、加工適性が向上する。当該樹脂層(A)の温度23℃における貯蔵弾性率は、通常0.1〜20MPa程度、好ましくは1〜10MPaである。
【0016】
[応力緩和性樹脂層(B)]
本発明の積層部材においては、前述した樹脂層(A)の両面に、応力緩和性樹脂層(B)が設けられる。
当該樹脂層(B)の厚さは2〜80μmであることが好ましい。この厚さが2μm未満では、積層部材の凹凸追従性や耐水性が不十分となることがあり、一方80μmを超えると加工適性が不十分となることがある。当該樹脂層(B)のさらに好ましい厚さは、8〜60μmである。
当該樹脂層(B)の温度23℃における貯蔵弾性率は、前述の樹脂層(A)の説明において示した理由から、該樹脂層(A)の温度23℃における貯蔵弾性率よりも小さいことが好ましい。当該樹脂層(B)の温度23℃における貯蔵弾性率は、通常0.01〜5MPa程度、好ましくは0.05〜1MPaである。
当該樹脂層(B)を形成する樹脂としては、前述した性状を有する樹脂層(B)が形成されるものであればよく、特に制限されず、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーンゴム、活性エネルギー線硬化樹脂などが使用できるが、十分な凹凸追従性及び加工適性が得られる点から、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂が好適である。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。当該樹脂層(B)を形成する樹脂としては、部材固定のために粘着剤であることが好ましい。
樹脂層(A)の両面に設けられる樹脂層(B)の2つの層は、本発明の積層部材の製造性の観点から、同一であるものが好ましいが、異なるものであってもよい。
本発明の積層部材においては、前記樹脂層(B)には、必要に応じて剥離シートを貼付してもよい。この剥離シートとしては、例えばグラシン紙、コート紙、ラミネート紙などの紙及び各種プラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗布したものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0017】
次に、本発明の凹凸追従性積層部材を製造する方法について、樹脂層(A)をキャスティング法で製膜する例を挙げて説明する。
[凹凸追従性積層部材の製造]
まず、前述したキャスティング法で樹脂層(A)を形成する樹脂を、適当な溶媒に溶解して、固形分濃度が5〜60質量%程度の樹脂層(A)形成用塗工液を調製する。一方、前述した樹脂層(B)を形成する樹脂を、適当な溶媒に溶解して、固形分濃度が5〜60質量%程度の樹脂層(B)形成用塗工液を調製する。
次に、工程シート(剥離シート)の剥離処理面に、前記樹脂層(A)形成用塗工液を、公知の方法で流延させたのち、乾燥処理して、厚さ1〜200μm程度の樹脂層(A)を形成し、工程シート付き樹脂層(A)を作製する。一方、剥離シートの剥離処理面に、前記樹脂層(B)形成用塗工液を、例えばナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などにより、乾燥厚さが2〜80μm程度になるように塗工したのち、乾燥処理して樹脂層(B)を形成し、剥離シート付き樹脂層(B)を作製する。
次に、この剥離シート付き樹脂層(B)を、その樹脂層(B)面が、前記工程シート付き樹脂層(A)の樹脂層(A)面に接するように貼合し、工程シートと剥離シートで挟持された樹脂層(A)を作製する。次いでこの工程シートを剥離し、露出した樹脂層(A)面に、前記の剥離シート付き樹脂層(B)を、その樹脂層(B)面が接するように貼合することにより、両面に剥離シートが貼付されてなる本発明の積層部材を作製することができる。
【0018】
次に、本発明の凹凸追従性積層部材の用途について説明する。
[凹凸追従性積層部材の用途]
本発明の積層部材は、応力緩和性樹脂層(A)の両面に、応力緩和性樹脂層(B)を設けた、伸度に優れる積層部材であって、例えば携帯電話やタッチパネルなどのモバイル製品における部材固定用などとして好適な、段差への貼合適性及び耐水性に優れ、狭額縁仕様の携帯情報端末に防水用両面テープなどとして用いられる。
従来の防水用両面粘着テープは、耐衝撃性や段差追従性を付与するために、芯材として発泡体基材が使用されているが、該発泡体基材の気孔径が1mm程度であるので、狭額縁仕様の携帯情報端末に防水用両面テープとしては、防水性が不十分となり、適用しにくいという問題があった。これに対して、本発明の積層部材は、芯材の応力緩和性樹脂層(A)として、キャスティング法で製膜された樹脂膜や、活性エネルギー線照射により形成された樹脂膜を使用しているため気孔を有さず、耐水性に優れ、0.1〜2mmの幅で、さらに0.2〜1mmの幅で防水用として用いられる。すなわち、狭額縁仕様の携帯情報端末に防水用両面テープとして適用することができる。
本発明の積層部材の形態としては、両面に剥離シートが貼着されてなる額縁状形態とすることができる。該剥離シートとしては、前述した応力緩和性樹脂層(B)の説明において示した剥離シートを用いることができる。
また、本発明の積層部材は、応力緩和性樹脂層(A)又は応力緩和性樹脂層(B)あるいはその両方を黒色とすることができる。特に、当該積層部材が額縁状形態である場合、黒色のものが好ましい。
樹脂層(A)や樹脂層(B)の黒色化は、カーボンブラック、あるいは黒色系の顔料や染料などを混入させることにより、行うことができる。
【実施例】
【0019】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例における諸特性は、以下に示す方法に従って求めた。
<樹脂層(A)、樹脂層(B)>
(1)樹脂層(A)及び樹脂層(B)の温度23℃における貯蔵弾性率
樹脂層を積層し、2mmの厚さとし、直径8mmの円柱に裁断して、測定用サンプルを作製した。次いで、動的粘弾性測定装置[レオメトリック社製、機種名「DYNAMIC ANALYZER RDA−II」]を使用して、温度23℃における貯蔵弾性率を測定した。
【0020】
<凹凸追従性積層部材>
(2)破断伸度、100%伸度応力、300%伸度応力
凹凸追従性積層部材を積層し、200μmの厚さとし、幅:15mm、長さ:70mmに裁断して、測定用サンプルを作製した。次いで、引張り試験機[島津製作所社製、型番「AG−IS」]を使用して、測定用サンプルの両端部10mmをセットし、温度23℃にて、幅:15mm、長さ:50mmの測定箇所を引張り速度200mm/minで測定した。
破断伸度:破断するまでの伸び率
100%伸度応力:サンプルが100%伸びたときの応力
300%伸度応力:サンプルが300%伸びたときの応力
【0021】
(3)加工適性:標準環境下(23℃、50%RH)、凹凸追従性積層部材を10枚重ねてNTカッターでA4サイズに断裁する。その際、目視により端部からの糊染み出しなどがなく、端部変形がなければ○:合格とし、糊染み出し、端部変形があれば×:不合格とする。
(4)凹凸追従性:平滑なアクリル板に、長さ50mm、幅5mm、厚さ20μmの直線状の黒色印刷を行い凹凸を作製した。その凹凸全面に凹凸追従性積層部材を貼付した。その際、黒色印刷端部の縁の空気溜り(エアー)の有無を光学顕微鏡(倍率100倍)にて確認した。エアーがなく貼合できていれば○:合格、そうでなければ×:不合格とする。
(5)耐水性:明細書本文記載の<積層部材の耐水性評価方法>に従って、目視にて試験片内部への水の浸入の有無を確認し、下記の判定基準に基づき耐水性を評価した。
○(合格):試験片内部に水の浸入なし
△(不合格):試験片内部にくもり発生
×(不合格):試験片内部に水の浸入あり
(6)狭額縁状加工性:標準環境下(23℃、50%RH)、凹凸追従性積層部材を、フラットダイを用いて、縦60mm、横40mm、幅1mmの額縁状形態にダイカットし、サンプルを作製した。その際、マイクロゲージを用いて、サンプル幅を測定し、その幅が1mm±0.2mmの範囲内にあれば狭額縁状加工できたものとして○(合格)とし、上記範囲を外れた場合は狭額縁状加工できなかったものとして×(不合格)とした。
【0022】
調製例1 樹脂層(A)形成用塗工液の調製
ポリエステルウレタン樹脂[東洋紡績社製、製品名「バイロンUR3200」濃度30質量%]を、メチルエチルケトン(MEK)で希釈して、固形分25質量%の樹脂層(A)形成用塗工液1を調製した。
ポリエステルウレタン樹脂[DIC社製、製品名「バーノック16−416」濃度30質量%]を、MEKで希釈して、固形分25質量%の樹脂層(A)形成用塗工液2を調製した。
ポリエステルウレタン樹脂[東洋紡績社製、製品名「バイロンUR5537」濃度30質量%]を、MEKで希釈して、固形分25質量%の樹脂層(A)形成用塗工液3を調製した。
ポリエステルウレタン樹脂[東洋紡績社製、製品名「バイロンUR3200」濃度30質量%]に、着色剤[東洋インキ社製、製品名「マルチラックA−903ブラック」濃度70質量%]を固形分比10質量%添加し、MEKで希釈して、固形分25質量%の樹脂層(A)形成用塗工液4を調製した。
【0023】
調製例2 樹脂層(B)形成用塗工液の調製
アクリル酸n−ブチル79質量部、アクリル酸メチル20質量部、アクリル酸ヒドロキシエチル1質量部を共重合して得たアクリル酸エステル共重合体(分子量:120万、濃度30質量%)100質量部に、トルエン及びキシリレンジイソシアネート系3官能性アダクト体[綜研化学社製、製品名「TD−75」濃度75質量%]を0.1質量部添加し、混合して、固形分25質量%の樹脂層(B)形成用塗工液5を調製した。
ポリエステルウレタン樹脂[東洋紡績社製、製品名「バイロンUR8700」濃度30質量%]を、MEKで希釈して、固形分25質量%の樹脂層(B)形成用塗工液6を調製した。
【0024】
実施例1
剥離フィルム[リンテック社製、製品名「SP−PET38T103−1」厚み38μm]に、ダイコーターを用いて乾燥後の膜厚が20μmになるように樹脂層(A)形成用塗工液1を塗布し、120℃で1分間乾燥後、剥離フィルム[リンテック社製、製品名「SP−PET381031」厚み38μm]を貼合して、応力緩和性樹脂層(A)7を得た。次いで、剥離フィルム[リンテック社製、製品名「SP−PET38T103−1」厚み38μm]に、ダイコーターを用いて乾燥後の膜厚が40μmになるように樹脂層(B)形成用塗工液5を塗布し、120℃で1分間乾燥後、一方の剥離フィルムを剥離した応力緩和性樹脂層(A)7に塗布面を貼り合せ、積層体を得た。さらに、剥離フィルム[リンテック社製、製品名「SP−PET381031」厚み38μm]に、ダイコーターを用いて乾燥後の膜厚が40μmになるように樹脂層(B)形成用塗工液5を塗布し、120℃で1分間乾燥後、応力緩和性樹脂層(A)7のもう一方の剥離フィルムを剥離し、その面に塗布面を貼合して、凹凸追従性積層部材8を得た。諸特性の評価結果を第1表に示す。
【0025】
実施例2
実施例1において、樹脂層(A)形成用塗工液1の代わりに、樹脂層(A)形成用塗工液2を用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、凹凸追従性積層部材9を得た。諸特性の評価結果を第1表に示す。
【0026】
実施例3
実施例1において、樹脂層(B)の両層とも樹脂層(B)形成用塗工液5の代わりに、樹脂層(B)形成用塗工液6を用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、凹凸追従性積層部材10を得た。諸特性の評価結果を第1表に示す。
【0027】
実施例4
実施例1において、樹脂層(A)形成用塗工液1の代わりに、樹脂層(A)形成用塗工液4を用い、乾燥後の膜厚が10μmになるようにした以外は、実施例1と同様な操作を行い、黒色の凹凸追従性積層部材11を得た。諸特性の評価結果を第1表に示す。
【0028】
比較例1
実施例1において、樹脂層(A)形成用塗工液1の代わりに、樹脂層(A)形成用塗工液3を用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、積層部材12を得た。諸特性の評価結果を第1表に示す。
【0029】
比較例2
剥離フィルム[リンテック社製、製品名「SP−PET38T103−1」厚み38μm]に、ダイコーターを用いて乾燥後の膜厚が50μmになるように樹脂層(B)形成用塗工液5を塗布し、120℃で2分間乾燥後、剥離フィルム[リンテック社製、製品名「SP−PET381031」厚み38μm]を貼合して、応力緩和性樹脂層(B)を得た。次いで、得られた応力緩和性樹脂層(B)を2枚貼合して、積層部材13を得た。諸特性の評価結果を第1表に示す。
【0030】
比較例3
剥離フィルム[リンテック社製、製品名「SP−PET38T103−1」厚み38μm]に、ダイコーターを用いて乾燥後の膜厚が40μmになるように樹脂層(B)形成用塗工液5を塗布し、120℃で1分間乾燥後、PETフィルム[東レ社製、「ルミラーT60」厚み25μm]と貼り合せ、積層体を得た。さらに、剥離フィルム[リンテック社製、製品名「SP−PET381031」厚み38μm]に、ダイコーターを用いて乾燥後の膜厚が40μmになるように樹脂層(B)形成用塗工液5を塗布し、120℃で1分間乾燥後、前記積層体のPET面に貼合して、積層部材14を得た。諸特性の評価結果を第1表に示す。
【0031】
比較例4
剥離フィルム[リンテック社製、製品名「SP−PET38T103−1」厚み38μm]に、ダイコーターを用いて乾燥後の膜厚が40μmになるように樹脂層(B)形成用塗工液5を塗布し、120℃で1分間乾燥後、黒色ポリオレフィン系発泡体[積水化学社製、製品名「ボラーラXL−H#03001」厚み100μm]と貼り合せ、積層体を得た。さらに、剥離フィルム[リンテック社製、製品名「SP−PET381031」厚み38μm]に、ダイコーターを用いて乾燥後の膜厚が40μmになるように樹脂層(B)形成用塗工液5を塗布し、120℃で1分間乾燥後、積層体の黒色ポリオレフィン面と貼合して、積層部材15を得た。諸特性の評価結果を第1表に示す。
【0032】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の凹凸追従性積層部材は、応力緩和性樹脂層(A)の両面に、応力緩和性樹脂層(B)を設けた、伸度に優れる積層部材であって、例えば携帯電話やタッチパネルなどのモバイル製品における部材固定用などとして好適な、段差への貼合適性及び耐水性に優れ、ベゼル幅の狭い狭額縁仕様の携帯情報端末に防水用両面テープなどとして用いられる。
【符号の説明】
【0034】
1a 透明アクリル板
1b 透明アクリル板
2 額縁状積層部材
3 十字状の黒色印刷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
応力緩和性樹脂層(A)と、その両面に設けられた応力緩和性樹脂層(B)とを有する積層部材であって、上記積層部材が、100%以上の伸度を有し、100%伸度応力が2MPa以下で、かつ300%伸度応力と100%伸度応力との差が0.1MPa以上であり、防水用として用いられることを特徴とする凹凸追従性積層部材。
【請求項2】
応力緩和性樹脂層(A)の膜厚が1〜200μmであり、応力緩和性樹脂層(B)の膜厚が2〜80μmである、請求項1に記載の凹凸追従性積層部材。
【請求項3】
両面に剥離シートが貼着されてなる額縁状形態を有する、請求項1又は2に記載の凹凸追従性積層部材。
【請求項4】
0.1〜2mmの幅で防水用として用いられる、請求項1〜3のいずれかに記載の凹凸追従性積層部材。
【請求項5】
応力緩和性樹脂層(A)及び/又は応力緩和性樹脂層(B)が黒色である、請求項1〜4のいずれかに記載の凹凸追従性積層部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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