説明

凹版印刷機のインキ供給装置

【課題】 安定したインキ供給を実現するとともに、オペレータの負担軽減を図ることが可能な凹版印刷機のインキ供給を提供する。
【解決手段】 凹版印刷機のインキ供給装置において、インキ出しローラ近傍に配置され、インキ出しローラ上のインキ膜厚を測定するインキ膜厚測定装置と、インキ膜厚測定装置に接続され、インキ膜厚測定装置により測定した測定値を記憶する測定値記憶装置と、基準値を予め設定し記憶する基準値記憶装置と、測定値記憶装置の測定値と基準値記憶装置の基準値とを比較する比較装置を備える解析装置と、解析装置の解析した結果をもとにインキ壺キーの前後進を制御する制御装置を少なくとも備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹版印刷機において、インキ出しローラ表面上のインキ膜厚を測定するとともに、測定データに応じてインキ出しローラに対するインキ壺キーの前後進を制御することで、最適なインキ供給を実現する凹版印刷機のインキ供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、凹版印刷機におけるインキ供給装置は、図6に示すようにインキを転移させるインキ出しローラ(ダクトローラとも称する)(2)と、インキ出しローラ(2)の近傍に設けられ、インキ出しローラ(2)との間にインキ(3)を滞留させるためのインキ壺(4)を形成するインキ載置プレート(5)と、インキ出しローラ(2)とインキ載置プレート(5)の両側に設置されインキ壺(4)に存するインキ(3)の漏えいを規制する側板とから構成され、インキ出しローラ(2)に対向して配置される、例えば、呼出しローラ、練りローラ、振りローラ及び着けローラ(6)(呼出しローラ、練りローラ及び振りローラを配設しない場合もある。)へと順順にインキ(3)を転移させ、最終的に版胴(9)の表面に装着された凹版版面(7)までインキ(3)が供給され、その後、凹版版面(7)に対向する位置に配置されたワイピングローラ(11)にて凹版版面(7)に存する余剰インキを拭き取り、圧胴(10)との接触面にシートを介在させることで印刷が施される。
【0003】
そして、一般的な凹版印刷機のインキ供給装置は、インキ載置プレート(5)の下方に配置されている、インキ出しローラ(2)に指向する複数個に分割されたインキ壺キー(8)を前後進させ、インキ壺キー(8)の先端とインキ出しローラ(2)との間隔を変位させて、インキ出しローラ(2)上のインキ膜厚を制御することで、インキ供給量を調節する機構となっている。
【0004】
なかんずく、一般的な印刷機においてインキ供給量を制御する装置としては、例えば、印刷が行われた印刷用紙表面に光を当てるアレイ型光電素子により、版胴の回転速度に応じた基準パルスを発生するパルス発生器からの信号を元に印刷用紙表面に印刷された各色のインキからの反射率を升目状のブロック単位毎に計測し、オペレータが印刷物と見本との色が一致したと判断したときに計測した各色の升目状のブロック単位毎の反射率の信号である基準信号と、一定枚数おきに計測される印刷物の色を升目状のブロック単位で計測した反射率の信号である現在信号とを比較した差分により印刷機のインキキーを調整してインキ供給量を制御するようにしたオフセット印刷機における色調調整方法であって、基準信号と現在信号から一定しきい値以上の反射率の低い信号のみを選択し、該選択結果を、現在信号と基準信号別にインキキーの幅に対応させた制御単位毎に各色毎で積分した後、比較し、該比較結果の各色毎の差分信号が一定量を超えたとき、該差分信号を印刷機に初期設定された各色のインキ供給量に応じた係数と演算して各色のインキキーのインキ供給量を算出し、色調を制御するようにしたことを特徴とする印刷機における色調調整方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、凹版印刷機においてインキ供給量を安定化させる装置としては、例えば、印刷幅の両側に配置されるフレーム間に、斜めに配置されたインキ載置プレート及びこの幅方向の両側に配置される側板とにより形成されるインキを溜めるためのインキ壺と、左右両フレームにそれぞれ設けられた軸受により回転自在に支持され、インキ載置プレートの端部と近接する位置に配置されインキ壺からインキを送り出すためのダクトローラと、両端を左右両フレームに取り付けられて、インキ載置プレートの下方に配置されている壺台と、ダクトローラに沿って複数個に細かく分割されたインキ壺キーと、インキ壺キーをダクトローラに対して前後進させるための駆動部とを備えた凹版印刷機のインキ供給装置において、ダクトローラと接触する一辺の稜を方形面形状としたインキ壺キーを用いた凹版印刷機のインキ供給装置を本出願人は提案している(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特許第3764646号公報
【特許文献2】特開2010−83052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した先行技術である特許文献1の技術を用いた場合、オペレータが印刷物と見本との色が一致したと判断したときの印刷物と一定枚数毎の印刷物とをそれぞれブロックに分け、そのブロックの各色からの反射強度が一定しきい値以上のものだけを集めて積分して比較することにより、印刷中の印刷物の絵柄部分から得られる情報のみでインキキー開度などの色調制御を行うことが可能となる。そのため、従前の装置のように、ベタ部と白紙部を判断する別情報を必要とせず、またインキ濃度の濃い部分を用いることで情報量が豊富で正確な値を求めることができる。また、反射度の基準値を計算で求めることをしないから、印刷機の諸特性が変化しても安定した対応が可能であり、画線率情報が上流から得られない新聞用の輪転機などにおいても正確な色調制御を行うことができる。そのため、実際の印刷物以外のものを必要とせず、高速で安定した印刷機における色調調整方法及び装置を提供することができる。
【0008】
しかしながら、上述したような印刷物における絵柄部分の各色の反射度を基準とし、その基準反射度と実際に印刷されてゆく印刷物の反射度を比較して差を算出し、その差によってインキ壺キー開度を調節できるようにして色調を制御する従来の印刷機におけるインキ供給装置にあっては、インキ出しローラへのインキ転移量が僅か(例えば、インキ膜厚5μm程度)であるオフセット印刷において、効果的にインキ供給を調整することが可能であるが、インキ出しローラへのインキ膜厚がオフセット印刷に比較して多く(例えば、インキ膜厚50μm程度)、かつ、用いるインキの粘性が高い凹版印刷を対象とした場合、反射度に顕著な差異を検出することが困難であり、各色の反射度を基にインキ壺キーを動作させ、インキの供給量を制御することは困難である。このことから、先行技術を凹版印刷に活用することは成されておらず、汎用していない。
【0009】
また、上述した先行技術である特許文献2の技術を用いた場合、インキ供給に直接影響するインキ壺キーの先端を線接触でなく面接触とすることから、掛かる熱量(熱応力)を分散することができ、インキ壺キー先端の摩滅損耗を抑制することが可能となる。また、インキ壺キーの一部箇所への蓄熱が抑制されることで、インキにおける溶剤成分の過度な蒸発がなくなり、必要以上のインキの滓化が防止できるとともに、インキ壺キーの先端部を可撓性及び強靭性に優れる繊維強化金属にて被覆していることから摩滅損耗を抑制することができ、品質の良い印刷製品を連続的に得ることができるという充実した品質保全が実現できる。
【0010】
しかしながら、上述したような従来の凹版印刷機のインキ供給装置にあっては、インキ壺キーの磨滅損耗を抑制することが可能であり、インキ出しローラにおけるインキ膜厚をある程度安定化させることは可能であるが、ワイピングローラの熱膨張等により時時刻刻と変化するインキ出しローラにおけるインキ膜厚を必ず一定にすることは困難であり、その結果、インキ出しローラからのインキ出し量の調整が精確にできなくなり、均一かつ高精度な印刷物を連続して得ることが困難となっていた。この対策として、オペレータは頻繁にインキ出しローラにおけるインキ膜厚を測定せざるをえず、その都度、インキ壺キーを操作し、インキ膜厚の調節を行う必要があることから、この部位における作業を煩瑣としている。現在まで、種種ある問題点への対策が施されておらず、特に凹版印刷を対象とするインキ供給装置においては、少なからず開発の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような課題を解決するため、本発明の凹版印刷機のインキ供給装置は、インキ壺からインキを送り出すためのインキ出しローラの近傍に配置され、インキ出しローラ上のインキ膜厚を測定するインキ膜厚測定装置と、インキ膜厚測定装置に接続され、インキ膜厚測定装置により測定した測定値を記憶する測定値記憶装置と、基準値を予め設定し記憶する基準値記憶装置と、測定値記憶装置の測定値と基準値記憶装置の基準値とを比較する比較装置を備える解析装置と、解析装置の解析した結果をもとにインキ壺キーの前後進を制御する制御装置を少なくとも備える凹版印刷機のインキ供給装置である。
【0012】
また、本発明の凹版印刷機のインキ供給装置におけるインキ膜厚測定装置は、インキ出しローラの回転方向におけるインキ壺キーの下流に配設されている凹版印刷機のインキ供給装置である。
【0013】
また、本発明の凹版印刷機のインキ供給装置におけるインキ膜厚測定装置は、インキ中の磁気量を検出する磁気量検出器を付帯している凹版印刷機のインキ供給装置である。
【0014】
さらに、本発明の凹版印刷機のインキ供給装置におけるインキ膜厚測定装置は、インキ中の吸光度を検出する吸光度検出器を付帯している凹版印刷機のインキ供給装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の凹版印刷機のインキ供給装置は、従前技術のようにインキ出しローラとインキ壺キーとの間隙をオペレータによって、その都度感覚調節するものとは異なり、インキ出しローラ表面に存するインキ膜厚、或いはインキ膜厚内の磁気量又は吸光度を合わせて測定し、その測定値に応じてインキ出しローラに指向するインキ壺キーを前後進させ、インキ出しローラとインキ壺キーとの間隙を調節制御する技術であることから、インキの供給量が適正となり、その結果、均質な凹版印刷製品を長期間において連続的かつ安定的に得ることが可能となり、充実した製品品質が保全できるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明の凹版印刷機のインキ供給装置は、安定したインキ供給が実現できることから、インキの濃淡斑による損紙の発生が大幅に抑制できる。また、使用するインキの適正供給が実現できることから、余剰なインキの使用が抑制されるとともに、余剰インキの拭き取りを行うワイピングローラへの負荷低減が図れ、ワイピングローラの延命化が図れるなど、従前に比して大幅なコスト低減が実現できるという効果を奏する。
【0017】
さらに、本発明の凹版印刷機のインキ供給装置を用いることで、この課題におけるすべての問題点が解消できるとともに、インキの安定供給が可能となることから、従前まで必要であったオペレータの習熟性が必要でなくなるとともに、印刷開始時における刷り出し安定化までの時間を短縮することが可能となる。加えて、従前までインキ供給量の過度のばらつきによって生じていた「ミスティング」と称する不具合による機械停止を伴う洗浄作業が大幅に抑制されることや、その他、オペレータにより頻繁に行われていた各種調整作業の減少が図れるなど、作業性の大幅な改善及び印刷機械の不稼働時間が低減できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1乃至図6に基づき、この発明の実施形態を説明する。図1は本発明にかかる凹版印刷機におけるインキ供給装置を側面から見た概略図である。また、図2は本発明の特徴のひとつである、インキ出しローラ近傍に配置したインキ膜厚測定装置の周辺を一部拡大した概略図である。また、図3は凹版印刷機におけるインキ供給装置を上部より見た概略図である。また、図4は別形態の凹版印刷機におけるインキ供給装置を側面から見た概略図である。また、図5はインキ出しローラ上に存するインキの磁性成分を検出する磁気量検出器及びインキの吸光度を検出する吸光度検出器を付帯したインキ膜厚測定装置を説明するための側面から見た概略図であり、さらに、図6は一般的な凹版印刷機のインキ供給装置を側面から見た概略図である。
【0019】
まず、一般的な凹版印刷機のインキ供給装置について詳細に説明する。図6に示すように、一般的な凹版印刷機のインキ供給装置は、インキを転移させるインキ出しローラ(2)と、インキ出しローラ(2)の近傍に設けられ、インキ出しローラ(2)との間にインキ(3)を滞留させるためのインキ壺(4)を形成するインキ載置プレート(5)と、インキ出しローラ(2)とインキ載置プレート(5)の両側に設置されインキ壺(4)に存するインキ(3)の漏えいを規制する側板(20)とから構成される態様である。そして、インキ壺(4)に存するインキ(3)は、インキ出しローラ(2)からインキ出しローラ(2)に対向して配置される着けローラ(6)へと転移され、最終的に凹版版面(7)までインキ(3)が供給され、その後、印刷部においてシートへの印刷が施される。なお、インキ供給仕組みについては使用するインキ(3)の種類により、インキ出しローラ(2)と着けローラ(6)の間に呼出しローラ、練りローラ及び振りローラなどを配置させる場合もある。
【0020】
一般的なインキ供給装置におけるインキの供給は、インキ出しローラ(2)に対向して配置されたインキ載置プレート(5)により溝を作り、ここに適量のインキ(3)を入れるとともに、インキ載置プレート(5)の下部に存して複数配置されたインキ壺キー(8)を前後に移動させることで、インキ出しローラ(2)との間隙を独立して調整し、インキ出しローラ(2)を回動させることで、インキ出し量を制御してインキ(3)の転移を行う機構である。
【0021】
一方、図1乃至図3に示すように本発明の凹版印刷機のインキ供給装置は、特にインキ出しローラ(2)の表面近傍(ローラ表面から約10mmの高さ)にインキ膜厚測定装置(1)を備えている。そして、インキ出しローラ(2)の表面に転移したインキ(3)の膜厚をインキ膜厚測定装置(1)において測定し、その測定値は、インキ膜厚測定装置(1)に接続された解析装置(13)に送信される。なお、図1及び図2においてインキ膜厚測定装置(1)はインキ出しローラ(2)の軸芯に対して鉛直に配されているが、インキ出しローラ(2)の軸芯に指向していればよく、インキ壺キー(8)の下流であれば、あらゆる角度に配置してもよい。
【0022】
また、解析装置(13)は、インキ膜厚測定装置(1)にて測定した測定値を記録する測定値記憶装置(16)、基準値を予め設定し記憶する基準値記憶装置(17)及び測定値記憶装置(16)の測定値と基準値記憶装置(17)の基準値を比較する比較装置(18)とから構成されており、さらに、設定値に基づく制御指令の伝播及びオペレータが直接指示できる制御機能を有する制御装置(14)と接続されている。
【0023】
解析装置(13)の解析した結果をもとに、接続された制御装置(14)により制御内容が整理され、その内容が伝播され、インキ壺キー(8)に存する駆動部(15)を作動させることになる。具体的には、インキ膜厚測定装置(1)にて測定したインキ膜厚の測定値と基準値記憶装置(17)に入力した基準値との偏差を解析装置(13)により適正に演算し、偏差が0となるような信号を制御装置(14)に出力する。制御装置(14)からはインキ壺キー(8)の前後進を調整する指令が伝播され、駆動部(15)を作動させることでインキ壺キー(8)が前後に駆動することになり、インキ出しローラ(2)とインキ載置プレート(5)との間隙を変化させることで、当該部位におけるインキ載置プレート(5)上に存するインキ(3)の供給量を調節することになる。なお、極端にインキ膜厚が低い値となった場合、制御装置(14)は、オペレータへ警報を発信することや、印刷機械の停止信号を発信することもできる。
【0024】
また、インキ膜厚測定装置(1)は、図3に示すように複数配置させる場合もある。特に制限されない限り、インキ壺キー(8)の個数と同等数配置することになる。なお、インキ膜厚測定装置(1)を少なく設計した際には、インキ膜厚測定装置(1)を測定装置取り付け軸(24)に伝わせ、任意に移動させることで、ローラ表面上のどの位置においてもインキ膜厚の測定を可能としている。
【0025】
また、インキ膜厚測定装置(1)におけるインキ膜厚の測定については、特に限定するものではなく、非接触式の変位計を用いる方法でもよいし、接触式の膜厚ゲージを用いて、その測定値を光学カメラにて読み取る方法としてもよく、インキ出しローラ(2)表面上のインキ膜厚を検出できるものであれば、任意の構成とすることができる。その他のインキ供給装置の構成については、一般的な凹版印刷機のインキ供給装置と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0026】
また、本発明のインキ供給装置は、図4に示すようにインキ出しローラ(2)にインキを均すことを目的とした摺動ローラ(12)を回動接触させる場合もある。その場合、インキ膜厚測定装置(1)は、インキ出しローラ(2)の回転方向における摺動ローラ(12)の下流に配設することになる。
【0027】
さらに、本発明のインキ供給装置は、図5に示すようにインキ膜厚測定装置(1)にインキに存する磁性成分を検出することを目的として、磁気センサ(26)及び磁性体(25)からなる磁気量検出器(22)を付帯させた態様とする場合や、インキ膜厚測定装置(1)にインキの吸光度を検出することを目的として、例えば、赤外成分を撮像する撮像装置(27)、撮像装置(27)に入力するための赤外線受光素子(28)及び赤外線ランプ(29)からなる吸光度検出器(23)を付帯させた態様とする場合がある。なお、インキ膜厚測定装置(1)に付帯させた磁気量検出器(22)及び吸光度検出器(23)については、併用して使用してもよいし、どちらか一方のみを使用してもよい。
【実施例】
【0028】
本発明における実施の例示について、図1乃至図3に示すような凹版印刷機のインキ供給装置を用いて、印刷速度9,000枚/時間に設定し、枚葉紙連続10万枚(通計30万枚)の印刷を実施した。インキ膜厚測定装置(1)としては、非接触式の測定装置である2次元レーザ変位センサ(LJ−G030;キーエンス社製)を用い、インキ出しローラ(2)の表面から約10mmの高さに設置して測定した。また、インキ膜厚測定装置(1)は、測定装置取付け軸(24)に4個所設置しており、インキ壺キー(8)に対応する箇所を制御装置(14)により任意に移動させることで当該箇所のインキ膜厚の検出を行うことにした。さらに、印刷インキとしては、粘度5,000cp(センチポイズ)、降伏値10,000ダイン/cmである凹版インキを用いた。そして、基準値記憶装置(17)への基準値としては、設定膜厚「42μm」を入力して印刷を実施した。
【0029】
印刷機械におけるインキ供給装置を稼働させると、インキ膜厚測定装置(1)である2次元レーザ変位センサがインキ出しローラ(2)上のインキ膜厚を測定し始め、設定膜厚である42μmになるようインキ壺キー(8)に存する駆動部(15)が稼働し、インキ壺キー(8)が後進し、開度調節がなされ始めた。そして、インキ壺キー(8)の開度調整によってインキ壺(4)内のインキ(3)が徐々にインキ出しローラ(2)に供給されていたことを確認した。
【0030】
インキの供給状態の評価として、インキ出しローラ(2)の表面のインキ膜厚を別途、膜厚ゲージ(サンコウ電子(株)社製234R型)にて一定時間の間隔で測定したところ、およそ41μm〜43μmの範囲で安定しており、インキ膜厚状態の変位についても略均一であり、安定していたことを確認した。さらに、枚葉紙の通計印刷枚数30万枚の印刷まで、印刷製品を時系列的に観察しても品質状態に顕著な変化はなく、至って良好であった。
【0031】
一方で、図4に示すようなインキ出しローラ(2)上のインキを練合する摺動ローラ(12)を新たに配置した態様についても実施し、その結果を確認した。この例示においても、インキ出しローラ(2)上のインキ膜厚は、およそ41μm〜42μmの範囲で安定していた。なお、その間における印刷製品を適宜観察したところ、品質の良い印刷製品であったことを確認した。
【0032】
また、印刷経過に伴いインキ出しローラ(2)の表面に乾燥インキが付着し、インキ膜厚の検出に悪影響を与えることが想像できることから、インキに内在する機能性成分を合わせて検出し、インキ出しローラ(2)の表面に付着したインキ成分とインキ壺から転移間もないインキ成分を分離抽出させるために、図5に示すようなインキ膜厚測定装置(1)に磁気量検出器(22)及び吸光度検出器(23)を付帯させた態様についても実施し、その結果を確認した。ここで、磁気量検出器(22)としては、磁気センサ(26)(HP−10;マコメ研究所製)と磁性体(25)とから構成される検出器を用いており、また、吸光度検出器(23)としては、赤外線ランプ(29)を光源としてローラ表面へ照射し、その表面から反射する電磁波を赤外線受光素子(28)(浜松ホトニクス製;MCT型)により検出した後、撮像装置(27)にて検出成分を赤外画像に変換し、赤外成分の状態を検知する検出器を用いた。
【0033】
この実施においても、先述のインキの供給状態の評価方法と同様に確認したところ、およそ41μm〜43μmの範囲で安定しており、インキ膜厚状態の変位についても略均一であり、安定していたことを確認した。
【0034】
いずれの実施についても、先述の実施例と略同様の実施方法であることから、実施方法にかかる説明を省略する。
【0035】
上述した実施例は代表的な例示の一例に過ぎず、特許請求の範囲に記載されている範囲において、あらゆる実施の形態が存在することは言うまでもない。なお、実施例においては、吸光度検出として赤外成分の検出について例示したが、検出する吸光度成分が紫外線であれば、紫外線ランプを光源として、その受光素子をGaP型(浜松ホトニクス製)にすることや、また、蛍光成分であれば、蛍光ランプを光源として、その受光素子をSi型(浜松ホトニクス製)に選択することで、同様の検出が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明における凹版印刷機のインキ供給装置の側面概略図の一例である。
【図2】本発明における凹版印刷機のインキ供給装置の一部拡大図である。
【図3】本発明における凹版印刷機のインキ供給装置の上面概略図の一例である。
【図4】本発明における別形態の凹版印刷機のインキ供給装置の側面概略図である。
【図5】本発明における磁気量検出器及び吸光度検出器を付帯したインキ膜厚測定装置を説明する側面概略図である。
【図6】一般的な凹版印刷機のインキ供給装置を示す側面概略図である。
【符号の説明】
【0037】
1 インキ膜厚測定装置
2 インキ出しローラ
3 インキ
4 インキ壺
5 インキ載置プレート
6 着けローラ
7 凹版版面
8 インキ壺キー
9 版胴
10 圧胴
11 ワイピングローラ
12 摺動ローラ
13 解析装置
14 制御装置
15 駆動部
16 測定値記憶装置
17 基準値記憶装置
18 比較装置
19 フレーム
20 側板
21 基軸
22 磁気量検出器
23 吸光度検出器
24 測定装置取り付け軸
25 磁性体
26 磁気センサ
27 撮像装置
28 赤外線受光素子
29 赤外線ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹版印刷機のインキ供給装置において、インキ壺からインキを送り出すためのインキ出しローラの近傍に配置され、前記インキ出しローラ上のインキ膜厚を測定するインキ膜厚測定装置と、前記インキ膜厚測定装置に接続され、前記インキ膜厚測定装置により測定した測定値を記憶する測定値記憶装置と、基準値を予め設定し記憶する基準値記憶装置と、前記測定値記憶装置の測定値と前記基準値記憶装置の基準値とを比較する比較装置を備える解析装置と、前記解析装置の解析した結果をもとにインキ壺キーの前後進を制御する制御装置を少なくとも備えることを特徴とする凹版印刷機のインキ供給装置。
【請求項2】
前記インキ膜厚測定装置は、前記インキ出しローラの回転方向におけるインキ壺キーの下流に配設されていることを特徴とする請求項1記載の凹版印刷機のインキ供給装置。
【請求項3】
前記インキ膜厚測定装置は、インキ中の磁気量を検出する磁気量検出器を付帯していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の凹版印刷機のインキ供給装置。
【請求項4】
前記インキ膜厚測定装置は、インキ中の吸光度を検出する吸光度検出器を付帯していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の凹版印刷機のインキ供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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