説明

凹面反射鏡の製造方法、凹面反射鏡製造用金型、凹面反射鏡及び光源装置

【課題】 第一の反射面に続いて球面状の第二の反射面が形成された反射鏡において、反射膜を所期の通り確実に形成できると共に、異なる反射面であっても焦点位置の調整が極めて簡単に行えて、高い光の利用効率を実現することができ、しかも生産性が良好で低コストで製造できる、凹面反射鏡の製造方法を提供すること。
【解決手段】 第一、第二の反射面がこの順に光軸方向前方より配置されてなるガラス製凹面反射鏡の製造方法であって、前記凹面反射鏡の基体を、第一の反射面部と第二の反射面部との間に分割代が形成されるように熱間プレスにより一体的に成形する工程と、前記基体を分割代で切断して、基体を光軸の前後方向に分割する工程と、前記第一の反射面部及び前記第二の反射面部の各々に光反射膜を形成し、第一の反射面及び第二の反射面を構成する工程と、第一の反射面及び第二の反射面が連続するように、基体を再び組み合わせて一体化する工程とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液晶ディスプレイ装置、DMD(登録商標)(デジタルミラーデバイス)を用いたDLP(登録商標)(デジタルライトプロセッサ)等の投射型プロジェクター装置のバックライトに使用する光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野に係る投射型のプロジェクター装置においては、矩形状のスクリーンに対し、均一にしかも十分な演色性をもって画像を照明させることが要求される。このような要求に対応するため、装置に内蔵される光源としては、点灯時の水銀蒸気圧が150気圧以上となるショートアーク型の超高圧水銀ランプが使用され、光を効率よく前方に出射するために凹面状の反射鏡が組合わされて使用されている。
【0003】
近年、このようなプロジェクター装置においては、ユーザーから会議室等に常設するだけでなく手軽に持ち運んで様々な場所で使用したいという要請があり、従来にも増してプロジェクター装置が小型化してきている。そして、プロジェクター装置の小型化が進むにつれて、光源装置のうち特に反射鏡も小型化してきている。
【0004】
しかしながら単に凹面反射鏡を小型化したのでは、凹面反射鏡の有効反射面積が減少し、光源装置より出射される光束が減少する。しかも、近年、先に述べたよう光源装置の小型化に加え、プロジェクター装置のスクリーン照度は従来よりも高い水準が要求されていることから、反射鏡を小型化するのだけではこのような要求に応じることができない。
【0005】
そこで、反射鏡で集光された光束の利用効率を損なうことなく反射鏡自体をコンパクトにできる技術として例えば特許文献1、特許文献2に記載の技術が知られている。
【0006】
特許文献1(特許第3557988号公報)には、光放射口を形成する楕円面又は放物面を有する第一の反射面と、第一の反射面の後方に位置された略球面を有している第二の反射面と、第二の反射面の後方に位置された楕円面又は放物面を有する第三の反射面とからなる凹面反射鏡を備えた光源装置が開示されている(従来技術1)。
【0007】
特許文献2(特開2002−237202号公報)には、リフレクタが、光軸方向に前後に配置された2つの反射鏡により構成されており、前方に配置された反射鏡が楕円面又は放物面を有し、後方に配置された反射鏡が球面を有しているリフレクタ付ランプが開示されている(従来技術2)。
【0008】
これら従来技術1,2とも、後方位に配置された球面を有する反射鏡は光源ランプのアーク中心からの光を入射すると、もとのアーク中心に向けて反射する構成となっており、アーク中心に光を戻してからその前方に配置された楕円又は放物面よりなる反射面に入射させ、所定の集光光を得るものである。このような構成を具備することにより、光源ランプから放射された光の利用効率を上げることができ、結果、凹面反射鏡及び凹面反射鏡とランプとが組み合わされた光源装置の小型化を実現することが可能となる。
【特許文献1】特許第3557988号公報
【特許文献2】特開2002−237202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記従来技術においては製造上困難で、汎用性に乏しいという問題がある。
先ず、従来技術1について図5を参照して説明する。この技術は、第一の反射面71、第二の反射面及72及び第三の反射面73が、この順に光軸Lの前方(光投射口側)から連続するように凹面反射鏡基体70Aの内面に形成されたものである。そして、第一の反射面71及び第三の反射面73は回転楕円面(若しくは回転放物面)からなり、第二の反射面72はほぼ球面からなる。そして、第一及び第三の反射面71,73の第1焦点の位置と、第二の反射面72の略球面の中心位置とが一致し、かつ、これが反射鏡70に装着される放電ランプ60のアークのほぼ中央に一致するように構成される。
第一及び第三の反射面71,73が楕円面よりなる場合、アークの中心にある第一焦点Fから第一の反射面71に入射した光は光路(ア)を通り第二焦点Fに、第一焦点Fから第二の反射面72に入射した光は、当該第一焦点Fに戻った後、光軸Lを中心に対称位置に反射されて第一の反射面71に入射し、光路(イ)を通って第二焦点Fに向かって反射される。また、第一焦点Fから第三の反射面73に入射した光は光路(ウ)を通って第二焦点Fに向かって反射される。
【0010】
このような複数の反射面(71,72,73)を有する凹面反射鏡70は、例えば耐熱性の高いガラス等を基体70Aとして用い、成形用金型を用いて熱間プレス等の手法で所定の反射面を成形した後、可視光反射性の膜を形成して完成する。なおこの反射膜は、赤外及び紫外域の波長の光に対して透過性を備え、可視光に対して高い反射率を有する誘電体多層膜が好適に選択される。
【0011】
しかしながら反射膜の成膜法として、真空蒸着やスパッタリング法のような物理蒸着(PVD)を採用した場合、第二の反射面(72)に膜が形成されないという事態が発生することがわかった。
【0012】
この理由は、第二の反射面72がほぼ球面よりなるため、その開口側(第一の反射面71側)部分においては、曲面が反射鏡70の光軸線Lに対してほぼ平行に形成されるようになり、真空蒸着やスパッタリング法で膜を形成させる場合、蒸着源若しくはスパッタ源からの成膜物質が第一の反射面によって遮蔽されてしまうため第二の反射面に到達することが困難となり、膜が不均一になり、反射に十分な厚みの膜を形成することができないからである。
この結果、第一の反射面71及び第二の反射面72とは膜厚分布が著しく相違し、第二の反射面72において所望の反射率を得ることができない。
【0013】
他方、従来技術2においては、楕円面又は放物面を有する反射鏡と、球面を有する反射鏡とが別体よりなるため、個々に真空蒸着やスパッタリング法で膜を形成することができ、所定の反射膜を形成することができて、この点においては従来技術1より優位と考えられる。
【0014】
しかしながら従来技術2においては、個々の反射鏡を作製した後の組立工程において、各反射鏡の焦点位置をランプのアーク中心に一致させることが非常に難しく、目的とする利用効率改善効果を得ることが困難である。また、1つの光源装置に対して反射鏡を2つ形成することから生産性が乏しく、コスト高となる問題もある。
【0015】
そこで本発明が解決しようとする課題は、第一の反射面に続いて球面状の第二の反射面が形成された反射鏡において、反射膜を所期の通り確実に形成できると共に、異なる反射面であっても焦点位置の調整が極めて簡単に行えて、高い光の利用効率を実現することができ、しかも生産性が良好で低コストで製造できる、凹面反射鏡の製造方法を提供することにある。
また、凹面反射鏡の製造が容易な凹面反射鏡用金型を提供することにある。
また、第一の反射面に続いて球面状の第二の反射面が形成された凹面反射鏡において、反射膜を所期の通り確実に形成できると共に、異なる反射面であっても焦点位置の調整が極めて簡単に行えて、高い光の利用効率を実現することができる凹面反射鏡を提供すること、更には、この凹面反射鏡を用いた光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明に係る凹面反射鏡の製造方法は、光軸を中心とした回転面により構成された第一の反射面及び第二の反射面とを少なくとも有し、かつ第一、第二の反射面がこの順に光軸方向に配置されてなるガラス製凹面反射鏡の製造方法であって、
前記凹面反射鏡の基体を、第一の反射面部と第二の反射面部との間に分割代が形成されるように熱間プレスにより一体的に成形する工程と、
前記基体を分割代で切断して、基体を光軸の前後方向に分割する工程と、
前記第一の反射面部及び前記第二の反射面部の各々に光反射膜を形成し、第一の反射面及び第二の反射面を構成する工程と、
第一の反射面及び第二の反射面が連続するように、基体を再び組み合わせて一体化する工程と
を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る金型は、光軸を中心とした回転面により構成された第一の反射面及び第二の反射面とを少なくとも有し、かつ第一、第二の反射面がこの順に光軸方向前方より配置されてなるガラス製凹面反射鏡を製造するガラス整形用の金型であり、
凹面反射鏡の外表面形状がその内面に成形されたボトムモールドと、このボトムモールドの開口縁に沿って配置されるリングモールドと、その外表面に所定の反射面形状が形成されたプランジャーを具備して構成され
前記プランジャーは、第一の反射面形成部と第二の反射面形成部との間に略円柱状若しくは略円錐状部分を備えていることを特徴とする。
また、上記ガラス製凹面反射鏡用金型であって、前記ボトムモールドには、前記分割代に対応する凹面反射鏡の外周部を、部分的に略円柱状若しくは略円錐状に形成する手段を備えていることを特徴とする。
【0018】
また本発明に係る凹面反射鏡は、光軸を中心とした回転面により構成された互いに異なる曲面からなる第一と第二の反射面を有し、当該第一、第二の反射面がこの順に光軸方向に配置された全体が凹面状をなす凹面反射鏡であって、
前記凹面反射鏡の基体はガラスよりなり、当該基体には第一の反射面と第二の反射面との間に分割部を有していることを特徴とする。
また本発明に係る光源装置は、放電容器内に一対の放電電極が対向するよう設けられたショートアーク型放電ランプと、この放電ランプのアークの方向と光軸が一致する状態で当該放電ランプを取り囲むよう配設され、前方に光投射口を有する凹面反射鏡とよりなり、
凹面反射鏡は、光軸を中心とした回転面により構成された互いに異なる曲面からなる第一と第二の反射面を有し、当該第一、第二の反射面がこの順に光軸方向に配置された全体が凹面状をなす凹面反射鏡であって、
前記凹面反射鏡の基体はガラスよりなり、当該基体には第一の反射面と第二の反射面との間に分割部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
(1)本発明に係る凹面反射鏡の製造方法によれば、凹面反射鏡の基体を、第一の反射面部と第二の反射面部とに分割した後、個々の基体に対して反射膜を形成するので、反射膜を所期の反射特性を具備させて形成することができる。しかも、元々一体のガラス基体よりなるので、各基体を再び組み合わせれば、第一の反射面と第二の反射面との焦点が一致することになり、後工程で組み込まれる光源ランプに対して位置合せが容易であり、高い光の利用効率を実現することができる。
特にガラス基体の熱間プレスにおいて、第一の反射面部と第二の反射面部との間に分割代が形成されているため、分割によっても焦点位置がずれることがない。
【0020】
(2)また、本発明に係るガラス製凹面反射鏡用金型によれば、凹面反射鏡の反射面を形成するプランジャーにおいては、第一の反射面形成部と第二の反射面形成部との間に、分割代を形成するための手段を備えているため、分割によっても焦点位置がずれることがない凹面反射鏡基体を確実に提供できる。
更に、凹面反射鏡の外表面を形成するボトムモールドに、分割代に対応する凹面反射鏡の外周に、該凹面反射鏡の外表面を略円柱状に形成する手段を備えていることで、ガラス基体を切断する際に外側から分割代を検知し易くなると共に、グラインダー等の刃先を安定化できて歩留まりを向上させることができる。
【0021】
(3)反射鏡基体に分割部を有している、すなわち、基体を分割した後に一体の凹面反射鏡を構成することにより、第一の反射面と第二の反射面の両方の反射面に対して確実に反射膜を形成することができて所期の反射特性を有する反射面を形成することができ、光の利用効率を上げることができると共に、製造が容易で低コストで生産できる凹面反射鏡が得られる。
更にこの凹面反射鏡に光源ランプを組み込むことにより、プロジェクター装置用として好適な光源装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る凹面反射鏡の製造方法を実施例に基いて説明する。
図1は本発明に係る、凹面反射鏡と光源ランプとよりなる光源装置の説明図であり、反射鏡の光軸を含む面で切断した断面図である。図2は、本発明に係る凹面反射鏡の基体を形成するための金型であり、プランジャー平面図及びボトムモールドの断面図、図3は本発明に係る金型を用いてガラスをプレスする工程を示す説明図である。また、図4は本発明に係る金型から製作された凹面反射鏡基体から凹面反射鏡の最終製品を製造する工程を説明する図である。
【0023】
<光源装置>
まず、図1を参照して本発明の実施形態である凹面反射鏡の最終形態について説明する。
(1)光源ランプ
光源ランプ10は、超高圧水銀ランプなどのショートアーク型放電ランプが好適する。点灯方式としては直流、交流いずれのランプでも可能であるが、ここでは交流点灯方式の超高圧水銀ランプの例で説明する。
光源ランプ10の発光管は、略球状の発光管部11と、この発光管部11の両端に連続する円柱状の封止部12とを備えた石英ガラスなどの光透過性材料より構成されており、この発光管部11の内部空間にタングステンからなる一対の電極13,14が対向するように配置されている。電極13,14の基端部には、シールに使用される金属箔15の一端部が接合され、封止部12を構成するガラスにより気密に埋設されてシールされている。金属箔15の他端部には、外部リード16の一端部が接合されており、他端部が外方に伸びて封止部12の外部に突出している。
また、発光管部11の内部空間には、発光物質としての水銀、ハロゲンガス及び希ガスが封入されている。水銀は点灯時の内部空間の水銀蒸気圧が150気圧以上(好ましくは200気圧以上)となるよう0.15mg/mm以上(好ましくは0.20mg/mm以上)封入される。ハロゲンガスは、ハロゲンサイクルにより発光管部11の内壁に黒化が生じることを防止することを目的としており、10−6μmol/mm〜10−2μmol/mm封入される。希ガスは始動補助性を改善する目的で、例えばアルゴンガスが0.0133MPa程度封入される。
【0024】
(2)凹面反射鏡
凹面反射鏡20は、光放射口21を有する第一の反射鏡基体201と、その後端に接続された第二の反射鏡基体202とにより、基体20Aが構成される。この基体20Aは、ガラスの熱間プレス成形でほぼこの形状に一体的に成形したガラス成形体を、分割部27において光軸に垂直な面で切断した後、再度接合して構成したものである。
【0025】
上記凹面反射鏡20の内面には、第一の反射鏡基体201に相当する部分が、光軸Lを回転軸とした回転楕円面により形成されており、誘電体多層膜が形成されて第一の反射面22が構成されている。この第一の反射面22の第一焦点は光源ランプ10におけるアークの中心位置に一致し、第二焦点が光源装置100の前方に配置される光学素子(不図示)の集光部に一致する。
この第一の反射面22と光学的に連続するように第二の反射面23が形成されている。第二の反射面23は、第二の反射鏡基体202の内面に形成され、中心位置が光源ランプ10のアークの中心に一致する略球面状の反射面を形成している。なお、第二の反射面23は、発光管部11におけるレンズ効果などが勘案されるため完全な球面状とは限らないが、入射光を焦点に戻す反射面よりなるものである。
【0026】
上記第二の反射面23と連続して第三の反射面24が形成されている。この第三の反射面24は第一の反射面と第一焦点、第二焦点がそれぞれ一致する、光軸Lを回転軸とした回転楕円面よりなり、ホール部25と第二の反射鏡の間においてわずかに漏れ出る光を前方に向けて反射するものである。
この第三の反射面24もまた第二の反射鏡基体202上に形成されている。
【0027】
このように本発明か係る凹面反射鏡20においては、基体20Aを、ガラスの熱間プレス成形でほぼこの形状に一体的にガラス成形体を成形した後、分割部27において光軸に垂直な面で切断することにより、第一の反射鏡基体201の反射膜(22)と、第二の反射鏡基体202の反射膜(23,24)とを、別工程で反射膜を形成できるため、全ての反射膜を、理想的な反射率が得られるように成膜することができる。
しかも、第一の反射鏡基体201と第二の反射鏡基体202とは、同じ金型で一体に構成されていたものであり、分割部27で接合することで簡単に焦点位置を一致させることができ、生産性が良好で、高い集光率が得られる凹面反射鏡とすることができる。
従って、反射面を複数有する凹面反射鏡20であるにもかかわらず、光源ランプ10に対しての位置合せ作業が容易で生産性が良好であることに加えて、光の利用効率が格段に高い光源装置100となる。
【0028】
<製造方法>
続いて、図2〜図4を参照して上記凹面反射鏡を製造する工程について詳述する。
(1)ガラス製凹面反射鏡用金型
図2は、本発明に係る凹面反射鏡の基体を形成するための金型の説明図である。
同図において、ガラスを熱間プレスするための金型40は、上方に開口し凹面反射鏡の外表面形状がその内面に成形されたボトムモールド(胴型)43と、この上部開口縁に沿って配置されるリングモールド42、その外表面に所定の反射面形状が形成されたプランジャー(矢型)41より構成されている。
【0029】
プランジャー41の外表面には、凹面反射鏡の内面に形成される第一の反射面、第二の反射面及び第三の反射面を成形するための第一の曲面部411、第二の曲面部412及び第三の曲面部413が具備されている。そして第一の曲面部411と第二の曲面部412との間には、凹面反射鏡(20)の分割部(27)に対応して、プランジャー41の径がほぼ一定となるよう略円柱状に形成された分割代形成部41Aが軸方向に所定長さ、例えば0.1mm〜7mmの範囲で形成されている。この分割代形成部41Aにおいては、円柱形状とするのがもっとも好ましいが、円錐台形状でも可能であり、その場合は円錐角が7度以下であるのが好ましい。
【0030】
一方、ボトムモールド43には、プランジャー41の分割代形成部41Aの外周に対応する箇所に、内径が略一定に形成された胴部形成部43Aが、前記分割代形成部41Aの全長よりも長い範囲に亘って設けられている。このように内径が一定に形成されることにより、プレス成形により得られるガラス成形体には、分割代に対応した部分に外径が一定に形成される略円柱状部分が形成され、切断の際にグラインダー等の刃が入り込み容易な胴部が形成されるようになる。なおこの胴部は、円柱形状や円錐台形状でも可能であり、円錐台状に形成する場合には円錐角が7度以下であるのが好ましい。
なおこの胴部形成部43Aの長さは、プランジャー41の分割代形成部41Aよりも長いものとされ、例えば2.1mm〜9mmである。
【0031】
(2)ガラスの熱間プレス
上述した本発明に係る金型40を用い、図3(a)〜(c)に示すようにガラスをプレス成形する。
まず、図3(a)で示すようにボトムモールド43の内部に、ゴブ45と呼ばれる加熱され柔らかくなったガラスの塊を定量落下させて導入する。このボトムモールド43の上部にリングモールド42を被せてプランジャー41を挿入する
続いて、図3(b)に示すようにプランジャー41、リングモールド42及びボトムモールド43と、ゴブ45との間に空隙が無くなるまでプランジャー41を加圧挿入する。
ゴブ45が冷えて流動性がなくなると金型をはずして徐冷して完全に冷ました後、図2(c)に示すように凹面反射鏡用のガラス成形体50が完成する。
【0032】
ガラス成形体50には、反射面を形成する内面に分割代501が形成され、外面に胴部502が形成される。分割代501はこのガラス成形体50を切断する際、グラインダーの刃などが入る厚みを考慮したものであり、分割代501を形成していない場合には最終的に得られる凹面反射鏡の第一の反射面と第二の反射面との間が著しく不連続になるため反射効率を低下させる可能性が生じる。
また胴部502は、切断する際にグラインダーの刃などを光軸に対して垂直方向に正しく入れるために設けられる。なお分割代501の幅よりも大きく形成されることで、ガラス成形体の外側からであっても内側に形成された分割代501が視認し易くなり、正規の位置において切断することができる。
なおこれらの金型は、ガラスのひけによる収縮の程度を予め見込んで成形され、固まった後に所定の反射面が形成されることは言うまでもない。また、分割代501の形成を見込んで、各反射面の焦点位置が設計されることも当然である。
【0033】
(3)分割、反射膜の形成及び組立工程
本発明に係る凹面反射鏡の製造工程について図4を参照しながら説明する。
図4(a)は上記ガラスの熱間プレス工程により得たガラス成形体50である。前述したように内面に分割代501が、外面に胴部502が形成されている。このガラス成形体50を分割代501において紙面において上下方向に切断する。
この後、必須工程ではないが、分割代501の断面を研磨してきれいにしてもよい。また、研磨により内側の分割代501の残痕を除去若しくは小さくすることもできる。なお、基体の外表面においては、胴部502の幅を内面の分割代501の幅よりも大きく形成しているため、胴部502の痕跡が確実に形成される。
図4(b)は切断後のガラス成形体であり、これにより第一の反射鏡基体201と第二の反射鏡基体202とが構成される。なお、符号27a,27bは分割部である。
【0034】
続いて、図4(c)に示すように第一、第二の反射鏡基体201,202の各々に反射膜R1,R2をそれぞれ形成する。この反射膜は赤外領域の光に対して透過性を有し、可視光に対して反射性を有する誘電体多層膜であり、例えば、TiO蒸着膜とSiO蒸着膜を交互に形成した全体の膜厚が0.05μnm〜0.5μmの多層膜である。
このように、第一、第二の反射鏡基体201,202が分割されているので、例えば真空蒸着やスパッタリングによった成膜法を用いた場合でも、蒸着源或いはスパッタ源が反射面に対して確実に付着することになり、所期の反射機能を備えた反射面を形成することができる。
【0035】
しかる後、図4(d)に示すように分割部27a,27bを合せて凹面反射鏡20が完成する。
なお第一、第二の反射鏡基体201,202の結合方法としては、第一の反射鏡基体の光投射口及び第二の反射鏡基体のホール部の各縁部にそれぞれの形状に適合した取付枠を被せ、第一の反射鏡基体と第二の反射鏡基体を分割部が当接するよう配置した状態で、取付枠に引張りバネを具備した固定用アームを接続することにより第一の反射鏡基体と第二の反射鏡基体を互いの方向に弾力的に付勢して固定する方法などを採用することができる。
【0036】
上述の凹面反射鏡の製造方法で作製される凹面反射鏡の仕様の一例を次に示す。
(1)第一の反射鏡基体(201)
第一の反射面(22)は長軸が34.05mm、短軸が19.29mmの楕円面を有し、光放射口(21)の開口径が37.2mmである。また、光軸方向の全長は18.4mmである。
(2)第二の反射鏡基体(202)
第二の反射面(23)は半径11.4mmの球面を有する。光軸方向の全長は4.16mmである。
第三の反射面(24)は長軸が35.05mm、短軸が22.29mmの楕円面を有し、ホール部(25)の開口径が10mmである。光軸方向の全長は3.36mmである。
【0037】
以上説明した本発明に係る凹面反射鏡の製造方法によれば、分離されるため第一の反射面を有する第一の反射鏡基体と第二の反射面を有する第二の反射鏡基体に最適の条件で真空蒸着、スパッタリング法等の物理蒸着により誘電多層膜を成膜することができ、最適の反射特性が得られる凹面反射鏡を提供することができる。しかも、第一の反射鏡基体と第二の反射鏡基体とは、熱間プレスにより一体成形したものであり、第一の反射鏡基体の第一の反射面と第二の反射鏡基体の第二の反射面境界部に分割代を設けたうえで切断しているため、再び結合した際、第一の反射鏡基体の第一の反射面と第二の反射鏡基体の第二の反射面境界を簡単に一致させることができ、これと同時に第一の反射面の焦点位置と第二の焦点位置をも一致させることができる。
また、本発明に係る凹面反射鏡の金型によれば、第一の反射面を有する第一の反射鏡基体と第二の反射面を有する第二の反射鏡基体とを分割する際の作業工程が簡便かつ確実に行える、ガラス成形体を得ることができる。
この結果、反射面における反射効率が高く、かつ製造が容易な凹面反射鏡を得ることができ、更に、この凹面反射鏡とショートアーク型放電ランプよりなる光源ランプとを組合せることにより、プロジェクター装置用に最適な光源装置を提供することをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る、凹面反射鏡と光源ランプとよりなる光源装置の説明図であり、反射鏡の光軸を含む面で切断した断面図である。
【図2】本発明に係る凹面反射鏡の基体を形成するための金型であり、プランジャー平面図及びボトムモールドの断面図である。
【図3】本発明に係る金型を用いてガラスをプレスする工程を示す説明図である。
【図4】本発明に係る金型から製作された凹面反射鏡基体から凹面反射鏡の最終製品を製造する工程を説明する図である。
【図5】従来の光源装置の概略構成を示す長手方向の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 光源装置
1 放電ランプ
11 発光管部
12 封止部
13,14 電極
15 金属箔
16 外部リード
20 凹面反射鏡
20A 基体
201 第一の反射鏡基体
202 第二の反射鏡基体
21 光放射口
22 第一の反射面
23 第二の反射面
24 第三の反射
25 ホール部
26 接着剤
27 分割部
40 製造金型及び凹面反射鏡
41 プランジャー(矢型)
42 リングモールド
43 ボトムモールド(胴型)
45 ゴブ(軟化したガラス塊)
50 ガラス成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸を中心とした回転面により構成された第一の反射面及び第二の反射面とを少なくとも有し、かつ第一、第二の反射面がこの順に光軸方向に配置されてなるガラス製凹面反射鏡の製造方法であって、
前記凹面反射鏡の基体を、第一の反射面部と第二の反射面部との間に分割代が形成されるように熱間プレスにより一体的に成形する工程と、
前記基体を分割代で切断して、基体を光軸の前後方向に分割する工程と、
前記第一の反射面部及び前記第二の反射面部の各々に光反射膜を形成し、第一の反射面及び第二の反射面を構成する工程と、
第一の反射面及び第二の反射面が連続するように、基体を再び組み合わせて一体化する工程と
を有することを特徴とする凹面反射鏡の製造方法。
【請求項2】
光軸を中心とした回転面により構成された第一の反射面及び第二の反射面とを少なくとも有し、かつ第一、第二の反射面がこの順に光軸方向に配置されてなるガラス製凹面反射鏡を製造するガラス整形用の金型であり、
凹面反射鏡の外表面形状がその内面に成形されたボトムモールドと、このボトムモールドの開口縁に沿って配置されるリングモールドと、その外表面に所定の反射面形状が形成されたプランジャーを具備して構成され
前記プランジャーは、第一の反射面形成部と第二の反射面形成部との間に略円柱状若しくは略円錐台状部分を備えていることを特徴とするガラス製凹面反射鏡用金型。
【請求項3】
請求項2記載のガラス製凹面反射鏡用金型であって、
前記ボトムモールドには、前記分割代に対応する凹面反射鏡の外周部を、部分的に略円柱状若しくは略円錐台状に形成する手段を備えていることを特徴とする請求項2記載のガラス製凹面反射鏡用金型。
【請求項4】
光軸を中心とした回転面により構成された互いに異なる曲面からなる第一と第二の反射面を有し、当該第一、第二の反射面がこの順に光軸方向に配置された全体が凹面状をなす凹面反射鏡であって、
前記凹面反射鏡の基体はガラスよりなり、当該基体には第一の反射面と第二の反射面との間に分割部を有していることを特徴とする凹面反射鏡。
【請求項5】
放電容器内に一対の放電電極が対向するよう設けられたショートアーク型放電ランプと、この放電ランプのアークの方向と光軸が一致する状態で当該放電ランプを取り囲むよう配設され、前方に光投射口を有する凹面反射鏡とよりなり、
凹面反射鏡は、光軸を中心とした回転面により構成された互いに異なる曲面からなる第一と第二の反射面を有し、当該第一、第二の反射面がこの順に光軸方向に配置された全体が凹面状をなす凹面反射鏡であって、
前記凹面反射鏡の基体はガラスよりなり、当該基体には第一の反射面と第二の反射面との間に分割部を有していることを特徴とする光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−41365(P2008−41365A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212381(P2006−212381)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】