刃具の再利用方法
【課題】在庫量を管理して刃具を効率的に再利用できる刃具の再利用方法を提供する。
【解決手段】各エッジ11a・12a・21a・22aの形状および各上下刃11・12・21・22の使用枚数に基づいて、各上下刃11・12・21・22を再利用する順序を設定するステップと、各使用外径範囲R11・R12・R21・R22を互いに部分的に重複させて共有範囲R1・R2を設定するステップと、各上下刃11・12・21・22の使用枚数を調整するステップと、を行い、共有範囲R1・R2の中で負極用の下刃22および正極用の上下刃11・12を何回再研磨したときに再利用するかを調整することで、負極用の下刃22および正極用の上下刃11・12の使用枚数を、上下刃11・12および負極用の上刃21の使用枚数と同じ使用枚数に設定する。
【解決手段】各エッジ11a・12a・21a・22aの形状および各上下刃11・12・21・22の使用枚数に基づいて、各上下刃11・12・21・22を再利用する順序を設定するステップと、各使用外径範囲R11・R12・R21・R22を互いに部分的に重複させて共有範囲R1・R2を設定するステップと、各上下刃11・12・21・22の使用枚数を調整するステップと、を行い、共有範囲R1・R2の中で負極用の下刃22および正極用の上下刃11・12を何回再研磨したときに再利用するかを調整することで、負極用の下刃22および正極用の上下刃11・12の使用枚数を、上下刃11・12および負極用の上刃21の使用枚数と同じ使用枚数に設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを切断する切断装置に用いられる刃具を再研磨して、前記刃具とは異なる使用条件の刃具として、各刃具を段階的に再利用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、刃具を用いてワークを切断する切断装置としては、例えば、上刃および下刃によりワークに対してスリット加工を行う切断装置等がある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される切断装置は、先端角が大きな第一刃、および第一刃よりも先端角と厚みとが小さな第二刃を用いてワークを切断する。第一刃および第二刃は、その厚み方向において互いに所定間隔だけ離間するとともに、互いに接近する側の端部が所定寸法だけ重なる。
【0004】
このような特許文献1の刃具(第一刃および第二刃)は、ある程度使用されてエッジが摩耗したときに再研磨される。
刃具は、切断装置毎に使用外径範囲(再研磨可能な回数)が予め設定されており、その外径寸法が前記使用外径範囲の下限となるまで再研磨された状態で、エッジが磨耗したときに、切断装置が保有している在庫より新しい刃具と交換される。このとき、エッジが磨耗した刃具は破棄される。
【0005】
このような各刃具の使用量を減らすために、新しい刃具と交換された刃具を、使用外径範囲のより小さい別の刃具に再利用することが考えられる。
【0006】
しかし、再利用前後の各刃具は、使用条件(例えば、切断するワークの種類やエッジの形状等)の違いにより、その摩耗速度が互いに異なる。例えば、再利用前の刃具の磨耗速度の方が再利用後の刃具の磨耗速度よりも速い場合、再利用後の刃具を用いる切断装置は、再利用前の刃具を再利用しきれず、刃具の余剰在庫を抱えてしまう可能性がある。
具体的には、再利用前の刃具を十枚使用するときに、再利用後の刃具を四枚使用する場合、再利用後の刃具が六枚余ってしまう。
【0007】
また、刃欠け等の発生により再利用前の刃具の磨耗が進んだ場合、再利用後の刃具を用いる切断装置は、刃具の余剰在庫を抱えてしまう可能性がある。
【0008】
このように、切断装置に用いられる刃具を再利用した場合、在庫量の管理ができず、その結果、再利用後の刃具を用いる切断装置が刃具の余剰在庫を抱えてしまう可能性があった。つまり、刃具を効率的に再利用できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−238490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、在庫量を管理して刃具を効率的に再利用できる刃具の再利用方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1においては、ワークを切断する切断装置に用いられる刃具を再研磨して、前記再研磨前の刃具の使用条件とは異なる使用条件の刃具として、前記各刃具を段階的に再利用する刃具の再利用方法であって、前記各刃具のエッジの形状および前記各刃具の使用枚数に基づいて、前記各刃具を再利用する順序を設定するステップと、再利用前後の前記各刃具の、前記ワークを切断可能な範囲である使用範囲を設定するとともに、前記再利用前後の各刃具の使用範囲を互いに部分的に重複させて共有範囲を設定するステップと、前記再利用前後の各刃具の使用枚数を調整するステップと、を行い、前記共有範囲は、前記各刃具において複数回再研磨可能な幅に設定され、前記再利用前後の各刃具の使用枚数を調整するステップでは、前記共有範囲の中で前記再利用前の刃具を何回再研磨したときに再利用するかを調整することで、再利用前の前記刃具の使用枚数を、再利用後の前記刃具の使用枚数と同じ使用枚数に設定する、あるいは前記再利用後の前記刃具の使用枚数よりも少ない使用枚数に設定する、ものである。
【0012】
請求項2においては、再利用前の少なくとも一つの段階を、前記エッジの形状および前記使用範囲が互いに同一となるとともに、互いに異なる使用条件となる二つ以上の前記刃具によって構成し、前記再利用前の一つの段階にて、前記エッジの形状および前記使用範囲が互いに同一となる前記各刃具の在庫を、前記各刃具の在庫量に基づいて、前記各刃具に振り分けて使用する、ものである。
【0013】
請求項3においては、前記各刃具を再研磨するとき、前記各刃具に対して予め施されるコーティングを引き継いで使用する、ものである。
【0014】
請求項4においては、前記切断装置は、一つの電池の正極用および負極用の金属箔を、上刃および下刃を用いて切断する正極用の切断装置および負極用の切断装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、段階毎の刃具の使用枚数の変動に対して再利用前後の刃具の使用枚数を合わせることができるため、在庫量を管理して刃具を効率的に再利用できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】正極用の切断装置を示す説明図。(a)全体的な構成を示す図。(b)上下刃のエッジを示す図。
【図2】負極用の切断装置を示す説明図。(a)全体的な構成を示す図。(b)上刃のエッジを示す図。(c)下刃のエッジを示す図。
【図3】各上下刃のエッジと使用枚数との関係を示す説明図。
【図4】各上下刃の外径寸法の関係を示す説明図。
【図5】各上下刃の共有範囲を示す説明図。
【図6】各上下刃の使用枚数の関係を示す説明図。
【図7】一枚目の負極用の下刃を再利用する状態を示す説明図。
【図8】二枚目の負極用の下刃を再利用する状態を示す説明図。
【図9】三枚目の負極用の下刃を再利用する状態を示す説明図。
【図10】四枚目の負極用の下刃を再利用する状態を示す説明図。
【図11】四枚目の負極用の下刃を再利用した後の状態を示す説明図。
【図12】正極用の上下刃の使用枚数が異なっている状態を示す説明図。
【図13】正極用の上下刃の中で段階的に使用する状態を示す説明図。
【図14】二段階で刃具を再利用する状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本実施形態の刃具の再利用方法について説明する。
【0018】
まず、刃具について説明する。刃具は、ワークを切断する切断装置に用いられるものである。
本実施形態の切断装置は、図1(a)および図2(a)に示すように、一つの電池の正極用の金属箔W1および負極用の金属箔W2を切断するスリット工程を行う正極用の切断装置10および負極用の切断装置20であるものとする。
この場合、刃具は、各切断装置10・20の上刃11・21および下刃12・22となる。
【0019】
各上下刃11・12・21・22は、各金属箔W1・W2を挟んだ状態で対向して配置される。各上下刃11・12・21・22は、その厚み方向において互いに所定間隔だけ離間するとともに、互いに接近する側の端部が所定寸法だけ重なる。
【0020】
各切断装置10・20は、それぞれ各金属箔W1・W2の搬送方向が並行するように配置されている。各切断装置10・20は、それぞれ各金属箔W1・W2を各巻き出しロール13・23により各上下刃11・12・21・22が互いに重なる部分に向けて搬送して、各上下刃11・12・21・22にて切断する。そして、各切断装置10・20は、切断した各金属箔W1・W2を各巻き取りロール14・24によって巻き取る。
【0021】
正極用の切断装置10は、搬送方向に対して平行に正極用の金属箔W1を搬送して切断するような直線切りを行う。
負極用の切断装置20は、搬送方向に対してやや傾斜するように負極用の金属箔W2を搬送して切断する。つまり、負極用の切断装置20は、ガイドロールによって負極用の下刃22に負極用の金属箔W2を抱かせた状態で、負極用の金属箔W2を切断するような、屈曲切りを行う。
【0022】
正極用の切断装置10の上刃11(以下、「正極用の上刃11」と表記する)は、略円板状に形成され、所定の外径寸法が設定される。
図1(b)に示すように、正極用の上刃11は、搬送方向から見たときに、そのエッジ11a(先端)の形状が矩形状となるような矩形刃(先端が正極用の上刃11の径方向に対して直交する刃)である。
【0023】
正極用の切断装置10の下刃12(以下、「正極用の下刃12」と表記する)は、正極用の上刃11と同一形状である。すなわち、正極用の下刃12は、その外径寸法、厚み寸法、およびエッジ12aの形状等が正極用の上刃11と同一となるような矩形刃である。
【0024】
図2(b)に示すように、負極用の切断装置20の上刃21(以下、「負極用の上刃21」と表記する)は、搬送方向から見たときに、そのエッジ21aの形状が鋭角状となるような鋭角刃(先端が尖っている刃)である。負極用の上刃21の厚み寸法は、正極用の上下刃11・12の厚み寸法と略同一の大きさが設定される。
【0025】
図2(c)に示すように、負極用の切断装置20の下刃22(以下、「負極用の下刃22」と表記する)は、正極用の上下刃11・12と同様に、エッジ22aの形状が矩形状となるような矩形刃である。負極用の下刃22の厚み寸法は、正極用の上下刃11・12の厚み寸法と略同一の大きさが設定される。
負極用の下刃22は、その外径寸法と略同一の外径寸法が設定されるガイドロールがその側面に配置され、ガイドロールとともに回動する。
【0026】
このような各切断装置10・20は、それぞれ上下刃11・12・21・22毎に在庫を保有している(図7参照)。
【0027】
図1(a)、図2(b)、および図2(c)に示すように、各上下刃11・12・21・22は、それぞれエッジ11a・12a・21a・22aが摩耗したときに再研磨が行われ、再研磨後は再研磨前よりも所定寸法だけその外径が小さくなる(図1(a)、図2(b)、および図2(c)に示す取代11r・12r・21r・22r参照)。
【0028】
各上下刃11・12・21・22は、それぞれ再研磨が繰り返し行われるが、その外径寸法が所定の外径寸法まで再研磨された状態で、エッジ11a・12a・21a・22aが磨耗すると、新しい各上下刃11・12・21・22と交換される。
つまり、各上下刃11・12・21・22には、切断装置10・20毎に使用外径範囲R11・R12・R21・R22(再研磨可能な回数)が設定されている。本実施形態のように略円板状の各上下刃11・12・21・22においては、使用外径範囲R11・R12・R21・R22が、各金属箔W1・W2を切断可能な範囲である使用範囲に対応する。
なお、鋭角刃の使用外径範囲、つまり、負極用の上刃21の使用外径範囲R21は、エッジ21aの先端部分(図2(b)においては紙面右側の端部)までの外径寸法を規定するものである。
【0029】
スリット工程において、仮に使用外径範囲R11・R12・R21・R22を超えて使用された各上下刃11・12・21・22を新しい各上下刃11・12・21・22と交換し、交換後の使用外径範囲R11・R12・R21・R22を超えた各上下刃11・12・21・22を破棄する場合、各上下刃11・12・21・22を新たに使用する分だけ、刃具が必要となってしまう。
【0030】
本発明における刃具の再利用方法は、ある使用条件でワークを切断する刃具(例えば、負極用の下刃22)を再研磨して、再研磨前の刃具の使用条件とは異なる使用条件の刃具(例えば、正極用の上刃11)として、段階的に再利用することで、刃具の使用量を低減させるものである。
【0031】
ここで、「異なる使用条件の刃具」とは、例えば、切断するワークの種類が異なる刃具、および切断するワークが同じでも、機能的に異なる刃具(例えば、正極用の上刃11および下刃12)のように、全く同じ用途に用いない刃具のことを指す。
【0032】
刃具を段階的に再利用する場合、使用外径範囲が大きな刃具を再研磨して、使用外径範囲が小さな刃具として再利用することとなる。
前述のように、正極用の上下刃11・12は、それぞれその外径寸法が同一である。この場合、正極用の上下刃11・12は、ある一段階の刃具となる。
【0033】
本実施形態の刃具の再利用方法では、各上下刃11・12・21・22のエッジ11a・12a・21a・22aの形状および使用枚数等に基づいて、各上下刃11・12・21・22を再利用する順序を設定するステップを行う。
つまり、刃具を段階毎に分け(例えば、正極用の上下刃11・12と負極用の上下刃21・22とに分け)、どのような順序で段階毎に分けた刃具を再利用するかを設定する。
【0034】
本実施形態において、「使用枚数」とは、各金属箔W1・W2の切断中に刃欠けが発生すること等による摩耗速度の変動がない場合の、加工量あたりの使用枚数のことをいう。
【0035】
エッジの形状が同じ刃具を再利用する場合、例えば、負極用の下刃22を再研磨して正極用の上刃11として再利用する場合、正極用の上刃11の使用外径範囲R11内まで負極用の下刃22を再研磨する。
【0036】
矩形刃を鋭角刃として再利用する場合、例えば、正極用の上刃11を負極用の上刃21として再利用する場合、負極用の上刃21の使用外径範囲R21内まで正極用の上刃11を再研磨したときに、正極用の上刃11に対して鋭角加工を行う。つまり、エッジ11a・12aの厚み方向一端側を削って鋭角状のエッジを形成する。
【0037】
一方、鋭角刃を矩形刃として再利用する場合、例えば、負極用の上刃21を正極用の上刃11として再利用する場合、エッジ21aを全て削って平らにする必要がある。つまり、鋭角刃を矩形刃として再利用する場合には、再研磨による外径の変動度合いが大きくなり過ぎて、精度を保証できなくなってしまう。
【0038】
このため、本実施形態の刃具の再利用方法では、鋭角刃(負極用の上刃21)を再利用の最終段階(つまり、最後に使用する刃具)に設定する。
【0039】
再利用前の刃具の使用枚数が再利用後の使用枚数よりも多い場合、切断装置10・20が余剰在庫を抱えてしまう。このため、刃具の再利用方法では、再利用前の刃具の使用枚数が、再利用後の刃具の使用枚数と同じ使用枚数となる、あるいは再利用後の刃具の使用枚数よりも少なくなるように、各上下刃11・12・21・22を再利用する順序を設定する。
【0040】
各上下刃11・12・21・22は、一つの電池の各金属箔W1・W2を切断するため、その加工量は、全て同一である。
この場合、各上下刃11・12・21・22の使用枚数は、摩耗速度(加工量に対する各エッジ11a・12a・21a・22aの摩耗度合い)と再研磨回数とにより決まる。
【0041】
正極用の上下刃11・12は、それぞれ同じ正極用の金属箔W1を直線切りにより切断する矩形刃であるため、その磨耗速度が互いに同じ速度となる。
【0042】
図1(b)に示すように、正極用の上下刃11・12は、互いに同一形状であるため、その使用外径範囲R11・R12が互いに同一の範囲となる。また、正極用の上下刃11・12の取代11r・12r(再研磨により小さくなる外径寸法)は、互いに同一寸法となる。
【0043】
従って、正極用の上下刃11・12の再研磨回数は、互いに同じ回数となる。つまり、正極用の上下刃11・12の使用枚数は、互いに同じ枚数となる。
【0044】
図2(b)に示すように、負極用の上刃21は、鋭角刃であるため、その磨耗速度が矩形刃の磨耗速度よりも速くなる。また、負極用の上刃21の取代21rは、正極用の上下刃11・12の取代11r・12rと同一寸法となる(図1(b)参照)。
【0045】
図3に示すように、矩形刃は、エッジ11a・12a・22aの厚み方向一端側(図3の紙面右側)の摩耗が進行した場合、矩形刃を裏返し、エッジ11a・12a・22aの厚み方向他端側(図3の紙面左側)を使用できる。
一方、鋭角刃は、エッジ21aの厚み方向一端側だけしか使用できない都合上、鋭角刃を裏返して使用できない。
【0046】
このため、負極用の上刃21は、その使用外径範囲R21が正極用の上下刃11・12の使用外径範囲R11・R12と同じ範囲である場合、その使用枚数が正極用の上下刃11・12一つ分の使用枚数よりも二倍以上多くなる。
【0047】
図2(c)に示すように、負極用の下刃22は、矩形刃であるため、エッジ22aの両側を使用できる。
【0048】
負極用の下刃22は、前述のようにガイドロールとともに回動する構成である。このため、負極用の切断装置20では、下刃22を再研磨したときに、再研磨前の下刃22に対応するガイドロールを、再研磨後の下刃22に対応するガイドロールに交換する必要がある。
【0049】
従って、負極用の下刃22の取代22rは、正極用の上下刃11・12の取代11r・12rおよび負極用の上刃21の取代21rよりも大きくなる(図1(b)および図2(b)参照)。本実施形態では、負極用の下刃22の取代22rは、正極用の上下刃11・12の取代11r・12rおよび負極用の上刃21の取代21rの二倍程度の寸法となる。
【0050】
このため、負極用の下刃22は、その使用外径範囲R22および磨耗速度が正極用の上下刃11・12の使用外径範囲R11・R12および磨耗速度と同じである場合、その使用枚数が正極用の上下刃11・12一つ分の使用枚数よりも二倍程度多くなる。
【0051】
つまり、各使用外径範囲R11・R12・R21・R22が全て同じであるとともに、正極用の上下刃11・12の磨耗速度と負極用の下刃22の磨耗速度とが同じ速度である場合、正極用の上下刃11・12の合計使用枚数は、負極用の下刃22の使用枚数と同程度となるとともに、負極用の上刃21の使用枚数よりもやや少ない枚数となる。
この場合、本実施形態の刃具の再利用方法では、正極用の上下刃11・12、負極用の上刃21、および負極用の下刃22を、三つの段階に分けて再利用するように、再利用する順序を設定する。
【0052】
ここで、最初の段階の刃具(つまり、最初に使用する刃具)としては、正極用の上下刃11・12あるいは負極用の下刃22が考えられる。
本実施形態のように、正極用の上下刃11・12の使用枚数および負極用の下刃22の使用枚数が同程度である場合、最初の段階の刃具は、正極用の上下刃11・12および負極用の下刃22の特徴を考慮して設定すればよい。
【0053】
すなわち、負極用の下刃22のような負極用の金属箔W2を抱かせた状態で切断する矩形刃は、その外径寸法を大きく設定するほど負極用の金属箔W2のしわを確実に伸ばした状態で切断できる(図2(a)参照)。このため、負極用の下刃22の外径寸法は、ある程度大きいことが好ましい。
【0054】
以上より、本実施形態の刃具の再利用方法では、図4に示すように、負極用の下刃22、正極用の上下刃11・12、負極用の上刃21の順番にその外径寸法を小さくし、この順番に段階的に再利用する。
つまり、最初に使用する第一段階刃を負極用の下刃22に、第一段階刃を再利用して使用する第二段階刃を正極用の上下刃11・12に、第二段階刃を再利用して使用する第三段階刃を負極用の上刃21に設定する。
【0055】
刃具を再利用する順序を設定した後で、本実施形態の刃具の再利用方法では、図5に示すように、再利用前後の各上下刃11・12・21・22の使用外径範囲R11・R12・R21・R22を設定するとともに、再利用前後の各上下刃11・12・21・22の使用外径範囲R11・R12・R21・R22を互いに部分的に重複させて共有範囲を設定するステップを行う。
本実施形態の場合には、正極用の上下刃11・12の使用外径範囲R11・R12を、負極用の上刃21および負極用の下刃22の使用外径範囲R21・R22と部分的に重複させるように、各使用外径範囲R11・R12・R21・R22を設定する。
【0056】
以下では、正極用の上下刃11・12および負極用の下刃22の共有範囲を「共有範囲R1」、正極用の上下刃11・12および負極用の上刃21の共有範囲を「共有範囲R2」と符号を付して表記する。
【0057】
各共有範囲R1・R2は、各上下刃11・12・21・22において複数回再研磨可能な幅に設定される。
つまり、共有範囲R1では、負極用の下刃22および正極用の上下刃11・12を複数回再研磨可能な幅に設定し、共有範囲R2では、正極用の上下刃11・12および負極用の上刃21を複数回再研磨可能な幅に設定する。
【0058】
このように各共有範囲R1・R2を設定した場合、負極用の下刃22は、共有範囲R1内のある外径寸法まで再研磨したときに、正極用の上下刃11・12として再利用できる構成となる。
つまり、図5に示す状態では、負極用の下刃22は、三回目から五回目までの再研磨時に正極用の上下刃11・12として再利用できる構成となる。正極用の上下刃11・12に関してもこれと同様である。
【0059】
例えば、負極用の下刃22を三回再研磨したときに正極用の上下刃11・12として再利用する場合、正極用の上下刃11・12は、再研磨されて外径が小さくなっていない状態(使用外径範囲R11・R12の上限)から使用可能となる。
一方、負極用の下刃22の五回再研磨したときに正極用の上下刃11・12として再利用する場合、正極用の上下刃11・12は、ある程度(図5では四回)再研磨された状態から使用可能となる。
【0060】
つまり、負極用の下刃22を正極用の上下刃11・12として再利用するまでの再研磨回数を少なくした場合、正極用の上下刃11・12の再研磨回数は多くなる。この場合、負極用の下刃22の使用枚数を増やすことができるとともに、正極用の上下刃11・12の使用枚数を減らすことができる。
また、負極用の下刃22を正極用の上下刃11・12として再利用するまでの再研磨回数を多くした場合、正極用の上下刃11・12の再研磨回数は少なくなる。この場合、負極用の下刃22の使用枚数を減らすことができるとともに、正極用の上下刃11・12の使用枚数を増やすことができる。
【0061】
これは、正極用の上下刃11・12を負極用の上刃21として再利用するまでの再研磨回数においても同様であり、この場合、正極用の上下刃11・12および負極用の上刃21の使用枚数を増減させることができる。
【0062】
このように、本実施形態の刃具の再利用方法では、各共有範囲R1・R2の中で、再利用前の刃具(負極用の下刃22および正極用の上下刃11・12)を何回再研磨したときに再利用するかを調整することで、再利用前後の各刃具(負極用の下刃22、正極用の上下刃11・12、負極用の上刃21毎)の使用枚数を調整するステップを行う。
すなわち、本実施形態では、負極用の下刃22の使用枚数と、正極用の上下刃11・12の合計使用枚数を調整するとともに、正極用の上下刃11・12の合計使用枚数と、負極用の上刃21の使用枚数とを調整するステップが行われる。
【0063】
図6に示すように、使用枚数を調整するステップでは、各上下刃11・12・21・22の再研磨回数を調整することで、再利用前の刃具の使用枚数を、再利用後の刃具の使用枚数と同じ使用枚数に設定する、あるいは再利用後の刃具の使用枚数よりも少ない使用枚数に設定する。
具体的には、負極用の下刃22の使用枚数を、正極用の上下刃11・12の合計使用枚数と同じ使用枚数に設定する、あるいは正極用の上下刃11・12の合計使用枚数より少ない使用枚数に設定する。
また、正極用の上下刃11・12の合計使用枚数を、負極用の上刃21の使用枚数と同じ使用枚数に設定する、あるいは負極用の上刃21の使用枚数よりも少ない使用枚数に設定する。
【0064】
つまり、刃具の再利用方法では、各上下刃11・12・21・22の使用枚数を想定し、再研磨回数の調整によりこのような使用枚数の関係が成立するように、各上下刃11・12・21・22を再利用する順序を設定する。
【0065】
次に、本実施形態の刃具の再利用方法を用いて各上下刃11・12・21・22を再利用する流れについて説明する。
【0066】
各上下刃11・12・21・22は、説明の便宜上、全て同じ速度でエッジ11a・12a・21a・22aの摩耗が進むものとする。
【0067】
図5に示すように、負極用の下刃22は、三回目から五回目の再研磨の間で正極用の上下刃11・12として再利用可能となるように共有範囲R1が設定され、三回目の再研磨時に正極用の上下刃11・12として再利用されるものとする。
正極用の上下刃11・12は、それぞれ使用外径範囲R11・R12の上限にある状態から六回目から十回目の再研磨の間で、負極用の上刃21として再利用可能となるように共有範囲R2が設定され、六回目の再研磨時に負極用の上刃21として再利用されるものとする。
負極用の上刃21は、使用外径範囲R21の上限にある状態から五回再研磨したときに使用外径範囲R21の下限まで外径寸法が小さくなり、その状態でエッジ21aが磨耗したときに、新しい負極用の上刃21と交換されるものとする。
【0068】
なお、図7から図11においては、説明に必要な最小限の在庫だけを表記している。
また、図7から図11においては、一枚目の負極用の上刃21であれば「21A」のように、符号の後側に、対応する使用枚数をアルファベット順に表記している。
【0069】
図7に示すように、一枚目の負極用の下刃22Aに対して三回目の再研磨を行い、正極用の上下刃11・12として再利用するとき、一枚目の負極用の上刃21Aは、五回目の再研磨が行われた状態でエッジ21aが磨耗している。つまり、一枚目の負極用の上刃21Aは、新しい負極用の上刃21と交換されるところまで磨耗している。
一方、一枚目の正極用の上下刃11A・12Aは、それぞれ負極用の上刃21として再利用されるところまで再研磨されていない。
【0070】
この場合、一枚目の負極用の下刃22Aおよび一枚目の負極用の上刃21Aは、それぞれその在庫の中から新しい負極用の下刃22および負極用の上刃21と交換される(図7に示す二枚目の負極用の下刃22Bおよび二枚目の負極用の上刃21B参照)。
一枚目の正極用の上下刃11A・12Aは、それぞれそのまま継続して使用される。
【0071】
このとき、一枚目の負極用の下刃22Aは、正極用の上下刃11・12のいずれか一方(図7では正極用の下刃12)の在庫となる(図7に示す一枚目の負極用の下刃22A参照)。
【0072】
図8に示すように、二枚目の負極用の下刃22Bに対して三回目の再研磨を行い、正極用の上下刃11・12として再利用するとき、一枚目の正極用の上下刃11A・12Aに対して、六回目の再研磨が行われる。つまり、一枚目の正極用の上下刃11A・12Aは、それぞれ負極用の上刃21として再利用される。このとき、二枚目の負極用の上刃21Bは、新しい負極用の上刃21と交換されるところまで磨耗している。
【0073】
この場合、二枚目の負極用の下刃22Bは、その在庫の中から新しい刃具と交換される(図8に示す三枚目の負極用の下刃22C参照)。
一枚目の正極用の上下刃11A・12Aは、それぞれ一枚目および二枚目の負極用の下刃22A・22Bと交換される。つまり、二枚目の正極用の上下刃11B・12Bには、それぞれ一枚目および二枚目の負極用の下刃22A・22Bが再利用される(図8に示す一枚目および二枚目の負極用の下刃22A・22B参照)。
二枚目の負極用の上刃21Bは、一枚目の正極用の上下刃11A・12Aのいずれか一方(図8では一枚目の正極用の下刃12A)と交換される。つまり、三枚目の負極用の上刃21Cには、一枚目の正極用の上下刃11A・12Aのいずれか一方が再利用される。一枚目の正極用の上下刃11A・12Aの他方(図8では一枚目の正極用の上刃11A)は、負極用の上刃21の在庫となる。
【0074】
図9に示すように、三枚目の負極用の下刃22Cに対して三回目の再研磨を行い、正極用の上下刃11・12として再利用するとき、三枚目の負極用の上刃21Cは、新しい負極用の上刃21と交換されるところまで磨耗している。
一方、二枚目の正極用の上下刃11B・12Bは、それぞれ負極用の上刃21として再利用されるところまで再研磨されていない。
【0075】
この場合、三枚目の負極用の下刃22Cは、その在庫の中から新しい刃具と交換され、正極用の上下刃11・12のいずれか一方(図9では正極用の下刃12)の在庫となる(図9に示す三枚目および四枚目の負極用の下刃22C・22D参照)。
二枚目の正極用の上下刃11B・12Bは、それぞれそのまま継続して使用される。
三枚目の負極用の上刃21Cは、在庫として待機している一枚目の正極用の上刃11Aと交換される。つまり、四枚目の負極用の上刃21Dには、一枚目の正極用の上刃11Aが再利用される(図9に示す一枚目の正極用の上刃11A参照)。
【0076】
図10に示すように、四枚目の負極用の下刃22Dに対して三回目の再研磨を行い、正極用の上下刃11・12として再利用するとき、二枚目の正極用の上下刃11B・12Bはそれぞれ負極用の上刃21として再利用される。このとき、四枚目の負極用の上刃21Dは、新しい負極用の上刃21と交換されるところまで磨耗している。
【0077】
この場合、四枚目の負極用の下刃22Dは、その在庫の中から新しい刃具と交換される(図10に示す五枚目の負極用の下刃22E参照)。
二枚目の正極用の上下刃11B・12Bは、それぞれ三枚目および四枚目の負極用の下刃22C・22Dと交換される。つまり、三枚目の正極用の上下刃11C・12Cには、それぞれ三枚目および四枚目の負極用の下刃22C・22Dが再利用される(図10に示す三枚目および四枚目の負極用の下刃22C・22D参照)。
四枚目の負極用の上刃21Dは、二枚目の正極用の上下刃11B・12Bのいずれか一方(図10では二枚目の正極用の下刃12B)と交換される。つまり、五枚目の負極用の上刃21Eには、二枚目の正極用の上下刃11B・12Bのいずれか一方が再利用される。二枚目の正極用の上下刃11B・12Bの他方(図10では二枚目の正極用の上刃11B)は、負極用の上刃21の在庫となる。このような二枚目の正極用の上下刃11B・12Bは、それぞれ一枚目および二枚目の負極用の下刃22A・22Bである。
【0078】
このように、負極用の下刃22を四枚使用するとき、正極用の上下刃11・12は、それぞれ二枚ずつ合計四枚使用されることとなる。この場合、二枚目の正極用の上下刃11B・12B以降は、全て負極用の下刃22を再利用したものである。
すなわち、正極用の切断装置10は、上下刃11・12を使用する分だけ上下刃11・12の在庫を保有する必要がない。
【0079】
負極用の上刃21は、二枚目の負極用の上刃21Bを使用するときだけ、在庫の中から新しい負極用の上刃21と交換されることとなるが、三枚目の負極用の上刃21C以降は正極用の上下刃11・12を再利用したものである。
また、正極用の上下刃11・12を負極用の上刃21として再利用するときには、一方の正極用の上下刃11・12を負極用の上刃21として再利用するとともに、他方の正極用の上下刃11・12を負極用の上刃21の在庫として待機させる。
【0080】
つまり、負極用の切断装置20は、一時的に上刃21の在庫から新しい刃具を使用するが、最終的な上刃21の在庫量に変動は生じない(図7および図11参照)。従って、負極用の切断装置20は、上刃21を使用する分だけ上刃21の在庫を保有する必要がない。
【0081】
このように、本実施形態の刃具の再利用方法において負極用の下刃22は、正極用の上下刃11・12および負極用の上刃21の在庫として機能する。
すなわち、本実施形態の刃具の再利用方法を用いた場合には、各金属箔W1・W2を切断する際に使用する刃具の使用量を低減できるため、各金属箔W1・W2の切断に要するコストを低減できる。
【0082】
仮に、再利用前後の刃具の使用枚数が全て同じ枚数とならなかった場合でも、図6に示すように、再利用前の刃具の使用枚数を再利用後の刃具の使用枚数よりも少なくすることで、各切断装置10・20は、余剰在庫を抱えることなく各金属箔W1・W2を切断できる。つまり、各上下刃11・12・21・22の在庫を余らせることなく使用できる。
ただし、刃具をより効率的に再利用できる(負極用の下刃22を使用した分だけ正極用の上下刃11・12以降の刃具を使用することで、刃具の使用量を最小限にできる)という観点から、再利用前後の刃具の使用枚数は、全て同じ枚数であることが好ましい。
【0083】
ここで、使用を開始する前の各上下刃11・12・21・22(つまり新品の各上下刃11・12・21・22)には、刃欠けの発生を抑制するためのコーティング(例えば、DLCコーティング等)が予め施されている。
【0084】
本実施形態では、各上下刃11・12・21・22を再研磨するときに、再研磨後のエッジ11a・12a・21a・22aにコーティングが残っているため、再研磨後に再コーティングを行わない。
すなわち、本実施形態の刃具の再利用方法では、それぞれ再研磨するときに、各上下刃11・12・21・22に対して予め施されているコーティングを引き継いで使用する。これは、負極用の下刃22を正極用の上下刃11・12として再利用するとき、および正極用の上下刃11・12を負極用の上刃21として再利用するときも同様である。
【0085】
これにより、各上下刃11・12・21・22に対するコーティング回数を減らす(負極用の下刃22に対して予め施されるコーティング一回だけで済ませる)ことができ、各金属箔W1・W2の切断に要するコストをさらに低減できる。
【0086】
ここで、各上下刃11・12・21・22は、各金属箔W1・W2の切断中に刃欠け等が発生した場合、各上下刃11・12・21・22を再研磨して前記刃欠け等に対応する必要がある。つまり、各上下刃11・12・21・22は、刃欠け等の発生により想定よりも速く磨耗が進行し、その使用枚数が変動する場合がある。
【0087】
このような場合には、各上下刃11・12・21・22の再研磨回数を調整することで、使用枚数の変動に対応する。
【0088】
例えば、負極用の下刃22で複数回刃欠けが発生し、正極用の上下刃11・12の在庫量が増えてしまった場合、負極用の下刃22の再研磨回数を増やすことで、負極用の下刃22の使用枚数を減らすとともに、正極用の上下刃11・12の使用枚数を増やす(図5参照)。
このように、本実施形態の刃具の再利用方法では、在庫量が増えてしまった再利用前の刃具の在庫を積極的に使用することで、刃欠け等による使用枚数の変動に対応できる。
【0089】
また、正極用の上下刃11・12の在庫量が増えてしまった場合には、負極用の上刃21の再研磨回数を増やすことで、正極用の上下刃11・12の使用枚数を減らしても構わない。この場合、負極用の上刃21を長く使用できる。
負極用の上刃21のような鋭角刃は、矩形刃と比較して刃欠けが発生しやすい。このため、負極用の上刃21を長く使用できるようにすることで、刃欠けによる負極用の上刃21の使用枚数の増加に対応できる。
【0090】
これによれば、各金属箔W1・W2を切断中に刃欠け等が発生し再利用前後の刃具の使用枚数が変動した場合でも、当該変動に対して再利用前後の刃具の使用枚数を合わせることができるため、在庫不足や余剰在庫の発生を防止できる。つまり、本実施形態の刃具の再利用方法は、在庫量を管理して刃具を効率的に再利用できる。
【0091】
仮に、切断する各金属箔W1・W2の材料を変更した場合等には、当該変更した各金属箔W1・W2を切断する各上下刃11・12・21・22の摩耗速度が変動する可能性がある。この場合、再利用前後の刃具の使用枚数が全て同一ではなくなる可能性がある。
【0092】
このような場合でも、刃具の再利用方法では、各上下刃11・12・21・22の再研磨回数を調整することで、使用枚数の変動に対して再利用前後の刃具の使用枚数を合わせることができる。
【0093】
つまり、本実施形態の刃具の再利用方法は、各共有範囲R1・R2を設定することで、刃欠けの発生や材料の変動等による使用枚数の変動に対してロバスト性を持たせることができる。
【0094】
以下では、正極用の上下刃11・12の使用枚数が互いに異なっていた場合(例えば、正極用の金属箔W1を切断したときに、正極用の上刃11の方が正極用の下刃12よりも磨耗が少なかった場合等)の、刃具の再利用方法について説明する。
【0095】
正極用の上下刃11・12の使用枚数が互いに異なっていた場合、図12に示すように、使用枚数の多い方の正極用の下刃12は、単に負極用の下刃22を再利用するだけでは在庫が足りず、その在庫量が減ってしまう。
一方、使用枚数の少ない方の正極用の上刃11は、単に負極用の下刃22を再利用するだけでは負極用の下刃22を再利用しきれない。
この場合、正極用の上下刃11・12を用いる切断装置は、正極用の上刃11の余剰在庫を抱えてしまう。
【0096】
このような場合には、図13に示すように、使用枚数の少ない方の正極用の上刃11の在庫を、使用枚数の多い方の正極用の下刃12として使用する。
【0097】
すなわち、刃具の再利用方法は、正極用の上下刃11・12の中で負極用の下刃22を段階的に使用する(負極用の下刃22→正極用の上刃11の在庫→正極用の下刃12の順に使用する)ことで、正極用の上下刃11・12の最終的な在庫量を調整できる。
【0098】
すなわち、刃具の再利用方法は、正極用の上下刃11・12の中で使用枚数が異なっていた場合でも、正極用の上下刃11・12の中で在庫不足の発生や余剰在庫の発生を防止できる。
【0099】
仮に、正極用の上下刃11・12の一方の使用枚数だけが、他方の正極用の上下刃11・12の使用枚数よりも多くなってしまった場合、一方の正極用の上下刃11・12の余剰在庫が発生する。この場合、一方の正極用の上下刃11・12の在庫を他方の正極用の上下刃11・12として使用するとともに、正極用の上下刃11・12の再研磨回数を減らせばよい。
これにより、余剰在庫の発生を防止できるとともに、負極用の上刃21を長く使用できる。
【0100】
なお、本実施形態では、第二段階だけを、エッジの形状および使用外径範囲が互いに同一となるとともに、互いに異なる使用条件となる正極用の上下刃11・12で構成したが、これに限定されるものでない。
すなわち、刃具の再利用方法では、再利用前の二つ以上の段階を、エッジの形状および使用外径範囲が互いに同一となるとともに、互いに異なる使用条件となる刃具で構成しても構わない。また、再利用前の段階を三つ以上の刃具によって構成しても構わない。
【0101】
このように、刃具の再利用方法では、再利用前の少なくとも一つの段階(本実施形態では第二段階)を、エッジ11a・12aの形状および使用外径範囲R11・R12が互いに同一となるとともに、互いに異なる使用条件となる正極用の上下刃11・12によって構成する。
そして、第二段階にて、正極用の上下刃11・12の在庫を、その在庫量に基づいて、正極用の上下刃11・12に振り分けて使用する。
【0102】
これにより、第二段階において、互いの在庫を使いまわすことができるため、正極用の上下刃11・12の使用枚数のずれに対する調整を行うことができる。
また、前記使用枚数のずれに対する調整により正極用の上下刃11・12の在庫を積極的に使用した場合、負極用の上刃21を長く使用できる。
【0103】
以下では、前述したような再研磨回数の調整を行っても、正極用の上下刃11・12一つ分の使用枚数が、負極用の上下刃21・22一つ分の使用枚数と同程度、あるいは多くなるとともに、負極用の上下刃21・22の使用枚数が互いに同程度である場合の、刃具の再利用方法について説明する。
【0104】
この場合、負極用の上下刃21・22一つ分の使用枚数は、正極用の上下刃11・12の合計使用枚数の半分以下となってしまう。
このような状態で、図4にあるような負極用の下刃22、正極用の上下刃11・12、負極用の上刃21の順に三段階の再利用を行った場合、正極用の切断装置10では、負極用の下刃22を再利用する枚数が足りず、上下刃11・12の在庫が不足してしまう。
また、負極用の切断装置20では、正極用の上下刃11・12を再利用しきれず、上刃21の余剰在庫を抱えてしまう。
【0105】
このような場合、刃具の再利用方法では、図14に示すように、正極用の上下刃11・12を第一段階刃とするとともに、負極用の上下刃21・22を第二段階刃とするように、各上下刃11・12・21・22を再利用する順序を設定する。
そして、正極用の上下刃11・12の外径寸法を、負極用の上下刃21・22の外径寸法よりも大きくなるように設定する。このとき、正極用の上下刃11・12の使用外径範囲R11・R12と、負極用の上下刃21・22の使用外径範囲R21・R22との間に共有範囲を設定する。
【0106】
これによれば、再利用前の刃具の使用枚数を、再利用後の刃具の使用枚数と同じ使用枚数に設定できる、あるいは再利用後の刃具の使用枚数よりも少ない使用枚数に設定できるため、刃具を効率的に再利用できる。
仮に、正極用の上下刃11・12の使用枚数が互いに異なっていた場合、正極用の上下刃11・12の中で在庫を振り分けて使用する。
【0107】
なお、本実施形態の刃具の再利用方法を適用可能な刃具は、本実施形態のような各金属箔W1・W2を切断する略円板状の刃具に限定されるものでない。
すなわち、刃具の再利用方法は、ワークを切断する刃具全般に対して適用可能であり、例えば、二つの略板状の刃具によりワークを挟んで剪断するような切断装置の刃具に対しても適用可能である。このような略板状の刃具の場合には、刃具の長手方向の長さが使用範囲として設定される。
【0108】
ただし、本実施形態の刃具の再利用方法は、本実施形態のような同時並行のラインで一つの電池の正極用および負極用の金属箔W1・W2を切断する各切断装置10・20に用いられる各上下刃11・12・21・22に対して適用することで、各上下刃11・12・21・22の加工量を考慮する必要がなくなる。このため、刃具の再利用を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0109】
10・20 切断装置
11 正極用の上刃(刃具)
11a・12a・21a・22a エッジ
12 正極用の下刃(刃具)
21 負極用の上刃(刃具)
22 負極用の下刃(刃具)
R1・R2 共有範囲
R11・R12・R21・R22 使用外径範囲(使用範囲)
W1・W2 金属箔(ワーク)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを切断する切断装置に用いられる刃具を再研磨して、前記刃具とは異なる使用条件の刃具として、各刃具を段階的に再利用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、刃具を用いてワークを切断する切断装置としては、例えば、上刃および下刃によりワークに対してスリット加工を行う切断装置等がある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される切断装置は、先端角が大きな第一刃、および第一刃よりも先端角と厚みとが小さな第二刃を用いてワークを切断する。第一刃および第二刃は、その厚み方向において互いに所定間隔だけ離間するとともに、互いに接近する側の端部が所定寸法だけ重なる。
【0004】
このような特許文献1の刃具(第一刃および第二刃)は、ある程度使用されてエッジが摩耗したときに再研磨される。
刃具は、切断装置毎に使用外径範囲(再研磨可能な回数)が予め設定されており、その外径寸法が前記使用外径範囲の下限となるまで再研磨された状態で、エッジが磨耗したときに、切断装置が保有している在庫より新しい刃具と交換される。このとき、エッジが磨耗した刃具は破棄される。
【0005】
このような各刃具の使用量を減らすために、新しい刃具と交換された刃具を、使用外径範囲のより小さい別の刃具に再利用することが考えられる。
【0006】
しかし、再利用前後の各刃具は、使用条件(例えば、切断するワークの種類やエッジの形状等)の違いにより、その摩耗速度が互いに異なる。例えば、再利用前の刃具の磨耗速度の方が再利用後の刃具の磨耗速度よりも速い場合、再利用後の刃具を用いる切断装置は、再利用前の刃具を再利用しきれず、刃具の余剰在庫を抱えてしまう可能性がある。
具体的には、再利用前の刃具を十枚使用するときに、再利用後の刃具を四枚使用する場合、再利用後の刃具が六枚余ってしまう。
【0007】
また、刃欠け等の発生により再利用前の刃具の磨耗が進んだ場合、再利用後の刃具を用いる切断装置は、刃具の余剰在庫を抱えてしまう可能性がある。
【0008】
このように、切断装置に用いられる刃具を再利用した場合、在庫量の管理ができず、その結果、再利用後の刃具を用いる切断装置が刃具の余剰在庫を抱えてしまう可能性があった。つまり、刃具を効率的に再利用できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−238490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、在庫量を管理して刃具を効率的に再利用できる刃具の再利用方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1においては、ワークを切断する切断装置に用いられる刃具を再研磨して、前記再研磨前の刃具の使用条件とは異なる使用条件の刃具として、前記各刃具を段階的に再利用する刃具の再利用方法であって、前記各刃具のエッジの形状および前記各刃具の使用枚数に基づいて、前記各刃具を再利用する順序を設定するステップと、再利用前後の前記各刃具の、前記ワークを切断可能な範囲である使用範囲を設定するとともに、前記再利用前後の各刃具の使用範囲を互いに部分的に重複させて共有範囲を設定するステップと、前記再利用前後の各刃具の使用枚数を調整するステップと、を行い、前記共有範囲は、前記各刃具において複数回再研磨可能な幅に設定され、前記再利用前後の各刃具の使用枚数を調整するステップでは、前記共有範囲の中で前記再利用前の刃具を何回再研磨したときに再利用するかを調整することで、再利用前の前記刃具の使用枚数を、再利用後の前記刃具の使用枚数と同じ使用枚数に設定する、あるいは前記再利用後の前記刃具の使用枚数よりも少ない使用枚数に設定する、ものである。
【0012】
請求項2においては、再利用前の少なくとも一つの段階を、前記エッジの形状および前記使用範囲が互いに同一となるとともに、互いに異なる使用条件となる二つ以上の前記刃具によって構成し、前記再利用前の一つの段階にて、前記エッジの形状および前記使用範囲が互いに同一となる前記各刃具の在庫を、前記各刃具の在庫量に基づいて、前記各刃具に振り分けて使用する、ものである。
【0013】
請求項3においては、前記各刃具を再研磨するとき、前記各刃具に対して予め施されるコーティングを引き継いで使用する、ものである。
【0014】
請求項4においては、前記切断装置は、一つの電池の正極用および負極用の金属箔を、上刃および下刃を用いて切断する正極用の切断装置および負極用の切断装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、段階毎の刃具の使用枚数の変動に対して再利用前後の刃具の使用枚数を合わせることができるため、在庫量を管理して刃具を効率的に再利用できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】正極用の切断装置を示す説明図。(a)全体的な構成を示す図。(b)上下刃のエッジを示す図。
【図2】負極用の切断装置を示す説明図。(a)全体的な構成を示す図。(b)上刃のエッジを示す図。(c)下刃のエッジを示す図。
【図3】各上下刃のエッジと使用枚数との関係を示す説明図。
【図4】各上下刃の外径寸法の関係を示す説明図。
【図5】各上下刃の共有範囲を示す説明図。
【図6】各上下刃の使用枚数の関係を示す説明図。
【図7】一枚目の負極用の下刃を再利用する状態を示す説明図。
【図8】二枚目の負極用の下刃を再利用する状態を示す説明図。
【図9】三枚目の負極用の下刃を再利用する状態を示す説明図。
【図10】四枚目の負極用の下刃を再利用する状態を示す説明図。
【図11】四枚目の負極用の下刃を再利用した後の状態を示す説明図。
【図12】正極用の上下刃の使用枚数が異なっている状態を示す説明図。
【図13】正極用の上下刃の中で段階的に使用する状態を示す説明図。
【図14】二段階で刃具を再利用する状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本実施形態の刃具の再利用方法について説明する。
【0018】
まず、刃具について説明する。刃具は、ワークを切断する切断装置に用いられるものである。
本実施形態の切断装置は、図1(a)および図2(a)に示すように、一つの電池の正極用の金属箔W1および負極用の金属箔W2を切断するスリット工程を行う正極用の切断装置10および負極用の切断装置20であるものとする。
この場合、刃具は、各切断装置10・20の上刃11・21および下刃12・22となる。
【0019】
各上下刃11・12・21・22は、各金属箔W1・W2を挟んだ状態で対向して配置される。各上下刃11・12・21・22は、その厚み方向において互いに所定間隔だけ離間するとともに、互いに接近する側の端部が所定寸法だけ重なる。
【0020】
各切断装置10・20は、それぞれ各金属箔W1・W2の搬送方向が並行するように配置されている。各切断装置10・20は、それぞれ各金属箔W1・W2を各巻き出しロール13・23により各上下刃11・12・21・22が互いに重なる部分に向けて搬送して、各上下刃11・12・21・22にて切断する。そして、各切断装置10・20は、切断した各金属箔W1・W2を各巻き取りロール14・24によって巻き取る。
【0021】
正極用の切断装置10は、搬送方向に対して平行に正極用の金属箔W1を搬送して切断するような直線切りを行う。
負極用の切断装置20は、搬送方向に対してやや傾斜するように負極用の金属箔W2を搬送して切断する。つまり、負極用の切断装置20は、ガイドロールによって負極用の下刃22に負極用の金属箔W2を抱かせた状態で、負極用の金属箔W2を切断するような、屈曲切りを行う。
【0022】
正極用の切断装置10の上刃11(以下、「正極用の上刃11」と表記する)は、略円板状に形成され、所定の外径寸法が設定される。
図1(b)に示すように、正極用の上刃11は、搬送方向から見たときに、そのエッジ11a(先端)の形状が矩形状となるような矩形刃(先端が正極用の上刃11の径方向に対して直交する刃)である。
【0023】
正極用の切断装置10の下刃12(以下、「正極用の下刃12」と表記する)は、正極用の上刃11と同一形状である。すなわち、正極用の下刃12は、その外径寸法、厚み寸法、およびエッジ12aの形状等が正極用の上刃11と同一となるような矩形刃である。
【0024】
図2(b)に示すように、負極用の切断装置20の上刃21(以下、「負極用の上刃21」と表記する)は、搬送方向から見たときに、そのエッジ21aの形状が鋭角状となるような鋭角刃(先端が尖っている刃)である。負極用の上刃21の厚み寸法は、正極用の上下刃11・12の厚み寸法と略同一の大きさが設定される。
【0025】
図2(c)に示すように、負極用の切断装置20の下刃22(以下、「負極用の下刃22」と表記する)は、正極用の上下刃11・12と同様に、エッジ22aの形状が矩形状となるような矩形刃である。負極用の下刃22の厚み寸法は、正極用の上下刃11・12の厚み寸法と略同一の大きさが設定される。
負極用の下刃22は、その外径寸法と略同一の外径寸法が設定されるガイドロールがその側面に配置され、ガイドロールとともに回動する。
【0026】
このような各切断装置10・20は、それぞれ上下刃11・12・21・22毎に在庫を保有している(図7参照)。
【0027】
図1(a)、図2(b)、および図2(c)に示すように、各上下刃11・12・21・22は、それぞれエッジ11a・12a・21a・22aが摩耗したときに再研磨が行われ、再研磨後は再研磨前よりも所定寸法だけその外径が小さくなる(図1(a)、図2(b)、および図2(c)に示す取代11r・12r・21r・22r参照)。
【0028】
各上下刃11・12・21・22は、それぞれ再研磨が繰り返し行われるが、その外径寸法が所定の外径寸法まで再研磨された状態で、エッジ11a・12a・21a・22aが磨耗すると、新しい各上下刃11・12・21・22と交換される。
つまり、各上下刃11・12・21・22には、切断装置10・20毎に使用外径範囲R11・R12・R21・R22(再研磨可能な回数)が設定されている。本実施形態のように略円板状の各上下刃11・12・21・22においては、使用外径範囲R11・R12・R21・R22が、各金属箔W1・W2を切断可能な範囲である使用範囲に対応する。
なお、鋭角刃の使用外径範囲、つまり、負極用の上刃21の使用外径範囲R21は、エッジ21aの先端部分(図2(b)においては紙面右側の端部)までの外径寸法を規定するものである。
【0029】
スリット工程において、仮に使用外径範囲R11・R12・R21・R22を超えて使用された各上下刃11・12・21・22を新しい各上下刃11・12・21・22と交換し、交換後の使用外径範囲R11・R12・R21・R22を超えた各上下刃11・12・21・22を破棄する場合、各上下刃11・12・21・22を新たに使用する分だけ、刃具が必要となってしまう。
【0030】
本発明における刃具の再利用方法は、ある使用条件でワークを切断する刃具(例えば、負極用の下刃22)を再研磨して、再研磨前の刃具の使用条件とは異なる使用条件の刃具(例えば、正極用の上刃11)として、段階的に再利用することで、刃具の使用量を低減させるものである。
【0031】
ここで、「異なる使用条件の刃具」とは、例えば、切断するワークの種類が異なる刃具、および切断するワークが同じでも、機能的に異なる刃具(例えば、正極用の上刃11および下刃12)のように、全く同じ用途に用いない刃具のことを指す。
【0032】
刃具を段階的に再利用する場合、使用外径範囲が大きな刃具を再研磨して、使用外径範囲が小さな刃具として再利用することとなる。
前述のように、正極用の上下刃11・12は、それぞれその外径寸法が同一である。この場合、正極用の上下刃11・12は、ある一段階の刃具となる。
【0033】
本実施形態の刃具の再利用方法では、各上下刃11・12・21・22のエッジ11a・12a・21a・22aの形状および使用枚数等に基づいて、各上下刃11・12・21・22を再利用する順序を設定するステップを行う。
つまり、刃具を段階毎に分け(例えば、正極用の上下刃11・12と負極用の上下刃21・22とに分け)、どのような順序で段階毎に分けた刃具を再利用するかを設定する。
【0034】
本実施形態において、「使用枚数」とは、各金属箔W1・W2の切断中に刃欠けが発生すること等による摩耗速度の変動がない場合の、加工量あたりの使用枚数のことをいう。
【0035】
エッジの形状が同じ刃具を再利用する場合、例えば、負極用の下刃22を再研磨して正極用の上刃11として再利用する場合、正極用の上刃11の使用外径範囲R11内まで負極用の下刃22を再研磨する。
【0036】
矩形刃を鋭角刃として再利用する場合、例えば、正極用の上刃11を負極用の上刃21として再利用する場合、負極用の上刃21の使用外径範囲R21内まで正極用の上刃11を再研磨したときに、正極用の上刃11に対して鋭角加工を行う。つまり、エッジ11a・12aの厚み方向一端側を削って鋭角状のエッジを形成する。
【0037】
一方、鋭角刃を矩形刃として再利用する場合、例えば、負極用の上刃21を正極用の上刃11として再利用する場合、エッジ21aを全て削って平らにする必要がある。つまり、鋭角刃を矩形刃として再利用する場合には、再研磨による外径の変動度合いが大きくなり過ぎて、精度を保証できなくなってしまう。
【0038】
このため、本実施形態の刃具の再利用方法では、鋭角刃(負極用の上刃21)を再利用の最終段階(つまり、最後に使用する刃具)に設定する。
【0039】
再利用前の刃具の使用枚数が再利用後の使用枚数よりも多い場合、切断装置10・20が余剰在庫を抱えてしまう。このため、刃具の再利用方法では、再利用前の刃具の使用枚数が、再利用後の刃具の使用枚数と同じ使用枚数となる、あるいは再利用後の刃具の使用枚数よりも少なくなるように、各上下刃11・12・21・22を再利用する順序を設定する。
【0040】
各上下刃11・12・21・22は、一つの電池の各金属箔W1・W2を切断するため、その加工量は、全て同一である。
この場合、各上下刃11・12・21・22の使用枚数は、摩耗速度(加工量に対する各エッジ11a・12a・21a・22aの摩耗度合い)と再研磨回数とにより決まる。
【0041】
正極用の上下刃11・12は、それぞれ同じ正極用の金属箔W1を直線切りにより切断する矩形刃であるため、その磨耗速度が互いに同じ速度となる。
【0042】
図1(b)に示すように、正極用の上下刃11・12は、互いに同一形状であるため、その使用外径範囲R11・R12が互いに同一の範囲となる。また、正極用の上下刃11・12の取代11r・12r(再研磨により小さくなる外径寸法)は、互いに同一寸法となる。
【0043】
従って、正極用の上下刃11・12の再研磨回数は、互いに同じ回数となる。つまり、正極用の上下刃11・12の使用枚数は、互いに同じ枚数となる。
【0044】
図2(b)に示すように、負極用の上刃21は、鋭角刃であるため、その磨耗速度が矩形刃の磨耗速度よりも速くなる。また、負極用の上刃21の取代21rは、正極用の上下刃11・12の取代11r・12rと同一寸法となる(図1(b)参照)。
【0045】
図3に示すように、矩形刃は、エッジ11a・12a・22aの厚み方向一端側(図3の紙面右側)の摩耗が進行した場合、矩形刃を裏返し、エッジ11a・12a・22aの厚み方向他端側(図3の紙面左側)を使用できる。
一方、鋭角刃は、エッジ21aの厚み方向一端側だけしか使用できない都合上、鋭角刃を裏返して使用できない。
【0046】
このため、負極用の上刃21は、その使用外径範囲R21が正極用の上下刃11・12の使用外径範囲R11・R12と同じ範囲である場合、その使用枚数が正極用の上下刃11・12一つ分の使用枚数よりも二倍以上多くなる。
【0047】
図2(c)に示すように、負極用の下刃22は、矩形刃であるため、エッジ22aの両側を使用できる。
【0048】
負極用の下刃22は、前述のようにガイドロールとともに回動する構成である。このため、負極用の切断装置20では、下刃22を再研磨したときに、再研磨前の下刃22に対応するガイドロールを、再研磨後の下刃22に対応するガイドロールに交換する必要がある。
【0049】
従って、負極用の下刃22の取代22rは、正極用の上下刃11・12の取代11r・12rおよび負極用の上刃21の取代21rよりも大きくなる(図1(b)および図2(b)参照)。本実施形態では、負極用の下刃22の取代22rは、正極用の上下刃11・12の取代11r・12rおよび負極用の上刃21の取代21rの二倍程度の寸法となる。
【0050】
このため、負極用の下刃22は、その使用外径範囲R22および磨耗速度が正極用の上下刃11・12の使用外径範囲R11・R12および磨耗速度と同じである場合、その使用枚数が正極用の上下刃11・12一つ分の使用枚数よりも二倍程度多くなる。
【0051】
つまり、各使用外径範囲R11・R12・R21・R22が全て同じであるとともに、正極用の上下刃11・12の磨耗速度と負極用の下刃22の磨耗速度とが同じ速度である場合、正極用の上下刃11・12の合計使用枚数は、負極用の下刃22の使用枚数と同程度となるとともに、負極用の上刃21の使用枚数よりもやや少ない枚数となる。
この場合、本実施形態の刃具の再利用方法では、正極用の上下刃11・12、負極用の上刃21、および負極用の下刃22を、三つの段階に分けて再利用するように、再利用する順序を設定する。
【0052】
ここで、最初の段階の刃具(つまり、最初に使用する刃具)としては、正極用の上下刃11・12あるいは負極用の下刃22が考えられる。
本実施形態のように、正極用の上下刃11・12の使用枚数および負極用の下刃22の使用枚数が同程度である場合、最初の段階の刃具は、正極用の上下刃11・12および負極用の下刃22の特徴を考慮して設定すればよい。
【0053】
すなわち、負極用の下刃22のような負極用の金属箔W2を抱かせた状態で切断する矩形刃は、その外径寸法を大きく設定するほど負極用の金属箔W2のしわを確実に伸ばした状態で切断できる(図2(a)参照)。このため、負極用の下刃22の外径寸法は、ある程度大きいことが好ましい。
【0054】
以上より、本実施形態の刃具の再利用方法では、図4に示すように、負極用の下刃22、正極用の上下刃11・12、負極用の上刃21の順番にその外径寸法を小さくし、この順番に段階的に再利用する。
つまり、最初に使用する第一段階刃を負極用の下刃22に、第一段階刃を再利用して使用する第二段階刃を正極用の上下刃11・12に、第二段階刃を再利用して使用する第三段階刃を負極用の上刃21に設定する。
【0055】
刃具を再利用する順序を設定した後で、本実施形態の刃具の再利用方法では、図5に示すように、再利用前後の各上下刃11・12・21・22の使用外径範囲R11・R12・R21・R22を設定するとともに、再利用前後の各上下刃11・12・21・22の使用外径範囲R11・R12・R21・R22を互いに部分的に重複させて共有範囲を設定するステップを行う。
本実施形態の場合には、正極用の上下刃11・12の使用外径範囲R11・R12を、負極用の上刃21および負極用の下刃22の使用外径範囲R21・R22と部分的に重複させるように、各使用外径範囲R11・R12・R21・R22を設定する。
【0056】
以下では、正極用の上下刃11・12および負極用の下刃22の共有範囲を「共有範囲R1」、正極用の上下刃11・12および負極用の上刃21の共有範囲を「共有範囲R2」と符号を付して表記する。
【0057】
各共有範囲R1・R2は、各上下刃11・12・21・22において複数回再研磨可能な幅に設定される。
つまり、共有範囲R1では、負極用の下刃22および正極用の上下刃11・12を複数回再研磨可能な幅に設定し、共有範囲R2では、正極用の上下刃11・12および負極用の上刃21を複数回再研磨可能な幅に設定する。
【0058】
このように各共有範囲R1・R2を設定した場合、負極用の下刃22は、共有範囲R1内のある外径寸法まで再研磨したときに、正極用の上下刃11・12として再利用できる構成となる。
つまり、図5に示す状態では、負極用の下刃22は、三回目から五回目までの再研磨時に正極用の上下刃11・12として再利用できる構成となる。正極用の上下刃11・12に関してもこれと同様である。
【0059】
例えば、負極用の下刃22を三回再研磨したときに正極用の上下刃11・12として再利用する場合、正極用の上下刃11・12は、再研磨されて外径が小さくなっていない状態(使用外径範囲R11・R12の上限)から使用可能となる。
一方、負極用の下刃22の五回再研磨したときに正極用の上下刃11・12として再利用する場合、正極用の上下刃11・12は、ある程度(図5では四回)再研磨された状態から使用可能となる。
【0060】
つまり、負極用の下刃22を正極用の上下刃11・12として再利用するまでの再研磨回数を少なくした場合、正極用の上下刃11・12の再研磨回数は多くなる。この場合、負極用の下刃22の使用枚数を増やすことができるとともに、正極用の上下刃11・12の使用枚数を減らすことができる。
また、負極用の下刃22を正極用の上下刃11・12として再利用するまでの再研磨回数を多くした場合、正極用の上下刃11・12の再研磨回数は少なくなる。この場合、負極用の下刃22の使用枚数を減らすことができるとともに、正極用の上下刃11・12の使用枚数を増やすことができる。
【0061】
これは、正極用の上下刃11・12を負極用の上刃21として再利用するまでの再研磨回数においても同様であり、この場合、正極用の上下刃11・12および負極用の上刃21の使用枚数を増減させることができる。
【0062】
このように、本実施形態の刃具の再利用方法では、各共有範囲R1・R2の中で、再利用前の刃具(負極用の下刃22および正極用の上下刃11・12)を何回再研磨したときに再利用するかを調整することで、再利用前後の各刃具(負極用の下刃22、正極用の上下刃11・12、負極用の上刃21毎)の使用枚数を調整するステップを行う。
すなわち、本実施形態では、負極用の下刃22の使用枚数と、正極用の上下刃11・12の合計使用枚数を調整するとともに、正極用の上下刃11・12の合計使用枚数と、負極用の上刃21の使用枚数とを調整するステップが行われる。
【0063】
図6に示すように、使用枚数を調整するステップでは、各上下刃11・12・21・22の再研磨回数を調整することで、再利用前の刃具の使用枚数を、再利用後の刃具の使用枚数と同じ使用枚数に設定する、あるいは再利用後の刃具の使用枚数よりも少ない使用枚数に設定する。
具体的には、負極用の下刃22の使用枚数を、正極用の上下刃11・12の合計使用枚数と同じ使用枚数に設定する、あるいは正極用の上下刃11・12の合計使用枚数より少ない使用枚数に設定する。
また、正極用の上下刃11・12の合計使用枚数を、負極用の上刃21の使用枚数と同じ使用枚数に設定する、あるいは負極用の上刃21の使用枚数よりも少ない使用枚数に設定する。
【0064】
つまり、刃具の再利用方法では、各上下刃11・12・21・22の使用枚数を想定し、再研磨回数の調整によりこのような使用枚数の関係が成立するように、各上下刃11・12・21・22を再利用する順序を設定する。
【0065】
次に、本実施形態の刃具の再利用方法を用いて各上下刃11・12・21・22を再利用する流れについて説明する。
【0066】
各上下刃11・12・21・22は、説明の便宜上、全て同じ速度でエッジ11a・12a・21a・22aの摩耗が進むものとする。
【0067】
図5に示すように、負極用の下刃22は、三回目から五回目の再研磨の間で正極用の上下刃11・12として再利用可能となるように共有範囲R1が設定され、三回目の再研磨時に正極用の上下刃11・12として再利用されるものとする。
正極用の上下刃11・12は、それぞれ使用外径範囲R11・R12の上限にある状態から六回目から十回目の再研磨の間で、負極用の上刃21として再利用可能となるように共有範囲R2が設定され、六回目の再研磨時に負極用の上刃21として再利用されるものとする。
負極用の上刃21は、使用外径範囲R21の上限にある状態から五回再研磨したときに使用外径範囲R21の下限まで外径寸法が小さくなり、その状態でエッジ21aが磨耗したときに、新しい負極用の上刃21と交換されるものとする。
【0068】
なお、図7から図11においては、説明に必要な最小限の在庫だけを表記している。
また、図7から図11においては、一枚目の負極用の上刃21であれば「21A」のように、符号の後側に、対応する使用枚数をアルファベット順に表記している。
【0069】
図7に示すように、一枚目の負極用の下刃22Aに対して三回目の再研磨を行い、正極用の上下刃11・12として再利用するとき、一枚目の負極用の上刃21Aは、五回目の再研磨が行われた状態でエッジ21aが磨耗している。つまり、一枚目の負極用の上刃21Aは、新しい負極用の上刃21と交換されるところまで磨耗している。
一方、一枚目の正極用の上下刃11A・12Aは、それぞれ負極用の上刃21として再利用されるところまで再研磨されていない。
【0070】
この場合、一枚目の負極用の下刃22Aおよび一枚目の負極用の上刃21Aは、それぞれその在庫の中から新しい負極用の下刃22および負極用の上刃21と交換される(図7に示す二枚目の負極用の下刃22Bおよび二枚目の負極用の上刃21B参照)。
一枚目の正極用の上下刃11A・12Aは、それぞれそのまま継続して使用される。
【0071】
このとき、一枚目の負極用の下刃22Aは、正極用の上下刃11・12のいずれか一方(図7では正極用の下刃12)の在庫となる(図7に示す一枚目の負極用の下刃22A参照)。
【0072】
図8に示すように、二枚目の負極用の下刃22Bに対して三回目の再研磨を行い、正極用の上下刃11・12として再利用するとき、一枚目の正極用の上下刃11A・12Aに対して、六回目の再研磨が行われる。つまり、一枚目の正極用の上下刃11A・12Aは、それぞれ負極用の上刃21として再利用される。このとき、二枚目の負極用の上刃21Bは、新しい負極用の上刃21と交換されるところまで磨耗している。
【0073】
この場合、二枚目の負極用の下刃22Bは、その在庫の中から新しい刃具と交換される(図8に示す三枚目の負極用の下刃22C参照)。
一枚目の正極用の上下刃11A・12Aは、それぞれ一枚目および二枚目の負極用の下刃22A・22Bと交換される。つまり、二枚目の正極用の上下刃11B・12Bには、それぞれ一枚目および二枚目の負極用の下刃22A・22Bが再利用される(図8に示す一枚目および二枚目の負極用の下刃22A・22B参照)。
二枚目の負極用の上刃21Bは、一枚目の正極用の上下刃11A・12Aのいずれか一方(図8では一枚目の正極用の下刃12A)と交換される。つまり、三枚目の負極用の上刃21Cには、一枚目の正極用の上下刃11A・12Aのいずれか一方が再利用される。一枚目の正極用の上下刃11A・12Aの他方(図8では一枚目の正極用の上刃11A)は、負極用の上刃21の在庫となる。
【0074】
図9に示すように、三枚目の負極用の下刃22Cに対して三回目の再研磨を行い、正極用の上下刃11・12として再利用するとき、三枚目の負極用の上刃21Cは、新しい負極用の上刃21と交換されるところまで磨耗している。
一方、二枚目の正極用の上下刃11B・12Bは、それぞれ負極用の上刃21として再利用されるところまで再研磨されていない。
【0075】
この場合、三枚目の負極用の下刃22Cは、その在庫の中から新しい刃具と交換され、正極用の上下刃11・12のいずれか一方(図9では正極用の下刃12)の在庫となる(図9に示す三枚目および四枚目の負極用の下刃22C・22D参照)。
二枚目の正極用の上下刃11B・12Bは、それぞれそのまま継続して使用される。
三枚目の負極用の上刃21Cは、在庫として待機している一枚目の正極用の上刃11Aと交換される。つまり、四枚目の負極用の上刃21Dには、一枚目の正極用の上刃11Aが再利用される(図9に示す一枚目の正極用の上刃11A参照)。
【0076】
図10に示すように、四枚目の負極用の下刃22Dに対して三回目の再研磨を行い、正極用の上下刃11・12として再利用するとき、二枚目の正極用の上下刃11B・12Bはそれぞれ負極用の上刃21として再利用される。このとき、四枚目の負極用の上刃21Dは、新しい負極用の上刃21と交換されるところまで磨耗している。
【0077】
この場合、四枚目の負極用の下刃22Dは、その在庫の中から新しい刃具と交換される(図10に示す五枚目の負極用の下刃22E参照)。
二枚目の正極用の上下刃11B・12Bは、それぞれ三枚目および四枚目の負極用の下刃22C・22Dと交換される。つまり、三枚目の正極用の上下刃11C・12Cには、それぞれ三枚目および四枚目の負極用の下刃22C・22Dが再利用される(図10に示す三枚目および四枚目の負極用の下刃22C・22D参照)。
四枚目の負極用の上刃21Dは、二枚目の正極用の上下刃11B・12Bのいずれか一方(図10では二枚目の正極用の下刃12B)と交換される。つまり、五枚目の負極用の上刃21Eには、二枚目の正極用の上下刃11B・12Bのいずれか一方が再利用される。二枚目の正極用の上下刃11B・12Bの他方(図10では二枚目の正極用の上刃11B)は、負極用の上刃21の在庫となる。このような二枚目の正極用の上下刃11B・12Bは、それぞれ一枚目および二枚目の負極用の下刃22A・22Bである。
【0078】
このように、負極用の下刃22を四枚使用するとき、正極用の上下刃11・12は、それぞれ二枚ずつ合計四枚使用されることとなる。この場合、二枚目の正極用の上下刃11B・12B以降は、全て負極用の下刃22を再利用したものである。
すなわち、正極用の切断装置10は、上下刃11・12を使用する分だけ上下刃11・12の在庫を保有する必要がない。
【0079】
負極用の上刃21は、二枚目の負極用の上刃21Bを使用するときだけ、在庫の中から新しい負極用の上刃21と交換されることとなるが、三枚目の負極用の上刃21C以降は正極用の上下刃11・12を再利用したものである。
また、正極用の上下刃11・12を負極用の上刃21として再利用するときには、一方の正極用の上下刃11・12を負極用の上刃21として再利用するとともに、他方の正極用の上下刃11・12を負極用の上刃21の在庫として待機させる。
【0080】
つまり、負極用の切断装置20は、一時的に上刃21の在庫から新しい刃具を使用するが、最終的な上刃21の在庫量に変動は生じない(図7および図11参照)。従って、負極用の切断装置20は、上刃21を使用する分だけ上刃21の在庫を保有する必要がない。
【0081】
このように、本実施形態の刃具の再利用方法において負極用の下刃22は、正極用の上下刃11・12および負極用の上刃21の在庫として機能する。
すなわち、本実施形態の刃具の再利用方法を用いた場合には、各金属箔W1・W2を切断する際に使用する刃具の使用量を低減できるため、各金属箔W1・W2の切断に要するコストを低減できる。
【0082】
仮に、再利用前後の刃具の使用枚数が全て同じ枚数とならなかった場合でも、図6に示すように、再利用前の刃具の使用枚数を再利用後の刃具の使用枚数よりも少なくすることで、各切断装置10・20は、余剰在庫を抱えることなく各金属箔W1・W2を切断できる。つまり、各上下刃11・12・21・22の在庫を余らせることなく使用できる。
ただし、刃具をより効率的に再利用できる(負極用の下刃22を使用した分だけ正極用の上下刃11・12以降の刃具を使用することで、刃具の使用量を最小限にできる)という観点から、再利用前後の刃具の使用枚数は、全て同じ枚数であることが好ましい。
【0083】
ここで、使用を開始する前の各上下刃11・12・21・22(つまり新品の各上下刃11・12・21・22)には、刃欠けの発生を抑制するためのコーティング(例えば、DLCコーティング等)が予め施されている。
【0084】
本実施形態では、各上下刃11・12・21・22を再研磨するときに、再研磨後のエッジ11a・12a・21a・22aにコーティングが残っているため、再研磨後に再コーティングを行わない。
すなわち、本実施形態の刃具の再利用方法では、それぞれ再研磨するときに、各上下刃11・12・21・22に対して予め施されているコーティングを引き継いで使用する。これは、負極用の下刃22を正極用の上下刃11・12として再利用するとき、および正極用の上下刃11・12を負極用の上刃21として再利用するときも同様である。
【0085】
これにより、各上下刃11・12・21・22に対するコーティング回数を減らす(負極用の下刃22に対して予め施されるコーティング一回だけで済ませる)ことができ、各金属箔W1・W2の切断に要するコストをさらに低減できる。
【0086】
ここで、各上下刃11・12・21・22は、各金属箔W1・W2の切断中に刃欠け等が発生した場合、各上下刃11・12・21・22を再研磨して前記刃欠け等に対応する必要がある。つまり、各上下刃11・12・21・22は、刃欠け等の発生により想定よりも速く磨耗が進行し、その使用枚数が変動する場合がある。
【0087】
このような場合には、各上下刃11・12・21・22の再研磨回数を調整することで、使用枚数の変動に対応する。
【0088】
例えば、負極用の下刃22で複数回刃欠けが発生し、正極用の上下刃11・12の在庫量が増えてしまった場合、負極用の下刃22の再研磨回数を増やすことで、負極用の下刃22の使用枚数を減らすとともに、正極用の上下刃11・12の使用枚数を増やす(図5参照)。
このように、本実施形態の刃具の再利用方法では、在庫量が増えてしまった再利用前の刃具の在庫を積極的に使用することで、刃欠け等による使用枚数の変動に対応できる。
【0089】
また、正極用の上下刃11・12の在庫量が増えてしまった場合には、負極用の上刃21の再研磨回数を増やすことで、正極用の上下刃11・12の使用枚数を減らしても構わない。この場合、負極用の上刃21を長く使用できる。
負極用の上刃21のような鋭角刃は、矩形刃と比較して刃欠けが発生しやすい。このため、負極用の上刃21を長く使用できるようにすることで、刃欠けによる負極用の上刃21の使用枚数の増加に対応できる。
【0090】
これによれば、各金属箔W1・W2を切断中に刃欠け等が発生し再利用前後の刃具の使用枚数が変動した場合でも、当該変動に対して再利用前後の刃具の使用枚数を合わせることができるため、在庫不足や余剰在庫の発生を防止できる。つまり、本実施形態の刃具の再利用方法は、在庫量を管理して刃具を効率的に再利用できる。
【0091】
仮に、切断する各金属箔W1・W2の材料を変更した場合等には、当該変更した各金属箔W1・W2を切断する各上下刃11・12・21・22の摩耗速度が変動する可能性がある。この場合、再利用前後の刃具の使用枚数が全て同一ではなくなる可能性がある。
【0092】
このような場合でも、刃具の再利用方法では、各上下刃11・12・21・22の再研磨回数を調整することで、使用枚数の変動に対して再利用前後の刃具の使用枚数を合わせることができる。
【0093】
つまり、本実施形態の刃具の再利用方法は、各共有範囲R1・R2を設定することで、刃欠けの発生や材料の変動等による使用枚数の変動に対してロバスト性を持たせることができる。
【0094】
以下では、正極用の上下刃11・12の使用枚数が互いに異なっていた場合(例えば、正極用の金属箔W1を切断したときに、正極用の上刃11の方が正極用の下刃12よりも磨耗が少なかった場合等)の、刃具の再利用方法について説明する。
【0095】
正極用の上下刃11・12の使用枚数が互いに異なっていた場合、図12に示すように、使用枚数の多い方の正極用の下刃12は、単に負極用の下刃22を再利用するだけでは在庫が足りず、その在庫量が減ってしまう。
一方、使用枚数の少ない方の正極用の上刃11は、単に負極用の下刃22を再利用するだけでは負極用の下刃22を再利用しきれない。
この場合、正極用の上下刃11・12を用いる切断装置は、正極用の上刃11の余剰在庫を抱えてしまう。
【0096】
このような場合には、図13に示すように、使用枚数の少ない方の正極用の上刃11の在庫を、使用枚数の多い方の正極用の下刃12として使用する。
【0097】
すなわち、刃具の再利用方法は、正極用の上下刃11・12の中で負極用の下刃22を段階的に使用する(負極用の下刃22→正極用の上刃11の在庫→正極用の下刃12の順に使用する)ことで、正極用の上下刃11・12の最終的な在庫量を調整できる。
【0098】
すなわち、刃具の再利用方法は、正極用の上下刃11・12の中で使用枚数が異なっていた場合でも、正極用の上下刃11・12の中で在庫不足の発生や余剰在庫の発生を防止できる。
【0099】
仮に、正極用の上下刃11・12の一方の使用枚数だけが、他方の正極用の上下刃11・12の使用枚数よりも多くなってしまった場合、一方の正極用の上下刃11・12の余剰在庫が発生する。この場合、一方の正極用の上下刃11・12の在庫を他方の正極用の上下刃11・12として使用するとともに、正極用の上下刃11・12の再研磨回数を減らせばよい。
これにより、余剰在庫の発生を防止できるとともに、負極用の上刃21を長く使用できる。
【0100】
なお、本実施形態では、第二段階だけを、エッジの形状および使用外径範囲が互いに同一となるとともに、互いに異なる使用条件となる正極用の上下刃11・12で構成したが、これに限定されるものでない。
すなわち、刃具の再利用方法では、再利用前の二つ以上の段階を、エッジの形状および使用外径範囲が互いに同一となるとともに、互いに異なる使用条件となる刃具で構成しても構わない。また、再利用前の段階を三つ以上の刃具によって構成しても構わない。
【0101】
このように、刃具の再利用方法では、再利用前の少なくとも一つの段階(本実施形態では第二段階)を、エッジ11a・12aの形状および使用外径範囲R11・R12が互いに同一となるとともに、互いに異なる使用条件となる正極用の上下刃11・12によって構成する。
そして、第二段階にて、正極用の上下刃11・12の在庫を、その在庫量に基づいて、正極用の上下刃11・12に振り分けて使用する。
【0102】
これにより、第二段階において、互いの在庫を使いまわすことができるため、正極用の上下刃11・12の使用枚数のずれに対する調整を行うことができる。
また、前記使用枚数のずれに対する調整により正極用の上下刃11・12の在庫を積極的に使用した場合、負極用の上刃21を長く使用できる。
【0103】
以下では、前述したような再研磨回数の調整を行っても、正極用の上下刃11・12一つ分の使用枚数が、負極用の上下刃21・22一つ分の使用枚数と同程度、あるいは多くなるとともに、負極用の上下刃21・22の使用枚数が互いに同程度である場合の、刃具の再利用方法について説明する。
【0104】
この場合、負極用の上下刃21・22一つ分の使用枚数は、正極用の上下刃11・12の合計使用枚数の半分以下となってしまう。
このような状態で、図4にあるような負極用の下刃22、正極用の上下刃11・12、負極用の上刃21の順に三段階の再利用を行った場合、正極用の切断装置10では、負極用の下刃22を再利用する枚数が足りず、上下刃11・12の在庫が不足してしまう。
また、負極用の切断装置20では、正極用の上下刃11・12を再利用しきれず、上刃21の余剰在庫を抱えてしまう。
【0105】
このような場合、刃具の再利用方法では、図14に示すように、正極用の上下刃11・12を第一段階刃とするとともに、負極用の上下刃21・22を第二段階刃とするように、各上下刃11・12・21・22を再利用する順序を設定する。
そして、正極用の上下刃11・12の外径寸法を、負極用の上下刃21・22の外径寸法よりも大きくなるように設定する。このとき、正極用の上下刃11・12の使用外径範囲R11・R12と、負極用の上下刃21・22の使用外径範囲R21・R22との間に共有範囲を設定する。
【0106】
これによれば、再利用前の刃具の使用枚数を、再利用後の刃具の使用枚数と同じ使用枚数に設定できる、あるいは再利用後の刃具の使用枚数よりも少ない使用枚数に設定できるため、刃具を効率的に再利用できる。
仮に、正極用の上下刃11・12の使用枚数が互いに異なっていた場合、正極用の上下刃11・12の中で在庫を振り分けて使用する。
【0107】
なお、本実施形態の刃具の再利用方法を適用可能な刃具は、本実施形態のような各金属箔W1・W2を切断する略円板状の刃具に限定されるものでない。
すなわち、刃具の再利用方法は、ワークを切断する刃具全般に対して適用可能であり、例えば、二つの略板状の刃具によりワークを挟んで剪断するような切断装置の刃具に対しても適用可能である。このような略板状の刃具の場合には、刃具の長手方向の長さが使用範囲として設定される。
【0108】
ただし、本実施形態の刃具の再利用方法は、本実施形態のような同時並行のラインで一つの電池の正極用および負極用の金属箔W1・W2を切断する各切断装置10・20に用いられる各上下刃11・12・21・22に対して適用することで、各上下刃11・12・21・22の加工量を考慮する必要がなくなる。このため、刃具の再利用を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0109】
10・20 切断装置
11 正極用の上刃(刃具)
11a・12a・21a・22a エッジ
12 正極用の下刃(刃具)
21 負極用の上刃(刃具)
22 負極用の下刃(刃具)
R1・R2 共有範囲
R11・R12・R21・R22 使用外径範囲(使用範囲)
W1・W2 金属箔(ワーク)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを切断する切断装置に用いられる刃具を再研磨して、前記再研磨前の刃具の使用条件とは異なる使用条件の刃具として、前記各刃具を段階的に再利用する刃具の再利用方法であって、
前記各刃具のエッジの形状および前記各刃具の使用枚数に基づいて、前記各刃具を再利用する順序を設定するステップと、
再利用前後の前記各刃具の、前記ワークを切断可能な範囲である使用範囲を設定するとともに、前記再利用前後の各刃具の使用範囲を互いに部分的に重複させて共有範囲を設定するステップと、
前記再利用前後の各刃具の使用枚数を調整するステップと、
を行い、
前記共有範囲は、
前記各刃具において複数回再研磨可能な幅に設定され、
前記再利用前後の各刃具の使用枚数を調整するステップでは、
前記共有範囲の中で前記再利用前の刃具を何回再研磨したときに再利用するかを調整することで、再利用前の前記刃具の使用枚数を、再利用後の前記刃具の使用枚数と同じ使用枚数に設定する、あるいは前記再利用後の前記刃具の使用枚数よりも少ない使用枚数に設定する、
刃具の再利用方法。
【請求項2】
再利用前の少なくとも一つの段階を、前記エッジの形状および前記使用範囲が互いに同一となるとともに、互いに異なる使用条件となる二つ以上の前記刃具によって構成し、
前記再利用前の一つの段階にて、前記エッジの形状および前記使用範囲が互いに同一となる前記各刃具の在庫を、前記各刃具の在庫量に基づいて、前記各刃具に振り分けて使用する、
請求項1に記載の刃具の再利用方法。
【請求項3】
前記各刃具を再研磨するとき、
前記各刃具に対して予め施されるコーティングを引き継いで使用する、
請求項1または請求項2に記載の刃具の再利用方法。
【請求項4】
前記切断装置は、一つの電池の正極用および負極用の金属箔を、上刃および下刃を用いて切断する正極用の切断装置および負極用の切断装置である、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の刃具の再利用方法。
【請求項1】
ワークを切断する切断装置に用いられる刃具を再研磨して、前記再研磨前の刃具の使用条件とは異なる使用条件の刃具として、前記各刃具を段階的に再利用する刃具の再利用方法であって、
前記各刃具のエッジの形状および前記各刃具の使用枚数に基づいて、前記各刃具を再利用する順序を設定するステップと、
再利用前後の前記各刃具の、前記ワークを切断可能な範囲である使用範囲を設定するとともに、前記再利用前後の各刃具の使用範囲を互いに部分的に重複させて共有範囲を設定するステップと、
前記再利用前後の各刃具の使用枚数を調整するステップと、
を行い、
前記共有範囲は、
前記各刃具において複数回再研磨可能な幅に設定され、
前記再利用前後の各刃具の使用枚数を調整するステップでは、
前記共有範囲の中で前記再利用前の刃具を何回再研磨したときに再利用するかを調整することで、再利用前の前記刃具の使用枚数を、再利用後の前記刃具の使用枚数と同じ使用枚数に設定する、あるいは前記再利用後の前記刃具の使用枚数よりも少ない使用枚数に設定する、
刃具の再利用方法。
【請求項2】
再利用前の少なくとも一つの段階を、前記エッジの形状および前記使用範囲が互いに同一となるとともに、互いに異なる使用条件となる二つ以上の前記刃具によって構成し、
前記再利用前の一つの段階にて、前記エッジの形状および前記使用範囲が互いに同一となる前記各刃具の在庫を、前記各刃具の在庫量に基づいて、前記各刃具に振り分けて使用する、
請求項1に記載の刃具の再利用方法。
【請求項3】
前記各刃具を再研磨するとき、
前記各刃具に対して予め施されるコーティングを引き継いで使用する、
請求項1または請求項2に記載の刃具の再利用方法。
【請求項4】
前記切断装置は、一つの電池の正極用および負極用の金属箔を、上刃および下刃を用いて切断する正極用の切断装置および負極用の切断装置である、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の刃具の再利用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−254494(P2012−254494A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128743(P2011−128743)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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