刃具交換式回転工具、その刃具交換式回転工具に用いられる交換刃具およびホルダー
【課題】刃具交換式回転工具において、交換刃具とシャンクとの間の伝達トルクを十分に確保できるようにする。
【解決手段】交換刃具14の取付け面20には、一対の係合凹所22a、24aが軸心O1 に対して点対称となるように互いに平行で、且つ軸心O1 と直角な平面(取付け面20)に対して角度θ1=θ2=5°で互いに反対方向へ傾斜するように設けられており、それ等の係合凹所22a、24aに対応してシャンクの先端面に設けられた係合凸部と嵌合させられ、且つねじ締結によって互いに押圧されることにより、その反対方向への傾斜に基づいて自動的にセンタリングが行われる。また、反対方向への傾斜に基づいてセンタリングが行われることから、係合凹所22a、24aおよび係合凸部の側面の形状を自由に設定することが可能で、且つ、軸断面積が大きいトルク伝達に適した面形状とすることにより、大きな伝達トルクを確保することができる。
【解決手段】交換刃具14の取付け面20には、一対の係合凹所22a、24aが軸心O1 に対して点対称となるように互いに平行で、且つ軸心O1 と直角な平面(取付け面20)に対して角度θ1=θ2=5°で互いに反対方向へ傾斜するように設けられており、それ等の係合凹所22a、24aに対応してシャンクの先端面に設けられた係合凸部と嵌合させられ、且つねじ締結によって互いに押圧されることにより、その反対方向への傾斜に基づいて自動的にセンタリングが行われる。また、反対方向への傾斜に基づいてセンタリングが行われることから、係合凹所22a、24aおよび係合凸部の側面の形状を自由に設定することが可能で、且つ、軸断面積が大きいトルク伝達に適した面形状とすることにより、大きな伝達トルクを確保することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は刃具交換式回転工具に係り、特に、交換刃具とホルダーとの間の伝達トルクを十分に確保することができる刃具交換式回転工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交換刃具がクランプ部材によりホルダーの先端部に着脱可能に一体的に取り付けられ、そのホルダーと共に軸心まわりに回転駆動されることにより、その交換刃具によって所定の加工を行う刃具交換式回転工具が知られている。特許文献1に記載のタップはその一例で、ホルダーの先端面および交換刃具の取付け面の一方および他方には、互いに嵌合される係合凸部および係合凹所が十字状に設けられ、それ等の嵌合により相対回転が確実に阻止されるようになっている。また、それ等の係合凸部および係合凹所の断面は、側面が傾斜した台形とされ、クランプ部材としての取付けねじによる締結で互いに嵌合される際に、その側面同士が互いに係合させられることにより、自動的に同心にセンタリングされるようになっている。
【特許文献1】EP1409185B1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の刃具交換式回転工具においては、係合凸部および係合凹所が十字状に設けられているため、それ等の破損強度の有効断面積を十分に確保することが困難で、十分な伝達トルクを得ることが難しいという問題があった。
【0004】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、刃具交換式回転工具において交換刃具とホルダーとの間の伝達トルクを十分に確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、第1発明は、交換刃具がクランプ部材によりホルダーの先端部に着脱可能に一体的に取り付けられ、そのホルダーと共に軸心まわりに回転駆動されることにより、その交換刃具によって所定の加工を行う刃具交換式回転工具において、(a) 前記ホルダーの先端面、およびその先端面に対面させられる前記交換刃具の取付け面の一方および他方に設けられ、それぞれ長手状を成しているとともにその全長に亘って互いに接触するように嵌合される係合凸部および係合凹所から成る嵌合部を有するとともに、(b) その嵌合部は、前記工具軸心に対して点対称となるように互いに平行に2組以上設けられており、且つ、その点対称の嵌合部は、その長手方向において前記工具軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜させられていることを特徴とする。
【0006】
第2発明は、第1発明の刃具交換式回転工具において、前記嵌合部が前記工具軸心と直角な平面に対して傾斜する傾斜方向は、前記クランプ部材によって軸方向へ押圧されることにより、前記交換刃具が前記ホルダーに対して加工時の回転方向と反対方向へ回転するモーメントが相対的に生じるように定められていることを特徴とする。
【0007】
第3発明は、第1発明または第2発明の刃具交換式回転工具において、前記嵌合部の前記工具軸心と直角な平面に対する傾斜角度は1°〜10°の範囲内であることを特徴とする。
【0008】
第4発明は、第1発明〜第3発明の何れかの刃具交換式回転工具において、前記係合凸部および係合凹所の断面は円弧形状を成していることを特徴とする。
【0009】
第5発明は、第1発明〜第4発明の何れかの刃具交換式回転工具において、前記2組以上の嵌合部の間には、その嵌合部と平行で、且つ前記工具軸心と直角な平面と平行な係合凸部および係合凹所から成る第3の嵌合部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
第6発明は、第1発明〜第5発明の何れかの刃具交換式回転工具において、(a) 前記ホルダーの先端面には、2組の嵌合部の一対の係合凸部がそのホルダーの軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、その軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられており、(b) 前記交換刃具の取付け面には、前記2組の嵌合部の一対の係合凹所がその交換刃具の軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、その軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられていることを特徴とする。
【0011】
第7発明は、第1発明〜第5発明の何れかの刃具交換式回転工具において、(a) 前記ホルダーの先端面には、2組の嵌合部の一対の係合凹所がそのホルダーの軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、その軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられており、(b) 前記交換刃具の取付け面には、前記2組の嵌合部の一対の係合凸部がその交換刃具の軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、その軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられていることを特徴とする。
【0012】
第8発明は、交換刃具がクランプ部材によりホルダーの先端部に着脱可能に一体的に取り付けられ、そのホルダーと共に軸心まわりに回転駆動されることにより、その交換刃具によって所定の加工を行う刃具交換式回転工具において、(a) 前記ホルダーの先端面、および該先端面に対面させられる前記交換刃具の取付け面には、互いに面接触させられる芯出し係合面が工具軸心を挟んで対称的に2組以上設けられているとともに、(b) その対称的な芯出し係合面は、前記クランプ部材によって軸方向へ押圧されることにより、前記工具軸心まわりに相対回転させるモーメントを生じさせるように、その工具軸心と直角な平面に対して互いに反対方向へ傾斜させられており、且つ、(c) 前記ホルダーの先端面および前記交換刃具の取付け面には、前記モーメントの作用で互いに当接させられることにより、そのホルダーとその交換刃具とを前記工具軸心まわりにおいて所定の回転位相に位置決めする当接面が設けられていることを特徴とする。
【0013】
なお、この第8発明は、実質的に第1発明の上位発明と見做すことが可能で、第1発明において互いに接触させられる係合凸部の先端面および係合凹所の溝底面は芯出し係合面に相当し、それ等の側面は当接面に相当する。
【0014】
第9発明は、第8発明の刃具交換式回転工具において、(a) 前記芯出し係合面は、軸方向から見た平面視において工具軸心を通る直線を挟んで互いに接するように2組設けられており、且つ外周縁まで達する半円形状を成しており、(b) 前記当接面は、前記2組の芯出し係合面の境界部分に設けられた段差の壁面であることを特徴とする。
【0015】
第10発明は、第8発明または第9発明の刃具交換式回転工具において、前記芯出し係合面が前記工具軸心と直角な平面に対して傾斜する傾斜方向は、前記クランプ部材によって軸方向へ押圧されることにより、前記交換刃具が前記ホルダーに対して加工時の回転方向と反対方向へ相対的に回転するモーメントを生じさせるように定められていることを特徴とする。
【0016】
第11発明は、第8発明〜第10発明の何れかの刃具交換式回転工具において、前記芯出し係合面の前記工具軸心と直角な平面に対する傾斜角度は1°〜10°の範囲内であることを特徴とする。
【0017】
第12発明は、第1発明〜第11発明の何れかの刃具交換式回転工具に用いられる交換刃具である。具体的には、例えばクランプ部材によりホルダーの先端部に着脱可能に一体的に取り付けられ、そのホルダーと共に軸心まわりに回転駆動されることにより所定の加工を行う刃具交換式回転工具の交換刃具であって、軸心に対して直角で前記ホルダーの先端面に対面させられる取付け面には、そのホルダーの先端面に設けられた一対の長手状の係合凸部および/または係合凹所と長手方向の全長に亘って接触する状態で嵌合させられるように、一対の係合凹所および/または係合凸部が軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、その軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられていることを特徴とする。なお、上記一対の係合凹所および/または係合凸部は、一対の係合凹所、一対の係合凸部、或いは一対の係合凹所および係合凸部の3態様を意味するものである。
また、上記係合凹所および/または係合凸部を設ける代りに、(a) クランプ部材によってホルダーに対して相対的に軸方向へ押圧されることにより、前記工具軸心まわりに相対回転するモーメントが生じるように、その工具軸心と直角な平面に対して互いに反対方向へ傾斜させられた一対の芯出し係合面と、(b) 前記モーメントの作用で前記ホルダー側の当接面に当接させられることにより前記工具軸心まわりにおいて所定の回転位相に位置決めする当接面と、を設けるようにしても良い。
【0018】
第13発明は、第1発明〜第11発明の何れかの刃具交換式回転工具に用いられるホルダーである。具体的には、例えば交換刃具がクランプ部材により先端部に着脱可能に一体的に取り付けられ、軸心まわりに回転駆動されることによりその交換刃具によって所定の加工を行う刃具交換式回転工具のホルダーであって、軸心に対して直角で前記交換刃具の取付け面に対面させられる先端面には、その交換刃具の取付け面に設けられた一対の長手状の係合凸部および/または係合凹所と長手方向の全長に亘って接触する状態で嵌合させられるように、一対の係合凹所および/または係合凸部が軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、その軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられていることを特徴とする。なお、上記一対の係合凹所および/または係合凸部は、一対の係合凹所、一対の係合凸部、或いは一対の係合凹所および係合凸部の3態様を意味するものである。
また、上記係合凹所および/または係合凸部を設ける代りに、(a) クランプ部材によって交換刃具に対して相対的に軸方向へ押圧されることにより、前記工具軸心まわりに相対回転するモーメントが生じるように、該工具軸心と直角な平面に対して互いに反対方向へ傾斜させられた一対の芯出し係合面と、(b) 前記モーメントの作用で前記交換刃具側の当接面に当接させられることにより前記工具軸心まわりにおいて所定の回転位相に位置決めする当接面と、を設けるようにしても良い。
【発明の効果】
【0019】
第1発明の刃具交換式回転工具においては、互いに対面させられるホルダーの先端面および交換刃具の取付け面に、長手状の係合凸部および係合凹所から成る嵌合部が2組以上設けられているとともに、その嵌合部は工具軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ工具軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜させられているため、クランプ部材による締結でそれ等の係合凸部および係合凹所が互いに押圧されると、反対方向への傾斜に基づいて自動的にセンタリングが行われる。すなわち、2組以上の嵌合部の反対方向への傾斜に基づいて工具軸心まわりに相対回転するモーメントが生じるとともに、係合凸部および係合凹所の側面の係合で相対回転が阻止されることにより、両者が所定の回転位相に位置決めされ、これによりその嵌合部の長手方向と直角な方向の芯出しが行われる一方、それ等の嵌合部の反対方向への傾斜でその嵌合部の長手方向の芯出しが同時に行われるのである。これにより、交換刃具をホルダーに対して簡単に同心に取り付けることができる。
【0020】
また、本発明では互いに嵌合される係合凸部および係合凹所の側面を介してトルクが伝達されるが、2組以上の嵌合部の反対方向への傾斜に基づいてセンタリングが行われることから、係合凸部および係合凹所の側面の形状を自由に設定することが可能で、且つ、軸断面積が大きいトルク伝達に適した面形状とすることにより、十字状に嵌合部を設ける場合に比較して大きな伝達トルクを確保することができる。
【0021】
第2発明では、加工時の回転方向と反対方向へ回転するモーメントが生じるように嵌合部の傾斜方向が定められているため、係合凸部および係合凹所のトルク伝達側の側面が係合させられて所定の回転位相に位置決めされるようになり、加工時においてもそれらの側面の係合による位置決め状態が良好に維持され、切削抵抗などで嵌合が緩んで芯ずれ等を生じる恐れがない。
【0022】
第3発明では、嵌合部の傾斜角度が1°〜10°の範囲内であるため、その傾斜によるセンタリング作用が良好に得られる。
【0023】
第4発明では、係合凸部および係合凹所の断面が円弧形状を成しているため、それ等の係合(面圧)の軸方向成分によるセンタリング作用、および軸方向と直角な周方向成分によるトルク伝達作用が共に良好に得られるとともに、有効断面積を大きくして一層大きな伝達トルクを確保することができる。また、上記軸方向と直角な周方向成分は、嵌合部の長手方向と直角な方向のセンタリングを行う作用も有し、同心に芯出しするセンタリング性能が一層向上する。
【0024】
第5発明では、工具軸心と直角な平面と平行に第3の嵌合部が設けられており、その第3の嵌合部はトルク伝達に有効に寄与するため、一層大きな伝達トルクを得ることができる。
【0025】
第8発明の刃具交換式回転工具においては、クランプ部材による締結で軸方向へ押圧されると、互いに反対方向へ傾斜させられた芯出し係合面の作用で工具軸心まわりに相対回転するモーメントが生じるとともに、当接面の当接で所定の回転位相に位置決めされることにより、当接面と直角な方向の芯出しが行われる一方、芯出し係合面の反対方向への傾斜で当接面と平行な方向の芯出しが行われ、ホルダーと交換刃具とが自動的にセンタリングされる。これにより、交換刃具をホルダーに対して簡単に同心に取り付けることができる。
【0026】
また、本発明では当接面を介してトルクが伝達されるが、2組以上の芯出し係合面の傾斜に基づいてセンタリングが行われることから、十字状に嵌合部を設ける場合に比較して、軸断面積を大きくして破損強度を向上させることが可能で、大きな伝達トルクを確保することができる。
【0027】
第9発明では、芯出し係合面が工具軸心を通る直線を挟んで互いに接するように2組設けられており、且つ外周縁まで達する半円形状を成しているとともに、その芯出し係合面の境界部分に設けられた段差の壁面によって当接面が構成されているため、第1発明のように係合凸部および係合凹所から成る嵌合部を設ける場合に比較して形状が簡単になり、製造コストが低減される。
【0028】
第10発明では、加工時の回転方向と反対方向へ回転するモーメントが生じるように芯出し係合面の傾斜方向が定められ、当接面の当接で所定の回転位相に位置決めされるようになっているため、その当接面がトルク伝達面として機能し、加工時においても当接面の当接による位置決め状態が良好に維持され、切削抵抗などで係合が緩んで芯ずれ等を生じる恐れがない。
【0029】
第11発明では、芯出し係合面の傾斜角度が1°〜10°の範囲内であるため、その傾斜によるセンタリング作用が良好に得られる。
【0030】
第12発明の交換刃具、或いは第13発明のホルダーは、上記第1発明〜第11発明の刃具交換式回転工具に用いられるもので、実質的にそれ等の第1発明〜第11発明と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
ここで、交換刃具をホルダーの先端部に着脱可能に一体的に取り付けるためのクランプ部材は、ホルダーの軸心と平行に交換刃具をホルダーの先端面に押圧するように構成され、例えば取付けねじ等のねじ部材が好適に用いられるが、ホルダーの態様に応じて種々のクランプ部材を採用できる。
【0032】
取付けねじで締結する場合、例えばホルダーの先端面には軸心上にねじ穴が設けられるとともに、交換刃具の軸心にはねじ挿通孔が貫通して設けられ、取付けねじが交換刃具のねじ挿通孔内を挿通させられてホルダーのねじ穴に螺合されることにより、交換刃具がホルダーの先端部に一体的に固定されるように構成される。軸心からずれた位置で複数の取付けねじを用いて締結することもできる。
【0033】
交換刃具としては、例えばタップやフライスなどの切れ刃を有する切削用刃具が好適に用いられるが、砥石等の研削用刃具や盛上げタップ等の転造用刃具など、回転駆動されることによって所定の加工を行う種々の交換刃具を採用することができる。
【0034】
ホルダーは、主軸等に取り付けられて回転駆動されるもので、例えばストレートシャンクやテーパシャンク等のシャンクであるが、自動工具交換装置により主軸等に自動的に着脱されるものでも良いなど、種々の態様が可能である。
【0035】
2組の嵌合部の係合凸部および係合凹所は、第6発明や第7発明のように同じもの同士(係合凸部と係合凸部、または係合凹所と係合凹所)をホルダーの先端面および交換刃具の取付け面に設けることが望ましいが、一方の嵌合部の係合凸部および他方の嵌合部の係合凹所をホルダーの先端面に設け、一方の嵌合部の係合凹所および他方の嵌合部の係合凸部を交換刃具の取付け面に設けるなど、種々の態様が可能である。
【0036】
工具軸心に対して点対称となるように2組の嵌合部を設ければ、本発明の効果を享受できるが、例えば4組或いは6組以上の嵌合部を設けることもできる。その場合に、点対称となる2組ずつの嵌合部は必ずしも互いに平行である必要はなく、直角等で交差していても差し支えない。
【0037】
嵌合部を構成している係合凸部および係合凹所は、ホルダーの先端面や交換刃具の取付け面を外周縁から外周縁まで完全に横断するように設けることが望ましいが、外周縁から先端面や取付け面の途中(中間位置)まで設けるだけでも良いし、先端面や取付け面の中間位置に部分的に設けるだけでも良いなど、種々の態様が可能である。但し、センタリングによる相対移動を許容するように、必要に応じて長手方向に所定の遊びを設けることになる。
【0038】
嵌合部の工具軸心と直角な平面に対する傾斜角度は、1°より小さいとセンタリング作用が十分に得られない一方、10°より大きいと係合凸部の突出寸法や係合凹所の深さが大きくなり過ぎて強度が低下する恐れがあるため、第3発明のように1°〜10°の範囲内で設定することが望ましく、2°〜5°程度の範囲内が適当である。第8発明の芯出し係合面の傾斜角度についても同様である。なお、係合凸部および係合凹所の長さ寸法が短い場合など、上記傾斜角度を10°より大きくすることも可能である。
【0039】
係合凸部および係合凹所の断面形状は、第4発明のように円弧形状とすることが望ましいが、直角な四角形状や台形状とすることもできるなど、種々の態様が可能である。円弧形状は、必ずしも真円の円弧を意味するものではなく、楕円形など滑らかに湾曲した形状であれば良い。トルク伝達側の側面を略垂直(軸心と略平行)とし、反対側の側面を傾斜させた鋸歯形状とするなど、中心線に対して非対称としても差し支えない。
【0040】
第2発明、第10発明では、交換刃具がホルダーに対して加工時の回転方向と反対方向へ回転するモーメントが生じるように嵌合部や芯出し係合面の傾斜方向が定められているが、他の発明の実施に際しては反対のモーメントが生じるように傾斜方向を定めることもできる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である刃具交換式回転工具10を示す正面図で、円柱形状のストレートシャンク12と交換刃具14とを備えており、交換刃具14は取付けねじ16によりシャンク12の先端部に同心に且つ着脱可能に一体的に取り付けられている。そして、互いに対面させられているシャンク12の先端面18および交換刃具14の取付け面20には、2組の嵌合部22、24が設けられており、その2組の嵌合部22、24の嵌合により交換刃具14はシャンク12に対して同心にセンタリングされ、且つ相対回転不能に結合されるようになっている。シャンク12はホルダーに相当し、取付けねじ16はクランプ部材に相当する。
【0042】
図2および図3は交換刃具14を示す図で、図2の(a) は縦断面図、(b) は(a) の下端面である取付け面20側から見た平面図、(c) は(a) とは逆に取付け面20が上向きで(b) の下方から見た正面図、(d) は(b) の右方向から見た側面図である。また、図3は取付け面20を上にした姿勢で、斜め上方から見た斜視図である。この交換刃具14は、例えばめねじを切削加工する切削用タップで、切れ刃等が設けられた刃部30と、円柱形状の連結座32とを同心に一体に備えているとともに、軸心O1 と同心にねじ挿通孔34が貫通して設けられ、前記取付けねじ16が挿通させられるようになっている。刃部20には、図示は省略するが、外周面におねじが設けられるとともに、そのおねじを分断するように複数のねじれ溝が設けられ、且つ、そのねじれ溝から周方向に二番取り加工が施されることにより、めねじを切削加工するための複数の切れ刃が形成されている。連結座32の端面は、シャンク12の先端面18に対して対面させられる前記取付け面20で、軸心O1 に対して直角な平坦面である。
【0043】
図4はシャンク12を示す図で、(a) は(b) の上方から見た平面図、(b) は一部を切り欠いた正面図で前記図1に対応する図であり、(c) は(b) の左側すなわちシャンク12の先端側から見た端面図である。シャンク12には、その先端面18側から軸心O2 と同心にねじ穴36が設けられており、前記取付けねじ16が螺合されることにより、交換刃具14が同心に且つ着脱可能に一体的に取り付けられる。そして、交換刃具14がシャンク12と共に、シャンク12側から見て軸心O2 (O1 )の右まわりに回転駆動されることにより、所定の切削加工が行われる。本実施例の交換刃具14はタップで、めねじの切削加工を行うことができるが、交換刃具14を交換することにより諸元が異なる種々のめねじを切削加工できるとともに、タップ以外の交換刃具を取り付けて他の切削加工やその他の加工を行うことも可能である。このように共通のシャンク12を用いて複数種類の加工を行うことができるため、工具コストが低減される。シャンク12の軸心O2 は工具軸心に相当し、交換刃具14が取り付けられた状態においては、その交換刃具14の軸心O1 も工具軸心と一致する。また、先端面18は、軸心O2 に対して直角な平坦面である。
【0044】
図5は、取付けねじ16を示す図で、(a) は(b) の左側すなわち頭部38側から見た端面図、(b) は正面図であり、頭部38に設けられたリセスに工具が掛止されて回転操作されることにより、前記ねじ穴36に螺合されるようになっている。
【0045】
一方、前記嵌合部22、24は、交換刃具14の取付け面20に設けられた長手状の係合凹所22a、24aと、その係合凹所22a、24aに対応してシャンク12の先端面18に設けられた係合凸部22b、24bとから構成されている。これ等の係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bの長手方向と直角な断面形状は、略同一の円弧形状を成しているとともに、長手方向の全長に亘って互いに略面接触させられるように設けられている。また、これ等の係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bは、それぞれ軸心O1 、O2 に対して点対称となるように互いに平行に設けられており、且つ、長手方向において軸心O1 、O2 と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜させられている。
【0046】
係合凹所22a、24aについて具体的に説明すると、図2(b) の平面図において、係合凹所22a、24aの中心線S1 、S2 は互いに平行である一方、図2(c) の正面図において、中心線S1 は軸心O1 と直角な取付け面20に対して傾斜角度θ1で左下がりに傾斜させられ、中心線S2 は取付け面20に対して傾斜角度θ2で右下がりに傾斜させられており、且つ、それ等の傾斜角度θ1=θ2である。これ等の中心線S1 、S2 の傾斜方向は、前記取付けねじ16による締結で軸方向へ押圧されることにより、交換刃具14がシャンク12に対して加工時の回転方向と反対方向、具体的には図2(b) の平面図において軸心O1 の左まわり方向、のモーメントが相対的に生じるように定められており、そのモーメントで係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bの側面が互いに係合する所定の回転位相に位置決めされる。この時係合させられる側面は、加工時にトルクが伝達される側の側面である。傾斜角度θ1、θ2は1°〜10°の範囲内で、本実施例では約5°であり、中心線S1 とS2 との交差角度は約10°である。このような係合凹所22a、24aは、例えば外周研削面が凸円弧形状とされた研削砥石を用いて、取付け面20に対して接近または離間させて深さを直線的に変化させながら研削加工を行うことにより、簡単に形成できる。
【0047】
このような本実施例の刃具交換式回転工具10においては、互いに対面させられるシャンク12の先端面18および交換刃具14の取付け面20に、長手状の係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bから成る2組の嵌合部22、24が設けられているとともに、その2組の嵌合部22、24は軸心O1 、O2 に対して点対称となるように互いに平行で、且つ軸心O1 、O2 と直角な平面に対して同じ傾斜角度θ1、θ2で互いに反対方向へ傾斜させられているため、取付けねじ16による締結でそれ等の係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bが互いに押圧されると、その反対方向への傾斜に基づいて自動的にセンタリングが行われる。すなわち、反対方向への傾斜に基づいて工具軸心O1 、O2 まわりに相対回転するモーメントが生じるとともに、係合凸部22b、24bおよび係合凹所22a、24aの側面の係合で相対回転が阻止されることにより、両者が所定の回転位相に位置決めされ、これによりその嵌合部22、24の長手方向と直角な方向、すなわち図2(b) における上下方向の芯出しが行われる一方、それ等の嵌合部22、24の反対方向への傾斜でその嵌合部22、24の長手方向、すなわち図2(b) における左右方向の芯出しが同時に行われるのである。これにより、交換刃具14をシャンク12に対して簡単に同心に取り付けることができる。
【0048】
また、本実施例では互いに嵌合される係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bの側面を介してトルクが伝達されるが、2組の嵌合部22、24の反対方向への傾斜に基づいてセンタリングが行われることから、係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bの側面の形状を自由に設定することが可能で、且つ、軸断面積が大きいトルク伝達に適した面形状とすることにより、十字状に嵌合部を設ける場合に比較して大きな伝達トルクを確保することができる。これにより、強度が向上し、工具寿命が長くなるとともに、高能率加工など負荷の大きな加工条件下で加工を行うことができる。因みに、本発明では軸断面積の1/2以上の破損強度断面積を確保することができるが、従来は軸断面積の1/2より少なく、十分なトルク伝達強度を得ることができなかった。
【0049】
また、本実施例では、取付けねじ16による締結で軸方向へ押圧されることにより、交換刃具14がシャンク12に対して加工時の回転方向と反対方向、具体的には図2(b) の平面図において軸心O1 の左まわり方向、のモーメントが相対的に生じるように、嵌合部22、24の傾斜方向が定められているため、係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bのトルク伝達側の側面が係合させられて所定の回転位相に位置決めされるようになり、加工時においてもそれらの側面の係合による位置決め状態が良好に維持され、切削抵抗で嵌合が緩んで芯ずれ等を生じる恐れがない。
【0050】
また、本実施例では、係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bの断面が円弧形状を成しているため、それ等の係合(面圧)の軸心O1 、O2 と平行な軸方向成分によるセンタリング作用、およびその軸方向と直角な周方向成分によるトルク伝達作用が共に良好に得られるとともに、有効断面積を大きくして一層大きな伝達トルクを確保することができる。上記軸方向と直角な周方向成分は、嵌合部22、24の長手方向と直角な方向(図2(b) の上下方向)のセンタリングを行う作用も有し、同心に芯出しするセンタリング性能が一層向上する。
【0051】
また、本実施例では、2組の嵌合部22、24の傾斜角度θ1、θ2が約5°であるため、その傾斜によるセンタリング作用が良好に得られる。
【0052】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0053】
図6は、前記図2に対応する図で、この交換刃具50には、前記2組の嵌合部22、24の係合凹所22a、24aの他に、第3の嵌合部52の係合凹所52aが設けられている。この係合凹所52aは、図6(b) の平面図において、係合凹所22a、24aと平行で且つそれ等の係合凹所22a、24aの中間位置、すなわち軸心O1 と直交するように設けられているとともに、断面は円弧形状を成している。また、この係合凹所52aは、軸心O1 と直角な平面(取付け面20)と平行に設けられており、トルク伝達に有効に寄与する。なお、図示は省略するが、シャンク12の先端面18には、この係合凹所52aに対応する形状の係合凸部52bが設けられ、係合凹所52aと共に嵌合部52を構成している。
【0054】
本実施例では、2組の嵌合部22、24の間に、軸心O1 、O2 と直角な平面と平行に第3の嵌合部52が設けられており、その第3の嵌合部52はトルク伝達に有効に寄与するため、一層大きな伝達トルクを得ることができる。
【0055】
図7は、前記図2に対応する図で、この交換刃具60の一対の係合凹所22a、24aは、長さ寸法が短くて取付け面20の外周縁から中間位置まで達しているだけであるとともに、傾斜角度θ1、θ2は、図2の実施例よりも大きくて約2倍(10°程度)である。なお、シャンク12の先端面18に設けられる係合凸部22b、24bは、上記係合凹所22a、24aに対応する形状を成している。
【0056】
本実施例では、係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bの長さ寸法が短いものの、傾斜角度θ1、θ2が大きいため、前記第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0057】
図8は、前記図2に対応する図で、この実施例は、交換刃具70の取付け面20に嵌合部22、24の係合凸部22b、24bが設けられ、図示しないシャンク12の先端面18に係合凹所22a、24aが設けられた場合で、本実施例でも前記第1実施例と同様の作用効果が得られる。なお、傾斜角度θ1=θ2=5°である。
【0058】
図9は、前記図2に対応する図で、この実施例は、交換刃具80の取付け面20に嵌合部22の係合凹所22aおよび嵌合部24の係合凸部24bが設けられ、図示しないシャンク12の先端面18に嵌合部22の係合凸部22bおよび嵌合部24の係合凹所24aが設けられた場合で、本実施例でも前記第1実施例と同様の作用効果が得られる。なお、傾斜角度θ1=θ2=5°である。
【0059】
図10は、更に別の実施例の交換刃具90を示す図で、(a) は取付け面20側を上向きにした斜視図で、前記図3に相当する図である。また、(b) は取付け面20側から見た平面図、(c) は(b) の下方から見た正面図で、それぞれ図2の(b) 、(c) に相当する図である。この交換刃具90の取付け面20には、(b) から明らかなように軸方向から見た平面視において軸心O1 を通る直線を挟んで互いに接しているとともに、それぞれ外周縁まで達する半円形状を成す一対の芯出し係合面92、94が設けられている。この芯出し係合面92、94は、軸心O1 を挟んで対称的に設けられており、前記取付けねじ16によりシャンク12に対して軸方向へ相対的に押圧されることにより、軸心O1 まわりに相対回転させるモーメントを生じさせるように、その軸心O1 と直角な平面に対して互いに反対方向へ傾斜角度θ1、θ2で傾斜させられているとともに、それ等の芯出し係合面92、94の境界部分には、軸心O1 と平行な平坦な壁面を有する段差96、98が形成されている。上記芯出し係合面92、94は、平面視における境界線と平行な方向(図10の(b) における左右方向)において軸方向へ傾斜させられているとともに、その傾斜方向は、軸方向へ押圧されることにより交換刃具90がシャンク12に対して加工時の回転方向と反対方向(図10(b) における軸心O1 の左まわり)へ相対的に回転するモーメントを生じさせるように定められており、傾斜角度θ1=θ2=5°である。
【0060】
一方、図示は省略するが、前記シャンク12の先端面18には、上記芯出し係合面92、94に対応して一対の芯出し係合面が設けられており、取付けねじ16による締結でそれ等の芯出し係合面92、94と面接触させられることにより、前記モーメントを生じさせる。シャンク12の先端面18にはまた、段差96、98に対応して一対の段差が設けられており、上記モーメントの作用で交換刃具90がシャンク12に対して加工時の回転方向と反対方向(図10(b) における軸心O1 の左まわり)へ相対的に回転させられると、それ等の段差96、98に当接させられ、交換刃具90をシャンク12に対して所定の回転位相に位置決めする。これ等の段差96、98の壁面は当接面に相当し、面接触させられるとともに、本実施例では加工時のトルク伝達面としても機能する。
【0061】
本実施例においても、取付けねじ16による締結で軸方向へ押圧されると、互いに反対方向へ傾斜させられた芯出し係合面92、94の作用で軸心O1 まわりに相対回転するモーメントが生じ、段差96、98の当接で所定の回転位相に位置決めされることにより、境界線(段差96、98)と直角な方向(図10の(b) における上下方向)の芯出しが行われるとともに、芯出し係合面92、94の反対方向への傾斜で境界線と平行な方向(図10の(b) における左右方向)の芯出しが行われ、シャンク12と交換刃具90とが自動的にセンタリングされる。これにより、交換刃具90をシャンク12に対して簡単に同心に取り付けることができる。
【0062】
また、本実施例では段差96、98を介して加工時のトルクが伝達されるが、一対の芯出し係合面92、94の傾斜に基づいてセンタリングが行われることから、十字状に嵌合部を設ける場合に比較して、軸断面積を大きくして破損強度を向上させることが可能で、大きな伝達トルクを確保することができる。
【0063】
また、本実施例では芯出し係合面92、94が軸心O1 を通る直線(境界線)を挟んで互いに接するように設けられており、且つ外周縁まで達する半円形状を成しているとともに、その芯出し係合面92、94の境界部分に設けられた段差96、98の壁面によって当接面が構成されているため、前記実施例のように係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bから成る嵌合部22、24を設ける場合に比較して形状が簡単になり、製造コストが低減される。
【0064】
また、本実施例では、交換刃具90が加工時の回転方向と反対方向へ回転するモーメントが生じるように芯出し係合面92、94の傾斜方向が定められ、段差96、98の当接で所定の回転位相に位置決めされるとともに、その段差96、98はトルク伝達面としても機能するため、加工時においても段差96、98の当接による位置決め状態が良好に維持され、切削抵抗などで係合(当接)が緩んで芯ずれ等を生じる恐れがない。
【0065】
また、本実施例では芯出し係合面92、94の傾斜角度θ1、θ2が約5°であるため、その傾斜によるセンタリング作用が良好に得られる。
【0066】
なお、上記図10の実施例では一対の芯出し係合面92、94が、平面視における境界線と平行な方向(図10の(b) における左右方向)において軸方向へ傾斜しているだけであったが、図11に示す交換刃具100のように、それ等の芯出し係合面92、94を、更に境界線から離間するに従って軸方向の下方へ傾斜角度φ1=φ2で傾斜させることも可能である。この場合には、その境界線から離間する方向の傾斜により、境界線と直角方向のセンタリング作用が得られるようになり、境界線と平行な方向の傾斜と相まって同心に芯出しするセンタリング性能が一層向上する。傾斜角度φ1、φ2は、例えば前記傾斜角度θ1、θ2と同様に1°〜10°程度の範囲内で設定することが望ましく、この場合の芯出し係合面92、94の傾斜方向は、傾斜角度θ1、θ2と傾斜角度φ1、φ2とを合成した方向となる。図11の(a) は取付け面20側を上向きにした斜視図で、(b) は(a) におけるB−B断面を示す図である。
【0067】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施例である刃具交換式回転工具を示す正面図である。
【図2】図1の実施例の交換刃具を示す図で、(a) は縦断面図、(b) は(a) の下端面である取付け面側から見た平面図、(c) は(a) とは逆に取付け面が上向きで(b) の下方から見た正面図、(d) は(b) の右方向から見た側面図である。
【図3】図2の交換刃具を取付け面側から見た斜視図である。
【図4】図1の実施例のシャンクを示す図で、(a) は(b) の上方から見た平面図、(b) は一部を切り欠いた正面図、(c) は(b) の左側すなわち先端面側から見た端面図である。
【図5】図1の実施例の取付けねじを示す図で、(a) は(b) の左側すなわち頭部側から見た端面図、(b) は正面図である。
【図6】本発明の他の実施例を説明する図で、交換刃具を示す図であり、図2に対応する図である。
【図7】本発明の更に別の実施例を説明する図で、交換刃具を示す図であり、図2に対応する図である。
【図8】本発明の更に別の実施例を説明する図で、交換刃具を示す図であり、図2に対応する図である。
【図9】本発明の更に別の実施例を説明する図で、交換刃具を示す図であり、図2に対応する図である。
【図10】本発明の更に別の実施例を説明する図で、交換刃具を示す図であり、(a) は取付け面側を上向きにした斜視図、(b) は取付け面側から見た平面図、(c) は(b) の下方から見た正面図である。
【図11】本発明の更に別の実施例を説明する図で、交換刃具を示す図であり、(a) は取付け面側を上向きにした斜視図、(b) は(a) におけるB−B断面を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
10:刃具交換式回転工具 12:シャンク(ホルダー) 14、50、60、70、80、90、100:交換刃具 16:取付けねじ(クランプ部材) 18:先端面 20:取付け面 22、24:2組の嵌合部 22a、24a:係合凹所 22b、24b:係合凸部 52:第3の嵌合部 92、94:芯出し係合面 96、98:段差(当接面) θ1、θ2:傾斜角度 O1 、O2 :軸心(工具軸心)
【技術分野】
【0001】
本発明は刃具交換式回転工具に係り、特に、交換刃具とホルダーとの間の伝達トルクを十分に確保することができる刃具交換式回転工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交換刃具がクランプ部材によりホルダーの先端部に着脱可能に一体的に取り付けられ、そのホルダーと共に軸心まわりに回転駆動されることにより、その交換刃具によって所定の加工を行う刃具交換式回転工具が知られている。特許文献1に記載のタップはその一例で、ホルダーの先端面および交換刃具の取付け面の一方および他方には、互いに嵌合される係合凸部および係合凹所が十字状に設けられ、それ等の嵌合により相対回転が確実に阻止されるようになっている。また、それ等の係合凸部および係合凹所の断面は、側面が傾斜した台形とされ、クランプ部材としての取付けねじによる締結で互いに嵌合される際に、その側面同士が互いに係合させられることにより、自動的に同心にセンタリングされるようになっている。
【特許文献1】EP1409185B1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の刃具交換式回転工具においては、係合凸部および係合凹所が十字状に設けられているため、それ等の破損強度の有効断面積を十分に確保することが困難で、十分な伝達トルクを得ることが難しいという問題があった。
【0004】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、刃具交換式回転工具において交換刃具とホルダーとの間の伝達トルクを十分に確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、第1発明は、交換刃具がクランプ部材によりホルダーの先端部に着脱可能に一体的に取り付けられ、そのホルダーと共に軸心まわりに回転駆動されることにより、その交換刃具によって所定の加工を行う刃具交換式回転工具において、(a) 前記ホルダーの先端面、およびその先端面に対面させられる前記交換刃具の取付け面の一方および他方に設けられ、それぞれ長手状を成しているとともにその全長に亘って互いに接触するように嵌合される係合凸部および係合凹所から成る嵌合部を有するとともに、(b) その嵌合部は、前記工具軸心に対して点対称となるように互いに平行に2組以上設けられており、且つ、その点対称の嵌合部は、その長手方向において前記工具軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜させられていることを特徴とする。
【0006】
第2発明は、第1発明の刃具交換式回転工具において、前記嵌合部が前記工具軸心と直角な平面に対して傾斜する傾斜方向は、前記クランプ部材によって軸方向へ押圧されることにより、前記交換刃具が前記ホルダーに対して加工時の回転方向と反対方向へ回転するモーメントが相対的に生じるように定められていることを特徴とする。
【0007】
第3発明は、第1発明または第2発明の刃具交換式回転工具において、前記嵌合部の前記工具軸心と直角な平面に対する傾斜角度は1°〜10°の範囲内であることを特徴とする。
【0008】
第4発明は、第1発明〜第3発明の何れかの刃具交換式回転工具において、前記係合凸部および係合凹所の断面は円弧形状を成していることを特徴とする。
【0009】
第5発明は、第1発明〜第4発明の何れかの刃具交換式回転工具において、前記2組以上の嵌合部の間には、その嵌合部と平行で、且つ前記工具軸心と直角な平面と平行な係合凸部および係合凹所から成る第3の嵌合部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
第6発明は、第1発明〜第5発明の何れかの刃具交換式回転工具において、(a) 前記ホルダーの先端面には、2組の嵌合部の一対の係合凸部がそのホルダーの軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、その軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられており、(b) 前記交換刃具の取付け面には、前記2組の嵌合部の一対の係合凹所がその交換刃具の軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、その軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられていることを特徴とする。
【0011】
第7発明は、第1発明〜第5発明の何れかの刃具交換式回転工具において、(a) 前記ホルダーの先端面には、2組の嵌合部の一対の係合凹所がそのホルダーの軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、その軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられており、(b) 前記交換刃具の取付け面には、前記2組の嵌合部の一対の係合凸部がその交換刃具の軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、その軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられていることを特徴とする。
【0012】
第8発明は、交換刃具がクランプ部材によりホルダーの先端部に着脱可能に一体的に取り付けられ、そのホルダーと共に軸心まわりに回転駆動されることにより、その交換刃具によって所定の加工を行う刃具交換式回転工具において、(a) 前記ホルダーの先端面、および該先端面に対面させられる前記交換刃具の取付け面には、互いに面接触させられる芯出し係合面が工具軸心を挟んで対称的に2組以上設けられているとともに、(b) その対称的な芯出し係合面は、前記クランプ部材によって軸方向へ押圧されることにより、前記工具軸心まわりに相対回転させるモーメントを生じさせるように、その工具軸心と直角な平面に対して互いに反対方向へ傾斜させられており、且つ、(c) 前記ホルダーの先端面および前記交換刃具の取付け面には、前記モーメントの作用で互いに当接させられることにより、そのホルダーとその交換刃具とを前記工具軸心まわりにおいて所定の回転位相に位置決めする当接面が設けられていることを特徴とする。
【0013】
なお、この第8発明は、実質的に第1発明の上位発明と見做すことが可能で、第1発明において互いに接触させられる係合凸部の先端面および係合凹所の溝底面は芯出し係合面に相当し、それ等の側面は当接面に相当する。
【0014】
第9発明は、第8発明の刃具交換式回転工具において、(a) 前記芯出し係合面は、軸方向から見た平面視において工具軸心を通る直線を挟んで互いに接するように2組設けられており、且つ外周縁まで達する半円形状を成しており、(b) 前記当接面は、前記2組の芯出し係合面の境界部分に設けられた段差の壁面であることを特徴とする。
【0015】
第10発明は、第8発明または第9発明の刃具交換式回転工具において、前記芯出し係合面が前記工具軸心と直角な平面に対して傾斜する傾斜方向は、前記クランプ部材によって軸方向へ押圧されることにより、前記交換刃具が前記ホルダーに対して加工時の回転方向と反対方向へ相対的に回転するモーメントを生じさせるように定められていることを特徴とする。
【0016】
第11発明は、第8発明〜第10発明の何れかの刃具交換式回転工具において、前記芯出し係合面の前記工具軸心と直角な平面に対する傾斜角度は1°〜10°の範囲内であることを特徴とする。
【0017】
第12発明は、第1発明〜第11発明の何れかの刃具交換式回転工具に用いられる交換刃具である。具体的には、例えばクランプ部材によりホルダーの先端部に着脱可能に一体的に取り付けられ、そのホルダーと共に軸心まわりに回転駆動されることにより所定の加工を行う刃具交換式回転工具の交換刃具であって、軸心に対して直角で前記ホルダーの先端面に対面させられる取付け面には、そのホルダーの先端面に設けられた一対の長手状の係合凸部および/または係合凹所と長手方向の全長に亘って接触する状態で嵌合させられるように、一対の係合凹所および/または係合凸部が軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、その軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられていることを特徴とする。なお、上記一対の係合凹所および/または係合凸部は、一対の係合凹所、一対の係合凸部、或いは一対の係合凹所および係合凸部の3態様を意味するものである。
また、上記係合凹所および/または係合凸部を設ける代りに、(a) クランプ部材によってホルダーに対して相対的に軸方向へ押圧されることにより、前記工具軸心まわりに相対回転するモーメントが生じるように、その工具軸心と直角な平面に対して互いに反対方向へ傾斜させられた一対の芯出し係合面と、(b) 前記モーメントの作用で前記ホルダー側の当接面に当接させられることにより前記工具軸心まわりにおいて所定の回転位相に位置決めする当接面と、を設けるようにしても良い。
【0018】
第13発明は、第1発明〜第11発明の何れかの刃具交換式回転工具に用いられるホルダーである。具体的には、例えば交換刃具がクランプ部材により先端部に着脱可能に一体的に取り付けられ、軸心まわりに回転駆動されることによりその交換刃具によって所定の加工を行う刃具交換式回転工具のホルダーであって、軸心に対して直角で前記交換刃具の取付け面に対面させられる先端面には、その交換刃具の取付け面に設けられた一対の長手状の係合凸部および/または係合凹所と長手方向の全長に亘って接触する状態で嵌合させられるように、一対の係合凹所および/または係合凸部が軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、その軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられていることを特徴とする。なお、上記一対の係合凹所および/または係合凸部は、一対の係合凹所、一対の係合凸部、或いは一対の係合凹所および係合凸部の3態様を意味するものである。
また、上記係合凹所および/または係合凸部を設ける代りに、(a) クランプ部材によって交換刃具に対して相対的に軸方向へ押圧されることにより、前記工具軸心まわりに相対回転するモーメントが生じるように、該工具軸心と直角な平面に対して互いに反対方向へ傾斜させられた一対の芯出し係合面と、(b) 前記モーメントの作用で前記交換刃具側の当接面に当接させられることにより前記工具軸心まわりにおいて所定の回転位相に位置決めする当接面と、を設けるようにしても良い。
【発明の効果】
【0019】
第1発明の刃具交換式回転工具においては、互いに対面させられるホルダーの先端面および交換刃具の取付け面に、長手状の係合凸部および係合凹所から成る嵌合部が2組以上設けられているとともに、その嵌合部は工具軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ工具軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜させられているため、クランプ部材による締結でそれ等の係合凸部および係合凹所が互いに押圧されると、反対方向への傾斜に基づいて自動的にセンタリングが行われる。すなわち、2組以上の嵌合部の反対方向への傾斜に基づいて工具軸心まわりに相対回転するモーメントが生じるとともに、係合凸部および係合凹所の側面の係合で相対回転が阻止されることにより、両者が所定の回転位相に位置決めされ、これによりその嵌合部の長手方向と直角な方向の芯出しが行われる一方、それ等の嵌合部の反対方向への傾斜でその嵌合部の長手方向の芯出しが同時に行われるのである。これにより、交換刃具をホルダーに対して簡単に同心に取り付けることができる。
【0020】
また、本発明では互いに嵌合される係合凸部および係合凹所の側面を介してトルクが伝達されるが、2組以上の嵌合部の反対方向への傾斜に基づいてセンタリングが行われることから、係合凸部および係合凹所の側面の形状を自由に設定することが可能で、且つ、軸断面積が大きいトルク伝達に適した面形状とすることにより、十字状に嵌合部を設ける場合に比較して大きな伝達トルクを確保することができる。
【0021】
第2発明では、加工時の回転方向と反対方向へ回転するモーメントが生じるように嵌合部の傾斜方向が定められているため、係合凸部および係合凹所のトルク伝達側の側面が係合させられて所定の回転位相に位置決めされるようになり、加工時においてもそれらの側面の係合による位置決め状態が良好に維持され、切削抵抗などで嵌合が緩んで芯ずれ等を生じる恐れがない。
【0022】
第3発明では、嵌合部の傾斜角度が1°〜10°の範囲内であるため、その傾斜によるセンタリング作用が良好に得られる。
【0023】
第4発明では、係合凸部および係合凹所の断面が円弧形状を成しているため、それ等の係合(面圧)の軸方向成分によるセンタリング作用、および軸方向と直角な周方向成分によるトルク伝達作用が共に良好に得られるとともに、有効断面積を大きくして一層大きな伝達トルクを確保することができる。また、上記軸方向と直角な周方向成分は、嵌合部の長手方向と直角な方向のセンタリングを行う作用も有し、同心に芯出しするセンタリング性能が一層向上する。
【0024】
第5発明では、工具軸心と直角な平面と平行に第3の嵌合部が設けられており、その第3の嵌合部はトルク伝達に有効に寄与するため、一層大きな伝達トルクを得ることができる。
【0025】
第8発明の刃具交換式回転工具においては、クランプ部材による締結で軸方向へ押圧されると、互いに反対方向へ傾斜させられた芯出し係合面の作用で工具軸心まわりに相対回転するモーメントが生じるとともに、当接面の当接で所定の回転位相に位置決めされることにより、当接面と直角な方向の芯出しが行われる一方、芯出し係合面の反対方向への傾斜で当接面と平行な方向の芯出しが行われ、ホルダーと交換刃具とが自動的にセンタリングされる。これにより、交換刃具をホルダーに対して簡単に同心に取り付けることができる。
【0026】
また、本発明では当接面を介してトルクが伝達されるが、2組以上の芯出し係合面の傾斜に基づいてセンタリングが行われることから、十字状に嵌合部を設ける場合に比較して、軸断面積を大きくして破損強度を向上させることが可能で、大きな伝達トルクを確保することができる。
【0027】
第9発明では、芯出し係合面が工具軸心を通る直線を挟んで互いに接するように2組設けられており、且つ外周縁まで達する半円形状を成しているとともに、その芯出し係合面の境界部分に設けられた段差の壁面によって当接面が構成されているため、第1発明のように係合凸部および係合凹所から成る嵌合部を設ける場合に比較して形状が簡単になり、製造コストが低減される。
【0028】
第10発明では、加工時の回転方向と反対方向へ回転するモーメントが生じるように芯出し係合面の傾斜方向が定められ、当接面の当接で所定の回転位相に位置決めされるようになっているため、その当接面がトルク伝達面として機能し、加工時においても当接面の当接による位置決め状態が良好に維持され、切削抵抗などで係合が緩んで芯ずれ等を生じる恐れがない。
【0029】
第11発明では、芯出し係合面の傾斜角度が1°〜10°の範囲内であるため、その傾斜によるセンタリング作用が良好に得られる。
【0030】
第12発明の交換刃具、或いは第13発明のホルダーは、上記第1発明〜第11発明の刃具交換式回転工具に用いられるもので、実質的にそれ等の第1発明〜第11発明と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
ここで、交換刃具をホルダーの先端部に着脱可能に一体的に取り付けるためのクランプ部材は、ホルダーの軸心と平行に交換刃具をホルダーの先端面に押圧するように構成され、例えば取付けねじ等のねじ部材が好適に用いられるが、ホルダーの態様に応じて種々のクランプ部材を採用できる。
【0032】
取付けねじで締結する場合、例えばホルダーの先端面には軸心上にねじ穴が設けられるとともに、交換刃具の軸心にはねじ挿通孔が貫通して設けられ、取付けねじが交換刃具のねじ挿通孔内を挿通させられてホルダーのねじ穴に螺合されることにより、交換刃具がホルダーの先端部に一体的に固定されるように構成される。軸心からずれた位置で複数の取付けねじを用いて締結することもできる。
【0033】
交換刃具としては、例えばタップやフライスなどの切れ刃を有する切削用刃具が好適に用いられるが、砥石等の研削用刃具や盛上げタップ等の転造用刃具など、回転駆動されることによって所定の加工を行う種々の交換刃具を採用することができる。
【0034】
ホルダーは、主軸等に取り付けられて回転駆動されるもので、例えばストレートシャンクやテーパシャンク等のシャンクであるが、自動工具交換装置により主軸等に自動的に着脱されるものでも良いなど、種々の態様が可能である。
【0035】
2組の嵌合部の係合凸部および係合凹所は、第6発明や第7発明のように同じもの同士(係合凸部と係合凸部、または係合凹所と係合凹所)をホルダーの先端面および交換刃具の取付け面に設けることが望ましいが、一方の嵌合部の係合凸部および他方の嵌合部の係合凹所をホルダーの先端面に設け、一方の嵌合部の係合凹所および他方の嵌合部の係合凸部を交換刃具の取付け面に設けるなど、種々の態様が可能である。
【0036】
工具軸心に対して点対称となるように2組の嵌合部を設ければ、本発明の効果を享受できるが、例えば4組或いは6組以上の嵌合部を設けることもできる。その場合に、点対称となる2組ずつの嵌合部は必ずしも互いに平行である必要はなく、直角等で交差していても差し支えない。
【0037】
嵌合部を構成している係合凸部および係合凹所は、ホルダーの先端面や交換刃具の取付け面を外周縁から外周縁まで完全に横断するように設けることが望ましいが、外周縁から先端面や取付け面の途中(中間位置)まで設けるだけでも良いし、先端面や取付け面の中間位置に部分的に設けるだけでも良いなど、種々の態様が可能である。但し、センタリングによる相対移動を許容するように、必要に応じて長手方向に所定の遊びを設けることになる。
【0038】
嵌合部の工具軸心と直角な平面に対する傾斜角度は、1°より小さいとセンタリング作用が十分に得られない一方、10°より大きいと係合凸部の突出寸法や係合凹所の深さが大きくなり過ぎて強度が低下する恐れがあるため、第3発明のように1°〜10°の範囲内で設定することが望ましく、2°〜5°程度の範囲内が適当である。第8発明の芯出し係合面の傾斜角度についても同様である。なお、係合凸部および係合凹所の長さ寸法が短い場合など、上記傾斜角度を10°より大きくすることも可能である。
【0039】
係合凸部および係合凹所の断面形状は、第4発明のように円弧形状とすることが望ましいが、直角な四角形状や台形状とすることもできるなど、種々の態様が可能である。円弧形状は、必ずしも真円の円弧を意味するものではなく、楕円形など滑らかに湾曲した形状であれば良い。トルク伝達側の側面を略垂直(軸心と略平行)とし、反対側の側面を傾斜させた鋸歯形状とするなど、中心線に対して非対称としても差し支えない。
【0040】
第2発明、第10発明では、交換刃具がホルダーに対して加工時の回転方向と反対方向へ回転するモーメントが生じるように嵌合部や芯出し係合面の傾斜方向が定められているが、他の発明の実施に際しては反対のモーメントが生じるように傾斜方向を定めることもできる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である刃具交換式回転工具10を示す正面図で、円柱形状のストレートシャンク12と交換刃具14とを備えており、交換刃具14は取付けねじ16によりシャンク12の先端部に同心に且つ着脱可能に一体的に取り付けられている。そして、互いに対面させられているシャンク12の先端面18および交換刃具14の取付け面20には、2組の嵌合部22、24が設けられており、その2組の嵌合部22、24の嵌合により交換刃具14はシャンク12に対して同心にセンタリングされ、且つ相対回転不能に結合されるようになっている。シャンク12はホルダーに相当し、取付けねじ16はクランプ部材に相当する。
【0042】
図2および図3は交換刃具14を示す図で、図2の(a) は縦断面図、(b) は(a) の下端面である取付け面20側から見た平面図、(c) は(a) とは逆に取付け面20が上向きで(b) の下方から見た正面図、(d) は(b) の右方向から見た側面図である。また、図3は取付け面20を上にした姿勢で、斜め上方から見た斜視図である。この交換刃具14は、例えばめねじを切削加工する切削用タップで、切れ刃等が設けられた刃部30と、円柱形状の連結座32とを同心に一体に備えているとともに、軸心O1 と同心にねじ挿通孔34が貫通して設けられ、前記取付けねじ16が挿通させられるようになっている。刃部20には、図示は省略するが、外周面におねじが設けられるとともに、そのおねじを分断するように複数のねじれ溝が設けられ、且つ、そのねじれ溝から周方向に二番取り加工が施されることにより、めねじを切削加工するための複数の切れ刃が形成されている。連結座32の端面は、シャンク12の先端面18に対して対面させられる前記取付け面20で、軸心O1 に対して直角な平坦面である。
【0043】
図4はシャンク12を示す図で、(a) は(b) の上方から見た平面図、(b) は一部を切り欠いた正面図で前記図1に対応する図であり、(c) は(b) の左側すなわちシャンク12の先端側から見た端面図である。シャンク12には、その先端面18側から軸心O2 と同心にねじ穴36が設けられており、前記取付けねじ16が螺合されることにより、交換刃具14が同心に且つ着脱可能に一体的に取り付けられる。そして、交換刃具14がシャンク12と共に、シャンク12側から見て軸心O2 (O1 )の右まわりに回転駆動されることにより、所定の切削加工が行われる。本実施例の交換刃具14はタップで、めねじの切削加工を行うことができるが、交換刃具14を交換することにより諸元が異なる種々のめねじを切削加工できるとともに、タップ以外の交換刃具を取り付けて他の切削加工やその他の加工を行うことも可能である。このように共通のシャンク12を用いて複数種類の加工を行うことができるため、工具コストが低減される。シャンク12の軸心O2 は工具軸心に相当し、交換刃具14が取り付けられた状態においては、その交換刃具14の軸心O1 も工具軸心と一致する。また、先端面18は、軸心O2 に対して直角な平坦面である。
【0044】
図5は、取付けねじ16を示す図で、(a) は(b) の左側すなわち頭部38側から見た端面図、(b) は正面図であり、頭部38に設けられたリセスに工具が掛止されて回転操作されることにより、前記ねじ穴36に螺合されるようになっている。
【0045】
一方、前記嵌合部22、24は、交換刃具14の取付け面20に設けられた長手状の係合凹所22a、24aと、その係合凹所22a、24aに対応してシャンク12の先端面18に設けられた係合凸部22b、24bとから構成されている。これ等の係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bの長手方向と直角な断面形状は、略同一の円弧形状を成しているとともに、長手方向の全長に亘って互いに略面接触させられるように設けられている。また、これ等の係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bは、それぞれ軸心O1 、O2 に対して点対称となるように互いに平行に設けられており、且つ、長手方向において軸心O1 、O2 と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜させられている。
【0046】
係合凹所22a、24aについて具体的に説明すると、図2(b) の平面図において、係合凹所22a、24aの中心線S1 、S2 は互いに平行である一方、図2(c) の正面図において、中心線S1 は軸心O1 と直角な取付け面20に対して傾斜角度θ1で左下がりに傾斜させられ、中心線S2 は取付け面20に対して傾斜角度θ2で右下がりに傾斜させられており、且つ、それ等の傾斜角度θ1=θ2である。これ等の中心線S1 、S2 の傾斜方向は、前記取付けねじ16による締結で軸方向へ押圧されることにより、交換刃具14がシャンク12に対して加工時の回転方向と反対方向、具体的には図2(b) の平面図において軸心O1 の左まわり方向、のモーメントが相対的に生じるように定められており、そのモーメントで係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bの側面が互いに係合する所定の回転位相に位置決めされる。この時係合させられる側面は、加工時にトルクが伝達される側の側面である。傾斜角度θ1、θ2は1°〜10°の範囲内で、本実施例では約5°であり、中心線S1 とS2 との交差角度は約10°である。このような係合凹所22a、24aは、例えば外周研削面が凸円弧形状とされた研削砥石を用いて、取付け面20に対して接近または離間させて深さを直線的に変化させながら研削加工を行うことにより、簡単に形成できる。
【0047】
このような本実施例の刃具交換式回転工具10においては、互いに対面させられるシャンク12の先端面18および交換刃具14の取付け面20に、長手状の係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bから成る2組の嵌合部22、24が設けられているとともに、その2組の嵌合部22、24は軸心O1 、O2 に対して点対称となるように互いに平行で、且つ軸心O1 、O2 と直角な平面に対して同じ傾斜角度θ1、θ2で互いに反対方向へ傾斜させられているため、取付けねじ16による締結でそれ等の係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bが互いに押圧されると、その反対方向への傾斜に基づいて自動的にセンタリングが行われる。すなわち、反対方向への傾斜に基づいて工具軸心O1 、O2 まわりに相対回転するモーメントが生じるとともに、係合凸部22b、24bおよび係合凹所22a、24aの側面の係合で相対回転が阻止されることにより、両者が所定の回転位相に位置決めされ、これによりその嵌合部22、24の長手方向と直角な方向、すなわち図2(b) における上下方向の芯出しが行われる一方、それ等の嵌合部22、24の反対方向への傾斜でその嵌合部22、24の長手方向、すなわち図2(b) における左右方向の芯出しが同時に行われるのである。これにより、交換刃具14をシャンク12に対して簡単に同心に取り付けることができる。
【0048】
また、本実施例では互いに嵌合される係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bの側面を介してトルクが伝達されるが、2組の嵌合部22、24の反対方向への傾斜に基づいてセンタリングが行われることから、係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bの側面の形状を自由に設定することが可能で、且つ、軸断面積が大きいトルク伝達に適した面形状とすることにより、十字状に嵌合部を設ける場合に比較して大きな伝達トルクを確保することができる。これにより、強度が向上し、工具寿命が長くなるとともに、高能率加工など負荷の大きな加工条件下で加工を行うことができる。因みに、本発明では軸断面積の1/2以上の破損強度断面積を確保することができるが、従来は軸断面積の1/2より少なく、十分なトルク伝達強度を得ることができなかった。
【0049】
また、本実施例では、取付けねじ16による締結で軸方向へ押圧されることにより、交換刃具14がシャンク12に対して加工時の回転方向と反対方向、具体的には図2(b) の平面図において軸心O1 の左まわり方向、のモーメントが相対的に生じるように、嵌合部22、24の傾斜方向が定められているため、係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bのトルク伝達側の側面が係合させられて所定の回転位相に位置決めされるようになり、加工時においてもそれらの側面の係合による位置決め状態が良好に維持され、切削抵抗で嵌合が緩んで芯ずれ等を生じる恐れがない。
【0050】
また、本実施例では、係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bの断面が円弧形状を成しているため、それ等の係合(面圧)の軸心O1 、O2 と平行な軸方向成分によるセンタリング作用、およびその軸方向と直角な周方向成分によるトルク伝達作用が共に良好に得られるとともに、有効断面積を大きくして一層大きな伝達トルクを確保することができる。上記軸方向と直角な周方向成分は、嵌合部22、24の長手方向と直角な方向(図2(b) の上下方向)のセンタリングを行う作用も有し、同心に芯出しするセンタリング性能が一層向上する。
【0051】
また、本実施例では、2組の嵌合部22、24の傾斜角度θ1、θ2が約5°であるため、その傾斜によるセンタリング作用が良好に得られる。
【0052】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0053】
図6は、前記図2に対応する図で、この交換刃具50には、前記2組の嵌合部22、24の係合凹所22a、24aの他に、第3の嵌合部52の係合凹所52aが設けられている。この係合凹所52aは、図6(b) の平面図において、係合凹所22a、24aと平行で且つそれ等の係合凹所22a、24aの中間位置、すなわち軸心O1 と直交するように設けられているとともに、断面は円弧形状を成している。また、この係合凹所52aは、軸心O1 と直角な平面(取付け面20)と平行に設けられており、トルク伝達に有効に寄与する。なお、図示は省略するが、シャンク12の先端面18には、この係合凹所52aに対応する形状の係合凸部52bが設けられ、係合凹所52aと共に嵌合部52を構成している。
【0054】
本実施例では、2組の嵌合部22、24の間に、軸心O1 、O2 と直角な平面と平行に第3の嵌合部52が設けられており、その第3の嵌合部52はトルク伝達に有効に寄与するため、一層大きな伝達トルクを得ることができる。
【0055】
図7は、前記図2に対応する図で、この交換刃具60の一対の係合凹所22a、24aは、長さ寸法が短くて取付け面20の外周縁から中間位置まで達しているだけであるとともに、傾斜角度θ1、θ2は、図2の実施例よりも大きくて約2倍(10°程度)である。なお、シャンク12の先端面18に設けられる係合凸部22b、24bは、上記係合凹所22a、24aに対応する形状を成している。
【0056】
本実施例では、係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bの長さ寸法が短いものの、傾斜角度θ1、θ2が大きいため、前記第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0057】
図8は、前記図2に対応する図で、この実施例は、交換刃具70の取付け面20に嵌合部22、24の係合凸部22b、24bが設けられ、図示しないシャンク12の先端面18に係合凹所22a、24aが設けられた場合で、本実施例でも前記第1実施例と同様の作用効果が得られる。なお、傾斜角度θ1=θ2=5°である。
【0058】
図9は、前記図2に対応する図で、この実施例は、交換刃具80の取付け面20に嵌合部22の係合凹所22aおよび嵌合部24の係合凸部24bが設けられ、図示しないシャンク12の先端面18に嵌合部22の係合凸部22bおよび嵌合部24の係合凹所24aが設けられた場合で、本実施例でも前記第1実施例と同様の作用効果が得られる。なお、傾斜角度θ1=θ2=5°である。
【0059】
図10は、更に別の実施例の交換刃具90を示す図で、(a) は取付け面20側を上向きにした斜視図で、前記図3に相当する図である。また、(b) は取付け面20側から見た平面図、(c) は(b) の下方から見た正面図で、それぞれ図2の(b) 、(c) に相当する図である。この交換刃具90の取付け面20には、(b) から明らかなように軸方向から見た平面視において軸心O1 を通る直線を挟んで互いに接しているとともに、それぞれ外周縁まで達する半円形状を成す一対の芯出し係合面92、94が設けられている。この芯出し係合面92、94は、軸心O1 を挟んで対称的に設けられており、前記取付けねじ16によりシャンク12に対して軸方向へ相対的に押圧されることにより、軸心O1 まわりに相対回転させるモーメントを生じさせるように、その軸心O1 と直角な平面に対して互いに反対方向へ傾斜角度θ1、θ2で傾斜させられているとともに、それ等の芯出し係合面92、94の境界部分には、軸心O1 と平行な平坦な壁面を有する段差96、98が形成されている。上記芯出し係合面92、94は、平面視における境界線と平行な方向(図10の(b) における左右方向)において軸方向へ傾斜させられているとともに、その傾斜方向は、軸方向へ押圧されることにより交換刃具90がシャンク12に対して加工時の回転方向と反対方向(図10(b) における軸心O1 の左まわり)へ相対的に回転するモーメントを生じさせるように定められており、傾斜角度θ1=θ2=5°である。
【0060】
一方、図示は省略するが、前記シャンク12の先端面18には、上記芯出し係合面92、94に対応して一対の芯出し係合面が設けられており、取付けねじ16による締結でそれ等の芯出し係合面92、94と面接触させられることにより、前記モーメントを生じさせる。シャンク12の先端面18にはまた、段差96、98に対応して一対の段差が設けられており、上記モーメントの作用で交換刃具90がシャンク12に対して加工時の回転方向と反対方向(図10(b) における軸心O1 の左まわり)へ相対的に回転させられると、それ等の段差96、98に当接させられ、交換刃具90をシャンク12に対して所定の回転位相に位置決めする。これ等の段差96、98の壁面は当接面に相当し、面接触させられるとともに、本実施例では加工時のトルク伝達面としても機能する。
【0061】
本実施例においても、取付けねじ16による締結で軸方向へ押圧されると、互いに反対方向へ傾斜させられた芯出し係合面92、94の作用で軸心O1 まわりに相対回転するモーメントが生じ、段差96、98の当接で所定の回転位相に位置決めされることにより、境界線(段差96、98)と直角な方向(図10の(b) における上下方向)の芯出しが行われるとともに、芯出し係合面92、94の反対方向への傾斜で境界線と平行な方向(図10の(b) における左右方向)の芯出しが行われ、シャンク12と交換刃具90とが自動的にセンタリングされる。これにより、交換刃具90をシャンク12に対して簡単に同心に取り付けることができる。
【0062】
また、本実施例では段差96、98を介して加工時のトルクが伝達されるが、一対の芯出し係合面92、94の傾斜に基づいてセンタリングが行われることから、十字状に嵌合部を設ける場合に比較して、軸断面積を大きくして破損強度を向上させることが可能で、大きな伝達トルクを確保することができる。
【0063】
また、本実施例では芯出し係合面92、94が軸心O1 を通る直線(境界線)を挟んで互いに接するように設けられており、且つ外周縁まで達する半円形状を成しているとともに、その芯出し係合面92、94の境界部分に設けられた段差96、98の壁面によって当接面が構成されているため、前記実施例のように係合凹所22a、24aおよび係合凸部22b、24bから成る嵌合部22、24を設ける場合に比較して形状が簡単になり、製造コストが低減される。
【0064】
また、本実施例では、交換刃具90が加工時の回転方向と反対方向へ回転するモーメントが生じるように芯出し係合面92、94の傾斜方向が定められ、段差96、98の当接で所定の回転位相に位置決めされるとともに、その段差96、98はトルク伝達面としても機能するため、加工時においても段差96、98の当接による位置決め状態が良好に維持され、切削抵抗などで係合(当接)が緩んで芯ずれ等を生じる恐れがない。
【0065】
また、本実施例では芯出し係合面92、94の傾斜角度θ1、θ2が約5°であるため、その傾斜によるセンタリング作用が良好に得られる。
【0066】
なお、上記図10の実施例では一対の芯出し係合面92、94が、平面視における境界線と平行な方向(図10の(b) における左右方向)において軸方向へ傾斜しているだけであったが、図11に示す交換刃具100のように、それ等の芯出し係合面92、94を、更に境界線から離間するに従って軸方向の下方へ傾斜角度φ1=φ2で傾斜させることも可能である。この場合には、その境界線から離間する方向の傾斜により、境界線と直角方向のセンタリング作用が得られるようになり、境界線と平行な方向の傾斜と相まって同心に芯出しするセンタリング性能が一層向上する。傾斜角度φ1、φ2は、例えば前記傾斜角度θ1、θ2と同様に1°〜10°程度の範囲内で設定することが望ましく、この場合の芯出し係合面92、94の傾斜方向は、傾斜角度θ1、θ2と傾斜角度φ1、φ2とを合成した方向となる。図11の(a) は取付け面20側を上向きにした斜視図で、(b) は(a) におけるB−B断面を示す図である。
【0067】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施例である刃具交換式回転工具を示す正面図である。
【図2】図1の実施例の交換刃具を示す図で、(a) は縦断面図、(b) は(a) の下端面である取付け面側から見た平面図、(c) は(a) とは逆に取付け面が上向きで(b) の下方から見た正面図、(d) は(b) の右方向から見た側面図である。
【図3】図2の交換刃具を取付け面側から見た斜視図である。
【図4】図1の実施例のシャンクを示す図で、(a) は(b) の上方から見た平面図、(b) は一部を切り欠いた正面図、(c) は(b) の左側すなわち先端面側から見た端面図である。
【図5】図1の実施例の取付けねじを示す図で、(a) は(b) の左側すなわち頭部側から見た端面図、(b) は正面図である。
【図6】本発明の他の実施例を説明する図で、交換刃具を示す図であり、図2に対応する図である。
【図7】本発明の更に別の実施例を説明する図で、交換刃具を示す図であり、図2に対応する図である。
【図8】本発明の更に別の実施例を説明する図で、交換刃具を示す図であり、図2に対応する図である。
【図9】本発明の更に別の実施例を説明する図で、交換刃具を示す図であり、図2に対応する図である。
【図10】本発明の更に別の実施例を説明する図で、交換刃具を示す図であり、(a) は取付け面側を上向きにした斜視図、(b) は取付け面側から見た平面図、(c) は(b) の下方から見た正面図である。
【図11】本発明の更に別の実施例を説明する図で、交換刃具を示す図であり、(a) は取付け面側を上向きにした斜視図、(b) は(a) におけるB−B断面を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
10:刃具交換式回転工具 12:シャンク(ホルダー) 14、50、60、70、80、90、100:交換刃具 16:取付けねじ(クランプ部材) 18:先端面 20:取付け面 22、24:2組の嵌合部 22a、24a:係合凹所 22b、24b:係合凸部 52:第3の嵌合部 92、94:芯出し係合面 96、98:段差(当接面) θ1、θ2:傾斜角度 O1 、O2 :軸心(工具軸心)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換刃具がクランプ部材によりホルダーの先端部に着脱可能に一体的に取り付けられ、該ホルダーと共に軸心まわりに回転駆動されることにより、該交換刃具によって所定の加工を行う刃具交換式回転工具において、
前記ホルダーの先端面、および該先端面に対面させられる前記交換刃具の取付け面の一方および他方に設けられ、それぞれ長手状を成しているとともにその全長に亘って互いに接触するように嵌合される係合凸部および係合凹所から成る嵌合部を有するとともに、
該嵌合部は、前記工具軸心に対して点対称となるように互いに平行に2組以上設けられており、且つ、該点対称の嵌合部は、その長手方向において前記工具軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜させられている
ことを特徴とする刃具交換式回転工具。
【請求項2】
前記嵌合部が前記工具軸心と直角な平面に対して傾斜する傾斜方向は、前記クランプ部材によって軸方向へ押圧されることにより、前記交換刃具が前記ホルダーに対して加工時の回転方向と反対方向へ回転するモーメントが相対的に生じるように定められている
ことを特徴とする請求項1に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項3】
前記嵌合部の前記工具軸心と直角な平面に対する傾斜角度は1°〜10°の範囲内である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項4】
前記係合凸部および係合凹所の断面は円弧形状を成している
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項5】
前記2組以上の嵌合部の間には、該嵌合部と平行で、且つ前記工具軸心と直角な平面と平行な係合凸部および係合凹所から成る第3の嵌合部が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項6】
前記ホルダーの先端面には、2組の嵌合部の一対の係合凸部が該ホルダーの軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、該軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられており、
前記交換刃具の取付け面には、前記2組の嵌合部の一対の係合凹所が該交換刃具の軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、該軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられている
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項7】
前記ホルダーの先端面には、2組の嵌合部の一対の係合凹所が該ホルダーの軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、該軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられており、
前記交換刃具の取付け面には、前記2組の嵌合部の一対の係合凸部が該交換刃具の軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、該軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられている
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項8】
交換刃具がクランプ部材によりホルダーの先端部に着脱可能に一体的に取り付けられ、該ホルダーと共に軸心まわりに回転駆動されることにより、該交換刃具によって所定の加工を行う刃具交換式回転工具において、
前記ホルダーの先端面、および該先端面に対面させられる前記交換刃具の取付け面には、互いに面接触させられる芯出し係合面が工具軸心を挟んで対称的に2組以上設けられているとともに、
該2組以上の芯出し係合面は、前記クランプ部材によって軸方向へ押圧されることにより、前記工具軸心まわりに相対回転させるモーメントを生じさせるように、該工具軸心と直角な平面に対して互いに反対方向へ傾斜させられており、
且つ、前記ホルダーの先端面および前記交換刃具の取付け面には、前記モーメントの作用で互いに当接させられることにより、該ホルダーと該交換刃具とを前記工具軸心まわりにおいて所定の回転位相に位置決めする当接面が設けられている
ことを特徴とする刃具交換式回転工具。
【請求項9】
前記芯出し係合面は、軸方向から見た平面視において工具軸心を通る直線を挟んで互いに接するように2組設けられており、且つ外周縁まで達する半円形状を成しており、
前記当接面は、前記2組の芯出し係合面の境界部分に設けられた段差の壁面である
ことを特徴とする請求項8に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項10】
前記芯出し係合面が前記工具軸心と直角な平面に対して傾斜する傾斜方向は、前記クランプ部材によって軸方向へ押圧されることにより、前記交換刃具が前記ホルダーに対して加工時の回転方向と反対方向へ相対的に回転するモーメントを生じさせるように定められている
ことを特徴とする請求項8または9に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項11】
前記芯出し係合面の前記工具軸心と直角な平面に対する傾斜角度は1°〜10°の範囲内である
ことを特徴とする請求項8〜10の何れか1項に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載の刃具交換式回転工具に用いられる交換刃具。
【請求項13】
請求項1〜11の何れか1項に記載の刃具交換式回転工具に用いられるホルダー。
【請求項1】
交換刃具がクランプ部材によりホルダーの先端部に着脱可能に一体的に取り付けられ、該ホルダーと共に軸心まわりに回転駆動されることにより、該交換刃具によって所定の加工を行う刃具交換式回転工具において、
前記ホルダーの先端面、および該先端面に対面させられる前記交換刃具の取付け面の一方および他方に設けられ、それぞれ長手状を成しているとともにその全長に亘って互いに接触するように嵌合される係合凸部および係合凹所から成る嵌合部を有するとともに、
該嵌合部は、前記工具軸心に対して点対称となるように互いに平行に2組以上設けられており、且つ、該点対称の嵌合部は、その長手方向において前記工具軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜させられている
ことを特徴とする刃具交換式回転工具。
【請求項2】
前記嵌合部が前記工具軸心と直角な平面に対して傾斜する傾斜方向は、前記クランプ部材によって軸方向へ押圧されることにより、前記交換刃具が前記ホルダーに対して加工時の回転方向と反対方向へ回転するモーメントが相対的に生じるように定められている
ことを特徴とする請求項1に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項3】
前記嵌合部の前記工具軸心と直角な平面に対する傾斜角度は1°〜10°の範囲内である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項4】
前記係合凸部および係合凹所の断面は円弧形状を成している
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項5】
前記2組以上の嵌合部の間には、該嵌合部と平行で、且つ前記工具軸心と直角な平面と平行な係合凸部および係合凹所から成る第3の嵌合部が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項6】
前記ホルダーの先端面には、2組の嵌合部の一対の係合凸部が該ホルダーの軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、該軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられており、
前記交換刃具の取付け面には、前記2組の嵌合部の一対の係合凹所が該交換刃具の軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、該軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられている
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項7】
前記ホルダーの先端面には、2組の嵌合部の一対の係合凹所が該ホルダーの軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、該軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられており、
前記交換刃具の取付け面には、前記2組の嵌合部の一対の係合凸部が該交換刃具の軸心に対して点対称となるように互いに平行で、且つ、該軸心と直角な平面に対して同じ角度で互いに反対方向へ傾斜するように設けられている
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項8】
交換刃具がクランプ部材によりホルダーの先端部に着脱可能に一体的に取り付けられ、該ホルダーと共に軸心まわりに回転駆動されることにより、該交換刃具によって所定の加工を行う刃具交換式回転工具において、
前記ホルダーの先端面、および該先端面に対面させられる前記交換刃具の取付け面には、互いに面接触させられる芯出し係合面が工具軸心を挟んで対称的に2組以上設けられているとともに、
該2組以上の芯出し係合面は、前記クランプ部材によって軸方向へ押圧されることにより、前記工具軸心まわりに相対回転させるモーメントを生じさせるように、該工具軸心と直角な平面に対して互いに反対方向へ傾斜させられており、
且つ、前記ホルダーの先端面および前記交換刃具の取付け面には、前記モーメントの作用で互いに当接させられることにより、該ホルダーと該交換刃具とを前記工具軸心まわりにおいて所定の回転位相に位置決めする当接面が設けられている
ことを特徴とする刃具交換式回転工具。
【請求項9】
前記芯出し係合面は、軸方向から見た平面視において工具軸心を通る直線を挟んで互いに接するように2組設けられており、且つ外周縁まで達する半円形状を成しており、
前記当接面は、前記2組の芯出し係合面の境界部分に設けられた段差の壁面である
ことを特徴とする請求項8に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項10】
前記芯出し係合面が前記工具軸心と直角な平面に対して傾斜する傾斜方向は、前記クランプ部材によって軸方向へ押圧されることにより、前記交換刃具が前記ホルダーに対して加工時の回転方向と反対方向へ相対的に回転するモーメントを生じさせるように定められている
ことを特徴とする請求項8または9に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項11】
前記芯出し係合面の前記工具軸心と直角な平面に対する傾斜角度は1°〜10°の範囲内である
ことを特徴とする請求項8〜10の何れか1項に記載の刃具交換式回転工具。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載の刃具交換式回転工具に用いられる交換刃具。
【請求項13】
請求項1〜11の何れか1項に記載の刃具交換式回転工具に用いられるホルダー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−181891(P2007−181891A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1442(P2006−1442)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(000103367)オーエスジー株式会社 (180)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(000103367)オーエスジー株式会社 (180)
【Fターム(参考)】
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