説明

分別装置

【課題】粉砕したペットボトル片を水の比重を基準に分別する装置の分別性能をさらに向上させることができる装置を提供する。
【解決手段】分別装置に備える水槽2内の粉砕されたペットボトル片が着水する部位の下流側に、投入されたペットボトル片を水中下方向に誘導する沈下誘導プレート3を水流方向に任意の面を対向させ且つ水槽2の底部23との間に所定の隙間を有して設ける。 これにより、投入されたペットボトル片の全ては一度水中に沈むので、水の比重より小さなペットボトル片(ラベル/キャップ片B)は浮力によって勢いよく浮上し、また、水の比重より大きなペットボトル片(ペットボトル本体片A)はそのまま沈んで行くため、水の比重より小さなペットボトル片(ラベル/キャップ片B)を水面C側に、また、水の比重より大きなペットボトル片(ペットボトル本体片A)を水底(底部23)側に確実に且つ素早く振り分けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕したペットボトルからその本体素材であるポリエチレンテレフタレートを回収する分別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、資源節約から種々素材のリサイクルが推進されており、清涼飲料製品に多く用いられているポリエチレンテレフタレートを素材とするボトル所謂ペットボトルにおいてもリサイクルの対象となっている。
このペットボトルのリサイクルは専用の分別装置を用いて行われることもあって、その分別装置によるものは、ペットボトルを適当な大きさに粉砕すると共にその粉砕片を分別装置の水が入った水槽内に投入し、その水槽内で水の比重より小さなラベルやキャップ類の素材であるポリプロピレンやポリエチレン等を水に浮かせ、また、ペットボトルの本体素材であるポリエチレンテレフタレートを水に沈ませ、そして、それらを水槽内に供給する水によって発生させた水流によりそれぞれの専用排出口から水槽外部に排出して分別するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の分別装置は、粉砕したペットボトル片が水槽内に投入された時、そのペットボトル片がもつ素材の比重によってペットボトル片が水に浮くかあるいは水中に沈むかが決定される。しかしながら、水槽に投入されたペットボトル片の着水状態によっては水中に沈むべきペットボトル片が水に浮いてしまう場合もあって、このため、リサイクルに回されるペットボトル片(ポリエチレンテレフタレート)が回収されずに廃棄されてしまうケースもあった。
従って、本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、ペットボトル片の分別性能をさらに向上させることができる分別装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の要旨とするところは、被分別物が水の入った水槽内に投入されて、水槽内の水の比重を基準にその比重より小さなものと大きなものとに分別され且つそれらが水槽内に供給される水あるいは水流発生装置等によって発生する水流により水槽に備える排出部に案内されるようになっている分別装置において、水槽内の被分別物の着水部位の下流側に被分別物を水中下方向に誘導する沈下誘導手段が設けられていることを特徴とする分別装置である。
【0005】
本発明を更に詳しく説明すると、分別装置には少なくともペットボトル片の投入口と、ペットボトル片が投入される水の収容容器すなわち水槽と、水槽内に水流が発生するように水を供給する水供給手段と、水の比重より小さいペットボトル片を水槽内から回収する回収手段と、水の比重より大きいペットボトル片を水槽内から回収する回収手段とが設けられており、また、水供給手段は水槽内の水を循環させて供給するように、普通は水循環ポンプが設けられている。本発明はその分別装置の水槽内の被分別物の着水部位の下流側に、被分別物を水中下方向に誘導する沈下誘導手段を設けている。
そして、水流発生装置とは、上記の水流を発生させる手段が水槽内に供給される水以外の方法によって発生させる装置であり、例えば、水槽内あるいは供給管内に設けられたスクリュー等である。
【0006】
ペットボトル片の投入口は、そのペットボトル片が投入される水槽内に設けられている水の供給口(放出口)から少し下流側になる上方位置に設けるのがよい。また、その投入口は任意の部材によって構成された構造物からなるものであっても、単に水槽の上方に有する開口空間を投入口としてもよく、ペットボトル片を水槽内の水の供給口付近に投入することができればよい。
【0007】
水槽は、水の収容容器であると共に水槽内に投入されたペットボトル片を水の比重より小さなものと大きなものとに分別するための分別装置の本体でもある。また、水槽に収容される水は、水道水等の普通の水であってもよいが、分別しようとする素材によっては水道水ではなく、任意の比重を有する液体あるいは任意の粘性を有する流動体を用いてもよい。
水槽の形状も特に限定するものではなく分別に適した形状とすればよい。具体的には、上方が開口された長方体の容器とし、そして、底部は平面としてもよいが、水の供給口側よりその反対側となる水流の下流側に向かって下方向に傾斜させてもよい。また、下方向への傾斜を適当な部位から上方向に傾斜させ、その上方向の傾斜を水の比重より大きなものを排出する排出口に続けるようにしてもよい。そして、上方向への傾斜の始端は、望ましくは水の比重より小さなものを排出口に案内するために水槽内に設けられた案内部材より下流側にするのがよい。
【0008】
水供給手段は、水槽内に水流が発生するように水を供給するためのもので、発生させた水流によってペットボトル片が沈下誘導手段を介して水中下方向に誘導できるようになっていなければならない。また、供給手段は新しい水だけを供給するものでも、水槽内の水を循環させて供給できる水循環ポンプを備えるものでもよい。
水供給手段の水槽内への水の供給口は、水深の上方や中間また下方の任意の位置に設けてもよいが、上述するように、少なくとも発生させた水流によってペットボトル片が沈下誘導手段を介して水中下方向に誘導できるようになっていなければならない。その水の供給口は、望ましくは水槽底部に近接して設けるのがよく、また、供給口の数また形状や形態等も特に限定するものではなく、例えば、水をスクリュー渦のような回転を持たせて水槽内へ放出するようにしてもよい。
【0009】
水の比重より小さいペットボトル片を水槽内から回収する回収手段とは、すなわち、少なくともペットボトル片を水槽内から排出するため、水槽に設けられている排出口である。そして、排出口(回収部)に誘導する部材を配設するのが望ましく、その具体的な形態は、水面または水中の水面付近を水流によって流れてくるペットボトル片を水槽外部に排出するための排出口に案内できるように構成されているもので、例えば、略L字状部材を水槽に横設し、その水平方向部材の端部を水流の上流に向け、垂直方向部材の一部を水面から突出させて設けて、水面付近の水を水流と共に排出部に案内できる導流路を形成するようにしてもよい。また、略L字状部材を水槽に横設する際、排出口と反対側となる端部を上流方向にして斜めに設置するのがよい。また、水平方向部材の端部は水槽の底部方向に傾斜させてもよい。そして、略L字状部材またその水平方向部材/垂直方向部材の部材とは、水平方向/垂直方向の単一の部品からなるものまた単一の部品からなるものに任意の部材が付加されてなるものも含む。そして、任意の部材とは、例えば、固定部材や補強部材等が一例として上げられる。勿論、これ以外の目的に設けられた部材であってもよい。
排出口は、ペットボトル片が水槽内から排出できる形状また形態となっていればよい。そして、排出口の外部に水とペットボトル片を振り分けるための網等を設けてもよい。
【0010】
水の比重より大きいペットボトル片を回収する回収手段とは、すなわち、少なくともペットボトル片を水槽内から排出するため、水槽に設けられている排出口(回収部)である。その具体的な形態は、水中下方部または水底付近を水流によって流れてくるペットボトル片を水槽外部に排出できるように構成されていればよい。それは、水槽の形状や形態によって行われるものでも、別に設けた吸引ポンプ等の任意の装置によって行われるようになっていてもよい。その水槽の形状や形態によって行われるものとしては、前述する水槽底部の形状がその一例であり、水槽底部を適当な部位から上方向に傾斜させ、その上方向の傾斜を水の比重より大きいペットボトル片を排出する排出口に続けるようにしたものである。
また、排出口はペットボトル片が水槽内から排出できる形状また形態となっていればよい。そして、排出口の外部に水とペットボトル片を振り分けるための網等を設けてもよい。
【0011】
そして、本分別装置には水槽内に投入されたペットボトル片を水中下方向に誘導する沈下誘導手段が設けられている。すなわち、投入されたペットボトル片を水の比重より小さいペットボトル片また水の比重より大きいペットボトル片の区別なく一度水中に沈ませることができるように構成されているものである。
その具体的なものとしては、任意の幅のプレート部材から構成してもよく、そのプレート部材を水槽内のペットボトル片の着水部位の下流側に沈下誘導面となる任意の面を水流方向に対向させて水面下に突設してもよい。その際、沈下誘導面の下端と水槽底部との間には所定の隙間を有して設ける。その水槽底部との隙間も特に限定するものではないが、少なくとも水の比重より小さいペットボトル片が、水供給手段により水槽内に発生した水流によってその隙間を通過できる隙間としなければならない。そして、沈下誘導面の水面下に突出させる深さも特に限定するものではなく、水槽の形態や水流速度等を考慮して選定すればよい。
【0012】
そのプレート部材の形状や形態も特に限定するものではないが、少なくともプレート部材に有する沈下誘導面の下方部を水流の下流方向に傾斜させて設けるのがよい。また、沈下誘導面の下方端部付近を水面方向に湾曲させてもよい。プレート部材は、その沈下誘導面の上方部位を水面から突出させて設けたり、上方端部を水面とほぼ同位置に設けてもよい。プレート部材の形状や素材等も特に限定するものではない。
そして、プレート部材とは、少なくとも沈下誘導面すなわち沈下誘導可能な部位を有しており、その沈下誘導面すなわちプレート単体またプレートに任意の部材が付加されて構成されているものである。任意の部材とは、例えば、固定部材や補強部材等が一例として上げられる。勿論、これ以外の目的に設けられた部材であってもよい。
【0013】
従って、本分別装置による分別は、先ず、粉砕されたペットボトル片が水槽内に投入されると、そのペットボトル片は循環供給されている水により発生している水流と沈下誘導手段によって水中に引き込まれて沈む。そして、その水中に沈んだペットボトル片の水の比重より小さなものすなわちポリプロピレンやポリエチレン等を素材として形成されているラベルやキャップ類は水中から水面に浮上する。その浮上は、沈下誘導手段により水中に沈められたために浮力が大きくなって勢いよく浮上するのでラベルやキャップ類は水面あるいは水面付近の水中に位置する。
一方、その水中に沈んだペットボトル片の水の比重より大きなものすなわちペットボトルの本体素材であるポリエチレンテレフタレートはそのまま水槽底部に向かって沈んで行く。また、この沈みも沈下誘導手段によって水中に沈められたためにこの勢いを持って沈んで行くのでそのペットボトルの本体片は水底あるいは水底付近の水中に位置する。
【0014】
そして、水面あるいは水面付近のラベルやキャップ類は水流に乗り、導流路によって専用の排出口に誘導されその排出口から排出され回収される。
また、水底あるいは水底付近のペットボトルの本体片も水流に乗り、水流の下流端に位置する専用の排出口から排出され回収される。
この時、水槽底部が所定の部位から上方向に傾斜し、その上方向の傾斜が水の比重より大きいペットボトル片を排出する排出口に続くものは、水底あるいは水底付近のペットボトルの本体片が上方向に傾斜する底部に案内されて水槽上方に有する専用の排出口に誘導されその排出口から排出され回収される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の分別装置は以上のように、沈下誘導手段によって水槽内に投入されたペットボトル片の全てを一度水中に沈ませるようにしたことから、水の比重より小さなペットボトル片は浮力が大きくなって勢いよく浮上し、また、水の比重より大きなペットボトル片はそのまま沈んで行く。
従って、被分別物を水面側と水底側に確実に且つ素早く振り分けることができるので分別不良を低減でき、また、優れた分別性能を有するにも係わらず分別装置の水流方向の長さを短くすることもできるため装置の小型化も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の分別装置を以下図面に従って説明すると、図1は、本発明に係わる分別装置の内部透視側面図であり、1は粉砕したペットボトル片の投入口、2は分別装置の本体でもある水槽、21は水の比重より小さいペットボトル片である「ラベル/キャップ片B」を排出するための排出口、22は水の比重より大きいペットボトル片である「ペットボトル本体片A」を排出するための排出口、23は水槽2の底部、24は水槽2の傾斜部である。
3は投入されたペットボトル片を水中に沈めるための沈下誘導プレート、31は湾曲部である。4は水の比重より小さいペットボトル片(ラベル/キャップ片B)を排出口21に誘導する導流路、5は水の比重より大きいペットボトル片(ペットボトル本体片A)と共に排出された水とを分けるスリット部材、6は水の比重より大きいペットボトル片(ペットボトル本体片A)を回収する回収容器である。9はスリット部材5から落下した水を貯水する水受、10は貯水した水を水槽2に供給する水循環ポンプ、11は水の供給管、12は水供給口である。Cは水槽2の水面である。
【0017】
図2は、分別装置の平面図である。そして、水槽2の排出口21から水と共に排出された水の比重より小さいペットボトル片(ラベル/キャップ片B)は、スリット部材7によって水と分けられ、水の比重より小さいペットボトル片(ラベル/キャップ片B)は回収容器8に回収される。また、水はスリット部材7から落下し、スリット部材5から落下した水と同じく水受9に貯水される。
【0018】
図3は、沈下誘導プレートの一例を示す斜視図であり、本図の沈下誘導プレートは、図1/図2で示す沈下誘導プレートであり、その沈下誘導プレート3の下方には湾曲部31が設けられている。この湾曲部31により、水は沈下誘導プレート3の後方で渦を巻くことなくスムースに後方すなわち下流側に流れることができる。
【0019】
図4は、ペットボトル本体片の排出口部分の拡大図、図5は、ラベル/キャップ片の排出口部分の拡大であり、これらの排出口21/排出口22の形状は一例である。
図6は、水槽内への水の放出形態の一例を示す側面図であり、(a)図は、水供給口12から放出する水をストレートに放出する形態を示し、(b)図は、水供給口12から放出する水を回転させて放出する形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係わる分別装置の内部透視側面図
【図2】分別装置の平面図
【図3】沈下誘導プレートの一例を示す斜視図
【図4】ペットボトル本体片の排出口部分の拡大図
【図5】ラベル/キャップ片の排出口部分の拡大図
【図6】水槽内への水供給形態の一例を示す側面図
【符号の説明】
【0021】
1−投入口,2−水槽,21−排出口,22−排出口,23−底部,24−傾斜部,3−沈下誘導プレート,31−湾曲部,4−導流路,5−スリット部材,6−回収容器,7−スリット部材,8−回収容器,9−水受,10−水循環ポンプ,11−供給管,12−水供給口,A−ペットボトル本体片,B−ラベル/キャップ片,C−水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被分別物が水の入った水槽内に投入されて、水槽内の水の比重を基準にその比重より小さなものと大きなものとに分別され且つそれらが水槽内に供給される水あるいは水流発生装置等によって発生する水流により水槽に備える排出部に案内されるようになっている分別装置において、水槽内の被分別物の着水部位の下流側に被分別物を水中下方向に誘導する沈下誘導手段が設けられていることを特徴とする分別装置
【請求項2】
沈下誘導手段が任意のプレート部材からなっており、そのプレート部材が水槽内の被分別物の着水部位の下流側に沈下誘導面を水流方向に対向させて水面下に突設されていることを特徴とする請求項1の分別装置
【請求項3】
プレート部材の少なくとも下方部が水流の下流方向に傾斜していることを特徴とする請求項2の分別装置
【請求項4】
プレート部材の下方端部付近が水面方向に湾曲していることを特徴とする請求項2の分別装置
【請求項5】
水槽底部の水流の下流側が上方向に傾斜され、その傾斜が水の比重より大きなものを排出する排出口に続いていることを特徴とする請求項1の分別装置
【請求項6】
傾斜が、水の比重より小さなものを排出口に案内するために水槽内設けられた案内部材より下流側に形成されていることを特徴とする請求項4の分別装置
【請求項7】
水槽内への水の供給口が水槽底部に近接して設けられていることを特徴とする請求項1の分別装置
【請求項8】
水槽内に供給する水を回転させながら水槽内へ放出することを特徴とする請求項1の分別装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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