説明

分割型複合部分延伸糸およびその製造方法

【課題】 製糸および仮撚加工における工程安定性が良好であり、ソフト性、易分割性、低温染色性に優れ、天然繊維との複合加工が可能な分割型複合繊維の部分延伸糸を提供する。
【解決手段】 ポリ乳酸を主成分とするポリエステルAと、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルBとからなる分割型複合繊維の部分延伸糸であって、伸度が70〜150%かつ遅延収縮率が3.0%以下であることを特徴とする部分延伸糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製糸および仮撚加工における工程安定性が良好であり、ソフト性、易分割性、低温染色性に優れ、天然繊維との複合加工が可能な分割型複合繊維の部分延伸糸に関する。
【背景技術】
【0002】
複数成分から成る分割型複合繊維を減量し、極細繊維を得る方法は広く知られている。しかし、その多くはポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称する)系ポリマーを用いた複合繊維であって、該複合繊維を減量して得られる極細繊維は100℃を超える高温での染色を必要とするため、天然繊維と複合して染色した場合、天然繊維成分が過度に収縮したり、天然繊維が傷み、品位、強度ともに劣るものしか得られなかった。逆に、天然繊維にマイルドな100℃以下の低温で染色すると、PET成分の染色が不足して十分な発色性は得られなかった。更にはPET繊維自体のヤング率が高いために分割して極細繊維としても、ソフト性が不十分であったり、風合いが堅い等の欠点があった。
【0003】
これに対し、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルに代表されるテレフタル酸の低級アルキルエステルと、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)を重縮合させて得られるポリトリメチレンテレフタレート(以下、3GTと称する)は、100℃以下の低温で染色が可能であり、PETやポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと称する)に比べて低ヤング率であることから、易染性、ソフト性の訴求が可能な新規ポリマーとして、近年、大きな注目を集めている。
【0004】
3GTを用いた極細繊維に関しては、これまでにいくつかの技術が開示されており、一例として5−ナトリウムスルホイソフタル酸共重合PETと3GTの海島複合繊維をアルカリ減量する技術がある(特許文献1参照)。しかしながら、こうしたアルカリ易溶出性の共重合PETの最適紡糸温度は、耐熱性の低いポリマーである3GTのそれよりもはるかに高いのが常であり、共重合PETと3GTを複合紡糸した場合に次のような問題がある。すなわち、共重合PETに最適な高い紡糸温度で製糸すると、3GT成分は容易に熱分解し、強度の低い製糸不安定な複合繊維しか得られない。逆に、3GTに最適は紡糸温度で複合紡糸しようとすると、共重合PETが溶融不良を起こしたり、メルトフラクチャーを起こして安定な製糸ができない。よって、特許文献1のような共重合系PETと3GTを複合紡糸する系では、3GT成分が著しく熱劣化して極端に強度の低い複合繊維となるか、製糸時に糸切れが多発して生産性が劣ることが明らかとなった。更に、このように共重合PETを減量成分として用いた分割型複合繊維は、分割に際して酸処理を必要とするため、酸に弱い天然繊維との複合が極めて困難となる。
【0005】
一方、酸処理を必要とせずに減量・分割する技術としては、減量される成分にPLAを用いた技術があり、ポリ乳酸(以下、PLAと称する)とPET、あるいはPLAとイソフタル酸共重合PETとの複合繊維(特許文献2参照)や、PLAとPBTの複合繊維(特許文献3参照)についての開示がある。しかしながら、いずれも3GTを用いた場合については明らかにされておらず、前述のとおりPETやPBTを用いた極細繊維では、低温染色性、ソフト性が不足し、天然繊維と複合しても十分なソフト性は得られない。更に、発明者らが鋭意検討を進めた結果、3GTを構成成分とし、PLAが繊維表面を被覆するような分割複合繊維においては、適切な予熱・延伸条件にて製糸しないと、繊維表面にサブミクロン〜ミクロンオーダーの畝状の凸凹が発生して高次通過性が著しく低下することが明らかとなった。
【0006】
ここで、本発明の分割型複合繊維の特徴を最大限に活かせる繊維形態の一つとして、仮撚加工糸について言及する。分割型複合繊維に仮撚加工を施すと、嵩高性が付与されてソフト性、ふくらみ感に富み、適度なストレッチ性を持った原糸が得られるほか、分割処理後の極細糸となっても極細フィラメント同士が適度なばらけ度合いを維持できることから、繊維表面での反射が抑制されて発色性を向上させることができる。また、天然繊維や、ナイロン等の他素材と複合仮撚した場合、相手側の繊維の特徴を損なわずにソフト性を付与することが可能である。こうした仮撚加工を施すに際しては、分割型複合繊維を部分延伸糸(以下、POYと称する)とするのが製造コストや生産性の面で有利であり、POYとすることで複合混繊仮撚りや弛緩熱処理、シック&シン処理等、高次加工のバリエーションを増やすことが可能となる。しかしながら、3GTやPLAを構成成分とするPOYは、従来のPETを構成成分とするPOYに比べて製品巻取後のポリマー分子構造の再配列に伴う収縮(以下、遅延収縮と称する)が大きく、巻き締まりによって経時的にパッケージの内層/外層およびトラバースの中央/端面とで遅延収縮率に差が生じて原糸の品質バラツキを生じるため、高次加工での糸切れ増加や、染色斑、布帛品位の低下を引き起こすという欠点があった。こうした理由から、これまで該分割型複合繊維においては、延伸糸を得るための中間体(数日〜数週間で延伸糸に加工する)としてPOYを経由することはあっても、数ヶ月の単位で原糸品質の安定性が要求される、外販POY製品は存在しないのが実状である。
【特許文献1】特開2001−89940号公報(実施例)
【特許文献2】特開平11−302926号公報(請求項)
【特許文献3】特開平8−35121号公報(請求項)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、製糸および仮撚加工における工程安定性が良好であり、ソフト性、易分割性、低温染色性に優れ、天然繊維との複合加工が可能な分割型複合繊維の部分延伸糸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、(1)〜(5)により達成できる。
(1)ポリ乳酸を主成分とするポリエステルAと、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルBとからなる分割型複合繊維の部分延伸糸であって、伸度が70〜150%かつ遅延収縮率が3.0%以下であることを特徴とする部分延伸糸。
(2)ポリ乳酸を主成分とするポリエステルAと、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルBとからなる分割型複合繊維の部分延伸糸であって、ポリエステルAが繊維表面を被覆しており、該繊維表面における繊維長10μmあたりの畝の個数が3個以下、かつ伸度が70〜150%、遅延収縮率が3.0%以下であることを特徴とする部分延伸糸。
(3)巻取速度が2500〜3500m/分にて巻き取られることを特徴とする(1)記載の部分延伸糸の製造方法。
(4)紡糸してから巻き取るまでに、90〜155℃にて熱セットされることを特徴とする請求項3記載の部分延伸糸の製造方法。
(5)以下の(A)〜(D)の要件を満たすことを特徴とする(2)記載の部分延伸糸の製造方法。
(A)延伸前に50〜80℃の加熱体で糸条を予熱する。
(B)延伸倍率が1.05〜1.40倍である。
(C)延伸後に90〜155℃の加熱体で糸条を熱セットする。
(D)巻取速度が2500〜3500m/分である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、従来技術では成し得なかった製糸および仮撚加工における工程安定性、ソフト性、分割性、低温染色性に優れ、かつ天然繊維との複合が可能なポリエステル分割型複合繊維を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。まず、本発明の分割型複合繊維について説明する。該複合繊維はPLAを主成分とするポリエステルAと、3GTを主成分とするポリエステルBとからなり、ポリエステルAによってポリエステルBが複数のセグメントに分割された分割型複合繊維が好ましく、図1、図2に示すような海島型複合繊維や割繊型複合繊維が例として挙げられる。繊度や分割数は、対象となる最終製品や生産性を考慮して設定できる。例えば、衣料用として用いる場合は、繊度は500dtex以下とすると生産性、加工性の面で取扱いしやすく、薄地〜中厚地の布帛を得るには40〜250dtex程度が適しており、ボトム用途等の厚地の布帛を得るには250〜500dtex程度が適している。分割数についても適宜選択可能であり、割繊型複合繊維の場合では2〜40分割、海島型複合繊維の場合では2〜100島とすると、断面形状の安定性や均一な分割性・減量性を得やすい。また、分割後の単糸繊度は加工糸上がりで0.5dtex以下となるよう設定すると十分なソフト性が得やすいほか、0.3dtex以下と設定すると、非常にソフトな風合いが得られる。
【0011】
複合繊維の一方の成分であるポリエステルAは、PLAを主成分とするポリエステルであり、アルカリ処理により溶出される成分である。ポリエステルAにPLAを用いることにより、紡糸温度を低く設定することができ、ポリエステルB(3GT)の熱劣化を最小限に抑制することができる。更には、3GTとPLAは製糸工程における張力、収縮挙動が類似するため、複合紡糸に際して極めて良好な工程安定性が得られる。また、従来の有機金属塩を共重合したPETとは異なり、減量に際して酸処理工程を必要としないため、酸に弱い天然繊維との複合を可能とし、酸性溶媒の排出もないことから環境負荷を低減できると同時に、溶出工程の短縮化が図れる。
【0012】
ここで、本発明で用いるPLAとは、90モル%以上が-(O-CHCH-CO)n-を繰り返し単位とするポリマーであり、乳酸やそのオリゴマーを重合したものをいう。ただし、10モル%以下の範囲で共重合成分や多官能性化合物などを添加してもよい。共重合成分としては、生物学的に生分解され易い脂肪族化合物、例えばエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオールなどのジオールや、コハク酸、ヒドロキシアルキルカルボン酸、ピバロラクトン、カプロラクトンなどの脂肪族ラクトンが好ましい。多官能性化合物としてはグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸などを反応させ、ポリマー中に適度な分岐や、弱い架橋を形成したものも利用できる。更には、繊維の摩擦抵抗を低減し工程通過性を高めるべく、酸化チタンなどの無機粒子を添加しても良い。
【0013】
乳酸にはD−乳酸とL−乳酸の2種類の光学異性体が存在するため、その重合体もD体のみからなるポリ(D−乳酸)とL体のみからなるポリ(L−乳酸)および両者からなるポリ乳酸がある。ポリ乳酸中のD−乳酸、あるいはL−乳酸の光学純度は、低くなるとともに結晶性が低下し、融点降下が大きくなる。そのため、耐熱性を高めるために光学純度は90%以上であることが好ましい。より好ましい光学純度は93%以上、さらに好ましい光学純度は97%以上である。なお、光学純度は前記した様に融点と強い相関が認められ、光学純度90%程度で融点が約150℃、光学純度93%で融点が約160℃、光学純度97%で融点が約170℃となる。また、上記のように2種類の光学異性体が単純に混合している系とは別に、前記2種類の光学異性体をブレンドして繊維に成型した後、140℃以上の高温熱処理を施してラセミ結晶を形成させたステレオコンプレックスにすると、融点を飛躍的に高めることができ、より好ましい。
【0014】
一方の成分であるポリエステルBは、3GTを主成分とするポリマーであり、アルカリ減量処理後に極細繊維を構成する成分である。本発明において、ポリエステルBを3GTとすることにより、従来のPETやPBTの極細繊維では得られなかった、ソフト性と低温染色性を得ることができ、天然繊維と複合した際に、天然繊維が傷まない100℃以下での染色で十分な発色性を得ることができる。本発明で用いる3GTとは、90モル%以上がトリメチレンテレフタレートの繰り返し単位からなる3GTであり、ここで言う3GTとはテレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルである。ただし、10モル%以下の割合で他のエステル結合を形成可能な共重合成分を含むものであっても良い。共重合可能な化合物として、たとえばイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸などのジカルボン酸類、一方、グリコール成分として、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができるが、これらに限られるものではない。また、艶消剤として、二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤として、ヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを必要に応じて添加することができる。
【0015】
本発明における3GTの好ましい極限粘度は、0.7〜2.0であり、極限粘度が0.7以上とすることで充分な強度と伸度を兼ね備えた繊維を製造することが容易となる。より好ましい極限粘度は0.8以上である。また、極限粘度が2.0以下とすることで、生産安定性が得られやすい。より好ましい極限粘度は1.5以下である。
【0016】
ポリエステルAとポリエステルBの複合比は、任意に設定可能であるが、分割性とポリエステルA(PLA)の減量に伴う製品量損失分を考慮すると、ポリエステルA:ポリエステルBの複合重量比は1:9〜5:5の範囲であることが好ましく、より好ましくは2:8〜4:6の範囲である。ポリエステルAの複合比は1割以上とすることにより、ポリエステルBとの複合異常を回避できるほか、ポリエステルAの溶融後の配管通過時間を短縮できるために、熱劣化による強度低下を抑制でき、製糸性の向上が可能となる。また、ポリエステルAの複合比を5割以下にすることで、減量による製品量損失を軽減できるため、生産効率を高く維持でき好ましい。
【0017】
一方、優れた分割性を得るためには、ポリエステルAが少なくとも繊維表面の一部を占めるよう配置するのが好ましい。ポリエステルAを繊維表面に露出させることにより、減量剤がポリエステルAに直接作用するため、露出させない場合に比べて、よりマイルドな減量条件で、より短時間で効率的に分割することが可能であり、天然繊維と複合した場合、天然繊維へのダメージを抑制することが可能となる。
【0018】
次に、本発明の分割型複合繊維の物性について述べる。
【0019】
本発明の複合繊維を経時での品質安定性が高いPOY製品とし、良好な仮撚加工性を得るためには、伸度は70〜150%の範囲とする必要があり、より好ましくは80〜130%である。伸度が70%を下回ると、残留伸度不足により仮撚加工時に糸切れや毛羽が発生しやすくなる。逆に、伸度が150%を超える範囲では繊維の配向結晶化が進んでいないために物性の経時変化が著しく、経時での脆化が進行するため、工業的に仮撚加工を行うことはできない。
【0020】
また、遅延収縮率は3.0%以下とする必要があり、より好ましくは2.0%以下である。遅延収縮率を3.0%以下とすることで、巻き締まりによる原糸の長手方向での強伸度バラツキや収縮斑、染色斑を抑制でき、安定した品質のPOYを得ることが可能となり、更には布帛とした際に、表面質感の均一な製品を得ることが可能となる。遅延収縮率が3.0%を超えると、製糸巻取中に巻き締まりが顕著に発生し、巻取コアが締め付けられて、製品が巻取機より抜き取りできなくなるほか、経時的な巻締まりによって原糸の物性ばらつきが生じ、仮撚り加工時の糸切れや、布帛とした時の欠点が増加する。
【0021】
ここで、PLAが繊維表面を被覆する海島タイプのPLA/3GT分割型複合POYについて、更に詳しく説明する。発明者らが鋭意検討を進めるた結果、該タイプの複合POYは公知のPOY製造プロセスで製糸した場合、繊維表面に畝状の凹凸が発生して高次加工性が低下することを見出した。こうした畝の発生現象はPLA単独糸ではしばしば報告されている現象であったが、複合繊維で発見したのは初めてである。この畝現象は、製糸時にPLA成分に過度の応力がかかることによって、PLA繊維内部構造中にボイドあるいは結晶・非晶構造界面の剥離が形成されて生じると推定され、畝が過度に発生した原糸では、強度低下が起こるほか、糸道ガイド等との擦過によって容易にフィブリル化し、高次通過性が著しく低下することが判明した。更に仮撚り工程においては、畝の凹凸によって加工張力変動が増大するために、品質がばらついて布帛品位の低下を引き起こすことを突き止めた。かかる問題が公知のPLA/PETあるいはPLA/共重合PET系の分割型複合繊維で発生してこなかった理由としては、PLAポリマーと相手側ポリマーとの融点の差が挙げられる。公知のPLA/PET系分割型複合糸では、PET系ポリマーの融点がPLAよりもはるかに高いために、冷却固化に際して融点の高いPET系ポリマーが先に固化して糸条にかかるドラフト応力を一手に担うため、PLA成分側にはほとんど応力がかかっておらず畝が発生しなかったと考えられる。これに対してPLA/3GTの分割型複合繊維では、PLAと3GTの融点が近いために、冷却固化に際して外皮側のPLAが3GTよりも早く固化し、ドラフト応力がPLA側に集中して畝が発生するものと考えられる。
【0022】
発明者らは、より安定した高次通過性を求めて鋭意検討を続けた結果、低紡速−低倍率延伸のPOY製造プロセスにて畝の発生回避が可能であることを見出した。つまり、紡糸速度は目的とする巻取速度より低い速度に設定し、1.05〜1.40倍で低倍率延伸を施すのが好ましい。該範囲に設定することで、紡糸時に糸条にかかるドラフト応力を低く抑えることができ、PLA成分にかかる応力を低減して畝の発生を回避できる。延伸倍率が1.05に満たない倍率では、実質的に非延伸と同一であり、ドラフト応力の軽減効果は小さい。逆に延伸倍率が1.40倍を超える領域では、ドラフト時の応力よりも延伸時にかかる応力の方が高くなって、PLAの畝発生を抑制しきれない。また、延伸に先立ち50〜80℃で糸条を予熱すると、より畝を回避しやすい。より好ましくは55〜75℃である。PLAおよび3GTのガラス転移点は、いずれも50℃付近にあることから、予熱温度を該範囲に設定することにより、延伸時の分子配向がスムーズに行われて、延伸応力を低減するできる。50℃以上の予熱温度であれば畝の回避が可能となるが、80℃を超える温度領域では、予熱が各ポリマーのガラス転移点を大きく上回るために、糸条を構成するポリマー分子鎖の運動が活発になり、延伸時に際して分子配向が甘くなり原糸強度が低下する傾向がある。
【0023】
次いで、本発明の分割型複合POYの好ましい製造方法について説明する。
【0024】
本発明の複合繊維は、公知のいずれの紡糸方法においても製造可能であるが、複合構造の安定性、生産性を考慮すると、溶融紡糸法による生産が最も優れている。溶融紡糸法による製造にあたっては、冷ロールを介して糸条を加熱することなく巻き取る方法、加熱ロールやスチームコンディショナー、ホットチューブなどを介して糸条に熱処理を加えてから巻き取る方法、あるいは前記の熱処理工程に加えてテンションコントロールロール(以下、TCRと称す)を介し巻き取る方法など、いずれのプロセスにおいても製糸が可能であり、必要に応じて空気交絡等の糸加工を施しても良い。また、伸度の調整に関しては、巻取速度のみで調整する方法でも、直接紡糸延伸法(DSD法)にて低倍率延伸し調整する方法でもよい。目的とする伸度70〜150%の原糸を得るためには、巻取速度を2500〜3500m/分の範囲に設定する必要があり、より好ましくは、2700〜3300m/分の範囲である。巻取速度が2500m/分に満たない速度では、繊維を構成するポリマーの配向結晶化が不十分なため、伸度は150%を超え、物性の経時変化が増大して品質が安定しない上、強度不足により仮撚り加工に劣る繊維しか得られない。逆に、巻取速度が3500m/分を超える速度では、配向結晶化が過度に進行するため、伸度が70%を下回る繊維しか得られず、製糸性が低下すると共に、毛羽によって仮撚り加工時の糸切れが増加する。一方、製糸段階において、90℃〜155℃にて熱セットする工程を設けると、遅延収縮が3.0%以下の原糸を得やすく好ましい。熱セット温度を90℃以上と設定することで、糸条の熱結晶化が十分に進行するため、経時での遅延収縮を低く抑えることができる。逆に熱セット温度が155℃を上回る領域では、PLAの融点に近づくためにフィラメント間で融着が発生しやすく、仮撚り加工不良や、溶出・減量工程での割繊不良の原因となりやすい。
【0025】
以下に一例として、加熱ロールおよびTCRを介して巻取速度のみで伸度調整する製造方法について詳しく説明する。
【0026】
本発明の複合繊維を溶融紡糸する上では、一方の成分となる3GTは、240〜280℃にて溶融されるのが好ましい。溶融するに際し、プレッシャーメルター法およびエクストルーダー法が挙げられるが、均一溶融と滞留防止の観点からエクストルーダーによる溶融が好ましい。一方、他方の成分であるPLAは、3GTと同様にエクストルーダーを用い、200〜240℃での溶融が好ましい。別々に溶融されたポリマーは別々の配管を通り、計量された後、口金パックへ流入する。この際、熱劣化を抑制する観点から、配管通過時間が5〜30分であることが好ましい。パックへ流入したポリマーは口金により合流され、公知の技術により海島型、割繊型などの形態に複合され口金より吐出される。
【0027】
この際の紡糸温度は、240〜270℃が適当である。この範囲であれば、3GTの特徴を活かした複合繊維が製造できる。
【0028】
口金から吐出されたポリマーは冷却、固化され、油剤が付与された後、交絡装置にて交絡を付与され、加熱ロール、張力緩和ロールを介して巻き取られる。巻取速度は2500〜3500m/分において可能であるが、生産性、およびPOYの仮撚り加工性、布帛品位を考慮すると2700〜3300m/分がより好ましい。交絡数は任意に設定可能であるが、2個/m以上であると良好な工程通過性を得易いほか、必要であれば油剤付与〜巻取の間に複数個の交絡装置を設けることで交絡数を上げることも可能である。また、巻取直前に、追加で油剤を付与するのも良い。
【0029】
好ましく用いられる装置の概略を図3−(a)に示す。口金4より吐出された糸条は冷却後、油剤付与装置6による油剤の付与を経て、交絡装置7にて交絡が付与される。次いで、温度90〜155℃、速度2500〜3500m/分のホットロール9上に数ターン巻き付けられ、引き取られると同時に熱セットが為され、ホットロール9より0〜5%遅い速度で回転するTCR10へ引き回される。熱セットされた糸条はTCRによって冷却されるとともに張力が調整され、巻取機にて速度2500〜3500m/分にてパッケージに巻きつけられる。巻取機においては、パッケージに接するコンタクトロール11によってパッケージ巻き付け張力が調整される。
【0030】
ここで、ホットロール9は、鏡面かつ単位巻き付け回数あたりのローラー径が2〜7%ずつ大きくなってゆくテーパーロールを使用するのが好ましい(テーパーロールを用いた場合、紡糸速度とは、糸条とロールが初めて接する部位でのローラー周速度を指す)。該テーパーロールを使用することにより、熱セットによる糸条の弛みを吸収でき、ロール上での糸条揺れを抑制して糸条干渉による糸切れを低減することができる。また、ホットロールの温度は90〜155℃の範囲であるのが好ましい。ホットロール温度を該範囲とすることによりポリマー分子構造の配向や、熱結晶化による構造固定が促進されて、遅延収縮率を低く抑えることができ、経時の物性変化が少ない糸を得やすくなる。
【0031】
一方、TCR鏡面または溝付き鏡面ロールとするのが好ましい。鏡面または溝付き鏡面とすることにより、糸条を効率的に把持することができるため、糸条はTCRの前後で一定の張力を保って安定した走行が可能となり、原糸の長手方向での物性ばらつきの小さい良好な品質の製品を得ることができる。TCRとしては梨地ロールも使用可能であるが、糸条把持性を維持すするためには、鏡面や溝付き鏡面ロールに比べて高度な張力管理が要求される。仮にTCR上で糸条のスリップが発生した場合、原糸の長手方向で繊度斑や収縮斑、染色斑を誘発し、仮撚工程における糸切れや、布帛とした際の品位低下を引き起こす。高度な張力管理が要求される場合は、TCRを複数個設置するのが有効な手段である。
【0032】
また、コンタクトロールの速度はパッケージの巻取速度に対して、1.001〜1.01倍早く設定することで得られるパッケージの良好なふくらみ率と耳高率が容易に得られる。コンタクトロール速度のオーバーフィードを1.001以上とすることで、パッケージに巻かれる際の張力を低減でき、ふくらみ率、耳高率を抑制することが可能となる。より好ましい範囲は、1.0015以上である。また、1.01以下とすることによりパッケージ端面からの糸落ちを防止することができ、良好な解舒性が確保できる。より好ましいオーバーフィードの範囲は1.008以下である。さらに、コンタクトロール入口での糸条の張力は、0.1〜0.3cN/dtexであることが好ましい。張力を0.1cN/dtex以上に設定することで、TCRから巻取機間の糸揺れを低減でき、巻取速度を上げた場合でも安定して糸条を巻き取ることができる。より好ましい張力は0.12cN/dtex以上である。また、張力を0.3cN/dtex以下とするとコンタクトロールでの張力制御が容易となり、良好なパッケージフォームが得られる。より好ましい張力は0.25cN/dtex以下である。
【0033】
一方、伸度を直接紡糸延伸法(DSD法)にて低倍率延伸し調整することも可能であり、図3−(b)に示すように、ホットロール9の手前にプレロール8を設け、糸条を予熱した後、プレロール8とホットロール9の間で延伸することも可能である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて具体的に説明する。なお、実施例の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)極限粘度
極限粘度[η]は、次の定義式に基づいて求められる値である。
【0035】
【数1】

【0036】
定義式のηrは、純度98%以上のO−クロロフェノールで溶解した3GTの希釈溶液の25℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶剤自体の粘度で割った値であり、相対粘度と定義されているものである。また、cは上記溶液100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
(2)畝の個数
巻取後30分以上経過した原糸を採取し、任意の点の全フィラメントをイオンコーター(Eiko Engineering社製 IB−3)にて金蒸着して観察用サンプルとし、SEM(トプコン株式会社製 ABT−55)を用いて観察を行った。畝とは図4−(a)に示したように繊維軸と垂直の方向にサブミクロン〜ミクロンオーダーで存在する凸凹のことを指し、畝の個数とは、糸条を構成する全フィラメントについて繊維長10μmあたりの畝の山の数を数え、単糸あたりの平均値に換算した値を畝の個数と定義した。
(3)強度、伸度
JIS L1013(1999)に従い、オリエンテック製テンシロンUCT−100にて測定した。
(4)遅延収縮率
巻取後30分以内の原糸を採取し、原糸の片端を固定した後、他端に試長が100.0cmとなるように0.50mg/dtexの荷重をかけて吊し、室温にて120時間放置した時の変化率を次式により求める。
遅延収縮率(%)={(L0−L1)/L0}×100
L0:巻取後30分以内の原糸長(=100.0cm)
L1:室温で120時間放置した後の原糸長
(5)製糸性
製糸時の糸切れ発生率を、8錘建て巻取機にて生産した場合の値に換算して、以下の3段階にて評価した。合格レベルは○である。
○○:1.5回/t以下
○ :1.5回/tを超え3.0回/t以下
× :3回/tを超える
(6)仮撚加工性
POY巻取後の経時が、1カ月の原糸を用い、フリクション仮撚り機にて、延伸倍率1.4倍、撚り数800ターン/m、熱セット温度145℃、巻取速度600m/分にて巻き量3.0kgの仮撚り加工糸を製造し、加工糸ドラムの満管率について、以下の3段階にて評価した。合格レベルは○である。
○○:満管率90%以上
○ :満管率80%以上90%未満
× :満管率80%未満
(7)布帛品位
上記の(6)の評価にて得られた仮撚加工糸を用いて、28ゲージの丸編み地を製作し、下記(8)に示す方法にて染色した後、毛羽、染色斑、糸条間の染め差について総合的に評価し、製品として出荷可能であるか否かを3段階で評価した。合格レベルは○である。
○○:非常に均質で優れた品位である
○ :安定した品位であり、出荷可能である。
× :出荷不可能な重大な欠点が存在する
(8)染色性
染料としてテトラシールネイビーブルーSGLを0.275%owf、助剤としてテトロシンPE−Cを5.0%owf、分散剤としてニッカサンソルト#1200を1.0%owfを用い、浴比1:100にて50℃、15分、さらに90℃、20分にて染色を行った。染色後のサンプルは染色むら、ドラムまたはボビン間での染色差を総合的に官能検査し2段階評価した。尚、合格レベルは○以上である。
○ :非常に優れている
× :従来PET同等
(9)ソフト性
上記方法にて得られたPOYを28ゲージの筒編み地とし、肌触りを官能検査し2段階評価した。なお、合格レベルは○である。
○ :非常に優れている
× :固い
実施例1
光学純度98.0%のポリ−L−乳酸と極限粘度1.1のホモ3GTを、それぞれエクストルーダーを用いて210℃、250℃にて溶融後、ポンプによる計量を行い、250℃にて図1に示すような海島型複合形態を形成すべく公知の口金に流入させた。複合比はポリ乳酸3に対し、3GT7の割合とした。各ポリマーの配管通過時間は、ポリ乳酸が20分、3GTは11分であった。口金から吐出された糸条は、図3−(a)に示す装置にて冷却、油剤を付与後、速度2750m/分、温度145℃のホットロール9に引き回され熱セットが加えられた後、TCR10を介して、ホットロール〜TCR間の糸条が弛まないように張力調整され巻取装置へと送られる。巻取装置では、コンタクトロール入口での張力を0.13cN/dtex、コンタクトロール速度2755m、パッケージ巻取速度2750m/分、すなわちオーバーフィードを1.002として巻取り、84dtex―36フィラメントの8島の海島型複合POYを得た。このPOYの特性評価結果は表1の通りであり、製糸性、仮撚り加工性、布帛品位、染色性、ソフト性に優れるものが得られた。
【0037】
実施例2
ホットロール9、TCRおよびパッケージ巻取速度を2600m/分とした以外は、実施例1と同様にして目的とする海島型複合POYを得た。このPOYの特性評価結果は表1の通りであり、実施例1と同等の製糸性、布帛品位、染色性、ソフト性に優れるものが得られた。
【0038】
実施例3
ホットロール9、TCRおよびパッケージ巻取速度を3400m/分とした以外は、実施例1と同様にして目的とする海島型複合POYを得た。このPOYの特性評価結果は表1の通りであり、布帛品位で実施例1に一歩譲るものの、製糸性、仮撚り加工性、染色性、ソフト性に優れるものが得られた。
【0039】
実施例4
ホットロール9の温度を93℃とした以外は、実施例1と同様にして目的とする海島型複合POYを得た。このPOYの特性評価結果は表1の通りであり、製糸性、仮撚り加工性、布帛品位、染色性、ソフト性に優れるものが得られた。
【0040】
実施例5
ホットロール9の温度を室温とした以外は、実施例2と同様にして目的とする海島型複合POYを得た。このPOYの特性評価結果は表1の通りであり、布帛品位で実施例1に一歩譲るものの、製糸性、仮撚り加工性、染色性、ソフト性に優れるものが得られた。
【0041】
実施例6
ホットロール9の温度を155℃として熱セットした以外は、実施例1と同様にして製糸したところ、製糸性、布帛品位で実施例1に一歩譲るものの、染色性、ソフト性の良好なものが得られた。
【0042】
実施例7
口金を変更した以外は、実施例1と同様にして、図2−(a)に示す84T−36フィラメントの分割型複合POYを得た。このPOYの特性評価結果は表1の通りであり、製糸性、仮撚り加工性、布帛品位、染色性、ソフト性ともに実施例1と同等ものが得られた。
【0043】
実施例8
図3−(b)に示した装置を用い、実施例1と同様に紡糸、冷却、油剤付与した後に速度2520m/分、温度55℃のプレロールを介して速度2770m/分、温度145℃のホットロールに引き回し、パッケージ速度2750m/分にて巻取って目的とする海島型複合POYを得た。このPOYの特性評価結果は表2の通りであり、繊維表面に畝がなく、仮撚り加工性、布帛品位が実施例1よりも優れ、製糸性、染色性、ソフト性が良好なものが得られた。
【0044】
実施例9
プレロール8の速度を2010m/分とした以外は、実施例8と同様にして目的とする海島型複合POYを得た。このPOYの特性評価結果は表2の通りであり、繊維表面に畝がなく、仮撚り加工性、布帛品位が実施例1よりも優れ、製糸性、染色性、ソフト性が良好なものが得られた。
【0045】
実施例10
プレロール8の速度1845m/分とした以外は、実施例8と同様にして目的とする海島型複合POYを得た。このPOYの特性評価結果は表2の通りであり、製糸性、布帛品位で実施例1に一歩譲るものの、仮撚り加工性、染色性、ソフト性に優れるものが得られた。
【0046】
実施例11
プレロール8の温度を室温とした以外は、実施例8と同様にして目的とする海島型複合POYを得た。このPOYの特性評価結果は表2の通りであり、製糸性、布帛品位で実施例1に一歩譲るものの、仮撚り加工性、染色性、ソフト性に優れるものが得られた。
【0047】
実施例12
実施例8と同様に紡糸、冷却、油剤付与した後に速度2325m/分、温度85℃のプレロールを介して速度2560m/分、温度145℃のホットロールに引き回し、パッケージ速度2540m/分にて巻取って目的とする海島型複合POYを得た。このPOYの特性評価結果は表2の通りであり、製糸性で実施例1に一歩譲るものの、繊維表面に畝は無く、仮撚り加工性、染色性、ソフト性に優れるものが得られた。
【0048】
実施例13
実施例8と同様に紡糸、冷却、油剤付与した後に速度3110m/分、温度55℃のプレロールを介して速度3420m/分、温度155℃のホットロールに引き回し、パッケージ速度3400m/分にて巻取って目的とする海島型複合POYを得た。このPOYの特性評価結果は表2の通りであり、繊維表面に畝がなく、仮撚り加工性、布帛品位が実施例1よりも優れ、製糸性、染色性、ソフト性が良好なものが得られた。
【0049】
実施例14
プレロール8の温度を78℃、ホットロールの温度を90℃とした以外は、実施例8と同様にして目的とする海島型複合POYを得た。このPOYの特性評価結果は表2の通りであり、繊維表面に畝がなく、仮撚り加工性、布帛品位が実施例1よりも優れ、製糸性、染色性、ソフト性が良好なものが得られた。
【0050】
比較例1
実施例1と同様の口金を使用し、5−ナトリウムスルホイソフタル酸共重合PETと3GTを2:8の割合で複合し、紡糸温度280℃にて製糸を試みたが、安定製糸が不可能であった。かろうじて得られたPOYを仮撚加工した結果、糸切れや毛羽が多発し、布帛品位は実施例1に比べ、著しく劣るものとなった。
【0051】
比較例2
ホットロール9の温度を室温、速度を3300m/分とし、TCR速度およびパッケージ巻取速度を3300m/分とした以外は、実施例1と同様にして製糸して評価した結果、染色性、ソフト性は良好であるものの、製糸段階における巻締まりが発生したほか、仮撚加工時の加工張力変動が大きく、布帛品位の劣るものとなった。
【0052】
比較例3
ホットロール9、TCRおよびパッケージ巻取速度を3600m/分とした以外は、実施例1と同様にして製糸したところ、糸切れが増加した。また、仮撚加工においては伸度不足から毛羽や糸切れが増加し、布帛品位の劣るものとなった。
【0053】
比較例4
ホットロール9、TCRおよびパッケージ巻取速度を2400m/分とした以外は、実施例1と同様にして製糸したところ、製糸性は良好であるものの、仮撚加工時の糸切れが増加し、布帛品位の劣るものとなった。
【0054】
比較例5
ポリマー構成を変更し、紡糸温度290℃にてポリエステルAに5−ナトリウムスルホイソフタル酸共重合PETを、ポリエステルBにPETを用いて実施例1と同様にして製糸した。得られたPOYは、製糸性、仮撚加工は良好であったが、染色性、ソフト性において実施例1に劣る結果となった。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】海島型複合繊維断面の一例
【図2】割繊型複合繊維断面の一例
【図3】本発明で用いる製糸工程の一例
【図4】原糸側面のSEM観察の説明図
【符号の説明】
【0058】
1 ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリマーからなる領域
2 ポリ乳酸を主成分とするポリマーからなる領域
3 中空部
4 口金
5 糸条冷却送風装置
6 油剤付与装置
7 交絡装置
8 プレロール
9 ホットロール
10 テンションコントロールロール(TCR)
11 コンタクトロール
12 パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸を主成分とするポリエステルAと、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルBとからなる分割型複合繊維の部分延伸糸であって、伸度が70〜150%かつ遅延収縮率が3.0%以下であることを特徴とする部分延伸糸。
【請求項2】
ポリ乳酸を主成分とするポリエステルAと、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルBとからなる分割型複合繊維の部分延伸糸であって、ポリエステルAが繊維表面を被覆しており、該繊維表面における繊維長10μmあたりの畝の個数が3個以下、かつ伸度が70〜150%、遅延収縮率が3.0%以下であることを特徴とする部分延伸糸。
【請求項3】
巻取速度が2500〜3500m/分にて巻き取られることを特徴とする請求項1記載の部分延伸糸の製造方法。
【請求項4】
紡糸してから巻き取るまでに、90〜155℃にて熱セットされることを特徴とする請求項3記載の部分延伸糸の製造方法。
【請求項5】
以下の(1)〜(4)の要件を満たすことを特徴とする請求項2記載の部分延伸糸の製造方法。
(1)延伸前に50〜80℃の加熱体で糸条を予熱する。
(2)延伸倍率が1.05〜1.40倍である。
(3)延伸後に90〜155℃の加熱体で糸条を熱セットする。
(4)巻取速度が2500〜3500m/分である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−9394(P2007−9394A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146891(P2006−146891)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】