説明

分割室型電子レンジ調理用容器

【課題】1つの容器で、一度に、複数種の生の食材を加熱調理可能な電子レンジ調理用容器を提供すること。
【解決手段】食材を収納する底容器20と、底容器20と接合される上蓋30を具える電子レンジ調理用容器10において、底容器20及び上蓋30は複数種の食材を収納可能に複数の室200又は300に分割されており、上蓋30の複数の室300は、通常時は潰れた形状であるが、加熱時は各々膨張して蒸気による蒸し効果を奏するようになっており、上蓋30の上部に設けられた蒸気排出機構Pによって蒸気圧の調節を行う。複数の室200又は300のマイクロ波加熱特性を変えたり、又は、収納される複数種の食材を予め適切に加工しておくことで、1つの容器でありながら、複数種の食材の調理が、短時間で、同時に出来上がるようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生鮮食品や麺類や惣菜等のうち、2種以上の食品を同時に電子レンジで調理するための、複数の部屋を具えた分割室型電子レンジ調理用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種の食品を収納する複数の部屋からなる食品用包装容器として、特許文献1は、容器本体と該容器本体に嵌脱自在な蓋体からなる包装容器であって、容器本体は、切断手段が設けられた切断部を介して分断可能に一体的に形成された複数の収納部から構成される食品用包装容器を開示する。
また、特許文献2は、二つの収納部からなる容器であって、第1の収納部には、別体のマイクロ波遮蔽性容器が収納され、第2の収納部には加熱すべき食品等が収納され、前記二つの収納部を一緒に電子レンジに装填し加熱しても、第1の収納部の内容物は加熱されない、電子レンジ調理用容器及びその容器を用いた部分非加熱調理方法を開示する。
【特許文献1】実開平7‐33814号公報
【特許文献2】特開2005‐206238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1及び2の容器は、主として、加熱調理済みの弁当等を再度温めるための包装容器であって、生の食材等を電子レンジで調理する場合に避けられない、蒸気圧を調節する手段を具えていない。そのため、生の食材の調理や炊飯等の、蒸気圧の調節が不可欠な料理には適さない。
【0004】
圧力調整機構を具え、生食材の調理等に適した電子レンジ調理用容器は多種存在するが、これらの容器は、1つで1品調理するのが基本であるため、複数品食したい場合は、何度かに分けて加熱調理する必要があり、全体として、かなりの時間がかかる。最後の料理が出来上がる頃には、最初に調理したものは既に冷めてしまっており、美味しくない。
また、電子レンジで生の食材を調理する場合、容器内にできるだけ多くの蒸気を閉じ込めて、あたかも、圧力鍋で調理するような環境にすることが美味しい調理の秘訣である。しかし、それを実現するために、従来の特許文献3のような圧力調整機構付き電子レンジ調理用容器であると、食材自体の容量に比べて、特に、上蓋容器の容積が大きくなってしまい、収納や運送の際、嵩張って不便であるという問題がある。
【特許文献3】特開2004−305716号公報
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、食材を収納する底容器と、該底容器と接合される上蓋を具える電子レンジ調理用容器において、
前記底容器及び上蓋は複数の食材を収納可能に複数の室に分割されており、
前記上蓋の前記複数の室は、非調理時は前記底容器の上縁近傍又はその下方に位置するように潰れているが加熱時は蒸気圧によって膨張するようにプラスチックフィルムで成形されており、且つ、前記上蓋に圧力調整機構を具えていることを特徴とする分割室型電子レンジ調理用容器によって、前記の課題を解決した。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、1つの容器で、複数品の料理を同時に電子レンジですることが可能となり、比較的短時間で、簡単に、栄養バランスのとれた食事をすることができる。また、圧力調整機構を具えるため、生の食材の調理や炊飯等も、電子レンジを汚すことなく、美味しくできる。
【0007】
さらに、調理のための加熱時間が異なる食材であっても、各室のマイクロ波による加熱特性を異ならせることにより、1つの容器で同時に仕上げることが可能となり、電子レンジ調理のレシピの幅が広がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、断面図では、便宜上、プラスチックシート、フィルムの厚さを誇張して示している。
図1乃至7は、本発明の第1実施形態を示す。
図1(a)及び(b)は、第1実施形態の分割室型電子レンジ調理用容器の非調理時の正面断面図である。図2は、加熱膨張時の分割室型電子レンジ調理用容器の正面断面図である。
図に示すように、本発明の第1実施形態の分割室型電子レンジ調理用容器10は、底容器20と上蓋30からなる。
【0009】
図3は底容器の上面図、図4は底容器の正面断面図である。
図に示すように、底容器20は、3つのリブ22で隔てられた、第1乃至第3の室200に分割されており、さらに、取っ手24を具える。
【0010】
リブ22は、容器外周と同じ高さになるように形成されており、上部は平面22aを形成する。図3中ハッチングを施したリブ22の上部平面22a、及び、底容器20の上部外周面26は、全体として接合面28を形成し、上蓋30の接合面と接合される。
なお、底容器20は、全体が、弾性を有するプラスチックシートで成形されている。
【0011】
図5は上蓋の底面図、図6は非調理時の上蓋の正面断面図、図7は、加熱膨張時の上蓋の正面断面図である。
図に示すように、上蓋30は、3つの分割基部32で隔てられた第1乃至第3の室300に分かれており、前記各室の上部には、圧力調整機構Pが設けられている。
上蓋30は、さらに、上蓋を剥がすための剥がし片34を具える。この剥がし片34は、底容器20の把手24より、若干、径方向外側に長くなるように成形されている。この剥がし片34の、底容器20の把手24を越えた部分に、使用者の指が掛かり、上蓋30を剥がし易くするためである。
【0012】
分割基部32は、下部が平面32aを形成する。図5中ハッチングを施した、平面32a、及び、上蓋30の外周面36は、全体として接合面38を形成し、底容器20の接合面28と接合される。この接合には、例えば、熱によるヒートシール法を用いる。
上蓋30は、全体として、シートより薄く柔らかいプラスチックフィルムで、基本的には、図6に示す二つ並んだコップのような形状に、予め成形されている。但し、成形は必須ではなく、成形しない場合は、図1(b)に示すように、フィルムが無秩序に重なる状態で接合されることになる。
【0013】
図7に示すように、加熱調理時には、食材から出る蒸気の圧力によって、全ての室300は、容器外方向に向って、底容器20の室200と同程度の大きさに膨張するが、加熱されない時は、図1(a)に示すように、底容器の上縁の下方に位置するように内方向に潰れているか、又は、図1(b)に示すように底容器の上縁の近傍に潰れて位置しているため、収納・運搬に便利である。
なお、室300を膨張させて、容器全体の容積を増やす構成にするのは、そうすることで、容器内に閉じ込められる蒸気の量が多くなる結果、圧力鍋による調理に似た、大気圧以上の圧力下での美味しい調理が可能となるためである。
【0014】
圧力調整機構Pとしては、例えば、蒸気排出部分以外を多層フィルムで成形し、蒸気排出部分のみを前記多層フィルムより薄くする構成が一例である。蒸気圧が一定以上に達すると、薄いフィルム部分が破け、蒸気が排出される。その結果、容器内の圧力が下がって上蓋が縮んでも、さらに発生する蒸気で上蓋は再び膨らみ、その圧力が或る値を超えると、再び、破れた部分から、蒸気が排出される。
また、特開2000−85856号公報にあるように、特定の方向に開き易く接着したプラスチックフィルムの蓋で覆う弁構造とすることも可能である。
圧力調整機構Pには、他にも様々な構成が考えられ、どのようなものでも採用可能である。
【0015】
図8は、本発明の第2実施形態の分割室型電子レンジ調理用容器を示す分解斜視図(非調理時)である。
図に示すように、第2実施形態の分割室型電子レンジ調理用容器10’では、底容器20’及び上蓋30’のリブ22’及び分割基部32’に、それぞれミシン目Sが設けられており、室同士を切離し可能としてある。なお、このミシン目Sを設けるのは、底容器20と上蓋30が接合された後である。
【0016】
図示したように、第2実施形態の分割室型電子レンジ調理用容器10’では、各室毎に把手24’及び剥がし片34’が形成されている。底容器20’の把手24’と外周面26’との間には段差が形成され、把手24’が一段低い場所に位置する。これは、上蓋30’の剥がし片34’との間に隙間を作って、上蓋30’の剥がし片34’に指が掛かり易くし、その結果、上蓋30’を剥がし易くするためである。
【0017】
図9は、第1実施形態で図示した3室タイプの容器にミシン目を形成した場合の一例を示す。図9(a)は底容器の上面図、(b)は上蓋の下面図である。
図に示すように、底容器20’及び上蓋30’のリブ22’及び分割基部32’に、それぞれ、2本のミシン目Sからなる切離部が形成されており、この切離部を切取ることで、全ての室を切離すことも、一つの室のみを切離すことも、自由に可能である。
【0018】
2室タイプと同様に、3つの各室毎に、把手24’及び剥がし片34’が形成されている。図示した例では、上蓋30’の剥がし片34’は、底容器20’の把手24’とは、異なる円周方向位置に形成されている。これは、前述の、把手24’に段差を形成する構成と同様、上蓋30’を剥がし易くするための工夫の一例である。
第2実施形態の分割室型電子レンジ調理用容器10’のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0019】
なお、上下のミシン目Sをぴったり位置合わせすることは困難であるから、前述のように、ミシン目Sは、底容器と上蓋を接合した後に形成する。
第2実施形態のように、ミシン目を設けて各室を切離し可能とすることで、例えば、スープのみを食したい場合、底容器をコップのように手に持って飲んだり、別の容器に移し替えたりすることができる利点がある。また、その場で調理せず残しておきたいものは、切り離して保存することもできる。
【0020】
図10は、本発明の第3実施形態の分割室型電子レンジ調理用容器の、(a)容器全体の加熱膨張時の分解斜視図、(b)加熱途中の上蓋の斜視図である。
図に示すように、第3実施形態の分割室型電子レンジ調理用容器50は、底容器60と上蓋70から構成される。
底容器60は、4つのリブ62によって隔てられた第1乃至第4の室600a乃至600dを有する。第1の室600aは、標準的なプラスチックシートで成形されており、例えば、米のような、比較的加熱されやすい食材を収納する。
【0021】
一方、第2の室600bの面には、登録実用新案第3047445号公報に開示のような加熱シートが貼り付けられているため、標準的なプラスチックシートに比して内部の食材の加熱速度が早く、且つ、食材に焦げ目を付けることも可能である。この室600bには、例えば、肉や魚等の主菜を収納するのが好適である。
第3の室600cも標準的なプラスチックシートで成形されているが、ここには、マイクロ波加熱され易い、スープの類を入れる。
【0022】
第4の室600dには、マイクロ波を遮断するシートが被せられており、ここには、例えば、サラダや漬物等の加熱したくないものを入れる。マイクロ波を遮断する特殊なシートは、例えば、特開平9‐132279号公報に詳しい。
底容器60のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0023】
以上のように、底容器の分割された各室をそれぞれ異なる加熱特性を具えたものとすることで、加熱時間の異なる食材であっても、1つの容器で、一度に、且つ、比較的短時間で調理することが可能となる。また、1つの容器で、栄養バランスの取れた食事をすることができる。
【0024】
上蓋70は、底容器60に対応するように、分割基部72で4つの室700a乃至700dに分割されている。
室700a乃至700dは、それぞれ、底容器の各室600a乃至600dの加熱特性に対応するように作られている。内部に蒸気圧が発生しない場合は、上部の室700dは、必ずしも必要としないので、図10(b)に示すように、室700dをなくすることができる。
【0025】
図10(b)に示すように、第2実施形態で使用する上蓋70は、蓋の側面に複数の襞を設けることができる。押潰せば扁平になるようにして、底容器60に接合される。
上蓋70のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0026】
次に、本発明の分割室型電子レンジ調理用容器10、10’及び50の、実際の利用方法を説明する。なお、以下では、説明を簡潔で解り易くするために、第1実施形態の分割室型電子レンジ調理用容器10の符号のみを引くこととする。第2及び第3実施形態の分割室型電子レンジ調理用容器10’及び50については、第1実施形態と異なる部分のみ、特別に説明する。
シート成形された底容器20の各室200に、それぞれ適切な食材を入れる。但し、各食材は、電子レンジによる調理終了後、全ての食材が最も美味しい状態で同時に仕上がるように、必要に応じて、前もって加工しておくものとする。
【0027】
食材を入れた後、プラスチックフィルムで成形された上蓋30の、接合面36を、底容器20の接合面26と合わせる。前述したように、接合面26及び36には、リブ22の上面22a及び分割基部32の下面32aも含まれ、対応する前記上面及び下面は接合されることになる。
【0028】
接合面同士を合わせた底容器20と上蓋30を、真空雰囲気下に置く。真空雰囲気下で、中の空気を抜きながら、ヒートシールや超音波溶着により、接合面同士を接合し、食材を封じ込める。
真空雰囲気下で行うことで、上蓋30は容器内側に凹んだ凹形状で、底容器20と一体化されるため、上蓋30の占める空間を省くことができ、収納や運搬に便利である。
第3実施形態や、第1実施形態でも上蓋30を成形しない場合は、真空雰囲気下で接合を行うことで、上蓋70又は30は、押潰された平面状態で底容器60又は20と一体化されるため、同様に、上蓋の占める空間を少なくすることができる。なお、この際の、容器内部の空気の抜き加減を変えることにより、上蓋の形状を変えることが可能である。
【0029】
第2実施形態のように、各室を切離し可能とする場合は、底容器20’と上蓋30’の接合が完了したこの時点で、ミシン目Sの形成を行う。
【0030】
実際に食する際は、1つの容器を、定められた時間だけ、電子レンジで加熱・調理するだけでよい。
加熱によって容器内の食材から蒸気が出て、押潰された状態の上蓋30を押上げる。上蓋30が膨張することにより、容器全体の容積が大きくなり、多くの蒸気が内部に閉じ込められ、内圧が発生し、大気圧以上の圧力がかかることで、圧力鍋類似の効果が得られ、美味しい調理ができる。
容器内の蒸気圧が或る限界を超えると、圧力調整機構Pの働きで容器内の蒸気が排出され、爆発や吹零れを抑制する。
加熱後は、底容器20の把手24と、上蓋30に形成された剥がし片34を両手で持って、底容器20から、上蓋30を剥がす。
【0031】
本発明の容器内に収納する食材は、生であることが基本である。もっとも、前述したように、全ての食材は、各室の加熱特性を変える手段を適宜採用しながら、同じ時間で同時に出来上がるようにするためには、予め少し加工される必要があることもある。しかし、そうすることで、一度の比較的短時間の加熱で、栄養バランスのとれた料理を、出来立て熱々の状態で、食することができるようになる。
【0032】
以上のように、本発明によれば、多種の生鮮食材から、栄養バランスのとれた料理を、1つの容器で簡単に、短時間で、且つ、美味しく調理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a),(b)は、第1実施形態の容器全体の正面断面図(非調理時)。
【図2】第1実施形態の容器全体の正面断面図(加熱膨張時)。
【図3】第1実施形態の底容器の上面図。
【図4】第1実施形態の底容器の正面断面図。
【図5】第1実施形態の上蓋の下面図。
【図6】第1実施形態の上蓋の正面断面図(非調理時)。
【図7】第1実施形態の上蓋の正面断面図(加熱膨張時)。
【図8】第2実施形態の容器全体の分解斜視図(2室タイプ)。
【図9】第2実施形態の(a)底容器の上面図、(b)上蓋の下面図(3室タイプ)。
【図10】第3実施形態の、(a)容器全体の加熱膨張時の分解斜視図、(b)上蓋の加熱途中時の斜視図。
【符号の説明】
【0034】
10,10’,50:分割室型電子レンジ調理用容器
20,20’,60:底容器
30,30’,70:上蓋
200,600:室(底容器)
300,700:室(上蓋)
P:圧力調整機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を収納する底容器と、該底容器と接合される上蓋を具える電子レンジ調理用容器において、
前記底容器及び上蓋は複数の食材を収納可能に複数の室に分割されており、
前記上蓋の前記複数の室は、非調理時は前記底容器の上縁近傍又はその下方に位置するように潰れているが加熱時は蒸気圧によって膨張するようにプラスチックフィルムで成形されており、且つ、前記上蓋に圧力調整機構を具えていることを特徴とする、
分割室型電子レンジ調理用容器。
【請求項2】
前記底容器と上蓋がヒートシールされている、請求項1の分割室型電子レンジ調理用容器。
【請求項3】
前記底容器の1以上の室及び/又は前記上蓋の1以上の室が、マイクロ波加熱特性において異なるものとされている、請求項1又は2の分割室型電子レンジ調理用容器。
【請求項4】
前記上蓋の複数の室内の空気が抜かれ、前記上蓋が潰れた形状となっている、請求項1から3のいずれかの分割室型電子レンジ調理用容器。
【請求項5】
前記底容器及び上蓋の前記複数の室を切離すためのミシン目が形成された、請求項1から4のいずれかの分割室型電子レンジ調理用容器。
【請求項6】
前記底容器の複数の室に、同時に調理が完成するように予め加工された複数の食材がそれぞれ収納されている、請求項1から5のいずれかの分割室型電子レンジ調理用容器を用いた電子レンジ調理用食品キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−35276(P2009−35276A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199567(P2007−199567)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(306012846)NEWS CHEF株式会社 (30)
【Fターム(参考)】