分化したトリ細胞および多能性の維持に関与する遺伝子の調製方法。
本発明は、培養状態の幹細胞から分化したトリ細胞を調製する方法に関するものである。トリ幹細胞の多能性の維持に関与する遺伝子が同定されクローニングされる。幹細胞におけるこれらの遺伝子の発現を阻害することにより、これらの幹細胞はその多能性の特徴を失い、分化経路を開始する。インビトロで得られるこれらの分化細胞は、病原体、特にウイルスの宿主細胞として役立ち、かくして抗ウイルスワクチンの生産に利用することが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養状態の幹細胞から分化したトリ細胞を調製する方法に関するものである。トリ幹細胞の多能性の維持に関与する遺伝子が同定されクローニングされた。幹細胞におけるこれらの遺伝子の発現を阻害することにより、これらの幹細胞はその多能性の特徴を失い、分化経路を開始する。インビトロで得られるこれらの分化細胞は、病原体、特にウイルスの宿主細胞として役立ち、かくして抗ウイルスワクチンの生産に利用することが可能である。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は、自己複製能力を有する、胎児または成人に由来する多能性または複能性の細胞である。換言すると、幹細胞は、培養状態で無限に分裂する能力、ならびに由来元の母細胞と同じ増殖能および分化能を有する娘細胞を提供する能力を有し、かつ分化細胞を生じさせる能力を有する、非癌性の細胞である。
【0003】
ニワトリの胚性幹細胞(Chicken Embryonic Stem Cellsを略してCESC)は、ステージXのニワトリの胚盤葉細胞を培養することにより単離されている(Painら、1996年、仏国特許出願第94/12598号明細書)。これらのCESC細胞は、胚性幹細胞(ESC)の全ての特徴を有する。これらのトリ細胞の多能性を維持することのできる培地が、国際公開第96/12793号パンフレットの特許出願の対象となっている。これらの細胞の特徴の大部分は、Lavialらによる刊行物(提出済)の中で記載されている。
【0004】
幹細胞の特性の一つは、インビトロおよびインビボの両方で分化細胞を生じさせるその能力にある。一様な前駆体集団からのこれらの分化細胞の獲得は、培養条件の変更により実現される。実際、CESC細胞は、成長因子、および不活性「フィーダー」のようなサイトカインが存在する、インビトロでの一定の培養条件下においてのみ、未分化の状態で増殖し続ける。培地が貧化すると直ちに増殖の平衡は変化し、細胞は分化を開始する。CESC細胞からインビトロで分化細胞を得ることの利点の一つは、これらの細胞から生成され得る表現型の幅がきわめて広いことにある。実際、CESC細胞は多能性の特性を有する。これらは、発生学的レベルで規定される全ての系、すなわち中胚葉、外胚葉または内胚葉由来のものに分化し得る。幹細胞に固有のこの多能性の特性は、すでに分化経路を開始している組織の初代細胞においては存在しない。この特性は、胚性幹細胞において最大であり、また、複能性である組織性の成熟幹細胞レベルでは、存在はするものの、より制限された形で存在する。後者の幹細胞は、唯一の同じ系に属する分化経路においてのみ分化可能である。
【0005】
核のリプログラミングプロセスにより、分化した細胞は分化の可塑性をとり戻すことができる。これらのメカニズムは、アセチル化および脱アセチル化、メチル化および脱メチル化、リジンのユビキチン化、セリンのリン酸化、プロリンの異性化のプロセスによる、DNAおよび/またはヒストンなどのその構成要素のレベルで生じるエピジェネティックな修飾(CpGアイランド上でのメチル化)を特に理解することによって分子レベルで明らかにされ始めており、その結論の一つは、プロモーター上に結びつくことによりキー遺伝子の発現レベルを制御する、タンパク質複合体の数多くのeの動員である。これらのアクターの直接的な翻訳後修飾もまた補足的な調節の要件である。
【0006】
当業者に、インビトロでの多能性幹細胞から分化細胞への分化を誘導または制御するための様々なプロセスが既知である。
【0007】
第一のアプローチは、細胞増殖の維持に必要なサイトカインおよび成長因子をほとんどまたは全く含有しない培地内に細胞を播種することから成る。特に、gp130ファミリーのサイトカイン(LIF、IL−6、CNTF、GPA、IL−11・・・)が欠如しているかまたはその濃度が低い場合、増殖の減速および多能性のマーカーの漸進的な喪失が誘導される。
【0008】
このプロセスに付された細胞の分化は一様ではない。すなわち、異なる細胞型が、細胞の密度、自己分泌、および傍分泌の条件、ならびにそれらの相互関係にしたがって、得られることになる。得られた細胞の多様性は、培養物全体における、例えば中胚葉系に特異的なBrachyury遺伝子およびGoosecoid遺伝子、神経外胚葉に特異的な一部のPax遺伝子およびSox遺伝子、ならびに内胚葉系に特異的なHnf3といった、系の早期マーカーの大部分の検出により推定することができる。
【0009】
第二のアプローチは、細胞培養のために処理されていないボックス内に細胞を播種することにより胚様体を実現することから成る。分離された細胞は、貧化され(例えば0.5〜5%といったより少ない血清、かつ特異的な成長因子およびサイトカインの不在)穏やかな撹拌に付された大量の培地内か、または懸滴法で利用される貧化された少量の培地内に懸濁される。様々な例が、米国特許第5456357号明細書、米国特許第5914268号明細書、および米国特許第6458589号明細書において示されている。もう一つの条件付けは、コニカルチューブ内において(Kurosawaら、2003年)、特定の処理済みの表面上において(Konnoら、2005年)、またはアルギン酸マイクロビーズへの封入により(Magyarら、2001年)直接胚葉体を形成することである。かくして細胞の付着およびその基底外側の分極を妨げることにより、胚性幹細胞は増殖し、かつ、異なる胚葉を模倣する三次元構造をとる(Dangら、2002年)。こうして得られた細胞型は極めて多様である。さらに、分化の様々な段階の獲得動態において多様性が見られる。
【0010】
第三のアプローチは、分化用化学誘導剤の利用にある。化学誘導物質とは、天然由来のものであれ化学合成によるものであれ、成長因子またはサイトカインに類似していない全ての非ペプチド性の化学分子を意味する。
【0011】
例えば、DMSO(ジメチルスルホキシド)は、誘導された複数の細胞型を伴う混合分化集団を得ることを可能にする一般的な誘導剤として利用される(Dinsmoreら、1996年)。レチノイン酸は、非限定的ではあるが、単独で、または例えばcAMPと組み合わせた形で、精確な動態条件下での脂肪細胞の獲得(Daniら、1997年)、心筋細胞の獲得、収縮能および特異的ミオシンの存在を特徴とする様々な筋細胞(Rohwedelら、1994年;Drabら、1997年)の獲得を伴う、特に中胚葉由来のものへの幹細胞の分化を得ることを可能にする。
【0012】
現在公表され、特にマウスの胚性幹細胞から特定の表現型を有する細胞を得ることを可能にする手順の大部分は、化学誘導剤と成長因子の結合性複合体とを結びつけている。誘導の動態における変動およびこれらの作用物質の投入により、得られる表現型を調節することができる。脂肪細胞(Daniら、1997年)、骨芽細胞(ZurNiedenら、2003年;Philipsら、2001年)、および異なる表現型を有する神経前駆細胞(Fraichardら、1995年;Plachtaら、2004年;GlaserおよびBrustle、2005年)の獲得動態について例が示されている。
【0013】
かかるアプローチの再現性は時として困難であり、特定のウイルスの複製または目的の分子の生産といった工業的利用に十分な大量の分化細胞を得ることを可能にするものではない。その上、これらのプロセスは非常に特殊な培地の利用が関与する数多くのステップ、および細胞操作のための数多くのステップを含んでいる。
【0014】
前述のアプローチにより、幹細胞の分化を誘導することが可能になる。得られた集団は多様であることから、その後に、所望の表現型を有する細胞を選択し単離することが必要であるが、そのためのいくつかの技術が当業者に知られている。特異的表面抗体、枯渇、または磁気濃縮による標識の後の、表面選別機による選別を挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0015】
もう一つのアプローチは、正の遺伝子選択プロセスを用いる濃縮手順を利用することから成る。このためには、薬物(ネオマイシン、ハイグロマイシン、ゼオマイシン、プラスチシジン)の選択のための遺伝子、またはそれを発現する細胞の物理的選別を可能にする表現型マーカー(野生型GFPまたは修飾GFPといった蛍光タンパク質、ベータ−ガラクトシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ)の発現は、組織特異的プロモーターに依存した状態に置かれる。利用されるプロモーターの中では、Myosine鎖のプロモーター(Mullerら、2000年)、筋形成の誘導遺伝子Myf5もしくはMyoDのプロモーター、Nestineのプロモーター(Keyoungら、2001年)や、Hb9のプロモーター(SinghRoyら、2005年)、GFAPといった星状膠細胞の特異的プロモーター(Benvenisteら、2005年)、またはCNP(環状3’ホスホジエステラーゼ)遺伝子を有するオリゴデンドロサイトといったその他のニューロンタイプのプロモーター(Glaserら、2005年;Schmandtら、2005年)を挙げることができる。
【0016】
もう一つのアプローチは、例えば、筋芽細胞系のcDNA(Pax3、MyoD、Myf5、Myognenine、Mft−4などの遺伝子)を用いるなどによる、所与の系において分化を誘導し得る目的のcDNAの過剰発現から成る。この過剰発現は、ランダム挿入の過剰発現ベクターを用いて実施することができるが、アクチンの所与の遺伝子座または系の特異的遺伝子座へのノックイン戦略を用いて、さらにはウイルスベクターおよびレトロウイルスベクターを用いても実施することができる。
【特許文献1】仏国特許出願公開第94/12598号明細書
【特許文献2】国際公開第96/12763号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、現在のところ、後の選択ステップを実施することなく、インビトロで分化した一様な細胞集団を得ることを可能にする方法は存在しない。このような理由から、本発明者は、補足的な選択ステップを必要としない、一様な形態学的、生化学的および機能的特徴を有する、分化した細胞集団を得ることを可能にする新規な技術を開発した。本発明に従うと、誘導されたクローン、つまり分化した細胞から成るクローンの80〜100%の細胞の形態、表現型、および分子の変化を得ることが可能である。
【0018】
哺乳動物においては、幹細胞の多能性および増殖能力を制御する複数の遺伝子が同定されている。特に、Oct4遺伝子(Nicholsら、1998年)は、インビボで多能性細胞においてのみ発現するキー遺伝子である。インビトロで、Oct4は、マウスおよび霊長類の胚性幹細胞、ならびに一部の腫瘍細胞系において発現する。マウスの胚性幹細胞におけるOct4の発現レベルは、これらの幹細胞の将来を制御すると思われる(Niwaら、2000年)。
【0019】
Oct4遺伝子は、ホメオドメイン転写因子のPOUファミリーに属する。遺伝子から産生されるタンパク質は核局在化し、そのDNA固定ドメインを介して標的遺伝子の調節エレメント上に直接固定され得る。
【0020】
系統発生学的観点から見ると、哺乳動物以外の種において同等の機能を有する遺伝子が存在する確率は低いものであった。鳥類においては、このような遺伝子は、先行する研究においては同定されなかった(Sooden−KaramathおよびGibbins、2001年)。その上、ゲノムレベルでの相同性は全く報告されていない。
【0021】
哺乳動物においては、Nanog遺伝子(Chambersら、2003年;Mitsuiら、2003年;Hartら、2004年)およびEomes(Russら、2000年;Ginisら、2004年)遺伝子もまた、幹細胞の多能性の維持において主要な役割を果たすものとして同定されている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、適切な培地内で培養されたトリ幹細胞から分化したトリ細胞の調製方法であって、1P06遺伝子、Nanog遺伝子、およびEomes遺伝子の中から選択された幹細胞において発現する遺伝子の発現または活性を阻害することによって前記幹細胞の分化を誘導するステップを含むことを特徴とする方法を提案するものである。
【0023】
この方法の利点は、得られる分化細胞が一様であるという点にある。得られたクローンはもはや幹細胞のクローンに特徴的な形態を有さないが、分化した形態を有する。これらのクローンはまた、親細胞に特徴的な増殖も有さず、誘導後、細胞性は一定のままである。
【0024】
幹細胞の分化のこの誘導は、急速であると同時に不可逆的である。
【0025】
好ましくは、トリ細胞はキジ目に属するトリ、特にニワトリまたはウズラ、さらに好ましくはセキショクヤケイ(Gallus gallus)種に由来する。
【0026】
「幹細胞」という語により、当業者は細胞が以下の特徴を有するものと理解する。
−文献において周知の成長因子の存在下で、長時間、インビトロにおいて自己複製で増殖する能力。
−形態学的観点から見ると、幹細胞は、5〜10μmの核を有する10〜15μmの相対サイズである高い核細胞質比に特徴を有し、アルカリホスファターゼおよびテロメラーゼの固有の生化学的活性といったような様々な固有の生化学的活性を有し、仏国特許第94/12598号明細書および仏国特許第00/06029号明細書に記載されているような様々な特異的抗体により認識される。トリ胚性幹細胞のもう一つの特殊性は、それらが増殖するときのその密な膜の接触にある。
−細胞は多能性であり、これはすなわち、該細胞が複数の細胞型を生じさせることができることを意味し、特に本発明のトリ幹細胞は、外胚葉、中胚葉および内胚葉に由来する細胞へと分化可能である。
【0027】
「分化細胞」という語により、当業者は、細胞が比較的わずかしか増殖しないかまたは全く増殖しないこと、細胞が、より低い核細胞質比と、形態がコンパクトでない、一般により大きなサイズ(15〜20μm超、また、破骨細胞、成熟脂肪細胞、分化筋細胞、一部のマクロファージなどといった一部の特殊な細胞型についてはそれ以上)とを有すること、そして、該細胞が、誘導されていない幹細胞の生化学マーカーを有さないことを理解する。
【0028】
特に、幹細胞は、特異的なインテグリン、カドヘリン、一部のムチン、ケラチノサイトに対するサイトケラチン8、18、および19、またはケラチン16といったマーカーの存在により特徴づけられる上皮細胞へと分化し得る。考慮対象の上皮細胞の由来に応じて、マーカーの様々な結びつきは、特に腫瘍過程において、上皮細胞の由来および分化度に特徴的なものである(Barakら、2004年)。
【0029】
本発明のもう一つの態様に従うと、幹細胞は、CD(分化抗原群)分類によりマウスおよびヒトにおいて知られかつJournal of Immunology(1998年)に公開されている総説においてLaiらが例示している膜マーカーの存在によりとりわけ特徴づけられる造血前駆細胞または分化造血細胞へと分化し得る。特に特異的転写因子といったその他の非膜マーカーも利用することができる。
【0030】
「遺伝子の発現または活性の阻害」という記載により、当業者は、遺伝子の発現を制御することを可能にする通常の全ての手段、特に転写または翻訳の阻害剤の使用が利用可能であることを理解する。特に、干渉RNAを利用することにより、目的の遺伝子の発現を特異的に阻害することができる。
【0031】
本発明の特定の態様に従うと、遺伝子の発現または活性の阻害は、条件付きで実現される。かくして、細胞の分化を当業者が望む時点で開始させることができる。
【0032】
本発明の特定の態様に従うと、遺伝子の発現または活性の阻害は、少なくとも一つの干渉RNAを用いて実施される。
【0033】
干渉RNA分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)を特異的にターゲティングするために利用される。干渉RNAはmRNAにハイブリダイズしようとし、その結果、単純な立体障害によって、またはmRNAの切断を促すことによって、対応するタンパク質の翻訳を阻害する。
【0034】
遺伝子の発現の阻害というこの戦略は、インビトロとインビボの両方でマウスの胚性幹細胞に適用されている(Grabarekら、2003年;Kunathら、2003年;Lickertら、2005年)。ニワトリにおけるインオボ(in ovo)でのiRNAの利用は、Nakamuraら、2004年において実証されている通り可能である。
【0035】
干渉RNAは、アンチセンスRNA、二本鎖RNA、「低分子干渉」RNA、「短鎖ヘアピン」RNA、またはリボソームRNAといった、複数の形態の中から選択可能である。
【0036】
「低分子干渉RNA」つまり小サイズの干渉RNAの略であるsiRNAは、約15〜30塩基対(bp)、好ましくは19〜25bpの短い配列である。これらは、第一の鎖および標的遺伝子のRNAのターゲティングされた領域と同一の相補鎖を含む。siRNAは合成二本鎖RNAの形態を意味する。
【0037】
「短鎖ヘアピンRNA」の略であるshRNAは、Dicerとloquaciousとの複合体による切断の後にヘアピン形状をとるRNA分子をコードする、発現ベクター内でクローニングされた配列により産生された二本鎖RNAである(Duら、2005年)。
【0038】
干渉RNAの設計および調製、ならびにインビボおよびインビトロでの細胞のトランスフェクションのためのその利用は周知であり、米国特許第6506559号明細書、米国特許出願公開第2003/0056235号明細書、国際公開第99/32619号パンフレット、国際公開第01/75164号パンフレット、国際公開第02/44321号パンフレット、米国特許出願公開第2002/0086356号明細書、国際公開第00/44895号パンフレット、国際公開第02/055692号パンフレット、国際公開第02/055693号パンフレット、国際公開第03/033700号パンフレット、国際公開第03/035082号パンフレット、国際公開第03/035083号パンフレット、国際公開第03/035868号パンフレット、国際公開第03/035869号パンフレット、国際公開第03/035870号パンフレット、国際公開第03/035876号パンフレット、国際公開第01/68836号パンフレット、米国特許出願公開第2002/0162126号明細書、国際公開第03/020931号パンフレット、国際公開第03/008573号パンフレット、国際公開第01/70949号パンフレット、国際公開第99/49029号パンフレット、米国特許第6573099号明細書、国際公開第2005/00320号パンフレット、国際公開第2004/035615号パンフレット、国際公開第2004/019973号パンフレット、国際公開第2004/015107号パンフレット、
http://www.atugen.com/sirnatechnology.htm、
http://www.alnylam.com/science−technology/index.asp、
http://www.protocol−online.org/prot/Research_Tools/Online_Tools/SiRNA_Design/、
http://www.hgmp.mrc.ac.uk/Software/EMBOSS/Apps/sirna.html、
http://www.rockefeller.edu/labheads/tuschl/sirna.html、
http://www.upstate.com/browse/categories/siRNA.q.
といった数多くの刊行物において充分に記載されている。
【0039】
siRNAは、例えば以下のようなオンラインで利用可能なソフトウェアを用いることにより設計および調製可能である。
−「siSearchプログラム」http://sonnhammer.cgb.ki.se/siSearch/siSearch_1.6.html(「Improved and automated prediction of effective siRNA」、Chalk AM、Wahlesdelt C、およびSonnhammer ELL、Biochemical and Biophysical Research Communications、2004年)。
−「SiDirect」http://design.rnai.jp/sidirect/index.php(Direct: highly effective, target−specific siRNA design software for mammalian RNA interference、Yuki Naitoら、Nucleic Acids Res、第32巻、No. Web Server issue(著作権)Oxford University Press、2004年)。
−MIT附属ホワイトヘッド生物医学研究所の「siRNAデザインツール」http://jura.wi.mit.edu/pubint/http://iona.wi.mit.edu/siRNAext/
−InvitrogenのsiRNA wizard(商標)、http://www.sirnawizard.com/、
−Ambionの「siRNAターゲットファインダー」http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html、
−https://www.genscript.com/ssl−bin/app/rnai、
−http://www.promega.com/siRNADesigner/default.htm、
−http://bioweb.pasteur.fr/seqanal/interfaces/sirna.html、
−その他のプログラムは、
サイトhttp://web.mit.edu/mmcmanus/www/home1.2files/siRNAs.htm上でhttp://athena.bioc.uvic.ca/cgi−bin/emboss.pl?_action=input&_app=sirnaとして参照できる。
【0040】
siRNAの調製および細胞のトランスフェクションのための手段は、例えば、Invitrogen(http://www.invitrogen.com)により市販されているsiRNAベクターのように一般に入手可能である。
【0041】
当業者により選択された干渉RNAの配列に従って、異なる阻害レベルを得ることができ、求められている阻害物質の効果を変化させることが可能である。好ましい方法は、干渉RNAは、細胞内の標的遺伝子の発現の少なくとも50%、さらには少なくとも75%、90%、95%、さらには99%超の阻害を得るように調製され、そして選択される。当業者であれば、単純な日常的作業により、例えば幹細胞の分化を誘導するその能力を分析することによって、最も有効なiRNAを選択することができるものである(図1および3を参照のこと)。
【0042】
本発明の好ましい実施形態に従うと、干渉RNAは1P06遺伝子の発現を特異的に阻害する。
【0043】
特に、干渉RNAをコードする核酸分子は、配列番号3という標題で配列表に示されているように配列を有し得る。
【0044】
本発明の好ましいもう一つの実施形態に従うと、干渉RNAは、Nanog遺伝子の発現を特異的に阻害する。
【0045】
特に、干渉RNAをコードする核酸分子は、配列番号4または配列番号5の配列を有し得る。
【0046】
本発明のもう一つの好ましい実施形態に従うと、干渉RNAは、Eomes遺伝子の発現を特異的に阻害する。
【0047】
特に、干渉RNAをコードする核酸分子は、配列番号6、7、8または9により表されているような配列の一つを有することができる。最高の発現阻害が得られる分子は、配列番号4の配列によりコードされる。
【0048】
干渉RNAで遺伝子の発現を阻害するための一般的な技術は、二本鎖の干渉RNAを細胞内に導入することから成る。しかしながら、このdsRNAは急速に分解されるため、遺伝子の阻害は時間的に制限されるものである。この制限のため、発明者は、標的細胞内で「要求に応じて」干渉RNAを産生できる系を追及するに至った。
【0049】
本発明は、宿主細胞内での前記干渉RNAの発現を可能にするプロモーターの制御下に置かれた、干渉RNAをコードする核酸分子を含む発現ベクターに関するものである。宿主細胞は好ましくは、インビトロで培養状態に維持されたトリ幹細胞であるものとする。
【0050】
前記ベクターは、好ましくはプロモーター、翻訳開始シグナルおよび翻訳終結シグナル、ならびに適切な転写調節領域を含む。
【0051】
本発明の特定の一態様に従うと、干渉RNAの発現を制御する発現ベクターのプロモーターは、誘導性プロモーターである。
【0052】
誘導性発現系の利点は、干渉RNAの存在の持続時間、ひいては標的遺伝子の阻害の持続時間を制御することができるという点にある。実際、細胞の存続にとって不可欠な一部の遺伝子は、それが細胞死を誘導することになるという理由で、過度に長時間の阻害を受けることができない。その他の遺伝子は、阻害の効果を観察するためには長期間の阻害を受けなければならない。宿主細胞の内部での干渉RNAの発現を制御することにより、これら二つの制約条件を回避することができる。
【0053】
当業者には、最初に同定され、そして分析されたラクトースオペロンのものといった、複数のタイプの誘導性転写プロモーターが既知である。同様に、大腸菌のテトラサイクリンに対する耐性オペロンに由来するプロモーターに基づくtet off/tet on系を挙げることができる(Gossenら、1992年)。
【0054】
プロモーターの活性の誘導は、不活性プロモーターを活性化させることによって、または元々活性なプロモーターの重荷になる阻害をなくすことにより、実現可能である。転写の阻害因子または活性化因子は各々、それ自体、細胞環境に応じて誘導可能である。
【0055】
例えば、プロモーターが転写阻害因子に対する固定ドメインを有する場合、阻害の除去はこれらの因子の捕捉によって行われ、これらの因子はプロモーターの調節配列上にもはや固定され得なくなる。このときプロモーターは、転写阻害因子から「解放」される。
【0056】
もう一つの例によると、プロモーターは元々は活性であるが、その遺伝子座に挿入されたカセットの存在によって阻害されている。カセットは、プロモーターの調節エレメントが過度に離隔しているためにもはや互いに協働できないような形で置かれる。このとき阻害の除去は、特にカセットの各端部に置かれたリコンビナーゼによって認識される配列を用いて、カセットを切除することによって行われる。カセットは、立体障害を行うためのみに役立つ長い「緩衝」DNA配列を含み得る(Tiscorniaら、2004年)が、これは同様に、例えば抗生物質に対する耐性遺伝子などの「マーカー」遺伝子、またはGFP(緑色蛍光タンパク質)などの蛍光遺伝子を含むこともできる。この選択カセットの存在は同様に、特に幹細胞内において、配列の「サイレンシング」のメカニズムを制限する活性なクロマチン立体配置に遺伝子座を維持することも可能にする。
【0057】
カセットの切除を得るためには、Cre−Lox系およびFLP−FRT系という二つの系が利用されることが多い。Cre−Lox系は、DNAの適確な配列すなわちloxP配列の間にある全てのDNA断片を削除する、Creリコンビナーゼという酵素の能力に基づいている。FLP−FRT系は、二つのFRT配列の間にあるDNA断片を削除するFLPリコンビナーゼの活性に基づいている。特にKilbyら、1993年;SauerおよびHenderson、1988年;Guら、1994年;Cohen−TannoudjiおよびBabinet、1998年;Shibataら、1997年;SchlakeおよびBode、1994年に記載されている、認識部位LoxPおよびFRT並びに対応するCreおよびFLPリコンビナーゼは、当業者に周知のものである。
【0058】
特に、誘導可能なプロモーターは、その存在が該プロモーターの機能を阻害するチミジンキナーゼ(TK)−ネオマイシンR−loxのプロモーターであるloxカセットを含み得る(Coumoulら、2004年)。プロモーターは、CREリコンビナーゼによるこのカセットの切除の後に初めて機能的なものとなる。利用されるCREリコンビナーゼはそれ自体、培地内のタモキシフェンの存在に左右される活性を有する(Metzgerら、1999年)。かくして、細胞の培地内にタモキシフェンを添加することにより、リコンビナーゼは活性となり、プロモーターの阻害配列を切除し、かくしてプロモーターを機能的なものにし、かくして干渉RNAの発現を可能にする。
【0059】
目的のプロモーターの中から、好ましくは、干渉RNAの発現におけるその利用が当業者には周知のものであるU6プロモーターまたはH1プロモーターといったpolIII依存性プロモーターが選ばれる。
【0060】
本発明に従った発現ベクターは、宿主細胞、特にインビトロで培養状態に維持されたトリ細胞の中に組込むことができる。このとき、細胞は「形質転換された」と言われる。このためには、宿主細胞の内部で自己複製するベクターを利用するか、または宿主細胞のDNA内への外因性の核酸分子の組込みを可能にする組込みベクターを利用することができる。
【0061】
自己複製系の中でも、好ましくは、プラスミドタイプまたはウイルスタイプの系が利用され、ウイルスベクターは、特にアデノウイルス(Perricaudetら、1992年)、レトロウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルスまたはヘルペスウイルス(Epsteinら、1992年)であり得る。当業者には、これらの系の各々について利用可能な技術が既知である。
【0062】
宿主細胞の染色体の中への配列の組込みが望まれる場合には、例えばプラスミドタイプまたはウイルスタイプの系を利用することができる。かかるウイルスは、例えばレトロウイルス(Temin、1986年)またはAAV(Carter、1993年)である。
【0063】
非ウイルスベクターの中でも、VICAL社により開発された技術に従った裸のDNAまたは裸のRNAといったような裸のポリヌクレオチドが好ましい。
【0064】
トリ細胞内では、好ましくは、レトロウイルス、トリアデノウイルス、ポックスウイルス、またはトランスフェクションもしくはエレクトロポレーションにより導入される裸のDNAが利用されるものとする。
【0065】
かかるベクターは、当業者によって一般的に利用される方法によって調製され、その結果得られるクローンは、リポフェクション、エレクトロポレーション、熱ショック、膜の化学的透過化の後の形質転換、または細胞融合といったような標準的な方法により、宿主細胞内に導入可能である。
【0066】
本発明のもう一つの態様に従うと、本方法は、前記細胞の特異的分化を得る目的で、特異的遺伝子の活性化または阻害のステップに細胞を少なくとも一回付すことを特徴としている。
【0067】
特に、特定のプロモーターおよびコード相を利用することにより、規定の経路での細胞の最終分化をそれ自体が誘導する遺伝子の発現を制御することが可能となる。これらの遺伝子は特に転写因子をコードする。これらの遺伝子の中でも、Myf5、MyoD、Mrf4といった筋原性系列の調節因子(「MRF」)、PPARg遺伝子などといった脂肪細胞系統の決定論に関与しているもの、Sox1およびネスチンといったニューロンの決定論に関与しているもの、Gata2およびGata3といった造血経路の決定論に関与しているものを挙げることができる。
【0068】
これらの遺伝子の発現または活性の、活性化または阻害のステップは、1P06、NanogまたはEomesの中から選ばれた遺伝子の阻害ステップと同時であってもよいし、または、時間的にずらされ、好ましくは、阻害の誘導の数時間後とすることもできる。このずれにより、細胞は逐次的に最終分化プログラムを開始し、かくしてインビボで観察される分化の動態をより良く再現することができる。
【0069】
本発明のもう一つの態様に従うと、本発明のトリ幹細胞は、前記細胞の特異的分化を得るため、適切な条件で、特に一定の成長因子および誘導物質の存在下で培養される。
【0070】
これらの因子の中でも、中胚葉および外胚葉経路の制御における非常に複雑な相対的役割がマウス、アフリカツメガエル、およびニワトリにおいて同時に記載され始めている、BMPファミリー、FGFファミリー、およびwntファミリーの成長因子を挙げることができる。好ましくは、この因子を、特にBMP−4およびBMP−7について、およそ1〜10ng/mlの濃度範囲で利用するものとする。外胚葉および中胚葉経路の誘導には、他の多数の因子が介入する。
【0071】
本発明に従ったプロセスは同様に、分化が誘導されていない細胞の選択および破壊のステップを含み得る。
【0072】
誘導されていないクローンの消滅は、例えば以下で記載されるEns1遺伝子または1P06遺伝子のプロモーターといった、幹細胞においてのみ活性なプロモーターの制御下に置かれた毒性遺伝子(チミジンキナーゼ、ジフテリア毒素)を発現するベクターを用いた負の選択により、誘導に付随する形で実施可能である。かくして、幹細胞の特徴を有する細胞のみが消滅するものとする。
【0073】
本発明は同様に、本発明に従った方法によって得られる可能性のある分化したトリ細胞にも関する。
【0074】
本発明は同様に、ウイルスと、本発明に従った方法に付されたトリ幹細胞とを接触させるステップを含むことを特徴とする、抗ウイルスワクチンの調製方法にも関するものである。
【0075】
幹細胞の分化の誘導から24〜72時間後に、細胞を、適切な培地において、目的のウイルスの存在下に置く。たとえ誘導された細胞が増殖中の細胞に比べてわずかしか分裂しないにせよ、細胞がその誘導段階にある間にこれらの細胞をウイルスと接触させることで、ウイルスの組込みおよびその産生を可能にする残りの分裂を有するようにすることが必要である。誘導の開始から96時間を越えると分裂しない細胞を得るために、倍増時間は12〜15時間から24〜36時間超に移行する。感染に必要なm.o.i.は、誘導の開始から24〜48時間後に得られた細胞数について計算される。
【0076】
幹細胞およびその分化誘導体は、特殊な向性に従った、異なるウイルスの複製を補助するものとして役立つ。この戦略は、幹細胞をその表現型の大きな柔軟性に照らして用いることでうまく進めることができる。実験用の一様な細胞基質(例えばBHK−21系細胞、CV−1系細胞)に対する多くのウイルスの適応は、ウイルスの複製サイクルに影響を及ぼすことでそれらの産生効率を変化させる。これらの制約を制御するメカニズムが明らかにされ始めている(WangおよびShenk、2005年)。
【0077】
本発明のもう一つの目的は、本発明において先に定義した干渉RNAをコードする核酸分子である。
【0078】
本発明は同様に、宿主細胞、好ましくはインビトロで培養状態に維持された、トリ細胞内における干渉RNAの発現を可能にするプロモーターの制御下に置かれた、本発明に従った前記干渉RNAをコードする核酸分子を含む発現ベクターにも関するものである。
【0079】
本発明の好ましい態様に従うと、このプロモーターは誘導性プロモーターである。
【0080】
本発明は、上述した発現ベクターで形質転換されたトリ幹細胞にも関するものである。
【0081】
本発明はさらに、配列番号1(配列表参照)に従ったアミノ酸配列と少なくとも68%の同一性を有するタンパク質配列のポリペプチドをコードする核酸配列にも関するものである。
【0082】
なお本発明は同様に、配列番号1に従ったアミノ酸配列と少なくとも68%の同一性を有するタンパク質配列のポリペプチドも含んでいる。
【0083】
この新規なタンパク質配列をデータベースに掲載された既知の配列と比較するためには、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)ソフトウェアが用いられた。既知のあらゆるタンパク質のうち、最高の同一性レベルを有するものは、配列番号1の配列と67%の同一性のタンパク質配列を有する。
【0084】
本発明のもう一つの目的は、配列番号2と少なくとも94%の同一性を有する核酸配列である。
【0085】
タンパク質配列と同様に、配列番号2を、BLASTソフトウェアに掲載されている既知の配列と比較した。最大の同一性百分率は93%であった。
【0086】
本発明は同様に、上述の配列のうちの一つを有する核酸分子が中に挿入されているクローニングベクターおよび/または発現ベクターにも関するものである。
【0087】
本発明は同様に、Nanog遺伝子のプロモーター領域に対応する、すなわちニワトリのNanog遺伝子のコード配列を開始するATGコドンの前の12112個の塩基対に対応する、配列番号11に従ったヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する核酸配列にも関するものである。
【0088】
このNanog遺伝子のプロモーター領域は、この遺伝子の調節エレメント、そしてより正確には、転写調節因子のための固定部位を含む。この遺伝子は幹細胞においてのみ発現することから、その発現を調節するメカニズムの研究は、幹細胞が未分化状態にとどまる条件を決定するために特に重要である。当業者であれば、このプロモーター配列上に固定され得る調節因子ならびにDNA上のそれらの正確な固定部位を、それらが既知のものであれ、または新たに同定されるものであれ、同定することができるものである。概説として、(van Steensel B.、2005年、Nat Genetics)、(Siggia ED.、2005年、Curr Opin Genet Dev)、および(Pavesi G、Mauri G、Pesole G、2004年、Brief Bioinform)を参照のこと。特に、既知の調節配列は、遺伝子発現の調節配列を掲載しているTRANSFAC、TRRD、およびCOMPELデータベース上で検索を行うことにより同定可能である。これらのデータベースにはhttp://transfac.gbf.de/TRANSFACまたはhttp://www.bionet.nsc.ru/TRRDといったアドレスでアクセスできる。
【0089】
本発明のもう一つの目的は、以上で定義された配列を有する核酸分子が中に挿入されているクローニングベクターおよび/または発現ベクターにある。
【0090】
本発明は同様に、先に記載したようにクローニングベクターおよび/または発現ベクターを組込んだ原核細胞または真核細胞にも関するものである。
【0091】
本発明のもう一つの目的は、多くとも約1%の血清を含む培地内での、幹細胞の、より特定的にはトリ幹細胞の培養方法にある。この方法は、Nanog遺伝子が過剰発現している幹細胞を培養することを特徴とする。この過剰発現は、当業者にとって既知のあらゆる手段、特に内因性Nanog遺伝子の発現を制御するいわゆる「強い」プロモーターでの細胞の変更によって、あるいはまた、Nanog遺伝子を過剰発現するベクターの導入によっても得ることができる。これは特に、ニワトリのNanog遺伝子を過剰発現するベクターを幹細胞内に導入することによって実現される。この遺伝子は、実際には、血清中に含まれている成長因子に対する「独立性」を細胞に付与するという特性を有する。このように形質転換された細胞は、1%未満の血清を含有する培地中で、初期幹細胞と同じ位長く培養し継代培養することができる。
【0092】
この方法は、広い工業的応用の分野を開くものである。すなわち、一方では、この方法は経済的であり(通常の10%ではなくもはや1%の血清しか使用しない)、他方では、場合によって血清中に存在する成長因子の特異的効果を知りたい場合に、最小限の血清で細胞を培養できるという利点がある。
【0093】
以下の例は、本発明の例示を可能にするが、制限的意味を有するものとみなされるべきものではない。
【0094】
図面の説明
図1:特異的iRNAによる1P06遺伝子の発現の阻害は、CESC細胞の増殖の大きな減少を誘導し、その分化を誘導する。この効果は、ヒドロキシ−タモキシフェンによりその分化が誘導されたクローンの形態で測定される。
【0095】
図2:iRNA−1P06−2による1P06遺伝子の発現の阻害によって得られる分化したクローンの分子分析。分化したクローンまたは増殖クローンのトランスクリプトームの含有量がリアルタイムPCRにより分析される。
【0096】
図3:特異的iRNAによるNanog遺伝子の発現の阻害は、CESC細胞の分化、ひいては細胞増殖の停止を誘導する。この効果は、ヒドロキシ−タモキシフェンにより分化が誘導されたクローンの形態で測定される。
【0097】
図4:特異的干渉RNAによる1P06遺伝子およびNanog遺伝子の発現の阻害。
A−抗SSEA−1抗体による、分化で誘導された細胞の標識、
B−干渉RNAにより誘導された増殖の停止の動態、
C−分化の誘導後の細胞における分化の標識遺伝子の発現の、分子分析。
【0098】
図5:セキショクヤケイの1P06遺伝子のオルソログおよびパラログを含むPOUマルチファミリーの異なるメンバーの系統樹。
【0099】
図6:セキショクヤケイの1P06遺伝子の、異なる種のそのオルソログとの相同性百分率。
【0100】
図7:セキショクヤケイ種におけるPOUファミリーのその他の因子との1P06遺伝子の相同性百分率。
【0101】
図8:増殖状態のCESC細胞内における融合タンパク質GFP−1P06の局在化(N:核、C:細胞質、N+C:核および細胞質)。
【0102】
図9:増殖状態のCESC細胞における融合タンパク質GFP−1P06の過剰発現の影響。クロマチンの構造化のレベルが決定される。
【実施例】
【0103】
実施例1:干渉RNAを用いた1P06遺伝子の阻害による、トリ幹細胞の分化の誘導
a) 干渉RNAをコードする発現ベクターの構築
プラスミドpFLΔNeoは、pBSK(Stratagene)のSmaI/HindIII部位における、PCRにより増幅された2kbのmU6ΔneoD断片の挿入により得られる。このmU6ΔneoD断片は、NIH BethesdaのSheng博士から提供された、かつ論文(Coumoulら、2004年)に記載されている、鋳型mU6D−Neo−DApaIDXhoIからオリゴヌクレオチドプライマーm−U6−smaI−Sおよびm−U6−HindIII−ASで増幅される。
【0104】
サイトhttp://www.proligo.com、http://www.qiagen.com、http://www.ambion.com上で提供されるソフトウェアを用いてひとたび設計したら、5分間95℃で加熱することによる変性の後、1mMのMgCl2の存在下で室温での緩やかな再生により、100pMの各iRNAオリゴヌクレオチドをハイブリダイズして二本鎖断片を得た。得られた二本鎖オリゴヌクレオチドを、HindIII酵素およびXhoI酵素での消化により調製された、pFLΔNeoベクターのHindIII/XhoI部位に直接クローニングする。HincII部位の消滅およびこれらの正のプラスミドの系統的な配列決定により、スクリーニングを確認する。各々の標的RNA「X」について、かくして、ベクターpFLΔNeoX−iRNAを得る。利用された異なるiRNAの配列は、配列表に示されている。トランスフェクションの前に、アンピシリン耐性遺伝子内に存在する固有の部位であるAhdIによりベクターを線状化させる。
【0105】
リコンビナーゼの発現ベクターCRE−ERT2−hygroは、複数のステップにより、市販のベクターpCI−Neo(Promega)から誘導される。ハイグロマイシン耐性カセットは、オリゴヌクレオチド対NruI−hygroSおよびBamHI−hygroASを用いるPCR増幅により、市販のベクターpIRES−Hygro(Clontech)から得られる。得られた断片は、KpnI−BamHI消化により予めネオマイシン耐性カセットが除去されているpCI−Neoベクター内のNruI−BamHIにおいて直接クローニングされる。得られるプラスミドは、プラスミドpCI FLHygroである。リコンビナーゼCRE−ERT2のコード相は、ストラスブールのIGMCのP.Chambon教授により提供された、かつFeilら、1997年の刊行物において記載されている、プラスミドpCRE−ERT2から、オリゴヌクレオチド対CRE−ERT2−SalISおよびCRE−ERT2−smaIASを利用することにより増幅される。得られた増幅断片は、SalI−SmaIによる消化によって調製された受容ベクターpCI FL−Hygroに直接クローニングされる。クローニングは指向性であり、その結果としてベクターpCRE−ERT2−Hygroがもたらされる。コード相全体は、増幅の完全性を確認し、そしてリコンビナーゼの優れた活性を可能にするべく配列決定される。
【0106】
b) トリ幹細胞内への干渉RNAを含む発現ベクターの導入
CESC細胞を、Painら、1996年、および仏国特許出願公開第94/12598号明細書、仏国特許出願公開第00/06029号明細書において先に記載されている通りに、インビトロで得、増幅させ維持した。トランスフェクションについては、異なる線状のベクターを2〜10μg用いて、先に記載されている通り(Painら、1999年、仏国特許出願公開第00/06029号明細書および仏国特許出願公開第01/15111号明細書)、リポソーム(Fugene 6、Roche)を用いて0.5〜1×106個の細胞をトランスフェクトする。第一のステップは、発現ベクターpFLΔNeoX−iRNAをトランスフェクトすることから成る。ネオマイシン(100〜250μg/ml)での選択は、7日間行う。得られた耐性クローンを計数し、個別に採取、増幅し、冷凍して、後で増幅の後に利用できるようにすることができる。該耐性クローンは、iRNAの発現ベクターが組込まれているものの、それを発現することはない。これらのクローンを次に解離させ、リコンビナーゼpCRE−ERT2−Hygroの発現ベクターによる新たなトランスフェクションに付す。ネオマイシン(50〜200μg/ml)での選択が常に存在する状態で、ハイグロマイシン(25〜75μg/ml)の存在下で細胞を選択する。7日後に、得られたクローンを新たに計数し、採取し、個別に増幅させる。
【0107】
c) 幹細胞における干渉RNAの条件つき発現
ベクターpFLDNeoXiRNAは、マウスプロモーターU6における、このプロモーターの機能を条件付きのものにする配列であるlox−TK−Neo−lox配列の存在によって、iRNAの発現を制御することを可能にする(Coumoulら、2004年)。プロモーターは、このインサートのリコンビナーゼCREによる切除の後に機能的になる。本発明者は、培地中のタモキシフェンの存在に依存する活性を有するリコンビナーゼCRE−ERT2を特に利用した(Metzgerら、1999年)。
【0108】
記載した二つのトランスフェクションステップの後で得られたクローンについて、96時間、培地に1μMの4−ヒドロキシ−タモキシフェンを添加することにより、loxP部位により囲まれたネオマイシン耐性カセットの切除が誘導され、標的iRNAの産生が可能となる。
【0109】
d) 得られた分化細胞の形態学的特徴づけ
CREリコンビナーゼの発現の4−ヒドロキシ−タモキシフェンによる誘導の後、得られた細胞の形態を、直接的な顕微鏡観察およびCCDカメラCoolSNAP(Photometrix)を用いた記録により分析する。
【0110】
クローンを4−ヒドロキシ−タモキシフェンによる誘導から4日(96時間)後に計数する。得られた結果は図1に表されている。3つの独立した実験において得たクローンの合計数は、それぞれ、pFLΔNeo−0(空の対照ベクター)ではn=45、pFLΔNeo−1ではn=59、pFLΔNeo−2ではn=61、そしてpFLΔNeo−4ではn=76である。
【0111】
図1は、分化が誘導されたクローンの百分率および常に増殖状態にあるクローンの百分率を示す。iRNA−2のみにおいて、未分化クローンの数が示す通り、いかなる大きな表現型の変化も観察されていない空の対照ベクター並びにiRNA−1および−4と逆の誘導現象が得られる。
【0112】
かくして、未分化細胞の増殖に必要な成長因子およびサイトカインの存在下でさえ、iRNA−2を発現する細胞においては、クローンの細胞の形態の急速かつ大きな変化が見られる。これらのクローンの増殖能力は失われ、当該クローンは誘導されていないクローンと比較して比例的に小さくなる。誘導されていないこれらのクローンは、リコンビナーゼによるloxカセットの未切除、ひいてはiRNAの未発現の結果として生じる可能性がある。
【0113】
誘導された細胞は、誘導されていない親細胞よりも大きなサイズを有する平担な形態を呈している。走査型顕微鏡での観察は同様に、誘導された細胞のさらに大きい展延をも示している。
【0114】
e) 誘導された細胞の分子的特徴づけ
分子レベルで特徴づけるために、分化および未分化クローンの1P06遺伝子の発現を阻害するiRNAの発現により誘導されたクローンを採取し、分析した。得られた結果は図2に示されている。異なる標識遺伝子の発現レベルが表されている。レベル1は、空のベクターpFLDNeo−0を組込んだクローンにおいて観察されたものである。
【0115】
リアルタイムRT−PCRアプローチによるこれらのクローンのトランスクリプトーム含有量の分析は、1P06遺伝子の包括的な発現レベルが親細胞に比べてこれらのクローンにおいて低いことを示している(結果は示されていない)。Nanog遺伝子、Eomes遺伝子、およびGcnf遺伝子の発現レベルは減少する。逆に、Gata6遺伝子はその発現を増大させており、このことは、初期内胚葉と同等の分化経路での誘導を示唆している。
【0116】
実施例2:干渉RNAを用いたNANOG遺伝子の発現の阻害によるトリ幹細胞の分化の誘導
Nanog遺伝子に対するiRNA発現ベクターを用いて、1P06遺伝子について実施されたものと類似の実験を実施することにより、選択されたクローンの増殖の阻害および分化の誘導も観察する。
【0117】
クローンを4−ヒドロキシ−タモキシフェンの添加によるリコンビナーゼCREの誘導から4日(96時間)後に計数する。得たクローンの合計数は、それぞれ、pFLΔNeo−0(空の対照ベクター)ではn=5、pFLΔNeo−nan−1ではn=21、pFLΔNeo−nan−3ではn=37、pFLΔNeo−nan−5ではn=15である。得られた結果は、図3に示されている。
【0118】
図3は、分化が誘導されたクローン(誘導されたまたは分化したクローン)の百分率、および常に増殖状態にあるクローンの百分率を示す。空のベクターとは逆に、iRNA−nan1およびiRNA−nan3は大部分の細胞の分化を誘導する能力を有する。30%未満のクローンが常に増殖中である。iRNA−nan−5も、程度は低いものの同様にこの分化を誘導する。
【0119】
実施例3:1P06遺伝子およびNanog遺伝子の同時の阻害による分化の誘導
これらの実験において、利用されたshRNAは以下の通りであった。
1P06の不活性化についてはiRNA−2、Nanogの不活性化についてはiRNA−nan1。
【0120】
1P06遺伝子およびNanog遺伝子の発現の阻害による誘導の後のトリ幹細胞の分化を以下の測定値により評価した。
−抗−SSEA−1抗体による標識において陽性の細胞の百分率(図4A)、
−48時間および96時間にわたって得られるクローンの増殖百分率(図4B)、
−「マーカー」遺伝子:1P06、Tert、Nanog、Gata4、Gata6の相対的発現(図4C)。
【0121】
図4Aは、得られた細胞の大部分が、幹細胞に特徴的な発現(空のベクターでトランスフェクションが実施された場合、100%の細胞が陽性)を有するSSEA−1抗原(Stage−Specfic Embryonic Antigen−1)をもはや発現しないということを示している。
【0122】
図4Bは、時間経過に従った事象、特にクローンの増殖の停止が急速に得られることを明らかにしている。
【0123】
クローンは、先に記載した通り、4−ヒドロキシ−タモキシフェンによる誘導から48および96時間後に、直接的な顕微鏡観察により計数される。図は、その分化が誘導されたか、または常に増殖状態にあるクローンの相対的百分率を示している。すなわち、48時間後には60%のクローンのみがなお増殖中であり、これは、Nanog遺伝子の発現を阻害することにより得られた最大の効果である。1P06遺伝子の阻害から96時間後には、増殖中のクローンはもはや40%しか見られない。
【0124】
図4Cは、1P06およびNanog遺伝子の発現の阻害により分化が誘導された細胞の分子的特徴づけを示す。
【0125】
様々な「標識」遺伝子の発現は、空のベクターpFLDNeo−0を組込んだクローンにおいて見られる発現率に対して標準化される。
【0126】
リアルタイムRT−PCRアプローチによるこれらのクローンのトランスクリプトーム含有量の分析は、1P06遺伝子の包括的な発現レベルが分化後にさらに低いことを示している。Tert遺伝子およびNanog遺伝子の発現レベルは減少する。逆に、Gata−4遺伝子およびGata−6遺伝子はその発現を増大させており、このことは、初期内胚葉と同等の分化経路での誘導を示唆している。
【0127】
実施例4:1P06遺伝子のクローニング
オリゴヌクレオチドと配列決定
全てのオリゴヌクレオチドは、プライマー3(http://frodo.wi.mit.edu/cgi−bin/primer3/primer3_www.cgi)を用いて設計され、その後Proligo社により合成される。テストされた様々な遺伝子の配列は、TIGRインデックス(http://www.tigr.org/tigr−scripts/tgi/T_index.cgi?species=g_gallus)において同定されるか、またはニワトリゲノムのアセンブリ部位(http://www.ensembl.org/Gallus_gallus/)上で直接検索されるか、または新たに同定された配列から直接得られた。
【0128】
RNAの抽出
増殖中の未分化細胞または2日間胚葉体への分化が誘導されたCESC細胞の全RNAを、RNAEasy mini(Quiagen、参照番号74104)キットを用いて抽出する。クローンの全RNAを、RNA Easy micro(Qiagen、参照番号74004)キットを用いて抽出する。RNAの量および質をBioAnalyser 2100(Agilent Biotechnologies)により測定する。
【0129】
液体サブトラクティブハイブリダイゼーション逆転写ステップの後、cDNAを制限酵素Sau 3Aによる消化に付し、ライゲーションにより付加されるプライマーのタイプに応じて二つの集団を構成する。一方の集団は、もう一方の集団内に存在するメッセンジャーを使い果たすために利用され、またその逆も行われる。これらのcDNAはこのとき、一方または他方の集団の相補的オリゴヌクレオチドの鋳型として利用され、各試料の代表性を保つ条件下で増幅される。増幅後、アンプリコンを、一方および他方の集団について1:4の比で混合する。二つのプライマーのうちの一方は5’にビオチン化エレメントを含む。混合の後、DNAをエタノール中で沈殿させ、遠心分離に付し、短い変性ステップ後20時間にわたり生じる再生を容易にするように小さい反応体積内に再度取込む。ストレプトアビジンと結合したビーズを添加して、SSBタンパク質(一本鎖DNA結合タンパク質)の添加により単離したテスターの一本鎖断片およびビオチン化した「ドライバー」DNAを除去する。再びDNAを添加し、一本鎖DNAの富化サイクルを二回新たに反復する。これらのステップの終りに得たDNAに対し、特異的オリゴヌクレオチドでのPCR反応を実施する。この反応により、異なった形で発現した標的の増幅が可能となる。得られた断片をBamHIによる消化に付し、pUC18プラスミド内でサブクローニングする。形質転換および増幅の後、コロニーを個別に採取し、プラスミドDNAを抽出し、ABIPrism3730シーケンサでBigDye Teminator Cycle Sequencingキットを用いて、ユニバーサルプライマーM13revでの配列決定反応に付す。
【0130】
TIGRデータ(http://www;tigr.org/tigr/T_index.cgi?species=g_gallus)といったようなライブラリーデータと比較することによるこのインサートのクローニングおよび同定の手順の全体は、Genome Express社(http://www.genome−express.com/、Meylan)により実施した。
【0131】
1P06遺伝子のライブラリースクリーニングおよびクローニング
増殖状態の未分化CESC細胞の全RNAを、EcoRIで開いておりCIAP(Stratagene)での処理により脱リン酸化され、仏国特許出願公開第00/06009号明細書、およびAcloqneら、2001年で先に記載されているλZAP−IIベクター(Stratagene)中で、cDNAライブラリーを構築するために用いる。150ngのファージDNAを、λZapベクター中に存在するオリゴヌクレオチドT7またはT3とを結び付ける40pMの異なるオリゴヌクレオチド対と、1P06G01クローンに由来するオリゴヌクレオチドpou(1P06)Sまたはpou(1P06)ASを用いることによって、ゲノムPCRによってスクリーニングする。増幅条件は、96℃で5分の変性、次に、95℃で30秒、54℃で30秒、および72℃で1分から成るサイクルを10回、そしてそれに続く、96℃で30秒、54℃で30秒、および72℃で1分のサイクルを20回である。最後の伸長ステップは7分間維持される。増幅産物を、アガロースゲル上での電気泳動に付し、Gel Extraction Kit(Qiagen)キットにより精製し、pGEM−Teasyベクター(Promega)中でサブクローニングし、配列決定する。pL9−4クローンは、最初のクローン1P06g01の終わりから40bp後ろに停止コドンを含み、クローンpL7−2では、配列の上流に350bpを得ることが可能になる。
【0132】
5’RACEキット(Invitrogen)を用いて、5’RACE法を行う。10pMの1P06G01プライマー(RAAS2)を用いて42℃で1時間、2μgの全RNAを逆転写させる。産物がひとたび精製された時点で、37℃で30分間、ターミナルトランスフェラーゼTdTの作用によりポリA尾部を付加する(Invitrogen)。20pMの1P06プライマー(RAAS1)およびAnchPrimSeqの存在下でのPCR反応において、鋳型として反応物の1/5を利用する。反応のパラメータは、94℃で2分間の変性と、その後の、94℃で30秒の変性、55℃で30秒のハイブリダイゼーション、および72℃で2分の伸長段階から成るサイクルを30回であるが、最後の反応は7分続く。P06(pL7−2)ASプライマーおよびPCRprimseqプライマーを用いて、100倍に希釈した5μlの産物に対して二回目の全増幅を実施する。電気泳動による移動の後に最終産物を精製し、その後pGEMTeasyベクター内でサブクローニングする。得られたクローンR1−8は、ATGが同相である状態でpL7−2クローンの上流に300bpを含む。その結果、888bpのオープンリーディングフレームが得られる。
【0133】
RT−PCR
oligodTプライマーおよびSuperscript II酵素(Invitrogen)を用いて、42℃で1時間、2μgの全RNAを逆転写させる。MXP 3000P PCRシステム(Stratagene)でリアルタイムPCRを実施する。100倍に希釈した混合物2μlを、10pMの各プライマー(Proligo)の存在下で、25μlの最終体積で、12.5μlのMix Quantitect SYBR Green緩衝液(Qiagen)と混合させる。各試料を96ウェルプレート(参照番号410088 Stratagene)において三回テストする。パラメータは、95℃で15分の変性ステップと、それに続く、95℃で30秒の変性、55℃で30秒の再生、および72℃で30秒の伸長ステップから成るサイクル40回である。遺伝子の発現レベルは、サイトhttp://www.gene−quantification.info上で利用可能な詳細な手順にしたがってΔΔCt法により計算される。RS17リボソーム遺伝子(X07257)の発現レベルは、試料間の内部標準として用いられる。
【0134】
様々なステップの結果、ライブラリーのスクリーニングのステップおよび5’RACE法のステップの終わりに、POUドメインを含む228bpの第一の断片が、次に888bpの配列(配列番号2)が同定される。この配列は、296個のアミノ酸のタンパク質(配列番号1)をコードする。かくして同定されたタンパク質のPOUドメインは、90番アミノ酸で始まり、149個のアミノ酸で構成されている。
【0135】
POUドメインを含む様々な種の遺伝子データのライブラリーにおいて同定された既知の配列を比較することにより、以下1P06と呼ぶ、ニワトリにおいて同定された新たな遺伝子の系統発生学的位置づけを示すことができる。図5、6および7を参照のこと。
【0136】
NTiVectorソフトウェア(InVitrogen)を用いて、セキショクヤケイニワトリの1P06遺伝子のコード相の888塩基対と、様々なPou5f1遺伝子の配列、特に、尾索類O.dioicaの1155bpの配列(AY613856)、マウスM.MusculusのPou5f1の1134bpの配列(NM_013633)、ウシB.taurusの1615bp(NM_174580)、ブタS.scrofaの1080bpの配列(Q9TSV5)、サルP.troglodytesの1080bpの配列(Q7YR49)、ヒトH.sapiensのpou5f1の1413bpの配列(NM_002701)、ラットR.rattusの1141bpの配列(XM_579282)、メキシコサンショウウオA.mexicanumの3111bpの配列(AY542376)、ゼブラフィッシュD.rerioの1418bpの配列(NM_131112)、有袋動物T.vulpeculaのPOUドメインの570bpの配列(AY345973)、アフリカツメガエルX.laevisのOct60の2111bpの配列(M60075)、アフリカツメガエルX.LaevisのOct91の2418bpの配列(M60077)、およびアフリカツメガエルX.LaevisのOct25の1998bpの配列(M60074)の遺伝子の配列とをアラインすることにより、同定された配列がPOUドメインを含むパラログ遺伝子配列よりもこれらのPou5f1遺伝子の配列により近いことを理由として、1P06が他の種のPou5f1遺伝子のオルソログであることを同定することができる(図4、5、および6)。
【0137】
図6は、ニワトリの1P06のcDNAが、ウシ、マウスおよびヒトのオルソログとそれぞれ51、46および51%の相同性を有することを示している。35〜38%の相同性百分率が、ゼブラフィッシュおよびアフリカツメガエルの様々なホモログのSpg遺伝子(Pou 2)で観察される。
【0138】
図7は、ニワトリにおいて同定された様々な既知のパラログと1P06のcDNAの配列との間に存在する相同性百分率を示している。1P06は、Oct−1、Factor I、Brn3.2およびOct6のcDNAとそれぞれ14、60、62、および61%の相同性を有する(Barthら、1998年、Levavasseurら、1998年)。
【0139】
実施例5:1P06遺伝子から産生されたタンパク質の研究
融合タンパク質GFP−1P06は核タンパク質である
市販のベクターpE−GFP−C1(Clontech)を用いて、トランスフェクション後のその細胞局在化を視覚化するべく、GFPに適した様々なcDNAをクローニングした。
【0140】
本発明者は、1P06、Nanog、Gcnf、Sox2、Lrh1、Sf1およびGata4のcDNAのコード相を、このベクター内に導入した。
【0141】
細胞の中に一時的にプラスミドpGFP−1P06、Nanog、Gcnfを導入した。1cm2あたり15000〜20000個の細胞の平均密度でウェル内の無菌スライドグラス上にCESC細胞を播種した。数時間の接着の後、血清を有さない100μlの培地中に1μgの線状DNA、3μgのFugene(Roche)を含むトランスフェクション混合物を調製し、室温で10分間放置してから、細胞上に被着させ、これらの細胞を標準的な増殖条件下で一晩インキュベーター内に置く。2日目に、トランスフェクション混合物を取り出し、PBSで細胞を洗浄し、その後標準的な条件下で培養する。48時間後に、細胞を洗浄し、次にPBS内において0.5%グルタルアルデヒド/1.5%ホルムアルデヒド混合物で4℃で15分間固定する。洗浄後、Hoescht溶液(10μM/ml)で細胞をインキュベートして光を避けた状態で核を視覚化させる。紫外線の通過を確実にする物質(Gel Mont BioMedia)の存在下でスライドグラスを取付け、融合タンパク質により発光された蛍光の観察を蛍光顕微鏡を用いて実施する。
【0142】
計数された細胞数は、n=49(対照としてのGFP−T)、n=71(GFP−1P06)、およびn=74(GFP−Gata4)である。図8は、GFPの蛍光の観察された局在化が、核内(N)、細胞質内(C)、または核および細胞質(N+C)内にある細胞の百分率を示している。この図は、融合タンパク質1P06−GFPが主として核タンパク質であることを示している。
【0143】
ニワトリの胚線維芽細胞といったその他のトリ細胞型において、同様の結果が得られた(結果は図示せず)。
【0144】
なお、「バンドシフト」技術による分析から、タンパク質1P06が、DNAのコンセンサス配列Oct−4を認識し、その上に固定される能力を有し得ることを実証することが可能となった。
【0145】
結論として、ニワトリのタンパク質1P06は、DNA上への固定活性を有する、核に局在するタンパク質である。
【0146】
実施例6:1P06遺伝子の過剰発現
CESC細胞の生理における1P06遺伝子の過剰発現の影響を評価するため、pGFP−1P06構築物、およびGFP−SOX2、GFP−NANOG、GFP−GATA4といったようなその他の融合タンパク質でトランスフェクトした細胞を、形態学的見地から分析した。
【0147】
図9は、得られた結果を示している。計数された細胞の合計数は、n=51(対照GFP−T)、n=93(GFP−1P06)、およびn=77(GFP−Gata4)である。
【0148】
トランスフェクションを受けた細胞の大部分は、その形態において大きな変化を有するとは思われない。pGEP−1P06構築物で一つの例外が見られ、これについては、約20%のケースで、特に核の凝縮形態を伴う、改変された核の形態が高い割合で観察されている。分解されたクロマチンを有する細胞の百分率は、GFP−1P06構築物でのトランスフェクションを受けたこれらの細胞内ではるかに大きい。このことはアポトーシス現象を示し得る。トランスフェクションの時間は比較的短い(72時間未満)ことから、これらの条件下でより大きな形態学的変化および表現型の変化を同定できる可能性がないことを想定することが可能である。
【0149】
本発明者の仮説は、GFP−1P06構築物の過剰発現がCESC細胞にとって有毒であるということである。融合タンパク質の核局在化を条件付きにするために、GFP−1P06−ERT2構築物を実現した。対照構築物GFP−ERT2の核局在化が、培地中の4−ヒドロキシータモキシフェンの存在に依存していると思われる場合、予想通り、4−ヒドロキシ−タモキシフェンの存在下または不存在下で、融合タンパク質GFP−1P06−ERT2の局在化の大きな変化を検出することは不可能であった。GFPの存在は、条件の如何に関わらず、主として核内にとどまっている。1P06産物の核局在化シグナルは強すぎて、4−ヒドロキシタモキシフェンの不存在下でERT2部分に結合するシャペロン分子の存在だけではこのシグナルを平衡化させることはできないと考えるべきである。大きな細胞質シグナル伝達を得ることのできない推定上の局在化シグナルnlsにその突然変異が影響を与える突然変異体1P06mutでも、同じことが観察された(Painら、2004年)。
【0150】
実施例7:Nanog遺伝子のプロモーターのクローニング
Nanog遺伝子のプロモーターのクローニングにより、トリの胚性幹細胞および生殖幹細胞におけるこれらの遺伝子の発現を調節することのできる転写因子が固定される特異的部位の存在を実証することができる。
【0151】
トランスフェクション実験においては、Nanogプロモーター構築物で以下の結果が得られた。このプロモーターは、未分化の増殖細胞においてのみ排他的に活性である。かくして未分化のおよび分化誘導されたCESC細胞における一時的なトランスフェクションにより、未分化の細胞のみがこのプロモーターをトランス活性化する能力を有するということを示すことができる。かくして、p2000Nanog−GFP構築物でトランスフェクトされた細胞は、42%の細胞においてGFPの発現を示し、かつ該細胞が48時間10−7Mのレチノイン酸で処理されている場合には、7%の細胞のみにおいてこの発現を示す。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】特異的iRNAによる1P06遺伝子の発現の阻害が、CESC細胞の増殖の大きな減少を誘導し、その分化を誘導することを示すグラフ。
【図2】iRNA−1P06−2による1P06遺伝子の発現の阻害によって得られる分化したクローンの分子分析を示すグラフ。
【図3】特異的iRNAによるNanog遺伝子の発現の阻害が、CESC細胞の分化、ひいては細胞増殖の停止を誘導することを示すグラフ。
【図4】特異的干渉RNAによる1P06遺伝子およびNanog遺伝子の発現の阻害を示すグラフ。
【図5】セキショクヤケイの1P06遺伝子のオルソログおよびパラログを含むPOUマルチファミリーの異なるメンバーの系統樹。
【図6】セキショクヤケイの1P06遺伝子の、異なる種のそのオルソログとの相同性百分率を示す表。
【図7】セキショクヤケイ種におけるPOUファミリーのその他の因子との1P06遺伝子の相同性百分率を示す表。
【図8】増殖状態のCESC細胞内における融合タンパク質GFP−1P06の局在化を示すグラフ。
【図9】増殖状態のCESC細胞における融合タンパク質GFP−1P06の過剰発現の影響を示すグラフ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養状態の幹細胞から分化したトリ細胞を調製する方法に関するものである。トリ幹細胞の多能性の維持に関与する遺伝子が同定されクローニングされた。幹細胞におけるこれらの遺伝子の発現を阻害することにより、これらの幹細胞はその多能性の特徴を失い、分化経路を開始する。インビトロで得られるこれらの分化細胞は、病原体、特にウイルスの宿主細胞として役立ち、かくして抗ウイルスワクチンの生産に利用することが可能である。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は、自己複製能力を有する、胎児または成人に由来する多能性または複能性の細胞である。換言すると、幹細胞は、培養状態で無限に分裂する能力、ならびに由来元の母細胞と同じ増殖能および分化能を有する娘細胞を提供する能力を有し、かつ分化細胞を生じさせる能力を有する、非癌性の細胞である。
【0003】
ニワトリの胚性幹細胞(Chicken Embryonic Stem Cellsを略してCESC)は、ステージXのニワトリの胚盤葉細胞を培養することにより単離されている(Painら、1996年、仏国特許出願第94/12598号明細書)。これらのCESC細胞は、胚性幹細胞(ESC)の全ての特徴を有する。これらのトリ細胞の多能性を維持することのできる培地が、国際公開第96/12793号パンフレットの特許出願の対象となっている。これらの細胞の特徴の大部分は、Lavialらによる刊行物(提出済)の中で記載されている。
【0004】
幹細胞の特性の一つは、インビトロおよびインビボの両方で分化細胞を生じさせるその能力にある。一様な前駆体集団からのこれらの分化細胞の獲得は、培養条件の変更により実現される。実際、CESC細胞は、成長因子、および不活性「フィーダー」のようなサイトカインが存在する、インビトロでの一定の培養条件下においてのみ、未分化の状態で増殖し続ける。培地が貧化すると直ちに増殖の平衡は変化し、細胞は分化を開始する。CESC細胞からインビトロで分化細胞を得ることの利点の一つは、これらの細胞から生成され得る表現型の幅がきわめて広いことにある。実際、CESC細胞は多能性の特性を有する。これらは、発生学的レベルで規定される全ての系、すなわち中胚葉、外胚葉または内胚葉由来のものに分化し得る。幹細胞に固有のこの多能性の特性は、すでに分化経路を開始している組織の初代細胞においては存在しない。この特性は、胚性幹細胞において最大であり、また、複能性である組織性の成熟幹細胞レベルでは、存在はするものの、より制限された形で存在する。後者の幹細胞は、唯一の同じ系に属する分化経路においてのみ分化可能である。
【0005】
核のリプログラミングプロセスにより、分化した細胞は分化の可塑性をとり戻すことができる。これらのメカニズムは、アセチル化および脱アセチル化、メチル化および脱メチル化、リジンのユビキチン化、セリンのリン酸化、プロリンの異性化のプロセスによる、DNAおよび/またはヒストンなどのその構成要素のレベルで生じるエピジェネティックな修飾(CpGアイランド上でのメチル化)を特に理解することによって分子レベルで明らかにされ始めており、その結論の一つは、プロモーター上に結びつくことによりキー遺伝子の発現レベルを制御する、タンパク質複合体の数多くのeの動員である。これらのアクターの直接的な翻訳後修飾もまた補足的な調節の要件である。
【0006】
当業者に、インビトロでの多能性幹細胞から分化細胞への分化を誘導または制御するための様々なプロセスが既知である。
【0007】
第一のアプローチは、細胞増殖の維持に必要なサイトカインおよび成長因子をほとんどまたは全く含有しない培地内に細胞を播種することから成る。特に、gp130ファミリーのサイトカイン(LIF、IL−6、CNTF、GPA、IL−11・・・)が欠如しているかまたはその濃度が低い場合、増殖の減速および多能性のマーカーの漸進的な喪失が誘導される。
【0008】
このプロセスに付された細胞の分化は一様ではない。すなわち、異なる細胞型が、細胞の密度、自己分泌、および傍分泌の条件、ならびにそれらの相互関係にしたがって、得られることになる。得られた細胞の多様性は、培養物全体における、例えば中胚葉系に特異的なBrachyury遺伝子およびGoosecoid遺伝子、神経外胚葉に特異的な一部のPax遺伝子およびSox遺伝子、ならびに内胚葉系に特異的なHnf3といった、系の早期マーカーの大部分の検出により推定することができる。
【0009】
第二のアプローチは、細胞培養のために処理されていないボックス内に細胞を播種することにより胚様体を実現することから成る。分離された細胞は、貧化され(例えば0.5〜5%といったより少ない血清、かつ特異的な成長因子およびサイトカインの不在)穏やかな撹拌に付された大量の培地内か、または懸滴法で利用される貧化された少量の培地内に懸濁される。様々な例が、米国特許第5456357号明細書、米国特許第5914268号明細書、および米国特許第6458589号明細書において示されている。もう一つの条件付けは、コニカルチューブ内において(Kurosawaら、2003年)、特定の処理済みの表面上において(Konnoら、2005年)、またはアルギン酸マイクロビーズへの封入により(Magyarら、2001年)直接胚葉体を形成することである。かくして細胞の付着およびその基底外側の分極を妨げることにより、胚性幹細胞は増殖し、かつ、異なる胚葉を模倣する三次元構造をとる(Dangら、2002年)。こうして得られた細胞型は極めて多様である。さらに、分化の様々な段階の獲得動態において多様性が見られる。
【0010】
第三のアプローチは、分化用化学誘導剤の利用にある。化学誘導物質とは、天然由来のものであれ化学合成によるものであれ、成長因子またはサイトカインに類似していない全ての非ペプチド性の化学分子を意味する。
【0011】
例えば、DMSO(ジメチルスルホキシド)は、誘導された複数の細胞型を伴う混合分化集団を得ることを可能にする一般的な誘導剤として利用される(Dinsmoreら、1996年)。レチノイン酸は、非限定的ではあるが、単独で、または例えばcAMPと組み合わせた形で、精確な動態条件下での脂肪細胞の獲得(Daniら、1997年)、心筋細胞の獲得、収縮能および特異的ミオシンの存在を特徴とする様々な筋細胞(Rohwedelら、1994年;Drabら、1997年)の獲得を伴う、特に中胚葉由来のものへの幹細胞の分化を得ることを可能にする。
【0012】
現在公表され、特にマウスの胚性幹細胞から特定の表現型を有する細胞を得ることを可能にする手順の大部分は、化学誘導剤と成長因子の結合性複合体とを結びつけている。誘導の動態における変動およびこれらの作用物質の投入により、得られる表現型を調節することができる。脂肪細胞(Daniら、1997年)、骨芽細胞(ZurNiedenら、2003年;Philipsら、2001年)、および異なる表現型を有する神経前駆細胞(Fraichardら、1995年;Plachtaら、2004年;GlaserおよびBrustle、2005年)の獲得動態について例が示されている。
【0013】
かかるアプローチの再現性は時として困難であり、特定のウイルスの複製または目的の分子の生産といった工業的利用に十分な大量の分化細胞を得ることを可能にするものではない。その上、これらのプロセスは非常に特殊な培地の利用が関与する数多くのステップ、および細胞操作のための数多くのステップを含んでいる。
【0014】
前述のアプローチにより、幹細胞の分化を誘導することが可能になる。得られた集団は多様であることから、その後に、所望の表現型を有する細胞を選択し単離することが必要であるが、そのためのいくつかの技術が当業者に知られている。特異的表面抗体、枯渇、または磁気濃縮による標識の後の、表面選別機による選別を挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0015】
もう一つのアプローチは、正の遺伝子選択プロセスを用いる濃縮手順を利用することから成る。このためには、薬物(ネオマイシン、ハイグロマイシン、ゼオマイシン、プラスチシジン)の選択のための遺伝子、またはそれを発現する細胞の物理的選別を可能にする表現型マーカー(野生型GFPまたは修飾GFPといった蛍光タンパク質、ベータ−ガラクトシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ)の発現は、組織特異的プロモーターに依存した状態に置かれる。利用されるプロモーターの中では、Myosine鎖のプロモーター(Mullerら、2000年)、筋形成の誘導遺伝子Myf5もしくはMyoDのプロモーター、Nestineのプロモーター(Keyoungら、2001年)や、Hb9のプロモーター(SinghRoyら、2005年)、GFAPといった星状膠細胞の特異的プロモーター(Benvenisteら、2005年)、またはCNP(環状3’ホスホジエステラーゼ)遺伝子を有するオリゴデンドロサイトといったその他のニューロンタイプのプロモーター(Glaserら、2005年;Schmandtら、2005年)を挙げることができる。
【0016】
もう一つのアプローチは、例えば、筋芽細胞系のcDNA(Pax3、MyoD、Myf5、Myognenine、Mft−4などの遺伝子)を用いるなどによる、所与の系において分化を誘導し得る目的のcDNAの過剰発現から成る。この過剰発現は、ランダム挿入の過剰発現ベクターを用いて実施することができるが、アクチンの所与の遺伝子座または系の特異的遺伝子座へのノックイン戦略を用いて、さらにはウイルスベクターおよびレトロウイルスベクターを用いても実施することができる。
【特許文献1】仏国特許出願公開第94/12598号明細書
【特許文献2】国際公開第96/12763号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、現在のところ、後の選択ステップを実施することなく、インビトロで分化した一様な細胞集団を得ることを可能にする方法は存在しない。このような理由から、本発明者は、補足的な選択ステップを必要としない、一様な形態学的、生化学的および機能的特徴を有する、分化した細胞集団を得ることを可能にする新規な技術を開発した。本発明に従うと、誘導されたクローン、つまり分化した細胞から成るクローンの80〜100%の細胞の形態、表現型、および分子の変化を得ることが可能である。
【0018】
哺乳動物においては、幹細胞の多能性および増殖能力を制御する複数の遺伝子が同定されている。特に、Oct4遺伝子(Nicholsら、1998年)は、インビボで多能性細胞においてのみ発現するキー遺伝子である。インビトロで、Oct4は、マウスおよび霊長類の胚性幹細胞、ならびに一部の腫瘍細胞系において発現する。マウスの胚性幹細胞におけるOct4の発現レベルは、これらの幹細胞の将来を制御すると思われる(Niwaら、2000年)。
【0019】
Oct4遺伝子は、ホメオドメイン転写因子のPOUファミリーに属する。遺伝子から産生されるタンパク質は核局在化し、そのDNA固定ドメインを介して標的遺伝子の調節エレメント上に直接固定され得る。
【0020】
系統発生学的観点から見ると、哺乳動物以外の種において同等の機能を有する遺伝子が存在する確率は低いものであった。鳥類においては、このような遺伝子は、先行する研究においては同定されなかった(Sooden−KaramathおよびGibbins、2001年)。その上、ゲノムレベルでの相同性は全く報告されていない。
【0021】
哺乳動物においては、Nanog遺伝子(Chambersら、2003年;Mitsuiら、2003年;Hartら、2004年)およびEomes(Russら、2000年;Ginisら、2004年)遺伝子もまた、幹細胞の多能性の維持において主要な役割を果たすものとして同定されている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、適切な培地内で培養されたトリ幹細胞から分化したトリ細胞の調製方法であって、1P06遺伝子、Nanog遺伝子、およびEomes遺伝子の中から選択された幹細胞において発現する遺伝子の発現または活性を阻害することによって前記幹細胞の分化を誘導するステップを含むことを特徴とする方法を提案するものである。
【0023】
この方法の利点は、得られる分化細胞が一様であるという点にある。得られたクローンはもはや幹細胞のクローンに特徴的な形態を有さないが、分化した形態を有する。これらのクローンはまた、親細胞に特徴的な増殖も有さず、誘導後、細胞性は一定のままである。
【0024】
幹細胞の分化のこの誘導は、急速であると同時に不可逆的である。
【0025】
好ましくは、トリ細胞はキジ目に属するトリ、特にニワトリまたはウズラ、さらに好ましくはセキショクヤケイ(Gallus gallus)種に由来する。
【0026】
「幹細胞」という語により、当業者は細胞が以下の特徴を有するものと理解する。
−文献において周知の成長因子の存在下で、長時間、インビトロにおいて自己複製で増殖する能力。
−形態学的観点から見ると、幹細胞は、5〜10μmの核を有する10〜15μmの相対サイズである高い核細胞質比に特徴を有し、アルカリホスファターゼおよびテロメラーゼの固有の生化学的活性といったような様々な固有の生化学的活性を有し、仏国特許第94/12598号明細書および仏国特許第00/06029号明細書に記載されているような様々な特異的抗体により認識される。トリ胚性幹細胞のもう一つの特殊性は、それらが増殖するときのその密な膜の接触にある。
−細胞は多能性であり、これはすなわち、該細胞が複数の細胞型を生じさせることができることを意味し、特に本発明のトリ幹細胞は、外胚葉、中胚葉および内胚葉に由来する細胞へと分化可能である。
【0027】
「分化細胞」という語により、当業者は、細胞が比較的わずかしか増殖しないかまたは全く増殖しないこと、細胞が、より低い核細胞質比と、形態がコンパクトでない、一般により大きなサイズ(15〜20μm超、また、破骨細胞、成熟脂肪細胞、分化筋細胞、一部のマクロファージなどといった一部の特殊な細胞型についてはそれ以上)とを有すること、そして、該細胞が、誘導されていない幹細胞の生化学マーカーを有さないことを理解する。
【0028】
特に、幹細胞は、特異的なインテグリン、カドヘリン、一部のムチン、ケラチノサイトに対するサイトケラチン8、18、および19、またはケラチン16といったマーカーの存在により特徴づけられる上皮細胞へと分化し得る。考慮対象の上皮細胞の由来に応じて、マーカーの様々な結びつきは、特に腫瘍過程において、上皮細胞の由来および分化度に特徴的なものである(Barakら、2004年)。
【0029】
本発明のもう一つの態様に従うと、幹細胞は、CD(分化抗原群)分類によりマウスおよびヒトにおいて知られかつJournal of Immunology(1998年)に公開されている総説においてLaiらが例示している膜マーカーの存在によりとりわけ特徴づけられる造血前駆細胞または分化造血細胞へと分化し得る。特に特異的転写因子といったその他の非膜マーカーも利用することができる。
【0030】
「遺伝子の発現または活性の阻害」という記載により、当業者は、遺伝子の発現を制御することを可能にする通常の全ての手段、特に転写または翻訳の阻害剤の使用が利用可能であることを理解する。特に、干渉RNAを利用することにより、目的の遺伝子の発現を特異的に阻害することができる。
【0031】
本発明の特定の態様に従うと、遺伝子の発現または活性の阻害は、条件付きで実現される。かくして、細胞の分化を当業者が望む時点で開始させることができる。
【0032】
本発明の特定の態様に従うと、遺伝子の発現または活性の阻害は、少なくとも一つの干渉RNAを用いて実施される。
【0033】
干渉RNA分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)を特異的にターゲティングするために利用される。干渉RNAはmRNAにハイブリダイズしようとし、その結果、単純な立体障害によって、またはmRNAの切断を促すことによって、対応するタンパク質の翻訳を阻害する。
【0034】
遺伝子の発現の阻害というこの戦略は、インビトロとインビボの両方でマウスの胚性幹細胞に適用されている(Grabarekら、2003年;Kunathら、2003年;Lickertら、2005年)。ニワトリにおけるインオボ(in ovo)でのiRNAの利用は、Nakamuraら、2004年において実証されている通り可能である。
【0035】
干渉RNAは、アンチセンスRNA、二本鎖RNA、「低分子干渉」RNA、「短鎖ヘアピン」RNA、またはリボソームRNAといった、複数の形態の中から選択可能である。
【0036】
「低分子干渉RNA」つまり小サイズの干渉RNAの略であるsiRNAは、約15〜30塩基対(bp)、好ましくは19〜25bpの短い配列である。これらは、第一の鎖および標的遺伝子のRNAのターゲティングされた領域と同一の相補鎖を含む。siRNAは合成二本鎖RNAの形態を意味する。
【0037】
「短鎖ヘアピンRNA」の略であるshRNAは、Dicerとloquaciousとの複合体による切断の後にヘアピン形状をとるRNA分子をコードする、発現ベクター内でクローニングされた配列により産生された二本鎖RNAである(Duら、2005年)。
【0038】
干渉RNAの設計および調製、ならびにインビボおよびインビトロでの細胞のトランスフェクションのためのその利用は周知であり、米国特許第6506559号明細書、米国特許出願公開第2003/0056235号明細書、国際公開第99/32619号パンフレット、国際公開第01/75164号パンフレット、国際公開第02/44321号パンフレット、米国特許出願公開第2002/0086356号明細書、国際公開第00/44895号パンフレット、国際公開第02/055692号パンフレット、国際公開第02/055693号パンフレット、国際公開第03/033700号パンフレット、国際公開第03/035082号パンフレット、国際公開第03/035083号パンフレット、国際公開第03/035868号パンフレット、国際公開第03/035869号パンフレット、国際公開第03/035870号パンフレット、国際公開第03/035876号パンフレット、国際公開第01/68836号パンフレット、米国特許出願公開第2002/0162126号明細書、国際公開第03/020931号パンフレット、国際公開第03/008573号パンフレット、国際公開第01/70949号パンフレット、国際公開第99/49029号パンフレット、米国特許第6573099号明細書、国際公開第2005/00320号パンフレット、国際公開第2004/035615号パンフレット、国際公開第2004/019973号パンフレット、国際公開第2004/015107号パンフレット、
http://www.atugen.com/sirnatechnology.htm、
http://www.alnylam.com/science−technology/index.asp、
http://www.protocol−online.org/prot/Research_Tools/Online_Tools/SiRNA_Design/、
http://www.hgmp.mrc.ac.uk/Software/EMBOSS/Apps/sirna.html、
http://www.rockefeller.edu/labheads/tuschl/sirna.html、
http://www.upstate.com/browse/categories/siRNA.q.
といった数多くの刊行物において充分に記載されている。
【0039】
siRNAは、例えば以下のようなオンラインで利用可能なソフトウェアを用いることにより設計および調製可能である。
−「siSearchプログラム」http://sonnhammer.cgb.ki.se/siSearch/siSearch_1.6.html(「Improved and automated prediction of effective siRNA」、Chalk AM、Wahlesdelt C、およびSonnhammer ELL、Biochemical and Biophysical Research Communications、2004年)。
−「SiDirect」http://design.rnai.jp/sidirect/index.php(Direct: highly effective, target−specific siRNA design software for mammalian RNA interference、Yuki Naitoら、Nucleic Acids Res、第32巻、No. Web Server issue(著作権)Oxford University Press、2004年)。
−MIT附属ホワイトヘッド生物医学研究所の「siRNAデザインツール」http://jura.wi.mit.edu/pubint/http://iona.wi.mit.edu/siRNAext/
−InvitrogenのsiRNA wizard(商標)、http://www.sirnawizard.com/、
−Ambionの「siRNAターゲットファインダー」http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html、
−https://www.genscript.com/ssl−bin/app/rnai、
−http://www.promega.com/siRNADesigner/default.htm、
−http://bioweb.pasteur.fr/seqanal/interfaces/sirna.html、
−その他のプログラムは、
サイトhttp://web.mit.edu/mmcmanus/www/home1.2files/siRNAs.htm上でhttp://athena.bioc.uvic.ca/cgi−bin/emboss.pl?_action=input&_app=sirnaとして参照できる。
【0040】
siRNAの調製および細胞のトランスフェクションのための手段は、例えば、Invitrogen(http://www.invitrogen.com)により市販されているsiRNAベクターのように一般に入手可能である。
【0041】
当業者により選択された干渉RNAの配列に従って、異なる阻害レベルを得ることができ、求められている阻害物質の効果を変化させることが可能である。好ましい方法は、干渉RNAは、細胞内の標的遺伝子の発現の少なくとも50%、さらには少なくとも75%、90%、95%、さらには99%超の阻害を得るように調製され、そして選択される。当業者であれば、単純な日常的作業により、例えば幹細胞の分化を誘導するその能力を分析することによって、最も有効なiRNAを選択することができるものである(図1および3を参照のこと)。
【0042】
本発明の好ましい実施形態に従うと、干渉RNAは1P06遺伝子の発現を特異的に阻害する。
【0043】
特に、干渉RNAをコードする核酸分子は、配列番号3という標題で配列表に示されているように配列を有し得る。
【0044】
本発明の好ましいもう一つの実施形態に従うと、干渉RNAは、Nanog遺伝子の発現を特異的に阻害する。
【0045】
特に、干渉RNAをコードする核酸分子は、配列番号4または配列番号5の配列を有し得る。
【0046】
本発明のもう一つの好ましい実施形態に従うと、干渉RNAは、Eomes遺伝子の発現を特異的に阻害する。
【0047】
特に、干渉RNAをコードする核酸分子は、配列番号6、7、8または9により表されているような配列の一つを有することができる。最高の発現阻害が得られる分子は、配列番号4の配列によりコードされる。
【0048】
干渉RNAで遺伝子の発現を阻害するための一般的な技術は、二本鎖の干渉RNAを細胞内に導入することから成る。しかしながら、このdsRNAは急速に分解されるため、遺伝子の阻害は時間的に制限されるものである。この制限のため、発明者は、標的細胞内で「要求に応じて」干渉RNAを産生できる系を追及するに至った。
【0049】
本発明は、宿主細胞内での前記干渉RNAの発現を可能にするプロモーターの制御下に置かれた、干渉RNAをコードする核酸分子を含む発現ベクターに関するものである。宿主細胞は好ましくは、インビトロで培養状態に維持されたトリ幹細胞であるものとする。
【0050】
前記ベクターは、好ましくはプロモーター、翻訳開始シグナルおよび翻訳終結シグナル、ならびに適切な転写調節領域を含む。
【0051】
本発明の特定の一態様に従うと、干渉RNAの発現を制御する発現ベクターのプロモーターは、誘導性プロモーターである。
【0052】
誘導性発現系の利点は、干渉RNAの存在の持続時間、ひいては標的遺伝子の阻害の持続時間を制御することができるという点にある。実際、細胞の存続にとって不可欠な一部の遺伝子は、それが細胞死を誘導することになるという理由で、過度に長時間の阻害を受けることができない。その他の遺伝子は、阻害の効果を観察するためには長期間の阻害を受けなければならない。宿主細胞の内部での干渉RNAの発現を制御することにより、これら二つの制約条件を回避することができる。
【0053】
当業者には、最初に同定され、そして分析されたラクトースオペロンのものといった、複数のタイプの誘導性転写プロモーターが既知である。同様に、大腸菌のテトラサイクリンに対する耐性オペロンに由来するプロモーターに基づくtet off/tet on系を挙げることができる(Gossenら、1992年)。
【0054】
プロモーターの活性の誘導は、不活性プロモーターを活性化させることによって、または元々活性なプロモーターの重荷になる阻害をなくすことにより、実現可能である。転写の阻害因子または活性化因子は各々、それ自体、細胞環境に応じて誘導可能である。
【0055】
例えば、プロモーターが転写阻害因子に対する固定ドメインを有する場合、阻害の除去はこれらの因子の捕捉によって行われ、これらの因子はプロモーターの調節配列上にもはや固定され得なくなる。このときプロモーターは、転写阻害因子から「解放」される。
【0056】
もう一つの例によると、プロモーターは元々は活性であるが、その遺伝子座に挿入されたカセットの存在によって阻害されている。カセットは、プロモーターの調節エレメントが過度に離隔しているためにもはや互いに協働できないような形で置かれる。このとき阻害の除去は、特にカセットの各端部に置かれたリコンビナーゼによって認識される配列を用いて、カセットを切除することによって行われる。カセットは、立体障害を行うためのみに役立つ長い「緩衝」DNA配列を含み得る(Tiscorniaら、2004年)が、これは同様に、例えば抗生物質に対する耐性遺伝子などの「マーカー」遺伝子、またはGFP(緑色蛍光タンパク質)などの蛍光遺伝子を含むこともできる。この選択カセットの存在は同様に、特に幹細胞内において、配列の「サイレンシング」のメカニズムを制限する活性なクロマチン立体配置に遺伝子座を維持することも可能にする。
【0057】
カセットの切除を得るためには、Cre−Lox系およびFLP−FRT系という二つの系が利用されることが多い。Cre−Lox系は、DNAの適確な配列すなわちloxP配列の間にある全てのDNA断片を削除する、Creリコンビナーゼという酵素の能力に基づいている。FLP−FRT系は、二つのFRT配列の間にあるDNA断片を削除するFLPリコンビナーゼの活性に基づいている。特にKilbyら、1993年;SauerおよびHenderson、1988年;Guら、1994年;Cohen−TannoudjiおよびBabinet、1998年;Shibataら、1997年;SchlakeおよびBode、1994年に記載されている、認識部位LoxPおよびFRT並びに対応するCreおよびFLPリコンビナーゼは、当業者に周知のものである。
【0058】
特に、誘導可能なプロモーターは、その存在が該プロモーターの機能を阻害するチミジンキナーゼ(TK)−ネオマイシンR−loxのプロモーターであるloxカセットを含み得る(Coumoulら、2004年)。プロモーターは、CREリコンビナーゼによるこのカセットの切除の後に初めて機能的なものとなる。利用されるCREリコンビナーゼはそれ自体、培地内のタモキシフェンの存在に左右される活性を有する(Metzgerら、1999年)。かくして、細胞の培地内にタモキシフェンを添加することにより、リコンビナーゼは活性となり、プロモーターの阻害配列を切除し、かくしてプロモーターを機能的なものにし、かくして干渉RNAの発現を可能にする。
【0059】
目的のプロモーターの中から、好ましくは、干渉RNAの発現におけるその利用が当業者には周知のものであるU6プロモーターまたはH1プロモーターといったpolIII依存性プロモーターが選ばれる。
【0060】
本発明に従った発現ベクターは、宿主細胞、特にインビトロで培養状態に維持されたトリ細胞の中に組込むことができる。このとき、細胞は「形質転換された」と言われる。このためには、宿主細胞の内部で自己複製するベクターを利用するか、または宿主細胞のDNA内への外因性の核酸分子の組込みを可能にする組込みベクターを利用することができる。
【0061】
自己複製系の中でも、好ましくは、プラスミドタイプまたはウイルスタイプの系が利用され、ウイルスベクターは、特にアデノウイルス(Perricaudetら、1992年)、レトロウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルスまたはヘルペスウイルス(Epsteinら、1992年)であり得る。当業者には、これらの系の各々について利用可能な技術が既知である。
【0062】
宿主細胞の染色体の中への配列の組込みが望まれる場合には、例えばプラスミドタイプまたはウイルスタイプの系を利用することができる。かかるウイルスは、例えばレトロウイルス(Temin、1986年)またはAAV(Carter、1993年)である。
【0063】
非ウイルスベクターの中でも、VICAL社により開発された技術に従った裸のDNAまたは裸のRNAといったような裸のポリヌクレオチドが好ましい。
【0064】
トリ細胞内では、好ましくは、レトロウイルス、トリアデノウイルス、ポックスウイルス、またはトランスフェクションもしくはエレクトロポレーションにより導入される裸のDNAが利用されるものとする。
【0065】
かかるベクターは、当業者によって一般的に利用される方法によって調製され、その結果得られるクローンは、リポフェクション、エレクトロポレーション、熱ショック、膜の化学的透過化の後の形質転換、または細胞融合といったような標準的な方法により、宿主細胞内に導入可能である。
【0066】
本発明のもう一つの態様に従うと、本方法は、前記細胞の特異的分化を得る目的で、特異的遺伝子の活性化または阻害のステップに細胞を少なくとも一回付すことを特徴としている。
【0067】
特に、特定のプロモーターおよびコード相を利用することにより、規定の経路での細胞の最終分化をそれ自体が誘導する遺伝子の発現を制御することが可能となる。これらの遺伝子は特に転写因子をコードする。これらの遺伝子の中でも、Myf5、MyoD、Mrf4といった筋原性系列の調節因子(「MRF」)、PPARg遺伝子などといった脂肪細胞系統の決定論に関与しているもの、Sox1およびネスチンといったニューロンの決定論に関与しているもの、Gata2およびGata3といった造血経路の決定論に関与しているものを挙げることができる。
【0068】
これらの遺伝子の発現または活性の、活性化または阻害のステップは、1P06、NanogまたはEomesの中から選ばれた遺伝子の阻害ステップと同時であってもよいし、または、時間的にずらされ、好ましくは、阻害の誘導の数時間後とすることもできる。このずれにより、細胞は逐次的に最終分化プログラムを開始し、かくしてインビボで観察される分化の動態をより良く再現することができる。
【0069】
本発明のもう一つの態様に従うと、本発明のトリ幹細胞は、前記細胞の特異的分化を得るため、適切な条件で、特に一定の成長因子および誘導物質の存在下で培養される。
【0070】
これらの因子の中でも、中胚葉および外胚葉経路の制御における非常に複雑な相対的役割がマウス、アフリカツメガエル、およびニワトリにおいて同時に記載され始めている、BMPファミリー、FGFファミリー、およびwntファミリーの成長因子を挙げることができる。好ましくは、この因子を、特にBMP−4およびBMP−7について、およそ1〜10ng/mlの濃度範囲で利用するものとする。外胚葉および中胚葉経路の誘導には、他の多数の因子が介入する。
【0071】
本発明に従ったプロセスは同様に、分化が誘導されていない細胞の選択および破壊のステップを含み得る。
【0072】
誘導されていないクローンの消滅は、例えば以下で記載されるEns1遺伝子または1P06遺伝子のプロモーターといった、幹細胞においてのみ活性なプロモーターの制御下に置かれた毒性遺伝子(チミジンキナーゼ、ジフテリア毒素)を発現するベクターを用いた負の選択により、誘導に付随する形で実施可能である。かくして、幹細胞の特徴を有する細胞のみが消滅するものとする。
【0073】
本発明は同様に、本発明に従った方法によって得られる可能性のある分化したトリ細胞にも関する。
【0074】
本発明は同様に、ウイルスと、本発明に従った方法に付されたトリ幹細胞とを接触させるステップを含むことを特徴とする、抗ウイルスワクチンの調製方法にも関するものである。
【0075】
幹細胞の分化の誘導から24〜72時間後に、細胞を、適切な培地において、目的のウイルスの存在下に置く。たとえ誘導された細胞が増殖中の細胞に比べてわずかしか分裂しないにせよ、細胞がその誘導段階にある間にこれらの細胞をウイルスと接触させることで、ウイルスの組込みおよびその産生を可能にする残りの分裂を有するようにすることが必要である。誘導の開始から96時間を越えると分裂しない細胞を得るために、倍増時間は12〜15時間から24〜36時間超に移行する。感染に必要なm.o.i.は、誘導の開始から24〜48時間後に得られた細胞数について計算される。
【0076】
幹細胞およびその分化誘導体は、特殊な向性に従った、異なるウイルスの複製を補助するものとして役立つ。この戦略は、幹細胞をその表現型の大きな柔軟性に照らして用いることでうまく進めることができる。実験用の一様な細胞基質(例えばBHK−21系細胞、CV−1系細胞)に対する多くのウイルスの適応は、ウイルスの複製サイクルに影響を及ぼすことでそれらの産生効率を変化させる。これらの制約を制御するメカニズムが明らかにされ始めている(WangおよびShenk、2005年)。
【0077】
本発明のもう一つの目的は、本発明において先に定義した干渉RNAをコードする核酸分子である。
【0078】
本発明は同様に、宿主細胞、好ましくはインビトロで培養状態に維持された、トリ細胞内における干渉RNAの発現を可能にするプロモーターの制御下に置かれた、本発明に従った前記干渉RNAをコードする核酸分子を含む発現ベクターにも関するものである。
【0079】
本発明の好ましい態様に従うと、このプロモーターは誘導性プロモーターである。
【0080】
本発明は、上述した発現ベクターで形質転換されたトリ幹細胞にも関するものである。
【0081】
本発明はさらに、配列番号1(配列表参照)に従ったアミノ酸配列と少なくとも68%の同一性を有するタンパク質配列のポリペプチドをコードする核酸配列にも関するものである。
【0082】
なお本発明は同様に、配列番号1に従ったアミノ酸配列と少なくとも68%の同一性を有するタンパク質配列のポリペプチドも含んでいる。
【0083】
この新規なタンパク質配列をデータベースに掲載された既知の配列と比較するためには、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)ソフトウェアが用いられた。既知のあらゆるタンパク質のうち、最高の同一性レベルを有するものは、配列番号1の配列と67%の同一性のタンパク質配列を有する。
【0084】
本発明のもう一つの目的は、配列番号2と少なくとも94%の同一性を有する核酸配列である。
【0085】
タンパク質配列と同様に、配列番号2を、BLASTソフトウェアに掲載されている既知の配列と比較した。最大の同一性百分率は93%であった。
【0086】
本発明は同様に、上述の配列のうちの一つを有する核酸分子が中に挿入されているクローニングベクターおよび/または発現ベクターにも関するものである。
【0087】
本発明は同様に、Nanog遺伝子のプロモーター領域に対応する、すなわちニワトリのNanog遺伝子のコード配列を開始するATGコドンの前の12112個の塩基対に対応する、配列番号11に従ったヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する核酸配列にも関するものである。
【0088】
このNanog遺伝子のプロモーター領域は、この遺伝子の調節エレメント、そしてより正確には、転写調節因子のための固定部位を含む。この遺伝子は幹細胞においてのみ発現することから、その発現を調節するメカニズムの研究は、幹細胞が未分化状態にとどまる条件を決定するために特に重要である。当業者であれば、このプロモーター配列上に固定され得る調節因子ならびにDNA上のそれらの正確な固定部位を、それらが既知のものであれ、または新たに同定されるものであれ、同定することができるものである。概説として、(van Steensel B.、2005年、Nat Genetics)、(Siggia ED.、2005年、Curr Opin Genet Dev)、および(Pavesi G、Mauri G、Pesole G、2004年、Brief Bioinform)を参照のこと。特に、既知の調節配列は、遺伝子発現の調節配列を掲載しているTRANSFAC、TRRD、およびCOMPELデータベース上で検索を行うことにより同定可能である。これらのデータベースにはhttp://transfac.gbf.de/TRANSFACまたはhttp://www.bionet.nsc.ru/TRRDといったアドレスでアクセスできる。
【0089】
本発明のもう一つの目的は、以上で定義された配列を有する核酸分子が中に挿入されているクローニングベクターおよび/または発現ベクターにある。
【0090】
本発明は同様に、先に記載したようにクローニングベクターおよび/または発現ベクターを組込んだ原核細胞または真核細胞にも関するものである。
【0091】
本発明のもう一つの目的は、多くとも約1%の血清を含む培地内での、幹細胞の、より特定的にはトリ幹細胞の培養方法にある。この方法は、Nanog遺伝子が過剰発現している幹細胞を培養することを特徴とする。この過剰発現は、当業者にとって既知のあらゆる手段、特に内因性Nanog遺伝子の発現を制御するいわゆる「強い」プロモーターでの細胞の変更によって、あるいはまた、Nanog遺伝子を過剰発現するベクターの導入によっても得ることができる。これは特に、ニワトリのNanog遺伝子を過剰発現するベクターを幹細胞内に導入することによって実現される。この遺伝子は、実際には、血清中に含まれている成長因子に対する「独立性」を細胞に付与するという特性を有する。このように形質転換された細胞は、1%未満の血清を含有する培地中で、初期幹細胞と同じ位長く培養し継代培養することができる。
【0092】
この方法は、広い工業的応用の分野を開くものである。すなわち、一方では、この方法は経済的であり(通常の10%ではなくもはや1%の血清しか使用しない)、他方では、場合によって血清中に存在する成長因子の特異的効果を知りたい場合に、最小限の血清で細胞を培養できるという利点がある。
【0093】
以下の例は、本発明の例示を可能にするが、制限的意味を有するものとみなされるべきものではない。
【0094】
図面の説明
図1:特異的iRNAによる1P06遺伝子の発現の阻害は、CESC細胞の増殖の大きな減少を誘導し、その分化を誘導する。この効果は、ヒドロキシ−タモキシフェンによりその分化が誘導されたクローンの形態で測定される。
【0095】
図2:iRNA−1P06−2による1P06遺伝子の発現の阻害によって得られる分化したクローンの分子分析。分化したクローンまたは増殖クローンのトランスクリプトームの含有量がリアルタイムPCRにより分析される。
【0096】
図3:特異的iRNAによるNanog遺伝子の発現の阻害は、CESC細胞の分化、ひいては細胞増殖の停止を誘導する。この効果は、ヒドロキシ−タモキシフェンにより分化が誘導されたクローンの形態で測定される。
【0097】
図4:特異的干渉RNAによる1P06遺伝子およびNanog遺伝子の発現の阻害。
A−抗SSEA−1抗体による、分化で誘導された細胞の標識、
B−干渉RNAにより誘導された増殖の停止の動態、
C−分化の誘導後の細胞における分化の標識遺伝子の発現の、分子分析。
【0098】
図5:セキショクヤケイの1P06遺伝子のオルソログおよびパラログを含むPOUマルチファミリーの異なるメンバーの系統樹。
【0099】
図6:セキショクヤケイの1P06遺伝子の、異なる種のそのオルソログとの相同性百分率。
【0100】
図7:セキショクヤケイ種におけるPOUファミリーのその他の因子との1P06遺伝子の相同性百分率。
【0101】
図8:増殖状態のCESC細胞内における融合タンパク質GFP−1P06の局在化(N:核、C:細胞質、N+C:核および細胞質)。
【0102】
図9:増殖状態のCESC細胞における融合タンパク質GFP−1P06の過剰発現の影響。クロマチンの構造化のレベルが決定される。
【実施例】
【0103】
実施例1:干渉RNAを用いた1P06遺伝子の阻害による、トリ幹細胞の分化の誘導
a) 干渉RNAをコードする発現ベクターの構築
プラスミドpFLΔNeoは、pBSK(Stratagene)のSmaI/HindIII部位における、PCRにより増幅された2kbのmU6ΔneoD断片の挿入により得られる。このmU6ΔneoD断片は、NIH BethesdaのSheng博士から提供された、かつ論文(Coumoulら、2004年)に記載されている、鋳型mU6D−Neo−DApaIDXhoIからオリゴヌクレオチドプライマーm−U6−smaI−Sおよびm−U6−HindIII−ASで増幅される。
【0104】
サイトhttp://www.proligo.com、http://www.qiagen.com、http://www.ambion.com上で提供されるソフトウェアを用いてひとたび設計したら、5分間95℃で加熱することによる変性の後、1mMのMgCl2の存在下で室温での緩やかな再生により、100pMの各iRNAオリゴヌクレオチドをハイブリダイズして二本鎖断片を得た。得られた二本鎖オリゴヌクレオチドを、HindIII酵素およびXhoI酵素での消化により調製された、pFLΔNeoベクターのHindIII/XhoI部位に直接クローニングする。HincII部位の消滅およびこれらの正のプラスミドの系統的な配列決定により、スクリーニングを確認する。各々の標的RNA「X」について、かくして、ベクターpFLΔNeoX−iRNAを得る。利用された異なるiRNAの配列は、配列表に示されている。トランスフェクションの前に、アンピシリン耐性遺伝子内に存在する固有の部位であるAhdIによりベクターを線状化させる。
【0105】
リコンビナーゼの発現ベクターCRE−ERT2−hygroは、複数のステップにより、市販のベクターpCI−Neo(Promega)から誘導される。ハイグロマイシン耐性カセットは、オリゴヌクレオチド対NruI−hygroSおよびBamHI−hygroASを用いるPCR増幅により、市販のベクターpIRES−Hygro(Clontech)から得られる。得られた断片は、KpnI−BamHI消化により予めネオマイシン耐性カセットが除去されているpCI−Neoベクター内のNruI−BamHIにおいて直接クローニングされる。得られるプラスミドは、プラスミドpCI FLHygroである。リコンビナーゼCRE−ERT2のコード相は、ストラスブールのIGMCのP.Chambon教授により提供された、かつFeilら、1997年の刊行物において記載されている、プラスミドpCRE−ERT2から、オリゴヌクレオチド対CRE−ERT2−SalISおよびCRE−ERT2−smaIASを利用することにより増幅される。得られた増幅断片は、SalI−SmaIによる消化によって調製された受容ベクターpCI FL−Hygroに直接クローニングされる。クローニングは指向性であり、その結果としてベクターpCRE−ERT2−Hygroがもたらされる。コード相全体は、増幅の完全性を確認し、そしてリコンビナーゼの優れた活性を可能にするべく配列決定される。
【0106】
b) トリ幹細胞内への干渉RNAを含む発現ベクターの導入
CESC細胞を、Painら、1996年、および仏国特許出願公開第94/12598号明細書、仏国特許出願公開第00/06029号明細書において先に記載されている通りに、インビトロで得、増幅させ維持した。トランスフェクションについては、異なる線状のベクターを2〜10μg用いて、先に記載されている通り(Painら、1999年、仏国特許出願公開第00/06029号明細書および仏国特許出願公開第01/15111号明細書)、リポソーム(Fugene 6、Roche)を用いて0.5〜1×106個の細胞をトランスフェクトする。第一のステップは、発現ベクターpFLΔNeoX−iRNAをトランスフェクトすることから成る。ネオマイシン(100〜250μg/ml)での選択は、7日間行う。得られた耐性クローンを計数し、個別に採取、増幅し、冷凍して、後で増幅の後に利用できるようにすることができる。該耐性クローンは、iRNAの発現ベクターが組込まれているものの、それを発現することはない。これらのクローンを次に解離させ、リコンビナーゼpCRE−ERT2−Hygroの発現ベクターによる新たなトランスフェクションに付す。ネオマイシン(50〜200μg/ml)での選択が常に存在する状態で、ハイグロマイシン(25〜75μg/ml)の存在下で細胞を選択する。7日後に、得られたクローンを新たに計数し、採取し、個別に増幅させる。
【0107】
c) 幹細胞における干渉RNAの条件つき発現
ベクターpFLDNeoXiRNAは、マウスプロモーターU6における、このプロモーターの機能を条件付きのものにする配列であるlox−TK−Neo−lox配列の存在によって、iRNAの発現を制御することを可能にする(Coumoulら、2004年)。プロモーターは、このインサートのリコンビナーゼCREによる切除の後に機能的になる。本発明者は、培地中のタモキシフェンの存在に依存する活性を有するリコンビナーゼCRE−ERT2を特に利用した(Metzgerら、1999年)。
【0108】
記載した二つのトランスフェクションステップの後で得られたクローンについて、96時間、培地に1μMの4−ヒドロキシ−タモキシフェンを添加することにより、loxP部位により囲まれたネオマイシン耐性カセットの切除が誘導され、標的iRNAの産生が可能となる。
【0109】
d) 得られた分化細胞の形態学的特徴づけ
CREリコンビナーゼの発現の4−ヒドロキシ−タモキシフェンによる誘導の後、得られた細胞の形態を、直接的な顕微鏡観察およびCCDカメラCoolSNAP(Photometrix)を用いた記録により分析する。
【0110】
クローンを4−ヒドロキシ−タモキシフェンによる誘導から4日(96時間)後に計数する。得られた結果は図1に表されている。3つの独立した実験において得たクローンの合計数は、それぞれ、pFLΔNeo−0(空の対照ベクター)ではn=45、pFLΔNeo−1ではn=59、pFLΔNeo−2ではn=61、そしてpFLΔNeo−4ではn=76である。
【0111】
図1は、分化が誘導されたクローンの百分率および常に増殖状態にあるクローンの百分率を示す。iRNA−2のみにおいて、未分化クローンの数が示す通り、いかなる大きな表現型の変化も観察されていない空の対照ベクター並びにiRNA−1および−4と逆の誘導現象が得られる。
【0112】
かくして、未分化細胞の増殖に必要な成長因子およびサイトカインの存在下でさえ、iRNA−2を発現する細胞においては、クローンの細胞の形態の急速かつ大きな変化が見られる。これらのクローンの増殖能力は失われ、当該クローンは誘導されていないクローンと比較して比例的に小さくなる。誘導されていないこれらのクローンは、リコンビナーゼによるloxカセットの未切除、ひいてはiRNAの未発現の結果として生じる可能性がある。
【0113】
誘導された細胞は、誘導されていない親細胞よりも大きなサイズを有する平担な形態を呈している。走査型顕微鏡での観察は同様に、誘導された細胞のさらに大きい展延をも示している。
【0114】
e) 誘導された細胞の分子的特徴づけ
分子レベルで特徴づけるために、分化および未分化クローンの1P06遺伝子の発現を阻害するiRNAの発現により誘導されたクローンを採取し、分析した。得られた結果は図2に示されている。異なる標識遺伝子の発現レベルが表されている。レベル1は、空のベクターpFLDNeo−0を組込んだクローンにおいて観察されたものである。
【0115】
リアルタイムRT−PCRアプローチによるこれらのクローンのトランスクリプトーム含有量の分析は、1P06遺伝子の包括的な発現レベルが親細胞に比べてこれらのクローンにおいて低いことを示している(結果は示されていない)。Nanog遺伝子、Eomes遺伝子、およびGcnf遺伝子の発現レベルは減少する。逆に、Gata6遺伝子はその発現を増大させており、このことは、初期内胚葉と同等の分化経路での誘導を示唆している。
【0116】
実施例2:干渉RNAを用いたNANOG遺伝子の発現の阻害によるトリ幹細胞の分化の誘導
Nanog遺伝子に対するiRNA発現ベクターを用いて、1P06遺伝子について実施されたものと類似の実験を実施することにより、選択されたクローンの増殖の阻害および分化の誘導も観察する。
【0117】
クローンを4−ヒドロキシ−タモキシフェンの添加によるリコンビナーゼCREの誘導から4日(96時間)後に計数する。得たクローンの合計数は、それぞれ、pFLΔNeo−0(空の対照ベクター)ではn=5、pFLΔNeo−nan−1ではn=21、pFLΔNeo−nan−3ではn=37、pFLΔNeo−nan−5ではn=15である。得られた結果は、図3に示されている。
【0118】
図3は、分化が誘導されたクローン(誘導されたまたは分化したクローン)の百分率、および常に増殖状態にあるクローンの百分率を示す。空のベクターとは逆に、iRNA−nan1およびiRNA−nan3は大部分の細胞の分化を誘導する能力を有する。30%未満のクローンが常に増殖中である。iRNA−nan−5も、程度は低いものの同様にこの分化を誘導する。
【0119】
実施例3:1P06遺伝子およびNanog遺伝子の同時の阻害による分化の誘導
これらの実験において、利用されたshRNAは以下の通りであった。
1P06の不活性化についてはiRNA−2、Nanogの不活性化についてはiRNA−nan1。
【0120】
1P06遺伝子およびNanog遺伝子の発現の阻害による誘導の後のトリ幹細胞の分化を以下の測定値により評価した。
−抗−SSEA−1抗体による標識において陽性の細胞の百分率(図4A)、
−48時間および96時間にわたって得られるクローンの増殖百分率(図4B)、
−「マーカー」遺伝子:1P06、Tert、Nanog、Gata4、Gata6の相対的発現(図4C)。
【0121】
図4Aは、得られた細胞の大部分が、幹細胞に特徴的な発現(空のベクターでトランスフェクションが実施された場合、100%の細胞が陽性)を有するSSEA−1抗原(Stage−Specfic Embryonic Antigen−1)をもはや発現しないということを示している。
【0122】
図4Bは、時間経過に従った事象、特にクローンの増殖の停止が急速に得られることを明らかにしている。
【0123】
クローンは、先に記載した通り、4−ヒドロキシ−タモキシフェンによる誘導から48および96時間後に、直接的な顕微鏡観察により計数される。図は、その分化が誘導されたか、または常に増殖状態にあるクローンの相対的百分率を示している。すなわち、48時間後には60%のクローンのみがなお増殖中であり、これは、Nanog遺伝子の発現を阻害することにより得られた最大の効果である。1P06遺伝子の阻害から96時間後には、増殖中のクローンはもはや40%しか見られない。
【0124】
図4Cは、1P06およびNanog遺伝子の発現の阻害により分化が誘導された細胞の分子的特徴づけを示す。
【0125】
様々な「標識」遺伝子の発現は、空のベクターpFLDNeo−0を組込んだクローンにおいて見られる発現率に対して標準化される。
【0126】
リアルタイムRT−PCRアプローチによるこれらのクローンのトランスクリプトーム含有量の分析は、1P06遺伝子の包括的な発現レベルが分化後にさらに低いことを示している。Tert遺伝子およびNanog遺伝子の発現レベルは減少する。逆に、Gata−4遺伝子およびGata−6遺伝子はその発現を増大させており、このことは、初期内胚葉と同等の分化経路での誘導を示唆している。
【0127】
実施例4:1P06遺伝子のクローニング
オリゴヌクレオチドと配列決定
全てのオリゴヌクレオチドは、プライマー3(http://frodo.wi.mit.edu/cgi−bin/primer3/primer3_www.cgi)を用いて設計され、その後Proligo社により合成される。テストされた様々な遺伝子の配列は、TIGRインデックス(http://www.tigr.org/tigr−scripts/tgi/T_index.cgi?species=g_gallus)において同定されるか、またはニワトリゲノムのアセンブリ部位(http://www.ensembl.org/Gallus_gallus/)上で直接検索されるか、または新たに同定された配列から直接得られた。
【0128】
RNAの抽出
増殖中の未分化細胞または2日間胚葉体への分化が誘導されたCESC細胞の全RNAを、RNAEasy mini(Quiagen、参照番号74104)キットを用いて抽出する。クローンの全RNAを、RNA Easy micro(Qiagen、参照番号74004)キットを用いて抽出する。RNAの量および質をBioAnalyser 2100(Agilent Biotechnologies)により測定する。
【0129】
液体サブトラクティブハイブリダイゼーション逆転写ステップの後、cDNAを制限酵素Sau 3Aによる消化に付し、ライゲーションにより付加されるプライマーのタイプに応じて二つの集団を構成する。一方の集団は、もう一方の集団内に存在するメッセンジャーを使い果たすために利用され、またその逆も行われる。これらのcDNAはこのとき、一方または他方の集団の相補的オリゴヌクレオチドの鋳型として利用され、各試料の代表性を保つ条件下で増幅される。増幅後、アンプリコンを、一方および他方の集団について1:4の比で混合する。二つのプライマーのうちの一方は5’にビオチン化エレメントを含む。混合の後、DNAをエタノール中で沈殿させ、遠心分離に付し、短い変性ステップ後20時間にわたり生じる再生を容易にするように小さい反応体積内に再度取込む。ストレプトアビジンと結合したビーズを添加して、SSBタンパク質(一本鎖DNA結合タンパク質)の添加により単離したテスターの一本鎖断片およびビオチン化した「ドライバー」DNAを除去する。再びDNAを添加し、一本鎖DNAの富化サイクルを二回新たに反復する。これらのステップの終りに得たDNAに対し、特異的オリゴヌクレオチドでのPCR反応を実施する。この反応により、異なった形で発現した標的の増幅が可能となる。得られた断片をBamHIによる消化に付し、pUC18プラスミド内でサブクローニングする。形質転換および増幅の後、コロニーを個別に採取し、プラスミドDNAを抽出し、ABIPrism3730シーケンサでBigDye Teminator Cycle Sequencingキットを用いて、ユニバーサルプライマーM13revでの配列決定反応に付す。
【0130】
TIGRデータ(http://www;tigr.org/tigr/T_index.cgi?species=g_gallus)といったようなライブラリーデータと比較することによるこのインサートのクローニングおよび同定の手順の全体は、Genome Express社(http://www.genome−express.com/、Meylan)により実施した。
【0131】
1P06遺伝子のライブラリースクリーニングおよびクローニング
増殖状態の未分化CESC細胞の全RNAを、EcoRIで開いておりCIAP(Stratagene)での処理により脱リン酸化され、仏国特許出願公開第00/06009号明細書、およびAcloqneら、2001年で先に記載されているλZAP−IIベクター(Stratagene)中で、cDNAライブラリーを構築するために用いる。150ngのファージDNAを、λZapベクター中に存在するオリゴヌクレオチドT7またはT3とを結び付ける40pMの異なるオリゴヌクレオチド対と、1P06G01クローンに由来するオリゴヌクレオチドpou(1P06)Sまたはpou(1P06)ASを用いることによって、ゲノムPCRによってスクリーニングする。増幅条件は、96℃で5分の変性、次に、95℃で30秒、54℃で30秒、および72℃で1分から成るサイクルを10回、そしてそれに続く、96℃で30秒、54℃で30秒、および72℃で1分のサイクルを20回である。最後の伸長ステップは7分間維持される。増幅産物を、アガロースゲル上での電気泳動に付し、Gel Extraction Kit(Qiagen)キットにより精製し、pGEM−Teasyベクター(Promega)中でサブクローニングし、配列決定する。pL9−4クローンは、最初のクローン1P06g01の終わりから40bp後ろに停止コドンを含み、クローンpL7−2では、配列の上流に350bpを得ることが可能になる。
【0132】
5’RACEキット(Invitrogen)を用いて、5’RACE法を行う。10pMの1P06G01プライマー(RAAS2)を用いて42℃で1時間、2μgの全RNAを逆転写させる。産物がひとたび精製された時点で、37℃で30分間、ターミナルトランスフェラーゼTdTの作用によりポリA尾部を付加する(Invitrogen)。20pMの1P06プライマー(RAAS1)およびAnchPrimSeqの存在下でのPCR反応において、鋳型として反応物の1/5を利用する。反応のパラメータは、94℃で2分間の変性と、その後の、94℃で30秒の変性、55℃で30秒のハイブリダイゼーション、および72℃で2分の伸長段階から成るサイクルを30回であるが、最後の反応は7分続く。P06(pL7−2)ASプライマーおよびPCRprimseqプライマーを用いて、100倍に希釈した5μlの産物に対して二回目の全増幅を実施する。電気泳動による移動の後に最終産物を精製し、その後pGEMTeasyベクター内でサブクローニングする。得られたクローンR1−8は、ATGが同相である状態でpL7−2クローンの上流に300bpを含む。その結果、888bpのオープンリーディングフレームが得られる。
【0133】
RT−PCR
oligodTプライマーおよびSuperscript II酵素(Invitrogen)を用いて、42℃で1時間、2μgの全RNAを逆転写させる。MXP 3000P PCRシステム(Stratagene)でリアルタイムPCRを実施する。100倍に希釈した混合物2μlを、10pMの各プライマー(Proligo)の存在下で、25μlの最終体積で、12.5μlのMix Quantitect SYBR Green緩衝液(Qiagen)と混合させる。各試料を96ウェルプレート(参照番号410088 Stratagene)において三回テストする。パラメータは、95℃で15分の変性ステップと、それに続く、95℃で30秒の変性、55℃で30秒の再生、および72℃で30秒の伸長ステップから成るサイクル40回である。遺伝子の発現レベルは、サイトhttp://www.gene−quantification.info上で利用可能な詳細な手順にしたがってΔΔCt法により計算される。RS17リボソーム遺伝子(X07257)の発現レベルは、試料間の内部標準として用いられる。
【0134】
様々なステップの結果、ライブラリーのスクリーニングのステップおよび5’RACE法のステップの終わりに、POUドメインを含む228bpの第一の断片が、次に888bpの配列(配列番号2)が同定される。この配列は、296個のアミノ酸のタンパク質(配列番号1)をコードする。かくして同定されたタンパク質のPOUドメインは、90番アミノ酸で始まり、149個のアミノ酸で構成されている。
【0135】
POUドメインを含む様々な種の遺伝子データのライブラリーにおいて同定された既知の配列を比較することにより、以下1P06と呼ぶ、ニワトリにおいて同定された新たな遺伝子の系統発生学的位置づけを示すことができる。図5、6および7を参照のこと。
【0136】
NTiVectorソフトウェア(InVitrogen)を用いて、セキショクヤケイニワトリの1P06遺伝子のコード相の888塩基対と、様々なPou5f1遺伝子の配列、特に、尾索類O.dioicaの1155bpの配列(AY613856)、マウスM.MusculusのPou5f1の1134bpの配列(NM_013633)、ウシB.taurusの1615bp(NM_174580)、ブタS.scrofaの1080bpの配列(Q9TSV5)、サルP.troglodytesの1080bpの配列(Q7YR49)、ヒトH.sapiensのpou5f1の1413bpの配列(NM_002701)、ラットR.rattusの1141bpの配列(XM_579282)、メキシコサンショウウオA.mexicanumの3111bpの配列(AY542376)、ゼブラフィッシュD.rerioの1418bpの配列(NM_131112)、有袋動物T.vulpeculaのPOUドメインの570bpの配列(AY345973)、アフリカツメガエルX.laevisのOct60の2111bpの配列(M60075)、アフリカツメガエルX.LaevisのOct91の2418bpの配列(M60077)、およびアフリカツメガエルX.LaevisのOct25の1998bpの配列(M60074)の遺伝子の配列とをアラインすることにより、同定された配列がPOUドメインを含むパラログ遺伝子配列よりもこれらのPou5f1遺伝子の配列により近いことを理由として、1P06が他の種のPou5f1遺伝子のオルソログであることを同定することができる(図4、5、および6)。
【0137】
図6は、ニワトリの1P06のcDNAが、ウシ、マウスおよびヒトのオルソログとそれぞれ51、46および51%の相同性を有することを示している。35〜38%の相同性百分率が、ゼブラフィッシュおよびアフリカツメガエルの様々なホモログのSpg遺伝子(Pou 2)で観察される。
【0138】
図7は、ニワトリにおいて同定された様々な既知のパラログと1P06のcDNAの配列との間に存在する相同性百分率を示している。1P06は、Oct−1、Factor I、Brn3.2およびOct6のcDNAとそれぞれ14、60、62、および61%の相同性を有する(Barthら、1998年、Levavasseurら、1998年)。
【0139】
実施例5:1P06遺伝子から産生されたタンパク質の研究
融合タンパク質GFP−1P06は核タンパク質である
市販のベクターpE−GFP−C1(Clontech)を用いて、トランスフェクション後のその細胞局在化を視覚化するべく、GFPに適した様々なcDNAをクローニングした。
【0140】
本発明者は、1P06、Nanog、Gcnf、Sox2、Lrh1、Sf1およびGata4のcDNAのコード相を、このベクター内に導入した。
【0141】
細胞の中に一時的にプラスミドpGFP−1P06、Nanog、Gcnfを導入した。1cm2あたり15000〜20000個の細胞の平均密度でウェル内の無菌スライドグラス上にCESC細胞を播種した。数時間の接着の後、血清を有さない100μlの培地中に1μgの線状DNA、3μgのFugene(Roche)を含むトランスフェクション混合物を調製し、室温で10分間放置してから、細胞上に被着させ、これらの細胞を標準的な増殖条件下で一晩インキュベーター内に置く。2日目に、トランスフェクション混合物を取り出し、PBSで細胞を洗浄し、その後標準的な条件下で培養する。48時間後に、細胞を洗浄し、次にPBS内において0.5%グルタルアルデヒド/1.5%ホルムアルデヒド混合物で4℃で15分間固定する。洗浄後、Hoescht溶液(10μM/ml)で細胞をインキュベートして光を避けた状態で核を視覚化させる。紫外線の通過を確実にする物質(Gel Mont BioMedia)の存在下でスライドグラスを取付け、融合タンパク質により発光された蛍光の観察を蛍光顕微鏡を用いて実施する。
【0142】
計数された細胞数は、n=49(対照としてのGFP−T)、n=71(GFP−1P06)、およびn=74(GFP−Gata4)である。図8は、GFPの蛍光の観察された局在化が、核内(N)、細胞質内(C)、または核および細胞質(N+C)内にある細胞の百分率を示している。この図は、融合タンパク質1P06−GFPが主として核タンパク質であることを示している。
【0143】
ニワトリの胚線維芽細胞といったその他のトリ細胞型において、同様の結果が得られた(結果は図示せず)。
【0144】
なお、「バンドシフト」技術による分析から、タンパク質1P06が、DNAのコンセンサス配列Oct−4を認識し、その上に固定される能力を有し得ることを実証することが可能となった。
【0145】
結論として、ニワトリのタンパク質1P06は、DNA上への固定活性を有する、核に局在するタンパク質である。
【0146】
実施例6:1P06遺伝子の過剰発現
CESC細胞の生理における1P06遺伝子の過剰発現の影響を評価するため、pGFP−1P06構築物、およびGFP−SOX2、GFP−NANOG、GFP−GATA4といったようなその他の融合タンパク質でトランスフェクトした細胞を、形態学的見地から分析した。
【0147】
図9は、得られた結果を示している。計数された細胞の合計数は、n=51(対照GFP−T)、n=93(GFP−1P06)、およびn=77(GFP−Gata4)である。
【0148】
トランスフェクションを受けた細胞の大部分は、その形態において大きな変化を有するとは思われない。pGEP−1P06構築物で一つの例外が見られ、これについては、約20%のケースで、特に核の凝縮形態を伴う、改変された核の形態が高い割合で観察されている。分解されたクロマチンを有する細胞の百分率は、GFP−1P06構築物でのトランスフェクションを受けたこれらの細胞内ではるかに大きい。このことはアポトーシス現象を示し得る。トランスフェクションの時間は比較的短い(72時間未満)ことから、これらの条件下でより大きな形態学的変化および表現型の変化を同定できる可能性がないことを想定することが可能である。
【0149】
本発明者の仮説は、GFP−1P06構築物の過剰発現がCESC細胞にとって有毒であるということである。融合タンパク質の核局在化を条件付きにするために、GFP−1P06−ERT2構築物を実現した。対照構築物GFP−ERT2の核局在化が、培地中の4−ヒドロキシータモキシフェンの存在に依存していると思われる場合、予想通り、4−ヒドロキシ−タモキシフェンの存在下または不存在下で、融合タンパク質GFP−1P06−ERT2の局在化の大きな変化を検出することは不可能であった。GFPの存在は、条件の如何に関わらず、主として核内にとどまっている。1P06産物の核局在化シグナルは強すぎて、4−ヒドロキシタモキシフェンの不存在下でERT2部分に結合するシャペロン分子の存在だけではこのシグナルを平衡化させることはできないと考えるべきである。大きな細胞質シグナル伝達を得ることのできない推定上の局在化シグナルnlsにその突然変異が影響を与える突然変異体1P06mutでも、同じことが観察された(Painら、2004年)。
【0150】
実施例7:Nanog遺伝子のプロモーターのクローニング
Nanog遺伝子のプロモーターのクローニングにより、トリの胚性幹細胞および生殖幹細胞におけるこれらの遺伝子の発現を調節することのできる転写因子が固定される特異的部位の存在を実証することができる。
【0151】
トランスフェクション実験においては、Nanogプロモーター構築物で以下の結果が得られた。このプロモーターは、未分化の増殖細胞においてのみ排他的に活性である。かくして未分化のおよび分化誘導されたCESC細胞における一時的なトランスフェクションにより、未分化の細胞のみがこのプロモーターをトランス活性化する能力を有するということを示すことができる。かくして、p2000Nanog−GFP構築物でトランスフェクトされた細胞は、42%の細胞においてGFPの発現を示し、かつ該細胞が48時間10−7Mのレチノイン酸で処理されている場合には、7%の細胞のみにおいてこの発現を示す。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】特異的iRNAによる1P06遺伝子の発現の阻害が、CESC細胞の増殖の大きな減少を誘導し、その分化を誘導することを示すグラフ。
【図2】iRNA−1P06−2による1P06遺伝子の発現の阻害によって得られる分化したクローンの分子分析を示すグラフ。
【図3】特異的iRNAによるNanog遺伝子の発現の阻害が、CESC細胞の分化、ひいては細胞増殖の停止を誘導することを示すグラフ。
【図4】特異的干渉RNAによる1P06遺伝子およびNanog遺伝子の発現の阻害を示すグラフ。
【図5】セキショクヤケイの1P06遺伝子のオルソログおよびパラログを含むPOUマルチファミリーの異なるメンバーの系統樹。
【図6】セキショクヤケイの1P06遺伝子の、異なる種のそのオルソログとの相同性百分率を示す表。
【図7】セキショクヤケイ種におけるPOUファミリーのその他の因子との1P06遺伝子の相同性百分率を示す表。
【図8】増殖状態のCESC細胞内における融合タンパク質GFP−1P06の局在化を示すグラフ。
【図9】増殖状態のCESC細胞における融合タンパク質GFP−1P06の過剰発現の影響を示すグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
適切な培地内で培養されたトリ幹細胞から分化したトリ細胞の調製方法であって、1P06遺伝子、Nanog遺伝子、およびEomes遺伝子の中から選択された幹細胞において発現する遺伝子の発現または活性を阻害することによって前記幹細胞の分化を誘導するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
遺伝子の発現または活性の阻害が条件付きで実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
遺伝子の発現または活性の阻害が、少なくとも一つの干渉RNAを用いて実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
干渉RNAが、アンチセンスRNA、二本鎖RNA、「低分子干渉」RNA、「短鎖ヘアピン」RNA、またはリボソームRNAの中から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
干渉RNAが1P06遺伝子の発現を特異的に阻害することを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
干渉RNAをコードする核酸分子が配列番号3の配列を有することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
干渉RNAがNanog遺伝子の発現を特異的に阻害することを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項8】
干渉RNAをコードする核酸分子が配列番号4の配列を有することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
干渉RNAをコードする核酸分子が配列番号5の配列を有することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
干渉RNAがEomes遺伝子の発現を特異的に阻害することを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項11】
干渉RNAをコードする核酸分子が配列番号6、7、8、9の中の一つの配列を有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
干渉RNAをコードする核酸分子が、宿主細胞における前記干渉RNAの発現を可能にするプロモーターの制御下で発現ベクター内に組込まれていることを特徴とする、請求項3〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
干渉RNAの発現が誘導性プロモーターの制御下にあることを特徴とする、請求項3〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
干渉RNAをコードする核酸分子を含む発現ベクターが宿主細胞内に組込まれることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
幹細胞が、前記細胞の特異的分化を得る目的で、特異的遺伝子の活性化または阻害の少なくとも一つのステップに付されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
幹細胞が、前記細胞の特異的分化を得る目的で、適切な条件下で培養されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
分化が誘導されていない細胞の選択および破壊のステップを含むことを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一つに記載の方法により得られる可能性のある、分化したトリ細胞。
【請求項19】
ウイルスと請求項1〜17のいずれか一つに記載の方法に付したトリ幹細胞とを接触させるステップを含むことを特徴とする、抗ウイルスワクチンの調製方法。
【請求項20】
請求項3〜11のいずれか一つに記載の干渉RNAをコードする核酸分子。
【請求項21】
宿主細胞における前記干渉RNAの発現を可能にするプロモーターの制御下に置かれた、請求項20に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項22】
プロモーターが誘導性プロモーターであることを特徴とする、請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
請求項21または22に記載の発現ベクターで形質転換されたトリ幹細胞。
【請求項24】
配列番号1に従ったタンパク質配列と少なくとも68%の同一性を有するタンパク質配列のポリペプチドをコードする核酸配列。
【請求項25】
配列番号1に従ったタンパク質配列と少なくとも68%の同一性を有するタンパク質配列のポリペプチド。
【請求項26】
配列番号2に従ったヌクレオチド配列と少なくとも94%の同一性を有する核酸配列。
【請求項27】
請求項24または26に記載の配列を有する核酸分子が中に挿入されているクローニングベクターおよび/または発現ベクター。
【請求項28】
配列番号11に従ったヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する核酸配列。
【請求項29】
請求項28に記載の配列を有する核酸分子が中に挿入されているクローニングベクターおよび/または発現ベクター。
【請求項30】
請求項27または29に記載のベクターを組込んだ原核細胞または真核細胞。
【請求項1】
適切な培地内で培養されたトリ幹細胞から分化したトリ細胞の調製方法であって、1P06遺伝子、Nanog遺伝子、およびEomes遺伝子の中から選択された幹細胞において発現する遺伝子の発現または活性を阻害することによって前記幹細胞の分化を誘導するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
遺伝子の発現または活性の阻害が条件付きで実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
遺伝子の発現または活性の阻害が、少なくとも一つの干渉RNAを用いて実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
干渉RNAが、アンチセンスRNA、二本鎖RNA、「低分子干渉」RNA、「短鎖ヘアピン」RNA、またはリボソームRNAの中から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
干渉RNAが1P06遺伝子の発現を特異的に阻害することを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
干渉RNAをコードする核酸分子が配列番号3の配列を有することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
干渉RNAがNanog遺伝子の発現を特異的に阻害することを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項8】
干渉RNAをコードする核酸分子が配列番号4の配列を有することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
干渉RNAをコードする核酸分子が配列番号5の配列を有することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
干渉RNAがEomes遺伝子の発現を特異的に阻害することを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項11】
干渉RNAをコードする核酸分子が配列番号6、7、8、9の中の一つの配列を有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
干渉RNAをコードする核酸分子が、宿主細胞における前記干渉RNAの発現を可能にするプロモーターの制御下で発現ベクター内に組込まれていることを特徴とする、請求項3〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
干渉RNAの発現が誘導性プロモーターの制御下にあることを特徴とする、請求項3〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
干渉RNAをコードする核酸分子を含む発現ベクターが宿主細胞内に組込まれることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
幹細胞が、前記細胞の特異的分化を得る目的で、特異的遺伝子の活性化または阻害の少なくとも一つのステップに付されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
幹細胞が、前記細胞の特異的分化を得る目的で、適切な条件下で培養されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
分化が誘導されていない細胞の選択および破壊のステップを含むことを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一つに記載の方法により得られる可能性のある、分化したトリ細胞。
【請求項19】
ウイルスと請求項1〜17のいずれか一つに記載の方法に付したトリ幹細胞とを接触させるステップを含むことを特徴とする、抗ウイルスワクチンの調製方法。
【請求項20】
請求項3〜11のいずれか一つに記載の干渉RNAをコードする核酸分子。
【請求項21】
宿主細胞における前記干渉RNAの発現を可能にするプロモーターの制御下に置かれた、請求項20に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項22】
プロモーターが誘導性プロモーターであることを特徴とする、請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
請求項21または22に記載の発現ベクターで形質転換されたトリ幹細胞。
【請求項24】
配列番号1に従ったタンパク質配列と少なくとも68%の同一性を有するタンパク質配列のポリペプチドをコードする核酸配列。
【請求項25】
配列番号1に従ったタンパク質配列と少なくとも68%の同一性を有するタンパク質配列のポリペプチド。
【請求項26】
配列番号2に従ったヌクレオチド配列と少なくとも94%の同一性を有する核酸配列。
【請求項27】
請求項24または26に記載の配列を有する核酸分子が中に挿入されているクローニングベクターおよび/または発現ベクター。
【請求項28】
配列番号11に従ったヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する核酸配列。
【請求項29】
請求項28に記載の配列を有する核酸分子が中に挿入されているクローニングベクターおよび/または発現ベクター。
【請求項30】
請求項27または29に記載のベクターを組込んだ原核細胞または真核細胞。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2009−529899(P2009−529899A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500839(P2009−500839)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052572
【国際公開番号】WO2007/110341
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(503225629)アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ アグロノミック (3)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA RECHERCHE AGRONOMIQUE
【出願人】(500470482)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック(セーエヌエールエス) (25)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE (CNRS)
【出願人】(508284528)
【氏名又は名称原語表記】ENS − ECOLE NORMALE SUPERIEURE DE LYON
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052572
【国際公開番号】WO2007/110341
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(503225629)アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ アグロノミック (3)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA RECHERCHE AGRONOMIQUE
【出願人】(500470482)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック(セーエヌエールエス) (25)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE (CNRS)
【出願人】(508284528)
【氏名又は名称原語表記】ENS − ECOLE NORMALE SUPERIEURE DE LYON
【Fターム(参考)】
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